発振装置及びアレイアンテナ装置
【課題】分配器を用いることなく、位相同期した多数の発振信号を供給すること。
【解決手段】複数の発振周波数を同期させた発振器において、複数の発振器と、これらの複数の発振器のゲート/ベースを、全周長が発振周波数の1波長のマイクロストリップ線路から成る閉線路の各ポートに接続した線路で結合したリング共振器と、リング共振器の線路に挿入された励振位相を一方向に固定する励振方向固定装置とから成る発振装置である。閉線路間に配設される共通の発振器は、差動発振器で構成されている。
【解決手段】複数の発振周波数を同期させた発振器において、複数の発振器と、これらの複数の発振器のゲート/ベースを、全周長が発振周波数の1波長のマイクロストリップ線路から成る閉線路の各ポートに接続した線路で結合したリング共振器と、リング共振器の線路に挿入された励振位相を一方向に固定する励振方向固定装置とから成る発振装置である。閉線路間に配設される共通の発振器は、差動発振器で構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発振器の発振信号の位相を同期させた発振装置及びアレイアンテナ装置に関する。本発明は、指向性を可変制御できるフェーズドアレイアンテナの各アンテナへの搬送波の位相を制御するのに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フェーズドアレイアンテナ装置を開示している。そのフェーズドアレイアンテナ装置では、複数の送信モジュールを持ち、搬送波の増幅と位相を可変している。各アンテナに供給する搬送波は、単一の発振器で生成されて、分配器で各アンテナ系統に分配された後、各アンテナに供給されるようになっている。各アンテナに供給される搬送波の位相差を制御することにより、アンテナの指向性を変化させることができる。
【0003】
非特許文献1は、リング共振器を用いたプッシュ発振器を開示している。この文献では、正方形状のマイクロストリップ線路から成るリング共振器には、2つの直交する共振モードが存在し、リング共振器を4つのポートで励振する4つの発振器であり、自動的に位相関係が決定されることが開示されている。また、4つの発振器からの周波数f0を励振することで、周辺伝送路の各辺の中点間を結び十字形状に交差した線路の交点から周波数4f0 の発振信号が得られることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−269569
【非特許文献1】Hai Xiao, Takayuki Tanaka, Masayoshi Aikawa, "Basic Behavoir of Quadruple-Push Oscillator Using Ring Resonator." IEEE Trans. Electron.,Vol.E88-C,No.7,July 2005 。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のフェーズドアレイアンテナ装置では、発振器が1個あり、この発振器の出力する信号をアンテナ系統の数に分配して、増幅又は移相器により位相を変化させている。信号を分配させているために、発振器は大きな電力を発生させなければならない。これは消費エネルギーを増大させるという問題だけでなく、放熱の問題も引き起こす。また、各アンテナ系統のモジュールに同相で分配するためには、搬送波を供給する伝送路の長さを、各アンテナ系統で、等しくする必要があり、実際には、これを行うことはスペース的に容易ではない。
【0006】
また、ミリ波のような超高周波においても、SiGeICの登場によって高集積化できる可能性がでてきた。これにより、高周波回路部をワンチップに収納できる可能性がでてきた。このような状況では、各ICは発振器と増幅器や移相器を備えたICとなる可能性がある。すると、これらのICをアレー配置することで、アンテナからの出力を空間合成するなどの方法も現実的となってきた。しかし、これには、各発振器の同期を取る必要があるが、分配器を用いた分配では、上記のような問題がある。本発明はこのような用途に利用できる。
【0007】
非特許文献1に記載の技術は、1つのリング共振器に4つの発振器を取り付けて発振させる技術である。リング共振器には、cosωt とsinωtとの2つの直交するモードがあり、4つの発振器の発振信号の位相は、自動的に90度ずれた位相関係になる。正方形の伝送路の各辺の中点に設けられた4つのポートでの発振信号の位相は、時計回りに90度づつ位相が進むモードと、これとは逆に、反時計回りに90度づつ位相が進むモードとが存在する。しかし、このモードは、何れか一方に決定することはできず、発振器の電源を投入した時の初期位相により、何れかのモードに決定される。したがって、この非特許文献に開示されているリング共振器を、アレイアンテナ装置に用いることはできない。
【0008】
また、非特許文献1は、得られる信号は4個に限定されるために、アンテナの数が、これ以上に多くなると、この方式は用いることができない。また、非特許文献1では、正方形の伝送路の中心点から発振器の発振周波数の4倍の周波数の発振信号が得られることが開示されているが、この信号は1個だけであるから、この4倍の発振周波数の発振信号を、分配器を用いることなく、フェーズドアレイアンテナ装置に供給することはできない。したがって、この場合にも、上記のように発振器の出力を大きくする必要があり、消費電力と発熱が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、分配器を用いることなく、位相同期した多数の発振信号を供給することができるようにすることである。
また、アレイアンテナやフェーズドアレイアンテナに、搬送波を供給し易い構造の発振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の発振周波数を同期させた発振装置において、複数の発振器と、これらの複数の発振器を、閉線路の各ポートに結合して、線路で結合したリング共振器と、リング共振器の線路に挿入された励振位相を一方向に固定する励振方向固定装置と、から成る発振装置である。
この励振方向固定装置としては、単一方向の増幅器、方向性結合器など、信号の伝搬方向を単方向とするものであれば、任意のものが使用できる。増幅器の場合には、正相増幅器を、方向性結合器であれば、位相反転のない結合器を用いる。位相反転のない励振方向固定装置であれば、数は、1つ又は2以上であっても良い。また、偶数個pの逆相増幅器や位相反転のある方向性結合器を、閉線路においてその中心点に対して回転対称の位置に設けても良い。この場合には、閉線路の1周がp波長となり、1周の位相は2pπである。また、発振器を閉線路の各ポートに接続する方法には、発振器を構成するトランジスタのゲート/ベースを、閉線路のポートにコンデンサを介して接続する方法や、トランジスタのドレイン/コレクタ又はソース/エミッタを、閉線路の各ポートにコンデンサやインダクタを介して接続する方法がある。その他、容量結合や誘導結合により、発振器を構成するトランジスタと、閉線路と電磁気的に結合させても良い。 要するに、発振器と閉線路とが、電磁気的に結合し、発振器の発振信号が閉線路を伝搬するように結合していれば良く、その結合方法は、任意である。
【0011】
一つの閉線路に発振器が接続されるポートの形成位置は、閉線路の中心点に対して回転対称(等間隔)の位置に設けるのが望ましいが、必ずしも回転対称(等間隔)である必要はない。一つの閉線路におけるポートの数は、任意であるが、各ポート間の位相差はπ/2であり、ポートの数は、一つの閉線路当たり4点であることが望ましい。また、閉線路は、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路を用いることができるが、閉線路は、全周長が発振周波数の1波長のマイクロストリップ線路から成ることが望ましい。
【0012】
閉線路の数は、単数、複数、任意であるが、複数設けた場合には、隣接する2つの閉線路において同相又は逆相の関係にある2つのポートに対して、共通の1つの発振器のトランジスタを結合するのが望ましい。これにより、2つの閉線路を連結することができる。すなわち、励振方向固定装置を位相反転のないものを用いた場合には、その2つのポート間が逆相となるので、共通の発振器は、差動発振器で構成され、隣接する閉線路の2つのポートのそれぞれに対して、差動発振器のそれぞれのトランジスタを結合するようにしても良い。この場合には、隣接する2つの閉線路の対応するポートにおいて、発振信号を同相で同期させることができる。また、2つの閉線路を連結する発振器は、励振方向固定装置として、閉線路を2分するそれぞれの区間に、一つの逆相増幅器を、それぞれ、設ける場合には、上記の2つのポートは同相となるので、差動型でない発振器を用いる。これにより、隣接する2つの閉線路の対応するポートにおいて、発振信号を同相で同期させることができる。
【0013】
本発明は、複数の発振信号において、位相は固定的に同期したものでも、位相差を変化させて、同期したものであっても良い。したがって、位相を変化させる発振信号を得る場合には、隣接する閉線路の2つのポートを接続する線路に位相を推移させる移相器を設けることが望ましい。
【0014】
複数の閉線路は、2次元配列されていても良い。このアレイ配設から、アレイアンテナへの信号の供給が容易となる。
【0015】
閉線路の形状は、円、楕円、正方形、菱形、長方形、平行四辺形、正三角形、正五角形、正六角形、正八角形、正多角形など任意である。多角形の場合、ポートを設ける位置は頂角でも辺でも良い。設けるポート間の線路長は、必ずしもそうである必要はないが、等しいことが望ましい。一般的には、閉線路をn(nは3以上の自然数)等分し、その等分点に発振器を結合させるが望ましい。この場合には、ポート数がmである場合に、信号の位相差は、2π/mとなるので、2π/m単位の位相設定器が必要となる。閉線路を一つの方向に一次元配列させる場合には、隣接する2つの閉線路における隣接する2つのポートが逆相又は同相となる関係を満たすようにポートの位置を決定する。また、閉線路を2次元配列させる場合には、直交する2つの方向に、それぞれ、隣接する2つの閉線路における隣接する2つのポートが逆相又は同相となる関係を満たす位置にポートを設定する。たとえば、閉線路を偶数多角形や円や楕円を用いるを用いると都合が良い。最も簡単には、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/4の正方形や、円周が1波長の円を用いる。
【0016】
また、閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/n(nは3以上の自然数)の正n多角形から成る周辺線路と、その正n多角形の中心点と、各辺(頂点を含む)とを、等中心角で結ぶ内部線路とで構成しても良い。この場合には、中心点から発振周波数のn倍の周波数を出力することができる。発振器の数からして、nは3以上12以下、望ましくは、3以上10以下又は、3以上8以下が良い。
