説明

異常な細胞増殖の治療のためのPTK2−インヒビターとしての2,4−ジアミノピリミジン誘導体

本発明は一般式(1)
【化1】


(式中、R1 - R3 及びnは請求項1に定義されたとおりである)
の化合物(これらは過度又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療に適している)、及び上記性質を有する薬物を調製するためのそれらの使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般式(1)
【化1】

【0002】
(式中、基R1 - R3 及びnは特許請求の範囲及び明細書に示された意味を有する)
の新規2,4-ジアミノピリミジン、これらの異性体、これらのピリミジンの調製方法及び薬物としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
侵食及び転移のための性質を獲得する腫瘍細胞は特別な生存シグナルを必要とする。これらのシグナルはそれらが、とりわけ、細胞接着の損失により誘発される特別なアポトーシスメカニズム(アノイキス)を克服することを可能にする。このプロセスにおいて、焦点接着キナーゼ (FAK/PTK2)が一方で所謂“焦点接着”により細胞-基質相互作用を制御し、他方でアノイキス耐性を付与する必須のシグナル分子の一つである。PTK2を抑制することによるこれらのメカニズムの干渉は腫瘍細胞のアポトーシス細胞死をもたらし、腫瘍の侵食的かつ転移の増殖を制限し得る。加えて、焦点接着キナーゼは腫瘍関連内皮細胞の増殖、遊走及び生存に重大な意義を有する。それ故、坑血管形成誘導活性がまたPTK2を抑制することにより得られるかもしれない。
ピリミジンはキナーゼのインヒビターとして一般に知られている。こうして、例えば、4位に非芳香族基を有する置換ピリミジンが国際特許出願WO 02/096888、WO 03/030909、WO 2004/04118、WO 2004/048343 及びWO2008/129380に坑癌活性を有する活性成分として記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は過度又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患の予防及び/又は治療に使用し得る新規活性物質を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くことに、一般式 (1)の化合物(式中、基R1 - R3 及びnは以下に示される意味を有する)は、特別なチロシン-キナーゼのインヒビターとして作用することがわかった。こうして、本発明の化合物は、例えば、特別なチロシン-キナーゼの活性と関連し、過度又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患を治療するのに使用し得る。
本発明は一般式 (1)の化合物(任意にこれらの互変異性体、ラセミ体、鏡像体、ジアステレオマー及びこれらの混合物の形態であってもよく、そして必要によりこれらの薬理学上許される酸付加塩の形態であってもよい)に関する。
【0006】
【化2】

【0007】
式中、
R1 はRa、Rb 及び1個以上の同じ又は異なるRb 及び/又はRc により置換されたRa の中から選ばれた基を表し、
R2 及びR3 は夫々の場合に互いに独立にハロゲン、-ORc 及びC1-4アルキルの中から選ばれた基を表し、
夫々のRaは互いに独立にC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、C4-16シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキルアルキル、5-12員ヘテロアリール及び6-18員ヘテロアリールアルキルの中から選ばれ、
夫々のRbは好適な基であり、夫々が独立に=O、-ORc、C1-3ハロアルキルオキシ、-OCF3、=S、-SRc、=NRc、=NORc、=NNRcRc、=NN(Rg)C(O)NRcRc、-NRcRc、-ONRcRc、-N(ORc)Rc、-N(Rg)NRcRc、ハロゲン、-CF3、-CN、-NC、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)Rc、-S(O)ORc、-S(O)2Rc、-S(O)2ORc、-S(O)NRcRc、-S(O)2NRcRc、-OS(O)Rc、-OS(O)2Rc、-OS(O)2ORc、-OS(O)NRcRc、-OS(O)2NRcRc、-C(O)Rc、-C(O)ORc、-C(O)SRc、-C(O)NRcRc、-C(O)N(Rg)NRcRc、-C(O)N(Rg)ORc、-C(NRg)NRcRc、-C(NOH)Rc、-C(NOH)NRcRc、-OC(O)Rc、-OC(O)ORc、-OC(O)SRc、-OC(O)NRcRc、-OC(NRg)NRcRc、-SC(O)Rc、-SC(O)ORc、-SC(O)NRcRc、-SC(NRg)NRcRc、-N(Rg)C(O)Rc、-N[C(O)Rc]2、-N(ORg)C(O)Rc、-N(Rg)C(NRg)Rc、-N(Rg)N(Rg)C(O)Rc、-N[C(O)Rc]NRcRc、-N(Rg)C(S)Rc、-N(Rg)S(O)Rc、-N(Rg)S(O)ORc、-N(Rg)S(O)2Rc、-N[S(O)2Rc]2、-N(Rg)S(O)2ORc、-N(Rg)S(O)2NRcRc、-N(Rg)[S(O)2]2Rc、-N(Rg)C(O)ORc、-N(Rg)C(O)SRc、-N(Rg)C(O)NRcRc、-N(Rg)C(O)NRgNRcRc、-N(Rg)N(Rg)C(O)NRcRc、-N(Rg)C(S)NRcRc、-[N(Rg)C(O)]2Rc、-N(Rg)[C(O)]2Rc、-N{[C(O)]2Rc}2、-N(Rg)[C(O)]2ORc、-N(Rg)[C(O)]2NRcRc、-N{[C(O)]2ORc}2、-N{[C(O)]2NRcRc}2、-[N(Rg)C(O)]2ORc、-N(Rg)C(NRg)ORc、-N(Rg)C(NOH)Rc、-N(Rg)C(NRg)SRc 及び-N(Rg)C(NRg)NRcRcの中から選ばれ、
【0008】
夫々のRcは互いに独立に水素、又はC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、C4-11シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキルアルキル、5-12員ヘテロアリール及び6-18 員ヘテロアリールアルキルの中から選ばれた基(必要により1個以上の同じ又は異なるRd及び/又はReにより置換されていてもよい)を表し、
夫々のRdは好適な基であり、夫々が独立に=O、-ORe、C1-3ハロアルキルオキシ、-OCF3、=S、-SRe、=NRe、=NORe、=NNReRe、=NN(Rg)C(O)NReRe、-NReRe、-ONReRe、-N(Rg)NReRe、ハロゲン、-CF3、-CN、-NC、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)Re、-S(O)ORe、-S(O)2Re、-S(O)2ORe、-S(O)NReRe、-S(O)2NReRe、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)2ORe、-OS(O)NReRe、-OS(O)2NReRe、-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)SRe、-C(O)NReRe、-C(O)N(Rg)NReRe、-C(O)N(Rg)ORe、-C(NRg)NReRe、-C(NOH)Re、-C(NOH)NReRe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)SRe、-OC(O)NReRe、-OC(NRg)NReRe、-SC(O)Re、-SC(O)ORe、-SC(O)NReRe、-SC(NRg)NReRe、-N(Rg)C(O)Re、-N[C(O)Re]2、-N(ORg)C(O)Re、-N(Rg)C(NRg)Re、-N(Rg)N(Rg)C(O)Re、-N[C(O)Re]NReRe、-N(Rg)C(S)Re、-N(Rg)S(O)Re、-N(Rg)S(O)ORe、-N(Rg)S(O)2Re、-N[S(O)2Re]2、-N(Rg)S(O)2ORe、-N(Rg)S(O)2NReRe、-N(Rg)[S(O)2]2Re、-N(Rg)C(O)ORe、-N(Rg)C(O)SRe、-N(Rg)C(O)NReRe、-N(Rg)C(O)NRgNReRe、-N(Rg)N(Rg)C(O)NReRe、-N(Rg)C(S)NReRe、-[N(Rg)C(O)]2Re、-N(Rg)[C(O)]2Re、-N{[C(O)]2Re}2、-N(Rg)[C(O)]2ORe、-N(Rg)[C(O)]2NReRe、-N{[C(O)]2ORe}2、-N{[C(O)]2NReRe}2、-[N(Rg)C(O)]2ORe、-N(Rg)C(NRg)ORe、-N(Rg)C(NOH)Re、-N(Rg)C(NRg)SRe 及び-N(Rg)C(NRg)NReReの中から選ばれ、
夫々のReは互いに独立に水素、又はC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、C4-11シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキルアルキル、5-12員ヘテロアリール及び6-18員ヘテロアリールアルキルの中から選ばれた基(任意に1個以上の同じ又は異なるRf及び/又はRgにより置換されていてもよい)を表し、
夫々のRfは好適な基であり、夫々独立にハロゲン及び-CF3の中から選ばれ、かつ
夫々のRgは互いに独立に水素、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、C4-11シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキル、5-12員ヘテロアリール又は6-18員ヘテロアリールアルキルを表し、かつ
nは1又は2に等しくてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一局面において、本発明はR3がメチルである、一般式(1) の化合物に関する。
別の局面において、本発明はR2が-ORcである、一般式(1) の化合物に関する。
別の局面において、本発明はR2がメトキシである、一般式(1) の化合物に関する。
別の局面において、本発明は下記の化合物の中から選ばれた、一般式(1) の化合物に関する(下記中、Chiralはキラルを意味する)。
【0010】
【化3】





















