説明

発振装置および無線中継システム

【課題】平面基板の両面から放射する発振装置を実現するとともに、薄い平面基板を用いて高性能な放射型発振装置を提供することにある。
【解決手段】平面基板108の一方面に、高電子移動度トランジスタ101、先端開放型線路102a,102b、および、ボンディングワイヤー106、接地面104を有している。また、平面基板108の他方面(裏面側)に、導体109、および、導体の開口103a,103bを有している。高電子移動度トランジスタ101のゲート側に発生した雑音信号は、高電子移動度トランジスタ101で増幅され、先端開放型線路102bへと伝送される。先端開放型線路102bの先端で反射した雑音信号は、先端開放型線路102aへ伝送され、先端開放型線路102aの先端で反射され、高電子移動度トランジスタ101のゲートに入射され、再度増幅される。導体の開口103a、103bが存在することにより、放射波は、平面基板108の表面側だけでなく、裏面側からも放射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波・ミリ波発振装置および無線中継システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイビジョン映像信号の無線伝送が注目されており、大容量情報を伝達する必要から、広い帯域を確保できるミリ波を用いた無線映像伝送装置の開発が試みられている。ミリ波帯においては、高周波回路とアンテナとを別々に形成してコネクタ等で接続した場合、その接続部での電力の損失が大きくなる。そこで、高周波回路と平面アンテナを一体化した装置の開発が試みられている。
【0003】
このような装置の一例として、たとえば、下記特許文献1および特許文献2に開示されているマイクロ波ミリ波放射型発振装置がある。図10に、特許文献1に開示されるマイクロ波ミリ波放射型発振装置の概略構成(平面図)を示し、図11に図10中XI−XI線矢視断面図を示す。このマイクロ波ミリ波放射型発振装置は、一対の扇状導体パッチ19を有し、その中心部が互いに近接し、かつ円弧部が互いに相対する様に配置されている。
【0004】
この一対の扇状導体パッチ19の中央部には、ゲートおよびドレインを上記一対の扇状導体パッチ19の異なる一方にそれぞれ接続し、ソースを接地した電界効果型の高周波トランジスタ12と、一対の扇状導体パッチ19と平行に広がる、基板21および導体平面層20とを備えている。一対の扇状導体パッチ19は、基板21の一方の面(表面側)に設けられ、導体平面層20は、基板21の他方の面(裏面側)に設けられている。扇状導体パッチ19は、直流バイアスライン11により、それぞれのソースを接地電位とする別々の直流電源に接続されている。
【0005】
一対の扇状導体パッチ19の面と平行に広がる導体平面層20との間隔(h)は、波長の15分の1倍から5分の1倍の間である。一対の扇状導体パッチ19の半径は、発振波長のほぼ4分の1の長さである。
【0006】
上記構成のマイクロ波ミリ波放射型発振装置によれば、一対の扇状導体パッチ19は両端の長さが半波長とほぼ等しい電磁波に対し共振特性を持つ。また、一対の扇状導体パッチ19の平面と平行に広がる導体平面層20との間隔が、通常のストリップ線路、あるいは、平面アンテナ基板に用いられる回路基板の厚さに比較して、3倍〜10倍程度と大きいことから、一対の扇状導体パッチ19は共振周波数に於いて空間と整合が取れた平面アンテナとはならず、空間に対して弱く結合する平面共振器となる。
【0007】
一対の扇状導体パッチ19の中央部に設けられる電界効果型の高周波トランジスタ12のゲート、および、ドレインは一対の扇状導体パッチ19の異なる一方に接続され、それぞれ直流バイアスされソースを接地している。これにより、ソース接地の高周波増幅器が形成され、ゲート側に発生した雑音信号は増幅される。
【0008】
また、ドレインに接続された扇状導体パッチ19に高周波電流を誘起し、扇状導体パッチ19と背面の平行導体面21との間を高周波電磁界は導波され半径方向へ伝搬し、扇状導体パッチ19の先端に達する。扇状導体パッチ19の先端に達した高周波電磁界は、大部分は反射され逆向きに戻る。更に、高周波電磁界は、他の一方の扇状導体パッチ19の側を伝搬・往復し、中央の電界効果型の高周波トランジスタ12のゲート側に入射し、再増幅される。
【0009】
