説明

皮膚病又は皮膚病変の治療方法及び組成物

本発明は、化合物、特に、ジヒドロオイゲノール(DHE)及び/又はイソオイゲノール(IE)及び/又はエチルバニリン(EV)、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体を含む組成物、並びに、組成物を、本明細書に開示されるような炎症関連及び他の皮膚病状に対する治療のために局所又は全身送達する方法を意図する。これらのDHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体は、適度の範囲で経上皮又は経真皮的にも送達され、その結果、身体内で全身的及び/又は局所的な抗炎症効果をもたらす。その方法の態様の1つにおいては、本発明は、患者に、薬学的又は化粧品的に許容される局所担体、並びに皮膚病、皮膚疾患又は皮膚病状を効果的に治療する量のDHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体を含む医薬又は化粧品組成物を局所投与することにより、皮膚病又は皮膚病変を患っている前記患者を治療する方法に関する。特に、本発明は、皮膚病、皮膚疾患又は皮膚病状、コラーゲン、エラスチン又はヒアルロン酸を減少することに関する、又は色素沈着過度に関する加齢効果を治療するために、1種以上のDHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体を用いる方法に関する。この製剤は、更に桂皮アルデヒドを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる、2007年10月10日に出願された米国仮出願第60/998,345号、及び2008年5月5日に出願された米国仮出願第61/126,478号の35U.S.C.119(e)における利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚は、主にケラチノサイト、少量のメラニン細胞及びランゲルハンス細胞(抗原提示細胞)からなる表皮層と、主に線維芽細胞からなる真皮層とを含む。大部分の皮膚疾患は、皮膚に対するいくらかの損傷によって引き起こされる炎症を含む。ケラチノサイトは、サイトカイン(例えば、IL−1、TNF−アルファ及びIL−6)及びケモカイン(例えば、IL−8)を含む種々の炎症性メディエータを産生することにより、環境刺激(例えば、UV照射(UVR)、アレルゲン、刺激物又は物理的損傷)にすぐに応答する。最も活性な炎症性メディエータの1種はPGE−2(プロスタグランジンE2)であり、当然、PGE−2のレベルを下げるために多くの局所的な皮膚病薬が設計されてきた。真皮中の繊維芽細胞は、種々のケモカイン、サイトカイン及びコラゲナーゼのようなマトリクス破壊酵素(MMP−1)と一緒にPGE−2も産生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
皮膚内で炎症性メディエータの産生を抑制し得る化合物の同定は、湿疹、放射線皮膚炎、アトピー性皮膚炎、光線角化症、脂漏性皮膚炎、他の皮膚疾患及び座瘡を含む、種々の炎症性皮膚病又は疾患を治療するための効果的な外用剤の開発を可能にするであろう。老化の影響及び高色素沈着のような他の皮膚病変を治療し得る組成物も好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、例えば、皮膚ケラチノサイト及び線維芽細胞、単球のような免疫細胞、並びにメラニン細胞における、例えば、酒さ、放射線皮膚炎、紅斑(日焼け)、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性及び刺激性接触皮膚炎、紫外線角膜炎、座瘡、瘢痕、色素沈着過度及び脂漏性皮膚炎又は湿疹又は他の湿疹及び円形脱毛症を含む種々の皮膚疾患、皮膚病及び皮膚病変の治療法及び治療用組成物に関する。本発明は、更に、例えば、皮膚線維芽細胞中のコラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸シンターゼの産生を増大することにより老化の影響を軽減するための方法及び組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、線維芽細胞内でのUV−誘発PGE−2におけるジヒドロオイゲノール(DHE)の効果を示すグラフである。
【図2】図2は、ケラチノサイト内でのUV−誘発PGE−2におけるDHEの効果を示すグラフである。
【図3】図3は、ケラチノサイト内でのTPA−誘発TNF−αにおけるDHEの効果を示すグラフである。
【図4】図4は、単球内でのLPS−誘発炎症性サイトカインにおけるDHEの効果を示すグラフである。
【図5】図5は、紅斑誘発UVB照射に曝され、本発明のローションで治療された、ヒト患者の腕の写真である。
【図6】図6は、酒さの症状を有するヒト患者の顔の写真を示す。酒さの顔面領域を(A)に示し、DHE、IE及び桂皮アルデヒドで治療開始後12週後の領域を(B)に示す。
【図7】図7は、放射線療法を受けた患者における局所DHE塗布の効果を示す。(A)放射線皮膚炎について治療していない典型的な放射線皮膚炎患者における放射線皮膚炎。(B)患者は、35回の放射線療法の間、毎日2%DHEローションで局所的に治療を受けた。35回の治療の後に写真を撮影し、皮膚は放射線皮膚炎の痕跡を示さない。(C)放射線療法終了1ヶ月後の(B)の患者の拡大写真。皮膚に対する放射線障害の痕跡はない。
【図8】図8は、DHE、イソオイゲノール(IE)及びエチルバニリン(EV)による線維芽細胞中のコラーゲン1 mRNAの刺激を示すグラフである。
【図9】図9は、DHE、IE及びEVによる線維芽細胞中のエラスチンmRNAの刺激を示すグラフである。
【図10】図10は、DHE、IE及びEVによる線維芽細胞中のヒアルロン酸シンターゼ−2 in RNAの刺激を示すグラフである。
【図11】図11は、DHE、IE及びEVによる線維芽細胞中のメタロプロテイナーゼ−1の組織阻害剤mRNA(TIMP−1)の刺激を示すグラフである。
【図12】図12は、エチルバニリンによる線維芽細胞中のマトリクスメタロプロテナーゼ(MMPs)の阻害を示すグラフである。
【図13】図13は、イソオイゲノールによるインビトロでのメラニン合成の阻害を示すグラフである(図中、TH−212と呼ばれる)。
【図14】図14は、イソオイゲノール(TH−212)及び酢酸イソオイゲノール(図中、TH−213と呼ばれる)で9日間処理したヒトメラニン細胞培養における顔料の減少を証明する写真を示す。
【図15】図15は、酢酸イソオイゲノール(図中、TH−212と呼ばれる)及びサリチル酸の局所適用製剤が、どのようにして座瘡の除去及び4週間の治療後の色素沈着過度を引き起こすかを証明する写真を示す。
【図16】図16は、酢酸イソオイゲノール(TH−212エステル)及び2%サリチル酸の局所適用製剤が、どのようにして30日の治療後の色素沈着過度を除去するかを証明する写真を示す。
【図17】図17は、酢酸イソオイゲノール(TH−212エステル)及び2%サリチル酸の局所適用製剤が、どのようにして30日の治療後の太陽により誘発される色素沈着過度を減少するかを証明する写真を示す。
【図18】図18は、イソオイゲノール(TH−212)及び酢酸イソオイゲノール(TH−213)で処理し、次いでL−DOPA、チロシナーゼ基質を供給した細胞抽出物の写真を示す。
【図19】図19は、DHE及びIEを含む製剤で処理する前(A)及び後(B)の乾癬の皮膚を示す写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
