説明

画像記録装置

【課題】ノズルに対する回復動作が必要な場合に、記録動作に先立つ動作を検出して、記録動作の前に速やかに回復動作を実行し、記録が完了するまでのユーザの待ち時間の短縮を図る。
【解決手段】動作の状況を表示する表示手段に生じた変化を検出したとき、ノズルの吐出状態の回復動作が前回実行されてからの経過時間が所定時間を超えているかどうか判断し、超えている場合には、制御手段で直ちに記録ヘッドの回復動作を実行するように制御する。これにより、被記録媒体に対する記録動作が指令される前に回復手段を実行し、記録が終了するまでの時間を短縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に対してノズルからインクを吐出する記録手段を備えた画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを吐出して記録を行うインクジェット式のプリンタ装置あるいはそれにコピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能等が組み合わせた多機能型の画像記録装置では、従来から、ノズルの吐出状態を良好にするための回復手段を備えたものがある。
【0003】
回復手段は、ポンプ等を備えて、記録ヘッド内のインクを強制的に外部に排出して増粘インクや乾燥インク、気泡等を除去したり、ワイパーを備えて、記録ヘッドのノズル面に付着したインクを払拭する。また、記録動作とは無関係に記録ヘッドを駆動してその内のインクを強制的に外部に吐出して、インクの吐出状態を良好に保つようにしている。一般的には、前回回復動作を行ってからの経過時間を計測しておいて、記録動作を行うときに、所定の経過時間を越えていれば、自動的に回復動作を行うようにしている。もちろん、ユーザが回復動作を必要とする場合には、経過時間に拘わらず、ボタン操作等で回復動作を指令して行うこともできる。
【0004】
しかしながら、このような装置では、ユーザが被記録媒体に対して画像を記録しようとして記録動作を指令したとき、前回回復動作をしてからすでに所定の時間が経過していると、その記録動作に先立って、まず回復動作を実行してしまう。そのため、記録動作が完了するまでの待ち時間が増大して、ユーザが不便を感じることが多かった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1では、原稿を読み取って被記録媒体に記録する画像形成装置(コピー機、またはコピー機能を有する多機能装置)においてユーザが原稿の読み取りに先立って行う動作を、記録動作を指令する前の動作と判断し、記録動作を開始する前に、回復動作を必要に応じて行うように構成している。
【0006】
詳細には、原稿を載置する原稿台のカバーを開けたり、被記録媒体の大きさや記録枚数の設定を行ったり、自動給紙装置(ADF)に原稿をセットしたりしたことをきっかけとして、回復動作を行うようにしている。これにより、記録動作が指令(コピーボタンを押す)されてから回復動作を実行するよりも、原稿の読み取りから記録動作が完了するまでの時間の短縮を図っている。
【特許文献1】特開2005−238710号公報(図4及び図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前述したように、近年では、コピー機能だけでなく、ファックシミリ機能、スキャナ機能、プリンタ機能等の多様な機能を組み合わせて、これらを複合的に備える多機能装置が汎用化しつつある。特許文献1のような多機能装置では、コピー機能以外においては記録動作の前に回復動作を行うことができない。
【0008】
本発明は、ノズルに対する回復動作が必要な場合に、記録動作に先立つ動作を検出して、記録動作の前に速やかに回復動作を実行し、記録が完了するまでのユーザの待ち時間の短縮を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における画像記録装置は、記録指令に基づいて、被記録媒体に対してノズルからインクを吐出して画像を記録する記録手段と、前記記録手段による記録動作を含む複数の動作のうち所望の動作を選択するための操作手段と、動作の状況を表示する表示手段とを備える画像記録装置において、前記ノズルの吐出状態の回復動作を行う回復手段と、前記回復手段が前回実行されてからの経過時間を計測する計時手段と、前記表示手段に生じた変化を検出する検出手段と、前記検出手段で前記変化が検出され、且つ前記計時手段で計測した経過時間が所定時間を超えているときには、直ちに前記回復手段の回復動作を実行するように制