説明

画像形成装置用ローラ

【課題】 電子写真や静電記録技術を利用した複写機等に組み込まれて使用され、高温高湿下や低温低湿下で用いた場合にもヒステリシスロス率のような物性の変化が少なく、全ての環境条件で安定した性能の得られる画像形成装置用ローラを提供することである。
【解決手段】 芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラであって、
該画像形成装置用ローラの温度32.5℃/相対湿度80%RH(H/H環境)、温度23℃/相対湿度53%RH(N/N環境)、温度15℃/相対湿度10%RH(L/L環境)の各環境下におけるヒステリシスロス率が20%以下であることを特徴とする画像形成装置用ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンター及びファクシミリ等の画像形成装置において、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ及びクリーニングローラ等の弾性を有する画像形成装置用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像をデジタル化して扱うコンピュータ等での画像の需要が増し、これに伴いより高精細、高耐久な画像が要求され、更にはカラー画像と電子写真画像の改良が求められている。また高解像度の要求を満たすため、トナーは粒径10μm以下と微粒化しており、トナーへのストレスはより顕著に画像に現れる傾向にある。
【0003】
画像形成装置用ローラは、トナーへのストレス低減の観点からより低硬度化(柔軟性)が望まれており、発泡弾性体として使用されるポリウレタンフォームは低硬度(軟質)である必要がある。
【0004】
また、画像形成装置用ローラにおいては他部材との当接による圧縮力に対して充分な回復性を有する必要があるが、高温高湿環境での圧縮永久歪が悪化する場合や、温度15℃/相対湿度10%RHのような低温低湿環境でのヒステリシスロス率が大きくなる場合、充分に回復しきれない部分において他部材への当接が不均一となり、濃度ムラ等の画像不良を引き起こすという問題がある。また、ローラ硬度が、高温高湿の環境下では低下し他部材への当接圧が不足となったり、当接が不均一となり、画像に不具合を生じるといった場合があった。逆に低温低湿下ではローラ硬度が上昇し、トナーへのストレスが過剰になり画像に不具合を生じるといった場合があった。
【0005】
ポリウレタンフォームからなる導電性ローラの抵抗値の環境変動の低減が画像良化に繋がることが知られている(特許文献1参照)。また、ピッチむらや濃度むら等の不具合のない画像が得られることを目的とし、発泡弾性体の圧縮バネ定数、圧縮弾性回復率及び摩擦抵抗係を所定の範囲に設計したものが知られている(特許文献2参照)。また、低温域と高温域に損失正接(tanδ)のピークを有するため、応力緩和率が大きく、かつ、温度による硬さの変化は少ないポリウレタンフォームが提案されている(特許文献3)。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1では、抵抗値以外の環境変動といった観点からは何ら検討されていない。また、前記特許文献2でのローラ物性は、圧縮バネ定数、圧縮弾性回復率は通常、環境によって異なり、安定した高品位な画像を得ることが困難である。また、前記特許文献3では、画像形成装置用ローラの使用温度条件において、tanδの変化量が大きければ、tanδピークの温度領域を制限するだけでは、ローラ硬度やその他ローラ物性が安定したものが得られない場合があった。また、湿度による影響については言及されていない。
【特許文献1】特許第3526322号公報
【特許文献2】特開2004−21212号公報
【特許文献3】特開2000−143855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決することであり、主に、電子写真や静電記録技術を利用した複写機等に組み込まれて使用され、高温高湿下や低温低湿下で用いた場合にもヒステリシスロス率のような物性の変化が少なく、全ての環境条件で安定した性能の得られる画像形成装置用ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を行い、以下の発明により前記本発明の目的を達成できることを見出した。
【0009】
本発明に従って、芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラであって、
該画像形成装置用ローラの温度32.5℃/相対湿度80%RH(H/H環境)、温度23℃/相対湿度53%RH(N/N環境)、温度15℃/相対湿度10%RH(L/L環境)の各環境下におけるヒステリシスロス率が20%以下であることを特徴とする画像形成装置用ローラが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温高湿下や低温低湿下で用いた場合にもヒステリシスロス率のような物性の変化が少なく、画像形成装置が使用される全ての環境条件で安定した性能の得られる画像形成装置用ローラを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(ヒステリシスロス率に関して)
