説明

発光装置

発光装置1は、基台2と、基台2上に配置された発光素子3とを備えている。発光素子3は、発光層を含む複数の半導体層からなると共に、波長変換材料を含む波長変換部4によって覆われている。前記発光層は、1次光を放射し、前記波長変換材料は、前記1次光の一部を吸収して、2次光を放射する。発光素子3の光取出し面の縁部における前記1次光の輝度が縁部の内側の領域における前記1次光の輝度よりも高く、波長変換部4の光取出し面6から出射される前記1次光と前記2次光の割合が、波長変換部4の光取出し面6の面内で略均一である。これにより、発光素子を覆う波長変換部の光取出し面内での光色差をより小さくして、照射面を均一な色の光で照らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(以下「LED(Light Emitting Diode)」と称する)等の発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは、放電や輻射を用いた既存光源に比べて、小型で高効率であるだけでなく、近年では、高光束化も進んできたことから、既存光源に取って代わるのは時間の問題となってきている。また、LEDは、放電や輻射を用いた光源に比べて小型であることから、用途が増えること、取り扱いが容易になること、多様なデザインが期待できることなどの利点があり、付加価値の高い光源である。
【0003】
照明用途の光源に求められる特性の1つとして、出射光の出射方向による光色差のない色均一性が求められる。蛍光体材料などの波長変換材料と組み合わせてなる発光装置は、発光素子からの1次光と、1次光が波長変換材料によって吸収、変換された2次光とが合成され、白色などの光を発する。この場合、1次光と2次光の混合比率によって色合いが変わってくる。そして、出射方向によりこの混合比率が異なることから、これが、出射方向による光色差の原因や、波長変換部の光出射面(光取出し面)内で光色差が生じる原因となっている。
【0004】
この光色差を抑制する方法として、以下のものが提案されている。
【0005】
まず、発光素子であるLEDチップに、波長変換部(蛍光体粒子を含む樹脂層)を、LEDチップの形状にならって均一に形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構成は、単に波長変換部を滴下などによってLEDチップ上に形成したものに比べて、1次光が波長変換部を通過する距離を揃えることができるので、波長変換部の光取出し面における光色差を抑制することができる。
【0006】
照明用途の高光束の光源では、照射面を均一な色の光で照らすことが求められるため、波長変換部の光取出し面内での光色差をより小さくすることが必要となる。
【0007】
尚、波長変換材料として一般に使用される無機蛍光体粒子は、波長変換機能に加えて、反射機能を有していることから、散乱作用をもたらし、その結果、1次光と2次光を散乱させて光色差を抑制できることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、波長変換材料を含む波長変換部の中央付近、すなわち、発光素子の真上付近を厚くし、波長変換部の周辺部を薄くするという方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。そして、特許文献3には、「発光素子から真上方向に進む1次光と斜め上方向に進む1次光の波長変換部内での光路長差を小さくすることにより、1次光と2次光の割合がほぼ等しくなり、色むらが少なくなる」旨の記載がある。これは、「波長変換部内での波長変換材料の分布が均一の場合、光路長は、1次光が波長変換材料に当たる回数と相関があり、この回数により1次光と2次光の割合が決まる」というモデルを仮定している。
【0009】
また、波長変換材料を含む波長変換部の中央付近、すなわち、発光素子の真上付近の波長変換材料の濃度を波長変換部の周辺部の波長変換材料の濃度よりも高くするという方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。これは、「波長変換部の厚さが均一の場合、発光素子から真上方向に進む1次光と斜め上方向に進む1次光の、波長変換部内で波長変換材料に当たる回数差を小さくすることにより、1次光と2次光の割合がほぼ等しく
なり、色むらが少なくなる」というモデルを仮定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,468,821B2号明細書
【特許文献2】特開平7−99345号公報
【特許文献3】特許第3065263号公報(段落[0016]、図2)
【特許文献4】特開2005−166733号公報(段落[0035]、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、波長変換部の中央付近ではその周囲からほぼ均等に1次光が散乱されて来るが、縁部においては、1次光の散乱光は波長変換部の内側方向からの一方向に限られる。そして、このように、縁部においては、外側方向からの1次光が来ないため、波長変換部の縁部での混合光には1次光の成分が不足する。その結果、波長変換部の光取出し面の縁部とその内側の領域とで、1次光と2次光の混合割合に差が生じ、これが波長変換部の光取出し面内での光色差となる。
【0012】
また、一般に、発光素子からの出射光(1次光)の光強度は、出射面の真上方向、あるいは、真上方向に対して少し傾いた方向(以下、両方を「略真上方向」と称する)で強く、横方向になるにしたがって弱くなる。すなわち、発光素子の略真上方向の波長変換部で混合される1次光及び2次光の混合光の光強度は、出射面に対して横方向から斜め上方向の波長変換部で混合される1次光及び2次光の混合光の光強度よりも強い。厚さが均一で、波長変換材料の分布が均一である波長変換部に対して、波長変換部の下面から均一強度で1次光を入射させることができれば、波長変換部の上面から均一な混合光を出射させることができる。
【0013】
尚、発光素子と波長変換部との距離を大きくすると、発光素子の光出射方向分布の影響が小さくなり、波長変換部の下面からほぼ均一強度の1次光が入射することとなるので、発光素子からの光出射強度分布による色むらは解消される。しかし、LEDの薄型化を図ると、発光素子と波長変換部との距離が小さくなることから、発光素子の光出射方向分布の影響が大きくなり、これが色むらの少ない薄型のLEDを実現する際の課題となる。
【0014】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、照射面を均一な色の光で照らすことが可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、本発明に係る発光装置の構成は、基台と、前記基台上に配置された1次光を放射する発光素子とを備えた発光装置であって、前記発光素子は、前記1次光の一部を吸収して、2次光を放射する波長変換材料を含む波長変換部によって覆われており、かつ、前記波長変換部内での前記1次光の強度分布を、前記波長変換部の光取出し面から出射される前記1次光と前記2次光の混合割合が略均一となるように設定する1次光強度分布制御手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
この発光装置の構成によれば、波長変換部内での1次光の強度分布を、前記波長変換部の光取出し面から出射される前記1次光と2次光の混合割合が略均一となるように設定する1次光強度分布制御手段を備えたことにより、照射面を均一な色の光で照らすことが可能な発光装置を提供することができる。
【0017】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子の一方の主面に設けられ
た光取出し面の縁部における前記1次光の輝度が前記縁部の内側の領域における前記1次光の輝度よりも高く設定されているのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度が前記縁部の内側の領域における前記1次光の輝度よりも高く設定されていることにより、発光素子を覆う波長変換部の光取出し面内での光色差を解消することができるので、発光装置から取り出される光の色むらを低減して、照射面を均一な色の光で照らすことが可能となる。また、この場合には、前記発光素子は、縁部と前記縁部の内側の領域の少なくとも2つのダイオードに分割され、前記縁部のダイオードと前記縁部の内側の領域のダイオードとは、直列に接続され、かつ、前記縁部のダイオードの前記発光層の面積が、前記縁部の内側の領域のダイオードの前記発光層の面積よりも小さいのが好ましい。この好ましい例によれば、縁部のダイオードの発光層の電流密度を高くすることができるので、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度を、縁部の内側の領域における1次光の輝度よりも高くすることができる。また、この場合には、前記発光素子は、縁部と前記縁部の内側の領域の少なくとも2つのダイオードに分割され、前記縁部のダイオードと前記縁部の内側の領域のダイオードとが、電気的に独立に駆動可能であるのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度が縁部の内側の領域における1次光の輝度よりも高くなるように、電流注入を行うことができる。また、この場合には、前記発光素子の少なくとも一方の電極が、縁部のみに設けられているのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子の縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度を、縁部の内側の領域における1次光の輝度よりも高くすることができる。また、この場合には、前記発光素子は、少なくとも一方の電極において、縁部の電極間隔が前記縁部の内側の領域の電極間隔よりも小さいのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子の縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度が縁部の内側の領域における1次光の輝度よりも高くなる。また、この場合には、前記発光素子は、少なくとも一方の電極において、縁部の電極抵抗が前記縁部の内側の領域の電極抵抗よりも小さいのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子の縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度が縁部の内側の領域における1次光の輝度よりも高くなる。また、この場合には、前記発光素子は、縁部の内側の領域の内部抵抗が前記縁部の内部抵抗よりも大きいのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子の縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度が縁部の内側の領域における1次光の輝度よりも高くなる。また、この場合には、前記発光素子は、縁部の前記1次光の透過率が前記縁部の内側の領域の前記1次光の透過率よりも大きいのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子の光取出し面の縁部における1次光の輝度を、縁部の内側の領域における1次光の輝度よりも高くすることができる。
【0018】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記波長変換部は、厚みが略均一で、波長変換材料が略均一に分散されているのが好ましい。
【0019】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子は、1次光を放射する発光層を含む複数の半導体層からなるのが好ましい。
【0020】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子が被覆部によって覆われ、前記被覆部が前記波長変換部によって覆われ、前記波長変換部の外周部における前記被覆部の少なくとも一部分の屈折率が、前記被覆部の他の部分の屈折率よりも高く設定されているのが好ましい。
【0021】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子が被覆部によって覆われ、前記被覆部が前記波長変換部によって覆われ、前記被覆部の少なくとも一部のナノ粒子材を含み、前記波長変換部の外周部における前記被覆部の少なくとも一部分が、前記被覆
部の母材よりも高い屈折率のナノ粒子材を有するのが好ましい。