【0011】
別の局面において、本発明は薬物としての使用のための一般式(1)の化合物、又はこれらの医薬上有効な塩に関する。
別の局面において、本発明は坑増殖活性及び/又はプロ-アポトーシス(pro-apoptotic)活性を有する薬物を調製するための一般式(1)の化合物、又はこれらの医薬上有効な塩に関する。
別の局面において、本発明は任意に通常の賦形剤及び/又は担体と組み合わせて、一般式(1)の一種以上の化合物又はこれらの生理学上許される塩を活性物質として含む医薬製剤に関する。
別の局面において、本発明は癌、感染症、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療及び/又は予防のための薬物を調製するための一般式(1)の化合物の使用に関する。
別の局面において、本発明は一般式(1)の化合物(任意にこれらの互変異性体、ラセミ体、鏡像体、ジアステレオマー及び混合物の形態であってもよく、任意にこれらの薬理学上許される酸付加塩の形態であってもよい)、及び式(1)とは異なる少なくとも一種の更に別の細胞増殖抑制性活性物質又は細胞傷害性活性物質を含む医薬製剤に関する。
【0012】
定義
本明細書に使用されるように、特にことわらない限り、下記の定義が適用される。
アルキルはサブグループ飽和炭化水素鎖及び不飽和炭化水素鎖から構成されるが、後者は二重結合を有する炭化水素鎖(アルケニル)及び三重結合を有する炭化水素鎖(アルキニル)に更に細分されてもよい。アルケニルは少なくとも一つの二重結合を含み、アルキニルは少なくとも一つの三重結合を含む。炭化水素鎖が少なくとも一つの二重結合そしてまた少なくとも一つの三重結合の両方を有するべきである場合、定義によればそれはアルキニルサブグループに属するであろう。全ての上記サブグループは直鎖(非分岐)及び分岐に更に細分されてもよい。アルキルが置換されている場合、その置換は全ての水素を有する炭素原子の位置で夫々の場合に互いに独立に一置換又は多置換であってもよい。
個々のサブグループの代表の例が以下にリストされる。
【0013】
直鎖(非分岐)又は分岐飽和炭化水素鎖:
メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル(1-メチルエチル)、n-ブチル、1-メチルプロピル、イソブチル(2-メチルプロピル)、sec.-ブチル(1-メチルプロピル)、tert.-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、n-ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、イソペンチル(3-メチルブチル)、ネオペンチル(2,2-ジメチル-プロピル)、n-ヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-メチル-ペンチル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、2,2,3-トリメチルブチル、3-エチルペンチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等。
直鎖(非分岐)又は分岐アルケニル
ビニル(エテニル)、プロプ-1-エンイル(prop-1-enyl)、アリル(プロプ-2-エンイル)、イソプロペニル、ブト-1-エンイル(but-1-enyl)、ブト-2-エンイル、ブト-3-エンイル、2-メチル-プロプ-2-エンイル、2-メチル-プロプ-1-エンイル、1-メチル-プロプ-2-エンイル、1-メチル-プロプ-1-エンイル、1-メチリデンプロピル、ペント-1-エンイル(pent-1-enyl)、ペント-2-エンイル、ペント-3-エンイル、ペント-4-エンイル、3-メチル-ブト-3-エンイル、3-メチル-ブト-2-エンイル、3-メチル-ブト-1-エンイル、ヘキサ-1-エンイル(hex-1-enyl)、ヘキサ-2-エンイル、ヘキサ-3-エンイル、ヘキサ-4-エンイル、ヘキサ-5-エンイル、2,3-ジメチル-ブト-3-エンイル、2,3-ジメチル-ブト-2-エンイル、2-メチリデン-3-メチルブチル、2,3-ジメチル-ブト-1-エンイル、ヘキサ-1,3-ジエンイル、ヘキサ-1,4-ジエンイル、ペンタ-1,4-ジエンイル、ペンタ-1,3-ジエンイル、ブタ-1,3-ジエンイル(buta-1,3-dienyl)、2,3-ジメチルブタ-1,3-ジエン等。
【0014】
直鎖(非分岐)又は分岐アルキニル
エチニル、プロプ-1-インイル(prop-1-ynyl)、プロプ-2-インイル、ブト-1-インイル(but-1-ynyl)、ブト-2-インイル、ブト-3-インイル、1-メチル-プロプ-2-インイル等。
用語プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等は、更に定義しないでも、相当する数の炭素原子を有する飽和炭化水素基(全ての異性体形態が含まれる)を意味する。
用語プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等は、更に定義しないでも、相当する数の炭素原子及び二重結合を有する不飽和炭化水素基(全ての異性体形態、即ち、(Z)/(E)-異性体が適当な場合に含まれる)を意味する。
用語ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、デカジエニル等は、更に定義しないでも、相当する数の炭素原子及び二つの二重結合を有する不飽和炭化水素基(全ての異性体形態、即ち、(Z)/(E)-異性体が適当な場合に含まれる)を意味する。
【0015】
用語プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等は、更に定義しないでも、相当する数の炭素原子及び三重結合を有する不飽和炭化水素基(全ての異性体形態が含まれる)を意味する。
ヘテロアルキルという用語はその最も広い意味で先に定義されたアルキルから、炭化水素鎖中で、1個以上の基-CH3が互いに独立に基-OH、-SH又は-NH2により置換され、1個以上の基-CH2-が互いに独立に基-O-、-S-又は-NH-により置換され、1個以上の基
【化4】

