説明

画素観察システム、描画システム、液状体の描画方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法

【課題】液状体の吐出不具合に起因する不良画素を早期に発見することができる画素観察システム、描画システム、液状体の描画方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】描画システム1は、液状体を液滴として吐出描画する液滴吐出装置10と、液状体が吐出描画された画素領域を観察する観察部3を有する画素観察システム2と、液滴吐出装置10と画素観察システム2とを統括的に制御する統括制御部としての上位コンピュータ11とを備えた。上位コンピュータ11は、記憶部14に格納されたノズル情報と基板に対するノズルの配置情報とに基づいて、少なくとも1回の基板と複数のノズルとの相対移動において複数のノズルが掛かる画素領域の座標を観察座標として生成し、観察部3のカメラ15を用いて、当該観察座標に位置する画素領域を観察・撮像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出法により形成された画素を観察する画素観察システム、液滴吐出法を用いた描画システム、液状体の描画方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出法に関する画素観察システムとしては、液滴吐出ヘッドのノズルから吐出された液滴が被検査物に着弾して得られたドットの位置ずれを、簡単かつ迅速に検出することができるドットずれ検出方法およびドットずれ検出装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、液滴吐出法を用いた描画システムとしては、記録媒体に格納されたデータに基づき、機能液滴吐出ヘッドをワークに対して相対的に移動させながら当該機能液滴吐出ヘッドに列設された複数のノズルから機能液滴を選択的に吐出させることにより、ワーク上の1以上のチップ形成領域に描画を行う描画システムが知られている(特許文献2)。
【0004】
上記描画システムでは、記録媒体に格納された各ノズルの吐出パターンデータに基づき、ワークに対して機能液滴を吐出描画する。
【0005】
上記吐出パターンデータは、少なくともワーク上のチップ形成領域の配置に関するチップ情報と、チップ形成領域における画素の配列に関する画素情報と、ワークに対する各ノズルの配置に関するノズル情報と、に基づいて生成される。
【0006】
【特許文献1】特開2006−130383号公報
【特許文献2】特開2003−275650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液滴吐出法を用いてワーク上にカラーフィルタなどの画素構成要素を形成する場合、ノズルから安定的に液滴を吐出する必要がある。しかしながら、ノズルの目詰まりや吐出された液滴の着弾位置がずれる飛行曲がりなどの不具合が発生することがあり、常に安定的に吐出を行うことは難しい。上記特許文献1では、ドットずれ検出装置を液滴吐出装置に装備することが製品の歩留まり向上に寄与するとしている。しかしながら、実際に上記特許文献2のような描画システムに導入するにあたって効果的な導入の仕方については提案がなされていなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、液状体の吐出不具合に起因する不良画素を早期に発見することができる画素観察システム、描画システム、液状体の描画方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画素観察システムは、基板と複数のノズルとの相対移動に同期して、基板上の複数の画素領域に複数のノズルから機能性材料を含む液状体を吐出して形成された画素を観察する画素観察システムであって、複数のノズルにおける液状体の吐出状態を示すノズル情報と相対移動において画素領域ごとに掛かるノズルの配置情報とが少なくとも格納される記憶部と、ノズル情報と配置情報とに基づいて基板上の観察座標を生成する座標生成部と、座標生成部が生成した観察座標に位置する画素領域を観察する観察部とを備え、座標生成部が少なくとも1回の相対移動における複数のノズルが掛かる画素領域の座標を観察座標として生成することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、座標生成部が少なくとも1回の相対移動における複数のノズルが掛かる画素領域の座標を観察座標として生成する。したがって、すべての画素領域を観察しなくても当該観察座標に位置する画素領域を観察すれば、吐出不具合が生ずる不良ノズルによって形成された不良画素を早期に発見することができる。すなわち、効率的な画素の観察ができる。
【0011】
上記ノズル情報が吐出不具合を生ずる不良ノズルの情報を含む場合、座標生成部が不良ノズルが掛かる画素領域にその周辺の画素領域を加えた座標を観察座標として生成することが好ましい。これによれば、より効率的な画素の観察ができる。
【0012】
上記不良ノズルの情報が目詰まりノズルと着弾位置ずれノズルおよび吐出量異常ノズルのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。これによれば、目詰まりノズルと着弾位置ずれノズルおよび吐出量異常ノズルのうち少なくとも1つに起因して吐出ムラとなった不良画素を早期に発見することができる。
【0013】
上記観察部は、撮像機構と、撮像機構により撮像された画像を画像情報に変換する画像処理部とを備えることが好ましい。これによれば、画像処理部により変換された画像情報を用いて、正確に不良ノズルを特定することができる。
【0014】
上記複数のノズルから着弾観察用被吐出物の上に液状体を液滴として吐出し、着弾した液滴を撮像機構により撮像して、得られた画像を画像処理部により変換した画像情報に基づいて、ノズル情報を生成するノズル情報生成部をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ノズル情報生成部では、着弾観察用被吐出物の上に着弾した液滴の着弾状態を示す画像情報に基づいてノズル情報が生成される。着弾観察用被吐出物の上に液滴を吐出するので、ノズルの目詰まりによる不吐出はもとより着弾位置ずれや吐出量異常のノズル情報を正確に把握することができる。
【0016】
上記着弾観察用被吐出物が記録紙であることが好ましい。これによれば、基板上に液滴を着弾させる場合に比べて、着弾した表面の界面張力の影響を受け難く、ノズルの目詰まりによる不吐出はもとより着弾位置ずれや吐出量異常のノズル情報をより正確に把握することができる。
【0017】
上記基板と複数のノズルとの複数回の相対移動に同期して液状体が吐出描画され、記憶部には、相対移動ごとの配置情報が格納されることが好ましい。液状体を基板と複数のノズルとの複数回の相対移動に同期して吐出する場合、各相対移動において基板上の画素領域ごとに掛かるノズルは必ずしも同一ではない。この構成によれば、記憶部には相対移動ごとの配置情報が格納されているので、実際の液状体の吐出描画に対応した観察座標を的確に生成することができる。
【0018】
また、上記記憶部には、相対移動の往動と復動とに分けて配置情報が格納されることが好ましい。液状体を基板と複数のノズルとの往動と復動とに分けて吐出する場合、往動時に吐出不具合があると判断された不良ノズルが、復動時に必ずしも吐出不具合を招くとは限らない。特に飛行曲がりは、曲がり方向と相対移動の方向との関係で着弾位置ずれの程度が変化する。この構成によれば、相対移動において画素領域ごとに掛かるノズルの配置情報が往動と復動とに分けて格納されているので、不良ノズルを往動と復動と分けてより的確に特定することができる。
【0019】
本発明の描画システムは、基板上の複数の画素領域に複数のノズルから機能性材料を含む液状体を液滴として吐出描画する液滴吐出装置と、上記発明の画素観察システムと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、液状体の吐出不具合に起因する不良画素を早期に発見可能な画素観察システムを備えているので、画素観察システムからの不良画素の情報を液状体の吐出描画に反映することができる。すなわち、液状体の吐出不具合が少ない安定した吐出品質を有する描画システムを提供することができる。
【0021】
上記液滴吐出装置と上記画素観察システムとを統括的に制御する統括制御部をさらに備え、画素観察システムによって不良画素情報が得られた場合には、統括制御部が不良画素情報に基づいて不良ノズルを特定し、不良ノズルからの液滴の吐出を停止して、不良ノズル以外のノズルから不足する分の液滴を吐出するように液滴吐出装置を制御することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、統括制御部が画素観察システムによってもたらされた不良画素情報に基づいて不良ノズルを特定し、不良ノズルを用いずに画素領域ごとに必要量の液状体を液滴として付与することができる。
【0023】
また、上記液滴吐出装置と上記画素観察システムとを統括的に制御する統括制御部をさらに備え、画素観察システムによって不良画素情報が得られた場合には、統括制御部が不良画素情報に基づいて不良ノズルとしての着弾位置ずれノズルまたは吐出量異常ノズルを特定し、当該ノズルから液滴を吐出する駆動条件を変更するように液滴吐出装置を制御するとしてもよい。
【0024】
この構成によれば、着弾位置ずれノズルまたは吐出量異常ノズルに対応して、当該ノズルの駆動条件が変更されるので、不良ノズルとして特定された当該ノズルを用いても画素領域ごとに必要量の液状体を液滴として付与することができる。
【0025】
本発明の液状体の描画方法は、基板と複数のノズルとの相対移動に同期して、基板上の複数の画素領域に複数のノズルから機能性材料を含む液状体を吐出して複数の画素を形成する液状体の描画方法であって、複数のノズルから吐出された液状体の吐出状態を示すノズル情報と相対移動において画素領域ごとに掛かるノズルの配置情報とに基づいて、基板上の観察座標を生成する観察座標生成工程と、配置情報に基づいて複数の画素領域に複数のノズルから液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、吐出描画された基板の観察座標に位置する画素領域を観察する観察工程と、観察工程において不良画素が検出された場合には、不良画素となった画素領域に掛かる不良ノズルを特定して配置情報を補正する補正工程とを備え、観察座標生成工程では、少なくとも1回の相対移動における複数のノズルが掛かる画素領域の座標を観察座標として生成することを特徴とする。
【0026】
この方法によれば、観察座標生成工程では、少なくとも1回の相対移動における複数のノズルが掛かる画素領域の座標を観察座標として生成する。したがって、すべての画素領域を観察する場合に比べて、吐出不具合を生ずる不良ノズルによって形成された不良画素を早期に発見することができる。また、補正工程では、不良ノズルを特定して画素領域ごとに掛かるノズルの配置情報を補正する。したがって、描画工程で補正された配置情報に基づいて液状体の吐出描画を行うことができる。ゆえに、不良画素を早期に発見することにより吐出不具合が低減され、画素領域ごとに必要量の液状体を液滴として付与することが可能な液状体の描画方法を提供することができる。
【0027】
特定された上記不良ノズルの情報に基づいて、ノズル情報を更新するノズル情報更新工程をさらに備えることが好ましい。この方法によれば、不良ノズルの特定に伴ってノズル情報が更新されるので、最新のノズル情報に基づいて観察座標が生成され、不良画素を見逃すことが低減される。
【0028】