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記検出手段は、前記表示手段の表示内容の変化を検出することを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像記録装置において、ファクシミリデータを送受信する通信手段が備えられ、ファクシミリデータが受信されると、前記表示手段では、前記ファクシミリデータを受信したことを表示、または、受信したファクシミリデータを表示するために、表示内容を変化させることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の画像記録装置において、画像データなどを記憶した記憶媒体を装着可能な外部入力端子が備えられ、前記記憶媒体が前記外部入力端子に装着されると、前記表示手段では、前記記憶媒体が装着されたことを表示、または、前記記憶媒体に記憶されている画像データを表示するために、表示内容を変化させることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記表示手段には、動作の状況を表示するパネル部が角度調節可能に設けられ、前記検出手段は、前記パネル部が角度調節されたことを検出することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置において、前記回復手段は、前記計時手段で計測された経過時間の長さに応じて、前記回復動作の度合いを変えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、検出手段で表示手段に生じた変化を検出したとき、計時手段で計測した経過時間が所定時間を超えている場合には、制御手段が直ちに回復手段の回復動作を実行するように制御する。すなわち、表示手段に生じた変化を、記録動作が指令される前兆として検出し、そのとき回復動作が必要な場合には、記録動作が指令される前に直ちに回復動作を実行する。これにより、記録動作が指令されてから、回復動作を行う場合に比べて、記録が完了するまでのユーザの待ち時間を短縮でき、ユーザの不便を解消できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、表示手段の表示内容の変化を、記録動作が指令される前兆として検出するから、記録動作が指令される前に速やかに回復動作を実行することが可能となり、記録が完了するまでのユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、通信手段でファクシミリデータを受信すると、一旦、表示手段で、ファクシミリデータを受信したことを表示、もしくはファクシミリ機能の設定によっては、受信したファクシミリデータの内容を表示する。すなわち、ファクシミリデータを受信すると、直ちに記録手段で被記録媒体に記録するのではなく、その前に、表示手段の表示内容が、それまでの表示内容から前述した表示内容に自動的に変化する。
【0018】
ファクシミリデータを受信した後、もしくは、ユーザが表示手段の表示内容を確認したときには、記録動作が実行される可能性が大きい。したがって、その前の、表示手段の表示内容が変化した段階で、回復動作を実行すると、記録が完了するまでの、ユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、外部入力端子に記憶媒体が装着されると、一旦、表示手段では、記憶媒体が装着されたことを表示、または、記憶媒体に記録されている画像データを表示する。すなわち、外部入力端子に記憶媒体を装着すると、表示手段の表示内容は変化する。
【0020】
通常、記憶媒体の画像データ等を、被記録媒体に記録させたいときに、ユーザは外部入力端子に記憶媒体を装着し、ひきつづきその画像データを記録するために記録動作の指令を行う。したがって、その前の、表示手段の表示内容が変化した段階で、回復動作を実行すると、記録が完了するまでの、ユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、表示手段のパネル部が角度調節されたことを、記録動作が指令される前兆として検出している。パネル部の角度調節がなされたということは、ユーザがパネル部を見易いように調節し、パネル部の表示内容を見て記録動作等の次の動作を実行しようとしていると判断できる。従って、パネル部が角度調節されたことを検出し、回復動作が必要な場合には、記録動作が指令される前に直ちに回復動作を実行するから、記録が完了するまでの、ユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、計時手段で計測された経過時間の長さに応じて、回復動作の度合いを変える。