【0017】
また、閉線路は、円から成る周辺線路と、その円の中心点と、円周のn等分点(nは3以上の自然数)とを結ぶ内部線路とで構成しても良い。この場合には、中心点から発振周波数のn倍の周波数を出力することができる。
これらの場合において、1次元配列や2次元配列する場合には、2つの閉経路を結合させる2つのポートは、同相、又は、逆相となる位置に設定する必要があるが、そのことを除けば、ポートを設ける位置や数は、任意である。ポートの数や発振器の数は、必ずしも上記のnである必要はないが、対称性からnであることが望ましい。発振器を結合させる位置は、閉線路の頂角でも辺でも良い。また、ポートは、周辺線路上で、等間隔に設ける必要はないが、等間隔とすることが望ましい。閉線路を正多角形又は円で構成する場合において、周辺線路と内部線路との交点に、発振器を結合させても良いし、発振器は、その交点以外の周辺線路上の任意のn等分点に設けても良い。対称性から、n個の発振器とその交点との距離を、全て等しくする任意の点で、発振器を閉線路と結合させることが望ましい。これは、nが4、すなわち、閉線路が正方形の場合にも、当てはまる。すなわち、正方形の角でも、各辺の中点でも、各角から距離の等しい各辺上の点で、発振器と閉経路とを結合させても良い。
【0018】
また、閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/4の正方形から成る周辺線路と、各辺の中点と正方形の中心点とを結ぶ内部線路とで構成しても良い。この場合には、中心点から発振周波数の4倍の周波数を出力することができる。
この時、発振器を接続するポートは、正方形の各辺の中点に設けても良いし、正方形の角に設けても良い。この構成を、一次元配列、二次元配列したものであっても良い。また、正六角形を周辺線路とし、角をポートとして、6ポートとして、角と中心とを結ぶ線路を内部線路とする閉線路であっても良い。この場合には、発振器の発振周波数の6倍の周波数の信号を中心から得ることができる。これらの高調波を用いる場合も、閉線路は、一次元、二次元配列しても良いし、各閉線路の結合に差動発振器を用いても良い。同様に、正n多角形、円を閉線路として用いることができる。閉線路を一次元又は二次元配列する場合には、結合する2つの閉線路の2つのポートにおいて、同相又は逆相となる関係を満たすように、ポートの位置を決定すれば良い。
【0019】
また、上記構成の発振装置を用いてアレイアンテナ装置を構成することも可能である。この場合に、一つの基板に、アンテナ素子と、発振器、閉線路、その他の送信回路を形成することができる。同様に、請求項8、9、10に記載の発振装置を用いたアレイアンテナ装置であって、閉線路の中心点に、送信回路及びアンテナ素子が形成されたアレイアンテナ装置としても良い。
【0020】
また、出力信号の位相を同相とする位相設定器を設けても良い。この場合には、複数の出力信号の位相を全て同相に同期させたり、複数の出力信号の群ごとに、同相に同期させたりすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、閉線路に、増幅器や方向性結合器などの励振方向固定装置を挿入したので、閉線路から成るリング共振器の発振モードを固定することができる。すなわち、閉線路において、励振方向固定装置の伝搬の向きに沿って、各ポートの位相を遅延させる方向に、励振モードを固定することができる。よって、この閉線路によって、複数の同一周波数の発振信号を所定の位相関係で同期して得ることができる。
【0022】
また、閉線路を、一次元配列、二次元配列など、複数配列させることにより、アレイアンテナへの応用が可能となる。また、隣接する閉線路を、差動発振器で結合することで、閉線路間の結合が容易となる。
また、閉線路を、一次元配列、二次元配列など、複数設けて、隣接する閉線路を接続する線路に、移相器を設けることで、得られる発振信号の位相を可変制御することができる。したがって、フェーズドアレイアンテナ装置の指向性制御を容易に行うことが可能となる。
【0023】
また、閉線路を正n多角形又は円形として、n本の回転対称の内部線路を設けて、その中心点から基本周波数のn倍の周波数の信号を得るようにした場合には、リング共振器の共振周波数が使用する周波数よりも低いので、使用周波数で共振させた場合に比べると、高いQ値を得ることができるので効果的である。
【0024】
これらの発振装置をフェーズドアレイアンテナを含むアレイアンテナ装置に用いた場合には、分配器を用いていないので、消費電力を節減できる。また、発熱も少ない。さらに、一つの基板上にアンテナ素子と回路とを集積化することができる。さらに、リング共振器の利得を、発振器の数で決定することができ、一定の出力を得るに当たり、発振器の容量を低減することが可能となる。また、各アンテナ系統へ信号を供給する各線路の長さが、単一の発振器を用いて分配器で分配する場合には、等しくならないので、各アンテナでの送信位相を調整することが必要となるが、本発明では、そのような線路長の不均一性による各種の弊害を排除することができる。
【0025】
また、閉線路を複数設けているので、アレイアンテナに要求される性能により、用いる閉線路を選択することで、要求の程度に応じたアレイアンテナ装置を、同一構成で、提供することが可能となる。例えば、探索範囲を長距離にしたり、指向性の幅を狭くして、方向の分解能を高くする場合には、動作させる閉線路の数を多くし、探索範囲を短距離にしたり、指向性の幅を広くして方向の分解能を低下させる場合には、動作させる閉線路の数を減少させれば良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施例を図を参照しながら説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
実施例1は、閉線路から成るリング共振器が1つの場合の例である。図1は、その平面図、図2は、その断面図である。基板10の上に、マイクロストリップ線路から成る正方形をした閉線路20と、発振器30a、30b、30c、30dから成るICが配設されている。基板の裏面11には、アース導体12が配設されている。正方形の閉線路の1辺の長さaは、発振周波数の波長の1/4である。閉線路20の中には、増幅率1の正相のバッファ増幅器90が挿入されている。各辺の4つの中点は、各発振器30a〜30dのゲート/ベースが接続される4つのポート20a〜20dを構成している。
【0028】
各発振器30a〜30dは、図1に示すように、同一構成のトランジスタから成る発振器である。そして、各ポート20a、20b、20c、20dには、各発振器を構成するトランジスタのゲート/ベースが接続されている。また、ポート20bには、270度の位相設定器40b、ポート20cには、180度の位相設定器40c、ポート20dには、90度の位相設定器40dが接続されている。ポート20aには、位相設定器は接続されていない。ポート20aと、3つの位相設定器40b、40c、40dの出力は、同相となる。
【0029】
この閉線路20の一周長は4aであり、4aを1波長とする周波数f=c/(4a)の周波数を基本波として、共振する。したがって、4つの出力A〜Dは、周波数fで同相の発振信号となる。なお、バッファ増幅器90は、信号波の伝搬方向を右回りに制限するものであり、ポート20aの位相に対して、ポート20b、20c、20dは、90度、180度、270度、位相が遅れるモードで、リング共振器を共振させる作用をする。なお、バッファ増幅器90は正相増幅器とした。バッファ増幅器90を逆相増幅器とした場合には、閉経路20のポート20cと20dとの間の区間にも、もう一つの逆相のバッファ増幅器90を挿入する。この場合には、閉経路20の1周が基本波の2波長となる。このように構成すると、ポート20aの位相に対して、ポート20b、20dは、180度位相が遅れ(したがって、ポート20bと20dは同相)、ポート20cは、同相となる。
【0030】
このようにして、本実施例によれば、分配器を用いることなく、4つの位相同期した、周波数fの発振信号を得ることができる。
なお、本実施例においては、発振器のトランジスタのゲート/ベースを閉線路に接続しているが、ドレイン/コレクタ又はソース/エミッタをコンデンサやインダクタを介して閉線路に接続しても、トランジスタの発振信号が流れる線路と、閉線路とを、容量結合、誘導結合などの電磁的な結合により、結合させても良い。
【実施例2】
【0031】
本実施例は、閉線路を複数、一次元配列したものである。基板上に閉線路を形成することは、実施例1と同一である。図3において、3つの閉線路21、22、23が設けられている。本実施例では、発振器を、"Millimeter-Wave VCOs With Wide Tuning Range and Low Phase Noise, Fully Integrated in a SiGe Bipolar Production Technology," IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol.38,No.2,pp.184-191,Feb.2003に記載された図4に示すような差動発振器としている。差動発振器は、図1に示す発振器をカレントミラー回路で、図4に示すように、並列に接続した回路である。トランジスタTr1のドレイン/コレクタ出力Out1と、トランジスタTr2のドレイン/コレクタ出力Out2は、それぞれ、位相が逆相になっている。
【0032】
一つの閉線路21は、正相増幅のバッファ増幅器91が配設されており、各ポート21a〜21dには、それぞれ、差動発振器31a〜31dの一方のトランジスタのドレイン/コレクタがインダクタを介して接続されている。他の閉線路も同様な構成を有している。そして、隣接する閉線路21と閉線路22間においては、差動発振器31cのカレントミラー回路で構成された一方のトランジスタのドレイン/コレクタがインダクタを介して閉線路21のポート21cに接続され、他方のトランジスタのドレイン/コレクタがインダクタを介して閉線路22のポート22aに接続されている。閉線路22と閉線路23間も同様な構成であり、差動発振器32cにより、両者は結合している。
【0033】
閉線路間は、差動発振器で接続されているので、一方のポートの信号と他方のポートの信号の位相は、180度異なる。したがって、閉線路21のポート21aと、閉線路22のポート22aと、閉線路23のポート23aは、全て、同一位相となる。
【0034】
