説明

発泡成形部材及びその製造方法

【課題】発泡成形部材を金型から脱型し易く、且つ発泡成形体の発泡成形時に補強材の凸部が変形することを防止することができる発泡成形部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】発泡成形体は、第1の部分3と、該第1の部分3から延出した第2の部分4,5とを有している。発泡成形体は、発泡合成樹脂が第1の部分3から第2の部分4,5に向かって膨張することにより成形されたものである。第2の部分5は、その延出方向の途中部が先端側よりも厚さが大きなものとなっている。第2の部分5に補強材10が配設されている。第2の部分5の途中部において、補強材10に、該第2の部分5の内部側へ膨出した膨出部13が設けられている。膨出部13の第2の部分5と反対側に、発泡成形体2の成形時に該膨出部13の変形を防止するための変形防止部材15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡合成樹脂よりなる発泡成形体と、該発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設された面状の補強材とを備えた発泡成形部材に係り、特に該発泡成形体は、第1の部分と、該第1の部分から延出した第2の部分とを有しており、該発泡成形体は、前記発泡合成樹脂が該第1の部分から第2の部分に向かって膨張することにより成形されたものであり、該第2の部分は、その延出方向の途中部が先端側よりも厚さが大きなものとなっており、該第2の部分に前記補強材が配設されており、該第2の部分の前記途中部において、該補強材に、該第2の部分の内部側へ膨出した膨出部が設けられている発泡成形部材に関する。また、本発明は、この発泡成形部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや家屋内に設置されるソファー等のシートは、一般的に、軟質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッドと、このシートパッドを支持するシートフレームとを有している。このシートパッドがシートフレームと接触した際に異音が発生したり、シートパッドが破損したりすることを防止するために、シートパッドの裏面(着座者と反対側の面。以下、同様。)に、不織布等よりなる補強材が設けられることがある。この補強材付きシートパッドを金型を用いて成形するに際しては、予め金型の内面に補強材を取り付けておき、該金型内において発泡合成樹脂材料を発泡させる。これにより、裏面に補強材が一体化されたシートパッドが成形される。
【0003】
シートパッドとして、着座者に当接する主板部と、該主板部の周縁部から該主板部の裏面側へ延出した延出部と、該延出部の延出方向の先端側から主板部の裏面の中央側へ張り出した張出部とを有し、該主板部、延出部及び張出部によって囲まれた凹所にシートフレームを係合させるように構成されたものがある。このようなシートパッドの製造方法が特開2008−183129に記載されている。以下に、第6図を参照して同号のシートパッドの製造方法について説明する。第6図は、同号の図2と同様の金型の断面図である。
【0004】
第6図の通り、金型100は、上型101と、下型102と、該上型101にセットされた中型103とを有している。この下型102のキャビティ面によりシートパッドの正面(着座者側の面)側が成形され、上型101及び中型103のキャビティ面によりシートパッドの裏面側が成形される。中型103の側面から、前記凹所を形成するための突出部104(同号では言及なし。)が突設されている。即ち、この下型102のキャビティ底面と中型103の下面との間のキャビティ空間105によりシートパッドの主板部が成形され、該突出部104の突出方向の先端面と下型102のキャビティ側面との間のキャビティ空間106によりシートパッドの延出部が成形され、該突出部104の上面と上型101のキャビティ天井面との間のキャビティ空間107によりシートパッドの張出部が成形される(同号では、延出部と張出部とを合わせて延設部と称している。)。
【0005】
シートパッドを発泡成形する場合、中型103に補強材110(同号ではシート体と称されている。)を被着させ、下型102内に発泡合成樹脂原料を注入し、上型101と下型102とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。発泡合成樹脂原料は、その発泡の進行に伴って、キャビティ空間105,106,107をこの順に充填していく。これにより、主板部、延出部及び張出部が一体に形成される。また、これらの裏面(延出部及び張出部においては前記凹所の内側に臨む面)に補強材110が一体化される。金型100内のガスは、張出部の張り出し方向の先端側(以下、単に先端側と略す。)の上型101と中型103との間のパーティングラインPLを通って金型100外に排出される。
