異物検知装置及びガラスラン
【課題】異物の検知感度に優れた異物検知装置、及び、ガラスランを提供する。
【解決手段】異物検知装置1は、金属製のドアフレームDFに形成されたガラス開口部Wを開閉可能なドアガラスDGよりも車内側において、ガラス開口部Wの周縁に取着される取付基部11と、取付基部11から膨出し、内部に中空部13を有する表皮カバー部12と、可撓性を有するとともに、中空部13に挿設された絶縁体14と、取付基部11に対向するとともに、絶縁体14に埋設等された板状の電極15とを備える。前記中空部13において、電極15と取付基部11との間に間隙部16が設けられる。電極15をプラス極とし、取付基部11をアースとしてのマイナス極として、電極15とアースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の表皮カバー部12への近接及び/又は接触が検知される。
【解決手段】異物検知装置1は、金属製のドアフレームDFに形成されたガラス開口部Wを開閉可能なドアガラスDGよりも車内側において、ガラス開口部Wの周縁に取着される取付基部11と、取付基部11から膨出し、内部に中空部13を有する表皮カバー部12と、可撓性を有するとともに、中空部13に挿設された絶縁体14と、取付基部11に対向するとともに、絶縁体14に埋設等された板状の電極15とを備える。前記中空部13において、電極15と取付基部11との間に間隙部16が設けられる。電極15をプラス極とし、取付基部11をアースとしてのマイナス極として、電極15とアースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の表皮カバー部12への近接及び/又は接触が検知される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を検知するためのセンサに関するものであり、特に自動車等の車両においてドアガラスとドアフレームとの間の異物を検知する異物検知装置、及び、異物検知装置を備えるガラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のドアガラスは、ドア内に設けられた駆動手段により自動で昇降されるのが一般的である。このように駆動手段によりドアガラスを昇降させる場合において、ドアガラスとドアフレームの上辺部に異物が挟まると、異物の損傷やドアガラス等の破損を招いてしまったり、前記駆動手段に過負荷が加わって駆動手段が破損してしまったりするおそれがある。
【0003】
そこで、異物の挟み込みを防止すべく、ドアガラスが昇降するガラス開口部の周縁に接触型センサを設けるとともに、当該センサにより異物が検知された際に、ドアガラスの上昇を停止等させる技術が知られている(例えば、特許文献1等参照)。接触型センサとしては、合成樹脂により形成された中空の外皮部と、当該外皮部の内部に設けられ、互いに接触することで導通する複数の電極とを有するものが提案されている。
【0004】
ところが、上記技術において、異物の検知は、電極同士の接触が起こる程度の比較的大きな荷重が前記センサに加わることによって初めて可能となる。従って、異物が検知されるまでに、異物やドアガラスに対して比較的大きな荷重が加わってしまう場合がある。
【0005】
そこで、上記不具合を解消すべく、ガラス開口部の周縁に、空間を挟んで対向する2枚の電極からなる静電容量式センサを設ける技術が提案されている(例えば、特許文献2等参照)。静電容量式センサは、人体等の異物が近接した際に、静電容量が変化することに基づいて異物を検知するものである。従って、静電容量式センサは、異物とは非接触な状態で異物の検知が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−153614号公報
【特許文献2】特開2007−108003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献2に記載の技術においては、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物は非接触で検知可能であるものの、絶縁物やサイズの小さなもの等、静電容量の比較的小さな異物については、センサに接近した際の静電容量の変化量が小さいため、これを非接触で検知することが難しい。そこで、このような異物は、異物に押圧されたことで両電極が接触・ショートした際に検知されるようになっている。つまり、上記技術では、異物がセンサに対して軽く接触した状態では、これを検知することができないおそれがあり、検知精度が十分とは言えない。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、異物の検知感度に優れた異物検知装置、及び、ガラスランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.金属製のドアフレームに形成されたガラス開口部を開閉可能なドアガラスよりも車内側において、前記ガラス開口部の周縁に取着される取付基部と、
前記取付基部から膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有するとともに、前記中空部に挿設された絶縁体と、
前記取付基部に対向するとともに、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着された板状の電極と
を備える異物検知装置であって、
前記中空部において、前記電極と前記取付基部との間に間隙部を設けるとともに、
前記電極をプラス極とし、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする異物検知装置。
【0011】
上記手段1によれば、取付基部をアースマイナス極として利用しているため、設ける電極が1本であっても、当該電極と取付基部(ドアフレーム)との間の静電容量に基づき異物の検知を行うことができる。従って、2本の電極を設ける場合と比較して、材料コストの抑制を図ることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、本手段1の異物検知装置による異物の検知感度について鑑みると、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物については、装置に接近した段階で電極(プラス極)と取付基部(アースマイナス極)との間の静電容量が比較的大きく変化する。そのため、静電容量の比較的大きな異物については、非接触で感度よく検知することができる。さらに、電極と取付基部との間には間隙部が設けられており、異物が軽く表皮カバー部に接触したときでも、前記間隙部が容易に潰れ変形する。そして、取付基部の比誘電率は空気と比較して大きいため、間隙部が潰れた際(つまり、空気層がなくなった際)には、電極とアースマイナス極との間の静電容量が大きく変化する。従って、静電容量の比較的小さな異物については、軽く接触した段階で感度よく検知することができる。すなわち、上記手段1によれば、様々な異物を感度よく検知することができる。
【0013】
尚、上記手段1による作用効果をより確実に発揮すべく、前記間隙部においては、前記電極と取付基部との間の距離の最大値を0.5mm以上とすることが望ましい。一方で、間隙部の潰れ変形量が同一であっても、電極と取付基部との間の距離を大きくするにつれて両者の間における静電容量の変化量が減少してしまう。従って、前記間隙部における、電極と取付基部との間の距離の最大値を3.0mm以下とすることが望ましい。
【0014】
手段2.前記表皮カバー部の内周に、前記表皮カバー部に対する前記絶縁体の相対回転を規制するカバー側突部を設けたことを特徴とする手段1に記載の異物検知装置。
【0015】
上記手段2によれば、カバー側突部により、表皮カバー部に対する絶縁体の相対回転が規制されている。これにより、静電容量の変化を安定して検知することができ、異物の検知精度をより向上させることができる。
【0016】
手段3.前記取付基部に埋設されるとともに、前記電極と対向する板状の取付基部側電極を設けたことを特徴とする手段1又は2に記載の異物検知装置。
【0017】
上記手段3によれば、取付基部に設けられた取付基部側電極をアースマイナス極とすることで、プラス極(電極)とアースマイナス極との間の間隙をより狭めることができる。このため、両電極間の静電容量を増大させることができ、ひいては間隙部が潰れ変形した際の静電容量の変化量を一層増大させることができる。その結果、異物の検知精度をより一層向上させることができる。
【0018】
手段4.前記絶縁体の内部に空洞を設けるとともに、
前記空洞を挟んで前記電極と対向する第2の電極を、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着したことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の異物検知装置。
【0019】
上記手段4によれば、電極とアースマイナス極との間、及び、電極と第2の電極との間に、いわば2つのコンデンサが構成されることとなる。そのため、異物が接触した場合には、間隙部に加えて、空洞が潰れ変形し、電極に対してアースマイナス極及び第2の電極の双方が接近するため、静電容量を非常に大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度の更なる向上を図ることができる。
【0020】
手段5.前記表皮カバー部と前記絶縁体との間に、空気からなる空間部を設けたことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の異物検知装置。
【0021】