【0022】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子が被覆部によって覆われ、前記被覆部が前記波長変換部によって覆われ、前記被覆部の少なくとも一部のナノ粒子材を含み、前記波長変換部の外周部における前記被覆部の少なくとも一部分が、前記被覆部の他の部分よりも高比率のナノ粒子材を有するのが好ましい。
【0023】
これらの好ましい例によれば、屈折率の高い部分に光が集まる特性により、屈折率の高い被覆部がある発光素子の横方向から斜め上方向での1次光の光強度が相対的に強まり、被覆部全体として1次光の強度分布を均一化することができる。すなわち、厚さが均一で、波長変換材料の分布が均一である波長変換部に対して、当該波長変換部の下面から均一強度で1次光を入射させることができる。その結果、波長変換部の上面から均一な(1次光と、1次光が波長変換材料によって吸収、変換された2次光との)混合光を出射させることができるので、発光装置から取り出される光の色むらを低減することができる。
【0024】
また、この場合には、前記波長変換部がドーム状に形成されているのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子から発せられた光の殆どが波長変換部へ垂直に入射されるため、波長変換部と被覆部との界面における光の反射を防止することができる。これにより、光の取り出し効率をより向上させることができる。
【0025】
また、この場合には、前記波長変換部のうち、前記被覆部の屈折率の高い部分の上方に位置する部分の屈折率が、前記波長変換部の他の部分の屈折率よりも高いのが好ましい。この好ましい例によれば、上述の効果に加え、被覆部と波長変換部との界面における反射を減らすことができるので、反射による損失を低減することができる。また、波長変換部においても、強度分布を均一化することができる。
【0026】
また、この場合には、前記被覆部と前記波長変換部との間に隙間が設けられているのが好ましい。この好ましい例によれば、発光素子からの熱を効率良く放熱することができる。
【0027】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子を複数備え、前記複数の発光素子は、一連の波長変換部によって覆われると共に、隣接する発光素子の間隔が前記基台の中央部側から周縁部側に向けて漸次狭くなるように配置されているのが好ましい。
【0028】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子を複数備え、前記複数の発光素子は、一連の波長変換部によって覆われると共に、前記波長変換部の単位面積当たりの前記発光素子の実装面密度が前記基台の中央部側から周縁部側に向けて漸次高くなるように配置されているのが好ましい。
【0029】
また、前記本発明の発光装置の構成においては、前記発光素子を複数備え、前記複数の発光素子は、一連の波長変換部によって覆われると共に、前記波長変換部での発光効率が前記基台の中央部側から周縁部側に向けて漸次大きくなるように配置されているのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態における発光装置を示す概略断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を模式的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図3】本発明の第1の実施の形態における発光装置の使用状態を示す図であり、(a)は封止材を用いたもの、(b)は封止ガスを用いたもの、(c)は封止ガスを用い、かつ、モジュール化したもの
【図4】本発明の第1の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子をより具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面と反対側の面を示す平面図
【図5】本発明の第1の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子をより具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は発光層の面積比を示す図
【図6】本発明の第1の実施の形態の発光装置をより具体的に示した断面図
【図7】本発明の第1及び第8の実施の形態における発光装置の出射光の色温度の測定方法を説明するための模式図
【図8】本発明の第1の実施の形態における発光装置の出射光の色むらを評価した結果を示すグラフ
【図9】本発明の第2の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面と反対側の面を示す平面図
【図10】本発明の第3の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図11】本発明の第3の実施の形態の発光装置を具体的に示した断面図
【図12】本発明の第4の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の一例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図13】本発明の第4の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の他の例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図14】本発明の第5の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の一例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図15】本発明の第6の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図16】本発明の第7の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の一例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図17】本発明の第7の実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の他の例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図
【図18】本発明の第8の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図
【図19】本発明の実施の形態における発光素子の実装方式を説明するための拡大断面図
【図20】本発明の第8の実施の形態における発光装置の他の例を示す概略断面図
【図21】本発明の第8の実施の形態における発光装置のさらに他の例を示す概略断面図
【図22】本発明の第8の実施の形態における発光装置のさらに他の例を示す概略断面図
【図23】本発明の第8の実施の形態における発光装置の具体的実施例を示す概略断面図
【図24】本発明の第8の実施の形態における発光装置の具体的実施例及び比較例の出射光の色むらを評価した結果を示すグラフ
【図25】本発明の第9の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図
【図26】本発明の第9の実施の形態における発光装置の他の例を示す概略断面図
【図27】本発明の第9の実施の形態における発光装置のさらに他の例を示す概略断面図
【図28】本発明の第9の実施の形態における発光装置のさらに他の例を示す概略断面図
【図29】本発明の第10の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図
【図30】本発明の第10の実施の形態における発光装置の他の例を示す概略断面図
【図31】本発明の第10の実施の形態における発光装置のさらに他の例を示す概略断面図
【図32】本発明の第11の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図
【図33】本発明の第11の実施の形態における発光装置の他の例を示す概略断面図
【図34】本発明の第12の実施の形態における発光装置の一例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的の説明する。
【0032】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図6を参照しながら、本発明の第1の実施の形態の発光装置について説明する。図1は、本実施の形態における発光装置を示す概略断面図である。図2は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を模式的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。図3は、本実施の形態における発光装置の使用状態を示す図であり、(a)は封止材を用いたもの、(b)は封止ガスを用いたもの、(c)は封止ガスを用い、かつ、モジュール化したものである。図4は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子をより具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面と反対側の面を示す平面図である。図5は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子をより具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は発光層の面積比を示す図である。図6は、本実施の形態の発光装置をより具体的に示した断面図である。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態の発光装置1は、平板状の基台2と、基台2上に配置された1個の発光素子3とを備えている。発光素子3は、発光層を含む複数の半導体層からなると共に、波長変換材料を含む波長変換部4によって密着した状態で覆われている。ここで、波長変換部4は、厚みが均一で、波長変換材料が均一に分散されている。
【0034】
発光素子3の発光層は、1次光を放射し、波長変換部4の波長変換材料は、1次光を吸収して、2次光を放射する。
【0035】
図2(a)、(b)に示すように、発光素子3は、光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなるように構成されており、これにより、波長変換部4の光取出し面6(図1参照)から出射される1次光と2次光の混合割合が、波長変換部4の光取出し面6の面内で略均一となる。すなわち、本実施の形態の発光装置1は、波長変換部4内での1次光の強度分布を、波長変換部4の光取出し面6から出射される1次光と2次光の混合割合が略均一となるように設定する1次光強度分布制御手段を備えている。
【0036】
本実施の形態の発光装置1によれば、発光素子3を、光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなるように構成したことにより、発光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことが可能となる。
【0037】
基台2の構成材料は特に限定されず、例えば、サファイア、Si、GaN、AlN、ZnO、SiC、BN、ZnSなどの単結晶、Al23、AlN、BN、MgO、ZnO、SiC、C等のセラミックスやこれらの混合物、Al、Cu、Fe、Au、Wやこれらを含む合金等の金属、ガラスエポキシ、あるいは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、液晶ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メタクリル樹脂(PMMA樹脂)、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物からなる樹脂等を使用することができる。尚、これらの材料は、発光素子3の成長基板の材料として使用することもできる。従って、基台2は、発光素子3の成長基板を兼ねていてもよい。発光素子3のサファイア、SiC、GaN、Siなどの成長基板上に
エピタキシャル成長したものを基台2に配置する形態のほか、この成長基板が残らない状態で基台2に配置する形態がある。
【0038】
