説明

発泡成形体及びその発泡成形方法並びに発泡成形体用のシート材

【課題】シート材の透気抵抗度の調整が容易であり、発泡成形時にシート材に発泡性原料を含浸させることなくシート材を成形型の成形面に容易に倣わせることができ、目的とする形状を安定して得ることができる発泡成形体及びその発泡成形方法並びに発泡成形体用のシート材を提供すること。
【解決手段】発泡成形体1は、発泡成形体1の外面にシート材3が一体化されたものである。シート材3は、延伸加工を行って複数の微細孔を形成してなる延伸多孔質フィルム31と、不織布32との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有している。発泡成形体1は、シート材3の不織布32側が発泡成形体1の外表面側に配置されて、シート材3と発泡成形体本体2とが一体化されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体本体の外面にシート材が一体化された発泡成形体及びその発泡成形方法並びに発泡成形体用のシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、イス、クッション等の人と接触する部位に多用されており、特に車両の座席を構成するものは、ポリウレタン樹脂等の発泡性原料を発泡させてシート材と一体化されている。
例えば、特許文献1においては、発泡材料からなる本体の一部にカバーシートを付着してなる発泡体が開示されている。このカバーシートは、繊維質で形成された通気性に優れるシート状の基板と、この基板にラミネートされた熱可塑性樹脂フィルムとから構成されている。
【0003】
そして、この発泡体を発泡成形する際には、成形型内の空気及び発生ガスがガス抜き孔を通って成形型の外部に排気され、発泡途中の樹脂フォームはガス抜きシートに阻止されてガス抜き孔に侵入することがなくなる。これにより、製造された発泡体にバリが生ずることをなくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−125724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発泡成形体を発泡成形する際に、シート材に発泡性原料を含浸させることなく成形型の成形面にシート材(カバーシート、補強材基布)を倣わせて、目的とする形状の発泡成形体を得るためには、シート材において、気体をどの程度の流量で透過させるかの透気抵抗度の調整が重要となる。
しかしながら、特許文献1の発泡体においては、カバーシートにおける熱可塑性樹脂フィルムとして用いるポリエチレンフィルムは、基板にラミネートされたときに極めて微細な孔が形成されて多孔質となると記載されているのみである。そのため、特許文献1のカバーシートの透気抵抗度を調整することは困難である。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、シート材の透気抵抗度の調整が容易であり、発泡成形時にシート材に発泡性原料を含浸させることなくシート材を成形型の成形面に容易に倣わせることができ、目的とする形状を安定して得ることができる発泡成形体及びその発泡成形方法並びに発泡成形体用のシート材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、発泡成形体本体の外面にシート材が一体化された発泡成形体であって、
上記シート材は、延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと、不織布との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有しており、
上記シート材の上記不織布側が上記発泡成形体の外表面側に配置されて、上記シート材と上記発泡成形体本体とが一体化されていることを特徴とする発泡成形体にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、発泡成形体本体の外面にシート材が一体化された発泡成形体を、上型と下型とを有する成形型を用いて発泡成形する方法において、
延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと不織布との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有するシート材を準備し、
該シート材を、上記不織布が上記上型の成形面に対向する状態で該上型に取り付け、
上記下型内に発泡性樹脂原料を注入して上記成形型を閉じ、上記上型と上記下型との間に形成されたキャビティ内で上記発泡性樹脂原料を発泡させ、
該発泡性樹脂原料自体と該発泡性樹脂原料が発泡する際に生ずるガス圧力との少なくとも一方によって上記シート材を押し上げると共に、上記キャビティ内の気体を上記シート材を透過させて上記キャビティの外部に排気し、
上記発泡性樹脂原料自体と上記ガス圧力との少なくとも一方によって上記シート材を上記上型の成形面に押し当てて上記発泡性樹脂原料から上記発泡成形体本体を成形すると共に、該発泡成形体本体と上記シート材とを一体化して発泡成形体を形成することを特徴とする発泡成形体の発泡成形方法にある(請求項6)。
【0009】
第3の発明は、発泡成形体本体の外面に一体化して発泡成形体を形成するためのシート材であって、
該シート材は、延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと、不織布との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有していることを特徴とする発泡成形体用のシート材にある(請求項8)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明の発泡成形体においては、シート材を、延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと不織布との積層体で構成している。延伸多孔質フィルムは、延伸加工前のフィルムの材質、延伸加工の加工条件等を変更することにより、複数の孔による透気抵抗度を容易に変化させることができる。これにより、シート材の透気抵抗度を適切に調整することができ、発泡成形体を発泡成形する際に、発泡成形時に発生する気体による適度な圧力をシート材に加えてこのシート材を成形型の成形面に押し付けると共に、この気体をシート材を透過させて成形型のキャビティの外部へ排気することができる。