上記特許文献2に記載の技術のように、電極が外部に露出している場合等において、降雨等によりセンサやセンサ周辺に水が付着してしまうと、静電容量が比較的大きく変化してしまう。従って、水滴の付着による誤判定が発生してしまうおそれがある。
【0022】
この点、上記手段5によれば、表皮カバー部と絶縁体との間に、空気で満たされ、比誘電率の比較的低い空間部(隙間)が設けられている。そのため、水滴が付着した際における静電容量の変化量を比較的小さなものとすることができ、その結果、誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【0023】
手段6.上記手段1乃至5のいずれかに記載の異物検知装置と、
ガラス開口部の周縁に取付られ、ドアガラス及びドアフレームの間をシールするガラスラン構成部とを備え、
前記取付基部及び前記ガラスラン構成部が一体に構成されてなるガラスラン。
【0024】
上記手段6によれば、ガラスラン構成部と異物検知装置とが一体に構成されているため、ガラス開口部の周縁に対して、ガラスランに相当する部分と異物検知装置とを一挙に取付けることができる。その結果、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ドアの概略構成を示す正面模式図である。
【図2】ECU等の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1のJ−J線断面図である。
【図4】異物検知装置を示す拡大断面図である。
【図5】(a)は、水滴が表皮カバー部に接触した状態を示す異物検知装置の拡大断面図であり、(b)は、異物が表皮カバー部に接近した状態を示す異物検知装置の拡大断面図である。
【図6】異物が接触状態にあるときの異物検知装置の拡大断面図である。
【図7】別の実施形態における異物検知装置等の断面図である。
【図8】別の実施形態における異物検知装置等の断面図である。
【図9】別の実施形態におけるガラスランを示す断面図である。
【図10】別の実施形態における異物検知装置の断面図である。
【図11】別の実施形態における異物検知装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、自動車のドア用開口部に開閉可能に設けられるフロントドア(以下、単に「ドア」と称する)Dには、ドアDのガラス開口部Wを開閉する昇降可能なドアガラスDGと、長尺状の異物検知装置1と、ガラスラン2とを備えている。尚、図1中の「BL」は、ベルトラインを示している。
【0027】
また、前記ドアDの内部には、自動開閉機構(図示せず)が設けられている。当該自動開閉機構は、少なくとも全開位置にあるドアガラスDGを全閉位置までスライド動作させるものである。加えて、自動開閉機構は、図2に示すように、ドアガラスDGの開閉動作を行う駆動モータ31と、当該駆動モータ31を駆動制御する電子制御ユニット(ECU)32とを備えている。ECU32には、運転席に配設される操作スイッチ33や、車両室内に配置されるリモートコントローラ(リモコン)スイッチ34等から閉鎖指令信号等が入力されるようになっている。また、ECU32には、駆動モータ31或いは別途の図示しない検出センサからの信号に基づき、ドアガラスDGの位置が現在どの程度であるのかが(全開位置、全閉位置をも含めて)把握可能となっている。
【0028】
図1に戻り、前記ガラスラン2は、前記ドアガラスDGの外周形状に対応して設けられ、ドアガラスDGの昇降を案内するとともに、ドアガラスDGの周縁部及びドアフレームDFの間をシールする。尚、ドアフレームDFは、自動車の構成部品を介して接地(アース)された状態となっている。
【0029】
ガラスラン2は、ドアガラスDGの上縁部に対応する上辺部2U、ドアガラスDGの前縁部に対応する前縦辺部2F、ドアガラスDGの後縁部に対応する後縦辺部2Bから構成されている。また、前記ドアフレームDFは、前記ガラス開口部Wの外周に沿って形成されるサッシュ部DS、及び、サッシュ部DSの前後の縦辺部を下方に延長するようにしてドアパネルDP内に設けられたチャンネル部DCを備えており、サッシュ部DS及びチャンネル部DCの内周に、前記ガラスラン2が取付けられている。本実施形態において、ガラスラン2はオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)により構成されている。
【0030】
加えて、図3に示すように、ガラスラン2は、本体部21と、車外側シールリップ22と、車内側シールリップ23とを備えている。
【0031】
本体部21は、前記サッシュ部DSに嵌め込まれており、基底部21Aと、当該基底部21Aの車外側端縁部から延びる車外側側壁部21Bと、前記基底部21Aの車内側端縁部から延びる車内側側壁部21Cとを備えている。
【0032】
加えて、前記車外側シールリップ22は、車外側側壁部21Bの先端部から車内及び基底部21A側に向けて延びており、一方で、前記車内側シールリップ23は、車内側側壁部21Cの先端部から車外及び基底部21A側に向けて延びている。ドアガラスDGによりガラス開口部Wが閉じられた状態においては、車外側シールリップ22がドアガラスDGの外側面(車外側の面)に対して圧接され、車内側シールリップ23がドアガラスDGの内側面(車内側の面)に対して圧接される。これにより、ドアガラスDGとドアフレームDFとの間がシールされるようになっている。
【0033】
また、ガラスラン2は、車外側側壁部21Bの先端部から車外側に向けて延びる車外側意匠リップ24を備えている。当該車外側意匠リップ24により、サッシュ部DSの車外側端縁部が覆われるとともに、サッシュ部DSの車外側面と車外側意匠リップ24の車外側面が略面一となり、意匠性の向上が図られるようになっている。
【0034】
さらに、ガラスラン2には、車内側側壁部21Cの先端部からガラス開口部Wの内周側に向けて延びる車内側意匠リップ25が設けられている。車外側意匠リップ25は、ガラス開口部Wを正面視した際におけるドアサッシュDSの最内周側部位よりも内周側に先端が至るように構成されている。また、ドアサッシュDSにガラスラン2を取付けた状態において、車外側意匠リップ25の車内側面とドアフレームDF(ドアサッシュDS)との間には、若干の隙間が形成されるようになっている。
【0035】
加えて、前記基底部21Aの外側面には、車外側に向けて延出する車外側水切りリップ26と、車内側に向けて延出する車内側水切りリップ27とが設けられている。ガラスラン2をドアサッシュDSに取付けた状態において、両水切りリップ26,27は、ドアサッシュDSに圧接するようになっている。このため、ガラスラン2とドアフレームDFとの間から車内側への水の浸入が防止されるようになっている。
【0036】
さらに、前記ガラスラン2の本体部21の外表面には、第1保持リブ28Aと、第2保持リブ28Bと、第3保持リブ28Cとが設けられている。第1保持リブ28Aは、車外側側壁部21Bの基端側(基底部21A側)部位から車外側に向けて突出しており、第2保持リブ28Bは、車内側側壁部21Cの基端側(基底部21A側)部位から車内側に向けて延出している。また、第3保持リブ28Cは、車内側側壁部21Cの基端部と車内側意匠リップ25の先端部との略中間部分から車内側に突出して形成されている。ガラスラン2をドアサッシュDSに取付ける際には、車外側側壁部21Bと車内側側壁部21Cとを相互に接近させて、本体部21を断面略コ字状に形成した上で、ドアサッシュDSに本体部21が差し込まれ、前記保持リブ28A,28B,28CがドアサッシュDSに係止される。
【0037】
さらに、本実施形態では、ガラス開口部W周縁とドアガラスDGとの隙間に異物が存在していることを検知可能な前記異物検知装置1が設けられている。当該異物検知装置1は、図2に示すように、静電容量計測手段35に電気的に接続されており、静電容量計測手段35は、前記ECU32に対して電気的に接続されている。ここで、静電容量計測手段35は、後述する電極15及び取付基部11(ドアフレームDF)間などの静電容量を所定時間毎に計測可能に構成されており、計測された静電容量(に関する情報)がECU32に対して伝送されるようになっている。本実施形態において、前記ECU32は、直前に計測された静電容量(基準静電容量)に対する伝送された静電容量の変化割合が、予め設定された閾値よりも大きい場合に、ガラス開口部W周縁とドアガラスDGとの間に異物が存在しているものと検知する。そして、駆動モータ31の閉動作を一旦停止させるとともに、ドアガラスDGを開方向へと移動させる逆転駆動制御を行うようになっている。すなわち、ECU32は、停止制御手段としての機能をも発揮するよう構成されている。尚、前記閾値は、異物検知装置1及びその周辺に水滴が付着した際に誤判定が発生しない(ECU32により異物が存在すると判定されない)ような値に設定されている。
【0038】
次いで、異物検知装置1について詳説する。図3に示すように、異物検知装置1は、ドアフレームDFのうちドアガラスDGの上縁部と対向する位置から車内側に若干(例えば、3.0mm程度)ずれた位置に配置されている。また、異物検知装置1は、ドアガラスDGの上縁部全域に対応するように、ガラス開口部W周縁の上辺部に取付けられている。このため、ドアガラスDGの上縁部及びドアフレームDFの間の全域に亘って異物が存在しているか否かを検知可能となっている。
【0039】
さらに、異物検知装置1は、第1センサ構成体1Aと、第2センサ構成体1Bとを備えている。
【0040】
図4に示すように、第1センサ構成体1Aは、ドアフレームDFに固定される取付基部11と、前記取付基部11から膨出する表皮カバー部12とを備えている。
【0041】