が下記の基により置換され、
【化5】

1個以上の基=CH-が基=Nにより置換され、1個以上の基=CH2が基=NHにより置換され、又は1個以上の基≡CHが基≡Nにより置換される場合に誘導し得る基を意味し、全体で最大3個のヘテロ原子のみがヘテロアルキル中に存在してもよいが、2個の酸素原子の間また2個の硫黄原子の間又は1個の酸素原子と1個の硫黄原子の間に少なくとも1個の炭素原子がある必要があり、全体としての基が化学的に安定である必要がある。
【0016】
アルキルからの間接的な定義/誘導体化からヘテロアルキルが1個以上のヘテロ原子を有するサブグループ飽和炭化水素鎖、ヘテロアルケニル及びヘテロアルキニルから構成されることが直ちに明らかであり、一つの更なる細分が直鎖(非分岐)及び分岐に行なわれてもよい。ヘテロアルキルが置換されている場合、その置換は夫々の場合に全ての水素を有する酸素原子、硫黄原子、窒素原子及び/又は炭素原子の位置で互いに独立に一置換又は多置換であってもよい。ヘテロアルキルそれ自体は炭素原子及びヘテロ原子の両方を介して置換基として分子に結合されてもよい。
【0017】
典型例が以下にリストされる:
ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル(1-ジメチルアミノエチル、2-ジメチルアミノエチル)、ジメチルアミノプロピル(1-ジメチルアミノプロピル、2-ジメチルアミノプロピル、3-ジメチルアミノプロピル)、ジエチルアミノメチル、ジエチルアミノエチル(1-ジエチルアミノエチル、2-ジエチルアミノエチル)、ジエチルアミノプロピル(1-ジエチルアミノプロピル、2-ジエチルアミノプロピル、3-ジエチルアミノプロピル)、ジイソプロピルアミノエチル(1-ジイソプロピルアミノエチル、2-ジイソプロピルアミノエチル)、ビス-2-メトキシエチルアミノ、[2-(ジメチルアミノ-エチル)-エチル-アミノ]-メチル、3-[2-(ジメチルアミノ-エチル)-エチル-アミノ]-プロピル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メトキシメチル、2-メトキシエチル等。
ハロゲンはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及び/又はヨウ素原子を表す。
ハロアルキルはその最も広い意味で先に定義されたアルキルから、炭化水素鎖の1個以上の水素原子が互いに独立にハロゲン原子(これらは同じであってもよく、また異なっていてもよい)により置換される場合に誘導される。アルキルからの間接的な定義/誘導体化からハロアルキルがサブグループ飽和ハロ炭化水素鎖、ハロアルケニル及びハロアルキニルから構成されることが直ちに明らかであり、更なる細分が直鎖(非分岐)及び分岐になされてもよい。ハロアルキルが置換されている場合、その置換は夫々の場合に全ての水素を有する炭素原子の位置で互いに独立に一置換又は多置換であってもよい。
典型例として、-CF3、-CHF2、-CH2F、-CF2CF3、-CHFCF3、-CH2CF3、-CF2CH3、−CHFCH3、-CF2CF2CF3、-CF2CH2CH3、-CF=CF2、-CCl=CH2、-CBr=CH2、-CI=CH2、-C≡C-CF3、-CHFCH2CH3、及び-CHFCH2CF3が挙げられる。
シクロアルキルはサブグループ単環式炭化水素環、二環式炭化水素環及びスピロ炭化水素環から構成され、夫々のサブグループは飽和及び不飽和(シクロアルケニル)に更に細分されてもよい。不飽和という用語は当該環系中に少なくとも一つの二重結合があることを意味するが、芳香族系が形成されない。二環式炭化水素環中で、二つの環はそれらが少なくとも二つの炭素原子を共有するように結合される。スピロ炭化水素環中で、1個の炭素原子(スピロ原子)が二つの環により共有される。シクロアルキルが置換されている場合、その置換は夫々の場合に全ての水素を有する炭素原子の位置で互いに独立に一置換又は多置換であってもよい。シクロアルキルそれ自体は環系のあらゆる好適な位置を介して置換基として分子に結合されてもよい。
【0018】
個々のサブグループの典型例が以下にリストされる。
飽和単環式炭化水素環:
シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等。
不飽和単環式炭化水素環:
シクロプロプ-1-エンイル、シクロプロプ-2-エンイル、シクロブト-1-エンイル、シクロブト-2-エンイル、シクロペント-1-エンイル、シクロペント-2-エンイル、シクロペント-3-エンイル、シクロヘキサ-1-エンイル、シクロヘキサ-2-エンイル、シクロヘキサ-3-エンイル、シクロヘプト-1-エンイル、シクロヘプト-2-エンイル、シクロヘプト-3-エンイル、シクロヘプト-4-エンイル、シクロブタ-1,3-ジエンイル、シクロペンタ-1,4-ジエンイル、シクロペンタ-1,3-ジエンイル、シクロペンタ-2,4-ジエンイル、シクロヘキサ-1,3-ジエンイル、シクロヘキサ-1,5-ジエンイル、シクロヘキサ-2,4-ジエンイル、シクロヘキサ-1,4-ジエンイル、シクロヘキサ-2,5-ジエンイル等。
飽和及び不飽和二環式炭化水素環:
ビシクロ[2.2.0]ヘキシル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[4.3.0]ノニル(オクタヒドロインデニル)、ビシクロ[4.4.0]デシル(デカヒドロナフタレン)、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエンイル(ノルボルナ-2,5-ジエンイル)、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンイル(ノルボルネニル)、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル(ノルカラニル)、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル(ピナニル)等。
飽和及び不飽和スピロ炭化水素環:
スピロ[2.5]オクチル、スピロ[3.3]ヘプチル、スピロ[4.5]デカ-2-エン等。
【0019】
シクロアルキルアルキルは先に定義されたアルキル基及びシクロアルキル基の組み合わせ(夫々の場合にそれらの最も広い意味で)を表す。置換基としてのアルキル基が分子に直接結合され、順にシクロアルキル基により置換される。アルキル及びシクロアルキルはこの目的に適している炭素原子を介して両方の基中で結合されてもよい。アルキル及びシクロアルキルの夫々のサブグループがまたその二つの基の組み合わせ中に含まれる。
アリールは少なくとも一つの芳香族環を含む単環式炭素環、二環式炭素環又は三環式炭素環を表す。アリールが置換されている場合、その置換は夫々の場合に、全ての水素を有する炭素原子の位置で、互いに独立に一置換又は多置換であってもよい。アリールそれ自体は環系のあらゆる好適な位置を介して置換基として分子に結合されてもよい。
典型例として、フェニル、ナフチル、インダニル(2,3-ジヒドロインデニル)、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル及びフルオレニルが挙げられる。
アリールアルキルは、夫々の場合にそれらの最も広い意味で、先に定義されたアルキル基及びアリール基の組み合わせを表す。置換基としてのアルキル基が分子に直接結合され、順にアリール基により置換される。アルキル及びアリールは両方の基中でこの目的に適したあらゆる炭素原子を介して結合されてもよい。アルキル及びアリールの夫々のサブグループがまたその二つの基の組み合わせ中に含まれる。
典型例として、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、フェニルビニル、フェニルアリル等が挙げられる。
ヘテロアリールは単環式芳香族環又は少なくとも一つの芳香族環を含む多環式環を表し、これらは、相当するアリール又はシクロアルキルと比較して、1個以上の炭素原子に代えて互いに独立に窒素、硫黄及び酸素の中から選ばれた、1個以上の同じ又は異なるヘテロ原子を含むが、得られる基は化学的に安定である必要がある。ヘテロアリールが置換されている場合、その置換は夫々の場合に、全ての水素を有する炭素原子及び/又は窒素原子の位置で、互いに独立に一置換又は多置換であってもよい。置換基としてのヘテロアリールそれ自体は環系のあらゆる好適な位置(炭素及び窒素の両方)を介して分子に結合されてもよい。
典型例が以下にリストされる。
【0020】
単環式ヘテロアリール:
フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ピリジル-N-オキサイド、ピロリル-N-オキサイド、ピリミジニル-N-オキサイド、ピリダジニル-N-オキサイド、ピラジニル-N-オキサイド、イミダゾリル-N-オキサイド、イソオキサゾリル-N-オキサイド、オキサゾリル-N-オキサイド、チアゾリル-N-オキサイド、オキサジアゾリル-N-オキサイド、チアジアゾリル-N-オキサイド、トリアゾリル-N-オキサイド、テトラゾリル-N-オキサイド等。
多環式ヘテロアリール:
インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、イソキノリニル、キノリニル、キノキサリニル、シノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ベンゾトリアジニル、インドリジニル、オキサゾロピリジル、イミダゾピリジル、ナフチリジニル、インドリニル、イソクロマニル、クロマニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソインドリニル、イソベンゾテトラヒドロフリル、イソベンゾテトラヒドロチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ピリドピリジル、ベンゾテトラヒドロフリル、ベンゾテトラヒドロチエニル、プリニル、ベンゾジオキソリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、プテリジニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピリジル、イミダゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソオキサジニル、ベンゾイソオキサジニル、ベンゾオキサジニル、ジヒドロベンゾイソチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クマリニル、イソクマリニル、クロモニル、クロマノニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキノリノニル、ジヒドロイソキノリノニル、ジヒドロクマリニル、ジヒドロイソクマリニル、イソインドリノニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリノニル、キノリニル-N-オキサイド、インドリル-N-オキサイド、インドリニル-N-オキサイド、イソキノリル-N-オキサイド、キナゾリニル-N-オキサイド、キノキサリニル-N-オキサイド、フタラジニル-N-オキサイド、インドリジニル-N-オキサイド、インダゾリル-N-オキサイド、ベンゾチアゾリル-N-オキサイド、ベンゾイミダゾリル-N-オキサイド、ベンゾチオピラニル-S-オキサイド及びベンゾチオピラニル-S,S-ジオキサイド等。
【0021】
ヘテロアリールアルキルは、先に定義されたアルキル基とヘテロアリール基(夫々の場合にそれらの最も広い意味で)の組み合わせを表す。置換基としてのアルキル基が分子に直接結合され、順にヘテロアリール基により置換される。アルキル及びヘテロアリールの結合はこの目的に適したあらゆる炭素原子を介してアルキル側で、またこの目的に適したあらゆる炭素原子又は窒素原子によりヘテロアリール側で達成されてもよい。アルキル及びヘテロアリールの夫々のサブグループがまたその二つの基の組み合わせ中に含まれる。
ヘテロシクロアルキルという用語は炭化水素環中で1個以上の基-CH2-が互いに独立に基-O-、-S-もしくは-NH-により置換され、又は1個以上の基=CH-が基=N-により置換される場合に先に定義されたシクロアルキルから誘導される基を意味し、合計で5個以下のヘテロ原子が存在してもよく、2個の酸素原子の間また2個の硫黄原子の間又は1個の酸素原子と1個の硫黄原子の間に少なくとも1個の炭素原子がある必要があり、また全体としての基が化学的に安定である必要がある。ヘテロ原子は全ての可能な酸化段階で同時に存在してもよい(硫黄→スルホキシド-SO-、スルホン-SO2-;窒素→N-オキサイド)。ヘテロシクロアルキルはサブグループ単環式ヘテロ環、二環式ヘテロ環及びスピロヘテロ環から構成されることがシクロアルキルからの間接的定義/誘導体化から直ちに明らかであり、夫々のサブグループはまた飽和及び不飽和(ヘテロシクロアルケニル)に更に細分し得る。不飽和という用語は当該環系中に少なくとも一つの二重結合があることを意味するが、芳香族系は形成されない。二環式ヘテロ環では、二つの環はそれらが共有して少なくとも2個の原子を有するように結合される。スピロヘテロ環では、1個の炭素原子(スピロ原子)が二つの環により共有される。ヘテロシクロアルキルが置換されている場合、その置換は全ての水素を有する炭素原子及び/窒素原子の位置で、互いに独立に、夫々の場合に一置換又は多置換であってもよい。置換基としてのヘテロシクロアルキルそれ自体は環系のあらゆる好適な位置を介して分子に結合されてもよい。
【0022】
個々のサブグループの典型例が以下にリストされる。
単環式ヘテロ環(飽和及び不飽和):
テトラヒドロフリル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキシラニル、アジリジニル、アゼチジニル、1,4-ジオキサニル、アゼパニル、ジアゼパニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ホモモルホリニル、ホモピペリジニル、ホモピペラジニル、ホモチオモルホリニル、チオモルホリニル-S-オキサイド、チオモルホリニル-S,S-ジオキサイド、1,3-ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、[1,4]-オキサゼパニル、テトラヒドロチエニル、ホモチオモルホリニル-S,S-ジオキサイド、オキサゾリジノニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピロリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル-S-オキサイド、テトラヒドロチエニル-S,S-ジオキサイド、ホモチオモルホリニル-S-オキサイド、2,3-ジヒドロアゼト、2H-ピロリル、4H-ピラニル、1,4-ジヒドロピリジニル等。
二環式ヘテロ環(飽和及び不飽和):
8-アザビシクロ[3.2.1]オクチル、8-アザビシクロ[5.1.0]オクチル、2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、8-オキサ-3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、3.8-ジアザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、2,5-ジアザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3.8-ジアザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、3.9-ジアザ-ビシクロ[4.2.1]ノニル、2,6-ジアザ-ビシクロ[3.2.2]ノニル、ヘキサヒドロ-フロ[3,2-b]フリル等。
スピロヘテロ環(飽和及び不飽和):
1,4-ジオキサ-スピロ[4.5]デシル、1-オキサ-3.8-ジアザ-スピロ[4.5]デシル、及び2,6-ジアザ-スピロ[3.3]ヘプチル、2,7-ジアザ-スピロ[4.4]ノニル、2,6-ジアザ-スピロ[3.4]オクチル、3,9-ジアザ-スピロ[5.5]ウンデシル、2,8-ジアザ-スピロ[4.5]デシル等。
【0023】
ヘテロシクロアルキルアルキルは、夫々の場合にそれらの最も広い意味で、先に定義されたアルキル基とヘテロシクロアルキル基の組み合わせを表す。置換基としてのアルキル基が分子に直接結合され、順にヘテロシクロアルキル基により置換される。アルキル及びヘテロシクロアルキルの結合はこの目的に適したあらゆる炭素原子を介してアルキル側で、またこの目的に適したあらゆる炭素原子又は窒素原子によりヘテロシクロアルキル側で達成されてもよい。アルキル及びヘテロシクロアルキルの夫々のサブグループがまたその二つの基の組み合わせ中に含まれる。
“好適な置換基”という用語は、一方でその原子価のためにフィットし、他方で化学安定性を有する系をもたらす置換基を表す。
“プロドラッグ”はその前駆体代謝産物の形態の活性物質を意味する。区別が部分マルチ-パート担体-プロドラッグ系と生物変換系の間でなされてもよい。後者は化学的又は生物学的代謝を必要とする形態の活性物質を含む。当業者はこの種のプロドラッグ系を良く知っているであろう (Sloan, Kenneth B.; Wasdo, Scott C. “浸透増進におけるプロドラッグの役割 経皮浸透エンハンサー” (第2編) (2006).51-64; Lloyd, Andrew W. “プロドラッグ 薬物デザイン及び作用の原理についてのSmith 及びWilliams の序論” (第4編) (2006), 211-232; Neervannan, Seshadri. “薬物中の溶解性及び溶解速度に影響する戦略が最適化をもたらす:塩選択及びプロドラッグデザインアプローチ”American Pharmaceutical Review (2004), 7(5), 108.110-113)。好適なプロドラッグは、例えば、酵素により開裂可能なリンカー(例えば、カルバメート、ホスフェート、N-グリコシド)又はジスルフィド基を介して溶解改良物質(例えば、テトラエチレングリコール、サッカリド、アミノ酸)に結合されている一般式の物質を含む。担体-プロドラッグ系は最も簡単な制御できるメカニズムにより開裂し得るマスキング基に結合された、活性物質そのものを含む。本発明の化合物中の本発明のマスキング基の機能は細胞摂取を改善するために電荷を中和することである。本発明の化合物がマスキング基とともに使用される場合、これらはまた更にその他の薬理学的パラメーター、例えば、経口生物利用能、組織分布、薬物速度論及び非特異性ホスファターゼに対する安定性に影響し得る。活性物質の遅延放出はまた徐放性作用を伴なってもよい。加えて、変更された代謝が生じることがあり、こうして活性物質の一層高い効率又は器官特異性をもたらし得る。プロドラッグ製剤の場合、マスキング基又はマスキング基を活性物質に結合するリンカーはプロドラッグが血流に溶解されるのに充分に親水性であり、活性部位に達するのに充分な化学的かつ酵素的安定性を有し、またそれが拡散制御された膜輸送に適することを確実にするのに充分に親水性であるように選ばれる。更に、それは妥当な期間内に活性物質の化学的又は酵素的に誘導される放出を可能にすべきであり、言うまでもなく、放出される補助成分は無毒性であるべきである。しかしながら、本発明の範囲内で、マスク又はリンカーを含まない化合物、及びマスクは酵素プロセス及び生化学プロセスにより摂取された化合物から最初に細胞中で調製される必要があるプロドラッグと見なされるかもしれない。
【0024】
略号のリスト
abs. 無水
Ac アセチル
Bn ベンジル
Boc tert.-ブチルオキシカルボニル
Bu ブチル
c 濃度
chex シクロヘキサン
d 日
TLC 薄層クロマトグラフィー
DCM ジクロロメタン
DEA ジエチルアミン
DIPEA N-エチル-N,N-ジイソプロピルアミン(ヒューニッヒ塩基)
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EE 酢酸エチル
eq 当量
ESI 電子噴霧イオン化
Et エチル
EtOH エタノール
h 時間
【0025】
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムテトラフルオロホスフェート
hex ヘキシル
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
i イソ
IR 赤外分析法
cat. 触媒
conc. 濃
b.p. 沸点
LC 液体クロマトグラフィー
soln. 溶液
Me メチル
MeOH メタノール
min 分
【0026】
MPLC 中間圧力液体クロマトグラフィー
MS 質量分析法
NMP N-メチルピロリドン
NP 順相
n.a. 入手できない
Ph フェニル
Pr プロピル
Py ピリジン
rac ラセミ
Rf(Rf) 保持係数
RP 逆相
RT 周囲温度
TBTU O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムテトラフルオロボレート
temp. 温度
tert. ターシャリー
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
tRet. 保持時間(HPLC)
UV 紫外線
本発明の特徴及び利点が下記の詳細な実施例から明らかになり、これらが本発明の基礎を例として説明するが、その範囲を限定しない。
【実施例】
【0027】
本発明の化合物の調製
一般
特にことわらない限り、全ての反応を商業上得られる装置中で化学研究室で普通に使用される方法を使用して行なう。空気及び/又は水分に敏感である出発物質を保護ガスの下で貯蔵し、それらを使用する相当する反応及びその操作を保護ガス(窒素又はアルゴン)の下で行なう。
マイクロウェーブ反応を、好ましくは撹拌しながら、シールされた容器(好ましくは2、5又は20mL)中でバイオテージ製イニシエーター中又はCEM製エクスプローラー中で行なう。
クロマトグラフィー
分取中間圧力クロマトグラフィー(MPLC、順相)につき、ミリポア製であるシリカゲル(名称:グラニュラ・シリカSi-60A 35-70μm)又はマチェリイ・ナゲル製C-18 RP-シリカゲル(RP-相)(名称:ポリゴプレプ100-50 C18)を使用する。
薄層クロマトグラフィーをメルク製のガラス上の既製TLCシリカゲル60プレート(蛍光指示薬F-254を含む)上で行なう。
分取高圧クロマトグラフィー(HPLC)をウォーターズ製カラム(名称: XTerra Prep. MS C18, 5 μM, 30 x 100 mm もしくはXTerra Prep. MS C18, 5 μm, 50 x 100 mm OBD 又はシンメトリイC18, 5 μm, 19 x 100 mm 或いはサンファイアーC18 OBD, 19 x 100 mm, 5 μm もしくはサンファイアーPrep C 10 μm OBD 50 x 150 mm 又はX-ブリッジ Prep C18 5 μm OBD 19 x 50 mm)、アギレント製カラム(名称:ゾルバックスSB-C8 5 μm PrepHT 21.2 x 50 mm) 及びフェノメネックス製カラム(名称:ジェミニC18 5 μm AXIA 21.2 x 50 mm 又はジェミニC18 10 μm 50 x 150 mm) を使用して行ない、分析HAPC(反応制御)をアギレント製カラム(名称:ゾルバックスSB-C8, 5 μm, 21.2 x 50 mm 又はゾルバックスSB-C8 3.5 μm 2.1 x 50 mm) 及びフェノメネックス製カラム(名称:ジェミニC18 3 μm 2 x 30 mm)を用いて行なう。
【0028】
HPLC 質量分析法/UV分析法
実施例を特性決定するための保持時間/MS-ESI+ を、アギレント製HPLC-MS 装置(質量検出器を備えた高性能液体クロマトグラフィー)を使用して得る。注入ピークで溶離する化合物に保持時間tRet. = 0.00を与える。
方法 A:
カラム: ウォーターズ, Xterra MS C18, 2.5 μm, 2.1 x 30 mm, 部品番号186000592
溶離剤: A: H2O と0.1% HCOOH; B: アセトニトリル (HPLC 等級)
検出: MS: ポジチブ及びネガチブ方式
質量範囲: 120 - 900 m/z
フラグメンター: 120
ゲイン EMV: 1; 閾値: 150; ステップサイズ:0.25; UV: 254 nm ; バンド幅: 1
注入: 注入容積5 μL
分離: 流量 1.10 mL/分
カラム温度: 40℃
勾配: 0.00 分: 5 % 溶媒 B
0.00 - 2.50 分: 5 % → 95 % 溶媒 B
2.50 - 2.80 分: 95 % 溶媒 B
2.81 - 3.10 分: 95 % → 5 % 溶媒 B
【0029】
方法 B:
カラム: ウォーターズ, Xterra MS C18, 2.5 μm, 2.1 x 50 mm, 部品番号186000594
溶離剤: A: H2O と0.1 % HCOOH; B: アセトニトリルと0.1 % HCOOH
検出: MS: ポジチブ及びネガチブ方式
質量範囲: 100 - 1200 m/z
フラグメンター: 70
ゲイン EMV: 閾値: 1 mAU; ステップサイズ: 2 nm; UV: 254 nmだけでなく230 nm
注入: 標準 1 μL
流量: 0.6 mL/分
カラム温度: 35℃
勾配: 0.00 分: 5 % 溶媒 B
0.00 - 2.50 分: 5 % → 95 % 溶媒 B
2.50 - 4.00 分: 95 % 溶媒 B
4.00 - 4.50 分: 95 % → 5 % 溶媒 B
4.50 - 6.00 分: 95 % 溶媒 A
【0030】
方法 C:
カラム: ウォーターズ, X-ブリッジ C18, 3.5 μm, 2.1 x 50 mm,
溶離剤: A: H2O と10mM NH3; B: アセトニトリルと10nM NH3
検出: MS: ポジチブ及びネガチブ方式
質量範囲: 100 - 800 m/z
フラグメンター: 70
ゲイン EMV: 閾値: 1 mAU; ステップサイズ: 2 nm; UV: 220-320 nm
注入: 標準 1 μL
流量: 0.8 mL/分
カラム温度: 25℃
勾配: 0.00 分: 2 % 溶媒 B
0.00 - 4.00 分: 2 % → 98 % 溶媒 B
4.00 - 6.00 分: 98 % 溶媒 B
【0031】
方法 D:
カラム: ウォーターズ, X-ブリッジ C18, 3.5 μm, 2.1 x 50 mm,
溶離剤: A: H2O と0.1 % HCOOH; B: アセトニトリルと0.1 % HCOOH
検出: MS: ポジチブ及びネガチブ方式
質量範囲: 100 - 800 m/z
フラグメンター: 70
ゲイン EMV: 閾値: 1 mAU; ステップサイズ: 2 nm; UV: 220-320 nm
注入: 標準 1 μL
流量: 0.8 mL/分
カラム温度: 35℃
勾配: 0.00 分: 2 % 溶媒 B
0.00 - 4.00 分: 2 % → 98 % 溶媒 B
4.00 - 6.00 分: 98 % 溶媒 B
【0032】
方法 E:
カラム: フェノメネックス・ジェミニC18, 3.0 μm, 2.0 x 50 mm,
溶離剤: A: H2O と10mM NH3; B: アセトニトリルと10nM NH3
検出: MS: ポジチブ及びネガチブ方式
質量範囲: 100 - 800 m/z
フラグメンター: 70
ゲイン EMV: 閾値: 1 mAU; ステップサイズ: 2 nm; UV: 220-320 nm
注入: 標準 1 μL
流量: 1.0 mL/分
カラム温度: 35℃
勾配: 0.00 分: 2 % 溶媒 B
0.00 - 3.50 分: 2 % → 98 % 溶媒 B
3.50 - 6.00 分: 98 % 溶媒 B
方法 F:
カラム: フェノメネックス・ジェミニC18, 3.0 μm, 2.0 x 50 mm,
溶離剤: A: H2O と0.1 % HCOOH; B: アセトニトリルと0.1 % HCOOH
検出: MS: ポジチブ及びネガチブ方式
質量範囲: 100 - 800 m/z
フラグメンター: 70
ゲイン EMV: 閾値: 1 mAU; ステップサイズ: 2 nm; UV: 220-320 nm
注入: 標準 1 μL
流量: 1.0 mL/分
カラム温度: 35℃
勾配: 0.00 分: 2 % 溶媒 B
0.00 - 3.50 分: 2 % → 98 % 溶媒 B
3.50 - 6.00 分: 95 % 溶媒 B
【0033】
本発明の化合物を以下に記載される合成の方法(この場合、一般式の置換基は先に明記された意味を有する)により調製する。これらの方法は本発明を説明することを目的とし、それをそれらの内容に限定し、又は特許請求された化合物の範囲をこれらの実施例に限定するものではない。出発化合物の調製が記載されていない場合、それらは商業上得られ、又は既知の化合物もしくは本明細書に記載された方法と同様にして調製されてもよい。文献に記載された物質は公表された合成の方法に従って調製される。
反応スキーム A
【化6】

