説明

発光素子チップ、露光装置および画像形成装置

【課題】本発明は、発光素子アレイの構造を利用して信号線の引き回しの複雑化を軽減した発光素子チップを提供する。
【解決手段】発光素子チップ51aは、GaAs系の半導体で構成され、基板200上に形成されたpnpn構造からなる、発光部120の発光サイリスタ401と、設定部130の転送サイリスタ402と、制御部140の論理演算素子403とを備え、基板200上にp型の第1半導体層201とn型の第2半導体層202と、p型の第3半導体層203と、n型の第4半導体層204とを積層し、その後、予め定められた箇所をエッチングして形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子チップ、露光装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用したプリンタや複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、一様に帯電された感光体上に、画像情報を光記録手段によって照射することにより静電潜像を得た後、この静電潜像にトナーを付加して可視化し、記録紙上に転写して定着することによって画像形成が行なわれる。かかる光記録手段として、レーザを用いて主走査方向にレーザ光を走査させて露光する光走査方式の他、近年では、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の発光素子を一次元配列した発光素子アレイを含む発光素子チップを主走査方向に多数、配列してなる露光装置を用いた光記録手段が採用されている。
【0003】
特許文献1には、LEDを発光素子とした発光素子チップを薄膜化し、発光素子アレイを制御する集積回路を形成した基板上に接着したのち、発光素子アレイと集積回路との配線を行うことにより、発光素子ヘッドを小型化する技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−207444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えばpnpn構造やnpnp構造の発光サイリスタを用いた自己走査型の発光素子アレイを一次元上に多数、配列した露光装置では、発光素子アレイの点灯信号は、配列した発光素子チップの数に応じて必要となる。そのために、発光素子チップの数の増加とともに信号線の本数が増加し、この信号線の引き回しが複雑化することが問題となっていた。
本発明は、発光素子アレイの構造を利用して信号線の引き回しの複雑化を軽減した発光素子チップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、基板と、第1導電型を有し基板に積層される第1半導体層と、第1導電型とは導電型が異なる第2導電型を有し第1半導体層に積層される第2半導体層と、第1導電型を有し第2半導体層に積層される第3半導体層と、第2導電型を有し第3半導体層に積層される第4半導体層とを有する発光素子を複数備える発光部と、基板に積層される第1半導体層と、第1半導体層に積層される第2半導体層と、第2半導体層に積層される第3半導体層と、第3半導体層に積層される第4半導体層との連続する何れかの層を組合せて構成され、発光部の複数の発光素子の発光動作のための論理演算を行なう論理演算素子を備える制御部とを備えたことを特徴とする発光素子チップである。
【0007】
請求項2に係る発明は、基板に積層される第1半導体層と、第1半導体層に積層される第2半導体層と、第2半導体層に積層される第3半導体層と、第3半導体層に積層される第4半導体層とを有し、複数の発光素子それぞれに対応して設けられ、オン状態に設定されることにより対応する発光素子を発光可能な状態に設定する設定素子を複数備える設定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の発光素子チップである。
【0008】
請求項3に係る発明は、制御部は、論理演算素子として、信号を入力する入力電極と、論理演算の結果を出力する出力電極と、基準電位に設定する基準電位電極と、第1半導体層と第2半導体層とが構成する接合を順バイアスに設定する直流電圧を供給する直流電圧電極とを備え、第1半導体層が基準電位電極に接続され、第2半導体層が直流電圧電極に接続され、第3半導体層が入力電極に接続され、第4半導体層が出力電極に接続されたNOT回路を備えたことを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項記載の発光素子チップである。
【0009】
請求項4に係る発明は、第1導電型が正孔を電荷担体とするp型であり、第2導電型が電子を電荷担体とするn型である場合に、制御部は、論理演算素子として、NOT回路の基準電位電極と直流電圧電極と出力電極とをそれぞれ共通に接続した複数のNOT回路から構成され、複数の入力電極から複数の信号を入力するNOR回路を備えたことを特徴とする請求項3記載の発光素子チップである。
【0010】
請求項5に係る発明は、第1導電型が電子を電荷担体とするn型であり、第2導電型が正孔を電荷担体とするp型である場合に、制御部は、論理演算素子として、NOT回路の基準電位電極と直流電圧電極と出力電極とをそれぞれ共通に接続した複数のNOT回路から構成され、複数の入力電極から複数の信号を入力するNAND回路を備えたことを特徴とする請求項3記載の発光素子チップである。
【0011】
請求項6に係る発明は、制御部は、論理演算素子として、マルチコレクタ構造のトランジスタスイッチを備え、マルチコレクタ構造の少なくとも1つのコレクタが、発光部の発光素子を構成する第2半導体層に接続されていることを特徴とする請求項1記載の発光素子チップである。
【0012】
請求項7に係る発明は、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層および第4半導体層が、化合物半導体で構成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の発光素子チップである。
【0013】
請求項8に係る発明は、複数の発光素子が主走査方向に並べて配列された発光素子チップを、主走査方向に複数配列してなり、帯電された像保持体を露光する露光装置であって、発光素子チップは、基板と、第1導電型を有し基板に積層される第1半導体層と、第1導電型とは導電型が異なる第2導電型を有し第1半導体層に積層される第2半導体層と、第1導電型を有し第2半導体層に積層される第3半導体層と、第2導電型を有し第3半導体層に積層される第4半導体層とを有する発光素子を複数備える発光部と、基板に積層される第1半導体層と、第1半導体層に積層される第2半導体層と、第2半導体層に積層される第3半導体層と、第3半導体層に積層される第4半導体層とを組合せて構成された論理演算素子を備え、外部から入力される信号に基づいて論理演算素子にて論理演算を行い、論理演算の結果に基づいて発光部の複数の発光素子の発光動作を制御する制御部とを備えたことを特徴とする露光装置である。
【0014】
請求項9に係る発明は、発光素子チップは基板に積層される第1半導体層と、第1半導体層に積層される第2半導体層と、第2半導体層に積層される第3半導体層と、第3半導体層に積層される第4半導体層とを有し、複数の発光素子それぞれに対応して設けられ、オン状態に設定されることにより対応する発光素子を発光可能な状態に設定する設定素子を複数備える設定部をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の露光装置である。
【0015】
請求項10に係る発明は、発光素子チップの制御部は、発光素子チップに付された発光素子チップに固有の識別情報と信号として入力される識別情報とが一致する場合に、発光部を構成する複数の発光素子を発光させるための制御信号を発光部または設定部に供給することを特徴とする請求項8または9記載の露光装置である。
【0016】