一対の扇状導体パッチ19と背面の導体平面層20とで形成される導波路は、高周波トランジスタ12による増幅器の帰還回路を形成する。このとき、一対の扇状導体パッチ19の両端の長さに対応した共振周波数と一致し、増幅器の出力から入力への帰還が、正帰還位相の関係を満足する周波数成分について発振が成長し、一対の扇状導体パッチ19の平面共振器にエネルギーが蓄積される。空間に対して弱く結合する一対の扇状導体パッチ19と高周波トランジスタ12からなる平面共振器から蓄積された高周波エネルギーの一部が、定常状態では放射出力22として一定の割合で空間に放射される。
【0010】
一対の扇状導体パッチ19の面と導体平面層20との間隔を、波長の15分の1から5分の1の間で選択することで、一対の扇状導体パッチ19の共振周波数に於ける空間との整合を選択できる。
【0011】
しかしながら、上記構成を有するマイクロ波ミリ波放射型発振装置においては、以下に示すような問題がある。すなわち、基板21の裏面側に導体平面層20が設けられているため、電力の放射は基板21の表面方向のみの一方向に限られる。
【0012】
また、平面アンテナ基板に用いられる回路基板の厚さと比較し3倍〜10倍程度の厚さの基板を用いているため、高周波トランジスタ12のグランドを、基板21を挟んだ位置にある導体平面層20と接続させる場合、基板21に長いスルーホールを設ける必要がある。基板21に長いスルーホールを設けた場合、高周波トランジスタ12のグランドインダクタンスが大きくなるため、トランジスタ本来の性能を発揮することができず、発振装置の性能を制限してしまう。
【特許文献1】特開平11−31918号公報
【特許文献2】特開2000−261234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明の課題は、電力の放射が基板の一方向に限られる点、厚さの厚い基板を用いる結果、発振装置の性能を制限してしまう点にある。したがって、本発明の目的は、基板の両面から放射する発振装置を実現するとともに、薄い基板を用いて高性能な放射型発振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の発振装置においては、一方の面に導体接地面を有する平面基板と、該平面基板の他方の面上に実装された信号増幅手段と、該信号増幅手段の入力端子および出力端子のそれぞれに接続された先端開放型線路とを備え、上記先端開放型線路に相対する導体接地面に開口を有する。この発振装置によれば、平面アンテナと発振器とが一体化されており、かつ、平面アンテナの両側から放射することが可能である。
【0015】
また、一の形態では、上記先端開放型線路の電気長が、発振波の波長の約1/4の長さである。これにより、所望の周波数で発振させることができる。
【0016】
また、一の形態では、上記信号増幅手段が、金属バンプを介して平面基板にフリップチップ実装されている。フリップチップ実装接続部分のインダクタンスを低減することができるため、上記信号増幅手段の性能を充分に引き出すことができ、安定な発振が可能となる。
【0017】
また、一の形態では、上記信号増幅手段は、一つ以上の能動素子と一つ以上の整合回路が一つの半導体チップ上に集積化された集積回路となっている。これにより、信号増幅手段の利得を高めることができるため、さらに安定した発振が可能となる。
【0018】
また、一の形態では、上記集積回路の入出力間の通過位相が発振周波数において正帰還がかかるように、上記整合回路が形成されている。これにより、所望の周波数において確実に発振条件を満たすことが可能となるため、安定した発振動作が可能となる。
【0019】
また、一の形態では、上記平面基板の厚さが、発振波の波長に対して1/10以下である。これにより、基板の表面と裏面を接続するスルーホールの長さが波長に対して充分短くなり、基板の表面の接地面の電位は、基板の裏面とほぼ同電位となる。この結果、高電子移動度トランジスタは、発振周波数において利得の低下を抑えることが可能となる。
【0020】
また、一の形態では、誘電体レンズをさらに備え、上記誘電体レンズの焦点が上記信号増幅手段付近にくるように、上記誘電体レンズを配置している。これにより、通信距離の拡大が図れる。
【0021】
また、一の形態では、上記誘電体レンズが、上記平面基板の表面側および裏面側の両方に配置したことを特徴としている。これにより、平面基板の前後において、通信距離の拡大が図れる。
【0022】
また、一の形態では、上記誘電体レンズが、上記平面基板表面側および裏面側で異なる開口径を有する。これにより、表面側および裏面側それぞれの方向で、通信距離や放射角の設定を独立して行なうことが可能となる。
【0023】