H/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下における該画像形成装置用ローラのヒステリシスロス率は20%以下であることが必須であり、10%以下であることが好ましい。
【0013】
例えば、トナー供給ローラとして用いた場合、温度15〜32.5℃/相対湿度10〜80%RHにおいて、ヒステリシスロス率が20%を超える場合は、回転中に他部材との当接で凹んだ部分が回復できずに、トナー掻き取り性が低下する傾向にあり、画質が低下する。また、20%を超える場合はトナー供給性に関しても、画像形成時に回収されたトナーの一部は発泡層の表面に開口する開放孔に捕捉され、トナー供給ローラが現像ローラに当接した際の変形と、この変形の復元とにより開放孔から押出されるが、この変形の復元が悪いためトナーが押出されず、そのまま1回転して、開放孔にはトナーが更に捕捉されることになると、捕捉されたトナーが次第に発泡層の内部へと入り込んでいくことになる。つまり、トナー供給性が不十分になり濃度ムラを発生し易く、更に印画を続けることにより、トナー劣化によるかぶり等も引き起こすことになるのである。また、特に、画像形成装置が高速化しており、画像形成装置用ローラは高回転で他部材と当接しており、回復性の指標として、ヒステリシスロス率は重要なファクターである。
【0014】
(硬度に関して)
該画像形成装置用ローラの硬度が、H/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下において、350g/mm以下であり、かつL/L環境における該画像形成装置用ローラの硬度が、該H/H環境における硬度の1.5倍以内であり、かつH/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下でのヒステリシスロス率の最大値と最小値の差が8%以内であることが好ましい。350g/mmを超える場合にはトナー劣化を促進し、かぶり等を引き起こすことになる。また、測定環境によって硬度、ヒステリシスロス率の変化が大きいと、使用環境において、安定した画像が得られ難くなる。つまり、ローラ硬度が高温高湿の環境下で低下してしまうと他部材への当接圧が不足したり、当接が不均一となり、逆に低温低湿の環境下では上昇し、トナーへのストレスが過剰になり画像に不具合を発生するが、L/L環境における該画像形成装置用ローラの硬度が、該H/H環境における硬度の1.5倍以内と硬度の環境変動が小さいと安定した画像が得られるのである。また、ヒステリシスロス率の最大値と最小値の差が8%を超えると、使用環境によってヒステリシスロス率の変化が大きく、天候や季節等によって、安定した画像が得られ難くなる。
【0015】
(密度に関して)
本発明では、画像形成装置用ローラに使用されるポリウレタンフォームの密度は、0.05〜0.20g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.07〜0.15g/cmである。また、画像形成装置用ローラの圧縮永久歪率は20%以下であることが好ましい。ポリウレタンフォームの密度が、0.05g/cmより小さい場合はローラとして成形が困難であるし、出来ても発泡剤である水を過剰に用いるため永久変形が大きく画質が低下し、使用に耐えないものとなる。ポリウレタンフォームの密度が、0.20g/cmより大きい場合は必然的にトナーとの接触面積が大きくなり、トナー劣化を促進する等の問題がある。画像形成装置用ローラの圧縮永久歪率が20%より大きい場合は、画像形成装置用ローラに凹みが生じ、均一なトナーコート(塗布)が困難となる場合がある。
【0016】
本発明のポリウレタンフォームを用いた画像形成装置用ローラの種類としては特に制限は無いが、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ及びクリーニングローラ等を挙げることが出来る。
【0017】
導電性を付与することが必要なローラの場合には、導電剤の付加に伴う変更を実験的に求めることがあるのは、いうまでも無い。
【0018】
このように、従来のポリウレタンフォーム製画像形成装置用ローラに比べて、ヒステリシスロス率、硬度の環境変化が小さいため、例えば、トナー供給ローラとして用いた場合、充分に現像ローラ又は現像スリーブ上の残余トナーを掻き取り、またトナーを供給でき、画像形成装置としての使用環境下にあって画質の低下がなく、安定した画像が得られる。
【0019】
本発明の画像形成装置用ローラは、ポリウレタンフォームからなり、前記ポリウレタンフォームが、少なくともポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン原料から形成されたものである。
【0020】
(ポリオールの質量平均分子量・水酸基価に関して)