請求項11に係る発明は、像保持体を帯電する帯電手段と、帯電された像保持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、像保持体に形成された静電潜像を現像する現像手段と、像保持体に現像された画像を被転写体に転写する転写手段とを有し、露光手段は、複数の発光素子が主走査方向に並べて配列された発光素子チップを、主走査方向に複数配列して構成され、発光素子チップは、基板と、第1導電型を有し基板に積層される第1半導体層と、第1導電型とは導電型が異なる第2導電型を有し第1半導体層に積層される第2半導体層と、第1導電型を有し第2半導体層に積層される第3半導体層と、第2導電型を有し第3半導体層に積層される第4半導体層とを有する発光素子を複数備える発光部と、基板に積層される第1半導体層と、第1半導体層に積層される第2半導体層と、第2半導体層に積層される第3半導体層と、第3半導体層に積層される第4半導体層とを組み合わせて構成された論理演算素子を備え、外部から入力される信号に基づいて論理演算素子にて論理演算を行い、論理演算の結果に基づいて発光部の複数の複数の発光素子の発光動作を制御する制御部とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べて信号線の引き回しの複雑化を軽減できる発光素子チップを提供できる。
請求項2の発明によれば、例えば自己走査型の発光素子アレイにて、本構成を採用しない場合に比べて信号線の引き回しの複雑化をより軽減できる。
請求項3の発明によれば、発光素子チップに搭載した論理演算機能により信号線の引き回しの複雑化を軽減できる。
請求項4の発明によれば、信号線の引き回しの複雑化を軽減できる発光素子チップの論理演算機能のための回路設計が容易にできる。
請求項5の発明によれば、信号線の引き回しの複雑化を軽減できる発光素子チップの論理演算機能のための回路設計が容易にできる。
請求項6の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べ、発光させない発光素子チップに搭載された発光素子の誤動作による発光動作をより確実に阻止できる。
請求項7の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べ、信号線の引き回しの複雑化を軽減できる発光素子チップの発光素子と論理演算素子とを同時形成できる。
請求項8の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べて信号線の引き回しの複雑化を軽減した露光装置を提供できる。
請求項9の発明によれば、例えば自己走査型の発光素子アレイにて、本構成を採用しない場合に比べて信号線の引き回しの複雑化をより軽減した露光装置を提供できる。
請求項10の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べて回路構成の少ない信号線の引き回しの複雑化を軽減した露光装置を提供できる。
請求項11の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べて小型で低コストの画像形成装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明は、以下の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0019】
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置1の全体構成を示した図である。
図1に示した画像形成装置1は、各色の階調データに対応して画像形成を行う画像プロセス系10、画像プロセス系10を制御する画像出力制御部30、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3に接続され、これらから受信された画像データに対して予め定めた画像処理を施す画像処理部40を備える。
【0020】
画像プロセス系10は、水平方向に定められた間隔を置いて並列的に配置される複数のエンジンからなる画像形成ユニット11を備える。この画像形成ユニット11は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kから構成され、それぞれ、静電潜像を形成してトナー像を形成する像保持体(感光体)の一例としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を帯電する帯電手段の一例としての帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光手段の一例としての露光装置14、露光装置14によって得られた潜像を現像する現像手段の一例としての現像器15を備える。また、画像プロセス系10は、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kの感光体ドラム12にて画像形成された各色のトナー像を記録用紙に多重転写するために、この記録用紙を搬送する用紙搬送ベルト21、用紙搬送ベルト21を駆動させるロールである駆動ロール22、感光体ドラム12のトナー像を被転写体である記録用紙に転写する転写手段の一例としての転写ロール23を備える。
【0021】
PC2や画像読取装置3から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インタフェースを介して画像信号として各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに供給される。画像プロセス系10は、画像出力制御部30から供給された同期信号等に基づいて動作する。例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により帯電された感光体ドラム12の表面に、画像処理部40から得られた画像信号に基づき、露光装置14によって静電潜像が形成される。形成された静電潜像に対して現像器15によってイエローのトナー像が形成される。形成されたイエローのトナー像は、図の矢印方向に回動する用紙搬送ベルト21上の記録用紙に転写ロール23を用いて転写される。続いて、マゼンタ、シアン、黒のトナー像が各々の感光体ドラム12上に形成され、用紙搬送ベルト21上の記録用紙に転写ロール23を用いて多重転写される。多重転写された記録用紙上のトナー像は、定着器24に搬送されて、熱および圧力によって記録用紙に定着される。
【0022】
図2は、本実施の形態が適用される露光装置14の構成を示した図である。露光装置14は、多数の発光素子が一次元に配列された発光素子チップ51と、発光素子チップ51を支持すると共に発光素子チップ51の駆動を制御するための回路が搭載されたプリント基板52と、各発光素子から出射された光出力を感光体ドラム12上に結像させる光学素子であるロッドレンズアレイ53とを備える。プリント基板52およびロッドレンズアレイ53は、ハウジング54に保持される。プリント基板52上には、複数の発光素子チップ51が支持され、発光素子が主走査方向に画素数分配列される。例えば、A3サイズの短手(297mm)を主走査方向とする場合、600dpiの解像度では、42.3μm毎に7040個の発光素子が配列されることになる。なお、本実施の形態では、実際にはサイドレジずれ等を考慮して7680個の発光素子が配列されている。ここでは、発光素子チップ51とプリント基板52とをまとめて発光素子ヘッド100と呼ぶ。
【0023】
図3は、発光素子ヘッド100の構成を示した図である。
発光素子ヘッド100は、プリント基板52と、主走査方向に千鳥状に配列した複数の発光素子チップ51と、これらの複数の発光素子チップ51の発光素子102を発光させるための制御信号を供給する信号発生回路110とを備える。信号発生回路110は例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのLSIであってよい。
【0024】
発光素子チップ51は、基板105と、基板105の矩形に長辺に沿って直線状に等間隔で配列された発光素子102と、ボンディングパッド101と、制御部140とを備える。
発光素子チップ51は、プリント基板52上に、奇数番目の発光素子チップ51と偶数番目の発光素子チップ51とを向かい合せ、ボンディングパッド101および制御部140の部分を重ねて配列される。これにより、複数の発光素子チップ51上の発光素子102が等間隔で配列する。
【0025】
信号発生回路110は、画像形成装置1(図1参照)に設けられた画像処理部40からの画像信号と、画像出力制御部30からの同期信号等とから、発光素子チップ51の発光素子102に発光動作をさせるための制御信号を発生する。
【0026】