これにより、経過時間が短い場合に、回復動作で必要以上にインクを消費することがなく、また経過時間が長い場合には、十分に記録ヘッドの回復を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を具体化した最良の実施形態について説明する。本実施形態は、画像記録装置の一実施形態として、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置1(MFD:Multi Function Device)に本発明を適用したものである。
【0024】
多機能装置1は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ71や電話通信網に接続可能であり、記憶媒体72が着脱可能に接続される(図6参照)。そして、この多機能装置1は、コンピュータ71や、他のファクシミリ装置、装着される記憶媒体72などから受信した画像データ(写真データや文書データ等も含む)に基づいて、被記録媒体としての用紙に画像(写真や文書)を記録することができる。
【0025】
本実施形態では、図1に示すように、装置本体である本体ケース(ハウジング)2の下部に記録部(請求項の記録手段に相当)7が備えられている。そして、本体ケース2の底部の収納空間に対して、本体ケース2の前側に開口された挿入口2aから挿抜可能(実質上水平方向に出し入れ可能)な給紙カセット装置3が配置されている。以下、本体ケース2の挿入口2aがある側を前といい、これを基準に装置の後(奥)、左右、という。
【0026】
本体ケース2の前面部にはスロット部(請求項の外部入力端子に相当)11が備えられ、このスロット部11に画像データや画像記録を制御する制御データ等が記録された各種記憶媒体72(図6参照)が装着できるようになっている。
【0027】
装着可能な記憶媒体としては、半導体メモリ等で構成されるカード状のものが各種市販されているが、これらの各種サイズのものに対し図1に図示している3つの異なるサイズのスロット部11で対応できるようになっている。スロット部11への記憶媒体72の装着の有無は、後述する図6のCPU304等を含む制御部300(請求項の制御手段及び検知手段に相当)で検出できるようになっている。
【0028】
本体ケース2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読み取りなどのための画像読取装置(スキャナ部)12が画像読取部ケース12a内に配置されている。
【0029】
本体ケース2の上側には、画像読取装置12の前方に、各種操作や表示を行う操作部14が設けられており、画像読取装置12と操作部14との平面視投影面積内に、記録部7、排紙トレイ部10などが配置される。
【0030】
この排紙トレイ部10の一側(図1及び図3で右側)であって、本体ケース2の前部側に、インクカートリッジ19(ここでは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色、個別に19a〜19dと付す)の収納部15が内蔵されている。各インクカートリッジ19a〜19dのインクは、可撓性を有するインク供給管(チューブ)20を介して、それぞれ独立して記録ヘッド4に供給される。
【0031】
画像読取装置12の上面には、原稿を載置することができる載置用ガラス板16が設けられ、その下側に原稿読み取り用のイメージスキャナ装置17が、図2の紙面と直交する方向(キャリッジ5の主走査方向、Y軸方向)に往復移動可能に設けられている。載置用ガラス板16を覆う原稿カバー体13は、その後端部(図2で右側)が蝶番13aを介して、画像読取部ケース12aに対して開閉自在に取り付けられている。
【0032】
記録部7は、図2に示すように、上面開放された枠状のメインフレーム21に各種機能部品を支持して構成されている。メインフレーム21は、左右一対の側板21a、21bと、その側板にて支持され、Y軸方向(主走査方向)に延びる横長の板状(プレート状)の第1ガイド部材22、第2ガイド部材23とから構成される。そして、キャリッジ5が、これら両ガイド部材22、23に跨って摺動自在に支持され、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド4の下面側に対向して、用紙を支持するプラテン26が配置されている。
【0033】