また、上記ノズル情報が不良ノズルの情報を含む場合、観察座標生成工程では、不良ノズルが掛かる画素領域にその周辺の画素領域を加えた座標を観察座標として生成することが好ましい。不良ノズルに起因して不良画素が形成される確率が高いので、より効率的に不良画素を発見することができる。
【0029】
上記不良ノズルの情報が目詰まりノズルと着弾位置ずれノズルおよび吐出量異常ノズルのうち少なくとも1つのノズル情報を含むことを特徴とする。この方法によれば、目詰まりノズルと着弾位置ずれノズルおよび吐出量異常ノズルのうち少なくとも1つに起因して吐出ムラとなった不良画素を早期に発見することができる。
【0030】
上記複数のノズルから着弾観察用被吐出物の上に液状体を液滴として吐出し、着弾した液滴の着弾径および着弾位置ずれを計測する着弾状態検査工程をさらに備え、ノズル情報が着弾径および着弾位置ずれの寸法情報を含むことが好ましい。この方法によれば、ノズル情報が着弾状態検査工程で得られた着弾径および着弾位置ずれの寸法情報を含むので、画素領域ごとに掛かるノズルの配置情報を的確に補正することができる。
【0031】
上記着弾状態検査工程では、複数のノズルと着弾観察用被吐出物とを相対移動させ、相対移動の往動と復動とに分けて、それぞれ仮想の直線上に液滴が着弾するように複数のノズルを吐出制御することが好ましい。この方法によれば、相対移動の往動と復動とにおける着弾状態の変動を把握することができる。すなわち、ノズルの配置情報をより的確に補正することができる。
【0032】
上記着弾観察用被吐出物が記録紙であることが好ましい。この方法によれば、基板上に液滴を着弾させる場合に比べて、着弾した表面の界面張力の影響を受け難く、ノズルの目詰まりによる不吐出はもとより着弾位置ずれや吐出量が異常なノズル情報をより正確に把握することができる。
【0033】
上記配置情報が液滴を吐出するノズルの選択情報を含み、上記補正工程では、不良ノズルを選択せずに、不良ノズル以外のノズルを選択して不足する分の液滴を吐出するように配置情報を補正することが好ましい。この方法によれば、不良ノズルを用いずに、画素領域ごとに必要量の液状体を液滴として付与することができる。
【0034】
上記配置情報が複数のノズルごとに液滴を吐出する駆動条件を含み、補正工程では、不良ノズルとしての着弾位置ずれノズルまたは吐出量異常ノズルを特定し、着弾位置ずれノズルまたは吐出量異常ノズルから液滴を吐出する駆動条件を変えることにより配置情報を補正するとしてもよい。この方法によれば、補正工程では、着弾位置ずれノズルまたは吐出量異常ノズルに対応して、当該ノズルの駆動条件が変更されるので、不良ノズルとして特定された当該ノズルを用いても画素領域ごとに必要量の液状体を液滴として付与することができる。
【0035】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に区画形成された複数の画素領域に少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記発明の液状体の描画方法を用い、少なくとも3色の着色層形成材料を含む液状体を複数の画素領域に吐出描画する描画工程と、吐出描画された液状体を固化して、少なくとも3色の着色層を形成する固化工程とを備えたことを特徴とする。
【0036】
この方法によれば、吐出不具合が低減され、画素領域ごとに必要量の液状体を液滴として付与することができる液状体の描画方法を用いているので、固化後に所望の光学特性を有する少なくとも3色の着色層を備えたカラーフィルタを歩留りよく製造することができる。
【0037】
本発明の有機EL素子の製造方法は、基板上に区画形成された複数の画素領域に少なくとも発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、上記発明の液状体の描画方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を複数の画素領域に吐出描画する描画工程と、吐出描画された液状体を固化して、発光層を形成する固化工程とを備えたことを特徴とする。
【0038】
この方法によれば、吐出不具合が低減され、画素領域ごとに必要量の液状体を液滴として付与することができる液状体の描画方法を用いているので、固化後に吐出不具合に起因する発光ムラや輝度ムラなどが少ない有機EL素子を歩留りよく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(実施形態1)
本発明の実施形態は、基板上の複数の画素領域としての着色領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法を例に説明する。着色層は画素を構成するものであり、複数の画素領域に機能性材料としての着色層形成材料を含む液状体を液滴として吐出描画して形成する。上記液状体を液滴として吐出描画する際には、次のような描画システムを用いた。
【0040】
<画素観察システムおよび描画システム>
図1は、描画システムの構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の描画システム1は、液状体を液滴として吐出描画する液滴吐出装置10と、液状体が吐出描画された画素領域を観察する観察部3を有する画素観察システム2と、液滴吐出装置10と画素観察システム2とを統括的に制御する統括制御部としての上位コンピュータ11とを備えている。
【0041】
観察部3は、画素領域を観察して撮像する撮像機構としてのカメラ15と、カメラ15によって撮像された画像を画像情報に変換する画像処理部49とを備えている。カメラ15は、例えばCCDなどの撮像素子を備え、捉えた画像の色を識別可能となっている。これらのカメラ15、画像処理部49は液滴吐出装置10に搭載した。なお、画像処理部49を上位コンピュータ11側に備えてもよい。
【0042】
上位コンピュータ11には、液滴吐出装置10を制御する制御プログラムや制御データなどの制御情報を入力するキーボードなどの入力部12と、制御情報を表示可能な表示部13と、制御情報を格納する記憶部14とが接続されている。記憶部14は、上位コンピュータ11に内蔵されたハードディスクなどの記憶装置やメモリ、あるいは外付けされたサーバでもよい。
【0043】
上位コンピュータ11は、制御プログラムや制御データなどの制御情報を液滴吐出装置10に送出するだけでなく、これらの制御情報を修正することもできる。また、記憶部14には、液状体の吐出状態を示すノズル情報と液状体を基板上の画素領域に吐出描画する際の画素領域ごとに掛かるノズル52の配置情報とが格納されている。上位コンピュータ11は、ノズル情報と配置情報とに基づいて基板上の観察座標を生成する観察座標生成部の機能を有している。また、従来のノズル情報を修正して新たなノズル情報を生成するノズル情報生成部としての機能を有している。
【0044】
この場合、画素観察システム2は、これらの上位コンピュータ11、入力部12、表示部13、記憶部14を含むものである。
【0045】
次に、液滴吐出装置10について図2〜図7に基づいて説明する。図2は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
【0046】
図2に示すように、液滴吐出装置10は、ワークとしてのマザー基板Wを主走査方向(X軸方向)に移動させるワーク移動機構20と、液滴吐出ヘッド50(図3参照)を副走査方向(Y軸方向)に移動させるヘッド移動機構30とを備えている。
【0047】
ワーク移動機構20は、一対のガイドレール21と、一対のガイドレール21に沿って移動する移動台22と、移動台22上に回転機構としてのθテーブル6を介して配設されたマザー基板Wを載置するセットテーブル5とを備えている。移動台22は、ガイドレール21の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により主走査方向に移動する。セットテーブル5はマザー基板Wを吸着固定可能であると共に、θテーブル6によってマザー基板W内の基準軸を正確に主走査方向、副走査方向に合わせることが可能となっている。
【0048】
ヘッド移動機構30は、一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31に沿って移動する2つの移動台32,33とを備えている。移動台32には、回転機構7を介して吊設されたキャリッジ8が設けられている。キャリッジ8には、複数の液滴吐出ヘッド50が搭載されたヘッドユニット9が取り付けられている。また、液滴吐出ヘッド50に液状体を供給するための液状体供給機構(図示せず)と、複数の液滴吐出ヘッド50の電気的な駆動制御を行うためのヘッドドライバ48(図5参照)とが設けられている。移動台32がキャリッジ8をY軸方向に移動させてヘッドユニット9をマザー基板Wに対して対向配置する。
【0049】
移動台33には、カメラ15が搭載されている。カメラ15は、移動台33によってY軸方向に移動して液滴吐出ヘッド50から吐出されマザー基板Wの表面に着弾した液滴の着弾状態を観察して撮像することができる。必要により被写体を照明する照明装置を移動台33に備えてもよい。
【0050】
液滴吐出装置10は、上記構成の他にも、ヘッドユニット9に搭載された複数の液滴吐出ヘッド50のノズルの目詰まりの解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構が、複数の液滴吐出ヘッド50を臨む位置に配設されているが図示省略した。
【0051】
図3は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略図である。同図(a)は概略分解斜視図、同図(b)はノズル部の構造を示す断面図である。図3(a)および(b)に示すように、液滴吐出ヘッド50は、液滴Dが吐出される複数のノズル52を有するノズルプレート51と、複数のノズル52がそれぞれ連通するキャビティ55を区画する隔壁54を有するキャビティプレート53と、各キャビティ55に対応するエネルギー発生手段としての振動子59を有する振動板58とが、順に積層され接合された構造となっている。
【0052】
キャビティプレート53は、ノズル52に連通するキャビティ55を区画する隔壁54を有すると共に、このキャビティ55に液状体を充填するための流路56,57を有している。流路57は、ノズルプレート51と振動板58とによって挟まれ、出来上がった空間が、液状体が貯留されるリザーバの役目を果たす。
【0053】
液状体は、液状体供給機構から配管を通じて供給され、振動板58に設けられた供給孔58aを通じてリザーバに貯留された後に、流路56を通じて各キャビティ55に充填される。
【0054】
図3(b)に示すように、振動子59は、ピエゾ素子59cと、ピエゾ素子59cを挟む一対の電極59a,59bとからなる圧電素子である。外部から一対の電極59a,59bに駆動電圧パルスが印加されることにより接合された振動板58を変形させる。これにより隔壁54で仕切られたキャビティ55の体積が増加して、液状体がリザーバからキャビティ55に吸引される。そして、駆動電圧パルスの印加が終了すると、振動板58は元に戻り充填された液状体を加圧する。これにより、ノズル52から液状体を液滴Dとして吐出できる構造となっている。ピエゾ素子59cへ印加される駆動電圧パルスを制御することにより、それぞれのノズル52に対して液状体の吐出制御を行うことができる。
【0055】
液滴吐出ヘッド50は、圧電素子(ピエゾ素子)を備えたものに限らない。振動板58を静電吸着により変位させる電気機械変換素子を備えたものや、液状体を加熱してノズル52から液滴Dとして吐出させる電気熱変換素子を備えたものでもよい。
【0056】
