説明

登録装置、登録方法及びプログラム

【課題】
ユーザの認証効率を低下させることなく、ユーザの利便性を向上させ得る登録装置を提案する。
【解決手段】
生体部位における識別対象を信号として読み取る読取手段と、読取手段により読み取られた信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する抽出手段と、信号処理手段により各抽出形式に従って抽出された複数の識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、各抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録する登録手段とを設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、登録装置、登録方法及びプログラムに関し、例えばバイオメトリクス認証に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオメトリクス認証が着目されており、例えば銀行では、実際の生体部位から生体データを抽出すると共に、キャッシュカードの内蔵記憶媒体に予め登録された生体データを読み出し、これら生体データの照合結果に応じて、銀行サーバとの間で貨幣を引き出すための処理等を実行するようになされたシステムが実用化されている。
【0003】
このようなシステムは、銀行のみならず各種金融機関で実用化されることが想定され、当該システムには、各種金融機関ごとに独自のバイオメトリクス認証が採用されることも想定される。
【0004】
ところで、バイオメトリクス認証を適用した商取引システムとして、例えば、商取引の申し込み主体を特定するのに必要なユーザの生物学的特徴を認識する複数の認識装置と、金融機関やクレジット会社に設けられた複数の端末機との間に、ユーザのIDデータ及び生物学的特徴を個人ファイルとして保持されたコンピュータを設けたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この商取引システムでは、コンピュータは、認識装置から認識結果が入力されると、個人ファイルを検索し、その個人ファイルに登録された同一の生物学的特徴を有するユーザが商取引の申し込み主体であるとして認定し、当該認識装置と、その取引相手である端末機との間におけるデータの授受を仲介することができる。
【特許文献1】特開2001−338135公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがかかる商取引システムでは、生体識別対象として抽出する種類(例えば指紋又は血管等)及び抽出箇所(例えば指又は掌等)などが金融機関に応じて相違する場合には、コンピュータが、金融機関ごとに対応する生体識別対象の抽出方式に従って抽出処理を実行する必要がある。
【0007】
この場合、コンピュータは、複数の認識装置及び端末機を一括管理しているため、申し込み主体における生物学的特徴が複数の認識装置から同時に又は順次入力されることを考慮すると、ユーザの認証処理の効率が著しく低下し、実質上機能しないといった事態が想定される。
【0008】
一方、各種金融機関が独自のバイオメトリクス認証を採用することに伴って、当該金融機関に対応するキャッシュカードが発行される場合も想定され、この場合、ユーザにとっては、各種金融機関に対応するキャッシュカードを所持しなければならないといった事態や、各種キャッシュカードのうち使用対象の貨幣支払機(いわゆるATM(Automatic teller machine))に対応するキャッシュカードがどれであるか分からなくなるといった事態が想定される。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ユーザの認証効率を低下させることなく、ユーザの利便性を向上させ得る登録装置、登録方法及びプログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明は、登録装置であって、生体部位における識別対象を信号として読み取る読取手段と、読取手段により読み取られた信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する抽出手段と、信号処理手段により各抽出形式に従って抽出された複数の識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、各抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録する登録手段とを設けるようにした。
【0011】