キャリッジ5は、第2ガイド部材23の上面にて、プーリ29、30に巻回配置されたタイミングベルト25に連結され、プーリ29をCR(キャリッジ)モータ24で駆動することで往復移動される。
【0034】
プラテン26よりも搬送方向上流側には、搬送作用とレジスト作用とを兼用するレジストローラ対27が配置されている。レジストローラ対27は駆動用のレジストローラ27aと従動ローラ27bとからなり、用紙を記録ヘッド4の下面のノズル面とプラテン26との隙間に搬送する。プラテン26よりも下流側には排紙ローラ対28が配置され、排紙ローラ対28は、用紙の上面に接する拍車28bと下面に接する駆動用の排紙ローラ28aとからなり、記録済みの用紙を排紙トレイ部10へ搬送する。
【0035】
給紙カセット装置3の奥側(後端側、図2において右側)には、用紙分離用の弾性分離パッド8aを有する傾斜板8が配置されている。本体ケース2側において給紙アーム6aの下端に設けられた給紙ローラ6bが、駆動軸34側から歯車伝動機構6cを介して回転されることにより、給紙カセット装置3に堆積された用紙が一枚ずつ搬送される。
【0036】
搬送された用紙は、側面視で横向きU字状の外側搬送路体35と内側搬送路体36との間に構成された上横向きのUターンパス(給紙搬送路)9を介して、レジストローラ対27に給送される。記録部7にて記録された用紙は、その記録面を上向きにして排紙トレイ部10上に排出される。排紙トレイ部10は、給紙カセット装置3の上側に形成されており、排紙トレイ部10に連通する排紙口10a(挿入口2aの上方部分、図1参照)が本体ケース2の前面に向かって開口されている。
【0037】
給紙搬送路(Uターンパス)9の下流側には、検知レバー55がその給紙搬送路9を横切りかつ回動可能に設けられており、給紙搬送路(Uターンパス)9を通過する用紙の先端縁及び後端縁の通過を検知できるようにしている(図2参照)。
【0038】
搬送される用紙の幅より外側には、その一端側(実施形態では図3で左側の側板21aに近い部位)にインク受け部48が、また、他端側(図3で右側の側板21bに近い部位)にはメンテナンスユニット50がそれぞれ配置されている。
【0039】
インク受け部48は、キャリッジ5のフラッシング位置に対応して設けられており、記録ヘッド4はフラッシング位置にて記録動作中に定期的にノズルの目詰まり防止のためのインク吐出(フラッシング)を行い、インク受け部48にてインクを受ける。
【0040】
メンテナンスユニット50は、キャリッジ5の待機位置(ホームポジション)に対応して設けられており、記録ヘッド4に対する吸引回復動作(パージング)を行う。メンテナンスユニット50には、本体フレーム2に静置されたポンプ52と接続されたキャップ体53と、ノズル面を払拭するワイパー54が設けられている(図4参照)。
【0041】
回復動作は、複数の動作が単独にあるいは組み合わされて行われる。まず、キャップ体53で、記録ヘッド4のノズル面を覆い、記録ヘッド4のノズルから乾燥(増粘)インクとともにインク中の気泡も吸引する。そして、キャップ体53をノズル面から離隔して、キャリッジ5をメンテナンスユニット50部分から画像記録領域方向に移動させるときに、ワイパー54によって記録ヘッド4のノズル面のクリーニングを行う。また、キャリッジ5をフラッシング位置に移動させ、記録ヘッド4を記録動作とは無関係に駆動してインク受け部48に向けインク吐出を行うのも、回復動作の1つである。
【0042】
回復動作は、後述するように、前回の回復動作が行われてからの経過時間等の条件に応じて、その度合いを変えるように設定されている。ここでは、キャップ体53で記録ヘッドを覆ってポンプ52で吸引しキャップを離す動作を一連の回復動作と規定し、この一連の回復動作の繰り返し回数、換言すれば、ポンプ52で何回吸引するかを変えることで、回復操作の度合いを変えるようにしている。また、ポンプ52の吸引時間の長さを制御することで、回復操作の度合いを変えることもできる。
【0043】
メンテナンスユニット50のポンプ52の回転駆動や、キャップ体53及びワイパー54のノズル面に対する接離動作は、LF(用紙搬送)モータ73(図3及び図6参照)が駆動源である。このLFモータ73の回転方向の切り替えによって、メンテナンスユニット50の他に、給紙手段6の給紙ローラ6b、レジストローラ27a、及び排紙ローラ28aも駆動できるように構成されている。
【0044】