【0034】
型Iの実施例化合物をR3-置換2,4-ジクロロピリミジンA-1 から一種以上のアミンRyNH2 及びRzNH2を使用する求核的芳香族置換により調製する。置換の順序は使用されるアミン、反応条件(酸性又は塩基性反応条件及びルイス酸の添加)に大きな程度で依存し、置換基R3、Ry及びRz は夫々の場合に実施例化合物を得るのに適した基である。
A-1 、A-2 及びA-3 における求核的芳香族置換を文献から知られている方法に従って普通の溶媒、例えば、THF 、DCM 、NMP 、DMSO又はDMF 中で塩基、例えば、DIPEA もしくはK2CO3、又は酸、例えば、HCl を使用して行なう。使用されるアミン、RyNH2 及びRzNH2は商業上得られ、又は文献から知られている方法に従って合成される。これらの方法により直接に得られてもよい型Iのジアミノピリミジンはその後に型Iの更なるジアミノピリミジンを生成するために文献から知られている様式又はそれと同様の様式でRy 及びRz を更に変性されてもよい。こうして、例えば、型Iの直接得られるジアミノピリミジンの基Ry 及びRz(これらはカルボン酸、スルホン酸、ハロゲン又はアミノ置換アリール又はヘテロアリールからなる)が、置換(ヘテロアリールそれ自体における)、アルキル化、アシル化、アミン化又は付加の反応により変性されてもよい。
出発化合物の調製
特にことわらない限り、全ての出発物質を商業上の供給業者から購入し、合成に直接使用する。文献に記載された物質を公表された合成の方法により調製する。
a) 2,4-ジクロロ-5-トリフルオロメチル-ピリミジン A-1aを合成するための操作
【化7】