【0011】
また、シート材は、気体は透過させるが液体は透過させない性質を有するため、発泡性樹脂原料がシート材に含浸するのを防止することができる。そのため、発泡性樹脂原料がシート材に含浸する場合に比べて、発泡性樹脂原料の使用量を低減することができ、発泡成形体を軽量化することができる。
それ故、第1の発明の発泡成形体によれば、シート材の透気抵抗度の調整が容易であり、発泡成形時にシート材に発泡性原料を含浸させることなくシート材を成形型の成形面に容易に倣わせることができ、目的とする形状を安定して得ることができる。
【0012】
第2の発明の発泡成形体の発泡成形方法は、上記延伸多孔質フィルムと不織布との積層体からなるシート材を用いることにより、目的とする形状の発泡成形体を容易に形成することができるものである。
具体的には、シート材を、不織布が上型の成形面に対向する状態で上型に取り付け、下型内に発泡性樹脂原料を注入して上型を閉じ、上型と下型との間に形成されたキャビティ内で発泡性樹脂原料を発泡させる。このとき、キャビティ内においては、発泡性樹脂原料自体と発泡性樹脂原料が発泡する際に生ずるガス圧力との少なくとも一方によってシート材が押し上げられ、キャビティ内の気体は、シート材を透過してキャビティの外部に排気される。そして、発泡性樹脂原料自体とガス圧力との少なくとも一方によってシート材が上型の成形面に押し当てられて発泡性樹脂原料から発泡成形体本体が成形されると共に、発泡成形体本体とシート材とが一体化されて発泡成形体が形成される。
【0013】
その他、第2の発明の発泡成形体の発泡成形方法によっても、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
なお、第2の発明における上型は、上型部と中型部(中子、入子という場合がある。)とを組み合わせて構成する場合があり、この場合には、上型部と中型部とを含めて上型という。
【0014】
第3の発明の発泡成形体用のシート材は、延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと不織布との積層体で構成している。
第3の発明の発泡成形体用のシート材によっても、第1の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例における、発泡成形体を示す斜視図。
【図2】実施例における、発泡成形体を示す図で、図1のA−A線矢視断面図。
【図3】実施例における、シート材の拡大断面を模式化して示す斜視図。
【図4】実施例における、上型が開いた状態の成形型を示す平面図。
【図5】実施例における、上型が開いた状態の成形型を示す図で、図4のB−B線矢視相当の断面図。
【図6】実施例における、上型を閉じた状態の成形型を示す図で、図4のB−B線矢視相当の断面図。
【図7】実施例における、発泡性樹脂原料が発泡する際に生ずるガス及びキャビティ内のガスが、シート材を上型の成形面に向けて押し上げると共にシート材を透過する状態を拡大して示す断面図。
【図8】実施例における、発泡性樹脂原料自体によってシート材が上型の成形面に押し当てられた状態を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述した第1〜第3の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1〜第3の発明において、上記シート材のJISP8117王研式試験機法による透気抵抗度は、10sec/100ml以上3000sec/100ml以下であることが好ましい(請求項2、9)。
この場合には、発泡成形体を発泡成形する際に、シート材に対して適切な通気性(気体透過性)と液体非透過性とを付与することができる。
【0017】
透気抵抗度が10sec/100ml未満の場合には、通気量が多くなり過ぎて、発泡成形時に発生する気体によってシート材を持ち上げる効果を得ることが困難になる。また、シート材は発泡性樹脂原料を透過させ易くなり、シート材に発泡性樹脂原料が含浸してしまうおそれがある。一方、透気抵抗度が3000sec/100ml超過の場合には、シート材の通気量が少なく、成形型のキャビティ内の気体を十分に外部へ排気することが困難になり、キャビティ内に未充填のエアー溜りが発生するおそれがある。
上記シート材の透気抵抗度は、50sec/100ml以上2500sec/100ml以下とすることがさらに好ましい。さらに好ましくは、100sec/100ml以上2000sec/100ml以下である。
【0018】
また、上記発泡成形体は、車両の座席に用いることができ、該座席は上記発泡成形体の裏面にフレームが配置されて構成され、上記発泡成形体の裏面は上記フレームに対応した形状に形成され、上記シート材は、上記発泡成形体本体の裏面に一体化されて上記フレームと当接して用いられることがある(請求項3、10)。
この場合にも、発泡成形体を形成する際に発泡性樹脂原料が含浸するのを防止できるシート材を用いる。これにより、発泡成形体の裏面にフレームを配置したときにシート材の不織布とフレームが当接するため、発泡性樹脂原料とフレームとの擦れ合いによる異音の発生を防止することができる。
【0019】
また、上記シート材は、立体的形状を形成していることが好ましい(請求項4)。