図4は、ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、マザー基板Wに対向する側から見た図である。
【0057】
図4に示すように、ヘッドユニット9は、複数の液滴吐出ヘッド50が配設されるヘッドプレート9aを備えている。ヘッドプレート9aには、3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Aと、同じく3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Bの合計6個の液滴吐出ヘッド50が搭載されている。この場合、ヘッド群50AのヘッドR1(液滴吐出ヘッド50)とヘッド群50BのヘッドR2(液滴吐出ヘッド50)とは同種の液状体を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる液状体を吐出可能な構成となっている。
【0058】
各液滴吐出ヘッド50は、ほぼ等しい間隔(およそ140μmのノズルピッチ)で配設された複数(180個)のノズル52からなるノズル列52aを有している。ノズル52の径はおよそ20μmである。1つの液滴吐出ヘッド50によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列52aの有効長とする。以降、ノズル列52aとは、180個のノズル52から構成されるものを指す。
【0059】
この場合、ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(X軸方向)から見て隣り合うノズル列52a(ノズル列1Aとノズル列1B)が主走査方向と直交する副走査方向(Y軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向に並列して配置されている。
【0060】
なお、液滴吐出ヘッド50に設けられるノズル列52aは、1列に限らない。例えば、複数のノズル列52aを互いにずらして配設すれば実質的なノズルピッチが狭くなり、高精細に液滴Dを吐出することが可能となる。
【0061】
次に液滴吐出装置10の制御系について説明する。図5は、液滴吐出装置の制御系を示すブロック図である。液滴吐出装置10の制御系は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構20、ヘッド移動機構30等を駆動する各種ドライバを有する駆動部46と、駆動部46を含め液滴吐出装置10を制御する制御部4とを備えている。また、カメラ15が接続された画像処理部49を備えている。
【0062】
駆動部46は、ワーク移動機構20およびヘッド移動機構30の各リニアモータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ47と、液滴吐出ヘッド50を吐出制御するヘッドドライバ48と、メンテナンス機構の各メンテ用ユニットを駆動制御するメンテナンス用ドライバ(図示省略)とを備えている。
【0063】
制御部4は、CPU41と、ROM42と、RAM43と、P−CON44とを備え、これらは互いにバス45を介して接続されている。P−CON44には、上位コンピュータ11が接続されている。ROM42は、CPU41で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理等を行うための制御データ等を記憶する制御データ領域とを有している。
【0064】
RAM43は、マザー基板Wに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、マザー基板Wおよび液滴吐出ヘッド50(実際には、ノズル列52a)の位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON44には、駆動部46の各種ドライバ等や画像処理部49が接続されており、CPU41の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON44は、上位コンピュータ11からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス45に取り込むと共に、CPU41と連動して、CPU41等からバス45に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部46に出力する。
【0065】
そして、CPU41は、ROM42内の制御プログラムに従って、P−CON44を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM43内の各種データ等を処理した後、P−CON44を介して駆動部46等に各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置10全体を制御している。例えば、CPU41は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構20およびヘッド移動機構30を制御して、液滴吐出ヘッド50とマザー基板Wとを対向配置させ、液滴吐出ヘッド50とマザー基板Wとの相対移動に同期して、各液滴吐出ヘッド50の複数のノズル52からマザー基板Wに液状体を液滴として吐出して描画を行う。この場合、X軸方向へのマザー基板Wの移動に同期して液状体を吐出することを主走査と呼び、Y軸方向に複数の液滴吐出ヘッド50が搭載されたヘッドユニット9を移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の液滴吐出装置10は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより液状体を吐出描画することができる。主走査は、液滴吐出ヘッド50に対して一方向へのマザー基板Wの移動に限らず、マザー基板Wを往復させて行うこともできる。
【0066】
また、CPU41は、ヘッド移動機構30を駆動して移動台33をY軸方向に移動させ、搭載されたカメラ15をマザー基板Wと対向させる。そして、マザー基板Wの表面に着弾した液滴の状態を観察すると共に撮像する。マザー基板Wに対してカメラ15を移動して観察する位置情報は、上位コンピュータ11により生成され観察座標として予めRAM43に入力されている。画像処理部49はP−CON44を介して上位コンピュータ11と接続されている。上位コンピュータ11は、カメラ15が撮像し画像処理部49によって変換された画像情報を表示部13に表示することができ、オペレータは、液滴の着弾状態を確認することができる。
【0067】
画像処理部49は、撮像された液滴の着弾状態をビットマップデータに変換する。CPU41は、このビットマップデータから液滴の着弾位置ずれ量や着弾径を演算することができる。演算結果は、RAM43に書き込まれる。またほぼ同時にノズル情報として上位コンピュータ11に送出され記憶部14に格納される。ノズル52が目詰まりを起こし、液滴が吐出されなかった場合も同様に画像認識され、ノズル情報として記憶部14に格納される。詳細については後述する。
【0068】
次に、図6、図7を参照して、液滴吐出ヘッドの吐出制御方法について説明する。図6は吐出制御の詳細を示すブロック図である。図6に示すように、制御部4は、CPU41、ROM42、RAM43、P−CON44、バス45の他に、駆動信号(COM)を生成する駆動信号生成回路71と、クロック信号(CK)を生成する発信回路72とを備えている。ヘッドドライバ48は、シフトレジスタ73と、ラッチ回路74と、レベルシフタ75と、スイッチ76とを備え、液滴吐出ヘッド50の各ノズル52に対応する振動子59に選択的に駆動信号(COM)を印加できるように構成されている。
【0069】
上位コンピュータ11は、描画対象面における液滴の配置をノズル52の配置情報として表した制御データを制御部4に伝送する。配置情報は、マザー基板Wに対する複数のノズル52の相対的な吐出位置、液滴を吐出するノズル52の選択、液滴の吐出回数、液滴を吐出する際の駆動条件を含むものである。そして制御部4は、これらの制御データに基づいて、ノズルデータ信号(SI)や駆動信号(COM)を、ノズル列単位ごとに次のように生成する。
【0070】
すなわち、CPU41は、制御データをデコードしてノズル52ごとのON/OFF情報を含むノズルデータを生成する。また、駆動信号生成回路71は、CPU41が算出したノズルデータに基づいて駆動信号(COM)の設定および生成を行う。
【0071】
ノズルデータをシリアル信号化したノズルデータ信号(SI)は、クロック信号(CK)に同期してシフトレジスタ73に伝送され、ノズル52ごとのON/OFF情報がそれぞれ記憶される。そして、CPU41で生成されたラッチ信号(LAT)が各ラッチ回路74に入力されることで、ノズルデータがラッチされる。ラッチされたノズルデータはレベルシフタ75によって増幅され、ノズルデータが「ON」の場合には所定の電圧がスイッチ76に供給される。また、ノズルデータが「OFF」の場合には、スイッチ76への電圧供給は行われない。
【0072】
かくして、レベルシフタ75で昇圧された電圧がスイッチ76に供給されている間は、振動子59に駆動信号(COM)が印加され、液滴Dがノズル52から吐出される(図3参照)。
【0073】
このような吐出制御は、ヘッドユニット9とマザー基板Wとの相対移動(主走査)に同期して、図7に示すように周期的に行われる。
【0074】
図7は吐出制御の制御信号を示す図である。図7に示すように、駆動信号(COM)は、放電パルス201、充電パルス202、放電パルス203を有する一連のパルス群200−1,200−2…が中間電位204で接続された構成となっている。そして、一つのパルス群によって、次のように一つの液滴を吐出するようになっている。
【0075】
すなわち、放電パルス201によって、電位レベルを上昇させると共に液状体をキャビティ55(図3(b)参照)内に引き込む。次に、急峻な充電パルス202によって、キャビティ55内の液状体を急激に加圧し、液状体をノズル52から押し出して液滴化する(吐出)。最後に放電パルス203によって、降下した電位レベルを中間電位204に戻すと共に、充電パルス202によって生じたキャビティ55内の圧力振動(固有振動)を打ち消す。
【0076】
駆動信号(COM)における電圧成分Vc,Vhや時間成分(パルスの傾きやパルス間の接続間隔など)などは、吐出量や吐出安定性などに大きく関わっているパラメータであり、予め適切な設計を要するものである。この場合、ラッチ信号(LAT)の周期は、液滴吐出ヘッド50の固有周波数特性を考慮して20kHzに設定されている。また、主走査における液滴吐出ヘッド50とマザー基板Wとの相対移動速度(この場合、セットテーブル5をX軸方向に移動させる移動速度)が200mm/秒に設定されている。したがって、吐出分解能が相対移動速度をラッチ周期で除したものとすれば、吐出分解能の単位が10μmとなる。すなわち、吐出分解能の単位でノズル52ごとに吐出タイミングを設定することが可能である。言い換えればマザー基板Wの表面に10μm単位の吐出間隔で液滴Dを配置することができる。なお、ラッチパルスの発生タイミングを移動台22に備えられたエンコーダ(図示省略)が出力するパルスを基準とすれば、移動分解能の単位で吐出タイミングを制御することも可能である。
【0077】
このような液滴吐出装置10によれば、液滴吐出ヘッド50のノズル52ごとに、吐出量、吐出タイミングを変えて液状体を液滴として吐出することが可能である。例えば、メンテナンス機構により液滴吐出ヘッド50をメンテナンスしても回復しない飛行曲がりが生ずるノズル52がある場合、当該ノズル52に対する吐出制御の方法を変えることにより、飛行曲がりによる着弾位置のずれを補正することが可能である。
【0078】