炎症性皮膚病は、皮膚科における最も一般的な問題である。それらは、痒み及び赤みを伴う偶発的な発疹から皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎及び乾癬のような慢性病状まで多くの形態がある。しかし、それらは1種の共通因子、炎症によって全て関連づけられる。皮膚、並びにアトピー性皮膚炎及び放射線皮膚炎のような炎症反応の発症に必要な免疫細胞により炎症性因子(サイトカイン)が産生されることがわかってきた。本発明は、培養皮膚細胞(ケラチノサイト及び線維芽細胞)、免疫細胞(単球及びT−リンパ球)及び損傷を受けていない生きた細胞中における種々の炎症反応を引き起こすことを抑制する薬剤を含む。皮膚中でのこれらの炎症過程を阻害する結果として、本発明の化合物は、一般的な皮膚の問題を併発する種々の炎症症状を減少し、又は取り除くことができる。
【0007】
酒さは、人口の約5%の人々に影響を及ぼし、過度に活性な毛細血管により引き起こされる顔面発赤又は顔面紅潮が繰り返して起こる期間により特徴づけられる、血管炎症性皮膚疾患である。時間とともに、この皮膚炎症の慢性的な状態は種々の酒さ症状を引き起こす。酒さは、患者が紅潮した顔面及び座瘡に類似する症状を示すので、成人の座瘡として間違えて特徴づけられる場合がある。しかし、この皮膚病に影響を受けた個体は、額、顎、鼻、耳、胸部及び背中のような部分に痛み及び痒みを伴う持続的な赤みを有することもある。疾患が進行するにつれ、赤くなった部分又はその周囲に微小血管及び小さな腫れ物(丘疹又は膿疱と呼ばれる)が現れ始める。重症の場合には、酒さは目に影響を及ぼし(眼性酒さ)、鼻の変形を引き起こし得る(鼻瘤)。酒さに関連する身体症状に加え、治療しない場合には、患者は、著しい心理的及び社会的問題に苦しむことにもなる。
【0008】
皮膚の老化に関し、研究は、実際に2種の異なるタイプの皮膚の老化があることを示している。我々が遺伝を受け継ぐ遺伝子により起こる老化は内因性(内在的)老化と呼ばれる。他のタイプの老化は外因性(外部)老化として知られており、太陽光線への露出のような環境要因により引き起こされる。自然な老化現象としても知られる内因性老化は、通常、20代半ばで開始する連続的な過程である。皮膚内では、正常な(しわのない)皮膚の真皮は、豊富な量のI型コラーゲン及びVII型コラーゲン、並びに組織に強度、弾力性及び反動性をもたらすエラスチンからなる。しかし、コラーゲン及びエラスチンを産生する真皮線維芽細胞が老化し始めるにつれ、これらの蛋白質の産生量は減少する。更に、老化した線維芽細胞は、コラーゲン及びエラスチン分解するマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP’s)と呼ばれる酵素の産生量を増加させる。これは、時間とともにコラーゲン及びエラスチンの大幅な減少をもたらし、細線又はしわの形状で見える皮膚の弛緩及び脆弱さをもたらす。内因性老化の兆候は:細かいしわ、薄くて透明な皮膚、下層の脂肪の減少、こけた頬をもたらすこと、及び眼窩、並びに手及び首の硬度の顕著な低下、痒くなる乾燥皮膚、最終的に白色になる白髪化、並びに脱毛である。遺伝子は、正常な老化過程がどのくらい早く現れるかを制御する。何人かの人々は、20代で最初の白髪化に気づき、他の人々は40代まで白髪化は見られない。
【0009】
多くの外因性老化要因は、我々の皮膚を早期に老化させるために、正常な老化過程と一緒に役割を果たす場合がある。ほとんどの早期老化は太陽露光により引き起こされる。我々の皮膚を早期に老化させる他の外因性要因は、反復性の表情(facial expressions)、引力及び喫煙である。太陽光線からの防御なしでは、長い年月にわたって毎日数分露光だけでも皮膚に対する顕著な変化を引き起こし得る。顔面のそばかす、年齢によるしみ、クモ状静脈、ざらざらしてがさがさした皮膚、伸ばした時に消える細かいしわ、弛緩性皮膚、しみで覆われた肌及び皮膚癌は全て太陽光線に由来し得る。「光による老化」は、太陽光線に対する露光により引き起こされるこのタイプの老化を表わすために皮膚科医が用いる用語である。発現する光による老化の量は:(1)人の皮膚の色及び(2)彼又は彼女の、長期間又は強い太陽露光の履歴に依存する。太陽露光の履歴を有する白い皮膚の人は、黒い皮膚の人よりもより多くの光による老化の兆候を発症する。黒い皮膚においては、光による老化の兆候は、通常、細かいしわ及びしみだらけの肌の色に限定される。
【0010】
光による老化は1年間を通して起こる。太陽に反復して露光されると、皮膚は、自身を修復する能力を失い、損傷が蓄積される。科学的研究は、反復した紫外線(UV)露光は、新しいコラーゲン合成を阻害し、コラーゲンを破壊するMMP酵素の発現を増大させることを示してきた。太陽は過剰のエラスチン産生を引き起こすが、産生されたエラスチンは異常であり、塊に凝集し、皮膚科医に弾性線維症として言及される病状をもたらす。コラーゲンの減少及び異常なエラスチンの産生により、太陽に弱い皮膚は、UV光線から保護された皮膚に比べ弾力性を失う。太陽光線に対する露光から保護しないことで、より早く皮膚は弛緩し、しわになり、がさがさになる。
【0011】
老化過程を停止するために現在利用できるものはないが、皮膚の老化する速度を遅くすることは可能である。前述したように、内因性及び光による老化は、皮膚内のコラーゲン及びエラスチンの破壊及び減少による。本発明の組成物は、コラーゲン及びエラスチンの産生を増加させ、並びにMMP酵素の発現を減少させることが本明細書において科学的に証明された成分を含む。これら2つの効果は老化過程を遅延し、新規及び既存のしわ及び細かい線の発現を減少する、真皮マトリクスの再構築に役立ち得る。
【0012】
他の皮膚病変、座瘡は、医師により確認され、ほとんどの人に影響を及ぼすことがある最も一般的な皮膚疾患である。10代の若者はほとんど影響を受けている。座瘡は、多くの機能障害及び不安を引き起こし得るともに、人々を憂鬱にし得るものであり、友人から離脱し、学校及び職場における成績を悪化させ得る。座瘡の正確な原因は未知であるが、以下の要因が重要であると考えられている。(1)油っぽい孔(毛包脂腺毛包)のレベルで発生する、ホルモン性、細菌性及び炎症性の障害の可視の最終結果である。(2)経過が進むにつれ、皮脂腺中に大量の油が生成するが、油の組成及び質の変化は量の変化よりも重要であり、毛嚢の内壁に生成するスケールは粘着性となり、毛穴の脂及びくろにきび(面皰)となって現れる孔を形成し、閉鎖する。(3)保持された油の中で座瘡細菌(Propionobacterium acnes)が増殖し数が増加する。皮脂は細菌にとって栄養素としての役割を果たし、孔の中に化学物質を遊離する。これらは、炎症を誘発する血液からの白血球に注意を喚起し、誘引する。(4)これらの炎症を起こした毛嚢(孔)及び腺が大きくなるにつれ、周囲の皮膚も炎症を起こし、塊及び嚢胞(小結節とも呼ばれる)をもたらし得る。(5)炎症は、コラーゲンを生成する細胞に損傷を与え得る。コラーゲンの少ない産生は皮膚を薄くし、これは陥凹性瘢痕と考えられる。しばしば、コラーゲン産生が増加し、これは瘢痕を厚くする。本発明の組成物は、組織及び着色を改善することにより、座瘡及び皮膚腺条からの瘢痕を治癒するためにも用いることができる。
【0013】
