説明

画像形成装置

【課題】 トランスをスイッチングすることで得られる高電圧を印加して画像形成する装置において、
紙間での高圧出力切換等を想定した、切換速度が速い高圧回路を備えた画像形成装置を提供することである。
【解決手段】 出力切換時には目標出力を想定した固定パルスでトランスを駆動し、通常時には出力検出結果に基づいたフィードバック制御を行い、
また、切換時に使う固定パルスは環境状態と装置の稼働状態に応じて自動で切換わることにより、装置の状態に基づいた最適な高速切換ができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧で画像形成を行う画像形成装置の高圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置においては、近年高画質化、高速化が進んでいる。
【0003】
電子写真プロセスで高速化を進めるにあたり、様々な部分で時間短縮を行う必要があるが、高圧電源部の出力切換え時間も短縮する必要が生じている。
【0004】
従来例えば高圧出力切換え時には100ms程度のウエイト時間を設け、出力が安定したところから画像形成プロセスを開始する。
【0005】
図9を用いて従来の高圧回路動作について説明を行う。
【0006】
まずT1は高圧トランスであり、フェライトなどのコアにより磁気結合された駆動巻線と出力巻線の巻数比に応じた高圧出力を、駆動巻線をスイッチングすることで実現する。
【0007】
T1の駆動巻線の一端は電源に接続されており、もう一端はトランス駆動素子Q1に接続されている。
【0008】
出力巻線の先には整流ダイオードD1及び平滑コンデンサC1が接続されており、これらの素子によって直流化された高圧が出力される。
【0009】
DETは出力電圧検出用の抵抗であり、上下の抵抗値比率に応じて出力電圧を分圧した電圧が発生している。
【0010】
CONTは高圧出力制御部であり、ここから出力された出力設定値に応じた高圧が出力される。
【0011】
出力設定値及び、DETにより検出された出力電圧に比例した電圧をAMPが比較し、二者の差分が無くなるようにパルス幅発生部PWMを制御することで、トランス駆動素子Q1のオン期間を制御して出力を所望の値に制御する。
【0012】
これら一連のフィードバック制御では、通常ハイゲイン設定で、且つ高速動作を行うとハンチングや出力変動時のオーバーシュート、リンギング波形などの問題が発生するため、安定性を確保する方向となるようAMP部のゲインを下げ、応答速度を遅らせるように調整する。
【0013】
また、PWM部においてもAMP出力が切り替わった後にパルス幅を変化させるように動くため、遅れが生じてしまう。
【0014】
画像形成プロセスでは、感光ドラムの帯電、感光ドラムに書き込まれた静電潜像へのトナー現像、メディアへの転写等複数の高圧を印加する必要があり、それぞれの時間短縮がプリント開始から完了までの時間短縮につながることになる。
【0015】
また、高圧印加する感光ドラムや各種ローラーなどのパーツはそのインピーダンス特性が環境条件や経時により変化するため、画像形成装置では、装置起動時やプリントジョブの合間等に高圧を印加した際の電流電圧情報をフィードバックすることによりインピーダンスを計算し、画像形成を最適化している。
【0016】
その他には、高画質化実現のためにテストパッチパターンを形成・検知して、その検知結果に基づき画像濃度や位置の調整を行うが、この調整動作による生産性低下を防ぐために特許文献1では紙間にテストパッチパターンを形成する構成が提案されており、転写ローラー汚れ防止のために転写バイアスを紙間で落とす必要があり、より高速化が進んだ場合には紙間隔が次第に短くなり、すなわちより高速な高圧出力変化が要求される。
【0017】
高圧出力切換え時間が短縮されると、上記のような制御が短時間で実施可能となり、装置の生産性向上につながってゆく。
【0018】
このような目的で高圧出力を高速切換えするために、高圧回路のフィードバック応答速度をぎりぎりまで高めたり、特に立ち下げ時には逆極性の電源を用意して切換え時にそちらをオンすることで強制的に出力を引っ張る等の工夫がされている。
【0019】
また、特許文献2で提案されているようなデジタル制御方式の場合、切換え速度を速めるために、切換え後のパルス幅をある程度予測して切り換えることで通常のフィードバック制御よりも高速に出力を切り換えることができる。
【特許文献1】特開2001−109219号公報
【特許文献2】特開2004−96963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述した方式では以下のような問題点があった。
【0021】
閉ループ制御の応答速度をぎりぎりまで上げる調整を回路的に行った場合、高圧出力のハンチングや、波形にオーバーシュートやアンダーシュートが出る可能性があり、回路安定性を確保するには速度を上げられる範囲が限られている。
【0022】
逆極性回路を用意して切り換え時に出力を引っ張る方式では、逆極性出力用電源回路を別途準備する必要があり、コスト、スペースなどの点で不利な結果となってしまう。
【0023】