【0006】
第6図のように、キャビティ空間107に臨む上型101のキャビティ天井面が、張出部の張り出し方向の途中部(以下、単に途中部と略す。)において、該張出部の先端側のパーティングラインPLよりも高位となっている場合には、キャビティ空間107内にガスが残留し易くなり、張出部にボイド(製品の欠け)等の成形不良が生じるおそれがある。これを防止するために、同号では、突出部104の上面に、上型101のキャビティ天井面に向かって張り出す凸部108(同号では凹部形成部と称されている。)が一体に形成されている。シートパッドの発泡成形時には、キャビティ空間106からキャビティ空間107内に流入した発泡合成樹脂原料は、この凸部108を乗り越えるようにして張出部の先端側へ流れるため、発泡合成樹脂原料がキャビティ空間107内を上型101のキャビティ天井面まで十分に充填するようになり、張出部にボイド等の成形不良が発生することが防止される。
【0007】
同号の図3には、突出部104の上面に凸部108を設ける代わりに、補強材110に、該突出部104の上面から離反して上型101のキャビティ天井面に向かって膨出する膨出部(同号では凸部と称されている。)を設けることが記載されている。同号では、該膨出部は、補強材110のうち突出部104の上面に重なる部分を略Ω字形断面形状に熱成形することにより形成されている。シートパッドの発泡成形時には、キャビティ空間107内において、発泡合成樹脂原料は、この膨出部を乗り越えるようにして張出部の先端側へ流れるため、突出部104の上面に凸部108を設けた場合と同様に、発泡合成樹脂原料がキャビティ空間107内を上型101のキャビティ天井面まで十分に充填するようになり、張出部にボイド等の成形不良が発生することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−183129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特開2008−183129の図2の態様にあっては、中型103の突出部104の上面に、上型101のキャビティ天井面に向かって張り出す凸部108を一体に形成する必要があるので、金型の製造コストが増大するおそれがある。また、突出部104の上面から凸部108が張り出していると、シートパッドの脱型時に凸部108が張出部の裏面に引っ掛かって脱型しにくくなるおそれがある。
【0010】
同号の図3の態様では、突出部104の上面に凸部108を設ける代わりに、該突出部104の上面に配設される補強材110に、上型101のキャビティ天井面に向かって膨出する膨出部を設けているので、金型の加工が不要であり、金型の製造コストの増大を抑えることができる。また、突出部104から凸部108が張り出していないので、シートパッドの脱型も容易である。しかしながら、同号の0021段落にも記載の通り、一般的に、シートパッドの補強材は、不織布などの比較的柔軟な材料により構成されているので、シートパッドの発泡成形時に、キャビティ空間107を充填する発泡合成樹脂原料からの圧力により、膨出部が変形するおそれがある。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解消し、発泡成形部材を金型から脱型し易く、且つ発泡成形体の発泡成形時に補強材の膨出部が変形することを防止することができる発泡成形部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)の発泡成形部材は、発泡合成樹脂よりなる発泡成形体と、該発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設された面状の補強材とを備えた発泡成形部材であって、該発泡成形体は、第1の部分と、該第1の部分から延出した第2の部分とを有しており、該発泡成形体は、前記発泡合成樹脂が該第1の部分から第2の部分に向かって膨張することにより成形されたものであり、該第2の部分は、その延出方向の途中部が先端側よりも厚さが大きなものとなっており、該第2の部分に前記補強材が配設されており、該第2の部分の前記途中部において、該補強材に、該第2の部分の内部側へ膨出した膨出部が設けられている発泡成形部材において、該膨出部の該第2の部分と反対側に、該発泡成形体の成形時に該膨出部の変形を防止するための変形防止部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の発泡成形部材は、請求項1において、前記第2の部分は、一端が前記第1の部分に連なり、該第1の部分から離反方向へ延出した延出部と、該延出部の他端側から該第1の部分と対向するように