また、一の形態では、送信機、受信機、および本発明の発振装置で構成される無線中継システムを形成している。これにより、通信距離の拡大を図るとともに、電波の放射角を中継地点で変化させることが可能となる。この結果、送信機と受信機のレイアウトの自由度が高まる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に基づいた発振装置および無線中継システムによれば、基板の両側で電波を放射することができるため、無線中継システムの柔軟なレイアウトが可能となる。また、従来は、放射効率を上げるために厚い基板を用いていたが、本発明においては、薄い基板を用いても放射効率は劣化せず、薄い基板を用いたことによって信号増幅手段の利得が増大するため、より安定な発振動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に基づいた各実施の形態における発振装置および無線中継システムについて、図を参照しながら説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本発明に基づいた実施の形態1における発振装置について説明する。なお、図1は、本実施の形態における平面放射型発振装置の平面図であり、図2は、図1中II−II線矢視断面図である。
【0027】
(平面放射型発振装置の構成)
両図を参照して、この平面放射型発振装置は、平面基板108を有し、この平面基板108の一方面(表面側)に、信号増幅手段としての高電子移動度トランジスタ101、先端開放型線路102a,102b、および、ボンディングワイヤー106、接地面104を有している。また、平面基板108の他方面(裏面側)に、導体109、および、導体の開口103a,103bを有している。
【0028】
開口103a,103bは、先端開放型線路102a,102bに対向する位置に、先端開放型線路102a,102bを含むように設けられている。接地面104と導体109とは、平面基板108を貫通するスルーホール105を用いて、電気的に接続されている。先端開放型線路102a,102bには、それぞれ直流バイアスライン107が設けられている。
【0029】
接地面104上には高電子移動度トランジスタ101がダイボンドされている。また、高電子移動度トランジスタ101のゲート(図示せず)と先端開放型線路102a、高電子移動度トランジスタ101のドレイン(図示せず)と先端開放型線路102b、および、高電子移動度トランジスタ101のソース(図示せず)と接地面104が、それぞれボンディングワイヤー106を介して、電気的に接続されている。
【0030】
(動作原理)
次に、動作原理について説明する。高電子移動度トランジスタ101のゲート側に発生した雑音信号は、高電子移動度トランジスタ101で増幅され、先端開放型線路102bへと伝送される。先端開放型線路102bの先端で反射した雑音信号は、先端開放型線路102aへ伝送され、先端開放型線路102aの先端で反射され、高電子移動度トランジスタ101のゲートに入射され、再度増幅される。
【0031】
雑音信号は元々周波数に対して一様な電力密度を持っているが、増幅器の出力から入力への帰還の位相が0となる周波数成分のみが成長し発振する。この発振により先端開放型線路102a、102bに高周波エネルギーが蓄積されるが、その高周波エネルギーの一部が定常状態では放射波として放射される。ここで導体面の開口103a、103bが存在することにより、放射波は、平面基板108の表面側だけでなく、裏面側からも放射される。
【0032】
先端開放型線路102a,102bの電気長(平面基板108の誘電率を考慮した長さ)を放射波の周波数に対して約1/4波長とすることにより、所望の周波数で発振させることが可能となる。先端開放型線路102a、102bの形状は、ここでは幅が同一な帯状のものを示しているが、扇形状(ラジアルスタブ)等を用いてよい。
【0033】
信号増幅手段として、ここでは高電子移動度トランジスタを用いた例を示したが、ガリウム砒素、インジウム燐、あるいはシリコンゲルマ基板等に形成したヘテロジャンクションバイポーラを用いてもよい。
【0034】
平面基板108の厚さは、放射波の波長の1/10以下に設定することにより、スルーホール105の長さが波長に対して充分短くなり、接地面104と裏面の導体109の電位は、発振周波数においてほぼ同電位となる。この結果、高電子移動度トランジスタ101は発振周波数において、利得の低下を抑えることが可能となる。
【0035】
一方、開口103a,103bは、先端開放型線路102a,102bに対向する位置に、先端開放型線路102a,102bを含むように設けているが、先端開放線路102a、102bの幅と、導体の開口103a、103bの幅を最適な間隔に設計することにより、薄い平面基板108を用いているにもかかわらず、先端開放型線路102a、102bの特性インピーダンスと放射抵抗を最適化することができ、効率の高い電力放射が可能となる。