また、上位コンピュータ11により画素観察システム2と液滴吐出装置10が統括的に制御されているので、ノズル情報に不良ノズルとしての目詰まりノズル、着弾位置ずれノズル、吐出量異常ノズルが含まれる場合、これら吐出不具合が生じる不良ノズルを選択せずに、他の正常なノズルを選択して液状体を吐出させることも可能である。
【0079】
ゆえに、このような描画システム1は、ヘッド移動機構30によりヘッドユニット9をマザー基板Wと対向させ、ワーク移動機構20による主走査に同期して、ヘッドユニット9に備えられた合計6個の液滴吐出ヘッド50から必要量の液状体を液滴として高い位置精度で吐出することが可能である。
【0080】
次に、本実施形態の描画システム1を用いたカラーフィルタの製造方法について説明する。まず、カラーフィルタを有する電気光学装置としての液晶表示装置について簡単に説明する。図8は、液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図である。
【0081】
図8に示すように、液晶表示装置500は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照明する照明装置516とを備えている。液晶表示パネル520は、着色層を有するカラーフィルタ505を具備する対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子511を有する素子基板508と、対向基板501と素子基板508とによって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル520の外面側となる対向基板501と素子基板508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と下偏光板515とが配設される。
【0082】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に複数の画素領域としての着色領域をマトリクス状に区画する隔壁部としてのバンク504と、区画された複数の着色領域にRGB3色の着色層505R,505G,505Bとを備えている。バンク504は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク502と、下層バンク502の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク503とにより構成されている。また対向基板501は、バンク504とバンク504によって区画された着色層505R,505G,505Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極507とを備えている。カラーフィルタ505は後述するカラーフィルタの製造方法を用いて製造されている。
【0083】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して形成された複数のTFT素子511とを備えている。TFT素子511の3端子のうち、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510を囲むように格子状に配設された走査線512とデータ線513とに接続されている。
【0084】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0085】
なお、液晶を挟む対向基板501と素子基板508の表面には、液晶の分子を一の方向に配列させるための配向膜がそれぞれ形成されているが、図示省略した。また、上偏光板514と下偏光板515は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、少なくとも一方の基板にカラーフィルタを備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。
【0086】
上記液晶表示装置500は、カラーフィルタ505を備えた対向基板501がマトリクス状に複数区画形成されたマザー基板と、同じく素子基板508がマトリクス状に複数区画形成されたマザー基板とが液晶を挟んで接合された構造体を所定の位置で切断して取り出すことにより製造される。
【0087】
<カラーフィルタの製造方法>
図9(a)〜(e)は、カラーフィルタの製造工程を示す概略断面図である。上記のような3色の着色層505R,505G,505Bを有するカラーフィルタ505の製造方法は、対向基板501の表面にバンク504を形成する工程と、バンク504によって区画された着色領域Aを表面処理する工程とを備えている。また、描画システム1を用いて表面処理された着色領域Aに着色層形成材料を含む3種(3色)の液状体を液滴Dとして吐出して描画する描画工程と、描画された液状体を乾燥して着色層505R,505G,505Bを形成する固化工程としての成膜工程とを備えている。さらにバンク504と着色層505R,505G,505Bとを覆うようにOC層506を形成する工程と、OC層506を覆うようにITOからなる透明な対向電極507を形成する工程とを備えている。
【0088】
バンク504を形成する工程では、図9(a)に示すように、まずブラックマトリクスとしての下層バンク502を対向基板501上に形成する。下層バンク502の材料は、例えば、Cr、Ni、Al等の不透明な金属、あるいはこれらの金属の酸化物等の化合物を用いることができる。下層バンク502の形成方法としては、蒸着法あるいはスパッタ法で上記材料からなる膜を対向基板501上に成膜する。膜厚は、遮光性が保たれる膜厚を選定された材料に応じて設定すればよい。例えば、Crならば、100〜200nmが好ましい。そして、フォトリソグラフィ法により開口部502a(図8参照)に対応する部分以外の膜表面をレジストで覆い、上記材料に対応する酸等のエッチング液を用いて膜をエッチングする。これにより開口部502aを有する下層バンク502が形成される。
【0089】
次に上層バンク503を下層バンク502の上に形成する。上層バンク503の材料としては、アクリル系の感光性樹脂材料を用いることができる。また、感光性樹脂材料は、遮光性を有することが好ましい。上層バンク503の形成方法としては、例えば、下層バンク502が形成された対向基板501の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、着色領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを対向基板501と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク503を形成する方法が挙げられる。これにより対向基板501上に複数の着色領域Aをマトリクス状に区画するバンク504が形成される。そして表面処理工程へ進む。
【0090】
表面処理工程では、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、着色領域Aが親液処理され、その後感光性樹脂からなる上層バンク503の表面(壁面を含む)が撥液処理される。そして、描画工程へ進む。
【0091】
描画工程では、図9(b)に示すように、表面処理された各着色領域Aのそれぞれに、対応する液状体80R,80G,80Bを液滴Dとして吐出描画する。液状体80RはR(赤色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体80GはG(緑色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体80BはB(青色)の着色層形成材料を含むものである。液滴吐出装置10の液滴吐出ヘッド50に各液状体80R,80G,80Bを充填する。そして、基本的には画素領域としての着色領域Aに掛かるノズル52の配置情報に基づいてヘッドユニット9とマザー基板Wとを相対移動させる主走査に同期して各液滴吐出ヘッド50から各液状体80R,80G,80Bを着色領域Aに向けて吐出する。各液状体80R,80G,80Bは、着色領域Aの面積に応じて必要量が付与される。
【0092】
次に成膜工程では、図9(c)に示すように、吐出描画された各液状体80R,80G,80Bを一括乾燥し、溶剤成分を除去して各着色層505R,505G,505Bを成膜する。乾燥方法としては、溶剤成分を均質に乾燥可能な減圧乾燥などの方法が望ましい。そして、OC層形成工程へ進む。
【0093】
OC層形成工程では、図9(d)に示すように、着色層505R,505G,505Bと上層バンク503とを覆うようにOC層506を形成する。OC層506の材料としては、透明なアクリル系樹脂材料を用いることができる。形成方法としては、スピンコート法、オフセット印刷などの方法が挙げられる。OC層506は、着色層505R,505G,505Bが形成された対向基板501の表面の凹凸を緩和して、後にこの表面に膜付けされる対向電極507を平担化するために設けられている。また、対向電極507との密着性を確保するために、OC層506の上にさらにSiO2などの薄膜を形成してもよい。そして、透明電極形成工程へ進む。
【0094】
透明電極形成工程では、図9(e)に示すように、スパッタ法や蒸着法を用いてITOなどの透明電極材料を真空中で成膜して、OC層506を覆うように全面に対向電極507を形成する。
【0095】
上記描画工程では、描画システム1を用いて、3種の異なる液状体80R,80G,80Bをほぼ同時に吐出して描画する。このような描画方法においては、必要量の液状体を対応する着色領域Aに安定的に吐出することが求められる。例えば、ノズル52の目詰まりや吐出される液滴Dの吐出量が変動すると着色領域Aにおいて吐出ムラとなる。ノズル52から吐出された液滴Dが飛行曲がりによって本来着弾すべき着色領域Aに着弾せず、他の異なる液状体が付与されるべき着色領域Aに着弾すると、異種の液状体同士が混じり合って所謂混色が発生する。これらの吐出不具合はカラーフィルタ505の製造における歩留りに影響する。また、液晶表示装置500においては、吐出ムラや混色となった着色層505R,505G,505Bを有する画素は色ムラなどの不良画素となる。よって、これらの吐出不具合の発生を極力防止しなくてはならない。
【0096】
ヘッドユニット9には、同種(同色)の液状体が充填された液滴吐出ヘッド50が2個ずつ配置され、合計360個のノズル52から同種の液状体の液滴Dが吐出される。液滴Dの吐出不具合が発生するごとに、メンテナンス機構によって各液滴吐出ヘッド50のメンテナンスを実施していたのでは、マザー基板Wの流動が停止してカラーフィルタ505の製造における生産性を向上させることが難しい。本発明の液状体の描画方法は、このような課題を考慮してなされた。
【0097】
<液状体の描画方法>
本実施形態の液状体の描画方法について図10〜図14に基づいて説明する。図10は液状体の描画方法を示すフローチャートである。図10に示すように、本実施形態の液状体の描画方法は、複数のノズル52から吐出された液滴Dの着弾状態を検査する工程(ステップS1)を備えている。着弾状態検査工程で得られた検査結果をノズル情報として記憶部14に書き込む工程(ステップS2)と、ノズル情報に含まれる不良ノズルに対応する画素リストを生成する工程(ステップS3)とを備えている。生成された画素リストから観察座標を生成する工程(ステップS4)と、ノズル52の配置情報に基づいてマザー基板Wに液状体を吐出描画する工程(ステップS5)と、吐出描画された画素を観察する工程(ステップS6)とを備えている。画素の観察結果から不良画素があるか否か判定する工程(ステップS7)と、不良画素が検出された場合には、配置情報を補正する補正工程(ステップS8)とを備えている。
【0098】