前記取付基部11は、EPDMソリッドゴムを押出成形することにより形成されており、基底部11Aと、当該基底部11Aの車内側端縁から車内側に向けて延びる車内側壁部11Bと、基底部11Aの車外側端縁から前記ガラスラン2の基底部21A側へと延びる車外側壁部11Cとを備えている。尚、異物検知装置1がドアフレームDFに取付けられた状態において、車内側壁部11BはドアフレームDFに設けられた隙間に差し込まれ、車外側壁部11CはドアフレームDF(ドアサッシュDS)と前記車外側意匠リップ25との間に形成された隙間に差し込まれている。
【0042】
加えて、前記基底部11Aの両端縁には、表皮カバー部12側へと突出する一対の突出部11P1,11P2が形成されている。本実施形態においては、前記突出部11P1,11P2のうち後述する中空部13側の部位がテーパ状の傾斜面SA1,SA2となっている。
【0043】
前記表皮カバー部12は、EPDMスポンジゴムにより形成されており、前記突出部11P1,11P2からガラス開口部Wの内周側へと膨出する断面円弧状をなしている。また、表皮カバー部12の内部には、中空部13が形成されているとともに、表皮カバー部12は比較的薄肉に形成されている。そのため、異物等の接触時において、表皮カバー部12は容易に変形可能となっている。
【0044】
さらに、前記中空部13内には、前記第2センサ構成体1Bが配設されている。当該第2センサ構成体1Bは、長尺状をなす絶縁体14と、当該絶縁体14の内部に埋設された電極15とを備えている。
【0045】
前記絶縁体14は、可撓性を有する絶縁素材〔例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等〕を押出成形することにより形成されている。また、当該絶縁体14は、表皮カバー部12側に向けて突出する絶縁体側突部14Pを有している。さらに、絶縁体14のうち取付基部11側の部位には、一対の脚部14L1,14L2が設けられており、当該脚部14L1,14L2は前記傾斜面SA1,SA2に当接可能となっている。
【0046】
前記電極15は、曲げやねじれに対する耐久性に優れた帯状の平編銅線(平板状をなす網状の銅線)であり、取付基部11の基底部11Aに対して対向するように配置されている。また、電極15のうち取付基部11と対向する面は、絶縁体14の表面に露出することなく、絶縁体14の被覆部14Cによって被覆されている。そして、被覆部14Cの厚さは、50μm以上300μm以下(より好ましくは、100μm以上200μm以下)とされている。
【0047】
尚、前記絶縁体14の脚部14L1,14L2は、前記電極15の取付基部11に対する対向面の直交方向と交差する方向に向けて(本実施形態では、基底部11Aの幅方向に向けて)延出するように構成されている。そのため、表皮カバー部12に対してガラス開口部W側から押圧力が加えられた際には、脚部14L1,14L2の根元部分が屈曲し、ひいては電極15が取付基部11(基底部11A)に接近するようになっている。尚、本実施形態では、少なくとも前記脚部14L1,14L2を構成する部位の硬度が、ショアA値で30度以上60度以下とされている。そのため、脚部14L1,14L2の根元部分がより一層容易に屈曲するようになっている。
【0048】
さらに、前記表皮カバー部12の内周面のうち前記基底部11A側には、前記絶縁体14(絶縁体側突部14P)側へと突出するカバー側突部12P1,12P2が形成されている。また、当該カバー側突部12P1,12P2同士の間隔は、前記脚部14L1,14L2の先端同士の間隔よりも狭くされている。これにより、前記カバー側突部12P1,12P2よりも表皮カバー部12側へと脚部14L1,14L2が相対移動してしまうことが規制され、ひいては表皮カバー部12(第1センサ構成体1A)に対する絶縁体14(第2センサ構造体1B)の相対回転が規制されている。
【0049】
加えて、前記絶縁体14の基底部11A側表面と取付基部11(基底部11A)表面との間に間隙部16が形成されている。当該間隙部16においては、前記電極15と取付基部11との間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0050】
さらに、前記電極15は、図示しない電荷供給装置に対して電気的に接続されており、当該電荷供給装置から所定の電荷が供給されている。その一方で、前記取付基部11は、前記ドアフレームDFに取付けられており、接地状態とされている。従って、電極15と接地された前記取付基部11(アースマイナス極)とによりコンデンサが構成されている。また、電極15には、前記静電容量計測手段35が接続されており、静電容量計測手段35によって、少なくとも電極15と取付基部11(アースマイナス極)との間の静電容量が計測されるようになっている。尚、異物検知装置1の周辺に異物が接近した場合、静電容量計測手段35により計測される静電容量は、異物の有する静電容量の分だけ変化することとなる。
【0051】
さらに、中空部13において、前記表皮カバー部12の内周面と、絶縁体14の表皮カバー部12側表面との間には、空気で満たされた空間部17が設けられている。当該空間部17においては、表皮カバー部12と絶縁体14との間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0052】
次いで、上述した異物検知装置1の製造方法について説明する。
【0053】
まず、前記第1センサ構成体1Aを成形するためのダイス(図示せず)を備えてなる押出成形機(図示せず)に対して、取付基部11を構成するEPDM未加硫ゴムと、表皮カバー部12を構成するEPDM未加硫発泡ゴムとを供給する。これにより、前記ダイスから、前記第1センサ構成体1Aとなる第1中間成形体(図示せず)が押出成形される。次いで、得られた第1中間成形体を所定の加硫槽に搬送するとともに、当該加硫槽において熱風や高周波等で第1中間成形体を加硫・発泡させる。その後、第1中間成形体を所定長さに切断することで、第1センサ構成体1Aが得られる。
【0054】
次に、前記第2センサ構成体1Bを成形するためのダイス(図示せず)を有する押出成型機(図示せず)に対して、可塑化状態にあるTPOと電極15とを連続的に供給する。これにより、前記ダイスから、第2センサ構成体1Bとなる第2中間成形体(図示せず)が押出成形される。次いで、第2中間成形体を冷却、固化させるとともに、所定長さに切断する。これにより、第2センサ構成体21Bが得られる。
【0055】
その後、第1センサ構成体1Aに対する第2センサ構成体1Bの位置関係を所定の位置に保ちつつ、第1センサ構成体1Aの中空部13に第2センサ構成体1Bを挿通する。さらに、静電容量計測手段35に対する電気的な接続手段を電極15に設けることで、上述の異物検知装置1が得られる。
【0056】
次に、図5及び図6を用いて、上述した異物検知装置1による異物の検知方法について説明する。尚、図5(a)は、水滴DWが異物検知装置1(表皮カバー部12)に付着した状態(水滴接触状態)を示しており、図5(b)は、人体等、静電容量の比較的大きな異物S1が異物検知装置1に接近した状態を示している。また、図6は、異物S2(例えば、ペン先等のサイズが比較的小さい絶縁物など)が表皮カバー部12に対して接触した状態(接触状態)を示している。
【0057】
図5(a)に示すように、水滴DWが異物検知装置1に付着した場合において、当該水滴DWと電極15との間には空気で満たされた空間部17が介在している。このため、静電容量計測手段35によって計測される静電容量の変化量は比較的小さなものとなる。従って、静電容量の変化割合は、前記予め設定された閾値よりも小さなものとなり、ECU32は、異物が存在しないものと判定する(つまり、ECU32は、異物検知装置1に付着した水滴DWを異物とは判定しない)こととなる。
【0058】
これに対して、図5(b)に示すように、人体等の異物S1が異物検知装置1に近接したときにおいて、異物S1は静電容量が比較的大きいため、前記空間部17が介在していても、静電容量の変化量は十分に大きなものとなる。従って、異物S1が接近した場合には、静電容量の変化割合が前記閾値を超えることとなり、ECU32は、異物が存在するものと判断することとなる。すなわち、人体等の異物S1については、異物検知装置1に接近した段階で検知されるようになっている。
【0059】
一方、絶縁物や水分含有量が比較的少ないもの、或いは、サイズが比較的小さいものである異物S2が接近・接触した場合には、静電容量の変化量が比較的小さなものとなる。そのため、静電容量の変化割合が、前記閾値よりも小さなものとなり得る。
【0060】
この場合、図6に示すように、異物S2が異物検知装置1に接近しただけでは異物S2を検知することができず、異物S2は異物検知装置1(表皮カバー部12)に対して接触することとなる。このとき、前記脚部14L1,14L2の付根部分が屈曲し、前記間隙部16が潰れ変形することで、電極15及び取付基部11間の静電容量が大きく変化する。そのため、静電容量の変化割合も大きなものとなり、ECU32は、異物S2が存在するものと検知することとなる。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態によれば、取付基部11をアースマイナス極として利用しているため、設けられた1本の電極15と取付基部11(ドアフレームDF)との間の静電容量に基づき異物の検知を行うことができる。従って、2本の電極を設ける場合と比較して、材料コストの抑制を図ることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0062】