GaAs系のpnpn構造またはnpnp構造の発光サイリスタを用いた自己走査型の発光素子アレイを用いた露光装置では、一次元上に発光素子アレイを形成した発光素子チップを、多数千鳥格子状に配列する。発光素子アレイの駆動ための制御信号には、自己走査により発光素子を順に発光させるためのクロック信号と個々の発光素子の点灯/非点灯を指定する点灯信号などが用いられる。
クロック信号は発光素子ヘッド上の複数の発光素子チップで共通に使用することができるが、点灯信号は発光素子チップ毎に異なる点灯信号として提供するため、発光素子ヘッド上の発光素子チップの数に応じた点灯信号線が用いられる。
このことから、発光素子チップの数の増加とともに信号線の本数が増加し、千鳥格子状に配列された発光素子チップ間での信号線の引き回しが複雑になる。
発光素子チップが点灯信号を取捨選択して取り込めば、複数の発光素子チップで点灯信号を多重化し、信号線の本数を少なく抑え、発光素子チップ間での信号線の引き回しが単純化する。
これには、発光素子チップ毎に点灯信号を取捨選択する論理演算回路を設けることが必要となる。すなわち、一例として、発光素子チップ毎にチップセレクタを設け、発光素子チップを識別する識別情報を発光素子チップ毎に付与し、チップセレクタが受信したチップセレクト信号csの識別情報と発光素子チップの識別情報とが一致する場合に点灯信号を取り込めばよい。
【0027】
図4は、発光素子ヘッド100において、信号発生回路110が発光素子チップ51に供給する信号の一例を説明する図である。信号発生回路110は、転送信号発生部111と、点灯信号発生部112と、選択信号発生部113とを備える。転送信号発生部111は、スタート信号φsおよびクロック信号φ1,φ2を生成する。点灯信号発生部112は、発光素子102の点灯/非点灯を制御する点灯信号φを生成する。選択信号発生部113は、複数の発光素子チップ51の中から点灯させる発光素子チップ51を選択するチップセレクト信号csを生成する。さらに、発光素子チップ51に、電源VGAと基準電位(SUB)とを供給する。
【0028】
スタート信号φs、クロック信号φ1,φ2は、発光素子ヘッド100上の複数の発光素子チップ51で共用される。さらに、本実施の形態では、点灯信号φおよびチップセレクト信号csも、発光素子ヘッド100上の複数の発光素子チップ51で共用される。すなわち、点灯させる発光素子チップ51として選択されていない発光素子チップ51に対しても、スタート信号φs、クロック信号φ1,φ2、点灯信号φ等が供給される。
【0029】
図5は、本実施の形態である発光素子チップ51の構成を示した図である。
発光素子チップ51は、基板105上に、発光素子102が等間隔に並んだ発光部120と、発光素子102を順に発光させるための設定部130と、制御部140と、ボンディングパッド101とを備える。
【0030】
以下では、発光素子チップ51の第1の実施の形態について説明する。
図6は、第1の実施の形態である発光部120と設定部130とを分離したタイプの自己走査型発光素子アレイを用いた発光素子チップ51aの等価回路を示した図である。この自己走査型発光素子アレイは、発光素子102である発光サイリスタL,L,L,…を備える発光部120と、設定素子である転送サイリスタT,T,T,…と、接続ダイオードD,D,D,…とを備える設定部130と、制御部の一例であるチップセレクタ141とを備える。発光サイリスタL,L,L,…と、転送サイリスタT,T,T,…とは、それぞれ一次元状に配列している。
【0031】
電源VGA(ここでは、−3.3Vと想定する。)は、電源ライン72から各負荷抵抗R,R,R,…を経て転送サイリスタT,T,T,…のゲート電極G,G,G,…に接続される。また、転送サイリスタT,T,T,…のゲート電極G,G,G,…は、発光サイリスタL,L,L,…のゲート電極G,G,G,…にそれぞれ接続される。ここでは、転送サイリスタT,T,T,…のゲート電極と発光サイリスタL,L,L,…のゲート電極とを区別せず、ゲート電極G,G,G,…とする。
転送サイリスタTのゲート電極Gにはスタート信号(φs)線73が接続され、スタート信号φsが供給される。
発光サイリスタL,L,L,…および転送サイリスタT,T,T,…のアノード電極は、基準電位(SUB)(ここでは、0Vと想定する。)に接続される。転送サイリスタT,T,T,…のカソード電極は、交互にクロック信号(φ1,φ2)線74,76に接続され、クロック信号φ1,φ2が供給される。
【0032】
チップセレクタ141は、チップセレクト信号線77と、入力側の点灯信号線78と、基準電位のSUBとに接続される。さらに、チップセレクタ141は出力側の点灯信号線79を介して発光サイリスタL,L,L,…のカソード電極に接続される。
【0033】
チップセレクタ141は、チップセレクト信号csを受信すると、発光素子チップ51aに固有の識別情報(ID)とチップセレクト信号csとして入力される識別情報とが一致する場合には、チップセレクタ141が搭載された発光素子チップ51aが選択されたと判断して、入力された点灯信号φに対応した点灯信号φ’を発光部120に供給する。一方、発光素子チップ51aに固有の識別情報(ID)とチップセレクト信号csとして入力される識別情報とが一致しない場合には、チップセレクタ141は、チップセレクタ141が搭載された発光素子チップ51aが選択されていないと判断して、点灯信号φ’を発光部120に出力しない。
この機能により、発光素子ヘッド100上のすべての発光素子チップ51aに点灯信号φ等を同時に供給しても、チップセレクタ141が選択されたと判断した発光素子チップ51aのみが点灯信号φを取り込める。
なお、チップセレクタ141の詳細な動作については後述する。
【0034】
ここで、発光部120と設定部130との動作を簡単に説明する。まず、設定部130の動作を説明する。ここでは、Lレベルを電源VGAの−3.3Vとし、Hレベルを基準電位(SUB)の0Vとする。
【0035】
スタート信号φsは、設定部130の動作を開始させるための信号である。転送サイリスタのオン電圧は、ゲート電極の電位+pn接合の拡散電位(ここでは、1Vと想定する。)で近似される。スタート信号φsをHレベル(0V)にすると、ゲート電極Gの電位が0Vになるので、転送サイリスタTのオン電圧は−1Vとなる。この時、クロック信号φ2をLレベルにすると、転送サイリスタTがオン状態になる。その後すぐに、スタート信号φsをLレベルに戻す。
【0036】
転送サイリスタTがオン状態になると、ゲート電極Gの電位はVGAの−3.3VからほぼSUBの0Vにまで上昇する。この電位上昇の影響は接続ダイオードDによってゲート電極Gに伝えられ、ゲート電極Gの電位を−1V(SUBから接続ダイオードDの順方向立上り電圧(拡散電位に等しい)を引いた値)に設定する。これにより、転送サイリスタTのオン電圧は、−2Vとなる。したがって、クロック信号φ1を−2Vより低い電位とすると、転送サイリスタTがオン状態となる。これに引き続いて、クロック信号φ2をHレベルの0Vに戻すと、転送サイリスタTがオフ状態になり、ゲート電極Gの電位はLレベルの−3.3Vになる。
【0037】
転送サイリスタTがオン状態になると、ゲート電極Gの電位は−1VからほぼSUBの0Vにまで上昇する。この電位上昇の影響は接続ダイオードDによってゲート電極Gに伝えられ、ゲート電極Gの電位が−1Vになり、転送サイリスタTのオン電圧は−2Vとなる。
一方、接続ダイオードDは逆バイアス状態であるため、ゲート電極Gへは前述の電位上昇の影響は伝わらない。そのため、ゲート電極Gの電位は−3.3Vのままとなり、転送サイリスタTのオン電圧は−4.3Vとなる。
クロック信号φ2を−2Vと−4.3Vの間の電位とすると、転送サイリスタTがオン状態になり、転送サイリスタTおよび転送サイリスタTを除く転送サイリスタはオフ状態のまま維持される。
このようにクロック信号φ1とクロック信号φ2との操作を繰り返すことで、転送サイリスタは順次オン状態になる。
【0038】
次いで、発光部120の動作を説明する。いま、転送サイリスタTがオン状態にあるとすると、ゲート電極Gの電位は、VGAの−3.3VからほぼSUBの0Vにまで上昇する。発光サイリスタのオン電圧は、ゲート電極の電位+pn接合の拡散電位(ここでは、1Vと想定する。)で近似されるので、発光サイリスタLのオン電圧は−1Vとなる。