図11(a)〜(d)は着弾状態検査工程を説明する概略図である。図10の着弾状態検査工程(ステップS1)では、図11(a)に示すように、液滴吐出装置10のセットテーブル5(図2参照)に着弾観察用被吐出物として記録紙18を載置する。各液滴吐出ヘッド50のノズル52から同種(同色)の液状体の液滴DがY軸方向において仮想の直線上に着弾するように吐出する。具体的には、制御部4がヘッドユニット9とセットテーブル5とを相対移動させ、主走査方向(X軸方向)において、各ノズル列52aの吐出タイミングを変えることにより直線上に着弾させる。そして、カメラ15を用いて記録紙18上に着弾した液滴Dの着弾状態を観察する。例えば、赤色(R)の液状体80Rを吐出するノズル列1Aとノズル列1Bとから液滴Dを吐出して吐出状態に不具合がなければ、液滴Dは直線上に着弾する。また、液滴Dの吐出量が各ノズル52においてほぼ同等ならば、着弾した各液滴Dの着弾径はほぼ同一となる。
【0099】
図11(b)に示すように、例えば、ノズル列1Aのあるノズル52が目詰まりしていれば、液滴Dが吐出されない。すなわち、記録紙18上において隙間が空いて液滴Dが着弾するので、目詰まりノズルを検出(特定)することができる。
【0100】
図11(c)に示すように、例えば、ノズル列1Aとノズル列1Bとにおいて、主走査方向に飛行曲がりが生ずるノズル52があれば、吐出された液滴Dが直線上からずれた位置に着弾する。このような着弾状態を撮像して画像処理することにより、CPU41がずれ量ΔX1,ΔX2を演算して着弾位置ずれノズルを検出(特定)することができる。当然のことながら着弾位置がX軸方向(主走査方向)に限らず斜めにずれることがある。よって、ずれ量は、X軸方向のずれ量とY軸方向のずれ量とに分けて算出される。また、飛行曲がりが生ずるノズル52から吐出された液滴Dの着弾位置ずれは、液滴吐出ヘッド50(複数のノズル52)と被吐出物との相対移動の方向によってもずれ量が変化する。したがって、液滴吐出ヘッド50が搭載されたヘッドユニット9に対して記録紙18を主走査方向に往復させ、往動と復動とに分けて別の直線上に液滴Dが着弾するように吐出して着弾状態を観察する。
【0101】
図11(d)に示すように、例えば、ノズル列1Aにおいて吐出量が過多なノズル52があれば、着弾径D1が過大となる。ノズル列1Bにおいて吐出量が過少なノズル52があれば、着弾径D2が過小となる。このような着弾状態を撮像して画像処理することにより、吐出量異常ノズルを検出(特定)することができる。なお、着弾径が極小となった場合には、目詰りノズルとして特定する。そして、ステップS2へ進む。
【0102】
図10のステップS2では、上位コンピュータ11がステップS1で得られた不良ノズルとしての目詰まりノズル、着弾位置ずれノズル、吐出量異常ノズルの情報をノズル情報として記憶部14に書き込む。そして、ステップS3へ進む。
【0103】
図10のステップS3では、上位コンピュータ11が記憶部14に格納されたノズル情報を読み込んで、主走査によって不良ノズルが掛かる画素リスト(言い換えれば着色領域Aのリスト)を生成する。そして、ステップS4へ進む。
【0104】
図10のステップS4では、上位コンピュータ11がノズル情報とノズル52の配置情報とステップS3で得られた画素リストに基づいて、少なくとも不良ノズルが掛かる着色領域Aにその周辺の着色領域Aを加えた座標を観察座標として生成する。当然のことながら、不良ノズルが検出されなければ、主走査における各ノズル列52aの配置に対応したデフォルトの観察座標を生成する。そして、ステップS5へ進む。
【0105】
図10のステップS5では、液滴吐出装置10にマザー基板Wを載置して、マザー基板Wとヘッドユニット9とを相対移動させ、複数の着色領域Aに向けて各液滴吐出ヘッド50から各液状体80R,80G,80Bを液滴Dとして吐出する。
【0106】
図12は、画素領域における液滴の配置の一例を示す概略平面図である。詳しくは、同図(a)は主走査における往動時の液滴の配置を示し、同図(b)は主走査における復動時の液滴の配置を示す概略平面図である。
【0107】
図12(a)に示すように、例えば、ヘッドユニット9とマザー基板Wとを主走査方向(X軸方向)に相対移動させる間に液滴Dを吐出し、バンク504により区画された画素領域としての着色領域Aに着弾させる。この場合、往動時には、赤色(R)の液状体80Rを吐出するノズル列1AのノズルN1〜ノズルN3が掛かる着色領域Aには、それぞれ3回の吐出を行って、9滴の液滴Dを着弾させた。ノズルN4〜N6においても同様である。また、図12(b)に示すように、復動時には、先に着弾した液滴Dの間に着弾するようにヘッドユニット9を副走査してノズル列1Aの位置をずらし、着色領域Aに掛かるノズルN1とノズルN2からそれぞれ3回吐出を行って、さらに6滴の液滴Dを着弾させた。これにより、着色領域Aには2回の主走査を行って合計15滴の液滴Dを着弾させた。他の異なる色(G,B)の着色領域Aにおいても同様である。着色領域Aに掛かるノズル52の数は、当然ながら着色領域Aの大きさとマザー基板W上における配置、ノズル52のノズルピッチやノズル列52aの着色領域Aに対する相対位置によって異なる。
【0108】
図12(a)および(b)は、液滴Dの配置を示すものであり、実際の着弾状態を示すものではない。言い換えれば、主走査の往動と復動とにおける着色領域Aごとに掛かるノズル52の配置を示すものである。
【0109】
図13(a)はノズルの配置情報を示す表、同図(b)はノズル情報を示す表である。図12(a)および(b)に示した液滴Dの配置は、図13(a)に示したノズル52の配置情報に基づいている。配置情報は、着色領域Aの画素No、ノズルNo、ノズル選択(「1」選択、「0」非選択)、吐出回数、駆動電圧、吐出タイミングの情報を有している。また、これらは往動の走査1と復動の走査2とに分かれている。このような配置情報は、この場合、液状体80R,80G,80Bごと、すなわち色ごとに予め作成される。駆動電圧は、図7に示したVc,Vhの電圧設定が標準の場合を「1」とした。電圧設定を変えることにより液滴Dの吐出量が変化するので、異なる電圧設定のレベルを他の数値にリンクさせておく。吐出タイミングは、標準を同じく「1」とし、早くする場合と遅くする場合とに分けた異なる吐出タイミングの設定を他の数値としてリンクさせておく。
【0110】
例えば、画素No.が1Rの着色領域Aに掛かるノズルNoが「3」のノズル52は、往動の走査1では選択されて、3回の吐出を標準の駆動電圧と吐出タイミングで行う。復動の走査2では、図12(b)に示すようにバンク504にノズル52が掛かるので選択しない。
【0111】
図13(b)に示すように、この場合、ノズル情報は、ノズル52の目詰まり、着弾位置(ずれ量)、着弾径の情報を含んでいる。これらの情報は、先のステップS1により取得され、記憶部14に格納される。例えば、目詰まりの有無は、「1」が有、「0」が無として入力される。着弾位置は、X軸方向とY軸方向のずれ量に区分されると共に、走査の方向に対して同方向にずれる場合を「+」、反対方向にずれる場合を「−」として入力される。この場合、吐出分解能の単位(10μm)でずれ量を入力する。よって、例えば、ノズルNoが「3」のノズル52は、吐出された液滴Dが走査方向に40μmずれて着弾することを示している。ノズルNoが「6」のノズル52は、吐出された液滴Dが走査方向と反対方向に20μmずれて着弾することを示している。
【0112】
着弾径は、この場合、所定の吐出量で液滴Dが吐出された場合を標準とし、これに対して過大と過小の2レベルに分けている。これは、吐出量を変化させる先の駆動電圧の設定レベルにリンクさせたものである。したがって、過大と過小の2レベルに限らず、さらに設定レベルを増減させることも可能である。該当する場合を「1」とし、非該当の場合を「0」としている。よって、いずれも「0」の場合は、標準の着弾径を示す。
【0113】
このようなノズル52の配置情報を基に液状体の吐出描画を行っても、吐出不具合が生じるノズル52が掛かった着色領域Aの画素において、必ずしも、色ムラや混色の不良画素が発生するとは限らない。その理由としては、例えば、マザー基板Wの伸縮やバンク504の形成位置精度によって着色領域Aの位置精度がばらつくことが考えられる。また、特にカラーフィルタの製造においては、色ごとに視感度が異なるので色ムラや混色が目立つ画素(色)がある。図10のステップS6では、実際に各液状体80R,80G,80Bが吐出描画されたマザー基板Wを観察することで、不良画素の検出、惹いては不良ノズルの特定を確実なものとする。
【0114】
図14は、画素領域の観察方法を示す概略平面図である。図14に示すように、例えば、マザー基板Wには、1つの液晶表示装置500におけるカラーフィルタ505の配置領域を1チップ領域として、9つのチップ領域C1〜C9がマトリクス状に配置されている。各チップ領域C1〜C9には、Y軸方向に同色の着色領域Aがストライプ状に並んでいる。この場合、マザー基板Wの画素領域としての着色領域Aを観察する方法として、上位コンピュータ11がデフォルトの観察座標に加えて、吐出不具合が生じる不良ノズルの情報とその配置情報に基づいた観察座標を追加して生成した。観察座標すなわち観察領域は、チップ領域C1〜C9ごとに設定されている。
【0115】
上位コンピュータ11は、制御部4に制御信号を送り、移動台33とマザー基板Wとを相対移動させて、カメラ15をチップ領域C1〜C9ごとの観察領域に移動させる。この場合、チップ領域C1からスタートし、チップ領域C2,C3,C6,C5,C4の順にデフォルトの観察領域を観察してゆく。そして、チップ領域C4,C5,C6に追加された観察領域を観察し、次にチップ領域C9,C8,C7の順にデフォルトの観察領域を観察して、一連の画素観察工程が終了する。
【0116】
なお、観察の方法は、これに限定されるものではなく、不良ノズルの情報がない場合には、少なくとも1回の主走査における複数のノズル52が掛かる3色の着色領域Aを観察すればよい。また、不良ノズルの情報がある場合には、不良ノズルに起因して不良画素(着色層)が形成される確率が高いので、チップ領域C4,C5,C6の不良ノズルの情報に基づいた追加された観察領域のみを観察してもよい。このようにすれば、効率的かつ効果的に観察することが可能である。観察走査ルートは、観察領域の設定に基づいて効率的に観察できるルートを設定すればよい。そして、ステップS7へ進む。
【0117】
図10のステップS7では、各チップ領域C1〜C9の観察領域に不良画素があるか否かを判定する。色ムラや混色の不良画素があれば、不良画素の座標は、観察座標から特定される。そして、ステップS8へ進む。
【0118】
図10のステップ8では、不良画素の情報(不良の内容、座標)から不良画素に掛かるノズル52を特定し、これを不良ノズルとして配置情報を補正する。
【0119】
ノズル52の配置情報の補正の方法としては、不良ノズルを選択せずに、他の正常なノズル52を選択して、不足する液滴Dを吐出するように補正する方法。また、着弾位置ずれによって混色が発生している場合には、不良ノズルから吐出される液滴Dの着弾位置が本来の位置に着弾するように、駆動条件において吐出タイミングを変える方法。着弾径が過大や過小な吐出量異常ノズルによって色ムラが発生している場合には、駆動条件において駆動電圧の設定を変える方法が挙げられる。さらには、1つの着色領域Aにおいて吐出不具合の内容が異なる複数の不良ノズルが掛かる場合には、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。このような補正は、上位コンピュータ11を用いて記憶部14に格納されたノズル情報と配置情報とを利用して行う。
【0120】