従って、この登録装置では、複数の抽出形式に従って抽出された各識別対象のパターンが記憶媒体に登録されるため、当該識別対象のパターンと比較するためのパターンを抽出する抽出方式が各端末装置で相違する場合であっても、それら抽出方式に応じた複数の記憶媒体の所持をユーザに強要させずに、一の記憶媒体を共用させることができる。また、記憶媒体に登録される認証対象のパターンには各抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードが対応付けられているため、当該端末装置に対して、自己の抽出方式に対応する識別対象のパターンが記憶媒体に登録されているか否かを認証処理の実行前に把握させ得るので、不要な認証処理を確実に回避させることができる。
【0012】
また本発明は、登録方法であって、生体部位における識別対象を信号として読み取る第1のステップと、信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する第2のステップと、各抽出形式に従って抽出された複数の識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、各抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録する第3のステップとを設けるようにした。
【0013】
従って、この登録方法では、複数の抽出形式に従って抽出された各識別対象のパターンが記憶媒体に登録されるため、当該識別対象のパターンと比較するためのパターンを抽出する抽出方式が各端末装置で相違する場合であっても、それら抽出方式に応じた複数の記憶媒体の所持をユーザに強要させずに、一の記憶媒体を共用させることができる。また、記憶媒体に登録される認証対象のパターンには各抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードが対応付けられているため、当該端末装置に対して、自己の抽出方式に対応する識別対象のパターンが記憶媒体に登録されているか否かを認証処理の実行前に把握させ得るので、不要な認証処理を確実に回避させることができる。
【0014】
さらに本発明は、プログラムであって、コンピュータに対して、生体部位における識別対象を信号として読み取る第1の処理と、信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する第2の処理と、各抽出形式に従って抽出された複数の識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、各抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録する第3の処理とを実行させるようにした。
【0015】
従って、このプログラムでは、複数の抽出形式に従って抽出された各識別対象のパターンが記憶媒体に登録されるため、当該識別対象のパターンと比較するためのパターンを抽出する抽出方式が各端末装置で相違する場合であっても、それら抽出方式に応じた複数の記憶媒体の所持をユーザに強要させずに、一の記憶媒体を共用させることができる。また、記憶媒体に登録される認証対象のパターンには各抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードが対応付けられているため、当該端末装置に対して、自己の抽出方式に対応する識別対象のパターンが記憶媒体に登録されているか否かを認証処理の実行前に把握させ得るので、不要な認証処理を確実に回避させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、生体部位における識別対象を信号として読み取り、当該読み取られた信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出し、これら抽出形式に従って抽出された複数の識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、当該抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録するようにしたことにより、互いに異なる抽出形式が採用された複数の端末装置で記憶媒体を共用させることができると共に、当該端末装置に対して不要な認証処理を確実に回避させることができ、かくしてユーザの認証効率を低下させることなく、ユーザの利便性を向上させ得る登録装置、登録方法及びプログラムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0018】
(1)本実施の形態による商取引システムの構成
図1において、1は本実施の形態による商取引システムの全体構成を示し、所定のキャッシュカードCDに搭載されたEEPROM等の記憶媒体MRに生体データを記憶又は当該記憶された生体データを更新する複数の登録装置2〜2(Nは整数)と、複数の貨幣支払機(以下、これをATMと呼ぶ)3〜3(Mは整数)と、各種金融機関のサーバ(以下、これをと金融サーバ呼ぶ)4〜4(Lは整数)とによって構成される。
【0019】