また、他の差動発振器31d、32d、33dのポート21d、22d、23dに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して180度の位相設定器41d、42d、43dに、それぞれ、接続されている。また、差動発振器31b、32b、33bのポート21b、22b、23bに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、それぞれ、位相設定器を介することなく、そのまま、出力端子となる。さらに、差動発振器31aのポート21aに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、90度の位相設定器41aに接続されており、その位相設定器の出力が、出力発振信号の出力端子となっている。差動発振器33cのポート23cに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、270度の位相設定器43cに接続されており、その位相設定器の出力が、出力発振信号の出力端子となっている。この構成により、8個の同相で位相同期した周波数fの発振信号を得ることができる。なお、閉経路を結合する発振器だけを差動発振器として、他の発振器を、差動型でない発振器としても良い。
【0035】
また、バッファ増幅器91、92、93を逆相増幅器として、ポート21cと21dの間の経路、ポート22cと22dの間の経路、ポート23cと23dの間の経路にも、もう一つの逆相のバッファ増幅器91、92、93を、それぞれ、挿入しても良い。この場合には、全ての差動増幅器発振器31a〜31d、32b〜32d、33b〜33dを、差動ではない発振器で構成することになる。上記したように、ポート21a、21cは、同相、ポート22a、22cも、同相となるため、共通の1つの発振器で接続することができる。この場合には、位相設定器41a、43cを、270度の位相設定器として、位相設定器41d、42d、43dは除去する。この場合には、ポート21aでの信号をcos(ωt)とする時、8個の出力は、-sin( ωt)となる。
【0036】
なお、本実施例においては、差動発振器の並列したトランジスタのそれぞれのドレイン/コレクタを閉線路や、位相設定器に接続しているが、それぞれのトランジスタのゲート/ベース又はソース/エミッタをコンデンサを介して閉線路に接続しても、トランジスタの発振信号が流れる線路と、閉線路とを、容量結合、誘導結合などの電磁的な結合により、結合させても良い。以下の全実施例においても、差動発振器、又は、差動型ではない発振器と、閉線路との結合においても同様である。
【実施例3】
【0037】
本実施例は、図5に示す構成をとり、発振信号の初期位相を、0 、θ、2 θとするもので、信号間の位相差をθとしたものである。そして、この位相差θを可変設定できるようにしている。
【0038】
実施例2において、閉線路間を接続する差動発振器31cと閉線路22のポート22aとの間に移相器51を設け、差動発振器32cと閉線路23のポート23aとの間に移相器52を設けたことが特徴である。また、差動発振器31a、33cの閉線路21、23のポート21a、23cに、接続される側のトランジスタとは異なるトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、それぞれ、50Ωに線路抵抗に終端されている。これにより、2つの-sin( ωt)の信号と、2つの-sin( ωt-θ) の信号と、2つの-sin( ωt-2θ) の位相同期した信号が得られる。この配列や、さらに、閉線路と周辺の差動発振器など組を4つ以上、一次元配列することで、本実施例の装置を、一次元方向に指向性を制御できるフェーズドアレイアンテナ装置の搬送波発生装置に用いることができる。
【0039】
この実施例においても、閉経路を結合する発振器だけを差動発振器として、他の発振器を、差動型でない発振器としても良い。また、バッファ増幅器91、92、93を逆相の増幅器として、全ての差動増幅器発振器を差動ではない発振器としても良い。この場合にも、同様な信号が得られる。
【実施例4】
【0040】
本実施例は、図6に示すように、閉線路を2次元配列したものである。すなわち、実施例2のx方向の一次元配列を、それに垂直なy方向に、繰り返し、y軸方向にも、各x系統の閉線路を、結合させたものである。閉線路21と22とから成るx方向に配列された第1系統は、実施例2と同一である。また、位相設定器71a、閉線路61、差動発振器81a、81c、81d、位相設定器71d、閉線路62、差動発振器82c、82d、位相設定器72dから成るx方向に配列された第2系統も、実施例2と同一構成である。
【0041】
本実施例では、閉線路21と閉線路61とが、差動発振器31dで接続され、閉線路22と閉線路62とが、差動発振器32dで接続されている。各発振信号の出力は、それぞれ、同様な関係にある。差動発振器31b、32bに接続される位相設定器41b、42bの設定位相は、90度であり、差動発振器31a、81aに接続される位相設定器41a、71aの設定位相は、それぞれ、180度であり、差動発振器81d、82dに接続される位相設定器71d、72dの設定位相は、それぞれ、270度である。この場合、8個の出力信号は、全て、cos(ωt)となる。
【0042】
また、上記したように、各閉経路において、その中心に対して点対称の位置に、逆相のバッファ増幅器91、92、101、102を2つ挿入して、全差動発振器を全て差動型でない発振器を用いることも可能である。その場合には、位相設定器41a、71aは不要であり、位相設定器41b、42b、71d、82dは、180度の位相設定器となる。この場合には、8個の出力は、全て、cos(ωt)となる。
【実施例5】
【0043】
発振器の周波数f0 の4倍の周波数4f0 を発生するようにした実施例である。図7に示すように、閉線路は、第1行に配列された閉線路W11、W12と、第2行に配列された閉線路W21、W22の2行2列のマトリックスに配列されている。閉線路W11は、実施例1〜4と異なり、正方形の閉線路の周辺線路210の各辺の中点と正方形の中心とを結ぶ十字形状の内部線路200を有している。各閉線路には、正相のバッファ増幅器B11、B12、B21、B22が挿入されている。行方向(x方向)には、閉線路W11と閉線路W12とは、差動発振器D12で結合され、閉線路W21と閉線路W22とは、差動発振器D22で結合されている。一方、列方向(y方向)には、閉線路W11と閉線路W21とは、差動発振器E21と移相器Q21により結合されており、閉線路W12と閉線路W22とは、差動発振器E22と移相器Q22により結合されている。そして、閉線路間の結合に用いられている差動発振器を除く全ての差動発振器D11、D13、D21,D23、E11、E12、E31、E32の閉線路に接続されている側のトランジスタとは異なる他方のトランジスタのドレイン/コレクタは、全て、50Ωの線路抵抗で終端されている
【0044】
内部線路200の1辺の長さは(辺の中点と中心点とを結ぶ辺)の長さは、a/2である。ただし、aは、閉線路の周辺線路の1辺の長さである。各ポート間の周辺線路における経路長は、aであるから、周波数4f0 の高調波においては、一波長である。したがって、各ポートL111、L112、L113、L114では、周波数4f0 の高調波の位相は同相となり、発振信号はcos(4 ωt)となる。ただし、ω=2πf0 である。また、中心点R11と各ポート間の距離は、λ/2となるので、中心点R11の信号の位相は、各ポートの信号位相に対して、180度遅れる。よって、中心点R11の信号は、−cos(4 ωt)となる。
【0045】
他方、周波数f0 の基本波に対しては、各ポートでの信号の位相が0、π/2、π、3π/2であり、中心点R11では、これらの位相に、共通にλ/8の内部線路による位相遅れπ/4を減じた値を位相とする余弦波の和となる。これは、零となる。同様に、第2高調波2f0 の場合には、0、π、0、πの各ポートの位相に、共通にλ/4の内部線路による位相遅れπ/2を減じた値を位相とする余弦波の和となる。この和も対称性から零となる。第3高調波3f0 の場合には、0、3π/2、π、π/2の各ポートの位相に、共通に、3λ/8の内部線路による位相遅れ3π/4を減じた値を位相とする余弦波の和となる。この場合も、位相の対称性から、中心点R11におけるこの第3高調波成分は0となる。結局、第4高調波成分のみが、中心点R11に現れることになる。
【0046】
このようにして、閉線路W11の中心点R11と、閉線路W12の中心点R12からは、−cos(4 ωt)の発振信号が得られる。
【0047】
一方、列方向(y方向)には、移相器Q21、Q22を介して結合されているので、それによる遅れ位相量( θ) により、その出力が入力するポートL212、L222の信号はsin(ωt-θ) となる。すなわち、第2行の閉線路W21、W22における発振信号は、第1行の閉線路W11、W12における発振信号に対して位相がθだけ遅れたものとなる。したがって、閉線路W21、W22の中心点R21、R22での発振信号は、−cos(4 ωt-4θ) となる。このようにして、位相差が4θの信号を得ることができる。y方向に、これらの構成の閉線路を多数設けることで、3以上の位相差4θを有する発振信号2つづつ得ることができる。これにより、一次元方向に指向性を変更できるフェーズドアレイアンテナ装置を構成できる。閉線路は2列に構成されいるので、アンテナ素子も2列に構成でき、放射電力を増大させることができる。もちろん、行方向(x方向)にも、同様な閉線路を多数設けて、アンテナ素子を多数列形成することで、放射電波の電力を大きくすることができる。
【0048】
この実施例においても、閉線路間の結合だけに、差動発振器を用いて、他の差動増幅器発振器は、差動型ではない通常の発振器を用いても良い。さらに、上述したように、バッファ増幅器B11〜B22を、逆相増幅器として、閉経路の点対称の位置に2つ設けた場合には、全ての発振器を差動型ではない発振器で構成することも可能である。
本実施例では、リング共振器内の発振周波数はf0 として、用いる発振信号の周波数を4f0 としている。したがって、共振周波数は、用いる信号よりも低周波であるので、共振のQ値を大きくすることができる。
【実施例6】
【0049】
本実施例は、図7の実施例5をさらに発展させたものである。x方向に配列された系統を、y方向に沿って、繰り返して配列させたものであり、各系統をy方向に沿っても結合させたものである。実施例6の発振装置は、3行3列の閉線路を有している。閉線路W11と接続される差動発振器D12と、閉線路W12との間に、移相器P12が設けられており、閉線路W12と接続される差動発振器D13と、閉線路W13との間に、移相器P13が設けられている。同様に、閉線路W21と接続される差動発振器D22と、閉線路W22との間に、移相器P22が設けられており、閉線路W22と接続される差動発振器D23と、閉線路W23との間に、移相器P23が設けられている。同様に、閉線路W31と接続される差動発振器D32と、閉線路W32との間に、移相器P32が設けられており、閉線路W32と接続される差動発振器D33と、閉線路W33との間に、移相器P33が設けられている。
【0050】