この場合には、シート材を縫合する場合に比べて、発泡成形体の発泡成形時に成形型の成形面にシート材を一層良好に倣わせることができる。また、シート材を立体的形状に形成する際には、シート材同士を、縫合することなく簡単に一体化することができる。そして、シート材において、縫合の際の糸が通る穴が形成されず、穴からの樹脂漏れの発生を防止することができる。
【0020】
また、第1〜第3の発明において、上記延伸多孔質フィルムにおける上記複数の孔は、樹脂成分に充填剤が配合されたフィルムが延伸加工されて、上記充填剤の周囲に形成されていることが好ましい(請求項5、7、11)。
この場合には、樹脂成分に充填剤を配合してフィルムを成形することにより、フィルムの延伸加工の際に、容易に複数の孔を形成することができる。また、充填剤の種類、粒径、含有量等を調整することにより、延伸多孔質フィルムに形成する複数の孔の大きさ、量等を調整することができる。これにより、シート材の透気抵抗度の調整を容易にすることができる。
【0021】
以下に、シート材及びその各部の好ましい構成を説明する。
(延伸多孔質フィルム)
延伸多孔質フィルムは、不織布と積層させてシート材とした場合に、通気性と液体非透過性を両立するものである限り、その構成・材質等は特に限定するものではない。延伸多孔質フィルムは、例えば、ポリオレフィン系樹脂に、炭酸カルシウム等の無機充填剤、滑剤、老化防止剤等の添加剤を配合し、フィルム状に成形したものを延伸加工することにより、無機充填剤の周囲にボイド(孔)を発生させることによって、複数の微細孔を形成したものとすることができる。
【0022】
延伸多孔質フィルムを構成する樹脂成分としては、特に限定するものではないが、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン)、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPTまたはEPDM)、エチレン・ブテン・ジエン共重合体(EBT)等の各種ポリオレフィン系樹脂を主成分(樹脂成分の合計量中60〜100質量%)とすることが好ましい。中でも、樹脂成分としては、延伸多孔質フィルムの機械的物性、延伸性、生産性、コスト面等から、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分(樹脂成分の合計量中60〜100質量%)とすることが好ましい。
【0023】
延伸多孔質フィルムにおける無機充填剤としては、延伸により充填剤の周囲にボイド(孔)を発生させることによって、フィルムを多孔質化させることができれば特に限定されず、例えば、タルク、シリカ、石粉、ゼオライト、アルミナ、アルミニウム粉末、鉄粉の他、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸の金属塩;硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の硫酸の金属塩;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;酸化マグネシウム−酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム−酸化亜鉛の水和物等の金属水和物(水和金属化合物)等が挙げられる。無機充填剤の形状は特に限定されず、平板形状、粒状等のものを用いることができるが、延伸によるボイド(孔)形成の観点から、粒状(微粒子状)が好ましい。中でも無機充填剤としては、ポリオレフィン系樹脂に配合した際の分散性、コスト等より、炭酸カルシウムからなる無機微粒子が好ましい。
【0024】
無機充填剤(無機微粒子)の粒径(平均粒径)としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜5μmである。無機充填剤の粒径が0.1μm未満であるとボイド形成性が低下する場合があり、10μmを超えると延伸時の製膜破れ、外観不良の原因となる場合がある。
無機充填剤(無機微粒子)の含有量は、特に限定されないが、例えば、多孔質フィルムを構成する全樹脂成分(100質量部)に対して、80〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは100〜180質量部である。無機充填剤の含有量が上記範囲内である場合、最終的なシート材の透気抵抗度を10sec/100ml以上3000sec/100ml以下の範囲に調整し易くなる。
【0025】
上記延伸多孔質フィルムには、着色剤、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤等の各種添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内で配合されていてもよい。
延伸多孔質フィルムは、溶融製膜法(Tダイ法、インフレーション法)によって製造することができる。中でもTダイ法が好ましい。例えば、具体的には、上記の樹脂成分、無機充填剤、及び必要に応じて各種添加剤を、2軸混練押出機にて混合分散し、一旦ペレット状にした後、1軸押出機にて溶融させて押し出して未延伸フィルムを作製し、この未延伸フィルムを、1軸又は2軸で延伸することにより多孔質化させて製造する。延伸多孔質フィルムを積層フィルムとする場合には、共押出法を用いることが好ましい。
【0026】
延伸多孔質フィルムを製造する際には、押出温度は180〜250℃が好ましく、より好ましくは200〜250℃、さらに好ましくは210〜240℃である。また、未延伸フィルム作製時の引き取り速度は5〜25m/分が好ましく、引き取りロール温度(冷却温度)は5〜30℃が好ましく、より好ましくは10〜20℃である。
未延伸フィルムを1軸又は2軸(逐次2軸、同時2軸)で延伸する方法としては、ロール延伸方式やテンター延伸方式など公知慣用の延伸方式を用いることができる。延伸温度は、50〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜90℃である。多孔質化と安定製膜の観点から、1軸延伸の場合の延伸倍率は、2〜5倍が好ましく、より好ましくは3〜4倍である。2軸延伸の場合の延伸倍率は2〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜7倍である。