新たに不良ノズルが特定された場合には、ステップS2へ戻ってノズル情報を更新する。したがって、ステップS2は、ノズル情報更新工程としての機能も果たしている。
【0121】
このような液状体の描画方法によれば、すべての画素領域としての着色領域Aを観察しなくても、上位コンピュータ11が生成した観察座標(観察領域)に基づいて観察することにより、不良画素を早期に発見し、不良ノズルを特定して吐出描画に用いるノズル52の配置情報を的確に補正することが可能である。
【0122】
上記実施形態1の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態1の画素観察システム2は、記録紙18上に往動と復動とに分けて吐出された液滴Dの着弾状態をカメラ15により観察・撮像して、不良ノズルとしての目詰まりノズル、着弾位置ずれノズル、吐出量異常ノズルを特定する。これらの不良ノズルの情報をノズル情報として記憶部14に格納する。上位コンピュータ11はこのノズル情報と実際にマザー基板Wに液状体を吐出描画する際のノズル52の配置情報とに基づいて、デフォルトの観察座標に不良ノズルが掛かる画素領域(着色領域A)の座標を加えて観察座標を生成する。この観察座標に基づいて、カメラ15を用い実際に吐出描画されたマザー基板Wを観察・撮像する。吐出不具合が生ずる不良ノズルに起因して不良画素が発生する確率が高いので、すべての画素領域を観察する場合に比べて不良画素を早期に発見することができる。
【0123】
(2)上記実施形態の描画システム1は、上記画素観察システム2と上記液滴吐出装置10と、これらのシステムおよび装置を統括的に制御する上位コンピュータ11とを備えているので、不良画素を早期に発見し、ノズル52の配置情報を的確に補正して、マザー基板Wの画素領域(着色領域A)ごとに必要量の液状体を液滴として吐出描画することができる。すなわち、ノズル情報を反映して効率的かつ効果的に液状体を吐出描画することができる。
【0124】
(3)上記実施形態1の液状体の描画方法は、上記画素観察システム2を備えた上記描画システム1を用い、着弾状態検査工程でノズル情報を入手する。観察工程では、ノズル情報と配置情報とに基づいて生成された観察座標に位置する画素領域(着色領域A)を観察して不良画素(不良着色層)の情報を入手する。補正工程では、得られた不良画素の情報からあらためて不良ノズルを特定して配置情報を補正する。また特定された不良ノズルの情報を基にノズル情報を更新する。したがって、不良画素を早期に発見して吐出不具合による不良画素の発生を低減し、画素領域(着色領域A)ごとに必要量の液状体を液滴として吐出描画することができる。
【0125】
(4)上記実施形態1のカラーフィルタの製造方法は、上記液状体の描画方法を用いているので、不良画素を早期に発見して吐出不具合による不良画素の発生を低減し、必要量の液状体80R,80G,80Bを液滴Dとして対応する着色領域Aごとに吐出することができる。したがって、成膜工程では、ほぼ一定の膜厚を有する着色層505R,505G,505Bが得られる。そして、色ムラや混色が低減されたカラーフィルタ505を歩留りよく製造することができる。このカラーフィルタ505を備えた対向基板501を用いれば、所望の光学特性を有する液晶表示装置500を得ることができる。
【0126】
(実施形態2)
次に、実施形態1の描画システムと液状体の描画方法とを適用した他の実施形態として、発光層を有する有機EL素子の製造方法について説明する。
【0127】
まず、有機EL素子を有する有機EL表示装置について簡単に説明する。図15は、有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図である。図15に示すように、有機EL表示装置600は、有機EL素子としての発光素子部603を有する素子基板601と、素子基板601と空間622を隔てて封着された封止基板620とを備えている。また素子基板601は、素子基板601上に回路素子部602を備えており、発光素子部603は、回路素子部602上に重畳して形成され、回路素子部602により駆動されるものである。発光素子部603には、3色の発光層617R,617G,617Bが画素領域としての発光層形成領域Aに形成され、ストライプ状となっている。素子基板601は、3色の発光層617R,617G,617Bに対応する3つの発光層形成領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板601の回路素子部602上にマトリクス状に配置されたものである。有機EL表示装置600は、発光素子部603からの発光が素子基板601側に出射するものである。
【0128】
封止基板620は、ガラスまたは金属からなるもので、封止樹脂を介して素子基板601に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤621が貼り付けられている。ゲッター剤621は、素子基板601と封止基板620との間の空間622に侵入した水または酸素を吸収して、発光素子部603が侵入した水または酸素によって劣化することを防ぐものである。なお、このゲッター剤621は省略しても良い。
【0129】
素子基板601は、回路素子部602上に複数の画素領域としての発光層形成領域Aを有するものであって、複数の発光層形成領域Aを区画する隔壁部618と、複数の発光層形成領域Aに形成された電極613と、電極613に積層された正孔注入/輸送層617aとを備えている。また複数の発光層形成領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成された発光層617R,617G,617Bを有する発光素子部603を備えている。隔壁部618は、下層バンク618aと発光層形成領域Aを実質的に区画する上層バンク618bとからなり、下層バンク618aは、発光層形成領域Aの内側に張り出すように設けられて、電極613と各発光層617R,617G,617Bとが直接接触して電気的に短絡することを防止するためにSiO2等の無機絶縁材料により形成されている。
【0130】
素子基板601は、例えばガラス等の透明な基板からなり、素子基板601上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。半導体膜607には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pイオンが導入されなかった部分がチャネル領域607cとなっている。さらに下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、ゲート絶縁膜608上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極609が形成され、ゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。ゲート電極609は半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜611aおよび第2層間絶縁膜611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ接続されるコンタクトホール612a,612bが形成されている。そして、第2層間絶縁膜611b上に、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明な電極613が所定の形状にパターニングされて配置され(電極形成工程)、一方のコンタクトホール612aがこの電極613に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール612bが電源線614に接続されている。このようにして、回路素子部602には、各電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615が形成されている。なお、回路素子部602には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成されているが、図15ではこれらの図示を省略している。
【0131】
発光素子部603は、陽極としての電極613と、電極613上に順次積層された正孔注入/輸送層617aと、各発光層617R,617G,617B(総称して発光層Lu)と、上層バンク618bおよび発光層Luを覆うように積層された陰極604とを備えている。正孔注入/輸送層617aと発光層Luとにより発光が励起される機能層617を構成している。なお、陰極604と封止基板620およびゲッター剤621を透明な材料で構成すれば、封止基板620側から発光する光を出射させることができる。
【0132】
有機EL表示装置600は、ゲート電極609に接続された走査線(図示省略)とソース領域607aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号によりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ615のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ615のチャネル領域607cを介して、電源線614から電極613に電流が流れ、さらに正孔注入/輸送層617aと発光層Luとを介して陰極604に電流が流れる。発光層Luは、これを流れる電流量に応じて発光する。有機EL表示装置600は、このような発光素子部603の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。
【0133】
<有機EL素子の製造方法>
次に本実施形態の有機EL素子としての発光素子部の製造方法について図16に基づいて説明する。図16(a)〜(f)は、発光素子部の製造方法を示す概略断面図である。なお、図16(a)〜(f)においては、素子基板601上に形成された回路素子部602は、図示を省略している。
【0134】
本実施形態の発光素子部603の製造方法は、素子基板601の複数の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する工程と、電極613に一部が掛かるように下層バンク618aを形成し、さらに下層バンク618a上に実質的に発光層形成領域Aを区画するように上層バンク618bを形成する隔壁部形成工程とを備えている。また上層バンク618bで区画された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体を付与して正孔注入/輸送層617aを吐出描画する工程と、吐出された液状体を乾燥して正孔注入/輸送層617aを成膜する工程とを備えている。また、正孔注入/輸送層617aが形成された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体を吐出描画する描画工程と、吐出された3種の液状体を乾燥して発光層Luを成膜する固化工程とを備えている。さらに、上層バンク618bと発光層Luを覆うように陰極604を形成する工程を備えている。
【0135】
電極(陽極)形成工程では、図16(a)に示すように、回路素子部602がすでに形成された素子基板601の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する。形成方法としては、例えば、素子基板601の表面にITO等の透明電極材料を用いて真空中でスパッタ法あるいは蒸着法で透明電極膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ法にて必要な部分だけを残してエッチングして電極613を形成する方法が挙げられる。また、フォトレジストで素子基板601を先に覆って、電極613を形成する領域が開口するように露光・現像する。そして開口部にITO等の透明電極膜を形成し、残存したフォトレジストを除く方法でもよい。そして隔壁部形成工程へ進む。