【0035】
5-トリフルオロメチルウラシル (48.0 g, 267 ミリモル) をオキシ塩化リン(POCl3) 210 mL中で懸濁させ、その間に水分を排除する。温度が25℃〜30℃に留まるようにジエチルアニリン (47.7 g, 320 ミリモル) をこの懸濁液に徐々に滴下して添加する。その添加が終了した後、その混合物を水浴中で更に5-10分間撹拌し、その混合物を80-90℃で水分を排除しつつ5-6時間加熱する。過剰のPOCl3 を氷水と混合された硫酸約1200 g中で撹拌することにより分解し、水相を夫々の場合にジエチルエーテル又はtert.-ブチルメチルエーテル500 mLで3回直ちに抽出する。合わせたエーテル抽出液を氷水と混合された硫酸 (約0.1 M) 300 mL で2回そして冷食塩溶液で洗浄し、直ちに硫酸ナトリウムで乾燥させる。乾燥剤を濾別し、溶媒を真空で除く。残渣を短いカラム(20cm)(頭部温度:65-70℃)により真空 (10ミリバール) で蒸留して無色の液体を得、これをびんに入れ、アルゴン雰囲気下で貯蔵する。
TLC: Rf = 0.83 (chex:EE = 3:1)
この操作と同様にして、更に別のピリミジンA-1 を相当する中間体/遊離体又は相当する商業上得られる遊離体から得る。
【0036】
b)ベンジル 4-(4-クロロ-5-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イルアミノ)-3-メトキシ-ベンゾエート (A-3a)を合成する方法
【化8】

【0037】
ベンジル 4-アミノ-3-メトキシベンゾエート (1.92 g, 6.8 ミリモル) 及びK2CO3 (2.38 g, 17 ミリモル) をジオキサン4 mL中で懸濁させ、次いで2,4-ジクロロ-5-トリフルオロメチルピリミジン (1.48 mL, 6.8 ミリモル) と合わせる。次いでその懸濁液を100分間にわたって油浴 (約130℃) 中で撹拌しながら還流する。反応が終了した後、その反応混合物を濾過し、濾液を回転蒸発により濃縮し、順相カラムクロマトグラフィーにより精製する。A-3a (HPLC-MS: tRet. = 1.94分; MS (M-H)+ = 436) の生成物を含む画分を合わせ、回転蒸発により濃縮する。
【0038】
c) 4-(4-クロロ-5-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イルアミノ)-3-メトキシ-安息香酸 (A-4a)を合成する方法
【化9】

【0039】
ベンジル 4-(4-クロロ-5-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イルアミノ)-3-メトキシ-ベンゾエート (A3-a) (1.3 g, 3 ミリモル) を水素化オートクレーブ中でTHF 50 mL中で懸濁させ、Pd(OH)2/木炭(180 mg, 装入20 %, 約50 % の水) と混合する。次いで4.5 バールのH2 圧力を適用し、その反応混合物を24時間撹拌する。反応が終了した後、その反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させ、粗生成物A-4a (HPLC-MS: tRet. = 1.24 分; MS (M-H)+ = 346) を更に精製しないでその後の反応に使用する。
【0040】
d) N-(2-シアノ-5-メチル-フェニル)-N-メチル-メタンスルホンアミド (B-1a)を合成する方法
【化10】

【0041】
2-フルオロ-4-メチルベンゾニトリル (4.6 g, 34.4 ミリモル) 及びN-メチル-メタンスルホンアミド (7.5 g, 68.7 ミリモル) をNMP 15 mL に溶解し、120℃で16時間撹拌する。反応が終了した後、その反応混合物を水70 mL と混合し、固体B-1a (HPLC-MS: tRet. = 1.22分; MS (M+NH4)+ = 242) を吸引濾過し、更に精製しないで使用する。
【0042】
e) N-(2-アミノメチル-5-メチル-フェニル)-N-メチル-メタン-スルホンアミド (B-2a)を合成する方法
【化11】

【0043】
N-(2-シアノ-5-メチル-フェニル)-N-メチル-メタンスルホンアミド (B-1a) (10.0 g, 44.6ミリモル) を水素化オートクレーブ中でMeOH 60 mL 及びメタノール性アンモニア (7 M) 20 mL に溶解し、EtOH中のラネーニッケル (1 g)と合わせる。次いでその反応混合物を16時間にわたって80℃で3バールのH2 で水素化する。反応が終了した後、その反応混合物を濾過し、濾液をエタノール性HCl (4.5 mL, 10 M) と混合する。生成した沈殿を濾過し、固体B-2a (HPLC-MS: tRet. = 1.03 分; MS (M+H)+ = 229) を更に精製しないで使用する。
【0044】
f) 4-(4-クロロ-5-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イルアミノ)-3-メトキシ-N-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ベンズアミド A-5aを合成する方法
【化12】

【0045】
化合物 A-4a (2.0 g, 5.6 ミリモル) をトルエン70 mL 中で懸濁させ、塩化チオニル (840 μL, 11.5 ミリモル) と合わせ、2時間にわたって撹拌しながら120℃に加熱する。その反応混合物を室温に冷却し、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除く。残渣をTHF 50 mL中で懸濁させ、0℃に冷却し、THF 20 mL に溶解された、4-アミノ-1-メチルピペリジン (657 mg, 5.75 ミリモル) 及びDIPEA (1.97 mL, 11.5 ミリモル) の溶液をそれに滴下して添加する。その反応混合物を徐々に室温に戻し、室温で更に12時間撹拌する。その反応混合物を0℃に冷却し、生成物A-5aを濾過し (HPLC-MS: tRet. = 2.06 分; MS (M+H)+ = 444) 、更に精製しないで使用する。
【0046】
g) 4-{4-[2-(メタンスルホニル-メチル-アミノ)-4-メチル-ベンジルアミノ]-5-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イルアミノ}-3-メトキシ-N-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ベンズアミド 73
【化13】