操作部14について説明する。操作部14は、本体ケース2の上部前側に多機能装置1の左右の幅と略同じ幅に設けられ、全体として、ユーザが使用し易いように、前側が下がる傾斜状に配置されている。この操作部14の中央部には、液晶画面の表示パネル部(請求項の表示手段に相当)40が配置されている。この表示パネル部40は、その前端側に設けられた蝶番を介して後端側が上下回動でき、表示パネル部40の角度をユーザが見易いように調節できるようになっている。表示パネル部40の角度が調節されると、内蔵されているパネル部変位センサ108(図6参照、請求項の検出手段に相当)で検知される。パネル部変位センサ108は接触式(圧力式)のセンサが好適であるが、光学式センサ等の他の方式を採用してもよい。
【0045】
操作部14の表示パネル部40を挟む両側には、多機能装置1に備えられている各種の機能(動作)等を選択したり設定したりする設定部41として、複数のボタン、テンキー等が配置されている。ボタンとしては、「ファックス」「スキャン」「コピー」「デジカメプリント」と明示されたファンクションキーが配置されている。このファンクションキーを押すことで、ファクシミリ機能、スキャン機能、コピー機能、装着された記憶媒体の画像データをプリントする機能のいずれかを、選択して実行できるようになっている。この他に、記録ヘッドの回復動作を指令するボタンも用意されている。また、設定部41に設けられているボタンには、画像スクロールボタンおよび選択用ボタンも含まれ、表示パネル部40の画面に表示されている項目を選択したり、設定したりして、動作を指令することもできる。
【0046】
表示パネル部40には、多機能装置1の動作の状況が表示される。この表示パネル部40の表示は、設定部41の各種ボタンが操作されて動作が指令されると動作に応じた内容に変化するが、後述するように、ユーザがボタン操作を行わなくても、画面が変化する場合がある。例えば、この多機能装置1はファクシミリ機能を備えているため、電源は常にONされており、表示パネル部40は、ファクシミリデータ(画像データ)の受信によってその画面を変化させることができる。
【0047】
つまり、ファクシミリデータを受信したときに、直ちに記録部7で用紙に記録するのではなく、表示パネル部40にファクシミリデータを受信したことを表示する。この表示は、文字または模式的な図形で表示することもあれば、表示パネル部40の画面の色が変化(背景色の変化や、点滅等)することで表示することもある。その後、ユーザがボタン操作することによって、受信したファクシミリデータの内容を画像としてモニター表示するとともに、ユーザに対して、用紙に記録するか否かの選択を促す表示を行う。これにより、ユーザはファクシミリデータの内容を確認してから、記録の必要のある場合のみ用紙に記録させることができるので、用紙の無駄使いを無くすことができる。
【0048】
なお、受信したファクシミリデータの内容を画像でモニター表示することは、あらかじめユーザがファクシミリ機能の中でON設定して行うものであり、ユーザの希望で設定しない場合もある。その場合には、ファクシミリデータの受信が全て完了した後に、引き続き必ず記録動作が行われるが、少なくとも、ファクシミリデータを受信した時点で(記録動作を行う前に)受信を通知するべく、表示パネル部40の表示内容は変化する。
【0049】
また、表示パネル部40の表示内容の変化としては、スロット部11に記憶媒体72(図6参照)が挿入されたときにも、その装着がされたことが表示パネル部40に表われる。このとき、記憶媒体72に記憶されている画像データは、コンピュータ71を介在させずに直ちに表示パネル部40に縮小(モニター)表示されるか、ユーザがボタン操作することでその縮小表示がされる。そして画像とともに、画像データを用紙に記録するか否かの選択を促す表示が行われる。なお、画像データとして写真データが多数記憶されている場合には画像の一覧が表示され、多数の中から所望の画像データを選択用ボタン等で選択した後、「デジカメプリント」のボタンを押下することで、用紙に記録させることもできる。
【0050】
次に、図6を参照して、この画像記録装置1の制御部300について説明する。この制御部300は、画像記録装置1の全体的な動作を制御するものである。
【0051】
この制御部300(請求項の制御手段、検出手段に相当)は、CPU304、ROM301、RAM302、EEPROM303からなるマイクロコンピュータ及び、それらにバス305を介して接続されたASIC(Application Specific Integrated Circuit )306を中心として構成されている。ASIC306またはマイクロコンピュータ内には、前述したメンテナンスユニット50による回復動作を前回実行してからの時間Tを計測するタイマ74(請求項の計時手段に相当)が内蔵されている。
【0052】