【0036】
以上、本実施の形態における平面放射型発振装置によれば、安定な発振状態を保つことが可能となる。なお、平面基板108の材質としては、ガラスエポキシやテフロン(登録商標)等の樹脂材料や低温焼成ガラスセラミックやアルミナ等のセラミック材料など、高周波回路に一般的に使用されるものを用いることができる。
【0037】
(実施の形態2)
次に、図3および図4を参照して、本発明に基づいた実施の形態2における発振装置について説明する。なお、図3は、本実施の形態における平面放射型発振装置の平面図であり、図4は、図3中IV−IV線矢視断面図である。
【0038】
(平面放射型発振装置の構成)
本発明に基づいた実施の形態2における平面放射型発振装置において、実施の形態1の平面放射型発振装置と異なる点は、信号増幅手段としてのベアチップの高電子移動度トランジスタ201を、平面基板208にバンプ206を介してフリップチップ実装している点である。
【0039】
両図を参照して、この平面放射型発振装置は、平面基板208を有し、この平面基板208の一方面(表面側)に、高電子移動度トランジスタ201、先端開放型線路202a,202b、および、接地面204を有している。また、平面基板208の他方面(裏面側)に、導体209、および、導体の開口203a,203bを有している。開口203a,203bは、先端開放型線路202a,202bに対向する位置に、先端開放型線路202a,202bを含むように設けられている。接地面204と導体209とは、平面基板208を貫通するスルーホール205を用いて、電気的に接続されている。先端開放型線路202a,202bには、それぞれ直流バイアスライン207が設けられている。
【0040】
また、高電子移動度トランジスタ201のゲート(図示せず)と先端開放型線路202a、高電子移動度トランジスタ201のドレイン(図示せず)と先端開放型線路202b、および、高電子移動度トランジスタ201のソース(図示せず)と接地面204が、それぞれバンプ206を介して電気的に接続されている。
【0041】
上述したように、高電子移動度トランジスタ201をフリップチップ実装した場合、ワイヤーボンド実装と比較すると、接続部分のインダクタンスを低減することができる。このため、高電子移動度トランジスタ201の性能を充分引き出すことができ、安定な発振が可能となる。特に発振周波数が60GHz等のミリ波帯の場合は、実装ばらつきは、発振周波数や出力に大きく影響するので、フリップチップ実装することにより実装ばらつきが低減でき、非常に有効である。
【0042】
なお、動作原理、先端開放型線路202a,202bの電気長、平面基板208の材質、厚さ設定等に関しては、上記実施の形態1の場合と同様である。
【0043】
以上、本実施の形態における平面放射型発振装置によっても、安定な発振状態を保つことが可能となる。
【0044】
(実施の形態3)
次に、図5および図6を参照して、本発明に基づいた実施の形態3における発振装置について説明する。なお、図5は、本実施の形態における平面放射型発振装置の平面図であり、図6は、図5中VI−VI線矢視断面図である。
【0045】
(平面放射型発振装置の構成)
本発明に基づいた実施の形態3における平面放射型発振装置において、実施の形態1の平面放射型発振装置と異なる点は、信号増幅手段として、ディスクリート(単機能)の高電子移動度トランジスタ101の代わりに増幅機能を有する集積回路401を用いている点である。
【0046】
両図を参照して、この平面放射型発振装置は、平面基板408を有し、この平面基板408の一方面(表面側)に、信号増幅手段としての集積回路401、および、先端開放型線路402a,402bを有している。また、平面基板408の他方面(裏面側)に、導体409、および、導体の開口403a,403bを有している。開口403a,403bは、先端開放型線路402a,402bに対向する位置に設けられている。集積回路401の所定端子と、先端開放型線路402a,402bとは、それぞれボンディングワイヤー406を介して、電気的に接続されている。また、集積回路401の所定端子と、直流バイアスライン407とも、それぞれボンディングワイヤー406を介して、電気的に接続されている。また、集積回路401の所定端子と導体409とは、平面基板408を貫通するスルーホール405を用いて、電気的に接続されている。
【0047】