該離反方向と交差方向に張り出した張出部とを有しており、該張出部の該第1の部分との対向面に前記補強材が設けられており、該張出部の該延出部からの張り出し方向の途中部において、該補強材に、該張出部の内部側へ膨出した前記膨出部が設けられており、該張出部の該対向面と反対側の外面は、該延出部からの張り出し方向の途中部が先端側よりも該対向面から離隔した形状となっていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発泡成形部材は、請求項1又は2において、前記補強材は不織布よりなることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の発泡成形部材は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記発泡成形部材はシートパッドであることを特徴とするものである。
【0016】
本発明(請求項5)の発泡成形部材の製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡成形部材の製造方法であって、金型の内面に前記補強材を配設する補強材配設工程と、該金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程とを有しており、該補強材配設工程で該補強材を金型内面に配設した状態において、前記膨出部が前記変形防止部材を介して金型内面に支持されることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6の発泡成形部材の製造方法は、請求項5において、前記膨出部は、前記補強材配設工程で前記補強材を金型内面に配設したときに、該補強材の一部が前記変形防止部材に押されて金型内面から離反することにより形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、補強材の膨出部の発泡成形体と反対側に、該発泡成形体の成形時に膨出部の変形を防止するための変形防止部材が設けられており、この発泡成形部材を製造するに際しては、補強材を金型内面に配設したときに、膨出部がこの変形防止部材を介して金型内面に支持されるようになる。これにより、発泡成形体の成形時に、金型内で膨張した発泡合成樹脂原料の圧力により補強材の膨出部が変形することが防止され、より確実に、第2の部分にボイド等の成形不良が発生することを防止することができる。また、本発明では、この変形防止部材は、金型内面に設けられたものではなく、発泡成形部材側に設けられているので、金型の製造コストの増大を抑えることができる。また、発泡成形部材の脱型時に、膨出部が金型に引っ掛かることがないので、発泡成形部材の脱型を容易に行うことができる。
【0019】
請求項2の態様にあっては、発泡成形体の第2の部分は、前述の特開2008−183129のシートパッドと同様に、第1の部分から延出した延出部と、該延出部から第1の部分と対向するように張り出した張出部とを有しており、この張出部の第1の部分との対向面と反対側の外面は、この張出部の延出部からの張り出し方向の途中部が先端側よりも該対向面から離隔した形状となっている。この張出部の第1の部分との対向面に補強材が設けられており、この張出部の延出部からの張り出し方向の途中部において、該補強材に、この張出部の内部側へ膨出した膨出部が設けられている。本発明によれば、発泡成形体の成形時に、変形防止部材によって膨出部の変形が防止されるため、この張出部にボイド等の成形不良が発生することを、より確実に防止することができる。
【0020】
請求項3の通り、本発明は、不織布よりなる補強材を備えた発泡成形部材に好適である。
【0021】
また、請求項4の通り、本発明の発泡成形部材は、シートパッドに好適である。
【0022】
請求項6の態様では、補強材配設工程で補強材を金型内面に配設したときに、この補強材の一部が変形防止部材に押されて金型内面から離反することにより膨出部が形成されるように構成されている。このように構成することにより、前述の特開2008−183129の図3の態様のように補強材を熱成形等により略Ω字形断面形状に成形することが不要となり、補強材の製造コストの低減及び補強材の製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る発泡成形部材の説明図である。
【図2】図1の発泡成形部材を製造するための金型の断面図である。
【図3】図1の発泡成形部材の製造途中時における金型の断面図である。
【図4】変形防止部材の他の形状例を示す断面図である。
【図5】変形防止部材の他の形状例を示す断面図である。