他の皮膚疾患、乾癬は、スケーリング及び炎症により特徴づけられる慢性的な(長期的な)皮膚病である。スケーリングは、皮膚の外層中の細胞が通常よりも早く再生し、皮膚表面に積み重ねられる時に発生する。乾癬は、米国の人口の2〜2.6%、又はほとんど580〜700万人の人に影響を及ぼす。乾癬は、全ての年齢層に、また男性及び女性にほぼ等しく発生する。乾癬を患っている人々は、不快感、関節の動きの制限及び精神的苦痛に苦しむ可能性がある。乾癬が発生すると、皮膚の斑点が厚くなり、赤みが生じ、銀色のスケールで覆われるようになる。これらのパッチは、プラークと呼ばれる場合がある。それらは痒いか又は火照る。関節の皮膚は裂ける場合がある。乾癬は、ほとんどの場合、肘、膝、頭皮、腰、顔面、掌及び足の裏に発生する。この疾患は、指の爪、足指の爪、並びに口及び性器内の軟組織に影響することもある。乾癬を患っている人の約10%が、関節炎の症状を起こす関節の炎症を経験する。この症状は乾癬性関節炎と呼ばれる。
【0014】
研究は、乾癬が免疫系の障害であり得ることを示している。免疫系には、感染及び疾患に対して身体を保護するのを補助する、T細胞と呼ばれる、あるタイプの白血球が含まれる。乾癬においては、免疫系は皮膚内で過剰量のT細胞を産生する。これらのT細胞は、乾癬を患っている人に見られる、炎症及び過剰の皮膚細胞の再生を誘発する。これは、皮膚の炎症及び剥離をもたらす。本発明は、他の乾癬療法が標的とする同じ炎症性メディエータの産生を阻害するが、局所的な形態であるので、頻繁な注入を必要とせず、又は身体の全体の免疫機能を低下させない。
【0015】
湿疹は、多くのタイプの皮膚の炎症(皮膚炎)の一般的名称である。アトピー性皮膚炎は、湿疹の最も多い通常のタイプである。いくつかの他の形状は非常に似ている症状を有する。種々の湿疹が挙げられ、以下に簡単に説明する。
【0016】
(1)アトピー性皮膚炎は、痒み、炎症を起こした皮膚により特徴づけられる慢性的な皮膚病である。「皮膚炎」なる用語は皮膚の炎症を意味する。「アトピー性」は、遺伝的であり、遺伝する傾向があり、しばしば一緒に発生する。これらの疾患にはぜん息、アレルギー性鼻炎及びアトピー性皮膚炎が含まれる。アトピー性皮膚炎においては、皮膚が非常に痒くなり、炎症を起こし、赤み、腫脹、亀裂、侵出、痂皮形成及びスケーリングを起こす。アトピー性皮膚炎はしばしば幼児及び若い子供に影響を及ぼすが、成人期まで持続する場合があり、人生の終わりになって最初に現れる場合がある。ほとんどのケースにおいて、疾患が悪化する期間があり、増悪又は炎症と呼ばれ、続いて寛解と呼ばれる、皮膚が改善又は完全によくなる期間が続く。アトピー性皮膚炎を患っている多くの子供は、年をとった時に疾患の永続的な寛解期に入るが、皮膚は乾燥し、容易に炎症を起こしやすいままである。アトピー性疾患の特徴を遺伝している個体の生活においては、環境要因はいつでもアトピー性皮膚炎の症状を活性化し得る。アトピー性皮膚炎の原因は未知であるが、この疾患は遺伝的及び環境要因の組み合わせからの結果であると思われる。証拠は、この疾患が、アトピー性皮膚炎を患っている多くの人が同様に患っているアレルギー性鼻炎及びぜん息のような、いわゆる他のアトピー性疾患と関連していることを示唆している。更に、成長してアトピー性皮膚炎の症状が見られなくなった多くの子供が、アレルギー性鼻炎又はぜん息を発症し始める。1つの疾患が他の疾患の原因とはならないが、それらは関連し、その結果、アトピー性皮膚炎を理解する手がかりを研究者に与えるかもしれない。アトピー性皮膚炎は非常に一般的であり、男性及び女性に等しく影響を及ぼし、皮膚科医への全ての紹介の10〜20%を占める。アトピー性皮膚炎はほとんどの場合、幼児及び子供において発生し、その発生は年齢とともに実質的に減少する。科学者は、患者の65%が1歳までに症状を発症し、90%が5歳までに症状を発症すると推定している。30歳以降の発症は一般的でなく、皮膚を厳しい条件に曝した後に発症する場合がある。都市部及び低湿度の気候に住む人は、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが大きいと考えられる。全ての幼児及び若い子供の約10%が、この疾患の症状を経験している。これらの幼児の約60%は、成人期に達した後にもアトピー性皮膚炎の1種以上の症状を有し続けている。これは、米国の1500万人の人がこの疾患の症状を有していることを意味する。
【0017】
(2)接触湿疹は、皮膚がアレルゲン(アレルギーを起こす物質)、若しくは酸、洗剤(石けん、ボディーウォッシュ)又は他の化学物質のような刺激物と接触した部位に赤み、痒み及び灼熱感を含む局所反応である。
【0018】
(3)アレルギー性接触湿疹は、皮膚が、免疫系が異物として認識する物質、例えば、クリーム及びローション中のツタウルシまたは保存料と接触した部位における赤み、痒み、涙反応である。
【0019】
(4)脂漏性湿疹は、未知の原因の皮膚炎症の形態であるが、皮膚上に生存する特定のタイプの酵母と関連している。脂漏性湿疹は、頭皮、顔面上(しばしば、身体の他の部分、新生児頭部皮膚炎と呼ばれる)の皮膚の、黄色がかった、油っぽい、うろこ状の斑点として現れる。
【0020】
(5)貨幣状湿疹は、腕、背中、臀部及び下肢の通常の炎症を起こした皮膚のコイン形状の斑点であり、堅くなり、うろこ状であり、非常に痒い。
【0021】
(6)神経皮膚炎は、ひっかいた時に激しく炎症を起こす局所的な痒み(例えば、虫さされ)により引き起こされる、頭部、下肢、手首又は前腕上の皮膚のうろこ状の斑点である。
【0022】
(7)鬱滞在性皮膚炎は、一般に循環障害と関連する、下肢の皮膚炎である。
【0023】
(8)異汗性湿疹は、痒み及び灼熱感のある、透明で深い水ぶくれにより特徴づけられる、掌及び足の裏の皮膚の炎症である。
【0024】
放射線療法、他の皮膚疾患は、皮膚における不快な副作用を有し得る。以下は、放射線療法に原因する、急性及び慢性の最も一般的な副作用である。人の固有かつ多様な耐性のために、思いがけない副作用が発生し得る。治療の遅発効果は予測することができず、この療法及び他の疾患のための同時及び/又は後の治療によって影響され得る。
【0025】
放射線療法の特有の副作用は、治療される身体の部分、並びに照射量に依存する。一般に、最初の変化は、日焼けのような皮膚の発赤である。多くの患者において、これが、経験する全てである。しかし、多くの患者においては、熱傷は重症であり、第二度熱傷と同等である場合がある。日焼けのように、関与する部分は敏感であり、接触すると痛みさえある。更に、覆われている皮膚は破壊されるかもしれず、放射線療法のコースの完了の数日から数週間まではその部分は開いたままであるかもしれない。放射線療法のコースがいったん完了すると、赤みは徐々に消え、あらゆる開放部分は通常に治癒するであろう。しかし、この部分の皮膚はたぶん、明瞭なしわ、皮膚の菲薄化、剛性及び/又は乾燥、並びに色素沈着の変化を含む、加齢皮膚の特徴を発症するであろう
【0026】
放射線皮膚炎のための現在の治療法の選択肢のほとんどは、皮膚の湿気を維持するための試みにおける皮膚軟化剤又はアロエゲルの使用を含む。しかし、日焼けの経験を有する人が知っているように、加湿は乾燥することから皮膚を救うが、炎症により引き起こされる痛み又は赤みを減少しない。本発明は、活性薬剤、放射線療法に関連する皮膚の赤み及び痛みを減らすことのできる生物活性剤を含む加湿ローションを含む。
【0027】
他の皮膚疾患、色素沈着過度は、多くの人を苦しめる、一般的かつ苦痛を感じる病状である。色素沈着過度は、表皮、真皮又は両方のメラニン量の増加の結果である。この色素の変化は2種の病態生理学的過程:メラノサイトーシス(メラニン細胞数の増加)及び黒色症(メラニン量の増加)に分類することができる。
【0028】