ここで、集積回路401は、一つ以上の能動素子と一つ以上の整合回路が一つの半導体チップ上に集積化されたものである。集積回路401は、たとえば、ガリウム砒素基板上に、高電子移動度トランジスタやヘテロジャンクションバイポーラトランジスタ等の能動素子と、伝送線路やキャパシタ等の受動素子で構成される整合回路を集積化して形成される。このような集積回路401は、高電子移動度トランジスタ101のようなディスクリート部品よりも利得が稼げるため、高性能の発振装置が実現できる。
【0048】
さらに、上記整合回路は、集積回路の入出力間の通過位相が発振周波数において正帰還がかかるように設計している。この結果、上記集積回路に先端開放型線路を接続することにより、確実に発振条件が満たされるため、安定な発振動作が可能となるのである。
【0049】
集積回路401は、ボンディングワイヤーによる接続に代わり、実施の形態2と同様にフリップチップ実装してもよい。
【0050】
なお、動作原理、先端開放型線路402a,402bの電気長、平面基板408の材質、厚さ設定等に関しては、上記実施の形態1の場合と同様である。
【0051】
以上、本実施の形態における平面放射型発振装置によっても、安定な発振状態を保つことが可能となる。
【0052】
(実施の形態4)
図7を参照して、本発明に基づいた実施の形態4における発振装置について説明する。なお、図7は、本実施の形態における平面放射型発振装置の縦断面図である。
【0053】
(平面放射型発振装置の構成)
この平面放射型発振装置の基本的構成は、上述した実施の形態1における平面放射型発振装置と同じである。平面基板508を有し、この平面基板508の一方面(表面側)に、信号増幅手段としての高電子移動度トランジスタ501、先端開放型線路502a,502b、および、ボンディングワイヤー506、接地面504を有している。また、平面基板508の他方面(裏面側)に、導体509、および、導体の開口503a,503bを有している。
【0054】
開口503a,503bは、先端開放型線路502a,502bに対向する位置に、先端開放型線路502a,502bを含むように設けられている。接地面504と導体509とは、平面基板508を貫通するスルーホール(図示省略)を用いて、電気的に接続されている。
【0055】
接地面504上には高電子移動度トランジスタ501がダイボンドされている。また、高電子移動度トランジスタ501のゲート(図示せず)と先端開放型線路502a、高電子移動度トランジスタ501のドレイン(図示せず)と先端開放型線路502b、および、高電子移動度トランジスタ501のソース(図示せず)と接地面504が、それぞれボンディングワイヤー506を介して、電気的に接続されている。
【0056】
さらに、本実施の形態においては、高電子移動度トランジスタ501の上方に誘電体レンズ511が配置されている。この誘電体レンズ511は、筐体510に固定され、筐体510に設けられた開口部510aから誘電体レンズ511が露出している。また、誘電体レンズ511の焦点付近が、高電子移動度トランジスタ501の位置と一致するように配置されている。
【0057】
先端開放型線路502a、502bで形成されるアンテナの放射原点は、先端開放型線路502a、502bの中間点、すなわち高電子移動度トランジスタ501となる。したがって、幾何光学的に誘電体レンズ511の焦点を高電子移動度トランジスタ501付近に配置すれば、放射原点から放射したとみなされる放射波が誘電体レンズ501に入射し、誘電体レンズ511の表面で屈折して、平面波として空間に放出される。
【0058】
誘電体レンズ511の開口が大きいほどアンテナ利得が高くなり、アンテナ放射角は鋭くなる。したがって、誘電体レンズ511の適切な開口を選択することにより、通信距離や放射角の設定の自由度が高まる。
【0059】
誘電体レンズ511は高密度ポリエチレン、テフロン(登録商標)等の低損失の樹脂材料やセラミック等で作製することが可能である。
【0060】
(実施の形態5)
図8を参照して、本発明に基づいた実施の形態5における発振装置について説明する。なお、図8は、本実施の形態における平面放射型発振装置の縦断面図である。
【0061】
(平面放射型発振装置の構成)
この平面放射型発振装置の基本的構成は、上述した実施の形態4における平面放射型発振装置と同じである。平面基板608を有し、この平面基板608の一方面(表面側)に、信号増幅手段としての高電子移動度トランジスタ601、先端開放型線路602a,602b、および、ボンディングワイヤー606、接地面604を有している。また、平面基板608の他方面(裏面側)に、導体609、および、導体の開口603a,603bを有している。
【0062】