また、発光素子3の構成や実装方式についても特に限定されるものではない。例えば、基台の形態としては、リードフレーム基台、発光素子を実装するパッケージ基台、発光素子とパッケージ基台との間に入れるサブマウント基台などがある。発光素子3としては、例えば、波長が500〜550nmの緑色光を発する緑色LEDや、波長が420〜500nmの青色光を発する青色LEDや、波長が380〜420nmの青紫色を発する青紫色LED、さらに短波長の紫外LED等を使用することができる。窒化物半導体材料の場合、一般式BzAlxGa1-x-yzInyN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y+z≦1)で表される。以下、「GaN系半導体」と呼ぶ。ZnS、ZnOなどのII−VI属半導体材料を使用することもできる。
【0039】
発光素子は、化合物半導体材料に限定されるものではなく、例えば、有機半導体材料、無機半導体材料からなる発光素子を用いることも可能である。
【0040】
波長変換部4は、例えば、波長変換材料と、この波長変換材料を分散させるための母材となる透光性材料とからなる。
【0041】
波長変換材料としては、例えば、蛍光体を使用することができる。蛍光体としては、例えば、赤色光を発する赤色蛍光体、橙色光を発する橙色蛍光体、黄色光を発する黄色蛍光体、緑色光を発する緑色蛍光体等を使用することができる。上記赤色蛍光体としては、例えば、シリケート系のBa3MgSi28:Eu2+、Mn2+、ニトリドシリケート系のSr2Si58:Eu2+、ニトリドアルミノシリケート系のCaAlSiN3:Eu2+、オクソニトリドアルミノシリケート系のSr2Si4AlON7:Eu2+、硫化物系の(Sr,Ca)S:Eu2+やLa22S:Eu3+等を使用することができる。上記橙色蛍光体としては、例えば、シリケート系の(Sr,Ca)2SiO4:Eu2+、ガーネット系のGd3Al512:Ce3+、Ca-α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Eu2+等を使用することができる。上記黄色蛍光体としては、例えば、シリケート系の(Sr、Ba)2SiO4:Eu2+やガーネット系の(Y、Gd)3Al512:Ce3+、硫化物系のCaGa24:Eu2+、Ca-α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Eu2+等を使用することができる。上記緑色蛍光体としては、例えば、アルミン酸塩系のBaMgAl1017:Eu2+、Mn2+や(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu2+、シリケート系の(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ca-α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Yb2+、β-サイアロン系のβ-Si34:Eu2+、オクソニトリドアルミノシリケート系の(Ba,Sr,Ca)2Si4AlON7:Ce3+、硫化物系のSrGa24:Eu2+、ガーネット系のY3(Al,Ga)512:Ce3+、Y3Al512:Ce3+、Ca3Sr2Si312:Ce3+、BaY2SiAl412:Ce3+、酸化物系のCaSc24:Ce3+等を使用することができる。波長変換部の上面から出射される光は白色光に限定されるものではなく、これらの蛍光体を適宜選択することにより、細やかな光色の設計が可能である。そして、発光波長の異なる蛍光体を複数種類使用することにより、無限のバリエーションが可能となる。また、波長変換材料が均一に分散される波長変換部の構成以外に、例えば、波長変換部の下面から上面に向けて波長変換材料の濃度が略段階的に変化する構成、異なる波長変換材料を各材料ごとに積層してなる構成、異なる波長変換材料からなるセルをマトリクス状に配置してなる構成などがある。いずれの構成であっても、波長変換部の下面から均一強度で1次光を入射させることにより、波長変換部の上面から均一な混合光を出射させることが可能となる。
【0042】
また、透光性材料としては、発光装置1から取り出す光を透過させることができる材料であればよく、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、ア
ミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ABS樹脂、PMMA樹脂、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物からなる樹脂、あるいは、金属アルコキシドやコロイド状シリカを出発材料とするゾル−ゲル法によるガラス、低融点ガラス等のガラスを使用することができる。また、これらの透光性材料を母材とし、この母材中に金属酸化物粒子を分散させたコンポジット材を使用することもできる。また、硬化性樹脂を母材とする場合には、未硬化状態の硬化性樹脂に上記金属酸化物粒子を分散させることによって硬化前における上記硬化性樹脂のチクソ性を向上させることができるため、波長変換部4を容易に所望の形状に成形することができる。また、樹脂単独で使用する場合に比べて熱伝導性が向上するため、発光素子3からの熱を効率良く放熱することが可能となる。
【0043】
また、発光素子3として、青紫色LEDや紫外LEDを使用する場合には、例えば、上述した蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体や青緑色光を発する青緑色蛍光体とを併用すればよい。上記青色蛍光体としては、例えば、アルミン酸塩系のBaMgAl1017:Eu2+、シリケート系のBa3MgSi28:Eu2+、ハロ燐酸塩系の(Sr,Ba)10(PO46Cl2:Eu2+等を使用することができる。上記青緑色蛍光体としては、例えば、アルミン酸塩系のSr4Al1425:Eu2+、シリケート系のSr2Si38・2SrCl2:Eu2+等を使用することができる。
【0044】
上記した発光装置1を実際に使用する場合には、例えば、図3(a)に示すように、凹部を有する基台55の前記凹部の底面上に発光装置1を配置すると共に、前記凹部内に封止材56を充填するか、図3(b)に示すように、平板状の基台57の上面に発光装置1を配置し、発光装置1の周りに封止ガス58を充填すればよい。また、図3(c)に示すように、平板状の基台57の上面に、発光素子3と波長変換部4とからなる発光装置1’を複数個配置し、各発光装置1’の周りに封止ガス58を充填して、発光モジュールとしてもよい。
【0045】
封止材56としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ABS樹脂、PMMA樹脂、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物からなる樹脂、あるいは、金属アルコキシドやコロイド状シリカを出発材料とするゾル−ゲル法によるガラス、低融点ガラス等のガラスを使用することができる。
【0046】
また、封止ガス58としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスや乾燥エアーを使用することができる。
【0047】
以下、本実施の形態の発光装置1及びそれに用いられる発光素子3について、図4〜図6を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0048】
図4(a)、(b)に示すように、GaN、SiC、サファイア等からなる成長基板7の一方の主面の上には、GaN半絶縁層8が形成されており、GaN半絶縁層8の上には、n−GaN系半導体層9、発光層10、p−GaN系半導体層11がこの順番で積層されている。また、成長基板7の他方の主面(光取出し面5)は、凹凸加工されている。これにより、発光装置の光の取出し効率を向上させることができる。
【0049】
n−GaN系半導体層9、発光層10及びp−GaN系半導体層11とGaN半絶縁層8の一部にわたって、発光素子3を、光取出し面5の縁部5aに対応する部分と縁部5aの内側の領域5bに対応する部分とに分離するための分離溝12が設けられている。これにより、発光素子3は、縁部と縁部の内側の領域の2つのダイオードに分割される。
【0050】
縁部と縁部の内側の領域のp−GaN系半導体層11には、アノード電極として高反射電極であるRh/Pt/Au電極13が設けられており、縁部のRh/Pt/Au電極13はアノード端子14に電気的に接続されている。また、縁部と縁部の内側の領域のn−GaN系半導体層9には、カソード電極となるTi/Au電極15が設けられており、縁部の内側の領域のTi/Au電極15はカソード端子16に電気的に接続されている。
【0051】
また、縁部のカソード電極であるTi/Au電極15と縁部の内側の領域のアノード電極であるRh/Pt/Au電極13とは、配線層17を介して電気的に接続されている。これにより、図4(b)に示すように、縁部のダイオードD1と縁部の内側の領域のダイオードD2とは、直列に接続された状態となっている。
【0052】
本実施の形態においては、成長基板7が残る状態で基台2の上に配置しているが、後述の実施の形態のように成長基板7が残らない状態で基台2の上に配置する形態もある。
【0053】
アノード端子14と配線層17との間、配線層17とn−GaN系半導体層9、発光層10及びp−GaN系半導体層11との間、カソード端子16と配線層17、n−GaN系半導体層9、発光層10及びp−GaN系半導体層11との間には、窒化シリコンからなる絶縁層18が介在されている。
【0054】
尚、電極材料としては、Ag、Al、Au、Ni、Rh、Pd、Pt、Ti、W、Cuやこれらの合金、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO等を使用することができる。
【0055】
本実施の形態の発光素子3は、以上のような構成を備えている。そして、図5(a)、(b)に示すように、本実施の形態の発光素子3においては、縁部のダイオードの発光層10の面積が、縁部の内側の領域のダイオードの発光層10の面積よりも小さくなっている。より具体的には、縁部のダイオードの発光層10の外周サイズは約0.9mm×約0.9mm、縁部の内側の領域のダイオードの発光層10の外周サイズは約0.6mm×約0.6mmであり、これにより、縁部のダイオードの発光層10の面積と縁部の内側の領域のダイオードの発光層10の面積との比は、およそ2:3となる。すなわち、分離溝12などを考慮しなければ、縁部のダイオードの発光層10の面積は0.45mm2、縁部の内側の領域のダイオードの発光層10の面積は0.36mm2となるが、中央のカソード端子16の箇所で発光層10が直径0.2mmの円形に除去されていることと、各ダイオードの分離幅などとを考慮すると、およそ2:3となる。尚、光取出し面5の縁部5a(高輝度領域)の幅は、約0.15mmである。
【0056】
以上のように、本実施の形態の発光素子3においては、縁部と縁部の内側の領域の2つのダイオードに分割され、縁部のダイオードと縁部の内側の領域のダイオードとが直列に接続され、かつ、縁部のダイオードの発光層10の面積が縁部の内側の領域のダイオードの発光層10の面積よりも小さくなっていることにより、縁部のダイオードの発光層10の電流密度を高くすることができるので、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなる。
【0057】
図6に示すように、発光素子3は、基台2上に、アノード端子14及びカソード端子16をAu/Sn接着層(図示せず)で接着することによって実装されている。Au/Sn接着層は、基台2上のTi/Pt/Au電極19と電気的に接続されている。また、発光素子3は、波長変換部4によって密着した状態で覆われている。
【0058】
本実施の形態の発光装置1は、以上のような構成を備えている。ここで、発光素子3の高さは約30μm、波長変換部4の高さ(基台2の表面からの高さ)は約0.2mmとなっている。そして、上記のように、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光
の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなるようにしたことにより、発光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことができる。
【0059】
作製した発光装置1の出射光の色むらを評価するために、順方向電流If=350mAで出射させた光の色温度を測定した。測定方法について図7を参照しながら説明する。図7は、発光装置の出射光の色温度の測定方法を説明するための模式図である。発光装置1を発光させた状態で、ディテクター59(浜松ホトニクス製S9219、受光面の直径:11.3mm)を用いて発光装置1を中心とする半径1mの半円(図7における破線)上を通過する出射光の色温度を測定した。そして、発光素子3の光軸Lに対する放射角θについて、θ=0度のときの色温度(約3600[K])に対する色温度差をプロットした。得られた結果を図8に示す。