【0027】
延伸多孔質フィルムの孔径としては、特に限定するものではないが、0.05〜50μm程度となっていることが、最終的なシート材の透気抵抗度を10sec/100ml以上3000sec/100ml以下の範囲に調整する点や、発泡成形時のエアー溜り現象を防止する観点からは好ましい。ここで、多孔質フィルムの孔径は、水銀圧入法(自動ポロシメータ)に基づき測定される。
延伸多孔質フィルムの厚みは、特に制限されず、例えば、30〜150μmが好ましく、より好ましくは50〜120μmである。
【0028】
延伸多孔質フィルムとしては、延伸多孔質フィルム単体で測定した際の加熱収縮率(70℃・5分間)が、長手延伸(MD)方向にて0以上3.0%以下であることが好ましい。かかる延伸多孔質フィルムを採用することにより、シート材のカール(変形)が防止され、成形型の上型にシート材を取り付ける際の作業性が向上する。
なお、多孔質フィルム単体の加熱収縮率は、次のようにして測定、算出する。
まず、(MD)約200.0mm×(CD)約200.0mmに切り取ったサンプルのMD方向中央部付近に標線を記入し、ノギスで少数第一位まで読み取り、更に70℃の乾燥機へ5分間投入する。その後、サンプルを乾燥機から取り出し23℃雰囲気下で30分放置した後、同一箇所を初めと同様にノギスにて測定し、以下の式で収縮率(%)を算出する。
MD方向の加熱収縮率(%)=((初期のサイズ−加熱後のサイズ)/初期のサイズ)×100
【0029】
(不織布)
本発明のシート材において、延伸多孔質フィルムと積層される不織布としては、延伸多孔質フィルムと積層させてシート材とした場合に、通気性と液体非透過性を両立するものである限り、その構成・材質等は特に限定するものではなく、スパンボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等から製造された単層、複層、混合等の不織布を用いることができる。また、素材としても、ナイロン系、ポリエステル系(PET系、PBT系等)、ポリオレフィン系、レーヨン系等、各種合成繊維による不織布、天然繊維による不織布を使用することができる。中でも、接着性、強度、価格、加工性等の観点からポリエステル系が好ましい。
【0030】
不織布は、単層、複層のいずれの形態を有していてもよい。なお、不織布において、繊維径、繊維長、目付等は特に制限されないが、例えば、加工性やコストの観点からは、好ましくは目付量(坪量)20〜100g/m2程度、さらに好ましくは30〜80g/m2程度の不織布が例示される。不織布は、1種の繊維のみから構成されていてもよく、複数種の繊維が組み合わせられて構成されていてもよい。
【0031】
特に不織布の目付量(坪量)を30g/m2以上とすることにより、不織布の剛性が増し、発泡成形後のシート材にシワが入り難くなり、成形品の外観品質が向上する効果が得られる。
また、不織布として、厚みが0.1〜1.0mmのもの(嵩高不織布)を使用することにより、成形型の成形面と延伸多孔質フィルムとの間に隙間ができ、この隙間を通してキャビティ内の空気を外部に排出することができる。そのため、発泡成形時のエアー溜り現象を防止することができる。
【0032】
不織布としては、不織布単体で測定した際の加熱収縮率(70℃・5分間)が、MD方向にて0%以上3.0%以下であることが好ましい。かかる不織布を採用することにより、シート材としてのカールが防止され、成形型の上型にシート材を取り付ける際の作業性が向上する。なお、不織布単体の加熱収縮率も延伸多孔質フィルムと同様の方法にて測定される。
不織布は、成形型の成形面と延伸多孔質フィルムとの間に隙間を形成し易くするために、繊維部分を毛羽立たせたものを用いることが好ましい。
【0033】
延伸多孔質フィルムと不織布との積層方法としては、特に限定されるものではないが、積層後のシート材としての透気抵抗度を10sec/100ml以上3000sec/100ml以下の範囲となるような積層手段を選択することが必要となる。具体的には、接着剤や粘着剤による積層や、ヒートシール法やラミネート法による積層手段を採用することができる。
【0034】
上記接着剤としては、特に制限されず、例えば、ゴム系(天然ゴム、スチレン系エラストマー等)、ウレタン系(アクリルウレタン系)、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ビニルアルキルエーテル系、フッ素系等の公知の接着剤を用いることができる。また、接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、ポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤が特に好ましい。
【0035】
また、接着剤は、いずれの形態を有している接着剤であってもよく、特に限定されないが、ホットメルト型(熱溶融型)接着剤が特に好ましく例示される。この場合には、溶剤を用いなくても熱により溶融させることにより塗工することができ、不織布に対しても直接塗布して接着剤層を形成することができる。
より具体的には、上記接着剤としては、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系のホットメルト型接着剤が好ましく、より好ましくは、熱可塑性のポリアミド系又はポリエステル系のホットメルト型接着剤が好ましい。
また、本発明において、シート材の不織布として、ポリエステル系不織布を使用する場合には、接着性の観点から、ポリアミド系接着剤又はポリエステル系接着剤が好ましく、特に好ましくは、ポリアミド系接着剤である。
【0036】