一方、発光サイリスタLのオン電圧は−2Vである。発光サイリスタL,L,L,…のオン電圧は、さらに接続ダイオードが加わるため、−3V以下である。したがって、点灯信号φを、−1V〜−2Vの間の電位とすれば、発光サイリスタLのみがオン状態となり、発光サイリスタL,L,L,…はオフ状態のまま維持される。
なお、発光サイリスタLのオン状態は、点灯信号φをHレベルの0Vにすることにより、オフ状態にする。
【0039】
発光サイリスタL,L,L,…の発光強度は、点灯信号φに流す電流量および/または点灯信号φの幅で決められる。また、ある転送サイリスタがオン状態にあっても、点灯信号φをHレベルの0Vのままとすれば、その転送サイリスタに対応する発光サイリスタは非点灯のままとなる。
【0040】
図7は、本実施の形態による発光素子チップ51aの主要部分の断面構造を示した図である。発光素子チップ51aは、基板200上に形成された、pnpn構造からなる、発光部120の発光サイリスタL,L,L,…である発光サイリスタ401と、設定部130の転送サイリスタT,T,T,…である転送サイリスタ402と、制御部140の論理演算素子403とを備える。
発光素子チップ51aは、第1導電型が正孔を電荷担体とするp型であり、第2導電型が電子を電荷担体とするn型である場合であって、GaAs系の半導体で構成され、基板200上にp型の第1半導体層(図面ではpと略す。)201とn型の第2半導体層(図面ではnと略す。)202と、p型の第3半導体層(図面ではpと略す。)203と、n型の第4半導体層(図面ではnと略す。)204とを積層し、その後、予め定められた箇所をエッチングして形成される。本実施の形態では、発光部120の発光サイリスタ401と設定部130の転送サイリスタ402と制御部140の論理演算素子403とは、p型の第1半導体層201,n型の第2半導体層202,p型の第3半導体層203,n型の第4半導体層204が縦に積層された層構成を有している。
【0041】
なお、設定部130に用いる接続ダイオードD,D,D,…は、p型の第3半導体層203とn型の第4半導体層204との接合を利用して形成される。
さらに、制御部140では、論理演算素子403はpnpn構造を有しているが、すべての論理演算素子がpnpn構造を有しているわけではない。p型の第1半導体層201、n型の第2半導体層202およびp型の第3半導体層203から構成されるpnpトランジスタ、n型の第2半導体層202、p型の第3半導体層203およびn型の第4半導体層204から構成されるnpnトランジスタ、p型の第1半導体層201とn型の第2半導体層202との接合を利用したダイオード、n型の第2半導体層202とp型の第3半導体層203との接合を利用したダイオード、p型の第3半導体層203とn型の第4半導体層204との接合を利用したダイオードなど、連続する何れかの層を組合せて構成された論理演算素子が用いうる。
制御部140では、後述するように、例えば一部領域において上層側の半導体層を除去するなど、pnpn構造に予め定められた加工を施して使用する。
【0042】
発光部120の発光サイリスタ401と設定部130の転送サイリスタ402とは、アノード電極(A)として働くp型の第1半導体層201を基準電位(SUB)電極に、n型の第4半導体層204をカソード電極(K)に、さらにp型の第3半導体層203をゲート電極(G)に接続する。一方、制御部140のpnpn構造から構成される論理演算素子403は、p型の第1半導体層201を基準電位(SUB)電極に、n型の第2半導体層202を直流電圧電極(E)に、p型の第3半導体層203を入力電極(Input)に、n型の第4半導体層204を出力電極(Output)に接続する。
【0043】
制御部140の論理演算素子403は、発光部120の発光サイリスタ401または設定部130の転送サイリスタ402のn型の第2半導体層202に直流電圧電極(E)を設けた構造である。このことから、論理演算素子403の直流電圧電極(E)の電位を制御することで、論理演算素子403は、発光部120の発光サイリスタ401または設定部130の転送サイリスタ402となる。
【0044】
図7では、発光サイリスタ401,転送サイリスタ402,論理演算素子403は、それぞれ独立した島状に形成されているが、すべての層が分離している必要はなく、後述するように、一部の層が接続された構造も用いうる。
基板200をp型半導体としてもよく、p型の第1半導体層201を基板200が兼ねることで略してもよい。これらの場合には、基準電位(SUB)電極を基板200の裏面に設けても構わない。
【0045】
図8は、制御部の一例であるチップセレクタ141を示した図である。図8(a)はチップセレクタ141の等価回路を、図8(b)はチップセレクタ141の断面構造を示した図である。
チップセレクタ141は、4本のチップセレクト信号(cs)線771〜774と、入力側の点灯信号(φ)線78と、出力側の点灯信号(φ’)線79と、基準電位(SUB)電極とに接続される。チップセレクタ141は、電流路の断または接の状態を作るヒューズ171と否定(NOT)の論理演算を行う第1のNOT回路300と論理和(AND)の論理演算を行うAND回路146とからなるデコード回路145と、トランジスタスイッチ147とを備える。チップセレクト信号(cs)線771〜774はデコード回路145に接続され、デコード回路145内のAND回路146の出力はトランジスタスイッチ147のベース電極(B)に接続される。トランジスタスイッチ147のエミッタ電極(e)は基準電位(SUB)電極に接続され、トランジスタスイッチ147のコレクタ電極(c)は入力側の点灯信号(φ)線78および出力側の点灯信号(φ’)線79に接続される。
【0046】
デコード回路145は、発光素子チップ51aに固有の識別情報とチップセレクト信号csとして入力される識別情報を論理演算によって比較する。トランジスタスイッチ147は、デコード回路145の論理演算の比較結果に基づいて、発光サイリスタ401に発光動作をさせるための制御信号を供給する。
【0047】
まず、デコード回路145の動作を説明する。チップセレクト信号(cs)線771は、デコード回路145内でヒューズ171のみの経路771aと、ヒューズ171と第1のNOT回路300とが直列接続された経路771bとに分岐する。例えば、ヒューズ171のみの経路771aのヒューズ171を接、ヒューズ171と第1のNOT回路300とが直列接続された経路771bのヒューズ171を断とした設定では、チップセレクト信号(cs)線771のチップセレクト信号csが“1”の場合に、AND回路146に“1”が入力される。一方、チップセレクト信号(cs)線771のチップセレクト信号csが“0”の場合に、AND回路146に“0”が入力される。
これに対し、ヒューズ171のみの経路771aのヒューズ171を断、ヒューズ171と第1のNOT回路300とが直列接続された経路771bのヒューズ171を接とした設定では、チップセレクト信号(cs)線771のチップセレクト信号csが“1”の場合に、第1のNOT回路300が出力を反転(インバート)するので、AND回路146に“0”が入力される。一方、チップセレクト信号(cs)線771のチップセレクト信号csが“0”の場合に、AND回路146に“1”が入力される。
他のチップセレクト信号(cs)線772〜774でも同様である。
【0048】
図8(a)では、チップセレクト信号(cs)線771〜774のいずれもが、ヒューズ171のみの経路771aのヒューズ171を接、ヒューズ171と第1のNOT回路300とが直列接続された経路のヒューズ171を断として設定されている。このため、チップセレクト信号(cs)線771〜774のすべてのチップセレクト信号csが“1”、すなわち、チップセレクト信号csが“1111”の場合にのみ、AND回路146の入力がすべて“1”となって、AND回路146の出力が1になる。一方、チップセレクト信号csが“1111”でない場合、たとえば“0010”などの場合には、AND回路146の出力が“0”になる。
ここでは、発光素子チップ51に固有の識別情報はヒューズ171の接と断により構成され、チップセレクト信号csとして外部から入力される識別情報と比較される。
【0049】