この商取引システム1における登録装置2〜2及びATM3〜3は、例えば銀行やコンビニエンスストア等の所定の各種施設に設置されており、当該登録装置2〜2は例えばインターネット等のローカルネットワーク5にそれぞれ接続され、ATM3〜3は専ら金融機関内で情報の授受するためのネットワーク(以下、これを金融ネットワークと呼ぶ)6にそれぞれ接続されている。また登録装置2〜2はそれぞれ同一の構成でなっている。
【0020】
ここで、説明の便宜上、図2に示すように、登録装置2と、第1の銀行に設置されたATM(以下、これを第1銀行ATMと呼ぶ)3と、第2の銀行に設置されたATM(以下、これを第2銀行ATMと呼ぶ)3と、第1の銀行における金融サーバ(以下、これを第1銀行サーバと呼ぶ)4と、第2の銀行における金融サーバ(以下、これを第2銀行サーバと呼ぶ)4とに着目して以下説明する。
【0021】
登録装置2は、生体の掌に内在する血管を信号(以下、これを掌血管信号と呼ぶ)として読み取ると同時に、その掌に表在する指紋を信号(以下、これを掌指紋信号と呼ぶ)として読み取るセンサ(以下、これを指紋血管読取センサと呼ぶ)21と、当該掌血管信号又は掌指紋信号に対して、各金融機関(金融サーバ4〜4)で採用される抽出方式に対応するプログラム(以下、これを抽出プログラムと呼ぶ)に従って信号処理を施す信号処理部22とを搭載している。
【0022】
この各金融機関で採用される抽出方式には、当該抽出方式を、識別対象の種類と、当該識別対象のパターンを抽出する抽出領域と、当該識別対象を生体データとして抽出する処理の内容(以下、これを抽出処理内容と呼ぶ)とに分類して表すコード(以下、これを分類コードと呼ぶ)がそれぞれ割り当てられている。
【0023】
この実施の形態の場合、図3に示すように、識別対象には指紋及び血管が採用され、抽出領域には掌領域及び指領域が採用され、抽出処理内容にはA処理、B処理及びC処理が採用されており、これら識別対象、抽出領域及び抽出処理内容の組み合わせが分類コードに反映されている。そして第1の金融機関(第1銀行サーバ4)で採用された抽出方式には、掌の指紋をA処理で抽出すべきことを表す第1の分類コードCLが割り当てられ、第2の金融機関(第2銀行サーバ4)で採用された抽出方式には、指の血管をB処理で抽出すべきことを表す第2の分類コードCLが割り当てられ、また第3以降の金融機関(金融サーバ4〜4)も分類コードCL〜CLがそれぞれ割り当てられている。
【0024】
信号処理部22は、かかる分類コードCLに対応する抽出プログラムに従って、指紋血管読取センサ21で読み取られた掌指紋信号に対してA処理を施して掌の指紋パターンを表す生体データを抽出すると共に、分類コードCLに対応する抽出プログラムに従って、指紋血管読取センサ21で読み取られた掌血管信号に対してB処理を施して指の血管パターンを表す生体データを抽出する。同様に、信号処理部22は、分類コードCL〜CLに対応する抽出プログラムに従って、指紋血管読取センサ21で読み取られた指紋信号又は血管信号に対してA処理、B処理又はC処理を施し、当該分類コードCL〜CLに対応する複数の生体データをそれぞれ抽出する。
【0025】
そして信号処理部22は、これら生体データを、対応する分類コードCLとともに、このとき所定の装填箇所に装填されたキャッシュカードCDの記憶媒体MRに記憶又は更新することにより登録するようになされている。この結果、ユーザは、かかるキャッシュカードCDを所持してさえいれば、複数枚のキャッシュカードを所持することなく各金融機関で採用される抽出方式に対応した複数の生体データを保持することができることになる。
【0026】
一方、第1銀行ATM3は、生体の掌に表在する指紋を掌指紋信号として読み取るセンサ(以下、これを掌指紋読取センサと呼ぶ)31と、第1の銀行で採用された抽出方式に従って生体データを抽出する抽出処理部32とを搭載している。
【0027】
この第1銀行ATM3は、第1の銀行サーバ4と商取引を行う操作が行われた場合、このとき所定の装填箇所に装填されたキャッシュカードCDの記憶媒体MRに記憶された生体データのうち、第1の銀行サーバ4の分類コードCLが付加された生体データを読み出す。そして第1銀行ATM3は、この生体データと、このときキャッシュカードCDを所持するユーザから掌指紋読取センサ31及び抽出処理部32を順次介して抽出した生体データとを照合し、この照合結果に応じて、第1銀行サーバ4と各種データを授受することにより、貨幣引出、残高照会、振込及び記帳等の商取引処理を実行する。
【0028】
これに対して、第1銀行ATM3は、当該第1銀行ATM3に対応する第1銀行サーバ4以外の金融サーバとして例えば第2銀行サーバ4と商取引を行う操作が行われた場合、このときキャッシュカードCDを所持するユーザに第2銀行サーバ4に対する暗証番号を入力させ、当該入力された暗証番号のデータ(以下、これを暗証番号データと呼ぶ)を金融ネットワーク6を介して第2銀行サーバ4に送信する。そして第1銀行ATM3は、この暗証番号データに基づく第2銀行サーバ4での照合結果に応じて、第2銀行サーバ4と各種データを授受することにより商取引処理を実行するようになされている。
【0029】