また、閉線路W11と接続される差動発振器E21と、閉線路W21との間に、移相器Q21が設けられており、閉線路W21と接続される差動発振器E31と、閉線路W31との間に、移相器Q31が設けられている。同様に、閉線路W12と接続される差動発振器E22と、閉線路W22との間に、移相器Q22が設けられており、閉線路W22と接続される差動発振器E32と、閉線路W32との間に、移相器Q32が設けられている。同様に、閉線路W13と接続される差動発振器E23と、閉線路W23との間に、移相器Q23が設けられており、閉線路W23と接続される差動発振器E33と、閉線路W33との間に、移相器Q33が設けられている。
【0051】
列方向に配列された6個の移相器P12〜P33は、遅れ位相角θが設定される。また、行方向に配列された6個の移相器Q21、Q22、Q23、Q31、Q32、Q33には、位相角(0度)が設定される。すなわち、閉線路W12の信号の位相は、移相器P12によりθだけ位相が遅延しているので、閉線路W22には、そのままの第2列の閉線路W12の信号を、閉線路W22に加えれば良いためである。同様に、閉線路W32の信号は、移相器P32により位相がθだけ遅延しているので、閉線路W22の信号をそのまま、閉線路W32に印加すれば良い。閉線路W13の信号を閉線路W23に印加する場合も、閉線路W23の信号を閉線路W33に印加する場合も同様である。
【0052】
この構成により、第2列の閉線路W12、W22、W32の中心点の位相は、移相器P12、P22、P32により、第1列の閉線路W11、W21、W31の中心点の信号の位相に対して、4θだけ位相が遅れることになる。同様に、第3列の閉線路W13、W23、W33の中心点の信号は、移相器P13、P23、P33により、第2列の閉線路W12、W22、W32の中心点の信号に対して、4θだけ位相が遅れることになる。このように構成することでx軸方向に指向性を変化させることができる。
【0053】
また、y方向に指向性を変化させる場合には、行方向(x方向)に配列されている第2行の移相器Q21、Q22、Q23と、第3行の移相器Q31、Q32、Q33に、遅れ位相θを設定する。その一方、列方向(y方向)に配列されている第2列の移相器P12、P22、P32と、第3列の移相器P13、P23、P33に設定する位相は0とする。これにより、y方向に指向性を変化させることができる。
【0054】
上記の実施例では、リング共振器に接続される各発振器の発振周波数f0 の4倍の周波数4f0 の発振信号を得るために、閉線路を正方形としているが、閉線路を、図9に示すように、正六角形の周辺線路Tと、各角S1〜S6と中心点Rとを接続する線路を内部線路U1〜U6としても良い。そして、各角S1〜S6、閉経路の周辺線路Tの各辺の中点又は同一比率の内分点を発振器を接続するポートとする。各角での位相の対称性から、基本波及び第2〜第5高調波の中心点Rでの合成信号は、零となる。第6高調波では、一辺が一波長に等しく、角の中心点の距離も一波長に等しいので、中心点では、全ての信号が同相で合成されることになる。したがって、中心点においては、周波数6f0 の発振信号を得ることができる。このような形状を複数、一次元配列、二次元配列させて、フェーズドアレイアンテナ装置を構成しても良い。
【0055】
また、一般的には、図9の構成を、正n多角形(nは3以上の自然数)の閉線路に拡張しても良い。正n多角形の周辺線路をn等分する点での位相を考える。このn等分点は、必ずしも正多角形の頂角である必要はない。正多角形であるので、n等分点は、一定の回転角毎の回転対称となる。このn等分点に任意点を第i点とすると、第i点におけるの基本波の電圧波形は、次式で表される。
sin(ωt-2 πi/n) …(1)
ただし、i=0,1,…,n-1、ωは基本波の各周波数、tは時刻である。第k高調波は、周辺線路の1周の位相回転角は、2πkであるので、第i点における電圧波形は、次式で表現される。
sin(ωkt-2πki/n) …(2)
ただし、k=1,2,…,nである。
【0056】
閉線路の中心点Rでの位相は、(2) 式のiに関する和で表される。周辺線路の第i点と中心点Rの線路上の距離は、対称性から、iに関係なく、等しいので、その間にけおける第k高調波kの位相差をθk をとする。θk は、i には関係なく一定である。第k高調波の中心点Rでの電圧Vは、次式で表される。
V=Σi {sin(ωkt-2πki/n- θk ) } …(3)
ただし、Σi は、 iに関する和を意味する。Vは、2 π/(n/k)単位で位相回転をさせた単位ベクトルの和の射影である。n/k ≧1 であるので、2 πi/(n/k) は、2 πの等分点の位相を表す。
【0057】
閉線路の対称性からk ≠n の時には、S=0 …(4)
k=n の時には、S=n ・sin(ωnt- θk)…(5)
したがって、中心点Rでは、第n高調波のみが現れることになる。
【0058】
閉経路が円の場合でも、同様である。円をn等分する点と、円の中心との周辺線路及び内部線路上の経路距離は等しい。n等分点を周辺線路と内部線路との交点に選択すると、距離は半径になるので、全てのn等分点と中心との距離は等しい。この条件が成立するので、上記の(1) 〜(5) 式は、閉経路が円であっても成立することは明らかである。
このようにして、正n多角形や円を閉経路とする場合には、その中心から閉経路の共振周波数のn倍の周波数を取り出すことができる。
【0059】
フェーズドアレイアンテナ装置の構成を次に説明する。図8の閉線路W22に接続される差動発振器D23、移相器P22の組からなる集積回路を製造する。また、これに、バッファ増幅器を組み込んだ集積回路も作成する。この集積回路IC1〜IC7等を、図10、図11に示すように、基板10上に形成されたマイクロストリップ線路から成る閉線路W1、W2に、90度の角度に配置して、閉線路の各ポートに接続する。なお、IC1、IC3は、正相のバッファ増幅器が組み込まれた集積回路である。そして、閉線路W1、W2の、それぞれの中心点R1、R2を、基板10の裏面側に、ビアホールにより導通させる。また、基板10は多層基板で中間部には、アース導体12が設けられており、閉線路W1、W2の中心部に相当する部分にだけ、アース導体が存在しない窓13a、13bが設けられている。そして、この窓領域に中心点R1、R2にアンテナ素子AT1、AT2を設ける。また、アンテナ素子AT1、AT2の前段に、電気的に接続する変調器や送信器などを組み込んだ集積回路を中心点R1、R2に設けても良い。
【0060】
このような構成を、図5に示すような一次元配列させたり、図8に示すような二次元配列させることで、各アンテナ素子に対する給電線路を等しく、且つ、分配器を用いずに、アレイアンテナや、フェーズドアレイアンテナ装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、指向性を制御できるフェーズドアレイアンテナ装置に用いることかできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の具体的な実施例1に係る発振装置を示した回路図。
【図2】実施例1の発振装置の構造を示した断面図。
【図3】本発明の具体的な実施例2に係る発振装置を示した回路図。
【図4】実施例装置で用いられる差動発振器を示した回路図。
【図5】本発明の具体的な実施例3に係る発振装置を示した回路図。
【図6】本発明の具体的な実施例4に係る発振装置を示した回路図。
【図7】本発明の具体的な実施例5に係る発振装置を示した回路図。
【図8】本発明の具体的な実施例6に係る発振装置を示した回路図。
【図9】本発明の他の閉線路の構成を示した平面図。
【図10】フェーズドアレイアンテナ装置の基板の表面の閉線路と集積回路との配置関係を示した 斜視図。
【図11】同フェーズドアレイアンテナ装置の基板の断面図。
【符号の説明】
【0063】
20,21、22、23、61、62…閉線路
W11〜W33…閉線路
30a〜30c…差動発振器
40a〜40d、41a〜43d、…位相設定器
20a〜20d、21a〜21d、22a〜22d、23a〜23d…ポート
90〜93、101、102…バッファ増幅器
D11〜D33、E11〜E43…差動発振器
P12〜P33、Q21〜Q33…位相器
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発振器の発振信号の位相を同期させた発振装置及びアレイアンテナ装置に関する。本発明は、指向性を可変制御できるフェーズドアレイアンテナの各アンテナへの搬送波の位相を制御するのに用いることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フェーズドアレイアンテナ装置を開示している。そのフェーズドアレイアンテナ装置では、複数の送信モジュールを持ち、搬送波の増幅と位相を可変している。各アンテナに供給する搬送波は、単一の発振器で生成されて、分配器で各アンテナ系統に分配された後、各アンテナに供給されるようになっている。各アンテナに供給される搬送波の位相差を制御することにより、アンテナの指向性を変化させることができる。
【0003】
非特許文献1は、リング共振器を用いたプッシュ発振器を開示している。この文献では、正方形状のマイクロストリップ線路から成るリング共振器には、2つの直交する共振モードが存在し、リング共振器を4つのポートで励振する4つの発振器であり、自動的に位相関係が決定されることが開示されている。また、4つの発振器からの周波数f0を励振することで、周辺伝送路の各辺の中点間を結び十字形状に交差した線路の交点から周波数4f0 の発振信号が得られることが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−269569
【非特許文献1】Hai Xiao, Takayuki Tanaka, Masayoshi Aikawa, "Basic Behavoir of Quadruple-Push Oscillator Using Ring Resonator." IEEE Trans. Electron.,Vol.E88-C,No.7,July 2005 。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のフェーズドアレイアンテナ装置では、発振器が1個あり、この発振器の出力する信号をアンテナ系統の数に分配して、増幅又は移相器により位相を変化させている。信号を分配させているために、発振器は大きな電力を発生させなければならない。これは消費エネルギーを増大させるという問題だけでなく、放熱の問題も引き起こす。また、各アンテナ系統のモジュールに同相で分配するためには、搬送波を供給する伝送路の長さを、各アンテナ系統で、等しくする必要があり、実際には、これを行うことはスペース的に容易ではない。
【0006】
また、ミリ波のような超高周波においても、SiGeICの登場によって高集積化できる可能性がでてきた。これにより、高周波回路部をワンチップに収納できる可能性がでてきた。このような状況では、各ICは発振器と増幅器や移相器を備えたICとなる可能性がある。すると、これらのICをアレー配置することで、アンテナからの出力を空間合成するなどの方法も現実的となってきた。しかし、これには、各発振器の同期を取る必要があるが、分配器を用いた分配では、上記のような問題がある。本発明はこのような用途に利用できる。