特許文献2のようなデジタル制御で特定パルスを出力する方式では、画像形成装置の高圧印加部が負荷の場合、環境条件や経時によりインピーダンスが大きく変動するため、最適制御が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0024】
請求項1の発明は、トランス(T1)による電圧力変換を行うことにより高電圧を発生する高圧発生回路からの出力を用いて画像を形成する画像形成装置であって、
前記トランス(T1)を駆動するためのトランス駆動手段(Q1)と、
前記トランス駆動手段(Q1)を駆動するためのパルスを発生するパルス発生手段(PWM)と、
高圧出力を検知するための高圧出力検知手段(DET)と、
装置動作状態に応じて高圧出力を制御する高圧制御手段(CONT)と、
前記高圧制御手段(CONT)内に設けられ、各種高圧制御情報が記憶された記憶手段(MEM)と、
前記高圧制御手段(CONT)による出力設定値と、前記高圧出力検知手段(DET)の検知結果に応じて前記パルス発生手段(PWM)の出力を変更する高圧出力制御手段(AMP)と、
前記高圧制御手段(CONT)により出力されるパルスと前記パルス発生手段(PWM)により出力されるパルスの切換えを行うパルス切換手段(SW1)と、
装置の動作環境条件を検知する環境条件検知手段(ENV)と、
装置の耐久度を検知する耐久度検知手段(ENDU)と、
を備え、
前記記憶手段メモリ(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて変更可能であることを特徴とする画像形成装置。
【0025】
請求項2の発明は、前記記憶手段メモリ(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて自動更新され、
前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力設定変更時に前記記憶手段(MEM)内に記憶された設定変更後の出力に必要な固定パルスを自動更新されたパルス幅情報に基いて出力し、
前記パルス切換手段(SW1)を前記高圧制御手段(CONT)側に切換えることで前記トランス駆動手段(Q1)を固定パルスで駆動することを特徴とする画像形成装置。
【0026】
請求項3の発明は、前記高圧出力検知手段(DET)は出力電流を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【0027】
請求項4の発明は、前記高圧出力検知手段(DET)は出力電圧を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【0028】
請求項5の発明は、前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【0029】
請求項6の発明は、前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境湿度を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【0030】
請求項7の発明は、前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度と湿度の両方を検知し、前記耐久度検知手段(ENDU)によって検知された装置の耐久度合いとの状態に応じて前記固定パルス出力手段のパルス幅設定テーブル情報を更新することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【0031】
請求項8の発明は、前記耐久度検知手段(ENDU)は装置設置からの経過時間を検知することを特徴とした、請求項1〜請求項7のいずれかに記載7の画像形成装置。
【0032】
請求項9の発明は、前記耐久度検知手段(ENDU)は装置の画像形成時間の合計を検知することを特徴とした、請求項1〜請求項7のいずれかに記載7の画像形成装置。
【0033】
請求項10の発明は、前記高圧制御手段(CONT)から出力される固定パルスは特定パターンであることを特徴とした請求項1〜請求項9のいずれかに記載9の画像形成装置。
【0034】
請求項11の発明は、固定パルスの特定パターンは複数段階を経て目標値に到達することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【0035】
請求項12の発明は、トランス(T1)による電圧力変換を行うことにより高電圧を発生する高圧発生回路からの出力を用いて画像を形成する画像形成装置であって、
前記トランス(T1)を駆動するためのトランス駆動手段(Q1)と、
前記トランス駆動手段(Q1)を駆動するためのパルスを発生するパルス発生手段(PWM)と、
高圧出力を検知するための高圧出力検知手段(DET)と、
装置動作状態に応じて高圧出力を制御する高圧制御手段(CONT)と、
前記高圧制御手段(CONT)内に設けられ、各種高圧制御情報が記憶された記憶手段(MEM)と、
前記高圧制御手段(CONT)による出力設定値と、前記高圧出力検知手段(DET)の検知結果に応じて前記パルス幅発生手段(PWM)の出力を変更する高圧出力制御手段(AMPCONT)と、
前記高圧制御手段(CONT)により出力されるパルスと前記パルス発生手段(PWM)により出力されるパルスの切換えを行うパルス切換手段(SW1)と、
前記パルス発生手段(PWM)が出力するパルス幅を検知するパルス幅検知手段(P_DET)と、