開口603a,603bは、先端開放型線路602a,602bに対向する位置に、端開放型線路602a,602bを含むように設けられている。接地面604と導体609とは、平面基板608を貫通するスルーホール(図示省略)を用いて、電気的に接続されている。
【0063】
接地面604上には高電子移動度トランジスタ601がダイボンドされている。また、高電子移動度トランジスタ601のゲート(図示せず)と先端開放型線路602a、高電子移動度トランジスタ601のドレイン(図示せず)と先端開放型線路602b、および、高電子移動度トランジスタ601のソース(図示せず)と接地面604が、それぞれボンディングワイヤー606を介して、電気的に接続されている。
【0064】
さらに、本実施の形態においては、高電子移動度トランジスタ601の上方に誘電体レンズ611が配置され、平面基板608の裏面側に誘電体レンズ612が配置されている。誘電体レンズ611は、筐体610に固定され、筐体610に設けられた開口部610aから誘電体レンズ611が露出している。また、誘電体レンズ611の焦点付近が、高電子移動度トランジスタ601の位置と一致するように配置されている。
【0065】
誘電体レンズ612は、筐体613に固定され、筐体613に設けられた開口部613aから誘電体レンズ612が露出している。また、誘電体レンズ612の焦点付近が、高電子移動度トランジスタ601の位置と一致するように配置されている。
【0066】
先端開放型線路602a、602bで形成されるアンテナの放射原点は、先端開放型線路602a、602bの中間点、すなわち高電子移動度トランジスタ601となる。したがって、幾何光学的に誘電体レンズ611,612の焦点を高電子移動度トランジスタ501付近に配置すれば、放射原点から放射したとみなされる放射波が誘電体レンズ611,612に入射し、誘電体レンズ611,612の表面で屈折して、平面波として空間に放出される。
【0067】
このように平面基板608の両側に誘電体レンズ611,612を配置することにより、それぞれの方向で、通信距離や放射角の設定の自由度が高まる。誘電体レンズ611,612の大きさは必ずしも同じである必要はなく、図8に示すように表面側、裏面側で異なってもよい。
【0068】
また、誘電体レンズ611,612の開口が大きいほどアンテナ利得が高くなり、アンテナ放射角は鋭くなる。したがって、誘電体レンズ611,612の適切な開口を選択することにより、通信距離や放射角の設定の自由度が高まる。
【0069】
誘電体レンズ611,612は高密度ポリエチレン、テフロン(登録商標)等の低損失の樹脂材料やセラミック等で作製することが可能である。
【0070】
なお、上記実施の形態4および5における平面放射型発振装置においては、実施の形態1に示した発振装置の構成を採用した場合について説明しているが、実施の形態2および3に示す発振装置の構成を採用することも可能である。
【0071】
(実施の形態6)
図8で示した実施の形態5における発振装置を用いた無線中継システムの実施の形態を図9に示す。60GHz帯送信機701、発振装置702、60GHz帯受信機703a、703b、703cで構成される。
【0072】
発振装置702は60GHz付近で自由発振しており、誘電体レンズ711a、711bにより前後の空間に放射波を放射している。次に60GHz帯送信機701から60GHz帯変調波を放射し、誘電体レンズ711aを介して発振装置702に入射した場合、60GHz帯変調波が発振装置702内の高電子移動度トランジスタに注入され、発振装置702の自由発振波は60GHz帯変調波に同期する。この結果、発振装置702の前後から60GHz帯変調波が放射されることになるのである。発振装置702の誘電体レンズ711bから放射された60GHz帯変調波は、60GHz帯受信機703a、703b、703cに入射され、受信が完了する。
【0073】
誘電体レンズ711aは、開口が大きいほどアンテナ利得が高まり、60GHz帯変調波に対する注入同期幅が広くなる。また、誘電体レンズ711bの開口を比較的小さめに設定すれば、放射角が広がり、たとえば、60GHz帯受信機703a、703b、704cのように複数の受信機に中継することが可能となる。
【0074】
以上のように本発明に基づいた発振装置を無線中継システムに用いることにより、通信距離の拡大を図るとともに、電波の放射角を中継地点で変化させることが可能となる。この結果、送信機と受信機のレイアウトの自由度が高まる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、小型で高性能な無線中継装置を実現する上で有効であり、ハイビジョン映像信号の無線伝送装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明に基づいた実施の形態1における平面放射型発振装置の平面図である。