次に、トランジスタスイッチ147について説明する。pnpトランジスタであるトランジスタスイッチ147は、エミッタ電極(e)がHレベルの0Vに接続されている。AND回路146の出力が“1”(Hレベル)の場合には、トランジスタスイッチ147は出力遮断状態になり、入力側の点灯信号(φ)線78から出力側の点灯信号線(φ’)79を経由して、入力側の点灯信号φに対応した点灯信号φ’が、発光部120の発光サイリスタ401のカソード電極(K)に供給される。これにより、チップセレクタ141が搭載された発光素子チップ51aの発光サイリスタ401の点灯が制御される。
一方、AND回路146の出力が“0”(Lレベル)の場合には、トランジスタスイッチ147はオン状態となり、点灯信号(φ’)線79はSUBの0Vに固定される。このため、チップセレクタ141が搭載された発光素子チップ51aの発光サイリスタ401は、アノード電極(A)である基準電位(SUB)電極とカソード電極(K)とが0Vの同電位となるので、点灯しない。
このようにして、チップセレクタ141は、チップセレクタ141が搭載された発光素子チップ51aの発光動作を制御する。
【0050】
ここでは、チップセレクト信号csとして4本の信号線を用いたが、発光素子ヘッド100上の発光素子チップ51aの数に応じて、本数を増減してよい。また、ここではヒューズ171を用いて、発光素子チップ51aに識別情報を付与する方法を用いたが、発光素子チップ51の製造時に、予め定められた配線を形成するなどにより、識別情報を付与する方法なども用いうる。
【0051】
図8(b)は、トランジスタスイッチ147と発光サイリスタ401との断面構造を示した図である。発光サイリスタ401は、図7で説明したものである。トランジスタスイッチ147は、p型の第1半導体層201と、n型の第2半導体層202と、p型の第3半導体層203とを、それぞれエミッタ領域と、ベース領域と、コレクタ領域とに用いる。発光サイリスタ401とトランジスタスイッチ147とは、基板200上に、p型の第1半導体層201と、n型の第2半導体層202と、p型の第3半導体層203と、n型の第4半導体層204とを順に積層した後、予め定められた層をエッチング除去して形成される。ここでは、p型の第1半導体層201を共通にしている。
発光サイリスタ401のゲート電極(G)は、転送サイリスタ402(図示しない)のゲート電極(G)に接続され、トランジスタスイッチ147のベース電極(B)はAND回路146(図示しない)の出力に接続されている。
【0052】
まず、論理演算素子403の1つである第1のNOT回路300を説明する。
図9はpnpn構造による第1のNOT回路300を示した図である。図9(a)は第1のNOT回路300の断面構造を、図9(b)は第1のNOT回路300の等価回路を示した図である。
図9(a)に示したように、第1のNOT回路300は、図7の論理演算素子403と同じ構造である。
【0053】
図9(b)に示したように、第1のNOT回路300は、図9(a)に示したp型の第1半導体層201と、n型の第2半導体層202と、p型の第3半導体層203とが、それぞれエミッタ領域と、ベース領域と、コレクタ領域として働くpnpトランジスタ(Q1)と、図9(a)に示したn型の第2半導体層202と、p型の第3半導体層203と、n型の第4半導体層204とが、それぞれエミッタ領域と、ベース領域と、コレクタ領域として働くnpnトランジスタ(Q2)とが組み合わされた回路である。なお、pnpトランジスタ(Q1)とnpnトランジスタ(Q2)とは縦に積層されている。
【0054】
第1のNOT回路300の動作を、図9(b)の等価回路で説明する。基準電位(SUB)電極をHレベルの0Vに設定し、直流電圧電極(E)をLレベルの−1V〜−1.5Vとして、p型の第1半導体層201とn型の第2半導体層202とが構成するpn接合を順バイアスにする。すると、pnpトランジスタ(Q1)はオン状態となり定電流源として働く。さらに、出力電極(Output)は負荷抵抗(図示せず)を介してHレベルにプルアップする。入力電極(Input)がLレベルの場合には、基準電位(SUB)電極から、pnpトランジスタ(Q1)を通して、入力電極(Input)に電流が流れる。直流電圧電極(E)がLレベルで、入力電極(Input)がLレベルであるので、npnトランジスタ(Q2)は出力遮断状態となり、出力電極(Output)はHレベルに維持される。
一方、入力電極(Input)がHレベルの場合は、基準電位(SUB)電極からpnpトランジスタ(Q1)を通して、npnトランジスタ(Q2)のベースに電流が流れる。これにより、npnトランジスタ(Q2)がオン状態になり、出力電極(Output)は直流電圧電極(E)の電位に固定されてLレベルになる。すなわち、第1のNOT回路300は、入力電極(Input)がLレベルの場合、出力電極(Output)がHレベルに、入力電極(Input)がHレベルの場合、出力電極(Output)がLレベルになり、NOTとして機能する。
この動作は、バイポーラトランジスタの論理処理素子として知られるIIL(Integrated Injection Logic,IL)の動作と同じであり、バイポーラトランジスタ動作に基づく。
【0055】
次に、AND回路146について説明する。
AND回路146は、論理演算の理論による、A AND B = NOT(A) NOR NOT(B)に基づき、NOT回路300と否定論理和(NOR)の論理演算を行うNOR回路310とから構成される。
そこで、論理演算素子403の1つであるNOR回路310について説明する。
図10は、pnpn構造によるNOR回路310を示した図であって、図10(a)はNOR回路310の断面構造を、図10(b)はNOR回路310の等価回路を示した図である。さらに、図10(c)はNOR回路310の真理値表である。
図10(a)に示したように、NOR回路310は、図9(a)に示した第1のNOT回路300を2つ並べた構造である。p型の第1半導体層201およびn型の第2半導体層202はそれぞれ共通になっている。
2つ並べた第1のNOT回路300の入力電極(Input)をそれぞれ第1の入力電極(Input1)と第2の入力電極(Input2)に接続する。さらに、それぞれの出力電極(Output)、直流電圧電極(E)および基準電位(SUB)電極をそれぞれ共通にする。
【0056】
図10(b)に示した等価回路により、NOR回路310の動作を説明する。2つ並べた第1のNOT回路300の内の1つがpnpトランジスタ(Q1)とnpnトランジスタ(Q2)とを構成し、第1のNOT回路300の他の1つがpnpトランジスタ(Q3)とnpnトランジスタ(Q4)とを構成する。pnpトランジスタ(Q1)〜npnトランジスタ(Q4)と半導体層201〜204との関係は図9(b)で説明した。基準電位(SUB)電極をHレベルの0Vに設定し、直流電圧電極(E)をLレベルの−1〜−1.5Vに設定する。さらに、出力電極(Output)を負荷抵抗(図示せず)を介してHレベルにプルアップする。第1の入力電極(Input1)がLレベルの場合には、基準電位(SUB)電極からpnpトランジスタ(Q1)を通して第1の入力電極(Input1)に電流が流れる。npnトランジスタ(Q2)は、第1の入力電極(Input1)がLレベルであるから、出力遮断状態になる。第2の入力電極(Input2)もLレベルであれば、npnトランジスタ(Q4)は出力遮断状態になる。したがって、出力電極(Output)はHレベルが維持される。
【0057】
一方、第1の入力電極(Input1)がHレベルの場合には、電流が基準電位(SUB)電極からpnpトランジスタ(Q1)を通してnpnトランジスタ(Q2)のベース領域に流れ、npnトランジスタ(Q2)がオン状態になるので、出力電極(Output)が直流電圧電極(E)の電位に固定されてLレベルになる。第2の入力電極(Input2)がLレベルであっても、npnトランジスタ(Q4)がオン状態になるので、出力電極(Output)はLレベルになる。すなわち、第1の入力電極(Input1)または第2の入力電極(Input2)のいずれかがHレベルであれば、npnトランジスタ(Q2)または(Q4)がオン状態になるので、出力電極(Output)はLレベルに固定される。すなわち、NOR回路310は、図10(c)の真理値表に示したNORとして機能する。
【0058】
図10では、2個の第1のNOT回路300を並べた2入力NOR回路310を示したが、第1のNOT回路300を複数並べることにより多入力NOR回路となる。
以上説明したように、前述したAND回路146は、本実施の形態による第1のNOT回路300とNOR回路310から構成しうる。さらに、NOR回路310を組み合わせることで、各種の論理演算が表現されうる。