【図6】従来例に係る発泡成形部材の製造方法を示す金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、この実施の形態では、発泡成形部材として、車両用シートを構成するシートパッドのうち背もたれ部を構成するバックパッドを例示しているが、本発明は、バックパッド以外のシートパッド(例えばシートの腰掛部を構成するクッションパッド等)や、車両用以外の各種シートを構成するためのシートパッド、あるいはシートパッド以外の発泡成形部材にも適用可能である。
【0025】
第1図(a)は、実施の形態に係る発泡成形部材としてのシートパッドの斜視図であり、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図であり、第1図(c)は第1図(b)のC部分の拡大図である。第2図(a)は、このシートパッドを製造するための金型の要部断面図であり、第2図(b)は第2図(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、第2図(a)は、金型のうちシートパッド本体の上側張出部を成形するためのキャビティ空間付近の拡大図であり、変形防止部材の長手方向と直交方向の断面を示している。第3図は、このシートパッドの製造途中時における金型の第2図(a)と同様部分の断面図である。以下、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッドを用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0026】
この実施の形態では、発泡成形部材は、車両用シートを構成するシートパッド1である。特に、この実施の形態では、該シートパッド1は、シートの背もたれ部を構成するバックパッドである。このシートパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなる発泡成形体としてのシートパッド本体2と、該シートパッド本体2の後面に沿って配設された面状の補強材10とを備えている。補強材10は、シートパッド本体2と一体成形により一体化されている。このシートパッド本体2を発泡成形するための金型20の構成、並びにこの金型20を用いたシートパッド1の製造方法については後で詳しく述べる。このシートパッド1は、表皮材(図示略)によって外面が被覆され、シートのバックフレーム(図示略)に取り付けられるものとなっている。
【0027】
第1図(a),(b)の通り、シートパッド本体2は、バックフレームの前面側を覆う主板部3と、該主板部3の後面の上辺及び左右の側辺からそれぞれ後方へ延出した延出部4と、該延出部4の後端から該主板部3の後面の中央側へ張り出した張出部5とを有している。これらの主板部3、延出部4及び張出部5は一体的に形成されている。また、延出部4及び張出部5は、主板部3の後面の上辺及び左右の側辺に沿って連続して形成されている。これらの主板部3、延出部4及び張出部5によって囲まれた空間は、バックフレームの上辺及び左右の側辺がそれぞれ係合する凹所6となっている。この凹所6は、主板部3の後面の中央側に向かって開放している。この実施の形態では、該主板部3が請求項1の第1の部分に相当し、延出部4及び張出部5が第2の部分に相当する。なお、シートパッド本体2の主要部分の構成はこれに限定されない。
【0028】
この実施の形態では、主板部3の上辺に沿う張出部5(以下、上側張出部5という。)の後面に、後方へ張り出す凸部7が設けられている。この凸部7は、第1図(b),(c)の通り、上側張出部5の上下方向の途中部において最も後方へ張り出した形状となっており、該上側張出部5の後面の上端側及び下端側は、それぞれ、この凸部7の最後端部7pよりも前方に位置している。この実施の形態では、第1図(a)の通り、該凸部7は、上側張出部5の後面の左端から右端まで連続して形成されている。なお、凸部7の形状及び配置はこれに限定されない。
【0029】
この実施の形態では、補強材10は不織布よりなる。なお、補強材10を構成する材料は不織布に限定されるものではなく、不織布以外の材料(例えばフェルトや織布、編布等)により構成されてもよい。この実施の形態では、補強材10は、主板部3の後面に沿って配設される主片部11と、該主片部11の上辺に連なり、主板部3の上側の延出部4の下面及び上側張出部5の前面に沿って配設される上片部12と、該主片部11の左側の側辺に連なり、左側の延出部4の右側面及び張出部5の前面に沿って配設される左側片部(図示略)と、該主片部11の右側の側辺に連なり、右側の延出部4の左側面及び張出部5の前面に沿って配設される右側片部(図示略)とを有している。なお、この補強材10は、該主片部11、上片部12及び左右の側片部が1枚の不織布により連続して形成されたものであってもよく、各部がそれぞれ小片状の不織布により形成され、それらを縫い合わせたものであってもよい。
【0030】