【図2】図1中II−II線矢視断面図である。
【図3】この発明に基づいた実施の形態2における平面放射型発振装置の平面図である。
【図4】図3中IV−IV線矢視断面図である。
【図5】この発明に基づいた実施の形態3における平面放射型発振装置の平面図である。
【図6】図5中VI−VI線矢視断面図である。
【図7】この発明に基づいた実施の形態4における平面放射型発振装置の縦断面図である。
【図8】この発明に基づいた実施の形態5における平面放射型発振装置の縦断面図である。
【図9】この発明に基づいた実施の形態6における平面放射型発振を用いた無線中継システムを示す図である。
【図10】背景技術におけるマイクロ波ミリ波放射型発振装置の概略構成を示す平面図である。
【図11】図10中XI−XI線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0078】
101,201,501,601 高電子移動度トランジスタ、102a,102b,202a,202b,402a,402b,502a,502b,602a,602b 先端開放型線路、103a,103b,203a,203b,403a,403b,503a,503b,603a,603b 開口、104,204,404,504,604 接地面、105,205,405 スルーホール、106,406,506,606 ボンディングワイヤー、107,207,407 直流バイアスライン、108,208,408,508,608 平面基板、109,209,409,509,609 導体、206 バンプ、401 集積回路、510,610,613 筐体、510a,610a,613a 開口部、511,611,612 誘電体レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に導体接地面を有する平面基板と、
該平面基板の他方の面上に実装された信号増幅手段と、
該信号増幅手段の入力端子および出力端子のそれぞれに接続された先端開放型線路と、を備え、
前記先端開放型線路に相対する前記導体接地面に開口を有することを特徴とする発振装置。
【請求項2】
前記先端開放型線路の電気長が、発振波の波長の1/4相当の長さであることを特徴とする、請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記信号増幅手段が、金属バンプを介して前記平面基板にフリップチップ実装されていることを特徴とする、請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記信号増幅手段は、一つ以上の能動素子と一つ以上の整合回路とが一つの半導体チップ上に集積化された集積回路であることを特徴とする、請求項2に記載の発振装置。
【請求項5】
前記集積回路の入出力間の通過位相が、発振周波数において正帰還がかかるように、前記整合回路が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の発振装置。
【請求項6】
前記平面基板の厚さが、発振波の波長に対して1/10以下である、請求項2に記載の発振装置。
【請求項7】
誘電体レンズをさらに備え、前記誘電体レンズの焦点が前記信号増幅手段付近にくるように、前記誘電体レンズを配置したことを特徴とする、請求項2に記載の発振装置。
【請求項8】
前記誘電体レンズを、前記平面基板の表面側および裏面側の両方に配置したことを特徴とする、請求項7に記載の発振装置。
【請求項9】
前記誘電体レンズが、前記平面基板の表面側および裏面側で異なる開口径を有することを特徴とする請求項8に記載の発振装置。
【請求項10】
送信機、受信機、および請求項7に記載の発振装置で構成される無線中継システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−71437(P2009−71437A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235720(P2007−235720)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度総務省「電波資源拡大のための研究開発」のうち、「ミリ波帯無線装置の低コスト化の小型ワンチップモジュール化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】