また第2銀行ATM3は、生体の指に内在する血管を信号(以下、これを指血管信号と呼ぶ)として読み取るセンサ(以下、これを指血管読取センサと呼ぶ)31と、当該血管信号から第2の銀行で採用された抽出方式に従って生体データを抽出する抽出処理部32とを搭載している。
【0030】
この第2銀行ATM3は、第2の銀行サーバ4と商取引を行う操作が行われた場合、このとき所定の装填箇所に装填されたキャッシュカードCDの記憶媒体MRに記憶された生体データのうち、第2の銀行サーバ4の分類コードCLが付加された生体データと、当該キャッシュカードCDを所持するユーザから指血管読取センサ31及び抽出処理部32を順次介して抽出した生体データとを照合し、この照合結果に応じて、第2の銀行サーバ4と各種データを授受することにより商取引処理を実行する。
【0031】
これに対して、第2銀行ATM3は、当該第2銀行ATM3に対応する第2銀行サーバ4以外の金融サーバとして例えば第1銀行サーバ4と商取引を行う操作が行われた場合、第1銀行ATM3と同様に、このときキャッシュカードCDを所持するユーザに入力された暗証番号データを金融ネットワーク6を介して第1銀行サーバ4に送信する。そして第2銀行ATM3は、この暗証番号データに基づく第1銀行サーバ4での照合結果に応じて、第1銀行サーバ4と各種データを授受することにより商取引処理を実行するようになされている。
【0032】
他方、第1銀行サーバ4は、第1の銀行と契約した契約者の口座と、その契約者が決定した暗証番号と、預金等との対応付けをデータベース(以下、これを第1銀行口座データベースと呼ぶ)DB1として保持しており、当該第1銀行口座データベースDB1に基づいて、第1銀行ATM3、第2銀行ATM3、ATM3、……、又はATM2と各種データを授受することにより商取引処理を実行するようになされている。
【0033】
また第2銀行サーバ4は、第2の銀行と契約した契約者の口座と、その契約者が決定した暗証番号と、預金等との対応付けをデータベース(以下、これを第2銀行口座データベースと呼ぶ)DB2として保持しており、当該第2銀行口座データベースDB2に基づいて、第1銀行ATM3、第2銀行ATM3、ATM3、……、又はATM3と各種データを授受することにより商取引処理を実行するようになされている。
【0034】
このようにこの商取引システム1(図1)では、正規ユーザが一枚のキャッシュカードCDを所持してさえいれば、いずれのATM3〜3からでも貨幣を引き出す等の商取引行為ができるようになされている。
【0035】
またこの商取引システム1では、各金融機関で採用される抽出方式に対応する抽出処理機能をATM3〜3に搭載するといったことを強要させずに、ATM3〜3から貨幣を引き出す等の商取引行為ができるため、当該抽出処理機能をATM3〜3に搭載する場合に比して、ユーザ単位の貨幣引出処理の効率の低下を格段に抑制することができる。なお、既に稼働されているATMについては、分類コードCL〜CL(図3)を識別するための構成を付加するといった簡易な変更を施すだけで、当該変更したATMをATM3〜3として用いることができるようになされている。
【0036】
かかる構成に加えて、この商取引システム1では、分類コードCL及びその分類コードCLの抽出処理内容に対応する抽出プログラムを管理する管理サーバ10がローカルネットワーク5に接続されている。そして登録装置2は、この管理サーバ10にローカルネットワーク5を介して定期的に接続し、当該管理サーバ5で管理される最新の分類コードCL及び抽出プログラムに更新するようになされている。
【0037】
これによりこの商取引システム1では、新規参入又は脱退する金融サーバがあっても、当該金融サーバを増減した分類コードCL〜CL(図3)を識別させるといった簡易な変更をATM3〜3に対して施すだけで、正規ユーザが一枚のキャッシュカードCDの記憶媒体MRを登録装置2〜2により更新を済ましてさえいれば、いずれのATM3〜3からでもからでも貨幣を引き出す等の商取引行為ができるようになされている。
【0038】
(2)登録装置の構成
この登録装置2〜2は同一構成であるため、ここでは登録装置2について説明する。図4に示すように、登録装置2は、当該登録装置2全体の制御を司る制御部20に対して、指紋血管読取センサ21、信号処理部22、カードリーダライタ部23及びローカルネットワークインターフェース24がそれぞれ接続されることにより構成される。
【0039】
この制御部20は、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムや設定情報等の各種情報が格納されたROM(Read Only Memory)と、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを有しており、当該ROMに格納された各種情報等に基づいて各種処理を実行する。
【0040】