該ポリオールの質量平均分子量が4000〜10000であり、且つ水酸基価が40mgKOH/g以下であることが好ましい。より好ましくは質量平均分子量4500〜8000であり、且つ水酸基価が20〜40mgKOH/g以下、平均官能基数2.0〜4.0である。質量平均分子量が10000より大きくなると粘度が高くなり、取扱いや注型、イソシアネートとの均一な混合が困難になる。質量平均分子量が4000より小さいと、低温低湿下で物性値が大きく変化し、ヒステリシスロス率が大きく、硬度が高くなる。すなわち、質量平均分子量がこの範囲内にあることによって、画像形成装置用ローラとしての低温低湿から高温高湿な使用環境において、使用に好適な物性とすることができる。
【0021】
水酸基価が40mgKOH/gよりも大きいと、画像形成装置用ローラの硬度が高くなる傾向がある。水酸基価20mgKOH/gよりも小さい、若しくは平均官能基数2.0よりも小さいと、画像形成装置用ローラが高温高湿下での圧縮永久歪が悪くなる傾向がある。なお、上記水酸基価はJIS K−1557記載の方法で測定したものである。また、該ポリオールの総不飽和度は0.050meq/g以下が好ましい。より好ましくは0.035meq/g以下である。0.050meq/gより大きいと、圧縮永久歪率が悪くなる傾向がある。総不飽和度とは、JIS K−1557記載の方法により測定されるものである。
【0022】
(ポリオールに関して)
ポリオールとしては、従来公知の各種ポリオールの中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、そのような液状のポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられているポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリマーポリオール等の公知のポリオール類の中から適宜選択して使用することが出来、一種又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
なお、前記ポリオールのうち、ポリエーテルポリオールを用いると、耐湿熱耐久性に優れた軟質高弾性ポリウレタン製造に好適である。更に、エチレンオキシドを5質量%以上含有するポリエーテルポリオールを使用すると、成形性が良く好ましい。また、予めポリイソシアネートと重合させたプレポリマーとして用いても差し支えない。
【0024】
(ポリイソシアネートに関して)
また、ポリイソシアネートとしては特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することが出来る。例えば、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及びポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いても良い。なお、前記ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種又は2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーも、ポリイソシアネートとして使用することもできる。
【0025】
ポリウレタン原料のNCOインデックスは60〜120であることが好ましく、70〜100であることがより好ましい。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数をイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除したものに100を乗じた値とする。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合に、そのNCOインデックスは100となる。
【0026】
(触媒に関して)
触媒としては特に制限は無く、従来公知の各種触媒の中から適宜選択して使用することが出来る。トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン及びビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル等、従来公知の触媒が使用できる。
【0027】
(整泡剤に関して)
整泡剤としては特に制限は無く、従来公知の各種整泡剤の中から適宜選択して使用することが出来る。例えばシリコーン系界面活性剤としては、東レ・ダウコーニング社製のSRX−274C、日本ユニカー社製のL−5309、L−520等が使用できる。
【0028】
また、これらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタン原料には更に、従来と同様に架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、破泡剤等が、目標とする発泡成形後のポリウレタンスポンジ層の構造、即ち、連続気泡型若しくは独立気泡型の何れか一方を生ぜしめ易い公知の配合となるように添加されて、反応性の発泡原料とされる。また、そのような原料には必要に応じて所望の導電性を付与するための導電性付与剤や帯電防止剤等も、従来と同様に公知のものが添加せしめられる。