好ましい実施態様においては、本発明はジヒドロオイゲノールを含む製剤を含む。DHE製剤は、例えば、患者の皮膚の酒さを治療及び減少するため、酒さを患っている患者に、局所的、全身的又は経口的に投与することができる。DHE製剤は、例えば、患者における乾癬及び放射線皮膚炎を治療及び/又は阻害するためにも用いることができる。この製剤は、DHEと一緒又はそれに代え、本明細書の他の場所で説明しているような、DHEの塩、エステル又はエーテルを含んでいてもよい。製剤は、更に、1種以上のイソオイゲノール(ID)又はその塩、エステル又はエーテル、例えば、酢酸イソオイゲノール又はメチルイソオイゲノールを含んでいてもよい。任意のこれらの製剤は、紫外線角膜炎、座瘡、瘢痕、アレルギー性及び刺激性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、紅斑(日焼け)、手湿疹、脂漏性皮膚炎、円形脱毛症及び他の皮膚の炎症性刺激のような炎症性皮膚病変の治療にも用いることができる。イソオイゲノール、その塩、エステル及びエーテルを含む製剤は、特に、皮膚の色素沈着過度の影響を減少するために用いることができる。
【0029】
好ましい実施態様においては、本発明の組成物は、合成及び/又は天然型の化合物、例えば、ジヒドロオイゲノール(DHE)及び/又はイソオイゲノール(IE)及び/又はエチルバニリン(EV)、及び/又はDHE、IE及びEVの塩、エステル、エーテル又は誘導体、若しくはそれらの混合物、並びに特に酢酸イソオイゲノールを含む、DHE、IE及びEVの塩、エステル、エーテル及び誘導体を含む。
【0030】
組成の一態様においては、本発明は、本明細書で説明している薬学的に許容される担体、並びにDHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、若しくはそれらの組み合わせを含む、局所、経皮又は他の全身投与のための医薬組成物に関する。特に、本発明は、皮膚病、皮膚疾患又は皮膚病変を治療するのに用いられる、DHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、若しくはそれらの組み合わせを含む組成物に関する。
【0031】
方法の一態様においては、本発明は、薬学的に許容される局所担体、並びにDHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、若しくはそれらの組み合わせの、皮膚病の治療又は皮膚病変の治療に有効な量の製剤を含む医薬組成物を患者に局所的に投与することにより、皮膚病、皮膚疾患又は皮膚病変を患っている前記患者を治療する方法に関する。
【0032】
方法の他の態様においては、本発明は、薬学的に許容される局所担体、DHE及び/又はIE及び/又はIV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、並びにそれらの組み合わせの製剤の有効量を含む化粧品組成物をヒトに局所塗布することにより、皮膚病変、特に放射線皮膚炎を治療する方法に関する。方法の更に他の態様においては、本発明は、薬学的に許容される担体、並びにDHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、並びにそれらの組み合わせの炎症性疾患の治療に有効な量を含む医薬組成物を患者に全身投与することにより、炎症性疾患、炎症性障害又は炎症性病変を患っている前記患者を治療する方法に関する。
【0033】
方法の更に他の態様においては、本発明は、薬学的に許容される担体、並びにDHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、並びにそれらの組み合わせの有効量を含む医薬組成物をヒトに局所塗布することにより、炎症性疾患、炎症性障害又は炎症性病変を患っている前記ヒトを治療する方法に関する。
【0034】
方法の更に他の態様においては、本発明は、薬学的に許容される担体、並びにDHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、並びにそれらの組み合わせの薬学的又は化粧品的に有効な量を含む、医薬又は化粧品組成物をヒトに局所的に投与することにより、皮膚の老化を減少するような、前記ヒトの皮膚外観を改善する方法に関する。
【0035】
方法の他の一態様においては、薬学的又は化粧品的に許容される担体、並びに有効量のIE及び/又はその塩、エステル、エーテル又は誘導体(例えば酢酸イソオイゲノール)又はそれらの組み合わせを含む、医薬又は化粧品組成物をヒトの皮膚に局所塗布することにより、皮膚の色素沈着過度の部分を減少する方法に関する。
【0036】
本発明の任意の製剤の任意成分は、好ましくは0.01%〜5%の範囲の濃度の桂皮アルデヒドである。桂皮アルデヒドは、好ましくは、酒さ、座瘡及び脂漏性皮膚炎の治療において用いるための本発明の製剤中に含まれる。桂皮アルデヒドは、抗炎症、並びに座瘡の一因である細菌、及び脂漏性皮膚炎の一因である酵母に対する抗細菌/抗微生物効果の両方をもたらす。
【0037】
定義
本発明の化粧品及び医薬組成物及び方法、並びに組成物及び方法自体を説明する場合、以下の用語は以下の意味を有する:
【0038】
「イオン化放射線」は、物質の原子又は分子をイオン化するあらゆる放射線を意味する。それは、粒子(電子等)からなってもよく、又は電磁気(紫外線放射;X−線;ガンマ線)であってもよい。イオン化放射線は例えば日光の要素として自然に発生し、放射性物質から放出される。X−線装置、粒子加速器及び原子炉内で人工的にも製造される。
【0039】
本発明の実施において用いられる合成又は天然化合物の純度の状態を定義するために用いられる場合、「分離される」は、本明細書に開示される化合物及び/又はその塩、エステル、エーテル又は誘導体、若しくはそれらの組み合わせは、関連する供給原料、原材料、副生成物(天然の混合物の場合には、実際に現れる化合物と関連する物質)を実質的に含まないか(すなわち、少なくとも約90%であり、特には少なくとも約95%)、分離されている。
【0040】
「薬学的に許容される局所担体」及びその対応語句は、本明細書に開示される化合物及び/又はその塩、エステル、エーテル又は誘導体、若しくはそれらの組み合わせを懸濁又は溶解することができ、皮膚に塗布した場合に一般に無毒であり非炎症性である性質を有する不活性液体又はクリームを意味する。この用語は、特に、局所用化粧品、並びに局所用及び全身用医薬品において用いるのに承認されている担体材料を含むことを意図する。代表的な担体には、水、シリコーン油、油、植物油及び鉱油、クリーム基剤、ローション基剤、軟膏基剤等が含まれる。これらの基剤には、懸濁化剤、増粘剤、浸透促進剤等が含まれる。これらの製剤は、化粧品及び局所用医薬品の分野の当業者に周知である。担体に関する追加情報は、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences,20th edition,2000,Lippincott,Williams and Wilkinsに見いだすことができる。
【0041】
「治療有効投与量」は、皮膚科学的な、又は他の化粧品的又は内科的疾患、障害又は病状に苦しんでいる患者の皮膚に局所塗布した時、又は患者の病状において観察できる改善を全身的にもたらすような他の経路によって投与した時の本発明の組成物の投与量を意味する。
【0042】
投与方法を定義するために用いられる「局所的」は、物質が、直腸、若しくは結腸、鼻又は呼吸器の経路のような内部上皮層に塗布されることにより投与されることを意味する。