延伸多孔質フィルムと不織布との具体的な積層方法としては、接着剤の種類等によっても異なり、特に限定されないが、ホットメルト型接着剤を用いる場合には、接着剤を不織布上に塗布した後、延伸多孔質フィルムを貼り合わせる方法が好ましく例示される。上記塗布方法としては、熱溶融型接着剤の塗布方法として用いられる公知慣用の方法を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、通気性を維持する観点から、スプレー塗布(カーテンスプレー塗布)による塗布、ストライプ塗工、ドット塗工が好ましい。中でもポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等のホットメルト型接着剤をカーテンスプレー方式で繊維状に塗布し、加熱貼り合わせロールにより、延伸多孔質フィルムと不織布を貼り合わせる積層方法が好ましい。接着剤の塗布量(固形分)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜20g/m2が好ましく、より好ましくは1〜8g/m2である。
【0037】
(シート材)
本発明において、延伸多孔質フィルムと不織布との積層体で構成されたシート材としては、シート材としての破断時伸びが、20%以上、好ましくは、40%以上であることが望ましい。シート材の破断時伸びを20%以上とすることにより、成形型の凹凸への追従性が向上する。なお、シート材の伸びは、シート材の試験片(25mm幅×150mm長さ)をチャック間距離(100mm)としてオートグラフ引張試験機にセットし、引張速度300mm/minにより測定される。
【0038】
また、本発明のシート材は、耐水圧が0.1〜5.0kgf/cm2(9.8〜490.3kPa)であることが好ましく、更に好ましくは、0.5〜3.0kgf/cm2(49.0〜294.2kPa)であることが望ましい。シート材の耐水圧を上記範囲とすることにより、発泡性樹脂原料がシート材を透過(通過)してしまうことを防止することができる。
なお、シート材の耐水圧は、JISL1092のB法(高水圧法)により測定される。
【0039】
また、本発明のシート材の加熱収縮率(70℃・5分間)は、MD方向にて3.0%以下であることが好ましく、延伸多孔質フィルムと不織布との貼り合せ工程等で過剰な張力を加えないことが重要である。本発明のシート材を使用することにより、シート材のカールが防止され、成形型の上型にシート材を取り付ける際の作業性が向上する。なお、シート材の加熱収縮率は延伸多孔質フィルムと同様の方法にて測定される。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の発泡成形体及びその発泡成形方法並びに発泡成形体用のシート材にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の発泡成形体1は、図1、図2に示すごとく、発泡成形体本体2の外面にシート材3が一体化されたものである。
シート材3は、図3に示すごとく、延伸加工されて複数の微細孔311が形成された延伸多孔質フィルム31と、不織布32と、接着剤33との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有している。発泡成形体1は、シート材3の不織布32側が発泡成形体1の外表面側に配置されて、シート材3と発泡成形体本体2とが一体化されて形成されている。
【0041】
以下に、本例の発泡成形体1及びその発泡成形方法並びに発泡成形体1用のシート材3につき、図1〜図8を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例の発泡成形体1は、表面101の前後方向に設けた一対のスリット14によって、センター部11の左右両側にサイド部12を区画して形成されている。また、センター部11の後方には、表面101の左右方向に設けたスリット15によって、後方センター部13が区画して形成されている。
図2に示すごとく、センター部11の裏面102の前方部分には、湾曲する突出部111が形成されており、発泡成形体1の裏面102においては、突出部111の内側における前方側凹部112と、後方センター部13の裏面102における後方側凹部113とが、発泡成形体1の左右方向に沿って形成されている。そして、両凹部112、113の間に凸部114が形成されている。
なお、図1、図2においては、前方を矢印Fで示し、後方を矢印Bで示し、上方を矢印Uで示し、下方を矢印Dで示し、右を矢印Rで示し、左を矢印Lで示す。
【0042】
本例の発泡成形体1は、車両の座席における座部に用いるものである。図2に示すごとく、車両の座席は、発泡成形体1の裏面102に金属製フレーム(図示略)が配置されて構成され、発泡成形体1の裏面102は、金属製フレームに対応した形状の凹部112、113が形成されている。シート材3は、発泡成形体本体2の裏面102に一体化されており、発泡成形体1を金属製フレームに取り付けた状態においては、凹部112、113の外面におけるシート材3が金属製フレームと当接するようになっている。
なお、ここではフレームを金属製フレームとしているが、フレームは樹脂製フレーム等とすることもできる。また、フレームは、パイプで形成されたもの、パイプとバネから形成されたもの、板金から形成されたもの等があり、特に限定されない。
【0043】
本例のシート材3は、通気性(気体透過性)と液体非透過性とを有するようにするため、JISP8117王研式試験機法による透気抵抗度が、10sec/100ml以上3000sec/100ml以下である。また、シート材3は、予め立体的形状に形成しておくことができる。
【0044】
図3に示すごとく、延伸多孔質フィルム31における複数の微細孔311は、樹脂成分314に充填剤312が配合されたフィルムが延伸加工されて、充填剤312の周囲に形成されている。同図において、シート材3の厚み方向を矢印Tで示す。