また、異物検知装置1による異物の検知感度について鑑みると、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物については、装置1に接近した段階で電極15(プラス極)と取付基部11(アースマイナス極)との間の静電容量が比較的大きく変化する。そのため、静電容量の比較的大きな異物については、非接触で感度よく検知することができる。さらに、電極15と取付基部11との間には間隙部16が設けられており、異物が軽く表皮カバー部12に接触したときでも、前記間隙部16が容易に潰れ変形する。そして、EPDMソリッドゴムからなる取付基部11の比誘電率は空気と比較して大きいため、間隙部16が潰れた際(つまり、空気層がなくなった際)には、電極15とアースマイナス極との間の静電容量が大きく変化する。従って、静電容量の比較的小さな異物については、軽く接触した段階で感度よく検知することができる。すなわち、本実施形態の異物検知装置1によれば、様々な異物を感度よく検知することができる。
【0063】
また、表皮カバー部12に設けられたカバー側突部12P1,12P2により、表皮カバー部12に対する絶縁体14の相対回転が規制されている。これにより、静電容量の変化を安定して検知することができ、異物の検知精度をより向上させることができる。
【0064】
さらに、表皮カバー部12と絶縁体14との間に、空気で満たされ、比誘電率の比較的低い空間部17が設けられている。そのため、水滴が付着した際における静電容量の変化量を比較的小さなものとすることができ、その結果、誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【0065】
加えて、厚さが50μm以上300μm以下の被覆部14Cが設けられているため、電極15の損耗をより確実に防止することができるとともに、優れた異物の検知精度をより長期間に亘って維持することができる。
【0066】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0067】
(a)上記実施形態では、電極15とアースマイナス極としての取付基部11(ドアフレームDF)とによりコンデンサが構成され、当該コンデンサの静電容量に基づき、異物を検知するように構成されている。これに対して、図7に示すように、取付基部11内に平編銅線等からなる取付基部側電極19を設けることで、取付基部側電極19をアースマイナス極として、電極15と取付基部側電極19とにより構成されたコンデンサの静電容量に基づいて異物の検知を行うこととしてもよい。この場合には、電極15とアースマイナス極との間隔をより小さくすることができ、間隙部16が潰れ変形した際における静電容量の変化量をより大きくすることができる。その結果、異物の検知精度を一層向上させることができる。また、取付基部側電極19を取付基部11内に設けることで、間隙部16が潰れ変形した際に、取付基部側電極19が絶縁体14に接触してしまうことを防止できる。これにより、取付基部側電極19の損傷をより確実に防止することができ、優れた異物の検知精度をより一層長期間に亘って維持することができる。尚、異物の検知精度をより確実に向上させるべく、取付基部11の中空部13側の表面に対して比較的接近した位置(例えば、中空部13側表面から1.0mm以内の位置)に取付基部側電極19を設けることが好ましい。
【0068】
(b)上記実施形態では、絶縁体14が中実状(内部に空間がない状態)とされているとともに、絶縁体14には電極15が1本のみ設けられているが、図8に示すように、絶縁体44の内部に空洞44Cを設けるとともに、当該空洞44Cを挟んで電極45と対向するように第2の電極48を設けることとしてもよい。この場合には、電極45と取付基部11(アースマイナス極)との間、及び、電極45と第2の電極48(マイナス極)との間に、いわば2つのコンデンサが構成されることとなる。そのため、異物が接触した場合には、間隙部16に加えて、空洞44Cが潰れ変形し、電極45に対してアースマイナス極(取付基部11)及び第2の電極48の双方が接近するため、静電容量を非常に大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度の更なる向上を図ることができる。
【0069】
(c)上記実施形態では、異物検知装置1とガラスラン2とが別体に構成されているが、図9に示すように、ガラスラン構成部62(前記ガラスラン2に相当する)と異物検知装置1とを一体化してガラスラン72を構成することとしてもよい。このとき、ガラスラン構成部62の車内側側壁部62Cの先端部に異物検知装置1を設けることとしてもよい。ガラスラン構成部62と異物検知装置1とを一体に構成することで、ドアフレームDF(ドアサッシュDS)に対して、ガラスランと異物検知装置とを一挙に取付けることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0070】
(d)上記実施形態では、絶縁体14の脚部14L1,14L2が基底部11Aの幅方向に沿って延びるとともに、脚部14L1,14L2が基底部11Aの傾斜面SA1,SA2に当接することで、絶縁体14に押圧力が加わった際に、間隙部16が容易に潰れるように構成されている。これに対して、図10に示すように、絶縁体54の脚部54L1,54L2を基底部51Aの幅方向に対して斜め方向に延びる断面略ハの字状に形成することで、絶縁体54に押圧力が加わった際に、間隙部56が潰れるように構成することとしてもよい。
【0071】
(e)上記実施形態では、表皮カバー部12の内周面から絶縁体14側へと延びるカバー側突部12P1,12P2が設けられることで、表皮カバー部12(第1センサ構成体1A)に対する絶縁体14(第2センサ構成体1B)の相対回転が規制されている。これに対して、図10に示すように、取付基部51の内周面(中空部側の面)から突出する突部51P1,51P2を設けることで、表皮カバー部52に対する絶縁体54の相対回転を規制することとしてもよい。
【0072】
また、突部を設ける部位は表皮カバー部12(52)や取付基部11(51)に限定されるものではなく、例えば、絶縁体14(54)の外周面から表皮カバー部12(52)側へと突出するようにして突部を設けることとしてもよい。
【0073】
(e)上記実施形態において、表皮カバー部12のカバー側突部12P1,12P2は、絶縁体14に対して非接触状態とされているが、図11に示すように、先端部が絶縁体74に接触するように、表皮カバー部72のカバー側突部72P1,72P2を構成することとしてもよい。この場合には、空間部77の形状維持をより確実に図ることができるとともに、表皮カバー部72に押圧力が加えられた際に、間隙部76をより容易に潰れ変形させることができる。その結果、水等の付着による誤判定の防止がより確実に図られるとともに、異物をより一層確実に検知することができる。
【0074】
(f)上記実施形態において、ECU32は、静電容量の変化割合に基づいて異物を検知しているが、静電容量の変化量に基づいて異物を検知することとしてもよい。また、電極15に発振回路を電気的に接続するとともに、前記静電容量測定手段35に代えて、静電容量の経時変化にかかる前記発振回路からの発振出力に応じた周波数信号を計測する周波数計測手段を設け、当該周波数計測手段によって計測された周波数信号に基づいて、異物を検知することとしてもよい。
【0075】
(g)上記実施形態では、電極15は平編銅線により構成されているが、導電率の高い金属材料からなる金属箔や帯状のカーボン含有材料(導電性樹脂)等により構成することとしてもよい。
【0076】
(h)上記実施形態では、絶縁体14を形成する素材として、TPOが例示されているが、EPDMスポンジゴムなど、他の可撓性を有する素材により絶縁体14を形成することとしてもよい。
【0077】
(i)上記実施形態では、ガラスラン2を形成する材料として、TPOが例示されているが、他の素材(例えば、EPDMゴムなど)によりガラスラン2を形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…異物検知装置、2…ガラスラン、11…取付基部、12…表皮カバー部、12P1,12P2…カバー側突部、13…中空部、14…絶縁体、15…電極、16…間隙部、19…取付基部側電極、44C…空洞、48…第2の電極、62…ガラスラン構成部、DF…ドアフレーム、W…ガラス開口部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物を検知するためのセンサに関するものであり、特に自動車等の車両においてドアガラスとドアフレームとの間の異物を検知する異物検知装置、及び、異物検知装置を備えるガラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のドアガラスは、ドア内に設けられた駆動手段により自動で昇降されるのが一般的である。このように駆動手段によりドアガラスを昇降させる場合において、ドアガラスとドアフレームの上辺部に異物が挟まると、異物の損傷やドアガラス等の破損を招いてしまったり、前記駆動手段に過負荷が加わって駆動手段が破損してしまったりするおそれがある。
【0003】
そこで、異物の挟み込みを防止すべく、ドアガラスが昇降するガラス開口部の周縁に接触型センサを設けるとともに、当該センサにより異物が検知された際に、ドアガラスの上昇を停止等させる技術が知られている(例えば、特許文献1等参照)。接触型センサとしては、合成樹脂により形成された中空の外皮部と、当該外皮部の内部に設けられ、互いに接触することで導通する複数の電極とを有するものが提案されている。
【0004】
ところが、上記技術において、異物の検知は、電極同士の接触が起こる程度の比較的大きな荷重が前記センサに加わることによって初めて可能となる。従って、異物が検知されるまでに、異物やドアガラスに対して比較的大きな荷重が加わってしまう場合がある。