ROM301には、多機能装置1の各種動作を制御するプログラム等が格納されており、RAM302は、CPU304がこれらのプログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域として、また作業領域として用いられる。
【0053】
ASIC306にはNCU(Network control Unit)317が接続されており、公衆回線(PSTN)からNCU317を介して入力された通信信号はモデム318によって復調されてからASIC306に入力される。また、ASIC306がファクシミリ送信等で画像データを外部へ送信する場合には、その画像データがモデム318によって通信信号に変調され、その通信信号がNCU317を介して公衆回線に出力される。
【0054】
また、ASIC306は、マイクロコンピュータからの指令に従い、例えば各モータに通電する相励磁信号等を生成して、これらの信号をLFモータ73の駆動回路311やCRモータ24の駆動回路312に与え、LFモータ73やCRモータ24の制御を行っている。
【0055】
更に、ASIC306には、原稿を読み取るためのイメージスキャナ装置17、各種操作のための表示パネル40や設定部41を備えたパネルインターフェース313、パーソナルコンピュータ71などの外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインターフェース315やUSBインターフェース316、記憶媒体72が装着される外部入力端子であるスロット部11を備えたメモリインターフェース319などが接続されている。
【0056】
更に、ASIC306には、給紙搬送路9の搬送下流側に設けられた検知レバー55(図2参照)に関連させて設けられた用紙センサ104、レジストローラ27の回転量を検出するためのロータリエンコーダ105、キャリッジ5の移動量を検出するためのリニアエンコーダ106、インクカートリッジ19が交換されたことを検出するインクカートリッジセンサ107、表示パネル部40が角度調節されたことを検出するパネル部変位センサ108等が接続されている(図6参照)。
【0057】
駆動回路314は、記録ヘッド4から所定のタイミングでインクを用紙に対して選択的に吐出させるためのものであり、マイクロコンピュータから出力される駆動制御手順に基づきASIC306において生成され出力された信号を受けて、記録ヘッド4を駆動制御する。
【0058】
次に、ROM301に記憶されている、回復動作の内容について説明する。ROM301には、図7に示すテーブルが記憶されている。なお、テーブルに示す具体的な数値は一例であって、記録ヘッド4やメンテナンスユニット50の構成や、ポンプの能力等に応じて適宜変更できる。
【0059】
Tは、タイマ74で計測している、前回の回復動作が実行されてからの時間(カウント値)である。テーブルに示す「パージング回数」は、記録ヘッド1をキャップ体で覆ってポンプで吸引する一連の回復動作の、繰り返し回数を示すものである。
【0060】
本実施の形態では、前回回復動作が実行されてからの時間Tが、5日を越えて10日以下である場合のパージング回数は1回に、時間Tが10日を越えて15日以下である場合のパージング回数は2回に、時間Tが15日を越えた場合のパージング回数は3回にそれぞれ設定されている。また、ユーザが指定して行う回復動作(通常パージングと記載)では、パージング回数は1回に設定されている。なお、ポンプで吸引する回復動作に代えてあるいはそれに続いて記録ヘッドからインクを記録動作に無関係に吐出させるフラッシングをさせるようにしてもよい。
【0061】
次に、多機能装置1の回復動作に関連する制御について図8及び図9のフローチャートを用いて説明する。
【0062】
多機能装置1がいずれの動作も実行していない待機状態にあるときに、表示パネル部40の表示内容または角度に変化が生じたことをマイクロコンピュータのプログラムにもとづいて検出すると(S101でYes)、これを、記録部7で記録動作が実行されるのに先立つ変化(前兆)であると判断して、サブルーチンである回復処理(S102)に移行する。回復処理(図9参照)の詳細は後述するが、記録ヘッド4に対する回復動作が必要であるか否かを判断して、回復動作を開始させた後もしくは開始させることなく、図8に示すメインルーチンに戻る。
【0063】