【0136】
隔壁部形成工程では、図16(b)に示すように、素子基板601の複数の電極613の一部を覆うように下層バンク618aを形成する。下層バンク618aの材料としては、無機材料である絶縁性のSiO2(酸化珪素)を用いている。下層バンク618aの形成方法としては、例えば、後に形成される発光層Luに対応して、各電極613の表面をレジスト等を用いてマスキングする。そしてマスキングされた素子基板601を真空装置に投入し、SiO2をターゲットあるいは原料としてスパッタリングや真空蒸着することにより下層バンク618aを形成する方法が挙げられる。レジスト等のマスキングは、後に剥離する。なお、下層バンク618aは、SiO2により形成されているため、その膜厚が200nm以下であれば十分な透明性を有していおり、後に正孔注入/輸送層617aおよび発光層Luが積層されても発光を阻害することはない。
【0137】
続いて、各発光層形成領域Aを実質的に区画するように下層バンク618aの上に上層バンク618bを形成する。上層バンク618bの材料としては、後述する発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bの溶媒に対して耐久性を有するものであることが望ましく、さらに、フッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理により撥液化できること、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミドなどといった有機材料が好ましい。上層バンク618bの形成方法としては、例えば、下層バンク618aが形成された素子基板601の表面に感光性の上記有機材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、発光層形成領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板601と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク618bを形成する方法が挙げられる。これにより下層バンク618aと上層バンク618bとを有する隔壁部618が形成される。そして、表面処理工程へ進む。
【0138】
発光層形成領域Aを表面処理する工程では、隔壁部618が形成された素子基板601の表面を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより電極613の表面、下層バンク618aの張り出し部および上層バンク618bの表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。次にCF4等のフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなる上層バンク618bの表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。そして、正孔注入/輸送層形成工程へ進む。
【0139】
正孔注入/輸送層形成工程では、図16(c)に示すように、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体90を発光層形成領域Aに付与する。液状体90を付与する方法としては、図2の液滴吐出装置10を用いる。液滴吐出ヘッド50から吐出された液状体90は、液滴Dとして素子基板601の電極613に着弾して濡れ拡がる。液状体90は発光層形成領域Aの面積に応じて必要量が液滴Dとして吐出される。そして乾燥・成膜工程へ進む。
【0140】
乾燥・成膜工程では、素子基板601を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体90の溶媒成分を乾燥させて除去し、電極613の下層バンク618aにより区画された領域に正孔注入/輸送層617aが形成される。本実施形態では、正孔注入/輸送層形成材料としてPEDOT(Polyethylene Dioxy Thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)を用いた。なお、この場合、各発光層形成領域Aに同一材料からなる正孔注入/輸送層617aを形成したが、後に形成される発光層Luに対応して正孔注入/輸送層617aの材料を発光層形成領域Aごとに変えてもよい。そして次の表面処理工程へ進む。
【0141】
次の表面処理工程では、上記の正孔注入/輸送層形成材料を用いて正孔注入/輸送層617aを形成した場合、その表面が、3種の液状体100R,100G,100Bに対して撥液性を有するので、少なくとも発光層形成領域Aの領域内を再び親液性を有するように表面処理を行う。表面処理の方法としては、3種の液状体100R,100G,100Bに用いられる溶媒を塗布して乾燥する。溶媒の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法等の方法が挙げられる。そして発光層Luの描画工程へ進む。
【0142】
発光層Luの描画工程では、図16(d)に示すように、描画システム1を用いて複数の液滴吐出ヘッド50から複数の発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bを付与する。液状体100Rは発光層617R(赤色)を形成する材料を含み、液状体100Gは発光層617G(緑色)を形成する材料を含み、液状体100Bは発光層617B(青色)を形成する材料を含んでいる。各液状体100R,100G,100Bの発光層形成領域Aへの付与は、上記実施形態1の液状体の描画方法を用いて行う。この場合、各液状体100R,100G,100Bは、それ自体で色の識別が困難である。そこで、液滴Dの着弾状態をカメラ15で観察する方法として、紫外線を放出する照明装置を用いる。これにより、着弾後の液滴Dが紫外線によって励起され発光するので、着弾状態を観察して撮像することが可能となる。着弾状態検査工程で複数のノズル52のノズル情報を入手し、このノズル情報とノズル52の配置情報とに基づいて生成された観察座標に位置する発光層形成領域A(画素領域)の観察を行う。不良画素があるか否か判定して配置情報を補正する。よって、吐出不具合が低減され必要量の各液状体100R,100G,100Bがそれぞれ対応する発光層形成領域Aに液滴Dとして吐出描画される。そして、固化工程へ進む。
【0143】
固化工程では、図16(e)に示すように、吐出描画された各液状体100R,100G,100Bの溶媒成分を乾燥させて除去し、各発光層形成領域Aの正孔注入/輸送層617aに各発光層617R,617G,617Bが積層されるように成膜化する。各液状体100R,100G,100Bが吐出描画された素子基板601の乾燥方法としては、溶媒の蒸発速度をほぼ一定とすることが可能な、減圧乾燥が好ましい。そして陰極形成工程へ進む。
【0144】
陰極形成工程では、図16(f)に示すように、素子基板601の各発光層617R,617G,617Bと上層バンク618bの表面とを覆うように陰極604を形成する。陰極604の材料としては、Ca、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に発光層617R,617G,617Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAl等の膜を形成するのが好ましい。また、陰極604の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極604の酸化を防止することができる。陰極604の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に発光層617R,617G,617Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0145】
このようにして出来上がった素子基板601は、必要量の液状体100R,100G,100Bが対応する発光層形成領域Aに付与され、成膜化後の膜厚がほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bを有する。
【0146】
上記実施形態2の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態2の発光素子部603の製造方法において、発光層Luの描画工程では、上記実施形態1の描画システム1と液状体の描画方法とを用いて素子基板601の発光層形成領域Aに、各液状体100R,100G,100Bが液滴Dとして吐出描画される。したがって、成膜化後の膜厚がほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bを有する発光素子部603を歩留りよく、かつ高い生産性を実現して製造することができる。
【0147】
(2)上記実施形態2の発光素子部603の製造方法により製造された素子基板601を用いれば、各発光層617R,617G,617Bの膜厚がほぼ一定であるため、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗がほぼ一定となる。よって、回路素子部602により発光素子部603に駆動電圧を印加して発光させると、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗ムラによる発光ムラや輝度ムラ等が低減される。すなわち、発光ムラや輝度ムラ等が少なく、見映えのよい表示品質を有する有機EL表示装置600を提供することができる。
【0148】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0149】
(変形例1)上記実施形態1の描画システム1において、画素観察システム2の構成はこれに限定されない。例えば、マザー基板Wの大きさや、チップ領域の面付け数によりカメラ15を複数台設ける構成としてもよい。これによれば、よりスピーディーに観察を行うことができる。また、ヘッド移動機構30の移動台33にカメラ15を搭載せず、カメラ15をY軸方向に移動可能な状態で装備してもよい。
【0150】
(変形例2)上記実施形態1の描画システム1および液状体の描画方法において、記録紙18上に液滴Dを着弾させる方法は、セットテーブル5に記録紙18を載置する方法に限定されない。例えば、Y軸方向に記録紙18を載置する別のテーブルを設け、当該テーブルをX軸方向に移動可能としてもよい。これによれば、マザー基板Wへの吐出描画と並行して記録紙18上に液滴Dを吐出させることができる。
【0151】
(変形例3)上記実施形態1の液状体の描画方法は、これに限定されない。例えば、着弾状態検査工程(ステップS1)は、1枚のマザー基板Wを処理するごとに実施しなくてもよい。複数枚のマザー基板Wを1製造Lotとして、作業開始時やその途中、メンテナンス機構による液滴吐出ヘッド50のメンテナンス後など、定期的に行うようにしてもよい。より生産効率を向上させることができる。
【0152】
(変形例4)上記実施形態1のカラーフィルタの製造方法および上記実施形態2の有機EL素子の製造方法において、着色領域Aおよび発光層形成領域Aの配置は、ストライプ方式に限定されない。デルタ方式や、モザイク方式の配置であっても、上記実施形態1の液状体の描画方法を適用することができる。また、3色の着色層505R,505G,505Bに限定されず、RGB3色に他色を加えた多色のカラーフィルタの製造方法においても適用可能である。
【0153】