【0005】
そこで、上記不具合を解消すべく、ガラス開口部の周縁に、空間を挟んで対向する2枚の電極からなる静電容量式センサを設ける技術が提案されている(例えば、特許文献2等参照)。静電容量式センサは、人体等の異物が近接した際に、静電容量が変化することに基づいて異物を検知するものである。従って、静電容量式センサは、異物とは非接触な状態で異物の検知が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−153614号公報
【特許文献2】特開2007−108003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献2に記載の技術においては、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物は非接触で検知可能であるものの、絶縁物やサイズの小さなもの等、静電容量の比較的小さな異物については、センサに接近した際の静電容量の変化量が小さいため、これを非接触で検知することが難しい。そこで、このような異物は、異物に押圧されたことで両電極が接触・ショートした際に検知されるようになっている。つまり、上記技術では、異物がセンサに対して軽く接触した状態では、これを検知することができないおそれがあり、検知精度が十分とは言えない。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、異物の検知感度に優れた異物検知装置、及び、ガラスランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.金属製のドアフレームに形成されたガラス開口部を開閉可能なドアガラスよりも車内側において、前記ガラス開口部の周縁に取着される取付基部と、
前記取付基部から膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有するとともに、前記中空部に挿設された絶縁体と、
前記取付基部に対向するとともに、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着された板状の電極と
を備える異物検知装置であって、
前記中空部において、前記電極と前記取付基部との間に間隙部を設けるとともに、
前記電極をプラス極とし、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする異物検知装置。
【0011】
上記手段1によれば、取付基部をアースマイナス極として利用しているため、設ける電極が1本であっても、当該電極と取付基部(ドアフレーム)との間の静電容量に基づき異物の検知を行うことができる。従って、2本の電極を設ける場合と比較して、材料コストの抑制を図ることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、本手段1の異物検知装置による異物の検知感度について鑑みると、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物については、装置に接近した段階で電極(プラス極)と取付基部(アースマイナス極)との間の静電容量が比較的大きく変化する。そのため、静電容量の比較的大きな異物については、非接触で感度よく検知することができる。さらに、電極と取付基部との間には間隙部が設けられており、異物が軽く表皮カバー部に接触したときでも、前記間隙部が容易に潰れ変形する。そして、取付基部の比誘電率は空気と比較して大きいため、間隙部が潰れた際(つまり、空気層がなくなった際)には、電極とアースマイナス極との間の静電容量が大きく変化する。従って、静電容量の比較的小さな異物については、軽く接触した段階で感度よく検知することができる。すなわち、上記手段1によれば、様々な異物を感度よく検知することができる。
【0013】
尚、上記手段1による作用効果をより確実に発揮すべく、前記間隙部においては、前記電極と取付基部との間の距離の最大値を0.5mm以上とすることが望ましい。一方で、間隙部の潰れ変形量が同一であっても、電極と取付基部との間の距離を大きくするにつれて両者の間における静電容量の変化量が減少してしまう。従って、前記間隙部における、電極と取付基部との間の距離の最大値を3.0mm以下とすることが望ましい。
【0014】
手段2.前記表皮カバー部の内周に、前記表皮カバー部に対する前記絶縁体の相対回転を規制するカバー側突部を設けたことを特徴とする手段1に記載の異物検知装置。
【0015】
上記手段2によれば、カバー側突部により、表皮カバー部に対する絶縁体の相対回転が規制されている。これにより、静電容量の変化を安定して検知することができ、異物の検知精度をより向上させることができる。
【0016】
手段3.前記取付基部に埋設されるとともに、前記電極と対向する板状の取付基部側電極を設けたことを特徴とする手段1又は2に記載の異物検知装置。
【0017】
上記手段3によれば、取付基部に設けられた取付基部側電極をアースマイナス極とすることで、プラス極(電極)とアースマイナス極との間の間隙をより狭めることができる。このため、両電極間の静電容量を増大させることができ、ひいては間隙部が潰れ変形した際の静電容量の変化量を一層増大させることができる。その結果、異物の検知精度をより一層向上させることができる。
【0018】
手段4.前記絶縁体の内部に空洞を設けるとともに、
前記空洞を挟んで前記電極と対向する第2の電極を、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着したことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の異物検知装置。
【0019】
上記手段4によれば、電極とアースマイナス極との間、及び、電極と第2の電極との間に、いわば2つのコンデンサが構成されることとなる。そのため、異物が接触した場合には、間隙部に加えて、空洞が潰れ変形し、電極に対してアースマイナス極及び第2の電極の双方が接近するため、静電容量を非常に大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度の更なる向上を図ることができる。
【0020】
手段5.前記表皮カバー部と前記絶縁体との間に、空気からなる空間部を設けたことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の異物検知装置。
【0021】
上記特許文献2に記載の技術のように、電極が外部に露出している場合等において、降雨等によりセンサやセンサ周辺に水が付着してしまうと、静電容量が比較的大きく変化してしまう。従って、水滴の付着による誤判定が発生してしまうおそれがある。
【0022】
この点、上記手段5によれば、表皮カバー部と絶縁体との間に、空気で満たされ、比誘電率の比較的低い空間部(隙間)が設けられている。そのため、水滴が付着した際における静電容量の変化量を比較的小さなものとすることができ、その結果、誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【0023】
手段6.上記手段1乃至5のいずれかに記載の異物検知装置と、
ガラス開口部の周縁に取付られ、ドアガラス及びドアフレームの間をシールするガラスラン構成部とを備え、
前記取付基部及び前記ガラスラン構成部が一体に構成されてなるガラスラン。
【0024】
上記手段6によれば、ガラスラン構成部と異物検知装置とが一体に構成されているため、ガラス開口部の周縁に対して、ガラスランに相当する部分と異物検知装置とを一挙に取付けることができる。その結果、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ドアの概略構成を示す正面模式図である。
【図2】ECU等の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1のJ−J線断面図である。
【図4】異物検知装置を示す拡大断面図である。
【図5】(a)は、水滴が表皮カバー部に接触した状態を示す異物検知装置の拡大断面図であり、(b)は、異物が表皮カバー部に接近した状態を示す異物検知装置の拡大断面図である。
【図6】異物が接触状態にあるときの異物検知装置の拡大断面図である。
【図7】別の実施形態における異物検知装置等の断面図である。
【図8】別の実施形態における異物検知装置等の断面図である。
【図9】別の実施形態におけるガラスランを示す断面図である。
【図10】別の実施形態における異物検知装置の断面図である。
【図11】別の実施形態における異物検知装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、自動車のドア用開口部に開閉可能に設けられるフロントドア(以下、単に「ドア」と称する)Dには、ドアDのガラス開口部Wを開閉する昇降可能なドアガラスDGと、長尺状の異物検知装置1と、ガラスラン2とを備えている。尚、図1中の「BL」は、ベルトラインを示している。
【0027】
また、前記ドアDの内部には、自動開閉機構(図示せず)が設けられている。当該自動開閉機構は、少なくとも全開位置にあるドアガラスDGを全閉位置までスライド動作させるものである。加えて、自動開閉機構は、図2に示すように、ドアガラスDGの開閉動作を行う駆動モータ31と、当該駆動モータ31を駆動制御する電子制御ユニット(ECU)32とを備えている。ECU32には、運転席に配設される操作スイッチ33や、車両室内に配置されるリモートコントローラ(リモコン)スイッチ34等から閉鎖指令信号等が入力されるようになっている。また、ECU32には、駆動モータ31或いは別途の図示しない検出センサからの信号に基づき、ドアガラスDGの位置が現在どの程度であるのかが(全開位置、全閉位置をも含めて)把握可能となっている。