【0007】
非特許文献1に記載の技術は、1つのリング共振器に4つの発振器を取り付けて発振させる技術である。リング共振器には、cosωt とsinωtとの2つの直交するモードがあり、4つの発振器の発振信号の位相は、自動的に90度ずれた位相関係になる。正方形の伝送路の各辺の中点に設けられた4つのポートでの発振信号の位相は、時計回りに90度づつ位相が進むモードと、これとは逆に、反時計回りに90度づつ位相が進むモードとが存在する。しかし、このモードは、何れか一方に決定することはできず、発振器の電源を投入した時の初期位相により、何れかのモードに決定される。したがって、この非特許文献に開示されているリング共振器を、アレイアンテナ装置に用いることはできない。
【0008】
また、非特許文献1は、得られる信号は4個に限定されるために、アンテナの数が、これ以上に多くなると、この方式は用いることができない。また、非特許文献1では、正方形の伝送路の中心点から発振器の発振周波数の4倍の周波数の発振信号が得られることが開示されているが、この信号は1個だけであるから、この4倍の発振周波数の発振信号を、分配器を用いることなく、フェーズドアレイアンテナ装置に供給することはできない。したがって、この場合にも、上記のように発振器の出力を大きくする必要があり、消費電力と発熱が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、分配器を用いることなく、位相同期した多数の発振信号を供給することができるようにすることである。
また、アレイアンテナやフェーズドアレイアンテナに、搬送波を供給し易い構造の発振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の発振周波数を同期させた発振装置において、複数の発振器と、これらの複数の発振器を、閉線路の各ポートに結合して、線路で結合したリング共振器と、リング共振器の線路に挿入された励振位相を一方向に固定する励振方向固定装置と、から成る発振装置である。
この励振方向固定装置としては、単一方向の増幅器、方向性結合器など、信号の伝搬方向を単方向とするものであれば、任意のものが使用できる。増幅器の場合には、正相増幅器を、方向性結合器であれば、位相反転のない結合器を用いる。位相反転のない励振方向固定装置であれば、数は、1つ又は2以上であっても良い。また、偶数個pの逆相増幅器や位相反転のある方向性結合器を、閉線路においてその中心点に対して回転対称の位置に設けても良い。この場合には、閉線路の1周がp波長となり、1周の位相は2pπである。また、発振器を閉線路の各ポートに接続する方法には、発振器を構成するトランジスタのゲート/ベースを、閉線路のポートにコンデンサを介して接続する方法や、トランジスタのドレイン/コレクタ又はソース/エミッタを、閉線路の各ポートにコンデンサやインダクタを介して接続する方法がある。その他、容量結合や誘導結合により、発振器を構成するトランジスタと、閉線路と電磁気的に結合させても良い。 要するに、発振器と閉線路とが、電磁気的に結合し、発振器の発振信号が閉線路を伝搬するように結合していれば良く、その結合方法は、任意である。
【0011】
一つの閉線路に発振器が接続されるポートの形成位置は、閉線路の中心点に対して回転対称(等間隔)の位置に設けるのが望ましいが、必ずしも回転対称(等間隔)である必要はない。一つの閉線路におけるポートの数は、任意であるが、各ポート間の位相差はπ/2であり、ポートの数は、一つの閉線路当たり4点であることが望ましい。また、閉線路は、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路を用いることができるが、閉線路は、全周長が発振周波数の1波長のマイクロストリップ線路から成ることが望ましい。
【0012】
閉線路の数は、単数、複数、任意であるが、複数設けた場合には、隣接する2つの閉線路において同相又は逆相の関係にある2つのポートに対して、共通の1つの発振器のトランジスタを結合するのが望ましい。これにより、2つの閉線路を連結することができる。すなわち、励振方向固定装置を位相反転のないものを用いた場合には、その2つのポート間が逆相となるので、共通の発振器は、差動発振器で構成され、隣接する閉線路の2つのポートのそれぞれに対して、差動発振器のそれぞれのトランジスタを結合するようにしても良い。この場合には、隣接する2つの閉線路の対応するポートにおいて、発振信号を同相で同期させることができる。また、2つの閉線路を連結する発振器は、励振方向固定装置として、閉線路を2分するそれぞれの区間に、一つの逆相増幅器を、それぞれ、設ける場合には、上記の2つのポートは同相となるので、差動型でない発振器を用いる。これにより、隣接する2つの閉線路の対応するポートにおいて、発振信号を同相で同期させることができる。
【0013】
本発明は、複数の発振信号において、位相は固定的に同期したものでも、位相差を変化させて、同期したものであっても良い。したがって、位相を変化させる発振信号を得る場合には、隣接する閉線路の2つのポートを接続する線路に位相を推移させる移相器を設けることが望ましい。
【0014】
複数の閉線路は、2次元配列されていても良い。このアレイ配設から、アレイアンテナへの信号の供給が容易となる。
【0015】
閉線路の形状は、円、楕円、正方形、菱形、長方形、平行四辺形、正三角形、正五角形、正六角形、正八角形、正多角形など任意である。多角形の場合、ポートを設ける位置は頂角でも辺でも良い。設けるポート間の線路長は、必ずしもそうである必要はないが、等しいことが望ましい。一般的には、閉線路をn(nは3以上の自然数)等分し、その等分点に発振器を結合させるが望ましい。この場合には、ポート数がmである場合に、信号の位相差は、2π/mとなるので、2π/m単位の位相設定器が必要となる。閉線路を一つの方向に一次元配列させる場合には、隣接する2つの閉線路における隣接する2つのポートが逆相又は同相となる関係を満たすようにポートの位置を決定する。また、閉線路を2次元配列させる場合には、直交する2つの方向に、それぞれ、隣接する2つの閉線路における隣接する2つのポートが逆相又は同相となる関係を満たす位置にポートを設定する。たとえば、閉線路を偶数多角形や円や楕円を用いるを用いると都合が良い。最も簡単には、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/4の正方形や、円周が1波長の円を用いる。
【0016】
また、閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/n(nは3以上の自然数)の正n多角形から成る周辺線路と、その正n多角形の中心点と、各辺(頂点を含む)とを、等中心角で結ぶ内部線路とで構成しても良い。この場合には、中心点から発振周波数のn倍の周波数を出力することができる。発振器の数からして、nは3以上12以下、望ましくは、3以上10以下又は、3以上8以下が良い。
【0017】
また、閉線路は、円から成る周辺線路と、その円の中心点と、円周のn等分点(nは3以上の自然数)とを結ぶ内部線路とで構成しても良い。この場合には、中心点から発振周波数のn倍の周波数を出力することができる。
これらの場合において、1次元配列や2次元配列する場合には、2つの閉経路を結合させる2つのポートは、同相、又は、逆相となる位置に設定する必要があるが、そのことを除けば、ポートを設ける位置や数は、任意である。ポートの数や発振器の数は、必ずしも上記のnである必要はないが、対称性からnであることが望ましい。発振器を結合させる位置は、閉線路の頂角でも辺でも良い。また、ポートは、周辺線路上で、等間隔に設ける必要はないが、等間隔とすることが望ましい。閉線路を正多角形又は円で構成する場合において、周辺線路と内部線路との交点に、発振器を結合させても良いし、発振器は、その交点以外の周辺線路上の任意のn等分点に設けても良い。対称性から、n個の発振器とその交点との距離を、全て等しくする任意の点で、発振器を閉線路と結合させることが望ましい。これは、nが4、すなわち、閉線路が正方形の場合にも、当てはまる。すなわち、正方形の角でも、各辺の中点でも、各角から距離の等しい各辺上の点で、発振器と閉経路とを結合させても良い。
【0018】
また、閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/4の正方形から成る周辺線路と、各辺の中点と正方形の中心点とを結ぶ内部線路とで構成しても良い。この場合には、中心点から発振周波数の4倍の周波数を出力することができる。
この時、発振器を接続するポートは、正方形の各辺の中点に設けても良いし、正方形の角に設けても良い。この構成を、一次元配列、二次元配列したものであっても良い。また、正六角形を周辺線路とし、角をポートとして、6ポートとして、角と中心とを結ぶ線路を内部線路とする閉線路であっても良い。この場合には、発振器の発振周波数の6倍の周波数の信号を中心から得ることができる。これらの高調波を用いる場合も、閉線路は、一次元、二次元配列しても良いし、各閉線路の結合に差動発振器を用いても良い。同様に、正n多角形、円を閉線路として用いることができる。閉線路を一次元又は二次元配列する場合には、結合する2つの閉線路の2つのポートにおいて、同相又は逆相となる関係を満たすように、ポートの位置を決定すれば良い。
【0019】
また、上記構成の発振装置を用いてアレイアンテナ装置を構成することも可能である。この場合に、一つの基板に、アンテナ素子と、発振器、閉線路、その他の送信回路を形成することができる。同様に、請求項8、9、10に記載の発振装置を用いたアレイアンテナ装置であって、閉線路の中心点に、送信回路及びアンテナ素子が形成されたアレイアンテナ装置としても良い。
【0020】
また、出力信号の位相を同相とする位相設定器を設けても良い。この場合には、複数の出力信号の位相を全て同相に同期させたり、複数の出力信号の群ごとに、同相に同期させたりすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、閉線路に、増幅器や方向性結合器などの励振方向固定装置を挿入したので、閉線路から成るリング共振器の発振モードを固定することができる。すなわち、閉線路において、励振方向固定装置の伝搬の向きに沿って、各ポートの位相を遅延させる方向に、励振モードを固定することができる。よって、この閉線路によって、複数の同一周波数の発振信号を所定の位相関係で同期して得ることができる。
【0022】
また、閉線路を、一次元配列、二次元配列など、複数配列させることにより、アレイアンテナへの応用が可能となる。また、隣接する閉線路を、差動発振器で結合することで、閉線路間の結合が容易となる。
また、閉線路を、一次元配列、二次元配列など、複数設けて、隣接する閉線路を接続する線路に、移相器を設けることで、得られる発振信号の位相を可変制御することができる。したがって、フェーズドアレイアンテナ装置の指向性制御を容易に行うことが可能となる。