【0043】
「局所的に有効な」は、皮膚又は前記上皮層に塗布した時に、物質内の活性成分の経皮的な経過の結果として、物質が局所的、塗布した部位、又は全身的に所望の薬理学的結果を生じることを意味する。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「水中油型製剤」はエマルション中で連続的な水相が油又は脂質の小滴を包囲する製剤を意味する。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「油中水型製剤」はエマルション中で連続的な脂質又は油相が水の小滴を包囲する製剤を意味する。
【0046】
本明細書で用いられる場合、「非水製剤」なる用語は、製剤中に1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の水を含む製剤を意味する。「非水」なる用語は、大気水分の吸収のためにごく少量の水を含む製剤をも意味する。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「乳化剤」なる用語は、水相中の油滴、又は油相中の水滴の安定な混合物又は分散液(エマルション)を促進又は維持するために用いられる化合物を意味する。
【0048】
乳化剤は基本的に界面活性剤である。これらの界面活性剤は、イオン性(カチオン性又はアニオン性)又は非イオン性であり、それらは単独又は組み合わせて用いることができる。本明細書で用いることを意図する乳化剤には、セテアリルアルコール及びセテアリル硫酸ナトリウム、PEG−1000モノセチルエーテル、ステアリン酸グリコール、ステアリン酸グリセリル、セチルアルコール、PEG−100ステアレート、セテアレス−20又はアルキルトリメチルアンモニウムブロマイドのような四級アンモニウム塩、ポリオールエステルグリセロールモノステアレート、ステアリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びエトキシル化脂肪アルコールが含まれるが、これらに限定されない。ステアリン酸のような脂肪酸は、エマルションの稠度を制御するために含ませてもよい。最終的に、カルボマーのようなポリマーを、エマルションを安定化させるために少量含ませてもよい。
【0049】
浸透促進剤は、局所塗布された化合物の皮膚の層、角質層への、並びにそこから表皮及び真皮への通過を増進する物質である。具体例は:ジメチルイソソルビド、エトキシジグリコール、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、プロピレングリコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレンエステル、ソルビタンモノ−9−オクタデセノエート、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)及びその誘導体、エタノール、グリセリルモノエチルエーテル、モノグリセリド、イソプロピルミリステート、ラウリルアルコール、ラウリン酸、乳酸ラウリル、テルピノール、メントール、D−リモネン、ベータ−シクロデキストリン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ポリソルベート、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、胆汁塩、N−メチルピロリドン、ポリグリコシル化グリセリド、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン(Azone(登録商標))、シクロペンタデカラクトン(CPE−215(登録商標))、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノエートエステル(NexAct(登録商標))、2−(n−ノニル)−1,3−ジオキソラン(DEPA(登録商標))、及び例えば、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる米国特許第3,909,816号;第4,405,616号;第4,801,586号;第4,861,764号;第4,886,783号;第4,983,396号;第5,118,845号;及び第5,196,410号に示されている浸透促進剤であるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の組成物及び方法がイソオイゲノール又はジヒドロオイゲノールを含む場合、
本発明は、特にギ酸イソオイゲニル、酢酸イソオイゲニル、プロピオン酸イソオイゲニル、酪酸イソオイゲニル、イソ酪酸イソオイゲニル、オレイン酸イソオイゲニル(及び他の不飽和脂肪酸エステル)、安息香酸イソオイゲニル、フタル酸イソオイゲニル、ヘキサン酸イソオイゲニル、ヘプタン酸イソオイゲニル、オクタン酸イソオイゲニル、ペンタン酸イソオイゲニル、デカン酸イソオイゲニル、乳酸イソオイゲニル、桂皮酸イソオイゲニル、吉草酸イソオイゲニル、イソ吉草酸イソオイゲニル、ノナン酸イソオイゲニル、カプリル酸イソオイゲニル、フェニル酢酸イソオイゲニル、アントラニル酸イソオイゲニル、サリチル酸イソオイゲニル、イソオイゲニルメチルエーテル(メチルイソオイゲノール)、ベンジルイソオイゲニルエーテル、イソオイゲニルエチルエーテル(エチルイソオイゲノール)及びギ酸ジヒドロオイゲニル、酢酸ジヒドロオイゲニル、プロピオン酸ジヒドロオイゲニル、酪酸ジヒドロオイゲニル、ジヒドロ酪酸ジヒドロオイゲニル、オレイン酸ジヒドロオイゲニル(及び他の不飽和脂肪酸エステル)、安息香酸ジヒドロオイゲニル、フタル酸ジヒドロオイゲニル、ヘキサン酸ジヒドロオイゲニル、ヘプタン酸ジヒドロオイゲニル、オクタン酸ジヒドロオイゲニル、ペンタン酸ジヒドロオイゲニル、デカン酸ジヒドロオイゲニル、乳酸ジヒドロオイゲニル、桂皮酸ジヒドロオイゲニル、吉草酸ジヒドロオイゲニル、イソ吉草酸ジヒドロオイゲニル、ノナン酸ジヒドロオイゲニル、カプリル酸イソオイゲニル、フェニル酢酸ジヒドロオイゲニル、アントラニル酸ジヒドロオイゲニル、サリチル酸ジヒドロオイゲニル、ジヒドロオイゲニルメチルエーテル(メチルジヒドロオイゲノール)、ベンジルジヒドロオイゲニルエーテル及びジヒドロオイゲニルエチルエーテル(エチルジヒドロオイゲノール)が含まれるが、これらに限定されないイソオイゲノール及びジヒドロオイゲノールのエステル及びエーテルを含む組成物を上皮塗布することにより皮膚病変、皮膚疾患又は皮膚病を抑制又は治療する方法を意図する。これらのイソオイゲノール及びジヒドロオイゲノールのエステル及びエーテルは、種々の担体、賦形剤、希釈剤及び賦形剤と混合し、本明細書の他の場所で記載したような局所製剤を作成することができる。
【0051】
本発明の態様を更に十分に理解及び認識し得るように、それらを特定の実施例及び実施態様に関連して本明細書に説明するが、本発明はその特定の実施態様又は実施例に限定されることを意図しない。一方、全ての変形、修飾物及び同等物は、添付された請求項により定義されるように本発明の範囲内に含まれることが意図される。従って、好ましい実施態様を含む、本明細書に開示される実施例は本発明の実施を説明する役目を果たし、説明の目的及び本発明の好ましい実施態様の説明に役立つ異議論の目的のみであり、本発明の手段、並びに原理及び概念的見地の最も有用かつ容易に理解できる記載であると考えられるものを提供す
【0052】
【0053】
る理由で提示されることが理解されるであろう。
【0054】
実施例
実施例1.