【0028】
図1に戻り、前記ガラスラン2は、前記ドアガラスDGの外周形状に対応して設けられ、ドアガラスDGの昇降を案内するとともに、ドアガラスDGの周縁部及びドアフレームDFの間をシールする。尚、ドアフレームDFは、自動車の構成部品を介して接地(アース)された状態となっている。
【0029】
ガラスラン2は、ドアガラスDGの上縁部に対応する上辺部2U、ドアガラスDGの前縁部に対応する前縦辺部2F、ドアガラスDGの後縁部に対応する後縦辺部2Bから構成されている。また、前記ドアフレームDFは、前記ガラス開口部Wの外周に沿って形成されるサッシュ部DS、及び、サッシュ部DSの前後の縦辺部を下方に延長するようにしてドアパネルDP内に設けられたチャンネル部DCを備えており、サッシュ部DS及びチャンネル部DCの内周に、前記ガラスラン2が取付けられている。本実施形態において、ガラスラン2はオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)により構成されている。
【0030】
加えて、図3に示すように、ガラスラン2は、本体部21と、車外側シールリップ22と、車内側シールリップ23とを備えている。
【0031】
本体部21は、前記サッシュ部DSに嵌め込まれており、基底部21Aと、当該基底部21Aの車外側端縁部から延びる車外側側壁部21Bと、前記基底部21Aの車内側端縁部から延びる車内側側壁部21Cとを備えている。
【0032】
加えて、前記車外側シールリップ22は、車外側側壁部21Bの先端部から車内及び基底部21A側に向けて延びており、一方で、前記車内側シールリップ23は、車内側側壁部21Cの先端部から車外及び基底部21A側に向けて延びている。ドアガラスDGによりガラス開口部Wが閉じられた状態においては、車外側シールリップ22がドアガラスDGの外側面(車外側の面)に対して圧接され、車内側シールリップ23がドアガラスDGの内側面(車内側の面)に対して圧接される。これにより、ドアガラスDGとドアフレームDFとの間がシールされるようになっている。
【0033】
また、ガラスラン2は、車外側側壁部21Bの先端部から車外側に向けて延びる車外側意匠リップ24を備えている。当該車外側意匠リップ24により、サッシュ部DSの車外側端縁部が覆われるとともに、サッシュ部DSの車外側面と車外側意匠リップ24の車外側面が略面一となり、意匠性の向上が図られるようになっている。
【0034】
さらに、ガラスラン2には、車内側側壁部21Cの先端部からガラス開口部Wの内周側に向けて延びる車内側意匠リップ25が設けられている。車外側意匠リップ25は、ガラス開口部Wを正面視した際におけるドアサッシュDSの最内周側部位よりも内周側に先端が至るように構成されている。また、ドアサッシュDSにガラスラン2を取付けた状態において、車外側意匠リップ25の車内側面とドアフレームDF(ドアサッシュDS)との間には、若干の隙間が形成されるようになっている。
【0035】
加えて、前記基底部21Aの外側面には、車外側に向けて延出する車外側水切りリップ26と、車内側に向けて延出する車内側水切りリップ27とが設けられている。ガラスラン2をドアサッシュDSに取付けた状態において、両水切りリップ26,27は、ドアサッシュDSに圧接するようになっている。このため、ガラスラン2とドアフレームDFとの間から車内側への水の浸入が防止されるようになっている。
【0036】
さらに、前記ガラスラン2の本体部21の外表面には、第1保持リブ28Aと、第2保持リブ28Bと、第3保持リブ28Cとが設けられている。第1保持リブ28Aは、車外側側壁部21Bの基端側(基底部21A側)部位から車外側に向けて突出しており、第2保持リブ28Bは、車内側側壁部21Cの基端側(基底部21A側)部位から車内側に向けて延出している。また、第3保持リブ28Cは、車内側側壁部21Cの基端部と車内側意匠リップ25の先端部との略中間部分から車内側に突出して形成されている。ガラスラン2をドアサッシュDSに取付ける際には、車外側側壁部21Bと車内側側壁部21Cとを相互に接近させて、本体部21を断面略コ字状に形成した上で、ドアサッシュDSに本体部21が差し込まれ、前記保持リブ28A,28B,28CがドアサッシュDSに係止される。
【0037】
さらに、本実施形態では、ガラス開口部W周縁とドアガラスDGとの隙間に異物が存在していることを検知可能な前記異物検知装置1が設けられている。当該異物検知装置1は、図2に示すように、静電容量計測手段35に電気的に接続されており、静電容量計測手段35は、前記ECU32に対して電気的に接続されている。ここで、静電容量計測手段35は、後述する電極15及び取付基部11(ドアフレームDF)間などの静電容量を所定時間毎に計測可能に構成されており、計測された静電容量(に関する情報)がECU32に対して伝送されるようになっている。本実施形態において、前記ECU32は、直前に計測された静電容量(基準静電容量)に対する伝送された静電容量の変化割合が、予め設定された閾値よりも大きい場合に、ガラス開口部W周縁とドアガラスDGとの間に異物が存在しているものと検知する。そして、駆動モータ31の閉動作を一旦停止させるとともに、ドアガラスDGを開方向へと移動させる逆転駆動制御を行うようになっている。すなわち、ECU32は、停止制御手段としての機能をも発揮するよう構成されている。尚、前記閾値は、異物検知装置1及びその周辺に水滴が付着した際に誤判定が発生しない(ECU32により異物が存在すると判定されない)ような値に設定されている。
【0038】
次いで、異物検知装置1について詳説する。図3に示すように、異物検知装置1は、ドアフレームDFのうちドアガラスDGの上縁部と対向する位置から車内側に若干(例えば、3.0mm程度)ずれた位置に配置されている。また、異物検知装置1は、ドアガラスDGの上縁部全域に対応するように、ガラス開口部W周縁の上辺部に取付けられている。このため、ドアガラスDGの上縁部及びドアフレームDFの間の全域に亘って異物が存在しているか否かを検知可能となっている。
【0039】
さらに、異物検知装置1は、第1センサ構成体1Aと、第2センサ構成体1Bとを備えている。
【0040】
図4に示すように、第1センサ構成体1Aは、ドアフレームDFに固定される取付基部11と、前記取付基部11から膨出する表皮カバー部12とを備えている。
【0041】
前記取付基部11は、EPDMソリッドゴムを押出成形することにより形成されており、基底部11Aと、当該基底部11Aの車内側端縁から車内側に向けて延びる車内側壁部11Bと、基底部11Aの車外側端縁から前記ガラスラン2の基底部21A側へと延びる車外側壁部11Cとを備えている。尚、異物検知装置1がドアフレームDFに取付けられた状態において、車内側壁部11BはドアフレームDFに設けられた隙間に差し込まれ、車外側壁部11CはドアフレームDF(ドアサッシュDS)と前記車外側意匠リップ25との間に形成された隙間に差し込まれている。
【0042】
加えて、前記基底部11Aの両端縁には、表皮カバー部12側へと突出する一対の突出部11P1,11P2が形成されている。本実施形態においては、前記突出部11P1,11P2のうち後述する中空部13側の部位がテーパ状の傾斜面SA1,SA2となっている。
【0043】
前記表皮カバー部12は、EPDMスポンジゴムにより形成されており、前記突出部11P1,11P2からガラス開口部Wの内周側へと膨出する断面円弧状をなしている。また、表皮カバー部12の内部には、中空部13が形成されているとともに、表皮カバー部12は比較的薄肉に形成されている。そのため、異物等の接触時において、表皮カバー部12は容易に変形可能となっている。
【0044】
さらに、前記中空部13内には、前記第2センサ構成体1Bが配設されている。当該第2センサ構成体1Bは、長尺状をなす絶縁体14と、当該絶縁体14の内部に埋設された電極15とを備えている。
【0045】
前記絶縁体14は、可撓性を有する絶縁素材〔例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等〕を押出成形することにより形成されている。また、当該絶縁体14は、表皮カバー部12側に向けて突出する絶縁体側突部14Pを有している。さらに、絶縁体14のうち取付基部11側の部位には、一対の脚部14L1,14L2が設けられており、当該脚部14L1,14L2は前記傾斜面SA1,SA2に当接可能となっている。
【0046】
前記電極15は、曲げやねじれに対する耐久性に優れた帯状の平編銅線(平板状をなす網状の銅線)であり、取付基部11の基底部11Aに対して対向するように配置されている。また、電極15のうち取付基部11と対向する面は、絶縁体14の表面に露出することなく、絶縁体14の被覆部14Cによって被覆されている。そして、被覆部14Cの厚さは、50μm以上300μm以下(より好ましくは、100μm以上200μm以下)とされている。
【0047】
尚、前記絶縁体14の脚部14L1,14L2は、前記電極15の取付基部11に対する対向面の直交方向と交差する方向に向けて(本実施形態では、基底部11Aの幅方向に向けて)延出するように構成されている。そのため、表皮カバー部12に対してガラス開口部W側から押圧力が加えられた際には、脚部14L1,14L2の根元部分が屈曲し、ひいては電極15が取付基部11(基底部11A)に接近するようになっている。尚、本実施形態では、少なくとも前記脚部14L1,14L2を構成する部位の硬度が、ショアA値で30度以上60度以下とされている。そのため、脚部14L1,14L2の根元部分がより一層容易に屈曲するようになっている。