【0060】
図8に示すように、本実施の形態の発光装置1によれば、色温度差が小さくなり、色むらを低減できていることが分かる。
【0061】
尚、本実施の形態においては、発光素子3を、縁部と縁部の内側の領域の2つのダイオードに分割しているが、3つ以上のダイオードに分割してもよい。この構成によれば、発光素子3の光取出し面5の各領域における1次光の輝度を細かく調整することができるので、照射面をより均一な色の光で照らすことが可能となる。直列接続した各ダイオードの発光層の面積と電流密度は略反比例の関係になり、発光面積と輝度も略反比例の関係になる。また、複数のダイオードを直列接続したものを複数並列に接続する構成でもよい。
【0062】
[第2の実施の形態]
次に、図9を参照しながら、本発明の第2の実施の形態の発光装置について説明する。図9は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面と反対側の面を示す平面図である。尚、本実施の形態の発光装置の基本構成は、上記第1の実施の形態と同じである(図1〜図3参照)。
【0063】
図9(a)、(b)に示すように、GaN、SiC、サファイア等からなる成長基板7の一方の主面の上には、n−GaN系半導体層9、発光層10、p−GaN系半導体層11がこの順番で積層されている。また、成長基板7の他方の主面は、凹凸加工されている。
【0064】
p−GaN系半導体層11及び発光層10とn−GaN系半導体層9の一部とにわたって、発光素子3を、光取出し面5の縁部5aに対応する部分と縁部5aの内側の領域5bに対応する部分とに分離するための分離溝20が設けられている。これにより、発光素子3は、縁部と縁部の内側の領域の2つのダイオードに分割される。
【0065】
縁部と縁部の内側の領域のp−GaN系半導体層11には、アノード電極として高反射電極であるRh/Pt/Au電極13a、13bがそれぞれ設けられており、縁部と縁部の内側の領域のRh/Pt/Au電極13a、13bは、それぞれアノード端子14a、14bに電気的に接続されている。また、縁部の内側の領域のn−GaN系半導体層9には、カソード電極となるTi/Au電極15が設けられており、当該Ti/Au電極15はカソード端子16に電気的に接続されている。尚、分離溝20の内部、アノード端子14a、14b及びカソード端子16とn−GaN系半導体層9、発光層10及びp−GaN系半導体層11との間には、窒化シリコンからなる絶縁層18が介在されている。
【0066】
本実施の形態の発光素子3は、以上のような構成を備えており、縁部のダイオードと縁部の内側の領域のダイオードとは、電気的に独立に駆動可能な状態となっている。
【0067】
以上のように、本実施の形態の発光素子3は、縁部と縁部の内側の領域の2つのダイオードに分割され、縁部のダイオードと縁部の内側の領域のダイオードとが電気的に独立に駆動可能な状態となっているので、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなるように、電流注入を行うことができる。例えば、図9(b)に示すように、可変抵抗R1を直列に接続した縁部のダイオードD3と、可変抵抗R2を直列に接続した縁部の内側の領域のダイオードD4とを並列に接続し、可変抵抗R1、R2の抵抗値を調整することにより、光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなるような電流注入が可能となる。また、このような構成とすることにより、縁部のダイオードへの電流注入量と縁部の内側の領域のダイオードへの電流注入量のバランス調整を個々に行うこともできる。
【0068】
発光素子3の外部に設けられる可変抵抗R1、R2の抵抗値を変える代わりに、発光素子3内の抵抗成分を変えることにより、各ダイオードD3及びD4の電流密度を変えることもできる。例えば、各ダイオードの発光層の面積を変えると、面積が広い方のダイオードは内部抵抗値が相対的に下がって電流が多く流れるので、電流密度が高くなる。また、発光素子3内の配線、電極材料を適宜選択する方法、半導体層のドープ量を変える方法などによっても内部抵抗値を変えることができる。内部抵抗値によって電流密度を変えることにより、発光素子3の電源構成を簡素化することができる。
【0069】
また、本実施の形態の発光素子3も、上記第1の実施の形態の場合と同様に、基台2上に実装されると共に、波長変換部4によって密着した状態で覆われ、発光装置として完成される(図6参照)。そして、上記のように、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなるようにしたことにより、発光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6(図6参照)の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことができる。
【0070】
尚、本実施の形態においては、発光素子3を、縁部と縁部の内側の領域の2つのダイオードに分割しているが、3つ以上のダイオードに分割してもよい。この構成によれば、発光素子3の光取出し面5の各領域における1次光の輝度を細かく調整することができるので、照射面をより均一な色の光で照らすことが可能となる。
【0071】
[第3の実施の形態]
次に、図10、図11を参照しながら、本発明の第3の実施の形態の発光装置について説明する。図10は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。図11は、本実施の形態の発光装置を具体的に示した断面図である。尚、本実施の形態の発光装置の基本構成は、上記第1の実施の形態と同じである(図1〜図3参照)。
【0072】
図10(a)、(b)に示すように、本実施の形態の発光素子3は、GaN、SiC等の導電性材料からなる基台21の一方の主面の上に形成されている。基台21の一方の主面の上には、Au/Sn接着層22を介して、アノード電極として高反射電極であるRh/Pt/Au電極23が形成されており、Rh/Pt/Au電極23の上には、p−GaN系半導体層11、発光層10及びn−GaN系半導体層9がこの順番で積層されてなる積層体が設けられている。ここで、n−GaN系半導体層9の光取出し面5側は、凹凸加工されている。これにより、発光装置の光の取出し効率を向上させることができる。また、基台21の他方の主面の上には、アノード端子24が設けられている。カソード電極となるTi/Au電極25は、n−GaN系半導体層9の縁部のみに設けられており、Ti/Au電極25にはカソード端子26に電気的に接続されている。尚、カソード端子26と
n−GaN系半導体層9、発光層10、p−GaN系半導体層11及び基台21との間には、窒化シリコンからなる絶縁層28が介在されている。
【0073】
発光素子3の成長基板(図示せず)は、基台21とAu/Sn接着層22などの接合材を介して接合された後に除去され、これにより発光素子3が得られる。成長基板は、一般的な工法であるレーザリフトオフ工法、研磨又はエッチング工法などによって除去することができる。
【0074】
本実施の形態の発光素子3は、以上のような構成を備えている。
【0075】
以上のように、本実施の形態の発光素子3においては、カソード電極となるTi/Au電極25を、縁部のみに設けるようにしたことにより、縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度を、縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くすることができる。
【0076】
図11に示すように、基台21の上に形成された発光素子3は、波長変換部4によって密着した状態で覆われている。ここで、発光素子3の高さ(絶縁層28の上面からの高さ)は約3μm、波長変換部4の高さ(カソード端子26の上面からの高さ)は約0.1mmとなっている。そして、上記のように、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度が縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くなるようにしたことにより、発光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことができる。
【0077】
尚、本実施の形態においては、カソード電極を、縁部のみに設けるようにしているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではなく、カソード電極とアノード電極の少なくとも一方の電極が、縁部のみに設けられていればよい。
【0078】
[第4の実施の形態]
次に、図12、図13を参照しながら、本発明の第4の実施の形態の発光装置について説明する。図12は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の一例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。図13は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の他の例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。尚、本実施の形態の発光装置の基本構成は、上記第1の実施の形態と同じである(図1〜図3参照)。
【0079】
本実施の形態の発光素子3は、上記第3の実施の形態の発光素子3(図10参照)と比べて、カソード電極の構成のみが異なり、その他の構成は同じである。このため、本実施の形態においては、カソード電極の構成のみについて説明する。そして、上記第3の実施の形態の発光素子3の構成部材と同一の構成部材については、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。
【0080】
図12(a)、(b)に示すように、n−GaN系半導体層9の上面には、カソード電極となるTi/Au電極25が設けられており、Ti/Au電極25にはカソード端子26が電気的に接続されている。
【0081】
Ti/Au電極25は、縁部と縁部の内側の領域とにわたって升目状に設けられている。この場合、縁部におけるTi/Au電極25の電極間隔L1は、縁部の内側の領域におけるTi/Au電極25の電極間隔L2よりも小さくなっている。
【0082】
本実施の形態の発光素子3は、以上のような構成を備えている。
【0083】
以上のように、本実施の形態の発光素子3においては、カソード電極となるTi/Au電極25の、縁部における電極間隔L1を、縁部の内側の領域における電極間隔L2よりも小さくしたことにより、縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度を、縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くすることができる。その結果、上記第3の実施の形態の場合と同様に、発光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6(図11参照)の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことができる。
【0084】
図13(a)、(b)に示す発光素子3においても、n−GaN系半導体層9の上面には、カソード電極となるTi/Au電極25が設けられており、Ti/Au電極25にはカソード端子26に電気的に接続されている。
【0085】
Ti/Au電極25は、縁部と縁部の内側の領域とにわたって、六角形の網の目状に設けられている。この場合、縁部におけるTi/Au電極25の電極間隔L3は、縁部の内側の領域におけるTi/Au電極25の電極間隔L4よりも小さくなっている。従って、この場合にも、上記の場合と同様に、照射面を均一な色の光で照らすことが可能となる。
【0086】
尚、本実施の形態においては、カソード電極のみについて、縁部の電極間隔を縁部の内側の領域の電極間隔よりも小さくしているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではなく、カソード電極とアノード電極の少なくとも一方の電極について、縁部の電極間隔が縁部の内側の領域の電極間隔よりも小さくされていればよい。
【0087】
[第5の実施の形態]
次に、図14を参照しながら、本発明の第5の実施の形態の発光装置について説明する。図14は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の一例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。尚、本実施の形態の発光装置の基本構成は、上記第1の実施の形態と同じである(図1〜図3参照)。