この実施の形態では、第1図(c)及び第2図(a),(b)の通り、この補強材10の上片部12のうち上側張出部5の前面に沿う部分(以下、張出部配設部という。)12aに、後方に向かって膨出する膨出部13が設けられている。この膨出部13は、シートパッド本体2の発泡成形時に上側張出部5にボイド等の成形不良が発生することを防止するためのものである。この膨出部13は、張出部配設部12aを部分的に後方へ屈曲ないし湾曲させるようにして形成されており、膨出部13は、その周囲の張出部配設部12aと一連の材料(不織布)により構成されている。この膨出部13の前面側は、その周囲の張出部配設部12aの前面から後方へ凹陥した凹部14となっている。
【0031】
この膨出部13は、凸部7の最後端部7p(第1図(c))から上方へ50mm且つ下方へ50mmの範囲、特に該最張出部7pから上方へ20mm且つ下方へ20mmの範囲に形成されていることが好ましい。張出部配設部12aの後面から膨出部13の最後端部までの高さH(第2図(a))は、該張出部配設部12aの後面から凸部7の最後端部7pまでの上側張出部5の厚さT(第2図(a))の10〜70%特に20〜50%であることが好ましい。この実施の形態では、第2図(b)の通り、該膨出部13は、上側張出部5の前面の左端側から右端側にかけて左右方向に延在しており、その前面側の凹部14も、左右方向に延在した溝状となっている。
【0032】
この凹部14内に、シートパッド本体2の発泡成形時に膨出部13が変形することを防止するための変形防止部材15が設けられている。第2図(b)の通り、この変形防止部材15は、膨出部13の左端側から右端側まで連続して延設されている。この実施の形態では、該変形防止部材15は、長手方向と直交方向の断面形状が略方形の角棒状の外形を有したものとなっており、その一側面(後面)が凹部14の最深部に接着や粘着、縫着等の結合手段により結合されている。なお、変形防止部材15の膨出部13への結合手段は、接着、粘着、縫着に限定されない。この実施の形態では、第1図(c)及び第2図(a),(b)の通り、変形防止部材15の上面、下面並びに左右両端面は、凹部14の内面に非結合となっている。なお、変形防止部材15の形状や凹部14の内面への結合方法はこれに限定されない。
【0033】
この変形防止部材15は、シートパッド本体2の発泡成形時に、後述の金型20内で膨張した発泡合成樹脂原料からの圧力によって容易には変形しない強度を有した材料により構成されている。この変形防止部材15を構成する材料としては、例えばシートパッド本体2と同様のポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂や、不織布やフェルト等の繊維材料を塊状に成形したものなど、種々の材料を用いることができる。
【0034】
この実施の形態では、膨出部13は、前述の特開2008−183129の図3の態様のように張出部配設部12aを熱成形等により略Ω字形断面形状に成形することによって形成されたものではなく、後述の通り補強材10を中型23に被着させたときに、該中型23の外面と補強材10の張出部配設部12aとの間に変形防止部材15が介在することにより、該張出部配設部12aのうち変形防止部材15と重なった部分が変形防止部材15の厚さ分だけ中型23の外面から離反して膨出部13が形成されるように構成されている。即ち、この実施の形態では、補強材10を中型23に被着させるまでは、張出部配設部12aには膨出部13が形成されていない。このように構成したことにより、特開2008−183129の図3の態様のように補強材10を熱成形等により略Ω字形断面形状に成形することが不要となり、補強材10の製造コストの低減及び補強材10の製造工程の簡略化を図ることができる。なお、本発明においても、特開2008−183129の図3の態様と同様に、予め張出部配設部12aを熱成形等により略Ω字形断面形状に成形することによって膨出部13が形成されていてもよい。
【0035】
補強材10の端縁(例えば主片部11の下端縁、上片部12の張出部配設部12aの下端縁、左右の各側片部の側端縁などの補強材10の外周縁や、開口部(切込み等も含む。)の周縁部)には、この補強材10を中型23の外面に留め付けるための留付手段が設けられている。この留付手段としては、例えば、補強材10を中型23の外面に磁気的に吸着させるように該補強材10及び中型23の外面に配設された磁石や、補強材10と中型23とを連結するクリップや両面テープなど、種々の構成のものを用いることができる。
【0036】
