説明

発光装置の製造方法

【課題】GaN系半導体を用いた発光装置において、光取出効率を増大させる。
【解決手段】サファイア基板10の表面にナノインプリントプロセス及びRIEでナノ寸法の凹凸構造を形成し、その上にGaN層14、n型GaN層16、活性層18、p型GaN層20を形成する。凹凸構造により活性層18からの光の反射を抑制する。サファイア基板10とGaN層14との界面にSiOあるいは金属を蒸着してもよい。p型GaN層20の外表面にナノ寸法の凹凸構造を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置の製造方法、特に、光取出効率の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、GaN等の窒化物半導体を用いたLEDやLD等の発光装置において、光取出効率を増大させる試みがなされている。例えば、下記に示す特許文献1には、サファイア基板上に窒化物半導体層を形成する際の、サファイア基板と窒化物半導体層間の量子効率を増大させながらストレス及び転位を減少させることを目的として、サファイア基板にナノ寸法の凹凸構造を形成し、その上に窒化物半導体を製造することが開示されている。具体的には、サファイア基板上にPt、Au、Cr等の自己組織化金属の層を形成し、サファイア基板を加熱して表面が不規則に露出するように自己組織化金属を凝結させる。そして、この自己組織化金属凝結体をマスクとしてサファイア基板の露出した部分をプラズマでエッチングし、自己組織化金属の凝結体をウェットエッチングで除去することでサファイア基板にナノ寸法の凹凸構造を形成する。凹凸構造は直径50乃至500nm、深さ3乃至50nmとしている。ナノ寸法の凹凸構造が上面に形成されたサファイア基板を用いて窒化物半導体を形成すると、サファイア基板の凹凸構造がGaN成長の際、核の生成に影響を及ぼし、サファイア基板の上面に形成されるGaNの結晶欠陥を減らすとしている。また、全反射条件によると、反射角はサファイア基板と空気間の屈折率またはGaNと空気間の屈折率により決定されるが、かかる全反射条件が臨界角より小さい場合に光が素子の外に漏れなくなり、かかる問題を凹凸構造により克服することができるとしている。
【0003】
図9に、従来技術における窒化物半導体装置の断面図を示す。自己組織化金属凝結体を用いてサファイア基板102の上面にナノ寸法の凹凸が形成され、気孔108及び突起110が形成される。この上に、GaN核生成層112、n型GaN層114、活性層116、p型GaN層118が順次形成される。
【0004】
また、特許文献2には、フリップチップ型のLEDにおいて、サファイア基板上に順次n型バッファ層、n型GaN層、発光層、p型GaN層を形成し、p型GaN層から発光層を超えてn型GaN層へ達するテーパ状の溝を形成するととともに、p型GaNに発光層まで達しない微小凹凸をナノインプリントプロセス(ナノインプリントリソグラフィー)により形成することが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−183905号公報
【特許文献2】特開2007−173579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板上にナノ寸法の凹凸を形成して発光特性を向上させる場合に、より効率的かつ精度よく形成することが必要であり、同時に量産化も考慮する必要がある。さらに、GaN系半導体を用いたLEDあるいはLDの用途拡大に伴い、一層の発光出力増大が求められている。
【0007】
本発明の目的は、ナノ寸法の凹凸を用いてGaN系半導体を用いた発光装置の光取出効率を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板あるいはAlGaInN層にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程と、前記ナノ寸法の凹凸上に窒化物半導体層を形成する工程と、前記窒化物半導体層上にn型層、活性層及びp型層を含む発光構造を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記SiO膜あるいはSixNy膜(0<x<1、0<y<1)にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程と、前記ナノ寸法の凹凸上に窒化物半導体層を形成する工程と、前記窒化物半導体層上にn型層、活性層及びp型層を含む発光構造を