【0088】
本実施の形態の発光素子3は、上記第3の実施の形態の発光素子3(図10参照)と比べて、カソード電極の構成のみが異なり、その他の構成は同じである。このため、本実施の形態においては、カソード電極の構成のみについて説明する。そして、上記第3の実施の形態の発光素子3の構成部材と同一の構成部材については、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。
【0089】
図14(a)、(b)に示すように、n−GaN系半導体層9の上面には、その凹凸形状と同様の凹凸形状を有する、カソード電極となるITO電極29が設けられており、ITO電極29にはカソード端子26が電気的に接続されている。
【0090】
ITO電極29は、縁部での厚みが縁部の内側の領域での厚みよりも厚く形成されている。
【0091】
本実施の形態の発光素子3は、以上のような構成を備えている。
【0092】
以上のように、本実施の形態の発光素子3においては、カソード電極となるITO電極29の、縁部での厚みを縁部の内側の領域での厚みよりも厚くしたことにより、ITO電極29において、縁部の電極抵抗を縁部の内側の領域の電極抵抗よりも小さくすることができる。その結果、縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度を、縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くすることができる。これにより、上記第3の実施の形態の場合と同様に、発
光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6(図11参照)の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことができる。
【0093】
尚、本実施の形態においては、カソード電極のみについて、縁部の電極抵抗を縁部の内側の領域の電極抵抗よりも小さくしているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではなく、カソード電極とアノード電極の少なくとも一方の電極について、縁部の電極抵抗が縁部の内側の領域の電極抵抗よりも小さくされていればよい。
【0094】
[第6の実施の形態]
次に、図15を参照しながら、本発明の第6の実施の形態の発光装置について説明する。図15は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。尚、本実施の形態の発光装置の基本構成は、上記第1の実施の形態と同じである(図1〜図3参照)。
【0095】
図15(a)、(b)に示すように、本実施の形態の発光素子3は、サファイアからなるからなる基台30の一方の主面の上に形成されている。基台30の一方の主面の上には、アノード端子24が設けられている。アノード端子24の上には、Au/Sn接着層22を介して、アノード電極として高反射電極であるRh/Pt/Au電極23が形成されており、Rh/Pt/Au電極23の上には、p−GaN系半導体層11、発光層10及びn−GaN系半導体層9がこの順番で積層されてなる積層体が設けられている。ここで、n−GaN系半導体層9の光取出し面5側は、凹凸加工されている。
【0096】
カソード電極となるTi/Au電極25は、n−GaN系半導体層9の縁部のみに設けられており、Ti/Au電極25にはカソード端子26に電気的に接続されている。尚、カソード端子26とn−GaN系半導体層9、発光層10、p−GaN系半導体層11及びアノード端子24との間には、窒化シリコンからなる絶縁層28が介在されている。
【0097】
発光素子3のn−GaN系半導体層9又はp−GaN系半導体層11は、縁部の内側の領域が、例えば、Znイオン注入などによって高抵抗領域とされ、縁部が、ドーパント材、例えば、n−GaN系半導体層であればSiを、p−GaN系半導体層であればMgを高濃度ドープすることなどによって低抵抗領域とされている。すなわち、発光素子3は、縁部の内側の領域の内部抵抗が縁部の内部抵抗よりも大きくなっている。
【0098】
本実施の形態の発光素子3は、以上のような構成を備えている。
【0099】
以上のように、本実施の形態の発光素子3においては、縁部の内側の領域の内部抵抗を縁部の内部抵抗よりも大きくしたことにより、縁部の電流密度を高くすることができるので、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度を、縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くすることができる。その結果、上記第3の実施の形態の場合と同様に、発光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6(図11参照)の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことができる。
【0100】
尚、本実施の形態においては、発光素子3の、縁部の内側の領域の内部抵抗を縁部の内部抵抗よりも大きくするために、イオン注入、高濃度ドープなどの方法が用いられているが、必ずしもかかる方法に限定されるものではない。
【0101】
[第7の実施の形態]
次に、図16、図17を参照しながら、本発明の第6の実施の形態の発光装置について説明する。図16は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の一例を具体的に示
したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。図17は、本実施の形態の発光装置に用いられる発光素子の他の例を具体的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は光取出し面を示す平面図である。尚、本実施の形態の発光装置の基本構成は、上記第1の実施の形態と同じである(図1〜図3参照)。
【0102】
本実施の形態の発光素子3は、上記第3の実施の形態の発光素子3(図10参照)と比べて、n−GaN系半導体層及びカソード電極の構成、あるいはn−GaN系半導体層の構成のみが異なり、その他の構成は同じである。このため、本実施の形態においては、n−GaN系半導体層及びカソード電極の構成、あるいはn−GaN系半導体層の構成のみについて説明する。そして、上記第3の実施の形態の発光素子3の構成部材と同一の構成部材については、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。
【0103】
図16(a)、(b)に示すように、n−GaN系半導体層31は、その光取出し面5側が平坦に加工されており、その上面には、平板状のカソード電極32が設けられている。そして、カソード電極32には、カソード端子26が電気的に接続されている。
【0104】
カソード電極32は、縁部がSiO2、ZnO、TiO2、Ta23、Nb25、ZnSなどの金属酸化物からなる薄膜を周期的に積層した誘電体多層膜によって構成されており、これにより、カソード電極32の縁部は高透過率領域となっている。すなわち、発光素子3は、縁部の1次光の透過率が縁部の内側の領域の1次光の透過率よりも大きくなっている。
【0105】
本実施の形態の発光素子3は、以上のような構成を備えている。
【0106】
以上のように、本実施の形態の発光素子3においては、縁部の1次光の透過率を、縁部の内側の領域の1次光の透過率よりも大きくしたことにより、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度を、縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くすることができる。その結果、上記第3の実施の形態の場合と同様に、発光素子3を覆う波長変換部4の光取出し面6(図11参照)の面内での光色差を解消することができるので、照射面を均一な色の光で照らすことができる。
【0107】
図17(a)、(b)に示す発光素子3においては、n−GaN系半導体層33の光取出し面5側の縁部のみが凹凸加工されており、これにより、n−GaN系半導体層33の縁部は高透過率領域となっている。従って、上記と同様に、発光素子3の光取出し面5の縁部5aにおける1次光の輝度を、縁部5aの内側の領域5bにおける1次光の輝度よりも高くすることが可能となる。
【0108】
[第8の実施の形態]
次に、図18を参照しながら、本発明の第8の実施の形態の発光装置について説明する。図18は、本発明の第8の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図である。
【0109】
図18に示すように、本実施の形態の発光装置34は、凹部を有する基台35と、前記凹部の底面上(基台35上)に配置された1個の発光素子36とを備えている。ここで、凹部の底面及び内壁面は、光反射面であり、これにより、発光素子36からの出射光(1次光)を凹部の開口へ反射させることができる。また、凹部の内壁面は、凹部の開口に向かって広がっており、これにより、発光装置34の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0110】
基台35の構成材料は特に限定されず、例えば、サファイア、Si、GaN、AlN、
ZnO、SiC、BN、ZnSなどの単結晶、Al23、AlN、BN、MgO、ZnO、SiC、C等のセラミックスやこれらの混合物、Al、Cu、Fe、Au、Wやこれらを含む合金等の金属、ガラスエポキシ、あるいは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、液晶ポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メタクリル樹脂(PMMA樹脂)、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物からなる樹脂等を使用することができる。
【0111】
また、発光素子36の構成や実装方式についても特に限定されるものではない。例えば、基台の形態としては、リードフレーム基台、発光素子を実装するパッケージ基台、発光素子とパッケージ基台との間に入れるサブマウント基台などがある。
【0112】
発光素子36は、波長変換材料が吸収する光を放射する発光素子である。かかる発光素子としては、例えば、波長が500〜550nmの緑色光を発する緑色LEDや、波長が420〜500nmの青色光を発する青色LEDや、波長が380〜420nmの青紫色を発する青紫色LED、さらに短波長の紫外LED等を使用することができる。窒化物半導体材料の場合、一般式BzAlxGa1-x-yzInyN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y+z≦1)で表される。以下、「GaN系半導体」と呼ぶ。ZnS、ZnOなどのII−VI属半導体材料を使用することもできる。
【0113】
発光素子は、化合物半導体材料に限定されるものではなく、例えば、有機半導体材料、無機半導体材料からなる発光素子を用いることも可能である。
【0114】
発光素子36の実装方式としては、例えば、図19(a)〜(c)の拡大断面図に示すような方式を挙げることができる。
【0115】
図19(a)に示す例では、p型半導体層であるp−GaN系半導体層36a上に設けられたアノード電極となるNi/Au電極45と基台35上の金属配線42とがAuワイヤ48によってワイヤボンディングされている。図19(a)に示す例では、発光素子36の基板としてn−SiC基板36dを使用することができ、その上にあるn型半導体層となるn−GaN層36cは、n−SiC基板36dを介してカソード電極となるNi/Ag/Pt/Au電極49と電気的に接続されている。すなわち、n−SiC基板36dは、高反射電極であるNi/Ag/Pt/Au電極49を介して金属配線42に電気的に接続されている。尚、図19(a)中、36bは発光層を示している。
【0116】
図19(b)に示す例では、発光素子36は、金属配線42側からp型半導体層としてp−GaN系半導体層36a、GaN系半導体発光層36b、n型半導体層としてn−GaN系半導体層36c及びサファイア基板36eが順次積層されて構成されている。p−GaN系半導体層36aにはアノード電極として高反射電極であるRh/Pt/Au電極44が設けられており、このRh/Pt/Au電極44はバンプ43と接合している。また、n−GaN系半導体層36cの一部にはカソード電極としてNi/Au電極45が設けられており、このNi/Au電極45もバンプ43と接合している。これにより、発光素子36は、基台35上の金属配線42にバンプ43を介してフリップチップ実装されている。