1つの研究において、種々の濃度のDHEを培地に加え、これらの培地をヒト線維芽細胞培養に入れた(結果を図1に示す)。細胞は、UVB照射により誘導されるか又はされないで、サイトカイン/PGE−2産生を促進するかしないかである。処理の24時間後に細胞培地を除去し、PGE−2、種々のサイトカイン及びケモカインの発現についてELISA法によりアッセイを行った。
【0055】
図1に示すように、線維芽細胞のUV照射(UVR)処理は、PGE−2の6倍の増加をもたらす。10マイクロモルと低い濃度におけるDHEを照射後に培地に加えた場合、PGE−2のUVR誘導を完全に阻害した。
【0056】
ヒトケラチノサイトを用いて同様の実験を実施した場合、この場合もやはり、DHEは、50μMの濃度でPGE−2の産生を60%阻害し、PGE−2のUV誘導を顕著に抑制することがわかった(結果を図2に示す)。PGE−2は日焼けに関与する主要な炎症性メディエータであり、これらのデータは、日焼けの治療にDHEが有効であることを示す。更に、PGE−2は光線角化症及び皮膚癌の発生の主要因であることが知られており、DHEはこれらの病状の治療においても用いることができる。
【0057】
皮膚内で産生される炎症性メディエータは、酒さ、乾癬及びアトピー性皮膚炎のような疾患の発症及び伝搬の原因である。多くの炎症性メディエータがこれらの疾患に関与しているが、TNF−αは乾癬に関与する主要なサイトカインであることが知られている。アトピー性皮膚炎については、TNF−α、IL−8及びMCP−1が、これらの疾患において炎症の重要なメディエータである。DHEは、100マイクロモル濃度で、TPA誘導性(TPAはテトラデカノイルホルボールエステルである)TNF−αの産生を約50%抑制するのに効果的である(結果を図3に示す)。
【0058】
単球においては(図4に示すように)、ジヒドロオイゲノールは、サイトカインTNF−α、並びにケモカイン、IL−8及びMCP−1(単球走化性タンパク質1)の産生を阻害し得る。アトピー性皮膚炎及び乾癬のような免疫関与炎症性疾患の発症のために非常に重要であるので、結果は、DHEがこれらの疾患を治療するのに用いることができることを示す。
【0059】
ケラチノサイト、線維芽細胞及び単球を阻害する、いくつかの炎症性メディエータの概要を以下の表1、2及び3に示す。
【0060】
表1は、TPA及びUV光に曝すことによりケラチノサイト中に誘導される、いくつかの炎症性メディエータ(PGE−2、IL−6、IL−8及びTNF−α)の産生におけるDHE及びIEの阻害効果を示す。DHE及びIEは、いずれも、ケラチノサイト内における炎症性メディエータの産生の阻害効果を有する。
【0061】
【表1】

【0062】
表1.DHE及びIEによる、ケラチノサイトの炎症性メディエータの阻害割合
【0063】
表2は、IL−1及びUV光に曝すことにより線維芽細胞中に誘導される、いくつかの炎症性メディエータ(PGE−2、IL−6及びIL−8)の産生におけるDHE及びIEの阻害効果を示す。DHE及びIEは、いずれも、線維芽細胞内における炎症性メディエータの産生の阻害効果を有する。
【0064】
【表2】

【0065】
表2.DHE及びIEによる、線維芽細胞の炎症性メディエータの阻害割合
【0066】
表3は、LPS(リポ多糖類)及びTNF−αによって単球中に誘導される、いくつかの炎症性メディエータ(MCP−1(単球走化性タンパク質−1)、IL−12、TNF−α及びIL−8)の産生におけるDHE及びIEの阻害効果を示す。DHE及びIEは、いずれも、単球内の炎症性メディエータの産生における阻害効果を有する。
【0067】
【表3】

【0068】
表3.DHE及びIEによる、単球の炎症性メディエータの阻害割合
【0069】
実施例2.
1つのヒトの臨床効果研究において、紅斑を誘導するのに十分なUBV照射量を用いて臨床被験者の前腕の2箇所に照射した(図5)。照射の直後(しかし、前ではない)、1箇所の照射部位を2重量%のDHEを含む局所ローションで処理したが、他方の照射部位は、DHEを含まない同じ局所製剤(媒体コントロール)で処理した。4時間後、媒体コントロールで処理した部位にははっきりした紅斑が見られたが、2%DHEローションで処理した部位はごく小さい紅斑のみを示した。ステロイドのような、強い抗炎症化合物は、DHEよりもインビトロでPGE−2を含む炎症性メディエータを阻害するのに効果的であるが、それらを通常に用いた時にUVB照射誘導性紅斑を予防することができないので、この結果は意外であった。従って、UVB照射誘導性紅斑の縮小におけるDHEの作用の実際のメカニズムは、おそらく炎症性サイトカイン及びPGE−2のようなホルモンの阻害のみでなく、それ以上のものを含む。本発明の製剤は、紅斑の誘導を予防し得るのみでなく、以前より存在していた紅斑を回復し得る。
【0070】
実施例3.
放射線誘導性紅斑の抑制能力(実施例2に示すように)に加え、他の意外な発見は、局所塗布されたDHEが酒さ、大部分は原因が理解されていない疾患の症状を縮小するのに有効であることである。酒さの局所治療には、細菌及びある種の寄生虫に対して有効な抗生物質、並びに経口抗生物質である局所用メトロニダゾールが含まれる。酒さを患っている患者に、局所用DHE及び/又はDHE、IE及び桂皮アルデヒドの組み合わせを8〜12週間局所投与した場合、結果は、DHE/IE/桂皮アルデヒドを含まない同じローション基剤に対してDHE製剤の使用により、病状は全体的に改善したことを示した。この試験の結果を図6A〜Bに示す。
【0071】
実施例4.
放射線療法を経験した癌患者に実施した臨床試験は、2%DHEローションの局所塗布(1日に2回塗布)が放射線皮膚炎の発現をほとんど完全に予防し得ることを示した。例えば、乳癌のための35回の放射線療法を経験し、35回の放射線療法の間、毎日2%DHEローション(例えば、以下に示す製剤5)で処理した患者においては、35日間の治療の後、又は放射線療法の終了1ヶ月後に放射線障害はなかった(図7A〜C)。
【0072】
実施例5.