装置の動作環境条件を検知する環境条件検知手段(ENV)と、
装置の耐久度を検知する耐久度検知手段(ENDU)と、
を備え、
前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力設定変更時に前記記憶手段(MEM)内に記憶された設定変更後の出力に必要な固定パルス幅を出力し、
前記メモリ(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて変更可能であることを特徴とする画像形成装置。
【0036】
請求項13の発明は、前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力設定変更時に前記記憶手段(MEM)内に記憶された設定変更後の出力に必要な固定パルス幅を出力し、
前記メモリ(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて自動更新し、
前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力切換時の固定パルスによる制御中、前記高圧出力検知手段(DET)の検知結果と出力設定値の関係から、前記パルス幅検知手段(P_DET)によって検知されたパルス幅が現在出力中の固定パルス幅と所定の誤差内に入ると前記パルス幅切換手段(SW1)が前記トランス駆動手段(Q1)の駆動パルスを前記パルス発生手段(PWM)側に切り替えることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【0037】
請求項14の発明は、前記高圧出力検知手段(PWM)は出力電流を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【0038】
請求項15の発明は、前記高圧出力検知手段(DET)は高圧出力電圧を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【0039】
請求項16の発明は、前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【0040】
請求項17の発明は、前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境湿度を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【0041】
請求項18の発明は、前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度と湿度の両方を検知し、前記耐久度検知手段(ENDU)によって検知された装置の耐久度合いとの状態に応じて前記固定パルス発生出力手段(PWM)のパルス幅設定テーブル情報を更新することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【0042】
請求項19の発明は、前記耐久度検知手段(ENDU)は装置設置からの経過時間を検知することを特徴とする、請求項12〜請求項18のいずれかに記載の画像形成装置。
【0043】
請求項20の発明は、前記耐久度検知手段(ENDU)は装置の画像形成時間の合計を検知することを特徴とする、請求項12〜請求項18のいずれかに記載18の画像形成装置。
【0044】
請求項21の発明は、前記高圧制御手段(CONT)から出力される固定パルスは特定パターンであることを特徴とする請求項12〜請求項20のいずれかに記載20の画像形成装置。
【0045】
請求項22の発明は、出力パルスの特定パターンは複数段階を経て目標値に到達することを特徴とする請求項21の画像形成装置。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、高圧出力を高速で所望の値に切り換えることができるので、従来必要とした切換時のウエイト時間が短縮され、また従来高圧出力を用いて行っていた各種制御の時間短縮に繋がり、更に紙間でのバイアス切換えなどもより高速に行えるので、画質その他の特性を犠牲にすることなく、装置の生産性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【実施例1】
【0048】
まず、本発明の第1の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0049】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る高圧回路及び制御の一例を示す図である。
【0050】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る高圧トランス駆動パルスと出力電圧の関係の一例を示す図である。
【0051】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る高圧回路動作を示すフローチャートである。
【0052】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る転写ローラー抵抗値の経時変化の一例を示すグラフである。