表示パネル部40は、多機能装置1がいずれかの動作を実行している場合には、その動作の状況が表示される。さらに、前述したように、表示パネル部40は、ファクシミリデータを受信するか、あるいは受信したファクシミリデータをモニター表示させるべくユーザがボタン操作することによって、マイクロコンピュータのプログラムにもとづき表示を変化する。また、表示パネル部40は、スロット部11へ記憶媒体72を挿入するか、記憶媒体72内の画像データをモニター表示させるべくユーザがボタン操作することによってマイクロコンピュータのプログラムにもとづき変化し、また、ユーザが設定部41に対して何らかの操作を行っても変化する。
【0064】
ファクシミリデータ(画像データ)を受信したことを表示パネル部41に表示したとき、あるいはユーザがその内容を表示パネル部41にモニター表示したときは、多くの場合、その後、記録指令を与える。また、スロット部11に記憶媒体72が挿入されたとき、あるいはユーザがその内容を表示パネル部41にモニター表示したときは、多くの場合、その後、記録指令を与える。
【0065】
従って、ファクシミリデータ(画像データ)の受信、スロット部11への記憶媒体72の挿入、あるいはそれらの内容をモニター表示させるべく設定部41の操作によって生じた表示パネル部40の表示内容の変化を、記録動作に先立つ変化の一つとして判断に用いることができるのである。
【0066】
また、表示パネル部40の角度は、表示パネル部40を見易くするためにユーザによって調節されるものであるから、表示パネル部40の角度が調節されると、ユーザが表示パネル部40の表示を見ながら次に何らかの動作を指令するものと考えられ、これも記録動作に先立つ変化の一つとして判断に用いることができる。
【0067】
表示パネル部40の表示内容または角度に変化が生じない場合(S101でNo)であっても、もちろん、ユーザによって回復動作が指令された(回復動作のための専用のボタン等をユーザが操作した)場合(S103でYes)には、サブルーチンの回復処理(S104)に移行する。また、ユーザによって回復動作が指令されていない場合(S103でNo)であっても、ユーザによって、あるいはパーソナルコンピュータ71などの外部装置から記録動作が指令された場合(S105でYes)には、サブルーチンの回復処理に移行(S106)し、回復動作が開始された後、もしくは開始することなく、記録動作が行われる(S107)。
【0068】
上記サブルーチンの回復処理のうちS102とS106では、図9に示すように、まず、タイマ74で計測している前回回復動作が実行されてからの時間(カウント値)Tを検出する(S201)。カウント値Tが5日を越えているか否かが判定され(S212)、5日を越えていない場合(S212でNo)には、回復動作の実行が不要であると判断されて、この回復処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0069】
カウント値Tが5日を越え10日以下である場合は(S212でYes、且つS213でNo)、図7に示すテーブルからパージング回数1回を読み出して、一連の回復動作を1回実行する(S214)。カウント値Tが10日を越え15日以下である場合は(S213でYes,且つS215でNo)、テーブルからパージング回数2回を読み出して、一連の回復動作を2回実行する(S216)。カウント値Tが15日を越えている場合は(S216でNo)、テーブルからパージング回数3回を読み出して、一連の回復動作を3回実行する(S217)。
【0070】
回復動作が完了すると(S214、S216、S217)、タイマ74のカウント値Tがリセットされ(S210)、再びタイマ74のカウントがスタートし(S211)、図8のメインルーチンに戻る。
【0071】
また、上記サブルーチンの回復処理のうちS104は、ユーザによって強制的に行われる処理であるため、図9のようにカウント値Tによって制御を変えることなく、回復動作を1回だけ行う。その後、タイマ74のカウント値Tをリセットして再びタイマ74のカウントをスタートし、図8のメインルーチンに戻る。
【0072】
このように、多機能装置1では記録動作が指令される前に、上述のように、ファクシミリデータの受信、スロット部11への記憶媒体72の挿入などによって生じた表示パネル部40の表示内容または角度に変化が生じる(S101)と、記録動作が指令される前兆と考える。そして、直ちに、多機能装置1が回復動作を必要とする状態かどうか(前回の回復動作から所定時間経過しているかどうか)を判定して、必要であれば回復動作を開始するようにしている。その後、ファクシミリデータ、または記憶媒体72の画像データの記録動作を指令(S105)すると、すでに回復動作を完了しているか、実行中であるので、従来のように記録動作を指令してから回復動作をする場合に比べて、記録を終了するまでの時間を短縮でき、ユーザの不便を解消できる。