本発明は、更に、皮膚の老化の影響を軽減するための、種々のDHE、IE及びEV組成物、並びにそれらの塩、エステル、エーテル及び誘導体の使用を意図する。全ての老化の研究について、正常なヒト線維芽細胞培養を用いた。これらの細胞は、コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸を正常に産生する。皮膚の老化において、真皮内の線維芽細胞は、3種の皮膚の重要化合物を産生する能力を失い、その結果として、皮膚は弾力性、厚み及び滑らかな手触りを失う。更に、線維芽細胞が老化するにつれ、それらはコラーゲン及びエラスチンを破壊する特定の酵素の発現を増加する。まとめてMMPs(マトリクスメタロプロテイナーゼ)と呼ばれる約13種の酵素がある。主要なMMPs、MMP−1の1種はコラーゲン分解に関与している。コラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸におけるDHE、IE及びEVの効果を究明するための本明細書の実験について、線維芽足棒を化合物と72時間処理し、次いでmRNAを分離し、RT−PCR(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応)により存在量について解析した。IE、DHE及びEVは、線維芽細胞中でコラーゲン産生を促進することが示された。
【0073】
線維芽細胞培養を、IE、DHE又はEVのいずれかで、72時間(これは、細胞中に存在するコラーゲンmRNAの量が検出される時間である)処理した。DHE、IE及びEVは、それぞれ、コラーゲンmRNA産生の増加により示されるように、線維芽細胞中でコラーゲン産生の促進を起こした(図8)。
【0074】
図9に示すように、コラーゲンmRNA合成及びコラーゲンタンパク質合成の促進に加え、DHE、IE及びEV、並びにそれらの塩、エステル、エーテル及び誘導体は、ヒト真皮線維芽細胞中のエラスチンmRNAのレベルを上昇することができる。画像は、線維芽細胞mRNAからのPCRにより増幅されたDNAの電気泳動ゲルからのものである。このゲルを解析し、各バンドの濃度を、画像解析ソフトにより定量した。濃度解析を示す棒グラフを画像の上に示す。DHE、IE及びEVは、ヒト真皮線維芽細胞中のエラスチンレベルを上昇させる。
【0075】
DHE、IE及びEVは、本明細書において、HAS−2のmRNAをも促進することを示す。HAS−2(ヒアルロン酸シンターゼ−2)は、皮膚内でヒアルロン酸を産生する酵素である。HAは、皮膚内で水分及び柔軟性を維持するのに重要なグリコサミノグリカンである。HAは24時間の半減期を有し、従って、絶えず置換されている。皮膚が老化するにつれ、HPの産生は減少し、これは皮膚のたるみを起こし、皮膚が薄くなる。図10に示すように、我々は、DHE単独で、又はEVと併用し、HAS−2遺伝子を促進し得ることを発見した。更に、EVのみがHAS−2を促進することができるが、DHE並びにその塩及びエステル、並びにEVは、単独の場合よりも良好に相乗的に機能する。
【0076】
我々は、TIMPの産生が、DHE、IE及びEVによって上方制御され得ることをも示す。皮膚内の線維芽細胞は、皮膚マトリクスを破壊する酵素(MMPs)を産生するだけでなく、これらの酵素を阻害するタンパク質(メタロプロテイナーゼの組織阻害剤、すなわちTIMPS)をも産生する。いくつかのTIMPsがあるが、MMPsの阻害の最も重要なものはTIMP−1である。DHE、IE及びEV(並びにそれらの塩、エステル、エーテル及び誘導体)は、単独又は組み合わせて、TIMP−1の産生を顕著に促進することができ、その結果、TIMP−1が阻害する酵素、コラゲナーゼ(MMP−1)の活性を破壊するマトリクスに対する保護を皮膚にもたらし得る。図11に示すものは、これらの化合物によりTMP−1 mRNAの上方制御を示すPCRデータである。
【0077】
我々は、EVによるMMPsの阻害をも証明した。上述したように、繊維芽細胞が老化するにつれ、コラーゲン及びエラスチン、特にコラゲナーゼ、MMP−1を破壊する酵素、MMPの産生が増加する。我々は、大量のこれらの酵素タンパク質においてDHE、IE及びEVの効果を測定するためにタンパク質アレイブロッティング法を用いた。以下に示すように、EVは、ヒト真皮内で、MMP−1、MMP−3、MMP−8、MMP−9、MMP−10及びMMP−13を含む数種のMMPsのレベルを減少することができる(図12)。老化した皮膚中のMMPのレベルは非常に高いので、この化合物の老化防止製品への理想的な添加は、この優れた効果を引き起こす。
【0078】
実施例6.
IEは、メラニン合成を阻害する
IEは、チロシナーゼにより触媒されるメラニンの合成阻害において予期しない意外な効果を有することがわかった。0.2% L−DOPA(チロシナーゼの基質であるジヒドロキシフェニルアラニン)を含む、2mLのリン酸ナトリウムバッファー、pH6.8を、それぞれ2本の試験管に入れた。1本の試験管にエタノール20マイクロリットルを、他方の試験管に、エタノール中で製造したIEの1Mストック溶液(標識したTH−212)20マイクロリットルを加えた。L−DOPA基質からのメラニン合成を開始するために、チロシナーゼ調製液(0.5mg/mL)を両方の試験管に加え、試験管を混合し、室温に置いた。図13中の写真は、反応開始の2時間後に撮影した。図13に示すように、メラニン合成は、IEを含む試験管中でほとんど完全に阻害された。
【0079】
理論に拘束されることを望まないが、IEは直接チロシナーゼを阻害するのでなく、むしろメラニン合成に必要な後チロシナーゼ工程に干渉すると思われる。チロシナーゼ、DOPA及びIEを含むアッセイ試験管が一時的に赤くなるので、DOPAのドパキノンへの変換、又はドパキノンのドパクロムへの変化を媒介するチロシナーゼに干渉しているとは思われない。ドパクロムは赤いので、これは、IEが、チロシナーゼがDOPAをドパキノンに変換することを可能にすることを示す。ドパキノンのドパクロムへの変換は自発的であり、チロシナーゼを必要としない。イソオイゲノールは、ドパクロムを、メラニン合成経路下に継続することができないが、無色の中間体として残留する、ある種の化学物質に変換することができる。また、IEは、ドパクロムを、メラニン経路における次の中間体である5,6ジヒドロキシインドールに変換することを可能にする。次いで、それは、5,6ジヒドロキシインドール(無色の中間体)のメラニンへの重合化を防止し得る。
【0080】
図14〜17は、皮膚に高色素沈着部分の治療における、イソオイゲノール及びそのエステル、酢酸イソオイゲノール(別名、酢酸イソオイゲニル)の局所塗布用製剤(皮膚内のメラニン色素の減少が製剤の局所塗布によって引き起こされる)の皮膚美白効果を示す。メラニン合成における後チロシナーゼ工程の阻害に加え、IE及び酢酸IEは、ヒトメラニン細胞におけるチロシナーゼタンパク質の発現を阻害し得る。阻害効果は、IE又は酢酸IEのいずれかで9日間処理するか、又は未処理で放置したメラニン細胞から細胞抽出物を調製することにより証明することができる。抽出物の一定量を、バッファー中のL−DOPA(チロシナーゼの基質)を含む試験管に入れた場合に細胞抽出物がチロシナーゼを含む場合、酵素はDOPAをメラニンに変換するであろう。アッセイ試験管中でメラニンは茶色っぽい黒色に見えるであろう。メラニン細胞中でIE又は酢酸IEがチロシナーゼ合成を阻害するなら、これらの細胞からの抽出物は酵素を含まず、アッセイ試験管中でDOPAからメラニンを産生し得る。図18に示すように、DOPA、並びにIE又は酢酸IEのいずれかで処理した細胞からの細胞抽出物を含むアッセイ試験管中で非常に少量のメラニンが生成される。チロシナーゼ合成におけるIE又は酢酸IEの阻害効果もウェスタン免疫ブロットを用いることにより証明することができる。このアッセイにおいては、未処理で放置するか、又は200マイクロモルのIE又は酢酸イソオイゲノールで9日間処理したヒトメラニン細胞からの細胞抽出物をSDSポリアクリルアミド電気泳動ゲルで電気泳動しチロシナーゼを他のタンパク質から分離する。次いで、ゲル中のチロシナーゼを膜にブロッティングし、特異的抗チロシナーゼ抗体を用いて染色することによりチロシナーゼを検出する。次いで、化学発光により抗体結合チロシナーゼを目に見えるようにする。結果は、未処理のメラニン細胞は大量のチロシナーゼを含むが、IE又は酢酸イソオイゲノールで9日間処理したメラニン細胞がチロシナーゼの存在をほとんど検出できないことを示す。
【0081】
イソオイゲノール又は酢酸イソオイゲノールで9日間処理した、ヒトメラニン細胞抽出物中の多量のチロシナーゼのウェスタン免疫ブロットは、チロシナーゼのかなりの減少を示した(RDU−相対濃度単位により測定するように)。コントロールは約7.25RDUを示したが、200μM濃度のイソオイゲノール及び酢酸イソオイゲノールは、それぞれ約3RDU及び3.75RDUをもたらした。
【0082】
IE、酢酸IE又は本明細書に開示される他の化合物のメカニズムにかかわらず、DOPA、IE及びチロシナーゼを含む試験管が2週間後でさえ暗くならないので、メラニン産生の阻害は、基本的に持続的に阻害される。従って、本発明は、ケラチノサイト中、インビボでメラニンの生成を減少するか防止するための皮膚浸透賦形剤を含むIE組成物を局所塗布し、それによって皮膚美白剤として作用させることを意図する。
【0083】
本発明は、特に、イソオイゲノール、並びにギ酸イソオイゲニル、酢酸イソオイゲニル、プロピオン酸イソオイゲニル、酪酸イソオイゲニル、イソ酪酸イソオイゲニル、オレイン酸イソオイゲニル(及び他の不飽和脂肪酸エステル)、安息香酸イソオイゲニル、フタル酸イソオイゲニル、ヘキサン酸イソオイゲニル、ヘプタン酸イソオイゲニル、オクタン酸イソオイゲニル、ペンタン酸イソオイゲニル、デカン酸イソオイゲニル、乳酸イソオイゲニル、桂皮酸イソオイゲニル、吉草酸イソオイゲニル、イソ吉草酸イソオイゲニル、ノナン酸イソオイゲニル、カプリル酸イソオイゲニル、フェニル酢酸イソオイゲニル、アントラニル酸イソオイゲニル、サリチル酸イソオイゲニル、イソオイゲニルメチルエーテル(メチルイソオイゲノール)、イソオイゲニルエチルエーテル(エチルイソオイゲノール)及びベンジルイソオイゲニルエーテルが含まれるがこれらに限定されない、その塩、エステル及びエーテルを含む組成物を局所塗布することにより、皮膚の色素沈着(色素沈着過度)を阻害し、皮膚美白を起こす方法を意図する。これらのイソオイゲノールのエステル及びエーテルは、種々の担体、賦形剤、希釈剤及び賦形剤と組み合わせ、本明細書の他の場所に開示されているような局所製剤を製造することができる。
【0084】
実施例7
乾癬の治療
本明細書で意図するIE及びDHE組成物(並びにそれらの塩、エステル及びエーテル)は、乾癬の表面の皮膚内に発生するうろこ状の紅斑を治療するのに用いることができる。臨床治療は、実施例4〜7の組成物を用いた治療の30日間のコース後にスケーリング及び炎症のかなりの減少を示した。例えば、図19は、DHE及びIEを含む本発明の組成物を用いた治療前(A)及び30日後(B)の1個の乾癬の皮膚病変の写真を示す。
【0085】
実施例8.