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、金属膜にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程と、前記ナノ寸法の凹凸上に窒化物半導体層を形成する工程と、前記窒化物半導体層上にn型層、活性層及びp型層を含む発光構造を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明において、さらに、前記発光層の外表面にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程を有することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ナノインプリントプロセスを用いて高精度かつ容易にナノ寸法の凹凸を所定位置に形成し、発光装置の光取出効率を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。本実施形態の基本原理は以下のとおりである。すなわち、GaN系半導体を用いたLED等の発光装置の光取出効率は、光が空気や媒体と接触する面、GaN系発光装置と空気との接触面、GaN系半導体とサファイア基板との境界面の全てが関係することになる。本実施形態では、これらの境界面においてナノ寸法の凹凸を形成するものである。通常、光が見えるというのはその波長程度までとされている。それより小さいと、その物質と相手方物質の両方を見てしまい、屈折率は2つの物質の中間になる。仮に、GaNの表面が空気に触れており、GaNの表面にナノ寸法の凹凸が形成されていたとし、GaNの凹凸の深さがλ/4n・n(但し、λは光の波長、nは屈折率、nは正の奇数)であったとすると、垂直入射時には反射率が最小となり、このときに光取出効率は最大となる。
【0014】
また、サファイア基板上にGaNを形成する際に、サファイア基板にナノ寸法の凹凸を形成してGaNを形成すると、サファイア基板とGaNの界面における屈折率は光から見てサファイアとGaNの屈折率の間の値になる。サファイアの屈折率は1.9、GaNの屈折率は2.7であるため、エッチング面と非エッチング面がほぼ等しい割合の場合にはサファイア基板とGaNの界面における屈折率(実効屈折率)は両者の中間の約2.3となる。光の波長を385nm程度とし、垂直入射の場合、凹凸の深さをλ/4n=385/4/2.3=42nm以上とすることで界面における反射率を最小として光取出効率を増大させることができる。
【0015】
一方、サファイア基板やGaNの表面にナノ寸法を容易かつ高精度に形成するために、本実施形態ではナノインプリントプロセス(ナノインプリントリソグラフィー:NIL)及び反応性イオンエッチング(RIE)を組み合わせて用いる。ナノインプリントプロセスは、型の押し付けという極めて単純なプロセスによりナノ寸法の形状転写ができる加工プロセスである。ナノインプリントプロセスには、熱式ナノインプリントやUV式ナノインプリント等がある。熱式ナノインプリントプロセスでは、金型と被成形素材を被成形素材のガラス転移温度以上に加熱し、その状態で金型を被成形素材に押し付けて金型パターンを被成形素材に転写し、その後金型と被成形素材とを被成形素材のガラス転移温度以下に冷却して金型を被成形素材から離型する一連の工程から構成されるものである。UV式ナノインプリントプロセスでは、UV樹脂を基板上に塗布し、その上から石英の型(モールド)を押し付け、位置合わせを行い、UV光を照射し、金型を離型するという一連の工程から構成されるものである。UV式ナノインプリントプロセスでは、熱を加えないプロセスのため熱膨張、熱収縮の問題がなく高精度に加工できること、及び光を透過する石英の型を使用するためアライメントの精度を高めることができる利点がある。本実施形態では、このようなナノインプリントプロセスを用いてサファイア基板上にナノ寸法の凹凸パターンを形成する。
【0016】
すなわち、まず、ナノ寸法の凹凸パターンを形成するに先立ち、凹凸パターンの反転形状を有する型を作製する。型は、例えばシリコンウエハ上にレジストを塗布し電子線を照射してレジストパターンを作製する。その後、レジストパターンのNi電鋳をとることで型を作製する。型を作製した後、サファイア基板の表面にレジストを塗布し、予め作製した型を押し付けて凹凸パターンを転写する。離型後、レジストには凹凸パターンが転写されるので、このレジストをマスクとして反応性イオンエッチング(RIE)を行うことでサファイア基板表面にナノ寸法の凹凸が形成される。その後、サファイア基板上にマスクとして残存するレジストを別のRIEで除去する。以上のようにして、サファイア基板の表面にナノ寸法の凹凸構造が高精度かつ量産に優れた方法で形成される。