次に、シートパッド本体2を成形するための金型20について説明する。第2図の通り、この実施の形態では、金型20は、上型21と、下型22と、該上型21にセットされた中型23とを有している。この実施の形態でも、前述の特開2008−183129と同様に、この下型22のキャビティ面によりシートパッド本体2の前面側が成形され、上型21及び中型23のキャビティ面によりシートパッド本体2の後面側が成形される。以下、便宜上、金型20の各部の方向をシートパッド本体2の上下方向、左右方向及び前後方向に対応させて該金型20の各部の構成について説明する。(即ち、以下、第2図(a)における左右方向を上下方向とし、第2図(a)における下方を前方とし、第2図(a)における上方を後方とし、第2図(a)の紙面と垂直方向を左右方向として金型20の各部の構成について説明する。)中型23の上端面及び左右の側面からは、前記凹所6を形成するための突出部24が突設されている。この突出部24は、中型23の上端面から左右の側面にかけて連続して形成されている。下型22のキャビティ底面と中型23の前面との間のキャビティ空間25によりシートパッド本体2の主板部3が成形され、突出部24の突出方向の先端面と下型22のキャビティ側面との間のキャビティ空間26により延出部4が成形され、該突出部24の後面と上型21のキャビティ天井面との間のキャビティ空間27により張出部5が成形される。
【0037】
第2図(a)の通り、上側張出部5を成形するためのキャビティ空間27に臨む上型21のキャビティ天井面は、該上側張出部5の後面の凸部7の外面形状と合致するように、該上側張出部5の上下方向の途中部が該上側張出部5の上端側及び下端側よりも突出部24の後面から離隔した形状となっている。上型21と中型23とのパーティングラインPLは、該上側張出部5の下端側に位置している。即ち、第2図(a)の通り、シートパッド本体2の主板部3の前面が下向きとなるように金型20を配置した状態にあっては、上型21のキャビティ天井面は、上側張出部5の上下方向の途中部において、該上側張出部5の下端側のパーティングラインPLよりも高位となっている。
【0038】
この金型20を用いて補強材10付きシートパッド1を製造する場合、まず、上型21と下型22とを型開きし、中型23に補強材10を被着させる。この際、第2図(a)の通り、補強材10の主片部11を中型23の前面に重ね、上片部12を上側の突出部24に被せ、張出部配設部12aを該突出部24の後面に重ねる。また、左右の各側片部を左右の突出部24(図示略)に被せる。張出部配設部12aを突出部24の後面に重ねると、第2図(a),(b)の通り、該張出部配設部12aの前面に取り付けられた変形防止部材15が突出部24の後面に当接し、該張出部配設部12aのうち変形防止部材15と重なった部分及びその周辺部が突出部24の後面から離反して膨出部13が形成される。この実施の形態では、変形防止部材15の上面、下面及び左右両端面は、張出部配設部12aに非結合となっているので、張出部配設部12aが変形防止部材15によって突出部24の後面から離反方向へ押し出されると、該張出部配設部12aのうち変形防止部材15の周辺部は、突出部24の後面から変形防止部材15の後端面に向かってなだらかに立ち上がる斜面となる(即ち、略台形断面形状の膨出部13が形成される。)。この実施の形態では、変形防止部材15は、略方形断面形状の角棒状となっているので、この張出部配設部12aの斜面と変形防止部材15の上面、下面及び左右両端面との間には隙間が生じている。なお、この隙間が生じないようにするために、変形防止部材15を、張出部配設部12aの前面に接近するほど上下方向及び左右方向の幅が大きくなる略台形断面形状としてもよい。このように膨出部13を突出部24の後面からなだらかに立ち上がる略台形断面形状とすることにより、該膨出部13の近傍のボイドや欠肉等の発生が抑制され、発泡成形体の成形状態を良好に保つことができる。このようにして補強材10を中型23に被せた後、補強材10の端縁を前記留付手段により中型23の外面に留め付ける。これにより、補強材10の中型23への取り付けが完了する。
【0039】
次に、下型22内に発泡合成樹脂原料を注入し、上型21と下型22とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。この発泡合成樹脂原料は、キャビティ空間25,26,27をこの順に充填していく。これにより、シートパッド本体2の主板部3、延出部4及び張出部5が一体に形成される。また、これらの裏面(延出部4及び張出部5においては前記凹所6の内側に臨む面)に補強材10が一体化される。この際、上側張出部5を成形するためのキャビティ空間27内のガスは、該上側張出部5の下端側の上型21と中型23との間のパーティングラインPLを通って金型20外に排出される。
【0040】