【0059】
なお、本実施の形態では、発光部120および設定部130の発光サイリスタ401および転送サイリスタ402は電源VGAとして−3.3Vを用いるのに対し、制御部140の論理演算素子403は直流電圧電極(E)に設定する電圧として−1〜−1.5Vを用いる。発光部120および設定部130と制御部140との電圧差は、トランジスタスイッチなどを介することで変換しうる。
【0060】
図11は、制御部の他の一例であるチップセレクタ142を示した図である。図11(a)は等価回路を、図11(b)は断面構造を示した図である。
図11に示したチップセレクタ142は、トランジスタスイッチ148がマルチコレクタ電極構造である点で図8に示したチップセレクタ141と異なる。マルチコレクタ電極構造とは、バイポーラトランジスタが複数のコレクタ電極を有することをいう。ここでは、第1のコレクタ電極161は点灯信号(φ)線78および点灯信号(φ’)線79に接続されている。第2のコレクタ電極162は、発光部120のすべての発光サイリスタ401aのn型の第2半導体層202に設けられた第2のゲート電極(G2)に接続されている。
【0061】
チップセレクタ142の動作を、図11(a)の等価回路で説明する。チップセレクト信号csが“1111”の場合には、AND回路146の出力が“1”(Hレベル)になる。これにより、トランジスタスイッチ148が出力遮断状態となるので、入力側の点灯信号(φ)線78から出力側の点灯信号(φ’)線79を経由して、入力側の点灯信号φに対応した点灯信号φ’が、発光素子チップ51aの発光部120に供給される。このとき、トランジスタスイッチ148は出力遮断状態であるので、第2のコレクタ電極162も高インピーダンス状態となり、発光サイリスタ401aの発光を妨げない。
【0062】
一方、チップセレクト信号csが“1111”でない場合には、AND回路146の出力が“0”(Lレベル)となるので、トランジスタスイッチ148がオン状態になり、第1のコレクタ電極161及び第2のコレクタ電極162はSUBの0Vになる。この結果、出力側の点灯信号(φ’)線79はSUBの0Vに固定され、チップセレクタ142は発光サイリスタ401aに点灯信号φ’を供給しない。第2のコレクタ電極162は発光サイリスタ401aの第2のゲート電極(G2)に接続されているので、発光サイリスタ401aのアノード電極(A)として働く基準電位(SUB)電極と第2のゲート電極(G2)とカソード電極(K)とが共に0Vとなって、発光サイリスタ401aの動作を阻止する。
【0063】
以上述べたように、チップセレクタ142は、このチップセレクタ142が搭載された発光素子チップ51aが選択されていないと判断した場合には、点灯信号φ’を発光サイリスタ401aに供給しないとともに、発光サイリスタ401aが誤動作で発光する動作を阻止する機能を有している。
【0064】
図12は制御部の他の一例としてのチップセレクタ143を示した図である。図8および図11に示したチップセレクタ141およびチップセレクタ142は点灯信号φを制御する。これに対し、チップセレクタ143はクロック信号φ1,φ2とスタート信号φsとを制御する。チップセレクタ143が、チップセレクト信号csにより、このチップセレクタ143が搭載された発光素子チップ51bが選択されていると判断した場合には、入力側のクロック信号φ1,φ2とスタート信号φsとが、それぞれ、出力側のクロック信号φ1’,φ2’とスタート信号φs’とになって、設定部130に供給される。一方、チップセレクタ143が、このチップセレクタ143が搭載された発光素子チップ51bが選択されていないと判断した場合には、クロック信号φ1’,φ2’とスタート信号φs’とを0Vなどの予め定められた電位に固定して、設定部130の動作を阻止する。
【0065】
次に、発光素子チップ51の第2の実施の形態について説明する。図6に示した第1の実施の形態では、アノード電極を基準電位(SUB)電極とした発光サイリスタと転送サイリスタとを用いた場合について説明した。カソード電極を基準電位(SUB)電極とした発光サイリスタおよび転送サイリスタを用いた場合にも、回路の極性を変更することによって動作する。
図13は、第2の実施の形態である発光部と設定部とを分離したタイプの自己走査型発光素子アレイを用いた発光素子チップ51cの等価回路を示した図である。詳細な説明は省略するが、電源VGAを電源VGKとして、回路の極性を変更することで動作する。
【0066】
図14は、本実施の形態による発光素子チップ51cの主要部分の断面構造を示した図である。発光素子チップ51cは、基板210上に形成されたnpnp構造からなる、発光部120の発光サイリスタL,L,L,…である発光サイリスタ411と、設定部130の転送サイリスタT,T,T,…である転送サイリスタ412と、制御部140の論理演算素子413とを備える。
発光素子チップ51cは、第1導電型が電子を電荷担体とするn型であり、第2導電型が正孔を電荷担体とするp型である場合であって、GaAs系の半導体で構成され、基板210上に、n型の第1半導体層211と、p型の第2半導体層212と、n型の第3半導体層213と、p型の第4半導体層214とを順に積層し、その後、予め定められた箇所をエッチングして形成される。本実施の形態では、発光部120の発光サイリスタ411と設定部130の転送サイリスタ412と制御部140の論理演算素子413とは、n型の第1半導体層211,p型の第2半導体層212,n型の第3半導体層213,p型の第4半導体層214が縦に積層された層構成を有している。
【0067】
設定部130に用いる接続ダイオードは、n型の第3半導体層213とp型の第4半導体層214との接合を利用して形成される。
さらに、制御部140では、論理演算素子413はnpnp構造を有しているが、すべての論理演算素子がnpnp構造を有しているわけではない。n型の第1半導体層211、p型の第2半導体層212およびn型の第3半導体層213から構成されるnpnトランジスタ、p型の第2半導体層212、n型の第3半導体層213およびp型の第4半導体層214から構成されるpnpトランジスタ、n型の第1半導体層211とp型の第2半導体層212との接合を利用したダイオード、p型の第2半導体層212とn型の第3半導体層213との接合を利用したダイオード、n型の第3半導体層213とp型の第4半導体層214との接合を利用したダイオードなど、連続する何れかの層を組合せて構成された論理演算素子が用いうる。
制御部140では、後述するように、例えば一部領域において上層側の半導体層を除去するなど、npnp構造に予め定められた加工を施して使用する。
【0068】
発光部120の発光サイリスタ411と設定部130の転送サイリスタ412とは、アノード電極(K)(図示せず)として働くn型の第1半導体層211を基準電位(SUB)電極に、p型の第4半導体層214をアノード電極(A)に、n型の第3半導体層213をゲート電極(G)に接続する。一方、制御部140の論理演算素子413は、n型の第1半導体層211を基準電位(SUB)電極に、p型の第2半導体層212を直流電圧電極(E)に、n型の第3半導体層213を入力電極(Input)に、p型の第4半導体層214を出力電極(Output)に接続する。
なお、論理演算素子413は、発光サイリスタ411または転送サイリスタ412のp型の第2半導体層212に直流電圧電極(E)を設けた構造である。このことから、論理演算素子413の直流電圧電極(E)の電位を制御することで、論理演算素子413は、発光部120の発光サイリスタ411または設定部130の転送サイリスタ412となる。
【0069】
図14では、発光サイリスタ411,転送サイリスタ412,論理演算素子413は、それぞれ独立した島状に形成されているが、すべての層が分離している必要はなく、後述するように、一部の層が接続された構造も用いうる。
基板210をn型半導体基板としてもよく、n型の第1半導体層211を基板210が兼ねることで略してもよい。これらの場合には、基準電位(SUB)電極を基板210の裏面に設けても構わない。
【0070】
図15は、第2の実施の形態による、制御部の一例としてのチップセレクタ144を示した図である。チップセレクタ144のトランジスタスイッチ151はマルチコレクタ電極構造で、トランジスタスイッチ151は、第1のコレクタ電極163と第2のコレクタ電極164を備えている。第2のコレクタ電極164は、発光部120のすべての発光サイリスタ411aの第2のゲート電極(G2)に接続されている。