【0048】
さらに、前記表皮カバー部12の内周面のうち前記基底部11A側には、前記絶縁体14(絶縁体側突部14P)側へと突出するカバー側突部12P1,12P2が形成されている。また、当該カバー側突部12P1,12P2同士の間隔は、前記脚部14L1,14L2の先端同士の間隔よりも狭くされている。これにより、前記カバー側突部12P1,12P2よりも表皮カバー部12側へと脚部14L1,14L2が相対移動してしまうことが規制され、ひいては表皮カバー部12(第1センサ構成体1A)に対する絶縁体14(第2センサ構造体1B)の相対回転が規制されている。
【0049】
加えて、前記絶縁体14の基底部11A側表面と取付基部11(基底部11A)表面との間に間隙部16が形成されている。当該間隙部16においては、前記電極15と取付基部11との間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0050】
さらに、前記電極15は、図示しない電荷供給装置に対して電気的に接続されており、当該電荷供給装置から所定の電荷が供給されている。その一方で、前記取付基部11は、前記ドアフレームDFに取付けられており、接地状態とされている。従って、電極15と接地された前記取付基部11(アースマイナス極)とによりコンデンサが構成されている。また、電極15には、前記静電容量計測手段35が接続されており、静電容量計測手段35によって、少なくとも電極15と取付基部11(アースマイナス極)との間の静電容量が計測されるようになっている。尚、異物検知装置1の周辺に異物が接近した場合、静電容量計測手段35により計測される静電容量は、異物の有する静電容量の分だけ変化することとなる。
【0051】
さらに、中空部13において、前記表皮カバー部12の内周面と、絶縁体14の表皮カバー部12側表面との間には、空気で満たされた空間部17が設けられている。当該空間部17においては、表皮カバー部12と絶縁体14との間の間隔の最大値が0.5mm以上とされている。
【0052】
次いで、上述した異物検知装置1の製造方法について説明する。
【0053】
まず、前記第1センサ構成体1Aを成形するためのダイス(図示せず)を備えてなる押出成形機(図示せず)に対して、取付基部11を構成するEPDM未加硫ゴムと、表皮カバー部12を構成するEPDM未加硫発泡ゴムとを供給する。これにより、前記ダイスから、前記第1センサ構成体1Aとなる第1中間成形体(図示せず)が押出成形される。次いで、得られた第1中間成形体を所定の加硫槽に搬送するとともに、当該加硫槽において熱風や高周波等で第1中間成形体を加硫・発泡させる。その後、第1中間成形体を所定長さに切断することで、第1センサ構成体1Aが得られる。
【0054】
次に、前記第2センサ構成体1Bを成形するためのダイス(図示せず)を有する押出成型機(図示せず)に対して、可塑化状態にあるTPOと電極15とを連続的に供給する。これにより、前記ダイスから、第2センサ構成体1Bとなる第2中間成形体(図示せず)が押出成形される。次いで、第2中間成形体を冷却、固化させるとともに、所定長さに切断する。これにより、第2センサ構成体21Bが得られる。
【0055】
その後、第1センサ構成体1Aに対する第2センサ構成体1Bの位置関係を所定の位置に保ちつつ、第1センサ構成体1Aの中空部13に第2センサ構成体1Bを挿通する。さらに、静電容量計測手段35に対する電気的な接続手段を電極15に設けることで、上述の異物検知装置1が得られる。
【0056】
次に、図5及び図6を用いて、上述した異物検知装置1による異物の検知方法について説明する。尚、図5(a)は、水滴DWが異物検知装置1(表皮カバー部12)に付着した状態(水滴接触状態)を示しており、図5(b)は、人体等、静電容量の比較的大きな異物S1が異物検知装置1に接近した状態を示している。また、図6は、異物S2(例えば、ペン先等のサイズが比較的小さい絶縁物など)が表皮カバー部12に対して接触した状態(接触状態)を示している。
【0057】
図5(a)に示すように、水滴DWが異物検知装置1に付着した場合において、当該水滴DWと電極15との間には空気で満たされた空間部17が介在している。このため、静電容量計測手段35によって計測される静電容量の変化量は比較的小さなものとなる。従って、静電容量の変化割合は、前記予め設定された閾値よりも小さなものとなり、ECU32は、異物が存在しないものと判定する(つまり、ECU32は、異物検知装置1に付着した水滴DWを異物とは判定しない)こととなる。
【0058】
これに対して、図5(b)に示すように、人体等の異物S1が異物検知装置1に近接したときにおいて、異物S1は静電容量が比較的大きいため、前記空間部17が介在していても、静電容量の変化量は十分に大きなものとなる。従って、異物S1が接近した場合には、静電容量の変化割合が前記閾値を超えることとなり、ECU32は、異物が存在するものと判断することとなる。すなわち、人体等の異物S1については、異物検知装置1に接近した段階で検知されるようになっている。
【0059】
一方、絶縁物や水分含有量が比較的少ないもの、或いは、サイズが比較的小さいものである異物S2が接近・接触した場合には、静電容量の変化量が比較的小さなものとなる。そのため、静電容量の変化割合が、前記閾値よりも小さなものとなり得る。
【0060】
この場合、図6に示すように、異物S2が異物検知装置1に接近しただけでは異物S2を検知することができず、異物S2は異物検知装置1(表皮カバー部12)に対して接触することとなる。このとき、前記脚部14L1,14L2の付根部分が屈曲し、前記間隙部16が潰れ変形することで、電極15及び取付基部11間の静電容量が大きく変化する。そのため、静電容量の変化割合も大きなものとなり、ECU32は、異物S2が存在するものと検知することとなる。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態によれば、取付基部11をアースマイナス極として利用しているため、設けられた1本の電極15と取付基部11(ドアフレームDF)との間の静電容量に基づき異物の検知を行うことができる。従って、2本の電極を設ける場合と比較して、材料コストの抑制を図ることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0062】
また、異物検知装置1による異物の検知感度について鑑みると、人体等、比較的大きな静電容量を有する異物については、装置1に接近した段階で電極15(プラス極)と取付基部11(アースマイナス極)との間の静電容量が比較的大きく変化する。そのため、静電容量の比較的大きな異物については、非接触で感度よく検知することができる。さらに、電極15と取付基部11との間には間隙部16が設けられており、異物が軽く表皮カバー部12に接触したときでも、前記間隙部16が容易に潰れ変形する。そして、EPDMソリッドゴムからなる取付基部11の比誘電率は空気と比較して大きいため、間隙部16が潰れた際(つまり、空気層がなくなった際)には、電極15とアースマイナス極との間の静電容量が大きく変化する。従って、静電容量の比較的小さな異物については、軽く接触した段階で感度よく検知することができる。すなわち、本実施形態の異物検知装置1によれば、様々な異物を感度よく検知することができる。
【0063】
また、表皮カバー部12に設けられたカバー側突部12P1,12P2により、表皮カバー部12に対する絶縁体14の相対回転が規制されている。これにより、静電容量の変化を安定して検知することができ、異物の検知精度をより向上させることができる。
【0064】
さらに、表皮カバー部12と絶縁体14との間に、空気で満たされ、比誘電率の比較的低い空間部17が設けられている。そのため、水滴が付着した際における静電容量の変化量を比較的小さなものとすることができ、その結果、誤判定の発生をより確実に防止することができる。
【0065】
加えて、厚さが50μm以上300μm以下の被覆部14Cが設けられているため、電極15の損耗をより確実に防止することができるとともに、優れた異物の検知精度をより長期間に亘って維持することができる。
【0066】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0067】
(a)上記実施形態では、電極15とアースマイナス極としての取付基部11(ドアフレームDF)とによりコンデンサが構成され、当該コンデンサの静電容量に基づき、異物を検知するように構成されている。これに対して、図7に示すように、取付基部11内に平編銅線等からなる取付基部側電極19を設けることで、取付基部側電極19をアースマイナス極として、電極15と取付基部側電極19とにより構成されたコンデンサの静電容量に基づいて異物の検知を行うこととしてもよい。この場合には、電極15とアースマイナス極との間隔をより小さくすることができ、間隙部16が潰れ変形した際における静電容量の変化量をより大きくすることができる。その結果、異物の検知精度を一層向上させることができる。また、取付基部側電極19を取付基部11内に設けることで、間隙部16が潰れ変形した際に、取付基部側電極19が絶縁体14に接触してしまうことを防止できる。これにより、取付基部側電極19の損傷をより確実に防止することができ、優れた異物の検知精度をより一層長期間に亘って維持することができる。尚、異物の検知精度をより確実に向上させるべく、取付基部11の中空部13側の表面に対して比較的接近した位置(例えば、中空部13側表面から1.0mm以内の位置)に取付基部側電極19を設けることが好ましい。
【0068】