【0029】
(導電性付与剤に関して)
導電性付与剤は公知の物を使用することができ、例えば導電性付与剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン及び酸化錫等の導電性の金属酸化物、CuやAg等の金属、これら導電性材料を粒子表面に被覆して導電化した粒子等が挙げられる。これらの導電性付与剤は、単独あるいは複数種を組み合わせて用いることができる。特に、カーボンブラックは、比較的少量(質量比)の添加によって、所望の導電性を付与できる点で好ましい。その他添加剤として、難燃剤、減粘剤、顔料、安定剤、着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、酸化防止剤等を必要に応じて配合することが出来る。架橋剤としては、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の従来公知のものが挙げられる。
【0030】
そして、混合操作の容易性や得られるポリウレタンフォームの特性の見地から、前記ポリイソシアネート、ポリオール、整泡剤の好適な組み合わせは、ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネートとトリレンジイソシアネートを混合したものを用い、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、整泡剤としては水溶性ポリエーテルシロキサンとを用いた組み合わせである。
【0031】
(画像形成装置用ローラに関して)
本発明の画像形成装置用ローラは、芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラであって通常、鉄にメッキを施したものやステンレス鋼等からなる例えば直径が4〜6mm、長さが200〜400mmの芯金を、前記ポリウレタンフォームで被覆して弾性体層を形成することにより製造することができる。用途によっては、導電性や半導電性、或いは絶縁性の塗料により、その外側を塗装してもよい。
【0032】
本発明の画像形成装置用ローラの外径は特に限定されず、その目的によりさまざまな外径を有するものとすることができるが、一般的には10〜20mmの外径を有する。
【0033】
芯金とポリウレタンフォームとの接合方法については特に限定されないが、芯金を予めモールド(成形型)内部に配設し、ポリウレタン原料を注型し硬化する方法や、ポリウレタンフォームを所定の形状に成形した後に接着する方法等を用いることが出来る。どちらの方法においても、必要に応じて芯金とポリウレタンフォームの間に接着層を設けることが出来る。この接着層としては、接着剤やホットメルトシート等の公知の材料を用いることが出来る。
【0034】
画像形成装置用ローラは、前記構成のものに限定されるわけではなく、ポリウレタンフォーム層の内周側及び外周側に更に複数の層を有していてもよい。
【0035】
本発明の画像形成装置用ローラ用成形型は特に限定されず、従来公知の材質、形状の中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、ステンレス(SUS304)製で、ベントホール(型内にガスが溜まり発泡体に欠肉を生じるのを未然に防止するため設けられた孔径約1mm程度の金型内外に連通する小孔)を有し、内面に凹凸形状を有するパイプ状成形型等がある。
【0036】
離型剤は公知の物を使用することができ、好ましくは原料に対する接触角の大きなコート材、例えばシリコーン樹脂系、フッ素樹脂系離型剤等を用いることができる。なかでもシリコーンオイル及びフッ素系化合物、且つ一種以上のワックスを含有する水系離型剤が環境面、表面性からも好ましい。塗布する離型剤の膜厚については、製品寸法に影響を与えない範囲であれば特に制限しないが、前記膜厚としては、1〜1000μmであるとより好ましい。
【0037】
(画像形成装置用ローラの製造方法に関して)
本発明の画像形成装置用ローラの製造方法は特に限定されず、常法によればよい。その一例を示せば次の通りである。まず、金型に水系離型剤をスポンジに含ませて均一に約5μm塗布し50℃に加温乾燥した。前記ポリオール、ポリイソシアネート、触媒及び所望により用いられる整泡剤、水、その他助剤等を均質に混合してウレタン原料を調整した後、これを型に注入し、加熱して反応硬化させることによりポリウレタンフォームを形成することができる。
【0038】
前記ウレタン原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無いが、混合温度は、通常10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、混合時間は、通常1秒〜10分間、好ましくは3秒〜5分間程度である。
【0039】