【0047】
化合物 A-5a (5.0 g, 11.3 ミリモル) 及び化合物 B-2a (2.98 g, 11.3 ミリモル) をEtOH 50 mL 中で懸濁させ、DIPEA (7.7 mL, 45.1 ミリモル) と合わせ、12時間にわたって撹拌しながら70℃に加熱する。反応が終了した後、その反応混合物を室温に冷却し、全ての揮発性成分を真空で除く。その反応混合物をDMF と混合し、分取HPLCにより精製する。実施例73 の生成物(HPLC-MS: tRet. = 1.89 分; MS (M+H)+ = 636)を含む画分を凍結乾燥する。
実施例73を合成することにつき上記された反応方法a)〜g)と同様にして、下記の実施例1 〜132 (表1) 又は匹敵する追加の実施例を相当する前駆体(これらは商業上得られ、又は文献から知られている方法により調製し得る)から得られてもよい。
下記の実施例は本発明の化合物の生物学的活性を記載し、本発明をこれらの実施例に限定しない。
【0048】
PTK2酵素試験
この試験は活性PTK2酵素 (インビトロゲンコードPV3832) 及びそのキナーゼ基質としてのポリ-Glu-Tyr (4:1, シグマP-0275) を使用する。そのキナーゼ活性をDELFIATM アッセイで基質のリン酸化により検出する。リン酸化基質をユーロピウム標識ホスホチロシン抗体PY20 (パーキン・エルマー, No.: AD0038) で検出する。
PTK2-インヒビターで濃度-活性曲線を測定するために、化合物を10 % DMSO/H2O 中で連続希釈し、夫々の希釈液10μLを96ウェルミクロタイタプレート (透明なU字形ベースプレート, グレイナーNo. 650101) (インヒビターを2回反復で試験する) 中のウェルに分配し、10 μL/ウェルのPTK2キナーゼ (0.01 μg/ウェル) と混合する。従って、PTK2キナーゼを前もってキナーゼ希釈緩衝液 (20 mM TRIS/HCl pH 7.5, 0.1 mM EDTA, 0.1 mM EGTA, 0.286 mM オルトバナジン酸ナトリウム, 新たに調製されたBSA (フラクションV 1 mg/mL) を添加した10 % グリセロール及びDTT (1 mM))で希釈する。試験化合物及びPTK2キナーゼを室温で1時間にわたってプレインキュベートし、500 rpmで振とうする。次いで20 μL のATP ミックス(30 mM TRIS/HCl pH 7.5, 0.02 % Brij, 0.2 mM オルトバナジン酸ナトリウム, 10 mM 酢酸マンガン, 0.1 mM EGTA, 1 x ホスファターゼインヒビターカクテル1 (シグマ, No.: P2850), 50 μM ATP (シグマ, No.: A3377; 15 mM 原液)) を添加する。その反応を10 μL/ウェルのポリ (Glu,Tyr) 基質 (250 mM TRIS/HCl pH 7.5, 9 mM DTT に溶解された25 μg/ウェルのポリ(Glu, Tyr), 0.05 μg/ウェルのビオチニル化ポリ (Glu,Tyr)) の添加により開始する。DMSOの最終濃度は2%である。1時間のキナーゼ反応(プレートを500 rpmで振とうする) 後に、その反応を12 μL/ウェルの100 mM EDTA, pH 8の添加により停止する。そして室温で更に5分間振とうする (500 U/分) 。
【0049】
反応混合物55 μL をストレプトアビジンプレート (ロシュ製Strepta Well High Bind (透明, 96-ウェル), No.: 11989685001) に移し、室温で1時間インキュベートする(500 rpmで振とうする) 。次いでそのミクロタイタプレートを200 μL/ウェルのD-PBS (インビトロゲン, No.:14190) で3回洗浄する。次いで100 μL の1:2000 希釈DELFIA Eu-N1 坑ホスホチロシンPY20抗体 (DELFIA試験緩衝液 (パーキン・エルマー, No.: 1244-111) 中で1:2000に希釈されたパーキン・エルマー, No.: AD0038)を添加し、それを室温で1時間インキュベートする (500 rpmで振とうする) 。次いでプレートを200 μL/ウェルのDELFIA 洗浄緩衝液 (パーキン・エルマー, No.: 1244-114) で3回洗浄し、200 μL/ウェルの強化溶液 (パーキン・エルマー, No.: 1244-105) を添加し、全体を室温で10分間インキュベートする (300 rpmで振とうする)。
次いで時間遅延ユーロピウム蛍光をミクロタイタ・プレート・リーダー(ビクター, パーキン・エルマー) で測定する。陽性対照は溶媒(試験緩衝液中2%のDMSO)を含み、抑制されないキナーゼ活性を示すウェルからなる。酵素に代えて試験緩衝液を含むウェルがバックグラウンドキナーゼ活性についての対照として作用する。
シグモイド曲線分析アルゴリズム (FIFTY, GraphPAD プリズムバージョン3.03に基づく)を可変Hill係数で使用してIC50 値を濃度-活性分析から反復計算により求める。
【0050】
軟質寒天アッセイ
この細胞試験を使用して軟質寒天中のPC-3前立腺癌細胞の増殖 (“足場非依存性増殖”) に対するPTK2-インヒビターの影響を測定する。2週のインキュベーション時間後に、細胞活力をアラマーブルー (リザズリン) 染色により実証する。
PC-3細胞 (ATCC CRL-1435) をF12 カイン培地(ギブコ, No.: 21127) (これは10 % ウシ胎児血清 (インビトロゲン, No.: 16000-044) を補給されていた)を含む細胞培養フラスコ (175 cm2)中で増殖させる。培養物をインキュベーター中で37℃で5 % CO2 でインキュベートし、週2回実験する。試験Iをミクロタイタ・プレート (グレイナー, No.: 655 185)中で行ない、1.2%のアガロースを含む培地 (インビトロゲン, 4 % アガロースゲル1x 液体40 mL, No.: 18300-012)90μLから構成される下層、続いて培地60μL及び0.3%アガロース中の細胞層そして最後に試験化合物を含む培地(アガロースを添加しない)30μLを含む上層からなる。下層を調製するために、4 % アガロースを10x D-PBS (ギブコ, No.: 14200) 及びH2O で煮出し、こうして1 x D-PBS 中3%のアガロースに前希釈する。後者を培地 (F12 カイン/10 % FCS) 及びFCS で10 % FCS を含むF12 カイン培地中1.2%のアガロースの最終希釈に調節する。ミクロタイタ・プレートの夫々のウェルに下層のための懸濁液90 μL を補給し、1時間にわたって室温に冷却する。細胞層につき、トリプシン(ギブコ, 0.05 %; No.: 25300)を使用してPC-3細胞を脱着し、カウントし、0.3%のアガロースを添加したF12 カイン(10 % FCS)(37℃) 60 μL中で接種する。1時間にわたって室温に冷却した後、試験化合物 (連続希釈からの30 μL) を4回反復測定のために添加する。試験化合物の濃度は通常10 μM〜0.3 nMの試験範囲をカバーする。化合物 (原液: 100 % DMSO 中10 mM) をF12 カイン培地+6 % DMSO 中で前希釈して、1 % DMSOの最終濃度を得る。細胞をスチーム飽和雰囲気中で14日間にわたって37℃で5 % CO2 でインキュベートする。次いで生細胞の代謝活性を色素アラマー・ブルー (AbD Serotec, No.: BUF012B)で示す。これを行なうために、18 μL/ウェルのアラマー・ブルー懸濁液を添加し、全体をインキュベーター中で37℃で約8時間インキュベートする。陽性対照はオートクレーブ処理により還元されたアラマー・ブルー18μLとF12 カイン培地 (10 % FCS)180 μLの混合物で充填される空のウェルからなる。蛍光強さを蛍光スペクトロメーター (スペクトラMAX ジェミニXS, モレキュラー・デバイシス) により測定する。励起波長は530 nmであり、発光波長は590 nmである。
シグモイド曲線分析アルゴリズム (FIFTY, GraphPAD プリズムバージョン3.03に基づく)を可変Hill係数で使用してIC50 値を濃度-活性分析から反復計算により求める。
【0051】
ホスホ-PTK2 (pY397) アッセイ
この細胞試験を使用してチロシン397 (pY397)におけるPTK2-リン酸化の状態に対するPTK2-インヒビターの影響を測定する。
PC-3細胞 (前立腺癌, ATCC CRL-1435) を10 % ウシ胎児血清 (インビトロゲン, No.: 16000-044) を添加したF12 カイン培地 (ギブコ, No.: 21127) を含む細胞培養フラスコ (175 cm2) 中で増殖させる。培養物をインキュベーター中で37℃で5 % CO2 でインキュベートし、週2回実験する。
試験のために、ウェル/90μL 培地当り2 x 104 細胞を96-ウェル・ミクロタイタ・プレート (コスター, No.: 3598) に塗布し、インキュベーター中で37℃で5 % CO2で一夜インキュベートする。試験化合物 (連続希釈からの10 μL) を翌日添加する。試験化合物の濃度は通常50 μM〜0.8 nMの範囲をカバーする。最終濃度が1 % DMSOであるように、試験化合物 (原液: 100 % DMSO 中10 mM)を培地/10 % DMSO 中で希釈する。次いで細胞をインキュベーター中で37℃で5 % CO2 で2時間インキュベートする。次いで細胞上澄みを除去し、細胞を20分間にわたって室温でD-PBS中4%のホルムアルデヒド150 μL で固定する。細胞ローンを夫々の場合に5分間にわたってD-PBS中0.1%のトリトンX-100 200 μL で5回洗浄し、次いでTBST (25 mM Tris/HCl, pH 8.0, 150 mM NaCl, 0.05 % トゥイーン20)中でブロッキング緩衝液 (5 % 脱脂粉乳 (Maresi Fixmilch)とともに90分間インキュベートする。ブロッキング緩衝液を一次抗体坑ホスホPTK2 [pY397] ウサギモノクローナル (インビトロゲン/バイオソース, No.: 44-625G)(これはブロッキング緩衝液中で1:200に希釈されている)50μLにより交換する。対照目的のために、ブロッキング干渉液中で1:400に希釈された、PTK2 [完全] 抗体(クローン4.47 マウスモノクローナル, Upstate, No.: 05-537)をまた使用する。このインキュベーションを4℃で一夜行なう。次いで細胞ローンを夫々の場合に5分間にわたってD-PBS中0.1 % トゥイーン100 μL で5回洗浄し、50 μL/ウェルの二次抗体を添加する。結合ホスホ-PTK2 [pY397] 抗体を検出するために、ヤギ坑ウサギ抗体を使用する(これはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ (Dako, No.: P0448; ブロッキング緩衝液中1:500 希釈) と結合されている)。結合PTK2 [完全]-抗体を検出するために、ウサギ坑マウス抗体を使用する(これはまたホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ (Dako, No.: P0161; ブロッキング緩衝液中1:1000 希釈) と結合されている)。このインキュベーションを室温で1時間にわたって穏やかに振とうしながら行なう。次いで細胞ローンを夫々の場合に5分間にわたってD-PBS中0.1 % トゥイーン100 μL で5回再度洗浄する。ペルオキシダーゼ染色を染色溶液(TMB ペルオキシダーゼ基質 (KPL, No.: 50-76-02) とペルオキシダーゼ溶液B (H2O2) (KPL, No.: 50-65-02)の1:1混合物)100μLを添加することにより行なう。染色の発生が暗所で10-30分間にわたって起こる。その反応を100 μL/ウェルの1 M リン酸溶液の添加により停止する。吸収を吸収測定装置 (VICTOR3 パーキンエルマー)で450 nmで光度測定する。坑ホスホPTK2 [pY397] 免疫染色の抑制を使用してEC50 値を測定する。坑PTK2 [完全]-抗体による染色は対照目的のためであり、インヒビターの影響下で一定に留まるべきである。EC50 値を可変Hill係数でシグモイド曲線分析アルゴリズム (FIFTY, GraphPAD プリズムバージョン3.03に基づく)の助けによる反復計算により濃度-活性分析から求める。
試験した全ての実施例は10 μM未満、一般に1 μM未満のEC50値 (PC-3)を有する。
【0052】
表1:実施例1-132
【表1】