【0073】
また、回復動作の度合いを、前回の回復動作からの経過時間の長さに応じて変えているから、回復動作で必要以上にインクを消費することなく、確実に記録ヘッドの状態を良好に回復させることができる。
【0074】
なお、図8に示す、表示パネル部40に変化があった場合にパージ処理に移行させる(S101)制御は、その制御を行うように設定するか否かをON/OFF可能に構成してもよい。
【0075】
また、表示パネル部40において、多機能装置が長時間動作していない待機状態にあるとき、消費電力を節約するために、表示内容を変えずに輝度を落として表示するようにしても差し支えない。この場合の輝度低下は、図8のS101の「変化あり」とみなさない。図8のS101の「変化あり」は、次に記録動作を行う可能性がある積極的な変化である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明を適用した多機能装置の斜視図である。
【図2】多機能装置の側断面図である。
【図3】記録部の構成を説明する模式的な平面図である。
【図4】記録部を背面側から見た状態の斜視図である。
【図5】パネル部の角度を調節した状態の多機能装置の斜視図である。
【図6】制御系を示すブロック図である。
【図7】ROMに記憶されているテーブルを示す説明図である。
【図8】多機能装置の回復動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図9】回復処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1 多機能装置
4 記録ヘッド
5 キャリッジ
7 記録部
11 スロット部
12 画像読取装置
14 操作部
17 イメージスキャナ装置
40 表示パネル部
41 設定部
50 メンテナンスユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録指令に基づいて、被記録媒体に対してノズルからインクを吐出して画像を記録する記録手段と、前記記録手段による記録動作を含む複数の動作のうち所望の動作を選択するための操作手段と、動作の状況を表示する表示手段とを備える画像記録装置において、
前記ノズルの吐出状態の回復動作を行う回復手段と、
前記回復手段が前回実行されてからの経過時間を計測する計時手段と、
前記表示手段に生じた変化を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記変化が検出され、且つ前記計時手段で計測した経過時間が所定時間を超えているときには、直ちに前記回復手段の回復動作を実行するように制御する制御手段とを備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記表示手段の表示内容の変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
ファクシミリデータを送受信する通信手段が備えられ、
ファクシミリデータが受信されると、前記表示手段では、前記ファクシミリデータを受信したことを表示、または、受信したファクシミリデータを表示するために、表示内容を変化させることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
画像データなどを記憶した記憶媒体を装着可能な外部入力端子が備えられ、
前記記憶媒体が前記外部入力端子に装着されると、前記表示手段では、前記記憶媒体が装着されたことを表示、または、前記記憶媒体に記憶されている画像データを表示するために、表示内容を変化させることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記表示手段には、動作の状況を表示するパネル部が角度調節可能に設けられ、
前記検出手段は、前記パネル部が角度調節されたことを検出することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記回復手段は、前記計時手段で計測された経過時間の長さに応じて、前記回復動作の度合いを変えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−105209(P2008−105209A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288513(P2006−288513)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】