【0053】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る転写ローラー抵抗値の温度特性の一例を示すグラフである。
【0054】
図6は、一般的な画像形成装置の動作の一例を示す図である。
【0055】
最初に図6を用いて電子写真プロセスを使った一般的な画像形成装置の動作例について説明を行う。
【0056】
90がプリンタ本体で、その中には感光体ドラム901yがあり、この感光体ドラム901yは反時計回りに回転していて、902yが高圧を加える一次帯電ローラーで、一次帯電ローラー902yを通過した感光体ドラムの表面を均一にマイナス帯電する。
【0057】
均一に帯電を行うために、DC成分マイナス300Vからマイナス700Vの電圧にAC成分1300Vから2000Vが重畳されている。
【0058】
これらの電圧を発生させるための高圧発生装置は、通常装置内のモーター等を動作させるために使用する24Vなどの電圧を元にして高圧トランスを用いて生成している場合が多い。
【0059】
帯電プロセスではAC波形により放電電流量が変化するなどして、寿命や帯電特性に影響を及ぼすことが一般的に知られている。
【0060】
均一に帯電した感光体901yの表面に903yのレーザーユニットから照射されるレーザーが露光される。露光された部分は感光してインピーダンスが低下して帯電量が低下する。
【0061】
レーザーユニット903yはON/OFF、PWM制御により露光量を制御していて、感光体901yの表面に帯電量の分布で潜像画像が描画される。
【0062】
次に現像スリーブ904yを感光体表面が通過する。
【0063】
この現像スリーブ904yと感光体901yの間のギャップは高精度に管理されており、現像スリーブ904yにDC成分マイナス150V〜マイナス500VとAC成分1300V〜2000Vの高圧を加えることで、感光体901yの表面と現像ブレード904yの間に電界が発生する。
【0064】
ここにおいても前述した帯電プロセス同様に高圧トランスを用いた高圧発生装置によりDC成分及びAC成分を生成しており、特に現像プロセスではAC成分の波形が画質に大きく影響する。
【0065】
この電界の向きと強度は帯電量に影響され、レーザーで露光されてないマイナス帯電量の大きい感光体901yの表面のところでは現像スリーブ904yから感光体901yに向かう電界が生じる。
【0066】
一方、レーザーで強く露光されて感光体901yの表面の帯電量の小さいところでは、感光体901yから現像スリーブ904yに向かう電界が生じる。
【0067】
現像スリーブ904y上のマイナスに帯電したイエローのトナーが現像スリーブ904yと感光体901yの表面の電界の向きと反対方向に力をうけるので、電界の向きと強弱により、先の帯電量によって形成された感光体901y上の潜像画像がイエローのトナーによって形成される。
【0068】
次に感光体901yの表面は中間転写ベルトの906と接する。中間転写ベルト906の感光体901yの反対側には一次転写ローラ905yがあって、この一次転写ローラ905yには、プラス500V〜プラス1200Vの電圧が加えられていて、マイナスに帯電したイエローのトナーを感光体901yから905y側に引き寄せる。それにより、感光体901yの表面にあったイエローのトナーが中間転写ベルト906の表面に転写される。
【0069】
同様にしてマゼンダ、シアン、ブラックのトナーが中間転写ベルト906の表面に転写される。
【0070】
こうして、中間転写ベルト906には、イエローとマゼンダとシアンとブラックのトナーで形成されたフルカラーの画像が形成される。そして、中間転写ベルト906が2次転写内ローラ907と2次転写外ローラ908を通過する。その時に中間転写ベルト906と2次転写外ローラ908の間を用紙13が挟まれて搬送される。2次転写外ローラには、プラス500〜プラス7000Vの電圧が加えられていて、マイナスに帯電したトナーが、用紙13の上表面に転写される。用紙13は用紙カセット910から給紙されて、矢印912−1、912−2、912−3、912−4と搬送される。2次転写ローラ907,908を通過した用紙13−2表面のトナーは未定着トナーで、用紙13−2から容易に剥がれる状態である。この状態の用紙13−2が定着器911に搬送されて高温にされ、トナーが柔らかくなったところで、圧力を加えられることで、用紙13の表面に張り付き定着する。そして、矢印912−5、912−6、912−7、912−8、912−9と搬送されて用紙13−3のように出力され積載される。
【0071】
次に図1の高圧回路構成及び動作について説明する。
【0072】
前述した従来回路動作と同様の動作及び制御をしている部分については説明を割愛する。
【0073】
本実施形態では、高圧トランスT1の駆動素子Q1を駆動するためのパルスを出力切換時に高圧制御部CONTから出力される固定パルスに切換えている。
【0074】
フィードバック制御を安定して維持する構成をとっている以上出力切換時の応答速度には限界があるため、本構成では出力切換時に切換後の出力に必要なパルス幅を外部から一気に与えることで高速応答を実現している。
【0075】
この必要なパルス幅は変化させたい出力目標値により変化するため、予め出力に応じたパルス幅の設定テーブルを持つ構成とし、この情報は制御部CONT内の記憶部MEMに記憶されている。
【0076】