【0023】
また、閉線路を正n多角形又は円形として、n本の回転対称の内部線路を設けて、その中心点から基本周波数のn倍の周波数の信号を得るようにした場合には、リング共振器の共振周波数が使用する周波数よりも低いので、使用周波数で共振させた場合に比べると、高いQ値を得ることができるので効果的である。
【0024】
これらの発振装置をフェーズドアレイアンテナを含むアレイアンテナ装置に用いた場合には、分配器を用いていないので、消費電力を節減できる。また、発熱も少ない。さらに、一つの基板上にアンテナ素子と回路とを集積化することができる。さらに、リング共振器の利得を、発振器の数で決定することができ、一定の出力を得るに当たり、発振器の容量を低減することが可能となる。また、各アンテナ系統へ信号を供給する各線路の長さが、単一の発振器を用いて分配器で分配する場合には、等しくならないので、各アンテナでの送信位相を調整することが必要となるが、本発明では、そのような線路長の不均一性による各種の弊害を排除することができる。
【0025】
また、閉線路を複数設けているので、アレイアンテナに要求される性能により、用いる閉線路を選択することで、要求の程度に応じたアレイアンテナ装置を、同一構成で、提供することが可能となる。例えば、探索範囲を長距離にしたり、指向性の幅を狭くして、方向の分解能を高くする場合には、動作させる閉線路の数を多くし、探索範囲を短距離にしたり、指向性の幅を広くして方向の分解能を低下させる場合には、動作させる閉線路の数を減少させれば良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施例を図を参照しながら説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
実施例1は、閉線路から成るリング共振器が1つの場合の例である。図1は、その平面図、図2は、その断面図である。基板10の上に、マイクロストリップ線路から成る正方形をした閉線路20と、発振器30a、30b、30c、30dから成るICが配設されている。基板の裏面11には、アース導体12が配設されている。正方形の閉線路の1辺の長さaは、発振周波数の波長の1/4である。閉線路20の中には、増幅率1の正相のバッファ増幅器90が挿入されている。各辺の4つの中点は、各発振器30a〜30dのゲート/ベースが接続される4つのポート20a〜20dを構成している。
【0028】
各発振器30a〜30dは、図1に示すように、同一構成のトランジスタから成る発振器である。そして、各ポート20a、20b、20c、20dには、各発振器を構成するトランジスタのゲート/ベースが接続されている。また、ポート20bには、270度の位相設定器40b、ポート20cには、180度の位相設定器40c、ポート20dには、90度の位相設定器40dが接続されている。ポート20aには、位相設定器は接続されていない。ポート20aと、3つの位相設定器40b、40c、40dの出力は、同相となる。
【0029】
この閉線路20の一周長は4aであり、4aを1波長とする周波数f=c/(4a)の周波数を基本波として、共振する。したがって、4つの出力A〜Dは、周波数fで同相の発振信号となる。なお、バッファ増幅器90は、信号波の伝搬方向を右回りに制限するものであり、ポート20aの位相に対して、ポート20b、20c、20dは、90度、180度、270度、位相が遅れるモードで、リング共振器を共振させる作用をする。なお、バッファ増幅器90は正相増幅器とした。バッファ増幅器90を逆相増幅器とした場合には、閉経路20のポート20cと20dとの間の区間にも、もう一つの逆相のバッファ増幅器90を挿入する。この場合には、閉経路20の1周が基本波の2波長となる。このように構成すると、ポート20aの位相に対して、ポート20b、20dは、180度位相が遅れ(したがって、ポート20bと20dは同相)、ポート20cは、同相となる。
【0030】
このようにして、本実施例によれば、分配器を用いることなく、4つの位相同期した、周波数fの発振信号を得ることができる。
なお、本実施例においては、発振器のトランジスタのゲート/ベースを閉線路に接続しているが、ドレイン/コレクタ又はソース/エミッタをコンデンサやインダクタを介して閉線路に接続しても、トランジスタの発振信号が流れる線路と、閉線路とを、容量結合、誘導結合などの電磁的な結合により、結合させても良い。
【実施例2】
【0031】
本実施例は、閉線路を複数、一次元配列したものである。基板上に閉線路を形成することは、実施例1と同一である。図3において、3つの閉線路21、22、23が設けられている。本実施例では、発振器を、"Millimeter-Wave VCOs With Wide Tuning Range and Low Phase Noise, Fully Integrated in a SiGe Bipolar Production Technology," IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol.38,No.2,pp.184-191,Feb.2003に記載された図4に示すような差動発振器としている。差動発振器は、図1に示す発振器をカレントミラー回路で、図4に示すように、並列に接続した回路である。トランジスタTr1のドレイン/コレクタ出力Out1と、トランジスタTr2のドレイン/コレクタ出力Out2は、それぞれ、位相が逆相になっている。
【0032】
一つの閉線路21は、正相増幅のバッファ増幅器91が配設されており、各ポート21a〜21dには、それぞれ、差動発振器31a〜31dの一方のトランジスタのドレイン/コレクタがインダクタを介して接続されている。他の閉線路も同様な構成を有している。そして、隣接する閉線路21と閉線路22間においては、差動発振器31cのカレントミラー回路で構成された一方のトランジスタのドレイン/コレクタがインダクタを介して閉線路21のポート21cに接続され、他方のトランジスタのドレイン/コレクタがインダクタを介して閉線路22のポート22aに接続されている。閉線路22と閉線路23間も同様な構成であり、差動発振器32cにより、両者は結合している。
【0033】
閉線路間は、差動発振器で接続されているので、一方のポートの信号と他方のポートの信号の位相は、180度異なる。したがって、閉線路21のポート21aと、閉線路22のポート22aと、閉線路23のポート23aは、全て、同一位相となる。
【0034】
また、他の差動発振器31d、32d、33dのポート21d、22d、23dに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して180度の位相設定器41d、42d、43dに、それぞれ、接続されている。また、差動発振器31b、32b、33bのポート21b、22b、23bに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、それぞれ、位相設定器を介することなく、そのまま、出力端子となる。さらに、差動発振器31aのポート21aに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、90度の位相設定器41aに接続されており、その位相設定器の出力が、出力発振信号の出力端子となっている。差動発振器33cのポート23cに接続されていない側のトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、270度の位相設定器43cに接続されており、その位相設定器の出力が、出力発振信号の出力端子となっている。この構成により、8個の同相で位相同期した周波数fの発振信号を得ることができる。なお、閉経路を結合する発振器だけを差動発振器として、他の発振器を、差動型でない発振器としても良い。
【0035】
また、バッファ増幅器91、92、93を逆相増幅器として、ポート21cと21dの間の経路、ポート22cと22dの間の経路、ポート23cと23dの間の経路にも、もう一つの逆相のバッファ増幅器91、92、93を、それぞれ、挿入しても良い。この場合には、全ての差動増幅器発振器31a〜31d、32b〜32d、33b〜33dを、差動ではない発振器で構成することになる。上記したように、ポート21a、21cは、同相、ポート22a、22cも、同相となるため、共通の1つの発振器で接続することができる。この場合には、位相設定器41a、43cを、270度の位相設定器として、位相設定器41d、42d、43dは除去する。この場合には、ポート21aでの信号をcos(ωt)とする時、8個の出力は、-sin( ωt)となる。
【0036】
なお、本実施例においては、差動発振器の並列したトランジスタのそれぞれのドレイン/コレクタを閉線路や、位相設定器に接続しているが、それぞれのトランジスタのゲート/ベース又はソース/エミッタをコンデンサを介して閉線路に接続しても、トランジスタの発振信号が流れる線路と、閉線路とを、容量結合、誘導結合などの電磁的な結合により、結合させても良い。以下の全実施例においても、差動発振器、又は、差動型ではない発振器と、閉線路との結合においても同様である。
【実施例3】
【0037】
本実施例は、図5に示す構成をとり、発振信号の初期位相を、0 、θ、2 θとするもので、信号間の位相差をθとしたものである。そして、この位相差θを可変設定できるようにしている。
【0038】
実施例2において、閉線路間を接続する差動発振器31cと閉線路22のポート22aとの間に移相器51を設け、差動発振器32cと閉線路23のポート23aとの間に移相器52を設けたことが特徴である。また、差動発振器31a、33cの閉線路21、23のポート21a、23cに、接続される側のトランジスタとは異なるトランジスタのドレイン/コレクタは、インダクタを介して、それぞれ、50Ωに線路抵抗に終端されている。これにより、2つの-sin( ωt)の信号と、2つの-sin( ωt-θ) の信号と、2つの-sin( ωt-2θ) の位相同期した信号が得られる。この配列や、さらに、閉線路と周辺の差動発振器など組を4つ以上、一次元配列することで、本実施例の装置を、一次元方向に指向性を制御できるフェーズドアレイアンテナ装置の搬送波発生装置に用いることができる。
【0039】
この実施例においても、閉経路を結合する発振器だけを差動発振器として、他の発振器を、差動型でない発振器としても良い。また、バッファ増幅器91、92、93を逆相の増幅器として、全ての差動増幅器発振器を差動ではない発振器としても良い。この場合にも、同様な信号が得られる。
【実施例4】
【0040】
本実施例は、図6に示すように、閉線路を2次元配列したものである。すなわち、実施例2のx方向の一次元配列を、それに垂直なy方向に、繰り返し、y軸方向にも、各x系統の閉線路を、結合させたものである。閉線路21と22とから成るx方向に配列された第1系統は、実施例2と同一である。また、位相設定器71a、閉線路61、差動発振器81a、81c、81d、位相設定器71d、閉線路62、差動発振器82c、82d、位相設定器72dから成るx方向に配列された第2系統も、実施例2と同一構成である。