具体的に制御部20は、定期的にローカルネットワークインターフェース24を介して管理サーバ10(図1)接続し、当該管理サーバ5で管理される最新の分類コードCL及び抽出プログラムを要求する。そして制御部20は、かかる要求の応答結果として管理サーバ10から供給される最新の分類コードCL及び抽出プログラムを信号処理部22の内蔵メモリ(図示せず)に記憶更新するようになされている。
【0041】
また制御部20は、図示しない操作部から登録処理命令を受けた場合には、指紋血管読取センサ21及び信号処理部22を制御して登録処理を開始する(図5:ステップSP0)。この場合、指紋血管読取センサ21は、掌血管信号S1及び掌指紋信号S2を同時に読み取る(図5:ステップSP1)。
【0042】
具体的には、指紋血管読取センサ21は、例えば、所定の載置台に載置された掌の血管に特異的に吸収される近赤外光を照射し、当該掌の血管を投影した近赤外光を光電変換により掌血管信号S1として生成すると共に、当該掌の指紋を静電誘導により掌指紋信号S2として生成し、これら血管信号S1及び掌指紋信号S2を信号処理部22に送出する。
【0043】
信号処理部22は、このとき内蔵メモリに記憶された例えば分類コードCL〜CLの抽出処理内容に対応する抽出プログラムに従って所定の抽出処理をそれぞれ実行するようになされている(図5:ステップSP2)。
【0044】
実際上、信号処理部22は、分類コードCLに対応する抽出プログラムに従ってA処理を施すようになされており、具体的には、掌指紋信号S2に対してA/D(Analog/Digital)変換処理、エッジ抽出処理及び線状化処理を順次施し、掌における線状の指紋パターンを生体データBDとして抽出する。
【0045】
また信号処理部22は、分類コードCLに対応する抽出プログラムに従ってB処理を施すようになされており、具体的には、掌血管信号S1に対してA/D(Analog/Digital)変換処理及びエッジ抽出処理を順次施した後に例えば中指を司る輪郭線を検出し、当該検出した中指における血管のうち予め規定された範囲内の血管部分のデータを切り出す。そして信号処理部22は、血管部分のデータに対してノイズ除去処理、2値化処理及び線状化処理を順次施し、指における線状の血管パターンを生体データBDとして抽出する。
【0046】
同様に信号処理部22は、分類コードCL〜CLの抽出プログラムに従って、掌指紋信号S2又は掌血管信号S1に対して対応する所定の処理(A処理、B処理又はC処理(図))を施し、当該分類コードCL〜CLに対応する生体データBD〜BDをそれぞれ抽出する。
【0047】
そして信号処理部22は、かかる分類コードCL〜CLに対応する生体データBD〜BDを全て抽出すると、これら生体データBD〜BD及び分類コードCL〜CLを制御部20に送出する。
【0048】
制御部20は、生体データBD〜BD及び分類コードCL〜CLを受けると、これら生体データBD〜BDと対応する分類コードCL〜CLとを、カードリーダライタ部23に装填されたキャッシュカードCDの記憶媒体MR(図1)に記憶又は更新することにより登録し(図5:ステップSP3)、登録処理を終了する(図5:ステップSP4)。
【0049】
このようにして制御部20は、指紋血管読取センサ21及び信号処理部22を適宜制御しながら登録処理を実行することができるようになされている。
【0050】
(3)ATMの構成
次に、ATM3〜3について説明するが、当該ATM3〜3は同様の構成であるため、ここでは第1銀行ATM3に着目して説明する。図6に示すように、第1銀行ATM3は、当該登録装置2全体の制御を司る制御部30に対して、掌指紋読取センサ31、抽出処理部32、カードリーダ部33、各種情報を視覚提示すると共に各種命令を入力するタッチパネル式の表示入力部34、金融ネットワーク6(図1)に接続するインターフェース(以下、これを金融ネットワークインターフェースと呼ぶ)35及び貨幣を提供する貨幣提供部36がそれぞれ接続されることにより構成される。
【0051】
この制御部30は、CPUと、予めこの第1銀行ATM3に割り当てられた分類コードやプログラム等の各種情報が格納されたROMと、ワークメモリとしてのRAMとを有しており、当該ROMに格納された各種情報と、ユーザ操作に応じて表示入力部34から命令とに基づいて、商取引処理を実行するようになされている。
【0052】
一方、掌指紋読取センサ31は、掌指紋信号S3を読み取り、当該読み取った掌指紋信号S3を抽出処理部32に送出する。なお、この掌指紋読取センサ31は、第2銀行ATM3若しくはATM3、……、又は3の場合には、対応する読取センサ31、31、……、又は31に代わる。
【0053】
他方、抽出処理部32は、掌指紋信号S3に対してA/D変換処理、エッジ抽出処理及び線状化処理を順次施し、掌における線状の指紋パターンを、キャッシュカードCDの記憶媒体MRに登録された生体データBDと比較する生体データ(以下、これを比較生体データと呼ぶ)CBDとして抽出し、これを制御部30に送出するようになされている。
【0054】