本例の延伸多孔質フィルム31は、ベース(マトリックス)となるポリオレフィン系樹脂314に、炭酸カルシウム等の無機充填剤312、滑剤、老化防止剤等の添加剤を配合し、フィルム状に成形したものを延伸加工することにより、充填剤312の周囲にボイド313を発生させることによって、複数の微細孔311を形成したものである。複数の微細孔311は、充填剤312の周囲に存在するボイド313の部分を延伸多孔質フィルム31の厚み方向に曲折しながら貫通して形成されている。
【0045】
また、シート材3は、通気性を維持する観点から、不織布32上にホットメルト型接着剤33をカーテンスプレー方式で繊維状に塗布し、これに延伸多孔質フィルム31を貼り合わせて形成されている。ホットメルト型接着剤33が塗布されていない部分に、延伸多孔質フィルム31の微細孔311を通過した気体が通過する隙間が形成されている。なお、不織布32は、多数の繊維から形成されており、繊維同士の間を気体及び液体のいずれも透過させることができる。シート材3の透気抵抗度は、延伸多孔質体フィルム31の透気抵抗度の60〜100%程度になり、延伸多孔質体フィルム31における複数の微細孔311の形成状態(ボイド313の大きさ、量等やその他のシート材3の様々な要因)によって決定される。
【0046】
次に、本例の発泡成形体1の製造方法及び作用効果につき説明する。
発泡成形体本体2の外面にシート材3が一体化された本例の発泡成形体1は、上型41と下型42とを有する成形型4を用いて発泡成形する。
まず、シート材準備工程として、延伸加工によって複数の微細孔311を形成してなる延伸多孔質フィルム31と不織布32との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有するシート材3を準備する。このとき、シート材3は、立体的形状に形成してもよい。
【0047】
次いで、図4、図5に示すごとく、シート材取付工程として、シート材3を、不織布32が上型41の成形面411に対向する状態で上型41に取り付ける。このとき、シート材3の複数箇所に設けられた保持用穴34を、上型41の成形面411に取り付けられた保持部材としての保持ピン413に引っ掛け(図6参照)、かつ、複数箇所に設けられた鉄片(ステープラーの針、図示略)を上型41の成形面411に埋設されたマグネット部に磁気で吸着させて取り付ける。また、上型41には、ガス抜き口412が形成されており、このガス抜き口412がシート材3によって覆われる。
なお、シート材3は、上型41に取り付けられるが、上型41に備えられて下型42との間でキャビティ43を形成する中型部に取り付けられることもある。
【0048】
次いで、発泡工程として、下型42内に注入ノズル45から発泡性樹脂原料21を注入して成形型4を閉じ、上型41と下型42との間に形成されたキャビティ43内で発泡性樹脂原料21を発泡させる(図6参照)。ここで、発泡性樹脂原料21は、ウレタン発泡成形体を形成するものであり、ポリオール系樹脂原料、イソシアネート系樹脂原料、発泡剤、整泡剤等を混合したものからなる。
また、シート材3は、上型41の成形面411において発泡成形体1の裏面102における凸部114を形成する凹状成形面46、及び後方側凹部113を形成する凸状成形面45に対応する部分が若干下方に垂れ下がり、成形面411との間に隙間Sが形成される(図7参照)。
【0049】
そして、図6、図7に示すごとく、下型42内に注入された発泡性樹脂原料21が発泡を開始して膨張し、キャビティ43内を充たしていく。このとき、発泡性樹脂原料21が発泡する際に生ずるガスG1(水蒸気、炭酸ガス等であり、発泡剤の種類によって異なる。)及びキャビティ43内のガスG2(空気等)が、シート材3を上型41の成形面411に向けて押し上げると共にシート材3を透過する。なお、発泡剤の発泡によってキャビティ43内に生ずるガス圧力は、0.5〜1kgf/cm2(68.6〜98.1kPa)程度となる。
【0050】
シート材3を透過したガスG1及びG2は、上型41の成形面411とシート材3との間の隙間Sを通って、上型41に形成されたガス抜き口412及び上型41と下型42との間のパーティングライン44からキャビティ43の外部に排気される。
また、図8に示すごとく、発泡性樹脂原料21がシート材3に接触して、発泡性樹脂原料21自体によってシート材3が上型41の成形面411に押し当てられ、上型41の成形面411とシート材3との間の隙間Sに存在するガスG1及びG2がガス抜き口412からキャビティ43の外部へ排気される。
こうして、シート材3が上型41の成形面411に押し当てられて発泡性樹脂原料21から発泡成形体本体2が成形されると共に、発泡成形体本体2とシート材3とが一体化されて発泡成形体1が形成される。
【0051】
ところで、発泡成形体1を発泡成形する際に、成形型4の成形面411にシート材3を倣わせて、目的とする形状の発泡成形体1を得るためには、シート材3において、発泡性樹脂原料21が発泡する際に生ずるガスG1や、キャビティ43内のガスG2をどの程度の流量で透過させるかの透気抵抗度の調整が重要となる。
本例の延伸多孔質フィルム31は、延伸加工前のフィルムの材質、延伸加工の加工条件等を変更することにより、複数の微細孔311による透気抵抗度を容易に変化させることができる。そのため、シート材3の透気抵抗度を適切に調整することができ、発泡成形体1を発泡成形する際に、ガス圧力によってシート材3を押し上げる力と、シート材3を透過させるガスG1及びG2の透過量との調整を容易に行うことができる。
【0052】
それ故、本例の発泡成形体1の発泡成形方法によれば、シート材3の透気抵抗度の調整が容易であり、発泡成形時にシート材3を上型41の成形面411の凸状成形面45や凹状成形面46に容易に倣わせることができ、後方側凹部113や凸部114を有する目的とする形状の発泡成形体1を安定して得ることができる。