【0117】
図19(c)に示す例では、発光素子36は、基台35上に、アノード電極となるRh/Pt/Au電極44をAu/Sn接着層55で接着することによって実装されている。Au/Sn接着層55は、基台35上のTi/Pt/Au電極50と電気的に接続されている。また、n−GaN層36cは、カソード電極となるTi/Au電極46を介して基台35上の金属配線51と電気的に接続されている。また、n−GaN層36cの表面は
、凹凸加工されている。これにより、発光装置34の光の取り出し効率を向上させることができる。尚、発光素子3の側面とTi/Au電極46との間には、絶縁層となる窒化シリコン膜47が介在されている。
【0118】
図18に示すように、本実施の形態の発光装置34において、発光素子36は、第1の被覆部37によって密着した状態で覆われており、第1の被覆部37の側面は、第2の被覆部38によって密着した状態で囲まれている。ここで、第1及び第2の被覆部37、38は、それらの上面が面一となるように形成されている。また、第1及び第2の被覆部37、38は、プレート状の波長変換部39によって密着した状態で覆われている。ここで、波長変換部39は、厚さが均一で、当該波長変換部39を構成する波長変換材料の分布が均一となっている。また、波長変換部39の上面は、基台35の凹部の開口面と面一になっている。そして、発光素子からの出射光(1次光)と、1次光が波長変換材料によって吸収、変換された2次光とが、波長変換部39で混合され、この混合光が波長変換部39の上面から出射される。
【0119】
第2の被覆部38の屈折率は、第1の被覆部37の屈折率よりも高く設定されている。すなわち、本実施の形態の発光装置34において、波長変換部39の外周部における被覆部(第2の被覆部38)は、被覆部の他の部分(第1の被覆部37)よりも高い屈折率を有している。第1の被覆部37と第2の被覆部38との界面の、発光素子36からの距離が近いほど、本発明の効果、すなわち、発光素子と波長変換部との距離を近づけて色むらの少ない薄型の発光装置を実現できるという効果を得ることができる。目安としては、第1の被覆部37と第2の被覆部38との界面と発光素子36の周辺部との距離を、発光素子36と波長変換部39との距離よりも小さくすればよい。第1の被覆部37と第2の被覆部38との界面と発光素子36の周辺部との距離は、1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下がよい。また、後述するように、界面が発光素子と接していてもよい。
【0120】
本実施の形態の発光装置34によれば、波長変換部39の外周部における被覆部(第2の被覆部38)の屈折率(n2)を、被覆部の他の部分(第1の被覆部37)の屈折率(n1)よりも高く設定したことにより、発光素子36からの出射光(1次光)を、波長変換部39に均一に入射させることができる。特に、屈折率比(n1/n2)が0.9以下の場合、発光素子36からの出射光(1次光)を、波長変換部39に十分均一に入射させることができる。
【0121】
一般に、発光素子からの出射光(1次光)の光強度は、出射面の略真上方向で強く、横方向になるにしたがって弱くなるが、本実施の形態の発光装置34の構成によれば、上記のように、発光素子36からの出射光(1次光)を波長変換部39に均一に入射させることができるので、厚さが均一で、波長変換材料の分布が均一である波長変換部39に対して、当該波長変換部39の下面から均一強度で1次光を入射させることができる。その結果、波長変換部39の上面から均一な混合光を出射させることができるので、発光装置34から取り出される光の色むらを低減することができる。すなわち、本実施の形態の発光装置34は、波長変換部39内での1次光の強度分布を、波長変換部39の光取出し面から出射される1次光と2次光の混合割合が略均一となるように設定する1次光強度分布制御手段を備えている。
【0122】
そして、本実施の形態の発光装置34のような構成を採用すれば、発光素子と波長変換部との距離を大きくすることなく、波長変換部の下面から均一強度で1次光を入射させることができるので、薄型のLEDにおいても、波長変換部の上面から均一な混合光を出射させることが可能となる。
【0123】
第1及び第2の被覆部37、38の屈折率を上記のように制御するには、例えば、それぞれの被覆部の屈折率が上記のような関係となるように第1及び第2の被覆部37、38の構成材料を選択すればよい。
【0124】
第1及び第2の被覆部37、38を構成する材料は、特に限定されるものではない。発光素子3からの出射光の少なくとも一部が、第1及び第2の被覆部37、38のそれぞれを透過することができる限りにおいて、種々の材料を使用することができる。例えば、酸化アルミニウム(屈折率:1.63)、酸化セリウム(屈折率:2.2)、酸化ハフニウム(屈折率:1.95)、酸化マグネシウム(屈折率:1.74)、酸化ニオブ(屈折率:2.33)、酸化タンタル(屈折率:2.16)、酸化ジルコニウム(屈折率:2.05)、酸化亜鉛(屈折率:2.1)、酸化チタン(屈折率:2.4)、酸化イットリウム(屈折率:1.87)、酸化シリコン(屈折率:1.5)、酸化インジウム(屈折率:2)、酸化スズ(屈折率:2)、酸化タングステン(屈折率:2.2)、酸化バナジウム(屈折率:2.0)等の金属酸化物や、窒化シリコン(屈折率:1.9)、窒化ガリウム(屈折率:2.5)、炭化シリコン(屈折率:2.6)、フッ化カルシウム(屈折率:1.43)、炭酸カルシウム(屈折率:1.58)、硫酸バリウム(屈折率:1.64)、硫化銅(屈折率:2.1)、硫化スズ(屈折率:2.0)、硫化亜鉛(屈折率:2.37)等の無機材料や、ダイアモンド(屈折率:2.4)や、これらの混合物等を使用することができる。尚、上記括弧内の屈折率の値は、波長が550nmの光に対するそれぞれの材料の屈折率を示している。
【0125】
上記した材料を用いて第1及び第2の被覆部37、38を形成する方法としては、例えば、ゾルゲル法を挙げることができる。例えば、ゾルゲル法によって酸化シリコンからなる被覆部を形成する場合には、金属アルコキシド(メチルシリケート、Nブチルシリケート等)を加水分解してゾル化した後、このゾルの粘度をエチレングリコール等のアルコール類を用いて所定の値に調整し、これを基台上の所望の箇所に塗布して、200℃で数十分間乾燥した後、300℃で2時間程度加熱することにより、酸化シリコンからなる被覆部が得られる。酸化シリコン以外の、例えば、酸化チタン等の金属酸化物を使用する場合も、同様の方法によって被覆部を形成することができる。尚、ゾルゲル法によって被覆部を形成する場合には、後述するナノ粒子材を併用することもできる。例えば、金属アルコキシドにナノ粒子材を分散させた後、ゲル化することにより、金属酸化物とナノ粒子材とからなる被覆部が得られる。屈折率の調整方法として、屈折率の異なる少なくとも2種類の上記材料の混合比率を変える方法を採用することにより、各材料が有する屈折率の間で調整が可能である。すなわち、高屈折率の材料を選択し、又は、その混合比率を高くすれば、被覆部の屈折率を高くすることができる。
【0126】
第1及び第2の被覆部37、38を構成する材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ABS樹脂、PMMA樹脂、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物からなる樹脂、あるいは、低融点ガラス等のガラスを使用してもよい。これらの樹脂やガラス等の透光性材料を使用する場合には、これらの透光性材料に電子ビームやイオンビーム(水素イオンビームやヘリウムイオンビームなど)を照射することにより、上記透光性材料の屈折率を高めることができる。また、これらの透光性材料を母材とし、この母材中に上記した金属酸化物や無機材料からなるナノ粒子材を分散させたコンポジット材を使用することもできる。この場合、上記母材中に分散させる上記ナノ粒子材の量を調整することにより、被覆部の屈折率を調整することができる。また、硬化性樹脂を母材とする場合には、未硬化状態の硬化性樹脂に上記ナノ粒子材を分散させることによって硬化前における上記硬化性樹脂のチクソ性を向上させることができるため、被覆部を容易に所望の形状に成形することができる。また、樹脂単独で使用する場合に比べて熱伝導性が向上するため、発光素子3からの熱を効率良く放熱すること
が可能となる。
【0127】
また、第1及び第2の被覆部37、38を構成する材料としては、上記透光性材料を母材とし、その中にナノ粒子材を分散させた複合材料を使用してもよい。このナノ粒子材としては、例えば、上記した金属酸化物、無機材料等からなる超微粒子を使用することができ、被覆部を構成する材料である上記透光性材料内における発光波長の4分の1以下の平均粒径を有するものが好適である。ナノ粒子材の平均粒径が上記範囲内にあれば、十分な透明性を有する被覆部とすることができるからである。尚、上記「平均粒径」は、例えば、走査型電子顕微鏡の観察像から読み取った一次粒子の粒径の平均値(例えば、100個の一次粒子の粒径の平均値)であればよい。特に、上記平均粒径は、1nm以上100nm以下であればよく、1nm以上50nm以下であるのが好ましく、分散性の観点から1nm以上10nm以下であるのがより好ましい。屈折率の調整方法として、母材となる上記透光性材料と、母材と屈折率の異なる上記ナノ粒子材の混合比率を変える方法を採用することにより、各材料が有する屈折率の間で調整が可能である。すなわち、高屈折率の材料を選択し、又は、その混合比率を高くすれば、被覆部の屈折率を高くすることができる。
【0128】
波長変換部6は、例えば、波長変換材料と、この波長変換材料を分散させるための母材となる透光性材料とからなる。
【0129】
波長変換材料としては、例えば、蛍光体を使用することができる。蛍光体としては、例えば、赤色光を発する赤色蛍光体、橙色光を発する橙色蛍光体、黄色光を発する黄色蛍光体、緑色光を発する緑色蛍光体等を使用することができる。上記赤色蛍光体としては、例えば、シリケート系のBa3MgSi28:Eu2+、Mn2+、ニトリドシリケート系のSr2Si58:Eu2+、ニトリドアルミノシリケート系のCaAlSiN3:Eu2+、オクソニトリドアルミノシリケート系のSr2Si4AlON7:Eu2+、硫化物系の(Sr,Ca)S:Eu2+やLa22S:Eu3+等を使用することができる。上記橙色蛍光体としては、例えば、シリケート系の(Sr,Ca)2SiO4:Eu2+、ガーネット系のGd3Al512:Ce3+、Ca-α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Eu2+等を使用することができる。上記黄色蛍光体としては、例えば、シリケート系の(Sr、Ba)2SiO4:Eu2+やガーネット系の(Y、Gd)3Al512:Ce3+、硫化物系のCaGa24:Eu2+、Ca-α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Eu2+等を使用することができる。上記緑色蛍光体としては、例えば、アルミン酸塩系のBaMgAl1017:Eu2+、Mn2+や(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu2+、シリケート系の(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ca-α-サイアロン系のCa-α-SiAlON:Yb2+、β-サイアロン系のβ-Si34:Eu2+、オクソニトリドアルミノシリケート系の(Ba,Sr,Ca)2Si4AlON7:Ce3+、硫化物系のSrGa2S4:Eu2+、ガーネット系のY3(Al,Ga)512:Ce3+、Y3Al512:Ce3+、Ca3Sr2Si312:Ce3+、BaY2SiAl412:Ce3+、酸化物系のCaSc24:Ce3+等を使用することができる。波長変換部の上面から出射される光は白色光に限定されるものではなく、これらの蛍光体を適宜選択することにより、細やかな光色の設計が可能である。そして、発光波長の異なる蛍光体を複数種類使用することにより、無限のバリエーションが可能となる。また、波長変換材料が均一に分散される波長変換部の構成以外に、例えば、波長変換部の下面から上面に向けて波長変換材料の濃度が略段階的に変化する構成、異なる波長変換材料を各材料ごとに積層してなる構成、異なる波長変換材料からなるセルをマトリクス状に配置してなる構成などがある。いずれの構成であっても、波長変換部の下面から均一強度で1次光を入射させることにより、波長変換部の上面から均一な混合光を出射させることが可能となる。
【0130】
また、透光性材料としては、発光装置1から取り出す光を透過させることができる材料