なお、この抽出処理部32についても掌指紋読取センサ31と同様に、第2銀行ATM3若しくはATM3、……、又は3の場合には、対応する抽出処理部32、32、……、又は32に代わる。またこの抽出処理部32、32、……、又は32での処理内容は、対応する分類コードCL(図3)の処理内容と一致するものである。
【0055】
ここで、かかる制御部30における商取引処理を図7に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0056】
制御部30は、カードリーダ部33からキャッシュカードCDが装填された旨の通知を受けるとこの商取引処理手順RTを開始し、続くステップSP11において、当該キャッシュカードCDの記憶媒体MRに登録された分類コードCL〜CL(図3)を読み出し、ステップSP12に進んで、当該分類コードCL〜CLのなかに、第1銀行ATM3に予め割り当てられた分類コードCLがあるか否かを判定する。
【0057】
ここで、第1銀行ATM3に割り当てられた分類コードCLがある場合、このことは、第1の銀行で採用されている抽出方式に従って生体認証し得ることを意味しており、この場合、制御部30は、ステップSP13に進んで、キャッシュカードCDの記憶媒体MRからカードリーダ部33を介して分類コードCLに対応付けられた生体データBDを読み出し、続くステップSP14において、掌指紋読取センサ31及び抽出処理部32を制御して比較生体データCBDを取得する。そして制御部30は、続くステップSP15において、生体データBDと比較生体データCBDとを照合し、所定の閾値以上の照合結果が得られた場合には、次のステップSP16に進む。
【0058】
これに対して、第1銀行ATM3に割り当てられた分類コードCLがない場合、このことは、第1の銀行で採用されている抽出方式に従って生体認証できないことを意味しており、この場合、制御部30は、ステップSP17に進んで、商取引希望の金融機関及びその金融機関に設定した暗証番号を入力する旨を表示入力部34を介して視覚提示し、当該表示入力部34から入力された金融機関に対応する例えば第2銀行サーバ4に暗証番号データを金融ネットワークインターフェース35を介して送信する。そして制御部30は、続くステップSP18において、かかる暗証番号データに基づく第2銀行サーバ4での照合結果を待ち受け、所定の閾値以上の照合結果が得られた場合には、次のステップSP16に進む。
【0059】
制御部30は、このステップSP16では、商取引処理を実行する。具体的に制御部30は、例えばユーザの口座番号や希望引出金額を入力する旨を表示入力部34を介して視覚提示し、当該表示入力部34から入力された口座番号及び希望引出金額等のデータを第1銀行サーバ4に金融ネットワークインターフェース35を介して送信する。そして制御部30は、第1銀行サーバ4から希望引出金額での引出許否を待ち受け、当該引出許可を受けた場合にはその希望引出金額に相当する貨幣を貨幣提供部36から提供し、これに対して引出拒否を受けた場合にはその旨を表示入力部34を介して視覚提示する。
【0060】
このように制御部30は、ユーザ操作に対応する商取引処理に関する各種データを第1銀行サーバ4と授受し、当該商取引が完了した場合には、ステップSP19に進んでこの商取引処理を終了する。
【0061】
このようにして制御部30は、自己に割り当てられた分類コードの有無に応じて生体認証の可否を決定し、商取引処理を実行することができるようになされている。
【0062】
(4)動作及び効果
以上の構成において、この商取引システム1における登録装置2(2、2、……、又は2)は、生体部位における識別対象を信号として読み取り、当該読み取った信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出し、これら識別対象のパターンを、金融サーバ4〜4との間でデータ通信するATM3〜3での本人認証用として、当該抽出形式にそれぞれ割り当てられた分類コードCL〜CLに対応付けてキャッシュカードCDの記憶媒体MRにそれぞれ登録する。
【0063】
従って、この商取引システム1では、複数の抽出形式に従って抽出された各識別対象のパターンが記憶媒体MRに登録されるため、当該識別対象のパターンと比較するためのパターンを抽出する抽出方式が各ATM3〜3で相違する場合であっても、それら抽出方式に応じた複数の記憶媒体の所持をユーザに強要させずに、一の記憶媒体MRを共用させることができる。
【0064】
また、記憶媒体MRに登録される認証対象のパターンには各抽出形式にそれぞれ割り当てられた分類コードCL〜CLが対応付けられているため、ATM3〜3に対して、当該ATM3自身の抽出方式に対応する識別対象のパターンが記憶媒体MRに登録されているか否かを認証処理の実行前に把握させ得るので、不要な認証処理を確実に回避させることができる。
【0065】
実際上、かかる分類コードCL〜CLは、識別対象の種類と、識別対象のパターンを抽出する抽出領域と、信号に対する抽出処理の内容とに分類して抽出形式を表し、当該抽出領域は、生体部位を最大の選定範囲として規定し、その生体部位以内の領域に選定されている。