詳細な説明は省略するが、チップセレクタ144は、チップセレクタ142のAND回路146をOR回路159に、第1のNOT回路300を第2のNOT回路301に置き換え、さらにトランジスタスイッチ151の極性を置き換えるとともに、回路の極性を変更することによって動作する。
【0071】
論理演算素子の1つである第2のNOT回路301を説明する。
図16はnpnp構造による第2のNOT回路301を示した図である。図16(a)は第2のNOT回路301の断面構造を、図16(b)は第2のNOT回路301の等価回路を示した図である。
【0072】
図16(a)に示したように、第2のNOT回路301は、図14で示した論理演算素子413の構造を有する。
図16(b)に示したように、第2のNOT回路301は、図16(a)に示したn型の第1半導体層211と、p型の第2半導体層212と、n型の第3半導体層213とが、それぞれエミッタ領域と、ベース領域と、コレクタ領域として働くnpnトランジスタ(Q5)と、図16(a)に示したp型の第2半導体層212と、n型の第3半導体層213と、p型の第4半導体層214とが、それぞれエミッタ領域と、ベース領域と、コレクタ領域として働くpnpトランジスタ(Q6)とが組み合わされた回路である。なお、npnトランジスタ(Q5)とpnpトランジスタ(Q6)とは縦に積層されている。
【0073】
第2のNOT回路301の動作を、図16(b)の等価回路で説明する。基準電位(SUB)電極をLレベルのSUBの0Vに設定し、直流電圧電極(E)をHレベルの1V〜1.5Vとして、n型の第1半導体層211とp型の第2半導体層212とが構成する接合を順バイアスにする。すると、npnトランジスタ(Q5)はオン状態となり定電流源として働く。さらに、出力電極(Output)は負荷抵抗(図示せず)を介してLレベルにプルダウンする。入力電極(Input)がHレベルの場合には、電流が入力電極(Input)から、npnトランジスタ(Q5)を通して、基準電位(SUB)電極に電流が流れる。直流電圧電極(E)がHレベルで、入力電極(Input)がHレベルであるため、pnpトランジスタ(Q6)は出力遮断状態となり、出力電極(Output)はLレベルが維持される。一方、入力電極(Input)がLレベルの場合には、pnpトランジスタ(Q6)のベースからnpnトランジスタ(Q5)を通して基準電位(SUB)電極に電流が流れる。これにより、pnpトランジスタ(Q6)はオン状態となり、出力電極(Output)が直流電圧電極(E)の電位に固定されてHレベルになる。すなわち、第2のNOT回路301は、入力電極(Input)がLレベルの場合、出力電極(Output)がHレベルに、入力電極(Input)がHレベルの場合、出力電極(Output)はLレベルになるので、NOTとして機能する。
【0074】
次に、OR回路159について説明する。
OR回路159は、A OR B = NOT(A) NAND NOT(B)に基づいて、第2のNOT回路301と否定論理積(NAND)の演算を行うNAND回路311とから構成される。
そこで、論理演算素子413の1つであるNAND回路311について説明する。
図17は、npnp構造によるNAND回路311を示した図であって、図17(a)はNAND回路311の断面構造を示した図、図17(b)はNAND回路311の等価回路を示した図、図17(c)はNAND回路311の真理値表である。
図17(a)に示したように、NAND回路311は、図16(a)に示した第2のNOT回路301を2つ並べた構造である。n型の第1半導体層211およびp型の第2半導体層212はそれぞれ共通になっている。
2つ並べた第2のNOT回路301の入力電極(Input)をそれぞれ第3の入力電極(Input3)と第4の入力電極(Input4)に接続する。さらに、それぞれの出力電極(Output)、直流電圧電極(E)および基準電位(SUB)電極をそれぞれ共通にする。
【0075】
図17(b)の等価回路により、NAND回路311の動作を説明する。2つ並べた第2のNOT回路301の内の1つがnpnトランジスタ(Q5)とpnpトランジスタ(Q6)を構成し、第2のNOT回路301の他の1つがnpnトランジスタ(Q7)とpnpトランジスタ(Q8)を構成する。
npnトランジスタ(Q5)〜pnpトランジスタ(Q8)と半導体層211〜214の関係は図16(b)で説明したものと同様である。基準電位(SUB)電極をLレベルの0Vに、直流電圧電極(E)をHレベルの1V〜1.5Vに設定する。さらに、出力電極(Output)は負荷抵抗(図示せず)を介してLレベルにプルダウンする。第3の入力電極(Input3)がHレベルの場合には、第3の入力電極(Input3)からnpnトランジスタ(Q5)を通して基準電位(SUB)電極に電流が流れる。pnpトランジスタ(Q6)は、第3の入力電極(Input3)がHレベルであるため、出力遮断状態になる。第4の入力電極(Input4)もHレベルの場合であれば、pnpトランジスタ(Q8)は出力遮断状態になる。したがって、出力電極(Output)はLレベルを維持する。
【0076】
一方、第3の入力電極(Input3)がLレベルの場合には、pnpトランジスタ(Q6)のベースからnpnトランジスタ(Q5)を通して基準電位(SUB)電極に電流が流れ、pnpトランジスタ(Q6)がオン状態になるので、出力電極(Output)が直流電圧電極(E)の電位に固定されてHレベルになる。たとえ、第4の入力電極(Input4)がHレベルであっても、出力電極(Output)はHレベルになる。すなわち、第3の入力電極(Input3)または第4の入力電極(Input4)のいずれかがLレベルであれば、pnpトランジスタ(Q6)またはpnpトランジスタ(Q8)がオン状態になるので、出力電極(Output)はHレベルになる。すなわち、NAND回路311は、図17(c)の真理値表に示したNANDとして機能する。
図17では、2個の第2のNOT回路301を並べた2入力NAND回路311を示したが、第2のNOT回路301を複数並べることにより多入力NAND回路となる。
以上説明したように、前述したOR回路159は、本実施の形態による第2のNOT回路301とNAND回路311とから構成しうる。さらに、NAND回路311を組み合わせることで、各種の論理演算が表現されうる。
【0077】
なお、本実施の形態では、発光部120および設定部130の発光サイリスタ411および転送サイリスタ412は電源VGKとして3.3Vを用いるのに対し、制御部140の論理演算素子413は直流電圧電極(E)に設定する電圧として1〜1.5Vを用いる。発光部120および設定部130と制御部140との電圧差は、トランジスタスイッチなどを介することで変換しうる。
【0078】
さらに、論理演算の理論によって、NOR回路またはNAND回路により、RSフリップフロップ、Dラッチ、Dフリップフロップ、シフトレジスタなどが構成しうる。
したがって、本実施の形態では、制御部としてチップセレクタの場合を述べたが、これに限ることなく、発光部の点灯開始の発光素子の位置をシフトするシフト回路などが構成されうる。
GaAs系の半導体で構成していたが、これに限られるものではなく、例えばGaP等、イオン注入によるp型半導体,n型半導体の製作が困難な化合物半導体を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成を示した図である。
【図2】本実施の形態が適用される露光装置の構成を示した図である。
【図3】発光素子ヘッドの構成を示した図である。
【図4】発光素子ヘッドにおいて信号発生回路が発光素子チップに供給する信号の一例を説明する図である。
【図5】発光素子チップの構成を示した図である。
【図6】第1の実施の形態である自己走査型発光素子アレイを用いた発光素子チップの等価回路を示した図である。
【図7】本実施の形態による発光素子チップの主要部分の断面構造を示した図である。
【図8】制御部の一例であるチップセレクタを示した図である。
【図9】pnpn構造による第1のNOT回路を示した図である。
【図10】pnpn構造によるNOR回路を示した図である。
【図11】制御部の他の一例であるチップセレクタを示した図である。