【0017】
図1に、本実施形態における発光装置の構成を示す。上記のように、ナノインプリントプロセス及びRIEを用いてサファイア基板10の表面にナノ寸法の凹凸を形成する。凹凸の凹部12の深さ、すなわちエッチング深さは42nmである。表面にナノ寸法の凹凸が形成されたサファイア基板10上にGaN層(バッファ層)14、n型GaN層16、GaN系活性層18、p型GaN層20からなるダブルへテロ発光構造をMOCVDプロセスで順次形成する。
【0018】
図2に、サファイア基板10の表面に形成されるナノ寸法の凹凸構造の平面図を示す。凸部の直径は250nmであり、凸部間の間隔、すなわち凹凸構造のピッチは500nmである。凸部は円柱状であり、三角形の頂点に位置するように配列する。図3に、凹凸構造の模式図を示す。凸部と凹部の間隔は同一aであり、ピッチは2aである。凹部12の深さはλ/4nであり、nは凹凸構造により生じたサファイアとGaNの中間の屈折率である。λ/4nとするのは既述したとおり垂直入射の場合であり、角度がある場合には入射してから反射するまでの距離が長くなるので最適ではなく、したがって凹部12の深さはλ/4n以上とする。凹部12が深いほど空気(正確には窒素、水素、アンモニア)が混入することとなり、より好適である。エッチング深さを42nmとし、凸部の直径をそれぞれ250nm、200nm、150nmとした場合の発光装置の出力を計測したところ、サファイア基板10の表面に凹凸構造がない場合を1として、
直径250nm:1.1倍
直径200nm:1.5倍
直径150nm:1.7倍
の結果が得られる。これらの結果は、1回の成長で比較が出来るように、凹凸構造なし、250nmの凹凸構造、200nmの凹凸構造、150nmの凹凸構造を1つの基板上に作り込み1回の成長で製膜したものであり、20mAで駆動した場合の結果である。また、CL(カソードルミネセンス)で表面転位を観察したところ、表面に凹凸構造がない場合には6×10個/cm存在する一方、凹凸構造がある場合には3〜5×10個/cm程度に低減する。これらのことから、サファイア基板上のナノ寸法の凹凸構造により、転位の低減と基板/GaN界面における光反射の低減による光出力の増大を図ることができる。ナノ寸法の凹凸のサイズが小さくなるほど、光出力が増大する傾向にある。これは、凹凸のサイズが小さくなる程、光にとって実効屈折率がサファイアとGaNの屈折率の中間に近くなるためであると考えられる。一般的には、凹凸構造の直径のサイズとして100nm〜150nmが適当であろう。
【0019】
本実施形態では図1に示すようにサファイア基板10上にGaN層14、n型GaN層16、GaN系活性層18、p型GaN層20を形成しているが、サファイア基板10上にバッファ層を介してAlGaInN層を形成し、このAlGaInN層にナノ寸法の凹凸構造を形成し、ナノ寸法の凹凸構造が形成されたAlGaInN層上にダブルへテロ構造の発光構造を形成してもよい。また、発光構造としては、他の構成の発光構造を形成してもよい。
【0020】
図4に、発光装置の他の構成を示す。ナノインプリントプロセス及びRIEでサファイア基板10上にナノ寸法(100nm〜250nm)の凹凸構造を形成し、その上にGaN層140を形成する。次に、アンドープGaN層160を形成し、さらにSiドープn型GaN層180を形成する。次に、Siドープn型AlGaN/Siドープn型GaNを交互に50ペア形成してn型SLS層200を形成する。その後、アンドープGaN層220を形成し、さらにアンドープInGaN/アンドープAlInGaNを交互に7ペア積層してMQW活性層240を形成する。そして、MQW活性層240の上に、Mgドープp型AlGaN/Mgドープp型GaNを交互に50ペア形成してp型SLS層260を形成し、さらにp型GaN層280を形成する。以上のようにしてLEDウエハを作成した後、LEDウエハをMOCVD装置から取り出し、金属膜を蒸着してp型透明電極300を形成する。そして、表面にフォトレジストを塗布し、n型GaN層180が露出するまでエッチングし、露出したn型GaN層180上にn電極320を形成する。
【0021】