前述の通り、このキャビティ空間27に臨む上型21のキャビティ天井面は、上側張出部5の上下方向の途中部において、該上側張出部5の下端側のパーティングラインPLよりも高位となっているが、これと対向する中型23の突出部24の後面に配設された補強材10の張出部配設部12aには、該突出部24の後面から離反して上型21のキャビティ天井面に向かって膨出した膨出部13が形成されているので、キャビティ空間26からキャビティ空間27内に流入した発泡合成樹脂原料は、第3図の通り、この膨出部13を乗り越えるようにして上側張出部5の下端側へ流れるため、発泡合成樹脂原料がキャビティ空間27内を上型21のキャビティ天井面まで十分に充填するようになり、上側張出部5及び凸部7にボイド等の成形不良が発生することが防止される。
【0041】
本発明にあっては、この膨出部13と突出部24の後面との間に変形防止部材15が配置され、該膨出部13がこの変形防止部材15を介して突出部24の後面に支持されているので、キャビティ空間27を充填する発泡合成樹脂原料からの圧力により膨出部13が変形する(例えば押し潰される)ことが防止される。これにより、より確実に、上側張出部5及び凸部7にボイド等の成形不良が発生することを防止することができる。なお、この膨出部13は、その周囲の張出部配設部12aと連続した材料により構成されており、変形防止部材15は、この膨出部13を構成する材料によって覆われているので、この変形防止部材15に直接、発泡合成樹脂原料が接触することがない。これにより、発泡合成樹脂原料が膨出部13上を流れるときに、該発泡合成樹脂原料の発泡状態が不安定化したり、該発泡合成樹脂原料が変形防止部材15に含浸することが防止されるため、シートパッド1の品質を良好なものとすることができる。
【0042】
キャビティ空間25〜27を充填した発泡合成樹脂が硬化した後、上型21と下型22とを型開きしてシートパッド本体2を脱型する。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0043】
本発明にあっては、前記変形防止部材15は、中型23の突出部24の上面から突設されたものではなく、中型23とは別体に構成され、シートパッド1の補強材10の膨出部13の前面に取り付けられたものであるため、シートパッド本体2の脱型時に膨出部13が突出部24の後面に引っ掛かることがなく、シートパッド本体2の脱型を容易に行うことができる。なお、このように変形防止部材15を中型23と別体に構成したことにより、金型20の加工が不要であり、金型製造コストの増大を抑えることができる。
【0044】
以上の通り、本発明によれば、シートパッド1を金型20から脱型し易く、且つシートパッド本体2の発泡成形時に補強材10の膨出部13が変形することを防止することができるので、シートパッド1の製造作業が容易であり、且つ高品質なシートパッド1を歩留まり良く製造することができる。
【0045】
<変形防止部材のその他の構成>
第4図(a)〜(c)は、それぞれ、変形防止部材の別の形状例を示す、第2図(a)と同様部分の断面図であり、第5図(a),(b)は、それぞれ、変形防止部材のさらに別の他の形状例を示す、第2図(b)と同様部分の断面図である。
【0046】
前述の実施の形態では、変形防止部材15は、長手方向と直交方向の断面形状(以下、単に断面形状と略す。)が略方形となっているが、変形防止部材の形状はこれに限定されない。例えば、第4図(a)の変形防止部材15Aのように、補強材10の張出部配設部12aの前面に接近するほど上下方向の幅が大きくなる略台形の断面形状を有したものであってもよく、第4図(b)の変形防止部材15Bのように、後端側が尖った略三角形の断面形状を有したものであってもよく、第4図(c)の変形防止部材15Cように、後端側の外面が後方に向かって凸に湾曲した略半円形の断面形状を有したものであってもよい。
【0047】
前述の実施の形態では、変形防止部材15は、左端側から右端側まで前後方向の厚さが略一定となっているが、部分的に前後方向の厚さが異なっていてもよい。例えば、第5図(a)の変形防止部材15Dは、その後面に、前方へ凹陥した凹部16が形成されたものとなっている。第5図(a)では、変形防止部材15Dの長手方向に間隔をおいて2個の凹部16が形成されているが、凹部16の個数及び配置はこれに限定されない。このように変形防止部材15Dの後面に凹部16を形成することにより、この凹部16においては膨出部13の高さTが小さくなるため、発泡合成樹脂原料がこの膨出部13を乗り越えて上側張出部5の下端側へ流れ易くなる。
【0048】
前述の実施の形態では、膨出部13は上側張出部5の前面の左端側から右端側まで連続したものとなっているが、第5図(b)のように、複数個の膨出部13が所定の間隔を空けて断続的に形成されてもよい。このように構成した場合にも、隣り合う膨出部13同士の間を通って発泡合成樹脂原料が上側張出部5の下端側へ流れ易くなる。
【0049】
前述の実施の形態では、変形防止部材15は、上側張出部5の前面の左端側から右端側まで一直線状に延在又は配列されているが、非一直線状に延在又は配列されてもよい。