但し、トランスを駆動するためのパルス幅は所望の出力電圧だけではなく、必要とする電流量に応じても変化するため、高圧出力に接続される負荷のインピーダンス変動が少なくないとパルス幅と出力の関係にずれが生じてくる可能性がある。
【0077】
一例として、図4、図5に画像形成装置の転写プロセスに使われるローラーの抵抗値特性を表したグラフを示す。
【0078】
図4によればローラー抵抗値は10000時間経過後に初期値の約37%増しとなり、図5によれば、0℃と40℃の環境でローラー抵抗値は約70%も低下してしまう。
【0079】
本実施形態では、このような装置使用状態に応じた負荷変動に対応すべく、環境情報ENVと耐久情報ENDUから得た情報に基いて行った演算結果に基いてパルス幅設定テーブルを自動的に更新し、その時点で最適なパルスを出力する構成としている。
【0080】
負荷の材料が温度ではなく、例えば湿度により変動する場合には、温度情報ではなく湿度情報を検知すればよい。
【0081】
経時変化も例えば高圧の積算印加時間に特性変化感度が大きく、印加無しの放置状態であまり特性が変化しないような材料の場合には、画像形成時間をタイマーでカウントし、その積算値により演算を行うようにすればよい。
【0082】
図3のフローチャートを用いて一連の流れを説明する。
【0083】
まず出力切換が必要な状態(1-1)になると、制御部CONTは耐久情報データ及び、環境情報データをENV及びENDUより取得する。(1-2〜3)
この情報に基き、演算を行い(1-4)、結果に応じて記憶部MEMに記憶されたテーブルを更新する。(1-5)
更新するテーブルは本実施形態では2種類とし、一つは目標出力を得る為に必要なトランス駆動パルス幅のテーブル(テーブル1)、もう一つは通常制御を実施した場合、現在の出力値から目標とする出力値までに出力が変化して切換え完了するまでの時間を記憶したテーブル(テーブル2)である。
【0084】
次に、更新後のこれらのテーブルにより、切換え時に出力する固定パルスのパターンを設定する。
【0085】
固定パルスでいきなり目標値まで切換えをした場合、急激な出力変動となるため安定動作が得られないような場合も想定され、これを回避するために本実施形態では、パルス幅を目標値の90%に一旦変化させ、その後100%へと段階的に変化させるようにしている。
【0086】
この設定はソフトウエアにより変更可能であり、使用する回路や必要とする応答速度などの条件に合わせて決めればよい。
【0087】
また、テーブル2により予測している通常動作時の切換え時間に達するまでの時間はテーブル1の目標パルスを出し続けるようにしている。
【0088】
このようにして固定パルスパターンを決定(1-6)したら、このパルスを出力し(1-7)、トランス駆動素子Q1の駆動パルスを切換えスイッチSW1により通常パルス発生部PWMから制御部CONTが出力するパルスに切換える。(1-9)
この時同時に高圧制御部AMPへの出力設定値の変更も行う。(1-8)
図2には高圧トランス駆動パルスと出力電圧の関係の一例を示している。
【0089】
通常制御パルスで出力切換えを行った場合には、高圧制御部AMPやパルス幅を決めているPWM部の応答遅れにより二段目のような駆動パルス幅の変化となる。
【0090】
これに対して制御部CONTで設定した固定パルスパターンは一段目のようになっており、三段目にはそれぞれのパルスでトランスT1を駆動した場合の出力の変化の様子を示している。
【0091】
この図では20%のデューティで動作していた状態から50%のデューティへの切換えを行っており、高速制御用の一段目のパルス設定により出力が目標値に到達した後も通常制御時の変化が追いつくと予測する時間までは固定パルスにより制御される。(1-10)
高圧制御部AMPでは出力電圧からのフィードバック値と制御部CONTからの出力設定値との差分がなくなるようにPWM部を制御しており、CONT部から出力されているパルス幅とPWM部からの出力されているパルス幅との大きな差は無い状態となっていて、固定パルスパターン終了後に通常制御に戻った瞬間の出力変動を最低限に抑えられる動作となっている。(1-11〜12)
【実施例2】
【0092】
本発明の第2の実施の形態について、図7〜図8を用いて説明する。
【0093】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る高圧回路及び制御の一例を示す図である。
【0094】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る高圧回路動作を示すフローチャートである。
【0095】
図7において図1と異なる点は、高圧出力の検出を電圧ではなく電流で行っており、制御部CONTによる出力制御は目標電流が流れるように行われている。
【0096】
また、通常パルス生成部PWMから発生するパルス幅を検出するPDETが設けられ、制御部CONTに接続されている。
【0097】
図8を用いて本実施形態の動作の流れを説明する。
【0098】
出力切換え開始状態(2-1)から固定パルスによるトランス駆動素子Q1を駆動し始める(2-9)までの動作は実施形態1と同様なので説明を割愛し、(2-10)以降の説明を行う。
【0099】