各層の形成条件は例えば以下のとおりである。ナノ寸法の凹凸構造が表面に形成されたサファイア基板10をMOCVD装置内に載置し、温度を500度に維持しつつトリメチルガリウム及びアンモニアガスを流してGaN層140を25nm形成する。次に、温度を1075度まで昇温して再びトリメチルガリウム及びアンモニアガスを流してアンドープGaN層160を2μm形成する。さらに、トリメチルガリウム及びアンモニアガスにモノメチルシランガスを加えてSiドープn型GaN層180を1μm形成する。キャリア密度は約5×1018cm−3である。次に、サファイア基板10の温度を1075度に維持してn型SLS層200を形成する。Siドープn型AlGaN層は2nm、Siドープn型GaN層も2nmである。AlGaN層を形成する際にはトリメチルアルミニウムを供給する。その後、基板温度を830度まで下げてアンドープGaN層220を30nm形成する。そして、アンドープInGaN層を1.5nm、アンドープAlInGaN層9.5nmを交互に形成する。アンドープInGaN層が井戸層、アンドープAlInGaN層がバリア層として機能し、井戸層のバンドギャップはバリア層のバンドギャップより小さく設定される。井戸層及びバリア層をともにAlInGaN層で構成してもよい。井戸層のAl組成としては、0%〜20%が好適である。MQW活性層240を形成後、基板10の温度を975度まで下げてMgドープp型AlGaN層を1.5nm、Mgドープp型GaN層を0.8nmずつ交互に形成してp型SLS層260とする。さらに、p型GaN層280を15nm形成する。
【0022】
サファイア基板10とGaN層140との間に、さらに不連続的にSiNバッファ層を形成してもよい。この不連続SiNバッファ層は層中の転位を確実に低減するためのものである。不連続SiNバッファ層は、基板10の温度を500度まで下げ、モノメチルシランガスとアンモニアガスを100秒間流すことで形成できる。GaN層140の成長途中にSiN層を挿入して転位を抑制してもよい。
【0023】
また、図1の発光装置ではサファイア基板10の表面にナノ寸法の凹凸構造を形成しているが、さらに、発光装置の外表面、すなわちp型GaN層20の表面にナノ寸法の凹凸を形成してもよい。
【0024】
図5に、サファイア基板10及びp型GaN層20の表面にナノインプリントプロセス及びRIEを用いてナノ寸法の凹凸構造を形成した場合の構成を示す。サファイア基板10表面の凹凸のエッチング深さは42nm、直径は100nm〜250nmであり、p型GaN層20表面の凹凸のエッチング深さは45nm、直径は100nm〜250nmである。サファイア基板10とGaN層14との界面における凹凸、及びp型GaN層20表面における凹凸により、光反射を防止して光取出効率がより増大する。サファイア基板10表面の凹凸とp型GaN層20表面の凹凸は同一の型を用いて形成してもよく、異なる型を用いて形成してもよい。量産には同一の型を用いて形成する、すなわち両凹凸のサイズ、ピッチを同一にすることが好適であろう。
【0025】
なお、サファイア基板10表面に凹凸を形成せず、単にp型GaN層20の表面にナノ寸法の凹凸を形成してもよい。p型GaN層20のエッチング深さを45nmとし、直径を250nmとした場合、発光波長λ=450nmにおいて凹凸がない場合に比べて光出力が1.4倍に増大することを確認している。p型GaN層20上にはp型電極が形成されるが、p型GaN層20表面の凹凸は、p型電極とのオーミック接触を容易化する効果もある。
【0026】
また、図1の構成において、サファイア基板10の表面にナノ寸法の凹凸構造を形成するのではなく、サファイア基板10上にSiO層あるいはSixNy層(0<x<1、0<y<1)を蒸着した後にナノ寸法の凹凸構造を形成してもよい。例えばSiOをサファイア基板10上に蒸着して凹凸構造を形成すると、サファイア基板10とGaN層14との界面においてSiOがナノ寸法で間欠的に介在することとなり、屈折率が変化する。GaNとSiOの存在ピッチが波長程度になると、実効屈折率はGaNとSiOの屈折率の中間値に近くなる。
【0027】
図6(a)、(b)に、SiO層を蒸着してナノ寸法の凹凸構造を形成する場合の模式図を示す。図6(a)のように、サファイア基板10上にSiOがナノ寸法ピッチで存在し、SiOの間にGaN層14のGaNが存在する。したがって、光から見れば、サファイア基板10とGaN層14との界面領域(図中一点鎖線で示す領域90)における実効屈折率は、GaNの2.7とSiOの1.5の中間である2.1程度となり、サファイアの1.9に非常に近くなる。したがって、図6(b)のように、サファイア基板10との界面には屈折率が2.1程度のGaN層14’が実質的に存在することと等価となり、サファイア基板10との界面における反射が効果的に抑制されることになる。このように、SiOあるいはSixNyをサファイアとGaNとの間に介在させることで、低屈折率を実現することができる。SiOあるいはSixNyは、サファイアとGaNとの組み合わせでは実現できない低屈折率をエッチング深さ42nmで実現するものである。