また、シート材3は、液体非透過性を有するため、発泡性樹脂原料21がシート材3に含浸するのを防止することができる。そのため、発泡性樹脂原料21がシート材3に含浸する場合に比べて、発泡性樹脂原料21の使用量を低減することができ、発泡成形体1を軽量化することができる。さらに、発泡成形体1を金属製フレームに取り付けたときに、シート材3に含浸した発泡性樹脂原料21と金属製フレームとの擦れ合いによる異音の発生を防止することができる。
【0053】
(確認試験1)
本確認試験1においては、本発明に含まれるシート材(発明品1、2)と比較のためのシート材(比較品1)及び不織布単体(比較品2)を作製し、これらの透気抵抗度(sec/100ml)、耐水圧(kPa)、加工時のカール性、発泡成形時の樹脂漏れ、発泡成形体の成形状態の性質を測定、観察し、総合評価を行った。
ここで、加工時のカール性とは、延伸多孔質フィルム31と不織布32とを貼り合わせる際に生じる変形のことをいい、カール性が良好とは、カールしないことを示す。また、発泡成形時の樹脂漏れとは、発泡成形時に発泡性樹脂原料21がシート材3を透過してしまう(発泡性樹脂原料21がシート材3に含浸してしまう)ことをいう。
【0054】
(発明品1)
発明品1は、透気抵抗度(JISP8117王研式試験機法による。以下同様。)が400sec/100mlのシート材である。発明品1は以下のようにして作製した。
直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.915g/cm3)80質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.903g/cm3)60質量部を樹脂(ポリマー)成分とし、平均粒径1.8μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)200質量部、酸化防止剤1質量部を、180℃で溶融混練し、混合材料を得た。この混合材料を用い、Tダイ法で溶融押出を行い、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃、延伸倍率3.5倍で長手延伸(MD)方向に延伸して、厚み50μmのポリエチレン系延伸多孔質フィルムを得た。
次に、ポリエステル系スパンボンド不織布(目付量:30g/m2)にスプレー塗工にて塗布量3g/m2のポリアミド系ホットメルト接着剤を塗布し、上記ポリエチレン系延伸多孔質フィルムと貼り合わせて、発明品1のシート材を作製した。
【0055】
(発明品2)
発明品2は、透気抵抗度が2000sec/100mlのシート材である。発明品2は以下のようにして作製した。
直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.915g/cm3)80質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.903g/cm3)60質量部を樹脂(ポリマー)成分とし、平均粒径1.8μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)160質量部、酸化防止剤1質量部を、180℃で溶融混練し、混合材料を得た。この混合材料を用い、Tダイ法で溶融押出を行い、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃、延伸倍率3.5倍で長手延伸(MD)方向に延伸して、厚み50μmのポリエチレン系延伸多孔質フィルムを得た。
次に、ポリエステル系スパンボンド不織布(目付量:30g/m2)にスプレー塗工にて塗布量3g/m2のポリアミド系ホットメルト接着剤を塗布し、上記ポリエチレン系延伸多孔質フィルムと貼り合わせて、発明品2のシート材を作製した。
【0056】
(比較品1)
比較品1は、透気抵抗度が10000sec/100mlのシート材である。比較品1は以下のようにして作製した。
直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.915g/cm3)80質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.903g/cm3)60質量部を樹脂(ポリマー)成分とし、平均粒径1.8μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)110質量部、酸化防止剤1質量部を、180℃で溶融混練し、混合材料を得た。この混合材料を用い、Tダイ法で溶融押出を行い、1軸ロール延伸方式により、延伸温度80℃、延伸倍率3.5倍で長手延伸(MD)方向に延伸して、厚み50μmのポリエチレン系延伸多孔質フィルムを得た。
次に、ポリエステル系スパンボンド不織布(目付量:30g/m2)にスプレー塗工にて塗布量3g/m2のポリアミド系ホットメルト接着剤を塗布し、上記ポリエチレン系延伸多孔質フィルムと貼り合わせて、比較品1のシート材を作製した。
【0057】
(比較品2)
比較品2は、透気抵抗度が2sec/100mlの不織布単体からなる。
【0058】
表1に、発明品1、2、比較品1、2についての各性質、総合評価を行った結果を示す。
【表1】

【0059】
同表において、発明品1、2は、加工時のカール性、発泡成形時の樹脂漏れ、発泡成形体の成形状態の各性質に優れ、総合評価が良好であった。これに対し、比較品1については、発泡成形体の成形状態において発泡成形時のエアー溜りによる成形ムラ(未充填)が生じ、比較品2については、発泡成形時の樹脂漏れが生じた。そのため、比較品1、2の総合評価は悪くなった。
以上の結果より、加工時のカール性、発泡成形時の樹脂漏れ、発泡成形体の成形状態の各性質に優れ、シート材を成形型の成形面の凹凸形状に倣わせ、目的とする形状の発泡成形体を得るためには、JISP8117王研式試験機法による透気抵抗度を10sec/100ml以上3000sec/100ml以下とし、特に50sec/100ml以上2500sec/100ml以下、さらに好ましくは100sec/100ml以上2000sec/100ml以下とすることが有効であることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