制御部CONTからの固定パルス出力により目標とする出力値への切換えが完了した後、通常パルスへの切換えを慎重に行わないと固定パルス幅とPWMの出力パルス幅の差分だけ出力が変動してしまい、画像形成プロセスではこの変動が画像に現れてしまう可能性がある。
【0100】
このような問題を回避すべく、本実施形態においてはPWM部が発生しているパルス幅を検出するPDET部を設け、この値を制御部CONTに返している。
【0101】
CONTはPDETが検出したパルス幅と自分が出力している固定パルス幅との比較を行い、差分が規定値以内であれば、そのまま固定パルス出力を終了し、通常動作に復帰させる。(2-10、11、13)
しかしながら検出したパルス幅が規定値から外れている場合には、そのまま切換えると出力変動が生じると判断し、出力設定値を調整して(2-12)PWMからの出力パルス幅が固定パルス幅に近付くよう動作する。
【0102】
このように動作してPWM部の出力パルス幅と固定パルス幅が規定値内の差分になってから通常動作に復帰するので、パルスの切換え時に大きな出力変動することを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高圧回路及び制御の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る高圧トランス駆動パルスと出力電圧の関係の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る高圧回路動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る転写ローラー抵抗値の経時変化の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る転写ローラー抵抗値の温度特性の一例を示すグラフである。
【図6】一般的な画像形成装置の動作の一例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る高圧回路及び制御の一例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る高圧回路動作を示すフローチャートである。
【図9】従来の実施形態に係る高圧回路及び制御の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス(T1)による電圧変換を行うことにより高電圧を発生する高圧発生回路からの出力を用いて画像を形成する画像形成装置であって、
前記トランス(T1)を駆動するためのトランス駆動手段(Q1)と、
前記トランス駆動手段(Q1)を駆動するためのパルスを発生するパルス発生手段(PWM)と、
高圧出力を検知するための高圧出力検知手段(DET)と、
装置動作状態に応じて高圧出力を制御する高圧制御手段(CONT)と、
前記高圧制御手段(CONT)内に設けられ、各種高圧制御情報が記憶された記憶手段(MEM)と、
前記高圧制御手段(CONT)による出力設定値と、前記高圧出力検知手段(DET)の検知結果に応じて前記パルス発生手段(PWM)の出力を変更する高圧出力制御手段(AMP)と、
前記高圧制御手段(CONT)により出力されるパルスと前記パルス発生手段(PWM)により出力されるパルスの切換えを行うパルス切換手段(SW1)と、
装置の動作環境条件を検知する環境条件検知手段(ENV)と、
装置の耐久度を検知する耐久度検知手段(ENDU)と
を備え、
前記記憶手段(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて変更可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記憶手段(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて自動更新され、
前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力設定変更時に前記記憶手段(MEM)内に記憶された設定変更後の出力に必要な固定パルスを自動更新されたパルス幅情報に基いて出力し、
前記パルス切換手段(SW1)を前記高圧制御手段(CONT)側に切換えることで前記トランス駆動手段(Q1)を固定パルスで駆動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記高圧出力検知手段(DET)は出力電流を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記高圧出力検知手段(DET)は出力電圧を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境湿度を検知することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度と湿度の両方を検知し、前記耐久度検知手段(ENDU)によって検知された装置の耐久度合いとの状態に応じて前記固定パルス出力手段のパルス幅設定テーブル情報を更新することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記耐久度検知手段(ENDU)は装置設置からの経過時間を検知することを特徴とした、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記耐久度検知手段(ENDU)は装置の画像形成時間の合計を検知することを特徴とした、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記高圧制御手段(CONT)から出力される固定パルスは特定パターンであることを特徴とした請求項1〜請求項9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