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

Chiral=キラル
【0079】
本発明の物質はPTK2-キナーゼインヒビターである。一般式(1)の新規化合物、それらの異性体及びこれらの生理学上許される塩は、それらの生物学的性質に鑑みて、過度又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療に適している。
このような疾患の例として、例えば、ウイルス感染症(例えば、HIV及びカポージ肉腫);炎症性疾患及び自己免疫疾患(例えば、大腸炎、関節炎、アルツハイマー病、腎炎及び創傷治癒);細菌、菌類及び/又は寄生虫感染症;白血病、リンパ腫及び充実性腫瘍(例えば、癌腫及び肉腫);皮膚疾患(例えば、乾癬);細胞(例えば、繊維芽細胞、肝細胞、骨及び骨髄細胞、軟骨細胞もしくは平滑筋細胞又は上皮細胞(例えば、子宮内膜過形成))の数の増大を特徴とする過形成に基づく疾患;骨疾患及び心血管疾患(例えば、再狭窄及び肥大)が挙げられる。
【0080】
例えば、下記の癌が本発明の化合物で治療し得るが、これらに限定されない:脳腫瘍、例えば、聴神経鞘腫、星状細胞腫、例えば、原線維性星状細胞腫、原形質性星状細胞腫、大円形細胞性星状膠腫、未分化星状細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、グリア芽細胞腫、神経膠肉腫、祖先形質黄色星状細胞腫、上衣下大細胞巨細胞星状細胞腫及び結合繊形成乳児星状細胞腫;脳リンパ腫、脳転移、下垂体腫瘍、例えば、プロラクチノーマ(prolactinoma)、下垂体偶発腫瘍、HGH(ヒト成長ホルモン)産生アデローマ及び副腎皮質刺激ホルモン産生アデノーマ、、頭蓋咽頭腫、髄芽細胞腫、髄膜腫及び乏突起膠腫;神経腫瘍、例えば、栄養神経系の腫瘍、例えば、神経芽細胞腫、神経節神経腫、パラガングリオーマ(クロム親和性細胞腫、クロム親和性腫瘍)及び頚動脈小体腫瘍、末梢神経系の腫瘍、例えば、切断神経腫、神経繊維腫、ノイリノーマ(神経鞘腫、シュワン鞘腫)及び悪性シュワン鞘腫だけでなく、中枢神経系の腫瘍、例えば、脳の腫瘍及び骨髄腫瘍;腸癌、例えば、直腸、結腸、肛門及び十二指腸の癌腫;眼瞼腫瘍(眼瞼器官の基底細胞腫又は腺癌);網膜芽細胞腫;膵臓の癌腫;膀胱の癌腫;肺腫瘍(気管支癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、紡錘体細胞扁平表皮癌、腺癌(腺房、乳頭状、気管支肺胞)及び大細胞気管支癌(巨細胞癌、透明細胞癌));乳癌、例えば、管状、小葉状、ムチン様又は管状の癌、パジェット癌;非ホジキンリンパ腫(Bリンパ又はTリンパNHL)、例えば、有毛細胞白血病、バーキットリンパ腫又は菌状息肉症;ホジキン病;子宮癌(子宮体癌又は子宮内膜癌);CUP症候群(未知の原発性の癌);卵巣癌(卵巣癌腫−粘液性又は漿液性のう腫、子宮内膜腫瘍、透明細胞主要、ブレンナー腫瘍);胆嚢癌;胆管癌、例えば、クラトスキン(Klatskin)腫瘍;精巣癌(精上皮腫又は非精上皮腫);喉頭癌、例えば、声帯の声門上、声門及び声門下の腫瘍;骨の癌、例えば、骨軟骨腫、軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液繊維腫、軟骨肉腫、骨腫、類骨骨腫、骨芽細胞腫、骨肉腫、非骨化骨繊維腫、骨繊維腫、結合繊形成骨繊維腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨巨細胞腫又は巨細胞腫、ユーイング肉腫、及びプラスマ細胞腫、頭部及び首の腫瘍(HNO腫瘍)、例えば、唇、及び口腔の腫瘍(唇、舌、口腔の癌腫)、鼻咽頭癌(鼻の腫瘍、リンパ上皮腫)、咽頭癌、口腔咽頭癌、扁桃の癌(扁桃悪性腫瘍)及び舌(の基底)の癌、下咽頭癌、喉頭癌(喉頭の癌)、副鼻腔及び鼻腔の腫瘍、唾液腺及び耳の腫瘍;肝臓細胞癌(肝細胞癌(HCC);白血病、例えば、急性白血病、例えば、急性リンパ性/リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML);慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML);胃癌(乳頭状腺癌、管状腺癌又は粘液性腺癌、扁平腺癌、扁平癌又は未分化癌腫;悪性メラノーマ、例えば、表在性メラノーマ(SSM)、結節性メラノーマ(NMM)、悪性のほくろ性メラノーマ(LMM)、先端ほくろ性メラノーマ(ALM)又は無メラニン性メラノーマ(AMM);腎臓癌、例えば、腎臓細胞癌(副腎腫又はグラビッツ腫瘍);食道癌;陰茎癌;前立腺癌;膣癌又は膣癌腫;甲状腺癌、例えば、乳頭状、のう胞状、延髄又は未分化の甲状腺癌;胸腺癌(胸腺腫)、尿道の癌(尿道の癌、尿路上皮癌)及び外陰部の癌。
【0081】
新規化合物は、必要によりまた放射線治療又はその他の“技術水準”の化合物、例えば、細胞増殖抑制性物質もしくは細胞傷害性物質、細胞増殖インヒビター、坑脈管形成物質、ステロイド又は抗体と組み合わせて、上記疾患の予防、短期治療又は長期治療に使用し得る。
一般式(1)の化合物は、それら自体で、又は本発明のその他の活性物質と組み合わせて、必要によりまたその他の薬理学的活性物質と組み合わせて使用し得る。
本発明の化合物と組み合わせて投与し得る化学治療薬として、ホルモン、ホルモン類似体及び坑ホルモン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、フルベストラント、メゲストロールアセテート、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、アミノグルテチミド、シプロテロンアセテート、フィナステリド、ブセレリンアセテート、フルドロコルチンゾン、フルオキシメステロン、メドロキシプロゲステロン、オクトレオチド)、アロマターゼインヒビター(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、リアロゾール、ボロゾール、エキセメスタン、アタメスタン)、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト(例えば、ゴセレリンアセテート、ルプロリド)、成長因子(成長因子、例えば、“血小板由来成長因子”及び“肝細胞成長因子”)のインヒビター(インヒビターは、例えば、“成長因子”抗体、“成長因子受容体”抗体及びチロシンキナーゼインヒビター、例えば、ゲフィチニブ、ラパチニブ及びトラスツズマブである);シグナル伝達インヒビター(例えば、イマチニブ及びソラフェニブ);坑代謝産物(例えば、坑葉酸塩、例えば、メトトレキセート、プレメトレキセド及びラルチトレキセド、ピリミジン類似体、例えば、5-フルオロウラシル、カペシタビン及びゲムシタビン、プリン及びアデノシン類似体、例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン及びペントスタチン、シタラビン、フルダラビン);坑腫瘍抗生物質(例えば、アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン及びイダルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ストレプトゾシン);白金誘導体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤(例えば、エストラムスチン、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、イフォスファミド、テモゾロミド、ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン及びロムスチン、チオテパ)、坑有糸分裂剤(例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン及びビンクリスチン;並びにタキサン、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル);トポイソメラーゼインヒビター(例えば、エピポドフィロトキシン、例えば、エトポシド及びエトポフォス、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ミトキサントロン)及び種々の化学治療薬、例えば、アミフォスチン、アナグレリド、クロドロナト、フィルグラスチン、インターフェロンアルファ、ロイコボリン、リツキシマブ、プロカルバジン、レバミソール、メスナ、ミトタン、パミドロネート及びポルフィマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
好適な製剤として、例えば、錠剤、カプセル、座薬、溶液、特に注射用の溶液(s.c.、i.v.、i.m.)及び注入用の溶液、エリキシル剤、エマルション又は分散可能な粉末が挙げられる。一種以上の医薬上活性な化合物の含量は全体としての組成物の0.1〜90質量%、好ましくは0.5〜50質量%の範囲、即ち、以下に明記される用量範囲を得るのに充分である量であるべきである。明記された用量は、必要により、1日に数回与えられてもよい。
好適な錠剤は、例えば、一種以上の活性物質を既知の賦形剤、例えば、不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はラクトース、崩壊剤、例えば、トウモロコシ澱粉又はアルギン酸、バインダー、例えば、澱粉又はゼラチン、滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルク及び/又は放出を遅延するための薬剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、又はポリ酢酸ビニルと混合することにより得られてもよい。錠剤はまた幾つかの層を含んでもよい。
従って、被覆錠剤は錠剤と同様にして製造されたコアーを錠剤被覆に通常使用される物質、例えば、コリドン又はセラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン又は糖で被覆することにより調製されてもよい。遅延放出を得、又は不適合性を防止するために、コアーはまた幾つかの層からなってもよい。同様に、錠剤被覆物はおそらく錠剤について上記された賦形剤を使用して、遅延放出を得るために幾つかの層からなってもよい。
本発明の活性物質又はこれらの組み合わせを含むシロップ又はエリキシル剤は更に甘味料、例えば、サッカリン、シクラメート、グリセロール又は糖及び風味増強剤、例えば、風味料、例えば、バニリン又はオレンジエキスを含んでもよい。それらはまた懸濁アジュバント又は増粘剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、湿潤剤、例えば、脂肪アルコールとエチレンオキサイドの縮合生成物、又は防腐剤、例えば、p-ヒドロキシベンゾエートを含んでもよい。
【0083】
注射溶液及び注入溶液は必要により乳化剤及び/又は分散剤を使用して、通例の方法で、例えば、等張剤、防腐剤、例えば、p-ヒドロキシベンゾエート、又は安定剤、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸のアルカリ金属塩を添加して調製され、例えば、水を希釈剤として使用する場合、有機溶媒が必要により可溶化剤又は溶解助剤として使用され、注射バイアルもしくはアンプル又は注入びんに移されてもよい。
一種以上の活性物質又は活性物質の組み合わせを含むカプセルは、例えば、活性物質を不活性担体、例えば、ラクトース又はソルビトールと混合し、それらをゼラチンカプセルに詰めることにより調製し得る。
好適な座薬は、例えば、この目的に用意された担体、例えば、中性脂肪もしくはポリエチレングリコール又はそれらの誘導体と混合することにより製造し得る。
使用し得る賦形剤として、例えば、水、医薬上許される有機溶媒、例えば、パラフィン(例えば、石油留分)、植物油(例えば、落花生油又はゴマ油)、一官能性又は多官能性アルコール(例えば、エタノール又はグリセロール)、担体、例えば、天然鉱物粉末(例えば、カオリン、クレー、タルク、チョーク)、合成鉱物粉末(例えば、高度に分散されたケイ酸及びケイ酸塩)、糖(例えば、蔗糖、ラクトース及びグルコース)、乳化剤(例えば、リグニン、使用済み亜硫酸塩液、メチルセルロース、澱粉及びポリビニルピロリドン)及び滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸及びラウリル硫酸ナトリウム)が挙げられる。
製剤は通常の方法により、好ましくは経口経路もしくは経皮経路、特に好ましくは経口経路により投与される。経口投与について、錠剤は、勿論、上記担体とは別に、種々の添加剤、例えば、澱粉、好ましくはジャガイモ澱粉、ゼラチン等と一緒に添加剤、例えば、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びリン酸二カルシウムを含んでもよい。更に、滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクが錠剤形成プロセスに同時に使用されてもよい。水性懸濁液の場合、活性物質が上記賦形剤に加えて種々の風味増強剤又は着色剤と合わされてもよい。
非経口使用のために、好適な液体担体とともに活性物質の溶液が使用されてもよい。
静脈内使用のための用量は時間当り1-1000mg、好ましくは時間当り5-500mgである。
しかしながら、体重、投与の経路、薬物に対する個体の応答、その製剤の性質及び薬物が投与される時間又は間隔に応じて、明記された量から逸脱することが時々必要であるかもしれない。こうして、或る場合には、先に示された最小用量より少ない量を使用することが充分であるかもしれず、一方、その他の場合には上限が超えられる必要があるかもしれない。多量を投与する場合、それらをその日にわたって引き延ばされる幾つかの一層少ない用量に分けることが推奨されるかもしれない。
下記の製剤実施例は本発明を説明するが、その範囲を限定しない。
【0084】
医薬製剤の実施例
A) 錠剤 錠剤当り
式(1)の活性物質 100mg
ラクトース 140mg
トウモロコシ澱粉 240mg
ポリビニルピロリドン 15mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
500mg
微粉砕された活性物質、ラクトース及びトウモロコシ澱粉の一部を一緒に混合する。その混合物を篩分け、次いで水中ポリビニルピロリドンの溶液で湿らせ、混錬し、湿式造粒し、乾燥させる。顆粒、残りのトウモロコシ澱粉及びステアリン酸マグネシウムを篩分け、一緒に混合する。その混合物を圧縮して好適な形状及びサイズの錠剤を製造する。
B) 錠剤 錠剤当り
式(1)の活性物質 80mg
ラクトース 55mg
トウモロコシ澱粉 190mg
微結晶性セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン 15mg
ナトリウムカルボキシメチル澱粉 23mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
400mg
微粉砕された活性化合物、トウモロコシ澱粉の一部、ラクトース、微結晶性セルロース及びポリビニルピロリドンを一緒に混合し、その混合物を篩分け、残りのトウモロコシ澱粉及び水で処理して顆粒を生成し、これを乾燥させ、篩分ける。ナトリウムカルボキシメチル澱粉及びステアリン酸マグネシウムを添加し、混合し、その混合物を圧縮して好適なサイズの錠剤を形成する。
【0085】
C) アンプル溶液
式(1)の活性物質 50mg
塩化ナトリウム 50mg
注射用の水 5ml
活性物質を水にそれ自体のpH又は必要によりpH5.5〜6.5で溶解し、塩化ナトリウムを添加してそれを等張性にする。得られた溶液を濾過して発熱物質を除き、濾液を無菌条件下でアンプルに移し、次いでこれらを滅菌し、溶融によりシールする。アンプルは活性物質5mg、25mg及び50mgを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式 (1)の化合物であって、任意にこれらの互変異性体、ラセミ体、鏡像体、ジアステレオマー及びこれらの混合物の形態であってもよく、且つ任意にこれらの薬理学上許される酸付加塩の形態であってもよい、前記化合物。
【化1】