【0050】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様とされてもよい。
【0051】
例えば、上記の実施の形態では、シートパッド本体2の上側張出部5の後面にのみ凸部7を設けているが、シートパッド本体2の左右の張出部5の後面にも凸部7が設けられてもよい。この場合、左右の張出部5の前面に配設される補強材10の左右の側片部にも膨出部13及び変形防止部材15が設けられてもよい。
【0052】
上記の実施の形態は、シートパッド及びその製造方法への本発明の適用例を示しているが、本発明は、シートパッド以外の、第1の部分と、該第1の部分に連なる第2の部分とを有する発泡成形体を備えた発泡成形部材であって、該発泡成形体は、該第1の部分から第2の部分に向かって発泡合成樹脂が膨張することにより成形されたものである発泡成形部材及びその製造方法にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 シートパッド(発泡成形部材)
2 シートパッド本体
3 主板部
4 張出部
5 張出部
6 凹部
7 凸部
10 補強材
11 主片部
12 上片部
12a 張出部配設部
13 膨出部
14 凹部
15,15A〜15D 変形防止部材
20 金型
21 上型
22 下型
23 中型
24 突出部
25〜27 キャビティ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂よりなる発泡成形体と、
該発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設された面状の補強材と
を備えた発泡成形部材であって、
該発泡成形体は、
第1の部分と、
該第1の部分から延出した第2の部分と
を有しており、
該発泡成形体は、前記発泡合成樹脂が該第1の部分から第2の部分に向かって膨張することにより成形されたものであり、
該第2の部分は、その延出方向の途中部が先端側よりも厚さが大きなものとなっており、
該第2の部分に前記補強材が配設されており、
該第2の部分の前記途中部において、該補強材に、該第2の部分の内部側へ膨出した膨出部が設けられている発泡成形部材において、
該膨出部の該第2の部分と反対側に、該発泡成形体の成形時に該膨出部の変形を防止するための変形防止部材が設けられていることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項2】
請求項1において、前記第2の部分は、
一端が前記第1の部分に連なり、該第1の部分から離反方向へ延出した延出部と、
該延出部の他端側から該第1の部分と対向するように該離反方向と交差方向に張り出した張出部とを有しており、
該張出部の該第1の部分との対向面に前記補強材が設けられており、
該張出部の該延出部からの張り出し方向の途中部において、該補強材に、該張出部の内部側へ膨出した前記膨出部が設けられており、
該張出部の該対向面と反対側の外面は、該延出部からの張り出し方向の途中部が先端側よりも該対向面から離隔した形状となっていることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記補強材は不織布よりなることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記発泡成形部材はシートパッドであることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発泡成形部材の製造方法であって、
金型の内面に前記補強材を配設する補強材配設工程と、
該金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程と
を有しており、
該補強材配設工程で該補強材を金型内面に配設した状態において、前記膨出部が前記変形防止部材を介して金型内面に支持されることを特徴とする発泡成形部材の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、前記膨出部は、前記補強材配設工程で前記補強材を金型内面に配設したときに、該補強材の一部が前記変形防止部材に押されて金型内面から離反することにより形成されることを特徴とする発泡成形部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−213084(P2011−213084A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86223(P2010−86223)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】