であればよく、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルサルファイド樹脂、液晶ポリマー、ABS樹脂、PMMA樹脂、環状オレフィンコポリマー等の樹脂やこれらの混合物からなる樹脂、あるいは、低融点ガラス等のガラスを使用することができる。また、これらの透光性材料を母材とし、この母材中に金属酸化物粒子を分散させたコンポジット材を使用することもできる。この場合、上記母材中に分散させる上記金属酸化物粒子の量を調整することにより、波長変換部6の屈折率を調整することができる。また、硬化性樹脂を母材とする場合には、未硬化状態の硬化性樹脂に上記金属酸化物粒子を分散させることによって硬化前における上記硬化性樹脂のチクソ性を向上させることができるため、波長変換部6を容易に所望の形状に成形することができる。また、樹脂単独で使用する場合に比べて熱伝導性が向上するため、発光素子3からの熱を効率良く放熱することが可能となる。
【0131】
また、発光素子3として、青紫色LEDや紫外LEDを使用する場合には、例えば、上述した蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体や青緑色光を発する青緑色蛍光体とを併用すればよい。上記青色蛍光体としては、例えば、アルミン酸塩系のBaMgAl1017:Eu2+、シリケート系のBa3MgSi28:Eu2+、ハロ燐酸塩系の(Sr,Ba)10(PO46Cl2:Eu2+等を使用することができる。上記青緑色蛍光体としては、例えば、アルミン酸塩系のSr4Al1425:Eu2+、シリケート系のSr2Si38・2SrCl2:Eu2+等を使用することができる。
【0132】
本実施の形態の発光装置1においては、波長変換部6のうち、被覆部の屈折率の高い部分(第2の被覆部38)の上方に位置する部分の屈折率が、波長変換部39の他の部分の屈折率よりも高いのが好ましい(屈折率の異なる領域の境界を、図18に破線で示す)。波長変換部39の屈折率をこのように制御するには、例えば、上記のように、透光性材料(母材)中に分散させる金属酸化物粒子の量を調整すればよい。そして、かかる好ましい構成によれば、被覆部(第1及び第2の被覆部37、38)と波長変換部39との界面における反射を減らすことができるので、反射による損失を低減することができる。また、波長変換部39においても、強度分布を均一化することができる。
【0133】
尚、本実施の形態においては、基台として、凹部を有する基台35を例に挙げて説明したが、必ずしもかかる構成の基台を使用する必要はなく、例えば、後述する第10及び第11の実施の形態の場合と同様の平板状の基台を使用してもよい。
【0134】
また、本実施の形態においては、第1及び第2の被覆部37、38が波長変換部39によって密着した状態で覆われている場合を例に挙げて説明したが、図20に示すように、第1及び第2の被覆部37、38と波長変換部39との間に隙間40を設けるようにしてもよい。かかる構成によれば、発光素子36からの熱によって波長変換部39の温度が上昇するのを抑制することができる。
【0135】
また、本実施の形態においては、基台35上に1個の発光素子36が配置されている場合を例に挙げて説明したが、発光素子の個数は特に限定されず、例えば、図21に示すように、3個の発光素子36f、36g、36hを基台35上に配置した構成であってもよい。かかる構成によれば、出射光の強度を向上させることができる。また、例えば、図22に示すように、2個の発光素子36f、36hを基台35上に配置し、発光素子36f、36h間に屈折率の高い被覆部(第2の被覆部38)を配置した構成であってもよい。発光素子の間隔を比較的広くする際、均一な1次光分布とすることができるので、薄型の面光源を実現することができる。この効果は、波長変換部を用いずに1次光のみを利用する際にも有効である。その場合、発光素子からの出射光は、紫外光、可視光、赤外光のいずれであってもよい。
【0136】
尚、本実施の形態においては、説明を簡素化するために、屈折率の異なる2種類の被覆部を用いる場合を例に挙げて説明したが、その間の屈折率が段階的に変化するように、屈折率の異なる3種類以上の被覆部を例えば段階的に配置するようにしてもよい。
【実施例】
【0137】
以下、本発明の実施例について説明する。尚、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0138】
(発光装置の作製)
本発明の実施例として、図23に示す発光装置を作製した。また、比較例として、被覆部に1種類の樹脂を用いた発光装置も作製した(被覆部の材料以外の構成は、図23に示す発光装置と同様である)。
【0139】
発光素子36としては、波長約460nmのLEDチップ(厚み:0.2mm、1.0mm角)を用いた。凹部を有する基台35としては、セラミックAl23で構成された基材を用いた。上記LEDチップは、基台35の前記凹部の底面上に、Auバンプによってフリップチップ実装されている。前記凹部の深さは0.5mm、前記凹部の上端開口部の径は2mmである。また、第1の被覆部37を構成する材料としては、波長550nmの光に対する屈折率が1.5のシリコーン樹脂、第2の被覆部38を構成する材料としては、シリコーン樹脂に波長550nmの光に対する屈折率が2.0の平均粒径5nmの酸化チタン粒子を分散させたコンポジット材を用いた。第1の被覆部37と第2の被覆部38との界面と発光素子36の周辺部との距離は、約0.2mmである。波長変換部39の波長変換材料としては、Y3Al512:Ce3+、波長変換部39の母材となる透光性材料としては、シリコーン樹脂を用いた。波長変換部39の厚みは、約0.05mmである。
【0140】
(出射光の色温度の測定方法)
次に、作製した発光装置の出射光の色むらを評価するために、出射光の色温度の測定を行った。測定方法について図7を参照しながら説明する。発光装置34を発光させた状態で、ディテクター59(浜松ホトニクス製S9219、受光面の直径:11.3mm)を用いて発光装置34を中心とする半径1mの半円(図24における破線)上を通過する出射光の相関色温度を測定した。そして、発光素子36の光軸Lに対する放射角θについて、θ=0度のときの相関色温度(約6500[K])に対する相関色温度差をプロットした。得られた結果を図24に示す。尚、図24には、比較例の発光装置について、上記と同様にして測定した結果についても示している。使用する放射角内の出射光の相関色温度差は、200[K]以内であるのが好ましい。使用する放射角±70[度]内において、比較例では相関色温度差が230[K]程度であるのに対し、本実施例では相関色温度差が120[K]と目標値の200[K]以内に収まっている。
【0141】
図24に示すように、本実施例の発光装置34によれば、相関色温度差が小さくなり、色むらを低減できていることが分かる。
【0142】
[第9の実施の形態]
次に、図25を参照しながら、本発明の第9の実施の形態の発光装置について説明する。図25は、本発明の第9の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図である。
【0143】
図25に示すように、本実施の形態の発光装置52は、凹部を有する基台35と、前記凹部の底面上(基台35上)に配置された1個の発光素子36とを備えている。発光素子36は、第1の被覆部37aによって密着した状態で覆われており、第1の被覆部37a
の外周側上部は第2の被覆部38aに置き換えられている。ここで、第1及び第2の被覆部37a、38aは、それらの上面が面一となるように形成されている。また、第1及び第2の被覆部37a、38aは、プレート状の波長変換部39によって密着した状態で覆われている。ここで、波長変換部39は、厚さが均一で、当該波長変換部39を構成する波長変換材料の分布が均一となっている。また、波長変換部39の上面は、基台35の凹部の開口面と面一になっている。
【0144】
第2の被覆部38aの屈折率は、第1の被覆部37aの屈折率よりも高く設定されている。すなわち、本実施の形態の発光装置52において、波長変換部39の外周部における被覆部の少なくとも一部である上部(第2の被覆部38a)は、被覆部の他の部分(第1の被覆部37a)よりも高い屈折率を有している。第1の被覆部37aと第2の被覆部38aとの界面の、発光素子36からの距離が近いほど、本発明の効果、すなわち、発光素子と波長変換部との距離を近づけて色むらの少ない薄型の発光装置を実現できるという効果を得ることができる。目安としては、第1の被覆部37aと第2の被覆部38aとの界面と発光素子の周辺部との距離を、発光素子36の上面と波長変換部39の下面との距離よりも小さくすればよい。第1の被覆部37aと第2の被覆部38aとの界面と発光素子の周辺部との距離は、1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下がよい。また、後述するように、界面が発光素子と接していてもよい。
【0145】
本実施の形態の発光装置52の構成によっても、上記第8の実施の形態の発光装置34の場合と同様の効果が得られる。
【0146】
その他の発光素子36の構成や実装方式、各部材の材料等は、上記第8の実施の形態の発光装置34と同様である。
【0147】
尚、本実施の形態の発光装置52においても、波長変換部39のうち、被覆部の屈折率の高い部分(第2の被覆部38a)の上方に位置する部分の屈折率が、波長変換部39の他の部分の屈折率よりも高いのが好ましい(屈折率の異なる領域の境界を、図25に破線で示す)。
【0148】
また、本実施の形態においても、基台として、例えば、後述する第10及び第11の実施の形態の場合と同様の平板状の基台を使用することができる。
【0149】
また、本実施の形態においても、第1及び第2の被覆部37a、38aが波長変換部39によって密着した状態で覆われている場合を例に挙げて説明したが、図26に示すように、第1及び第2の被覆部37a、38aと波長変換部39との間に隙間40を設けることができる。
【0150】
また、本実施の形態においても、基台35上に1個の発光素子36が配置されている場合を例に挙げて説明したが、発光素子の個数は特に限定されず、例えば、図27に示すように、3個の発光素子36f、36g、36hを基台35上に配置した構成とすることができる。また、例えば、図28に示すように、2個の発光素子36f、36hを基台35上に配置し、発光素子36f、36h間に屈折率の高い被覆部(第2の被覆部38a)を配置した構成であってもよい。発光素子の間隔を比較的広くする際、均一な1次光分布とすることができるので、薄型の面光源を実現することができるなど、上記第8の実施の形態で示した例(図22参照)と同様の効果を得ることができる。
【0151】
[第10の実施の形態]
次に、図29を参照しながら、本発明の第10の実施の形態の発光装置について説明する。図29は、本発明の第10の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図で
ある。
【0152】
図29に示すように、本実施の形態の発光装置53は、平板状の基台35aと、基台35a上に配置された1個の発光素子36とを備えている。発光素子36は、第1の被覆部37bによって密着した状態で覆われており、第1の被覆部37bの側面は、第2の被覆部38bによって密着した状態で囲まれている。また、第1及び第2の被覆部37b、38bは、波長変換部39aによって密着した状態で覆われている。ここで、波長変換部39aは、厚さが均一で、当該波長変換部39aを構成する波長変換材料の分布が均一となっている。
【0153】
第2の被覆部38bの屈折率は、第1の被覆部37bの屈折率よりも高く設定されている。すなわち、本実施の形態の発光装置53において、波長変換部39aの外周部における被覆部(第2の被覆部38b)は、被覆部の他の部分(第1の被覆部37b)よりも高い屈折率を有している。
【0154】
本実施の形態の発光装置53の構成によっても、上記第8の実施の形態の発光装置34の場合と同様の効果が得られる。
【0155】
また、本実施の形態の発光装置53においては、波長変換部39aがドーム状に形成されており、このドーム状の波長変換部39aに合わせて、第1及び第2の被覆部37b、38bが半球状に形成されている。この構成によれば、発光素子36から発せられた光の殆どが波長変換部39aへ垂直に入射されるため、波長変換部39aと第1及び第2の被覆部37b、38bとの界面における光の反射を防止することができる。これにより、光の取り出し効率をより向上させることができる。
【0156】
その他の発光素子36の構成や実装方式、各部材の材料等は、上記第8の実施の形態の発光装置34と同様である。
【0157】
尚、本実施の形態の発光装置53においても、波長変換部39aのうち、被覆部の屈折率の高い部分(第2の被覆部38b)の上方に位置する部分の屈折率が、波長変換部39aの他の部分の屈折率よりも高いのが好ましい(屈折率の異なる領域の境界を、図29に破線で示す)。