1 発泡成形体
102 裏面
2 発泡成形体本体
21 発泡性樹脂原料
3 シート材
31 延伸多孔質フィルム
311 微細孔
32 不織布
33 接着剤
4 成形型
41 上型
42 下型
43 キャビティ
S 隙間
1、G2 ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形体本体の外面にシート材が一体化された発泡成形体であって、
上記シート材は、延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと、不織布との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有しており、
上記シート材の上記不織布側が上記発泡成形体の外表面側に配置されて、上記シート材と上記発泡成形体本体とが一体化されていることを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡成形体において、上記シート材のJISP8117王研式試験機法による透気抵抗度は、10sec/100ml以上3000sec/100ml以下であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発泡成形体において、該発泡成形体は、車両の座席に用いるものであり、
該座席は上記発泡成形体の裏面にフレームが配置されて構成され、上記発泡成形体の裏面は上記フレームに対応した形状に形成され、
上記シート材は、上記発泡成形体本体の裏面に一体化されて上記フレームと当接することを特徴とする発泡成形体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡成形体において、上記シート材は、立体的形状を形成していることを特徴とする発泡成形体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡成形体において、上記延伸多孔質フィルムにおける上記複数の孔は、樹脂成分に充填剤が配合されたフィルムが延伸加工されて、上記充填剤の周囲に形成されていることを特徴とする発泡成形体。
【請求項6】
発泡成形体本体の外面にシート材が一体化された発泡成形体を、上型と下型とを有する成形型を用いて発泡成形する方法において、
延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと不織布との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有するシート材を準備し、
該シート材を、上記不織布が上記上型の成形面に対向する状態で該上型に取り付け、
上記下型内に発泡性樹脂原料を注入して上記成形型を閉じ、上記上型と上記下型との間に形成されたキャビティ内で上記発泡性樹脂原料を発泡させ、
該発泡性樹脂原料自体と該発泡性樹脂原料が発泡する際に生ずるガス圧力との少なくとも一方によって上記シート材を押し上げると共に、上記キャビティ内の気体を上記シート材を透過させて上記キャビティの外部に排気し、
上記発泡性樹脂原料自体と上記ガス圧力との少なくとも一方によって上記シート材を上記上型の成形面に押し当てて上記発泡性樹脂原料から上記発泡成形体本体を成形すると共に、該発泡成形体本体と上記シート材とを一体化して発泡成形体を形成することを特徴とする発泡成形体の発泡成形方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡成形体の発泡成形方法において、上記延伸多孔質フィルムにおける上記複数の孔は、樹脂成分に充填剤が配合されたフィルムが延伸加工されて、上記充填剤の周囲に形成されていることを特徴とする発泡成形体の発泡成形方法。
【請求項8】
発泡成形体本体の外面に一体化して発泡成形体を形成するためのシート材であって、
該シート材は、延伸加工を行って複数の孔を形成してなる延伸多孔質フィルムと、不織布との積層体で構成され、気体を透過させる一方、液体は透過させない性質を有していることを特徴とする発泡成形体用のシート材。
【請求項9】
請求項8に記載の発泡成形体用のシート材において、該シート材のJISP8117王研式試験機法による透気抵抗度は、10sec/100ml以上3000sec/100ml以下であることを特徴とする発泡成形体用のシート材。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の発泡成形体用のシート材において、上記発泡成形体は、車両の座席に用いるものであり、
該座席は上記発泡成形体の裏面にフレームが配置されて構成され、上記発泡成形体の裏面は上記フレームに対応した形状に形成され、
上記シート材は、上記発泡成形体本体の裏面に一体化されて上記フレームと当接することを特徴とする発泡成形体用のシート材。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の発泡成形体用のシート材において、上記延伸多孔質フィルムにおける上記複数の孔は、樹脂成分に充填剤が配合されたフィルムが延伸加工されて、上記充填剤の周囲に形成されていることを特徴とする発泡成形体用のシート材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−148204(P2011−148204A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11832(P2010−11832)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(501327662)日東ライフテック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】