固定パルスの特定パターンは複数段階を経て目標値に到達することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
トランス(T1)による電圧変換を行うことにより高電圧を発生する高圧発生回路からの出力を用いて画像を形成する画像形成装置であって、
前記トランス(T1)を駆動するためのトランス駆動手段(Q1)と、
前記トランス駆動手段(Q1)を駆動するためのパルスを発生するパルス発生手段(PWM)と、
高圧出力を検知するための高圧出力検知手段(DET)と、
装置動作状態に応じて高圧出力を制御する高圧制御手段(CONT)と、
前記高圧制御手段(CONT)内に設けられ、各種高圧制御情報が記憶された記憶手段(MEM)と、
前記高圧制御手段(CONT)による出力設定値と、前記高圧出力検知手段(DET)の検知結果に応じて前記パルス発生手段(PWM)の出力を変更する高圧出力制御手段(AMP)と、
前記高圧制御手段(CONT)により出力されるパルスと前記パルス発生手段(PWM)により出力されるパルスの切換えを行うパルス切換手段(SW1)と、
前記パルス発生手段(PWM)が出力するパルス幅を検知するパルス幅検知手段(P_DET)と、
装置の動作環境条件を検知する環境条件検知手段(ENV)と、
装置の耐久度を検知する耐久度検知手段(ENDU)と、
を備え、
前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力設定変更時に前記記憶手段(MEM)内に記憶された設定変更後の出力に必要な固定パルス幅を出力し、
前記メモリ(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて変更可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力設定変更時に前記記憶手段(MEM)内に記憶された設定変更後の出力に必要な固定パルス幅を出力し、
前記メモリ(MEM)に記憶されたパルス幅情報は、前記環境条件検知手段(ENV)と前記耐久度検知手段(ENDU)の検知結果に基いて自動更新し、
前記高圧制御手段(CONT)は、高圧出力切換時の固定パルスによる制御中、前記高圧出力検知手段(DET)の検知結果と出力設定値の関係から、前記パルス幅検知手段(P_DET)によって検知されたパルス幅が現在出力中の固定パルス幅と所定の誤差内に入ると前記パルス切換手段(SW1)が前記トランス駆動手段(Q1)の駆動パルスを前記パルス発生手段(PWM)側に切り替えることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記高圧出力検知手段(PWM)は出力電流を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記高圧出力検知手段(DET)は高圧出力電圧を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境湿度を検知することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記環境条件検知手段(ENV)は装置の環境温度と湿度の両方を検知し、前記耐久度検知手段(ENDU)によって検知された装置の耐久度合いとの状態に応じて前記パルス発生手段(PWM)のパルス幅設定テーブル情報を更新することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記耐久度検知手段(ENDU)は装置設置からの経過時間を検知することを特徴とする請求項12〜請求項18のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記耐久度検知手段(ENDU)は装置の画像形成時間の合計を検知することを特徴とする請求項12〜請求項18のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記高圧制御手段(CONT)から出力される固定パルスは特定パターンであることを特徴とする請求項12〜請求項20のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項22】
出力パルスの特定パターンは複数段階を経て目標値に到達することを特徴とする請求項21の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−134096(P2010−134096A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308551(P2008−308551)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】