【0066】
すなわち、この実施の形態では、最大の選定範囲として規定すべき生体部位を掌とし、その掌以内の指領域又は掌領域に選定している。
【0067】
従って、この商取引システム1では、例えば顔の目の血管と、手の指の血管といったように互いに異なる生体部位の識別対象をパターンを抽出対象とする場合に比して、読取センサ21を格段に簡易な構成とすることができると共に、当該生体部位の識別対象を読み取られるユーザの負担を軽減することができる。また一貫した生体部位に統一しているため、ユーザに対する違和感を解消することもできる一方、抽出方式の増減や変更があった場合でも、ATM3〜3については、その本質的状態を変えずに分類コードCLを再設定するといった簡易な設定で即座に対応させることができる。
【0068】
また最大の選定範囲として規定すべき生体部位を掌として選定している状態において、この実施の形態では、読取センサ21が、掌における識別対象として指紋及び血管の2種類の信号を同時に読み取るようにしている。従って、この商取引システム1では、当該生体部位の識別対象を読み取られるユーザの負担を一段と軽減することができる。
【0069】
以上の構成によれば、生体部位における識別対象のパターンを、複数の抽出形式に従ってそれぞれ抽出し、金融サーバ4〜4との間でデータ通信するATM3〜3での本人認証用として、当該抽出形式にそれぞれ割り当てられた分類コードCL〜CLに対応付けてキャッシュカードCDの記憶媒体MRにそれぞれ登録するようにしたことにより、互いに異なる抽出形式が採用された複数のATM3〜3で記憶媒体MRを共用させることができると共に、当該ATM3に対して不要な認証処理を確実に回避させることができ、かくしてユーザの認証効率を低下させることなく、ユーザの利便性を向上させ得る登録装置2〜2を実現できる。
【0070】
(5)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、複数の抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードとして、識別対象の種類と、識別対象のパターンを抽出する抽出領域と、信号に対する抽出処理の内容とに分類して抽出形式を表す分類コードCL〜CLを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の観点から抽出方式を分類したコードを適用するようにしても良い。
【0071】
なお、かかる抽出領域として、本実施の形態では、最大の選定範囲として規定すべき生体部位を掌とし、その掌又は指の指紋等を抽出領域として選定したが、本発明はこれに限らず、例えば、最大の選定範囲として規定すべき生体部位を顔とし、その顔内の目の血管や耳の形状等を抽出領域として選定するようにしたり、あるいは、最大の選定範囲として規定すべき生体部位を足とし、その足内の親指の指紋や中指の血管等を抽出領域として選定するようにしても良い。要は、上述したように、生体部位を最大の選定範囲として規定し、その生体部位以内の領域に抽出領域を選定するようにすれば、この他種々の抽出領域を選定することができる。
【0072】
また、かかる抽出領域の選定に応じて、当該抽出領域における識別対象を信号として読み取る読取センサを対応するものに適宜代えることができ、一方、当該読取センサにより読み取られた信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する抽出手法についても、抽出領域の選定に応じて、対応する処理の取捨選択及び追加したものに代えることができる。
【0073】
また上述の実施の形態においては、可搬型の記憶媒体として、カードに内蔵したものを用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、USB(Universal Serial Bus)メモリやメモリスティック(ソニー・登録商標)等のように、内蔵せずにそれ自体をそのまま用いるようにしても良い。
【0074】
さらに上述の実施の形態においては、コード及び上記抽出形式に対応する抽出プログラムを管理するサーバに接続する接続手段として、インターネット等のローカルネットワーク6に接続するローカルネットワークインターフェース24を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばLAN(Local Aria Network)等の専用ネットワークに接続するインターフェースを適用するようにしても良い。
【0075】