[式中、
R1 はRa、Rb、及び1個以上の同じ又は異なるRb 及び/又はRc により置換されたRa の中から選ばれた基を表し、
R2 及びR3 は夫々の場合に互いに独立にハロゲン、-ORc 及びC1-4アルキルの中から選ばれた基を表し、
夫々のRaは互いに独立にC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、C4-16シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキルアルキル、5-12員ヘテロアリール及び6-18員ヘテロアリールアルキルの中から選ばれ、
夫々のRbは好適な基であり、夫々が独立に=O、-ORc、C1-3ハロアルキルオキシ、-OCF3、=S、-SRc、=NRc、=NORc、=NNRcRc、=NN(Rg)C(O)NRcRc、-NRcRc、-ONRcRc、-N(ORc)Rc、-N(Rg)NRcRc、ハロゲン、-CF3、-CN、-NC、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)Rc、-S(O)ORc、-S(O)2Rc、-S(O)2ORc、-S(O)NRcRc、-S(O)2NRcRc、-OS(O)Rc、-OS(O)2Rc、-OS(O)2ORc、-OS(O)NRcRc、-OS(O)2NRcRc、-C(O)Rc、-C(O)ORc、-C(O)SRc、-C(O)NRcRc、-C(O)N(Rg)NRcRc、-C(O)N(Rg)ORc、-C(NRg)NRcRc、-C(NOH)Rc、-C(NOH)NRcRc、-OC(O)Rc、-OC(O)ORc、-OC(O)SRc、-OC(O)NRcRc、-OC(NRg)NRcRc、-SC(O)Rc、-SC(O)ORc、-SC(O)NRcRc、-SC(NRg)NRcRc、-N(Rg)C(O)Rc、-N[C(O)Rc]2、-N(ORg)C(O)Rc、-N(Rg)C(NRg)Rc、-N(Rg)N(Rg)C(O)Rc、-N[C(O)Rc]NRcRc、-N(Rg)C(S)Rc、-N(Rg)S(O)Rc、-N(Rg)S(O)ORc、-N(Rg)S(O)2Rc、-N[S(O)2Rc]2、-N(Rg)S(O)2ORc、-N(Rg)S(O)2NRcRc、-N(Rg)[S(O)2]2Rc、-N(Rg)C(O)ORc、-N(Rg)C(O)SRc、-N(Rg)C(O)NRcRc、-N(Rg)C(O)NRgNRcRc、-N(Rg)N(Rg)C(O)NRcRc、-N(Rg)C(S)NRcRc、-[N(Rg)C(O)]2Rc、-N(Rg)[C(O)]2Rc、-N{[C(O)]2Rc}2、-N(Rg)[C(O)]2ORc、-N(Rg)[C(O)]2NRcRc、-N{[C(O)]2ORc}2、-N{[C(O)]2NRcRc}2、-[N(Rg)C(O)]2ORc、-N(Rg)C(NRg)ORc、-N(Rg)C(NOH)Rc、-N(Rg)C(NRg)SRc 及び-N(Rg)C(NRg)NRcRcの中から選ばれ、
夫々のRcは互いに独立に水素、又はC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、C4-11シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキルアルキル、5-12員ヘテロアリール及び6-18 員ヘテロアリールアルキルの中から選ばれた基(必要により1個以上の同じ又は異なるRd及び/又はReにより置換されていてもよい)を表し、
夫々のRdは好適な基であり、夫々が独立に=O、-ORe、C1-3ハロアルキルオキシ、-OCF3、=S、-SRe、=NRe、=NORe、=NNReRe、=NN(Rg)C(O)NReRe、-NReRe、-ONReRe、-N(Rg)NReRe、ハロゲン、-CF3、-CN、-NC、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)Re、-S(O)ORe、-S(O)2Re、-S(O)2ORe、-S(O)NReRe、-S(O)2NReRe、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)2ORe、-OS(O)NReRe、-OS(O)2NReRe、-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)SRe、-C(O)NReRe、-C(O)N(Rg)NReRe、-C(O)N(Rg)ORe、-C(NRg)NReRe、-C(NOH)Re、-C(NOH)NReRe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)SRe、-OC(O)NReRe、-OC(NRg)NReRe、-SC(O)Re、-SC(O)ORe、-SC(O)NReRe、-SC(NRg)NReRe、-N(Rg)C(O)Re、-N[C(O)Re]2、-N(ORg)C(O)Re、-N(Rg)C(NRg)Re、-N(Rg)N(Rg)C(O)Re、-N[C(O)Re]NReRe、-N(Rg)C(S)Re、-N(Rg)S(O)Re、-N(Rg)S(O)ORe、-N(Rg)S(O)2Re、-N[S(O)2Re]2、-N(Rg)S(O)2ORe、-N(Rg)S(O)2NReRe、-N(Rg)[S(O)2]2Re、-N(Rg)C(O)ORe、-N(Rg)C(O)SRe、-N(Rg)C(O)NReRe、-N(Rg)C(O)NRgNReRe、-N(Rg)N(Rg)C(O)NReRe、-N(Rg)C(S)NReRe、-[N(Rg)C(O)]2Re、-N(Rg)[C(O)]2Re、-N{[C(O)]2Re}2、-N(Rg)[C(O)]2ORe、-N(Rg)[C(O)]2NReRe、-N{[C(O)]2ORe}2、-N{[C(O)]2NReRe}2、-[N(Rg)C(O)]2ORe、-N(Rg)C(NRg)ORe、-N(Rg)C(NOH)Re、-N(Rg)C(NRg)SRe 及び-N(Rg)C(NRg)NReReの中から選ばれ、
夫々のReは互いに独立に水素、又はC1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、C4-11シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキルアルキル、5-12員ヘテロアリール及び6-18員ヘテロアリールアルキルの中から選ばれた基(必要により1個以上の同じ又は異なるRf及び/又はRgにより置換されていてもよい)を表し、
夫々のRfは好適な基であり、夫々が独立にハロゲン及び-CF3の中から選ばれ、かつ
夫々のRgは互いに独立に水素、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、C4-11シクロアルキルアルキル、C6-10アリール、C7-16アリールアルキル、2-6 員ヘテロアルキル、3-8 員ヘテロシクロアルキル、4-14員ヘテロシクロアルキル、5-12員ヘテロアリール又は6-18員ヘテロアリールアルキルを表し、かつ
nは1又は2に等しくてもよい]
【請求項2】
R3がメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2が-ORcである、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
R2がメトキシである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
下記の化合物の中から選ばれる、請求項1記載の化合物(下記化合物において、Chiralはキラルを意味する)。
【化2】

















【請求項6】
薬物としての使用のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又はこれらの医薬上有効な塩。
【請求項7】
坑増殖活性及び/又はプロ-アポトーシス活性を有する薬物を調製するための請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又はこれらの医薬上有効な塩。
【請求項8】
任意に通常の賦形剤及び/又は担体と組み合わせて、請求項1〜5のいずれか1項記載の一般式(1)の一種以上の化合物又はこれらの生理学上許される塩を活性物質として含むことを特徴とする医薬製剤。
【請求項9】
癌、感染症、炎症及び自己免疫疾患の治療及び/又は予防のための薬物を調製するための請求項1〜5のいずれか1項に記載の一般式(1)の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の一般式(1)の化合物(任意にこれらの互変異性体、ラセミ体、鏡像体、ジアステレオマー及び混合物の形態であってもよく、且つ任意にこれらの薬理学上許される酸付加塩の形態であってもよい)、及び式(1)とは異なる少なくとも一種の更に別の細胞増殖抑制性活性物質又は細胞傷害性活性物質を含むことを特徴とする医薬製剤。

【公表番号】特表2012−508724(P2012−508724A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536021(P2011−536021)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065101
【国際公開番号】WO2010/055117
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】