また、加熱して反応硬化させる際、従来公知の方法により、発泡させることにより、ポリウレタンフォームからなる画像形成装置用ローラを作製することが出来る。発泡方法については特に制限は無く、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法等、いずれの方法をも用いることが出来る。この発泡時の成形型の温度を35〜100℃にすることが好ましく、40〜80℃にすることがより好ましい。
【0040】
図1は、本発明の画像形成装置用ローラをトナー供給ローラとして装着した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す説明図であって、トナー供給ローラ3と静電潜像を保持した画像形成体1との間に現像ローラ2がその外周面を画像形成体1の表面に近接させた状態で配設され、かつ画像形成体1に紙等の記録媒体8を介して、転写ローラ5を当接させた構造を示している。トナー供給ローラ3、現像ローラ2及び画像形成体1を矢印方向に回転させることにより、トナーがトナー供給ローラ3により現像ローラ2の表面に供給され、層規制ブレード4によって均一な薄層に整えられた後、画像形成体1上に供給される。画像形成体1は帯電ローラ7によって所定の極性・電位に一様帯電処理され、次いで露光系(不図示)により目的の画像情報に対応したネガ画像露光L(原稿像のアナログ露光、デジタル走査露光)を受けて周面に目的画像情報の静電潜像が形成される。この静電潜像上に現像ローラから供給されたトナーが付着し、該潜像が可視化される。そして画像形成体1と転写ローラ5との間に電界を発生させることにより、画像形成体1上のトナー画像を記録媒体8に転写させる。転写後に画像形成体1表面に残留するトナーが、クリーニングブレード6により除去される。本発明の画像形成装置用ローラは環境変動が小さいため、前記トナー供給ローラとして使用した場合、画像形成装置用ローラに要求される性能を使用環境によらず、維持することができ安定性に優れたローラとすることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
まず、シリコーン成分、フッ素成分、ワックス成分を含む水系離型剤をスポンジ等に含ませてステンレス(SUS304)製金型に塗布し、50℃で20分間に加温乾燥した。ポリオール成分(ポリオール、整泡剤、触媒、水等)、ポリイソシアネート成分を液温25℃に調整した。そして、両液をNCOインデックスが表1となるように配合し撹拌羽根で5秒間撹拌した後、表1に示すフォーム質量になる材料量を、予めSUS304製の直径5mm、長さ270mmの芯金を内部の所定位置に取り付けた金型内に流し込んだ。次に、100℃の電気炉で画像形成装置用ローラ用成形型を60℃に温度調節し、この金型内で20分間硬化し金型から取り出して外径が16mmの画像形成装置用ローラを製造した。
【0043】
<画像評価>
また、前記画像形成装置用ローラを各トナー供給ローラとしたフルカラーレーザービームプリンタ(キヤノン(株)製;LBP−2510)のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナーカートリッジに組み込み、このカートリッジを取り付けたフルカラーレーザービームプリンタを用いて、組み込み終了後、H/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下で、1晩以上放置してから初期画像として各色ベタ画像、及びゴースト画像(画像の書き出しから感光体1回転目の部分に25mm角の正方形のベタ黒部分を並べ、感光体2回転目以降に1ドットをケイマパターンで印字したハーフトーン画像)を作像した後、連続耐久試験用のテキストページを連続4000枚出力した。出力終了後1晩以上放置してから耐久後画像として各色各環境下で初期画像と同様に作像して、下記の方法に従って評価した。
【0044】
画像の判定は、目視で、画像上に濃度ムラやトナー供給ローラピッチの段ムラ等の画像不良が、各環境下において、各色で、初期画像、耐久後画像に1枚でもあれば×、なければ○、極めて良好な画像であれば◎とする。
【0045】
また、実施例及び比較例で作製した画像形成装置用ローラ及びポリオールの物性の測定値は、下記の方法により測定した。
【0046】
<硬度、ヒステリシスロス率>
画像形成装置用ローラのポリウレタンフォーム層のヒステリシスロス率は、JIS K 6400法に準拠し測定した。図2は本発明に伴う画像形成装置用ローラのヒステリシスロス率及び硬度の測定ポイントを示す説明図であって、(a)は断面、(b)は平面図である。
【0047】
図3は本発明に伴う画像形成装置用ローラのヒステリシスロス率及び硬度の測定方法を示した図である。
【0048】
図2(a)及び(b)に示される如く、画像形成装置用ローラ14を、その両端の芯金12部分において支持し、そしてその表面層13を、長さ50mm(ローラ長手方向)×幅10mm(厚さ:10mm)の板状押圧面を有する治具11にて、10mm/minの速度で押圧して2mm変形させた後、該冶具を10mm/minの速度で開放していった時、押圧していった時と開放していった時の荷重−ローラ変形量曲線を記録し、ヒステリシスロス率は、2mm変形押圧していった時と開放していった時の面積比率から求めた。硬度は押圧して1mm変形させた時の該ローラ表面にかかる荷重から求めた。その数値が大きくなるほど、ポリウレタンフォームからなる表面層13が硬いことを示している。図2に示すようにヒステリシスロス率及び硬度は、軸方向に3ヶ所、各軸方向に於いて周方向の90度毎に4ヶ所、計12ヶ所測定し、その平均値を求めた。測定は、H/H環境、N/N環境、L/L環境、各環境下で行った。