さらに上述の実施の形態においては、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置として、金融サーバ4〜4との間でデータ通信する複数のATM3〜3を適用するようにした場合について述べたが、要は、金融以外の業種が商取引を担うサーバとの間でデータ通信する機能及びバイオメトリクス認証機能を搭載する種々の端末装置に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、電子商取引する場合に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施の形態による商取引システムの全体構成を示す略線図である。
【図2】商取引上における登録装置、ATM及び金融サーバの関係についての説明に供する略線図である。
【図3】分類コード例を示す略線図である。
【図4】登録装置の構成を示すブロック図である。
【図5】登録処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第1銀行ATMの構成を示すブロック図である。
【図7】商取引処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1……商取引システム、2〜2……登録装置、3……第1銀行ATM、3……第2銀行ATM、3〜3……ATM、4……第1銀行サーバ、4……第2銀行サーバ、4〜4……金融サーバ、5……ローカルネットワーク、6……金融ネットワーク、10……管理サーバ、CL〜CL……分類コード、20、30……制御部、21……指紋血管読取センサ、22……信号処理部、23……カードリーダライタ部、24……ローカルネットワークインターフェース、31……掌指紋読取センサ、31……指血管読取センサ、32、32……抽出処理部、33……カードリーダ部、34……表示入力部、35……金融ネットワークインターフェース、36……貨幣提供部、CD……キャッシュカード、MR……記憶媒体、S1……掌血管信号、S2、S3……掌指紋信号、BD〜BD……生体データ、RT……商取引処理手順。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体部位における識別対象を信号として読み取る読取手段と、
上記読取手段により読み取られた上記信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する抽出手段と、
上記抽出手段により各上記抽出形式に従って抽出された複数の上記識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、各上記抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録する登録手段と
を具えることを特徴とする登録装置。
【請求項2】
上記コードは、
上記識別対象の種類と、上記識別対象のパターンを抽出する抽出領域と、上記信号に対する抽出処理の内容とに上記抽出形式を分類して表し、
上記抽出領域は、
生体部位を最大の選定範囲として規定し、その生体部位以内の領域に選定された
ことを特徴とする請求項1に記載の登録装置。
【請求項3】
上記読取手段は、
上記生体部位における複数種類の上記識別対象を信号として同時に読み取る
ことを特徴とする請求項2に記載の登録装置。
【請求項4】
上記コード及び上記抽出形式に対応する抽出プログラムを管理するサーバに接続する接続手段と、
上記接続手段を介して上記サーバから最新のコード及び抽出プログラムを定期的に取得する取得手段と
を具え、
上記抽出手段は、
上記最新の抽出プログラムに従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の登録装置。
【請求項5】
生体部位における識別対象を信号として読み取る第1のステップと、
上記信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する第2のステップと、
各上記抽出形式に従って抽出された複数の上記識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、各上記抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録する第3のステップと
を具えることを特徴とする登録方法。
【請求項6】
コンピュータに対して、
生体部位における識別対象を信号として読み取る第1の処理と、
上記信号から、複数の抽出形式に従って識別対象のパターンをそれぞれ抽出する第2の処理と、
各上記抽出形式に従って抽出された複数の上記識別対象のパターンを、商取引サーバとの間でデータ通信する複数の端末装置での本人認証用として、各上記抽出形式にそれぞれ割り当てられたコードに対応付けて、可搬型の記憶媒体にそれぞれ登録する第3の処理と
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−26310(P2007−26310A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210311(P2005−210311)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】