(b)上記実施形態では、絶縁体14が中実状(内部に空間がない状態)とされているとともに、絶縁体14には電極15が1本のみ設けられているが、図8に示すように、絶縁体44の内部に空洞44Cを設けるとともに、当該空洞44Cを挟んで電極45と対向するように第2の電極48を設けることとしてもよい。この場合には、電極45と取付基部11(アースマイナス極)との間、及び、電極45と第2の電極48(マイナス極)との間に、いわば2つのコンデンサが構成されることとなる。そのため、異物が接触した場合には、間隙部16に加えて、空洞44Cが潰れ変形し、電極45に対してアースマイナス極(取付基部11)及び第2の電極48の双方が接近するため、静電容量を非常に大きく変化させることができる。その結果、異物の検知精度の更なる向上を図ることができる。
【0069】
(c)上記実施形態では、異物検知装置1とガラスラン2とが別体に構成されているが、図9に示すように、ガラスラン構成部62(前記ガラスラン2に相当する)と異物検知装置1とを一体化してガラスラン72を構成することとしてもよい。このとき、ガラスラン構成部62の車内側側壁部62Cの先端部に異物検知装置1を設けることとしてもよい。ガラスラン構成部62と異物検知装置1とを一体に構成することで、ドアフレームDF(ドアサッシュDS)に対して、ガラスランと異物検知装置とを一挙に取付けることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0070】
(d)上記実施形態では、絶縁体14の脚部14L1,14L2が基底部11Aの幅方向に沿って延びるとともに、脚部14L1,14L2が基底部11Aの傾斜面SA1,SA2に当接することで、絶縁体14に押圧力が加わった際に、間隙部16が容易に潰れるように構成されている。これに対して、図10に示すように、絶縁体54の脚部54L1,54L2を基底部51Aの幅方向に対して斜め方向に延びる断面略ハの字状に形成することで、絶縁体54に押圧力が加わった際に、間隙部56が潰れるように構成することとしてもよい。
【0071】
(e)上記実施形態では、表皮カバー部12の内周面から絶縁体14側へと延びるカバー側突部12P1,12P2が設けられることで、表皮カバー部12(第1センサ構成体1A)に対する絶縁体14(第2センサ構成体1B)の相対回転が規制されている。これに対して、図10に示すように、取付基部51の内周面(中空部側の面)から突出する突部51P1,51P2を設けることで、表皮カバー部52に対する絶縁体54の相対回転を規制することとしてもよい。
【0072】
また、突部を設ける部位は表皮カバー部12(52)や取付基部11(51)に限定されるものではなく、例えば、絶縁体14(54)の外周面から表皮カバー部12(52)側へと突出するようにして突部を設けることとしてもよい。
【0073】
(e)上記実施形態において、表皮カバー部12のカバー側突部12P1,12P2は、絶縁体14に対して非接触状態とされているが、図11に示すように、先端部が絶縁体74に接触するように、表皮カバー部72のカバー側突部72P1,72P2を構成することとしてもよい。この場合には、空間部77の形状維持をより確実に図ることができるとともに、表皮カバー部72に押圧力が加えられた際に、間隙部76をより容易に潰れ変形させることができる。その結果、水等の付着による誤判定の防止がより確実に図られるとともに、異物をより一層確実に検知することができる。
【0074】
(f)上記実施形態において、ECU32は、静電容量の変化割合に基づいて異物を検知しているが、静電容量の変化量に基づいて異物を検知することとしてもよい。また、電極15に発振回路を電気的に接続するとともに、前記静電容量測定手段35に代えて、静電容量の経時変化にかかる前記発振回路からの発振出力に応じた周波数信号を計測する周波数計測手段を設け、当該周波数計測手段によって計測された周波数信号に基づいて、異物を検知することとしてもよい。
【0075】
(g)上記実施形態では、電極15は平編銅線により構成されているが、導電率の高い金属材料からなる金属箔や帯状のカーボン含有材料(導電性樹脂)等により構成することとしてもよい。
【0076】
(h)上記実施形態では、絶縁体14を形成する素材として、TPOが例示されているが、EPDMスポンジゴムなど、他の可撓性を有する素材により絶縁体14を形成することとしてもよい。
【0077】
(i)上記実施形態では、ガラスラン2を形成する材料として、TPOが例示されているが、他の素材(例えば、EPDMゴムなど)によりガラスラン2を形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…異物検知装置、2…ガラスラン、11…取付基部、12…表皮カバー部、12P1,12P2…カバー側突部、13…中空部、14…絶縁体、15…電極、16…間隙部、19…取付基部側電極、44C…空洞、48…第2の電極、62…ガラスラン構成部、DF…ドアフレーム、W…ガラス開口部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のドアフレームに形成されたガラス開口部を開閉可能なドアガラスよりも車内側において、前記ガラス開口部の周縁に取着される取付基部と、
前記取付基部から膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有するとともに、前記中空部に挿設された絶縁体と、
前記取付基部に対向するとともに、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着された板状の電極と
を備える異物検知装置であって、
前記中空部において、前記電極と前記取付基部との間に間隙部を設けるとともに、
前記電極をプラス極とし、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする異物検知装置。
【請求項2】
前記表皮カバー部の内周に、前記表皮カバー部に対する前記絶縁体の相対回転を規制するカバー側突部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の異物検知装置。
【請求項3】
前記取付基部に埋設されるとともに、前記電極と対向する板状の取付基部側電極を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の異物検知装置。
【請求項4】
前記絶縁体の内部に空洞を設けるとともに、
前記空洞を挟んで前記電極と対向する第2の電極を、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異物検知装置。
【請求項5】
前記表皮カバー部と前記絶縁体との間に、空気からなる空間部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の異物検知装置。
【請求項6】
上記構成1乃至5のいずれか1項に記載の異物検知装置と、
ガラス開口部の周縁に取付られ、ドアガラス及びドアフレームの間をシールするガラスラン構成部とを備え、
前記取付基部及び前記ガラスラン構成部が一体に構成されてなるガラスラン。
【請求項1】
金属製のドアフレームに形成されたガラス開口部を開閉可能なドアガラスよりも車内側において、前記ガラス開口部の周縁に取着される取付基部と、
前記取付基部から膨出し、内部に中空部を有する表皮カバー部と、
可撓性を有するとともに、前記中空部に挿設された絶縁体と、
前記取付基部に対向するとともに、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着された板状の電極と
を備える異物検知装置であって、
前記中空部において、前記電極と前記取付基部との間に間隙部を設けるとともに、
前記電極をプラス極とし、前記取付基部をアースとしてのマイナス極とし、
前記電極と前記アースマイナス極との間の静電容量の変化に基づき、異物の前記表皮カバー部への近接及び/又は接触を検知することを特徴とする異物検知装置。
【請求項2】
前記表皮カバー部の内周に、前記表皮カバー部に対する前記絶縁体の相対回転を規制するカバー側突部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の異物検知装置。
【請求項3】
前記取付基部に埋設されるとともに、前記電極と対向する板状の取付基部側電極を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の異物検知装置。
【請求項4】
前記絶縁体の内部に空洞を設けるとともに、
前記空洞を挟んで前記電極と対向する第2の電極を、前記絶縁体に埋設、又は、前記絶縁体の表面に取着したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異物検知装置。
【請求項5】
前記表皮カバー部と前記絶縁体との間に、空気からなる空間部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の異物検知装置。
【請求項6】
上記構成1乃至5のいずれか1項に記載の異物検知装置と、
ガラス開口部の周縁に取付られ、ドアガラス及びドアフレームの間をシールするガラスラン構成部とを備え、
前記取付基部及び前記ガラスラン構成部が一体に構成されてなるガラスラン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−207329(P2011−207329A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76647(P2010−76647)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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