【0049】
<密度>
画像形成装置用ローラのウレタンフォームの体積を計算し、また、画像形成装置用ローラのウレタンフォームの質量を測定することにより、密度を求めた。
【0050】
総合判定は、全ての環境下で画像評価◎である場合:◎、環境によらず画像評価◎か○である場合:○、いずれかの環境下で画像評価×である場合:×である。
【0051】
【表1】

【0052】
1)三井武田ケミカル(株)製ポリエーテルポリオールの商品名。質量平均分子量7000、水酸基価=24mgKOH/g。
2)三井武田ケミカル(株)製ポリエーテルポリオールの商品名。質量平均分子量5000、水酸基価=34mgKOH/g。
3)三井武田ケミカル(株)製ポリエーテルポリオールの商品名。質量平均分子量3100、水酸基価=54mgKOH/g。
4)三井武田ケミカル(株)製ポリエーテルポリオールの商品名。質量平均分子量3500、水酸基価=55mgKOH/g。
5)キシダ化学(株)製架橋剤の商品名。
6)蒸留水
7)東レ・ダウコーニング(株)製シリコーン整泡剤の商品名。
8)東ソー(株)製第三級アミン触媒の商品名。
9)東ソー(株)製第三級アミン触媒の商品名。
10)三井武田ケミカル(株)製ポリイソシアネート混和物の商品名(モノメリック及びポリメリックMDI混合物50質量%、TDI50質量%の混合物)。(NCO%=40)
11)NCO基数/活性水素基数×100
【0053】
本結果より本実施例に示したポリウレタンフォーム製画像形成装置用ローラにおいて、H/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下における該画像形成装置用ローラのヒステリシスロス率が、20%以下であることを特徴とすることで、高温高湿下や低温低湿下で用いた場合にも物性の変化が少なく、全ての環境条件で安定した性能の画像形成装置用ローラが得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の画像形成装置用ローラをトナー供給ローラとして装着した電子写真方式の画像形成装置の一例を示す説明図である。
【図2】本発明に伴う画像形成装置用ローラのヒステリシスロス率及び硬度の測定ポイントを示す説明図であって、(a)は断面、(b)は平面図である。
【図3】本発明に伴う画像形成装置用ローラのヒステリシスロス率及び硬度の測定方法を示した図である。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成体
2 現像ローラ
3 トナー供給ローラ
4 層規制ブレード
5 転写ローラ
6 クリーニングブレード
7 帯電ローラ
8 記録媒体
11 冶具
12 芯金
13 表面層
14 画像形成装置用ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金上に形成された一層以上のポリウレタンフォーム層を有する画像形成装置用ローラであって、
該画像形成装置用ローラの温度32.5℃/相対湿度80%RH(H/H環境)、温度23℃/相対湿度53%RH(N/N環境)、温度15℃/相対湿度10%RH(L/L環境)の各環境下におけるヒステリシスロス率が20%以下であることを特徴とする画像形成装置用ローラ。
【請求項2】
H/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下における前記画像形成装置用ローラの硬度が、350g/mm以下であり、かつL/L環境における該画像形成装置用ローラの硬度が、該H/H環境における硬度の1.5倍以内であり、かつH/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下でのヒステリシスロス率の最大値と最小値の差が8%以内である請求項1に記載の画像形成装置用ローラ。
【請求項3】
H/H環境、N/N環境、L/L環境の各環境下における前記画像形成装置用ローラのヒステリシスロス率が10%以下である請求項1又は2に記載の画像形成装置用ローラ。
【請求項4】
前記画像形成装置用ローラは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラのいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−79112(P2007−79112A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266689(P2005−266689)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】