【0041】
本実施例では、閉線路21と閉線路61とが、差動発振器31dで接続され、閉線路22と閉線路62とが、差動発振器32dで接続されている。各発振信号の出力は、それぞれ、同様な関係にある。差動発振器31b、32bに接続される位相設定器41b、42bの設定位相は、90度であり、差動発振器31a、81aに接続される位相設定器41a、71aの設定位相は、それぞれ、180度であり、差動発振器81d、82dに接続される位相設定器71d、72dの設定位相は、それぞれ、270度である。この場合、8個の出力信号は、全て、cos(ωt)となる。
【0042】
また、上記したように、各閉経路において、その中心に対して点対称の位置に、逆相のバッファ増幅器91、92、101、102を2つ挿入して、全差動発振器を全て差動型でない発振器を用いることも可能である。その場合には、位相設定器41a、71aは不要であり、位相設定器41b、42b、71d、82dは、180度の位相設定器となる。この場合には、8個の出力は、全て、cos(ωt)となる。
【実施例5】
【0043】
発振器の周波数f0 の4倍の周波数4f0 を発生するようにした実施例である。図7に示すように、閉線路は、第1行に配列された閉線路W11、W12と、第2行に配列された閉線路W21、W22の2行2列のマトリックスに配列されている。閉線路W11は、実施例1〜4と異なり、正方形の閉線路の周辺線路210の各辺の中点と正方形の中心とを結ぶ十字形状の内部線路200を有している。各閉線路には、正相のバッファ増幅器B11、B12、B21、B22が挿入されている。行方向(x方向)には、閉線路W11と閉線路W12とは、差動発振器D12で結合され、閉線路W21と閉線路W22とは、差動発振器D22で結合されている。一方、列方向(y方向)には、閉線路W11と閉線路W21とは、差動発振器E21と移相器Q21により結合されており、閉線路W12と閉線路W22とは、差動発振器E22と移相器Q22により結合されている。そして、閉線路間の結合に用いられている差動発振器を除く全ての差動発振器D11、D13、D21,D23、E11、E12、E31、E32の閉線路に接続されている側のトランジスタとは異なる他方のトランジスタのドレイン/コレクタは、全て、50Ωの線路抵抗で終端されている
【0044】
内部線路200の1辺の長さは(辺の中点と中心点とを結ぶ辺)の長さは、a/2である。ただし、aは、閉線路の周辺線路の1辺の長さである。各ポート間の周辺線路における経路長は、aであるから、周波数4f0 の高調波においては、一波長である。したがって、各ポートL111、L112、L113、L114では、周波数4f0 の高調波の位相は同相となり、発振信号はcos(4 ωt)となる。ただし、ω=2πf0 である。また、中心点R11と各ポート間の距離は、λ/2となるので、中心点R11の信号の位相は、各ポートの信号位相に対して、180度遅れる。よって、中心点R11の信号は、−cos(4 ωt)となる。
【0045】
他方、周波数f0 の基本波に対しては、各ポートでの信号の位相が0、π/2、π、3π/2であり、中心点R11では、これらの位相に、共通にλ/8の内部線路による位相遅れπ/4を減じた値を位相とする余弦波の和となる。これは、零となる。同様に、第2高調波2f0 の場合には、0、π、0、πの各ポートの位相に、共通にλ/4の内部線路による位相遅れπ/2を減じた値を位相とする余弦波の和となる。この和も対称性から零となる。第3高調波3f0 の場合には、0、3π/2、π、π/2の各ポートの位相に、共通に、3λ/8の内部線路による位相遅れ3π/4を減じた値を位相とする余弦波の和となる。この場合も、位相の対称性から、中心点R11におけるこの第3高調波成分は0となる。結局、第4高調波成分のみが、中心点R11に現れることになる。
【0046】
このようにして、閉線路W11の中心点R11と、閉線路W12の中心点R12からは、−cos(4 ωt)の発振信号が得られる。
【0047】
一方、列方向(y方向)には、移相器Q21、Q22を介して結合されているので、それによる遅れ位相量( θ) により、その出力が入力するポートL212、L222の信号はsin(ωt-θ) となる。すなわち、第2行の閉線路W21、W22における発振信号は、第1行の閉線路W11、W12における発振信号に対して位相がθだけ遅れたものとなる。したがって、閉線路W21、W22の中心点R21、R22での発振信号は、−cos(4 ωt-4θ) となる。このようにして、位相差が4θの信号を得ることができる。y方向に、これらの構成の閉線路を多数設けることで、3以上の位相差4θを有する発振信号2つづつ得ることができる。これにより、一次元方向に指向性を変更できるフェーズドアレイアンテナ装置を構成できる。閉線路は2列に構成されいるので、アンテナ素子も2列に構成でき、放射電力を増大させることができる。もちろん、行方向(x方向)にも、同様な閉線路を多数設けて、アンテナ素子を多数列形成することで、放射電波の電力を大きくすることができる。
【0048】
この実施例においても、閉線路間の結合だけに、差動発振器を用いて、他の差動増幅器発振器は、差動型ではない通常の発振器を用いても良い。さらに、上述したように、バッファ増幅器B11〜B22を、逆相増幅器として、閉経路の点対称の位置に2つ設けた場合には、全ての発振器を差動型ではない発振器で構成することも可能である。
本実施例では、リング共振器内の発振周波数はf0 として、用いる発振信号の周波数を4f0 としている。したがって、共振周波数は、用いる信号よりも低周波であるので、共振のQ値を大きくすることができる。
【実施例6】
【0049】
本実施例は、図7の実施例5をさらに発展させたものである。x方向に配列された系統を、y方向に沿って、繰り返して配列させたものであり、各系統をy方向に沿っても結合させたものである。実施例6の発振装置は、3行3列の閉線路を有している。閉線路W11と接続される差動発振器D12と、閉線路W12との間に、移相器P12が設けられており、閉線路W12と接続される差動発振器D13と、閉線路W13との間に、移相器P13が設けられている。同様に、閉線路W21と接続される差動発振器D22と、閉線路W22との間に、移相器P22が設けられており、閉線路W22と接続される差動発振器D23と、閉線路W23との間に、移相器P23が設けられている。同様に、閉線路W31と接続される差動発振器D32と、閉線路W32との間に、移相器P32が設けられており、閉線路W32と接続される差動発振器D33と、閉線路W33との間に、移相器P33が設けられている。
【0050】
また、閉線路W11と接続される差動発振器E21と、閉線路W21との間に、移相器Q21が設けられており、閉線路W21と接続される差動発振器E31と、閉線路W31との間に、移相器Q31が設けられている。同様に、閉線路W12と接続される差動発振器E22と、閉線路W22との間に、移相器Q22が設けられており、閉線路W22と接続される差動発振器E32と、閉線路W32との間に、移相器Q32が設けられている。同様に、閉線路W13と接続される差動発振器E23と、閉線路W23との間に、移相器Q23が設けられており、閉線路W23と接続される差動発振器E33と、閉線路W33との間に、移相器Q33が設けられている。
【0051】
列方向に配列された6個の移相器P12〜P33は、遅れ位相角θが設定される。また、行方向に配列された6個の移相器Q21、Q22、Q23、Q31、Q32、Q33には、位相角(0度)が設定される。すなわち、閉線路W12の信号の位相は、移相器P12によりθだけ位相が遅延しているので、閉線路W22には、そのままの第2列の閉線路W12の信号を、閉線路W22に加えれば良いためである。同様に、閉線路W32の信号は、移相器P32により位相がθだけ遅延しているので、閉線路W22の信号をそのまま、閉線路W32に印加すれば良い。閉線路W13の信号を閉線路W23に印加する場合も、閉線路W23の信号を閉線路W33に印加する場合も同様である。
【0052】
この構成により、第2列の閉線路W12、W22、W32の中心点の位相は、移相器P12、P22、P32により、第1列の閉線路W11、W21、W31の中心点の信号の位相に対して、4θだけ位相が遅れることになる。同様に、第3列の閉線路W13、W23、W33の中心点の信号は、移相器P13、P23、P33により、第2列の閉線路W12、W22、W32の中心点の信号に対して、4θだけ位相が遅れることになる。このように構成することでx軸方向に指向性を変化させることができる。
【0053】
また、y方向に指向性を変化させる場合には、行方向(x方向)に配列されている第2行の移相器Q21、Q22、Q23と、第3行の移相器Q31、Q32、Q33に、遅れ位相θを設定する。その一方、列方向(y方向)に配列されている第2列の移相器P12、P22、P32と、第3列の移相器P13、P23、P33に設定する位相は0とする。これにより、y方向に指向性を変化させることができる。
【0054】
上記の実施例では、リング共振器に接続される各発振器の発振周波数f0 の4倍の周波数4f0 の発振信号を得るために、閉線路を正方形としているが、閉線路を、図9に示すように、正六角形の周辺線路Tと、各角S1〜S6と中心点Rとを接続する線路を内部線路U1〜U6としても良い。そして、各角S1〜S6、閉経路の周辺線路Tの各辺の中点又は同一比率の内分点を発振器を接続するポートとする。各角での位相の対称性から、基本波及び第2〜第5高調波の中心点Rでの合成信号は、零となる。第6高調波では、一辺が一波長に等しく、角の中心点の距離も一波長に等しいので、中心点では、全ての信号が同相で合成されることになる。したがって、中心点においては、周波数6f0 の発振信号を得ることができる。このような形状を複数、一次元配列、二次元配列させて、フェーズドアレイアンテナ装置を構成しても良い。
【0055】
また、一般的には、図9の構成を、正n多角形(nは3以上の自然数)の閉線路に拡張しても良い。正n多角形の周辺線路をn等分する点での位相を考える。このn等分点は、必ずしも正多角形の頂角である必要はない。正多角形であるので、n等分点は、一定の回転角毎の回転対称となる。このn等分点に任意点を第i点とすると、第i点におけるの基本波の電圧波形は、次式で表される。
sin(ωt-2 πi/n) …(1)
ただし、i=0,1,…,n-1、ωは基本波の各周波数、tは時刻である。第k高調波は、周辺線路の1周の位相回転角は、2πkであるので、第i点における電圧波形は、次式で表現される。
sin(ωkt-2πki/n) …(2)
ただし、k=1,2,…,nである。
【0056】
閉線路の中心点Rでの位相は、(2) 式のiに関する和で表される。周辺線路の第i点と中心点Rの線路上の距離は、対称性から、iに関係なく、等しいので、その間にけおける第k高調波kの位相差をθk をとする。θk は、i には関係なく一定である。第k高調波の中心点Rでの電圧Vは、次式で表される。