【0158】
また、本実施の形態においては、基台として、平板状の基台35aを例に挙げて説明したが、必ずしもかかる構成の基台を使用する必要はなく、例えば、上記第8及び第9の実施の形態の場合と同様の、凹部を有する基台を使用してもよい。
【0159】
また、本実施の形態においても、第1及び第2の被覆部37b、38bが波長変換部39aによって密着した状態で覆われている場合を例に挙げて説明したが、図30に示すように、第1及び第2の被覆部37b、38bと波長変換部39aとの間に隙間40aを設けることができる。
【0160】
また、本実施の形態においても、基台35a上に1個の発光素子36が配置されている場合を例に挙げて説明したが、発光素子の個数は特に限定されず、例えば、図31に示すように、2個の発光素子36i、36jを基台35a上に配置した構成とすることができる。
【0161】
[第11の実施の形態]
次に、図32を参照しながら、本発明の第11の実施の形態の発光装置について説明する。図32は、本発明の第11の実施の形態における発光装置の一例を示す概略断面図で
ある。
【0162】
図32に示すように、本実施の形態の発光装置54は、平板状の基台35aと、基台35a上に配置された発光素子36kとを備えている。発光素子36kは、被覆部41によって密着した状態で覆われている。ここで、被覆部41は、発光素子36kの上面に配置された第1の被覆部37cと、発光素子36k及び第1の被覆部37cの側面を密着した状態で囲む第2の被覆部38cとにより構成されている。ここで、第1及び第2の被覆部37c、38cは、それらの上面が面一となるように形成されている。また、第1及び第2の被覆部37c、38cは、波長変換部39bによって密着した状態で覆われている。ここで、波長変換部39bは、少なくとも第1及び第2の被覆部37c、38cの上方に位置する部分が、厚さが均一で、当該波長変換部6を構成する波長変換材料の分布が均一となっている。
【0163】
第2の被覆部38cの屈折率は、第1の被覆部37cの屈折率よりも高く設定されている。すなわち、本実施の形態の発光装置54において、波長変換部39bの外周部における被覆部(第2の被覆部38c)は、被覆部の他の部分(第1の被覆部37c)よりも高い屈折率を有している。
【0164】
本実施の形態の発光装置54の構成によっても、上記第8の実施の形態の発光装置34の場合と同様の効果が得られる。
【0165】
その他の発光素子36kの構成や実装方式、各部材の材料等は、上記第8の実施の形態の発光装置34と同様である。
【0166】
尚、本実施の形態においても、上記第10の実施の形態の場合と同様に、波長変換部39bをドーム状に形成してもよい(図33参照)。
【0167】
また、本実施の形態の発光装置54においても、波長変換部39bのうち、被覆部の屈折率の高い部分(第2の被覆部38c)の上方に位置する部分の屈折率が、波長変換部39bの他の部分の屈折率よりも高いのが好ましい(屈折率の異なる領域の境界を、図32に破線で示す)。
【0168】
[第12の実施の形態]
次に、図34を参照しながら、本発明の第12の実施の形態の発光装置について説明する。図34は、本発明の第12の実施の形態における発光装置の一例を示す平面図である。
【0169】
図34に示すように、本実施の形態の発光装置63は、平板状の基台60と、基台60上に配置された複数個の発光素子61とを備えている。複数の発光素子61は、一連の波長変換部62によって覆われている。また、複数の発光素子61は、隣接する発光素子の間隔が基台60の中央部側から周縁部側に向けて漸次狭くなるように配置されている。
【0170】
そして、本実施の形態の発光装置63の構成によっても、照射面を均一な色の光で照らすことが可能な発光装置を提供することができる。
【0171】
尚、本実施の形態において、複数の発光素子61は、隣接する発光素子の間隔が基台60の中央部側から周縁部側に向けて漸次狭くなるように配置されているが、必ずしもかかる構成に限定されるものではない。複数の発光素子61は、波長変換部62の単位面積当たりの発光素子61の実装面密度が基台60の中央部側から周縁部側に向けて漸次高くなるように配置されていてもよく、これによっても、照射面を均一な色の光で照らすことが
可能な発光装置を提供することができる。また、複数の発光素子61は、波長変換部62での発光効率が基台60の中央部側から周縁部側に向けて漸次大きくなるように配置されていてもよく、これによっても、照射面を均一な色の光で照らすことが可能な発光装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上のように、本発明によれば、発光素子を覆う波長変換部の光取出し面内での光色差をより小さくして、照射面を均一な色の光で照らすことのできる発光装置を提供することができる。従って、本発明は、例えば、小型、薄型化が求められる表示用のバックライト光源、センサ用光源、また薄型照明光源等として有用である。また、出射面の形状は、特に限定されるものではなく、一般的な四角形のみならず、多角形、円形、楕円形、星型など、任意の形状が可能である。
【符号の説明】
【0173】
1 発光装置
2 基台
3 発光素子
4 波長変換部
5 発光素子の光取出し面
5a 発光素子の光取出し面の縁部
5b 発光素子の光取出し面の縁部の内側の領域
6 波長変換部の光取出し面
34、52、53、54 発光装置
35、35a 基台
36、36f、36g、36h、36i、36j、36k 発光素子
37、37a、37b、37c 第1の被覆部
38、38a、38b、38c 第2の被覆部
39、39a、39b 波長変換部
40、40a 隙間
41 被覆部
60 基台
61 発光素子
62 波長変換部
63 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台上に配置された1次光を放射する発光素子とを備えた発光装置であって、
前記発光素子は、発光層を含む複数の半導体層からなり、
前記発光素子は、前記1次光の一部を吸収して、2次光を放射する波長変換材料を含む波長変換部によって覆われており、
前記発光素子は、縁部と前記縁部の内側の領域の少なくとも2つの領域からなり、
前記発光素子の一方の主面に設けられた光取出し面の前記縁部における前記1次光の輝度が前記縁部の内側の領域における前記1次光の輝度よりも高く設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記波長変換部は、厚みが略均一で、波長変換材料が略均一に分散されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの領域はダイオードからなり、
前記縁部のダイオードと前記縁部の内側の領域のダイオードとは、直列に接続され、かつ、
前記縁部の前記ダイオードの前記発光層の面積が、前記縁部の内側の領域の前記ダイオードの前記発光層の面積よりも小さい請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの領域はダイオードからなり、
前記縁部のダイオードと前記縁部の内側の領域のダイオードとが、電気的に独立に駆動可能である請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの領域はダイオードからなり、
前記発光素子の他方の主面には、その全面に電極が設けられ、前記発光素子の前記一方の主面には、前記縁部のみに電極が設けられている請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの領域は電極パターンによって区分されており、前記縁部の電極間隔が前記縁部の内側の領域の電極間隔よりも小さい請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの領域において、前記縁部の電極抵抗が前記縁部の内側の領域の電極抵抗よりも小さい請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの領域において、前記縁部の内側の領域の内部抵抗が前記縁部の内部抵抗よりも大きい請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つの領域において、前記縁部の前記1次光の透過率が前記縁部の内側の領域の前記1次光の透過率よりも大きい請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
基台と、前記基台上に配置された1次光を放射する発光素子とを備えた発光装置であって、
前記発光素子は、発光層を含む複数の半導体層からなり、
前記発光素子は、被覆部によって覆われており、
前記被覆部は、前記1次光の一部を吸収して、2次光を放射する波長変換材料を含む波長変換部によって覆われており、
前記波長変換部の外周部における前記被覆部の少なくとも一部分の屈折率が、前記被覆部の他の部分の屈折率よりも高く設定されていることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
前記被覆部の少なくとも一部がナノ粒子材を含み、
前記波長変換部の外周部における前記被覆部の少なくとも一部分が、前記被覆部の母材よりも高い屈折率のナノ粒子材を有する請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記被覆部の少なくとも一部がナノ粒子材を含み、
前記波長変換部の外周部における前記被覆部の少なくとも一部分が、前記被覆部の他の部分よりも高比率のナノ粒子材を有する請求項10に記載の発光装置。
【請求項13】
前記波長変換部がドーム状に形成された請求項10〜12のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記波長変換部のうち、前記被覆部の屈折率の高い部分の上方に位置する部分の屈折率が、前記波長変換部の他の部分の屈折率よりも高い請求項10〜12のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記被覆部と前記波長変換部との間に隙間が設けられた請求項10〜12のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項16】
基台と、前記基台上に配置された1次光を放射する発光素子とを備えた発光装置であって、
前記発光素子は、発光層を含む複数の半導体層からなり、
前記発光素子は、前記1次光の一部を吸収して、2次光を放射する波長変換材料を含む波長変換部によって覆われており、
前記発光素子を複数備え、
前記複数の発光素子は、一連の波長変換部によって覆われると共に、隣接する発光素子の間隔が前記基台の中央部側から周縁部側に向けて漸次狭くなるように配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項17】
前記複数の発光素子は、前記波長変換部の単位面積当たりの前記発光素子の実装面密度が前記基台の中央部側から周縁部側に向けて漸次高くなるように配置された請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
前記複数の発光素子は、前記波長変換部での発光効率が前記基台の中央部側から周縁部側に向けて漸次大きくなるように配置された請求項16に記載の発光装置。
【請求項19】
前記発光素子は、成長基板を除去することによって得られたものである請求項1に記載の発光装置。
【請求項20】
前記縁部での前記電極の厚みが前記縁部の内側の領域での前記電極の厚みよりも厚い請求項7に記載の発光装置。
【請求項21】
前記縁部の内側の領域にイオン注入されている請求項8に記載の発光装置。
【請求項22】
前記縁部は前記縁部の内側の領域よりも高濃度でドーピングされている請求項8に記載の発光装置。
【請求項23】
前記発光素子の前記一方の主面には、前記縁部に誘電体多層膜が設けられている請求項9に記載の発光装置。
【請求項24】
前記発光素子の前記一方の主面には、前記縁部のみに凹凸が設けられている請求項9に
記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2010−508669(P2010−508669A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535195(P2009−535195)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/JP2008/002071
【国際公開番号】WO2009/019836
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】