(変形例5)上記実施形態1の液状体の描画方法を適用可能なデバイスの製造方法は、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法に限定されない。例えば、図8の液晶表示装置500や図15の有機EL表示装置600において、画素領域ごとに形成されるスイッチング素子の製造方法や画素電極の製造方法についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】描画システムの構成を示す概略図。
【図2】液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図3】(a)および(b)は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略図。
【図4】ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図5】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図6】吐出制御の詳細を示すブロック図。
【図7】吐出制御の制御信号を示す図。
【図8】液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図。
【図9】(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。
【図10】液状体の描画方法を示すフローチャート。
【図11】(a)〜(d)は着弾状態検査工程を説明する概略図。
【図12】(a)および(b)は画素領域における液滴の配置の一例を示す概略平面図。
【図13】(a)はノズルの配置情報を示す表、(b)はノズル情報を示す表。
【図14】画素領域の観察方法を示す概略平面図。
【図15】有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図16】有機EL素子としての発光素子部の製造方法を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0155】
1…描画システム、2…画素観察システム、3…観察部、10…液滴吐出装置、11…統括制御部および座標生成部並びにノズル情報生成部としての上位コンピュータ、14…記憶部、15…撮像機構としてのカメラ、18…着弾観察用被吐出物としての記録紙、49…画像処理部、52…ノズル、80R,80G,80B…着色層形成材料を含む液状体、100R,100G,100B…発光層形成材料を含む液状体、501…基板としての対向基板、505…カラーフィルタ、505R,505G,505B…着色層、601…基板としての素子基板、603…有機EL素子としての発光素子部、617R,617G,617B…発光層、A…画素領域としての着色領域および発光層形成領域、D…液滴、W…ワークとしてのマザー基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と複数のノズルとの相対移動に同期して、前記基板上の複数の画素領域に前記複数のノズルから機能性材料を含む液状体を吐出して形成された画素を観察する画素観察システムであって、
前記複数のノズルにおける前記液状体の吐出状態を示すノズル情報と前記相対移動において前記画素領域ごとに掛かるノズルの配置情報とが少なくとも格納される記憶部と、
前記ノズル情報と前記配置情報とに基づいて前記基板上の観察座標を生成する座標生成部と、
前記座標生成部が生成した前記観察座標に位置する前記画素領域を観察する観察部とを備え、
前記座標生成部が少なくとも1回の前記相対移動における前記複数のノズルが掛かる前記画素領域の座標を前記観察座標として生成することを特徴とする画素観察システム。
【請求項2】
前記ノズル情報が吐出不具合を生ずる不良ノズルの情報を含む場合、前記座標生成部が前記不良ノズルが掛かる前記画素領域にその周辺の前記画素領域を加えた座標を前記観察座標として生成することを特徴とする請求項1に記載の画素観察システム。
【請求項3】
前記不良ノズルの情報が目詰まりノズルと着弾位置ずれノズルおよび吐出量異常ノズルのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画素観察システム。
【請求項4】
前記観察部は、撮像機構と、前記撮像機構により撮像された画像を画像情報に変換する画像処理部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画素観察システム。
【請求項5】
前記複数のノズルから着弾観察用被吐出物の上に前記液状体を液滴として吐出し、着弾した前記液滴を前記撮像機構により撮像して、得られた画像を前記画像処理部により変換した画像情報に基づいて、前記ノズル情報を生成するノズル情報生成部をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の画素観察システム。
【請求項6】
前記着弾観察用被吐出物が記録紙であることを特徴とする請求項5に記載の画素観察システム。
【請求項7】
前記基板と前記複数のノズルとの複数回の相対移動に同期して前記液状体が吐出描画され、
前記記憶部には、前記相対移動ごとの前記配置情報が格納されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画素観察システム。
【請求項8】
前記記憶部には、前記相対移動の往動と復動とに分けて前記配置情報が格納されることを特徴とする請求項7に記載の画素観察システム。
【請求項9】
基板上の複数の画素領域に複数のノズルから機能性材料を含む液状体を液滴として吐出描画する液滴吐出装置と、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画素観察システムと、を備えたことを特徴とする描画システム。
【請求項10】
前記液滴吐出装置と前記画素観察システムとを統括的に制御する統括制御部をさらに備え、
前記画素観察システムによって不良画素情報が得られた場合には、前記統括制御部が前記不良画素情報に基づいて前記不良ノズルを特定し、前記不良ノズルからの前記液滴の吐出を停止して、前記不良ノズル以外のノズルから不足する分の前記液滴を吐出するように前記液滴吐出装置を制御することを特徴とする請求項9に記載の描画システム。
【請求項11】
前記液滴吐出装置と前記画素観察システムとを統括的に制御する統括制御部をさらに備え、
前記画素観察システムによって前記不良画素情報が得られた場合には、前記統括制御部が前記不良画素情報に基づいて前記不良ノズルとしての着弾位置ずれノズルまたは吐出量異常ノズルを特定し、当該ノズルから前記液滴を吐出する駆動条件を変更するように前記液滴吐出装置を制御することを特徴とする請求項9に記載の描画システム。
【請求項12】
基板と複数のノズルとの相対移動に同期して、前記基板上の複数の画素領域に前記複数のノズルから機能性材料を含む液状体を吐出して複数の画素を形成する液状体の描画方法であって、
前記複数のノズルから吐出された前記液状体の吐出状態を示すノズル情報と前記相対移動において前記画素領域ごとに掛かるノズルの配置情報とに基づいて、前記基板上の観察座標を生成する観察座標生成工程と、
前記配置情報に基づいて前記複数の画素領域に前記複数のノズルから前記液状体を液滴として吐出描画する描画工程と、
吐出描画された前記基板の前記観察座標に位置する前記画素領域を観察する観察工程と、
前記観察工程において不良画素が検出された場合には、前記不良画素となった前記画素領域に掛かる不良ノズルを特定して前記配置情報を補正する補正工程とを備え、
前記観察座標生成工程では、少なくとも1回の前記相対移動における前記複数のノズルが掛かる前記画素領域の座標を前記観察座標として生成することを特徴とする液状体の描画方法。
【請求項13】
特定された前記不良ノズルの情報に基づいて、前記ノズル情報を更新するノズル情報更新工程をさらに備えたことを特徴とする請求項12に記載の液状体の描画方法。
【請求項14】
前記ノズル情報が前記不良ノズルの情報を含む場合、前記観察座標生成工程では、前記不良ノズルが掛かる前記画素領域にその周辺の前記画素領域を加えた座標を前記観察座標として生成することを特徴とする請求項12または13に記載の画素観察システム。
【請求項15】
前記不良ノズルの情報が目詰まりノズルと着弾位置ずれノズルおよび吐出量異常ノズルのうち少なくとも1つのノズル情報を含むことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の液状体の描画方法。
【請求項16】
前記複数のノズルから検査用被吐出物の上に前記液状体を液滴として吐出し、前記液滴の着弾径および着弾位置ずれを計測する着弾状態検査工程をさらに備え、
前記ノズル情報が前記着弾径および前記着弾位置ずれの寸法情報を含むことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の液状体の描画方法。
【請求項17】
前記着弾状態検査工程では、前記複数のノズルと前記検査用被吐出物とを相対移動させ、前記相対移動の往動と復動とに分けて、それぞれ仮想の直線上に前記液滴が着弾するように前記複数のノズルを吐出制御することを特徴とする請求項16に記載の液状体の描画方法。
【請求項18】
前記検査用被吐出物が記録紙であることを特徴とする請求項16または17に記載の液状体の描画方法。
【請求項19】
前記配置情報が前記液滴を吐出するノズルの選択情報を含み、
前記補正工程では、前記不良ノズルを選択せずに、前記不良ノズル以外のノズルを選択して不足する分の前記液滴を吐出するように前記配置情報を補正することを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一項に記載の液状体の描画方法。
【請求項20】
前記配置情報が前記複数のノズルごとに前記液滴を吐出する駆動条件を含み、
前記補正工程では、前記不良ノズルとして着弾位置ずれノズルまたは吐出量異常ノズルを特定し、前記着弾位置ずれノズルまたは前記吐出量異常ノズルから前記液滴を吐出する駆動条件を変えることにより前記配置情報を補正することを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一項に記載の液状体の描画方法。
【請求項21】
基板上に区画形成された複数の画素領域に少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項12乃至20のいずれか一項に記載の液状体の描画方法を用い、少なくとも3色の着色層形成材料を含む液状体を前記複数の画素領域に吐出描画する描画工程と、
吐出描画された前記液状体を固化して、前記少なくとも3色の着色層を形成する固化工程とを備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項22】
基板上に区画形成された複数の画素領域に少なくとも発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項12乃至20のいずれか一項に記載の液状体の描画方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の画素領域に吐出描画する描画工程と、
吐出描画された前記液状体を固化して、前記発光層を形成する固化工程とを備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−142654(P2008−142654A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334154(P2006−334154)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】