V=Σi {sin(ωkt-2πki/n- θk ) } …(3)
ただし、Σi は、 iに関する和を意味する。Vは、2 π/(n/k)単位で位相回転をさせた単位ベクトルの和の射影である。n/k ≧1 であるので、2 πi/(n/k) は、2 πの等分点の位相を表す。
【0057】
閉線路の対称性からk ≠n の時には、S=0 …(4)
k=n の時には、S=n ・sin(ωnt- θk)…(5)
したがって、中心点Rでは、第n高調波のみが現れることになる。
【0058】
閉経路が円の場合でも、同様である。円をn等分する点と、円の中心との周辺線路及び内部線路上の経路距離は等しい。n等分点を周辺線路と内部線路との交点に選択すると、距離は半径になるので、全てのn等分点と中心との距離は等しい。この条件が成立するので、上記の(1) 〜(5) 式は、閉経路が円であっても成立することは明らかである。
このようにして、正n多角形や円を閉経路とする場合には、その中心から閉経路の共振周波数のn倍の周波数を取り出すことができる。
【0059】
フェーズドアレイアンテナ装置の構成を次に説明する。図8の閉線路W22に接続される差動発振器D23、移相器P22の組からなる集積回路を製造する。また、これに、バッファ増幅器を組み込んだ集積回路も作成する。この集積回路IC1〜IC7等を、図10、図11に示すように、基板10上に形成されたマイクロストリップ線路から成る閉線路W1、W2に、90度の角度に配置して、閉線路の各ポートに接続する。なお、IC1、IC3は、正相のバッファ増幅器が組み込まれた集積回路である。そして、閉線路W1、W2の、それぞれの中心点R1、R2を、基板10の裏面側に、ビアホールにより導通させる。また、基板10は多層基板で中間部には、アース導体12が設けられており、閉線路W1、W2の中心部に相当する部分にだけ、アース導体が存在しない窓13a、13bが設けられている。そして、この窓領域に中心点R1、R2にアンテナ素子AT1、AT2を設ける。また、アンテナ素子AT1、AT2の前段に、電気的に接続する変調器や送信器などを組み込んだ集積回路を中心点R1、R2に設けても良い。
【0060】
このような構成を、図5に示すような一次元配列させたり、図8に示すような二次元配列させることで、各アンテナ素子に対する給電線路を等しく、且つ、分配器を用いずに、アレイアンテナや、フェーズドアレイアンテナ装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、指向性を制御できるフェーズドアレイアンテナ装置に用いることかできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の具体的な実施例1に係る発振装置を示した回路図。
【図2】実施例1の発振装置の構造を示した断面図。
【図3】本発明の具体的な実施例2に係る発振装置を示した回路図。
【図4】実施例装置で用いられる差動発振器を示した回路図。
【図5】本発明の具体的な実施例3に係る発振装置を示した回路図。
【図6】本発明の具体的な実施例4に係る発振装置を示した回路図。
【図7】本発明の具体的な実施例5に係る発振装置を示した回路図。
【図8】本発明の具体的な実施例6に係る発振装置を示した回路図。
【図9】本発明の他の閉線路の構成を示した平面図。
【図10】フェーズドアレイアンテナ装置の基板の表面の閉線路と集積回路との配置関係を示した 斜視図。
【図11】同フェーズドアレイアンテナ装置の基板の断面図。
【符号の説明】
【0063】
20,21、22、23、61、62…閉線路
W11〜W33…閉線路
30a〜30c…差動発振器
40a〜40d、41a〜43d、…位相設定器
20a〜20d、21a〜21d、22a〜22d、23a〜23d…ポート
90〜93、101、102…バッファ増幅器
D11〜D33、E11〜E43…差動発振器
P12〜P33、Q21〜Q33…位相器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発振周波数を同期させた発振装置において、
複数の発振器と、
これらの複数の発振器を、閉線路の各ポートに結合して、線路で結合したリング共振器と、
前記リング共振器の線路に挿入された励振位相を一方向に固定する励振方向固定装置と、
から成る発振装置。
【請求項2】
前記閉線路は、全周長が発振周波数の1波長のマイクロストリップ線路から成ることを特徴とする請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記閉線路は、複数、存在し、隣接する閉線路の2つのポートに対して、共通の1つの発振器を結合したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記共通の発振器は、差動発振器で構成され、前記隣接する閉線路の2つのポートのそれぞれに対して、前記差動発振器のそれぞれのトランジスタを結合したことを特徴とする請求項3に記載の発振装置。
【請求項5】
前記隣接する閉線路の2つのポートを接続する線路に位相を推移させる移相器を設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の発振装置。
【請求項6】
複数の前記閉線路は、2次元配列されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項7】
隣接した前記各ポート間の位相差はπ/2であり、前記ポートの数は、一つの前記閉線路当たり4点であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項8】
前記閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/n(nは3以上の自然数)の正n多角形から成る周辺線路と、その正n多角形の中心点と、各辺(頂点を含む)とを、等中心角で結ぶ内部線路とから成り、前記中心点から前記発振周波数のn倍の周波数を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項9】
前記閉線路は、円から成る周辺線路と、その円の中心点と、円周のn等分点(nは3以上の自然数)とを結ぶ内部線路とから成り、前記中心点から前記発振周波数のn倍の周波数を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項10】
前記閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/4の正方形から成る周辺線路と、各辺の中点と正方形の中心点とを結ぶ内部線路とから成り、前記中心点から前記発振周波数の4倍の周波数を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項11】
出力信号の位相を同相とする位相設定器を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の発振装置を用いたアレイアンテナ装置。
【請求項13】
請求項8乃至請求項10の何れか1項に記載の発振装置を用いたアレイアンテナ装置であって、
前記閉線路の中心点に、送信回路及びアンテナ素子が形成されたアレイアンテナ装置。
【請求項1】
複数の発振周波数を同期させた発振装置において、
複数の発振器と、
これらの複数の発振器を、閉線路の各ポートに結合して、線路で結合したリング共振器と、
前記リング共振器の線路に挿入された励振位相を一方向に固定する励振方向固定装置と、
から成る発振装置。
【請求項2】
前記閉線路は、全周長が発振周波数の1波長のマイクロストリップ線路から成ることを特徴とする請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記閉線路は、複数、存在し、隣接する閉線路の2つのポートに対して、共通の1つの発振器を結合したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記共通の発振器は、差動発振器で構成され、前記隣接する閉線路の2つのポートのそれぞれに対して、前記差動発振器のそれぞれのトランジスタを結合したことを特徴とする請求項3に記載の発振装置。
【請求項5】
前記隣接する閉線路の2つのポートを接続する線路に位相を推移させる移相器を設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の発振装置。
【請求項6】
複数の前記閉線路は、2次元配列されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項7】
隣接した前記各ポート間の位相差はπ/2であり、前記ポートの数は、一つの前記閉線路当たり4点であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項8】
前記閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/n(nは3以上の自然数)の正n多角形から成る周辺線路と、その正n多角形の中心点と、各辺(頂点を含む)とを、等中心角で結ぶ内部線路とから成り、前記中心点から前記発振周波数のn倍の周波数を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項9】
前記閉線路は、円から成る周辺線路と、その円の中心点と、円周のn等分点(nは3以上の自然数)とを結ぶ内部線路とから成り、前記中心点から前記発振周波数のn倍の周波数を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項10】
前記閉線路は、一辺の長さが発振周波数の1波長の1/4の正方形から成る周辺線路と、各辺の中点と正方形の中心点とを結ぶ内部線路とから成り、前記中心点から前記発振周波数の4倍の周波数を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項11】
出力信号の位相を同相とする位相設定器を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の発振装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の発振装置を用いたアレイアンテナ装置。
【請求項13】
請求項8乃至請求項10の何れか1項に記載の発振装置を用いたアレイアンテナ装置であって、
前記閉線路の中心点に、送信回路及びアンテナ素子が形成されたアレイアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−88673(P2009−88673A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252262(P2007−252262)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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