【0028】
図7に、この場合の発光装置の構成を示す。サファイア基板10上にSiO層13が形成され、ナノインプリントプロセス及びRIEでナノ寸法の凹凸構造が形成される。なお、RIEでレジストを除去した後に、HCl:水=1:1の溶液で基板を処理する。これは表面が酸素で汚染されているからである。その後、GaN層14、n型GaN層16、活性層18、p型GaN層20が順次形成される。エッチング深さを42nmとし、凸部の直径をそれぞれ250nm、200nm、150nmとした場合の発光装置の出力を計測したところ、サファイア基板10の表面に凹凸構造がない場合を1として、
直径250nm:1.2倍
直径200nm:1.3倍
直径150nm:1.2倍
の結果が得られる。また、CL(カソードルミネセンス)で表面転位を観察したところ、表面に凹凸構造がない場合には6×10個/cm存在する一方、凹凸構造がある場合には1〜5×10/cm程度に低減する。これらのことから、サファイア基板上のナノ寸法の凹凸構造とSiO層との組み合わせにより、転位の低減と基板/GaN界面における光反射の低減による光出力の増大を図ることができる。
【0029】
サファイア基板10上にSiOを蒸着するのではなく、高融点金属、具体的にはMo、W、Ti、Ta、Cr、Nb、Re、Th、Ir等の金属を蒸着して活性層18からの光を積極的に反射させることも可能である。上記の金属のうち、MOCVD装置内を汚染しないMo、Ti、Ta、Irが特に好適である。エッチング深さを42nmとし、凸部の直径をそれぞれ250nm、200nm、150nmとした場合の発光装置の出力を計測したところ、サファイア基板10の表面に凹凸構造がない場合を1として、
直径250nm:1.1倍
直径200nm:1.2倍
直径150nm:1.1倍
の結果が得られる。但し、CL(カソードルミネセンス)で表面転位を観察したところ、表面に凹凸構造がない場合には6×10個/cm存在する一方、凹凸構造がある場合には6〜10×10/cm程度と増大している。したがって、金属層を形成する場合には、金属層とGaN層14との間に不連続SiNバッファ層を形成する等、転位を抑制する層を別途設けることが好ましい。
【0030】
SiOあるいはSixNyあるいは金属をサファイア基板10上に蒸着してナノ寸法の凹凸構造を形成する場合でも、p型GaN層20の表面あるいは基板10の裏面にさらにナノ寸法の凹凸構造を形成してもよい。図8にこの場合の構成を示す。SiOを蒸着する場合の例であり、サファイア基板10上にSiO層13が蒸着され、ナノインプリントプロセス及びRIEで凹凸構造が形成される。その上に、GaN層14、n型GaN層16、活性層18、p型GaN層20が順次形成され、p型GaN層20の外表面にナノ寸法の凹凸構造がさらに形成される。
【0031】
このように、本実施形態では、サファイア基板10の表面にナノ寸法の凹凸構造を形成することで光取出効率を上げることができる。また、サファイア基板10の表面にSiO2あるいは金属を蒸着した上でナノ寸法の凹凸構造を形成することで光取出効率を一層上げることができる。さらに、ナノインプリントプロセスとRIEとを組み合わせて使用することで、ナノ寸法の凹凸構造を高精度にかつ容易に形成することができる。
【0032】
本実施形態では、基板としてサファイア基板を用いているが、他の基板を用いることもできる。また、本実施形態ではナノ寸法の凹凸を円柱形状としているが、その断面形状として矩形状、台形状、円弧状のいずれかを用いることができる。
【0033】
また、本実施形態において、SiOあるいはSixNyあるいは金属にナノ寸法の凹凸構造を形成する方法として、リフトオフプロセスや剥離プロセスを用いることもできる。リストオフプロセスでは、基板上にまずフォトレジストを塗布し、ナノインプリントプロセスによりナノ寸法の凹凸を形成する。次に、全面にSiOあるいはSixNyあるいは金属を蒸着し、その後、フォトレジストを除去することでSiO膜あるいはSixNy膜あるいは金属膜にナノ寸法の凹凸構造が形成される。剥離プロセスでは、基板上にSiOあるいはSixNyあるいは金属を蒸着し、その上にフォトレジストを塗布形し、ナノインプリントプロセスによりナノ寸法の凹凸を形成する。次に、フォトレジストをマスクとしてSiOあるいはSIxNyあるいは金属をエッチングで除去し、その後、フォトレジストを除去することでSiO膜あるいはSixNy膜あるいは金属膜にナノ寸法の凹凸構造が形成される。