【図12】制御部の他の一例であるチップセレクタを示した図である。
【図13】第2の実施の形態である自己走査型発光素子アレイを用いた発光素子チップの等価回路を示した図である。
【図14】本実施の形態による発光素子チップの断面構造を示した図である。
【図15】制御部の一例であるチップセレクタを示した図である。
【図16】npnp構造による第2のNOT回路を示した図である。
【図17】npnp構造によるNAND回路を示した図である。
【符号の説明】
【0080】
1…画像形成装置、11Y,11M,11C,11K…画像形成ユニット、14…露光装置、23…転写ロール、24…定着器、51,51a,51b,51c…発光素子チップ、53…ロッドレンズアレイ、100…発光素子ヘッド、101…ボンディングパッド、102…発光素子、105…基板、110…信号発生回路、120…発光部、130…設定部、140…制御部、141,142,143,144…チップセレクタ、300…第1のNOT回路、301…第2のNOT回路、310…NOR回路、311…NAND回路、401,401a,411,411a…発光サイリスタ、402,412…転送サイリスタ、403,413…論理演算素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1導電型を有し前記基板に積層される第1半導体層と、当該第1導電型とは導電型が異なる第2導電型を有し当該第1半導体層に積層される第2半導体層と、当該第1導電型を有し当該第2半導体層に積層される第3半導体層と、当該第2導電型を有し当該第3半導体層に積層される第4半導体層とを有する発光素子を複数備える発光部と、
前記基板に積層される前記第1半導体層と、当該第1半導体層に積層される前記第2半導体層と、当該第2半導体層に積層される前記第3半導体層と、当該第3半導体層に積層される前記第4半導体層との連続する何れかの層を組合せて構成され、前記発光部の複数の前記発光素子の発光動作のための論理演算を行なう論理演算素子を備える制御部と
を備えたことを特徴とする発光素子チップ。
【請求項2】
前記基板に積層される前記第1半導体層と、当該第1半導体層に積層される前記第2半導体層と、当該第2半導体層に積層される前記第3半導体層と、当該第3半導体層に積層される前記第4半導体層とを有し、複数の前記発光素子それぞれに対応して設けられ、オン状態に設定されることにより対応する発光素子を発光可能な状態に設定する設定素子を複数備える設定部をさらに備えたこと
を特徴とする請求項1記載の発光素子チップ。
【請求項3】
前記制御部は、前記論理演算素子として、信号を入力する入力電極と、論理演算の結果を出力する出力電極と、基準電位に設定する基準電位電極と、前記第1半導体層と前記第2半導体層とが構成する接合を順バイアスに設定する直流電圧を供給する直流電圧電極とを備え、
前記第1半導体層が前記基準電位電極に接続され、
前記第2半導体層が前記直流電圧電極に接続され、
前記第3半導体層が前記入力電極に接続され、
前記第4半導体層が前記出力電極に接続されたNOT回路を備えたことを特徴とする請求項1ないし2のいずれか1項記載の発光素子チップ。
【請求項4】
前記第1導電型が正孔を電荷担体とするp型であり、前記第2導電型が電子を電荷担体とするn型である場合に、
前記制御部は、前記論理演算素子として、前記NOT回路の前記基準電位電極と前記直流電圧電極と前記出力電極とをそれぞれ共通に接続した複数の前記NOT回路から構成され、複数の前記入力電極から複数の信号を入力するNOR回路を備えたことを特徴とする請求項3記載の発光素子チップ。
【請求項5】
前記第1導電型が電子を電荷担体とするn型であり、前記第2導電型が正孔を電荷担体とするp型である場合に、
前記制御部は、前記論理演算素子として、前記NOT回路の前記基準電位電極と前記直流電圧電極と前記出力電極とをそれぞれ共通に接続した複数の当該NOT回路から構成され、複数の前記入力電極から複数の信号を入力するNAND回路を備えたことを特徴とする請求項3記載の発光素子チップ。
【請求項6】
前記制御部は、前記論理演算素子として、マルチコレクタ構造のトランジスタスイッチを備え、当該マルチコレクタ構造の少なくとも1つのコレクタが、前記発光部の前記発光素子を構成する前記第2半導体層に接続されていることを特徴とする請求項1記載の発光素子チップ。
【請求項7】
前記第1半導体層、前記第2半導体層、前記第3半導体層および前記第4半導体層が、化合物半導体で構成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の発光素子チップ。
【請求項8】
複数の発光素子が主走査方向に並べて配列された発光素子チップを、主走査方向に複数配列してなり、帯電された像保持体を露光する露光装置であって、
前記発光素子チップは、
基板と、
第1導電型を有し前記基板に積層される第1半導体層と、当該第1導電型とは導電型が異なる第2導電型を有し当該第1半導体層に積層される第2半導体層と、当該第1導電型を有し当該第2半導体層に積層される第3半導体層と、当該第2導電型を有し当該第3半導体層に積層される第4半導体層とを有する前記発光素子を複数備える発光部と、
前記基板に積層される前記第1半導体層と、当該第1半導体層に積層される前記第2半導体層と、当該第2半導体層に積層される前記第3半導体層と、当該第3半導体層に積層される前記第4半導体層とを組合せて構成された論理演算素子を備え、外部から入力される信号に基づいて当該論理演算素子にて論理演算を行い、当該論理演算の結果に基づいて前記発光部の複数の前記発光素子の発光動作を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項9】
前記発光素子チップは
前記基板に積層される前記第1半導体層と、当該第1半導体層に積層される前記第2半導体層と、当該第2半導体層に積層される前記第3半導体層と、当該第3半導体層に積層される前記第4半導体層とを有し、複数の前記発光素子それぞれに対応して設けられ、オン状態に設定されることにより対応する当該発光素子を発光可能な状態に設定する設定素子を複数備える設定部をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の露光装置。
【請求項10】
前記発光素子チップの前記制御部は、
前記発光素子チップに付された当該発光素子チップに固有の識別情報と前記信号として入力される識別情報とが一致する場合に、前記発光部を構成する複数の前記発光素子を発光させるための制御信号を当該発光部または前記設定部に供給することを特徴とする請求項8または9記載の露光装置。
【請求項11】
像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像保持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記像保持体に形成された前記静電潜像を現像する現像手段と、
前記像保持体に現像された画像を被転写体に転写する転写手段と
を有し、
前記露光手段は、複数の発光素子が主走査方向に並べて配列された発光素子チップを、主走査方向に複数配列して構成され、
前記発光素子チップは、
基板と、
第1導電型を有し前記基板に積層される第1半導体層と、当該第1導電型とは導電型が異なる第2導電型を有し当該第1半導体層に積層される第2半導体層と、当該第1導電型を有し当該第2半導体層に積層される第3半導体層と、当該第2導電型を有し当該第3半導体層に積層される第4半導体層とを有する前記発光素子を複数備える発光部と、
前記基板に積層される前記第1半導体層と、当該第1半導体層に積層される前記第2半導体層と、当該第2半導体層に積層される前記第3半導体層と、当該第3半導体層に積層される前記第4半導体層とを組み合わせて構成された論理演算素子を備え、外部から入力される信号に基づいて当該論理演算素子にて論理演算を行い、当該論理演算の結果に基づいて前記発光部の複数の前記発光素子の発光動作を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−45230(P2010−45230A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208785(P2008−208785)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】