【0034】
さらに、本実施形態ではダブルへテロ発光構造の下地層としてGaN層を用いているが、GaN以外の他のGaN系層、例えばInGaN、AlGaN、AlGaInNを用いることができ、あるいはAlInNを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態の構成図である。
【図2】実施形態の凹凸構造の平面図である。
【図3】実施形態の凹凸構造の説明図である。
【図4】他の実施形態の構成図である。
【図5】さらに他の実施形態の構成図である。
【図6】SiOを蒸着する場合の模式的説明図である。
【図7】さらに他の実施形態の構成図である。
【図8】さらに他の実施形態の構成図である。
【図9】従来技術の構成図である。
【符号の説明】
【0036】
10 サファイア基板、12 凹凸構造の凹部、14 GaN層、16 n型GaN層、18 活性層、20 p型GaN層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板あるいはAlGaInN層にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程と、
前記ナノ寸法の凹凸上に窒化物半導体層を形成する工程と、
前記窒化物半導体層上にn型層、活性層及びp型層を含む発光構造を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
SiO膜あるいはSixNy膜(0<x<1、0<y<1)にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程と、
前記ナノ寸法の凹凸上に窒化物半導体層を形成する工程と、
前記窒化物半導体層上にn型層、活性層及びp型層を含む発光構造を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項3】
金属膜にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程と、
前記ナノ寸法の凹凸上に窒化物半導体層を形成する工程と、
前記窒化物半導体層上にn型層、活性層及びp型層を含む発光構造を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
前記金属膜は、高融点金属であるMo、W、Ti、Ta、Cr、Nb、Re、Th、Irのいずれかの膜であることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、さらに、
前記発光層の外表面にナノインプリントプロセス及び反応性イオンエッチングでナノ寸法の凹凸を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、
前記基板はサファイアからなり、
前記窒化物半導体層はGaNからなり、
前記ナノ寸法の凹凸により前記基板と前記GaN系層との界面における実質的な屈折率を前記サファイアの屈折率と前記GaNの屈折率の中間値に設定することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項2記載の方法において、
前記基板はサファイアからなり、
前記窒化物半導体層はGaNからなり、
前記ナノ寸法の凹凸により前記基板と前記GaN系層との界面における実質的な屈折率を前記SiOあるいはSixNyの屈折率と前記GaNの屈折率の中間値に設定することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、
前記窒化物半導体層は、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGan、AlInNのいずれかよりなることを特徴とする発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−54882(P2009−54882A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221612(P2007−221612)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(504097823)SCIVAX株式会社 (31)
【出願人】(500221563)ナイトライド・セミコンダクター株式会社 (11)
【Fターム(参考)】