EVの安定性における水の影響
好ましい実施態様においては、本発明は、好ましくは主要な成分としてシリコーン(例えば、20%〜90%の範囲のシリコーン)を含むエチルバニリンの非水製剤を含む。エチルバニリンの非水製剤は、皮膚に局所塗布され、真皮内のコラーゲン、エラスチン及びTIMPsの線維芽細胞産生を促進し、真皮内のMMPsの産生を減少し、その結果、皮膚の老化の影響を阻害し、かつ弱め、その外観を向上させることができる。好ましくは、前記製剤は0.1〜5%のエチルバニリンを含む。製剤は、更に、皮膚内の瘢痕(座瘡に起因する皮膚線条及び傷を含む)が「消失」するように、すなわち正常な皮膚色及び構造を取り戻すように、皮膚内の瘢痕を「再構築」するために用いることができる。製剤は、更にDHE、IE及び/又はそれらの塩、エステル及び/又はエーテル及び桂皮アルデヒドを含んでいてもよい。
【0086】
本発明の新しい発見において、EVは、24〜48時間以内にかなりが分解されるEVなしで油中水型エマルション中に含ませることができないことがわかった。この予期しない意外な発見は、EVが可溶化した形態で、また同時にその化学的安定性(本明細書においては、少なくとも95%のエチルバニリンが少なくとも3カ月、化学的に無傷で残存することと定義される)を維持するように適合する担体/賦形剤系を特定する必要があることを意味する。本明細書において意図される1つの製剤においては、EVは、カプリル酸/カプリルトリグリセリド又は他の脂肪酸トリグリセリドで溶解し、次いで、シリコーンが製剤の主成分(最も割合が多い)であるシリコーン油内で混合する。この実施態様において用いられる化粧品用シリコーン油はカプリル酸/カプリルトリグリセリドを受け入れ、EVが溶液中に残存することを可能にする。製剤には、水及び乳化剤が含まれない(又は大気水分の吸収による、例えば0.5%未満のわずかな量)ので、EVは安定のままである。従って、
本発明は、特に少なくとも20%〜25%まで、30%まで、35%まで、40%まで、45%まで、50%まで、又は60%まで、70%まで、80%まで、又は90%までのシリコーンを含み、その結果、油中水型又は水中油型エマルションを明確に除外する非水性溶媒中のEVの製剤を意図する。更に、カプリル酸/カプリルトリグリセリドに加え、
シリコーンに受け入れられる、ホホバ油、ひまわり油又はスクアレン又は他の任意の可溶化剤中でEVを可溶化することができる。
【0087】
例えば、その中で24時間以内にEVが分解する油中水型製剤(従って、本発明の製剤でない)は:水(62.8%)、ブタンジオール(5%)、グリセリン(4%)、エトキシジグリコール(3%)、グリセレス−7(2%)、ポリソルベート20(0.2%)、ステアリン酸グリセリル(及び)PEG−100ステアリン酸塩(4%)、ステアリン酸イソセチル(3.5%)、ホホバ油(3.5%)、鉱油(3%)、パルミチン酸イソステアリル(3%)、PEG−7グリセリルココエート(2%)、イソセチルアルコール(2%)、リシノール酸セチル(1%)、エチルバニリン(1%)である。
【0088】
医薬及び化粧品組成物
本明細書に開示された、DHE及び/又はIE及び/又はEV組成物、及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体は、好ましくは医薬又は化粧品組成物の形態で投与される。このような組成物は、医薬品及び化粧品の分野における当業者に周知の方法で製造することができる。前述のように、組成物は更に桂皮アルデヒドを含んでいてもよい。
【0089】
一般的に、本発明の組成物は、化粧品量、若しくは治療的又は化粧品的に有効な投与量で投与される。治療上の設定において実際に投与される化合物の量は、通常、治療すべき病状、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重及び反応、患者の症状の重症度等を含む関連のある環境を考慮して、皮膚科医のような医師によって決定することができる。化粧品の設定においては、塗布される量は、所望の化粧品効果を達成するように選択される。
【0090】
本発明の化粧品組成物は局所的に(又は所望の他の上皮投与により)投与される。本発明の医薬組成物は、経口、注射又は当業者に公知の他の適切な方法等により、局所、経皮的又は全身的に投与することができる。
【0091】
このような組成物においては、DHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体は、通常は微量成分(又は2種以上の成分)であり(約0.001〜約20重量%、好ましくは約0.01重量%〜約10重量%、又は0.1重量%〜5重量%、又は1.0重量%〜3重量%)、残りは、所望の投与形態を生成し、活性薬剤を上皮に輸送するのに役立つ種々の賦形剤又は担体加工助剤である。桂皮アルデヒドは、0.001%〜5%、更に好ましくは0.01〜1%、更に好ましくは0.05%〜0.5%の量で加えることができる。1つの好ましい製剤は、0.4%のDHE、0.16%の酢酸IE及び0.04%のEVを含み、0.1%の桂皮アルデヒドを含んでいてもよい。
【0092】
局所用化粧品製剤及び局所用医薬投与製剤には、ローション、シャンプー、石けん、ゲル、クリーム、軟膏及びペーストが含まれる。ローションは、一般に水又はアルコール基剤を用いる。ゲルは、半固体エマルション又は懸濁液である。クリームは、一般にその基剤中にかなりの割合の水を含むが、軟膏は通常、油っこい。
【0093】
局所投与又は化粧品塗布に適切なローションのような液剤には、バッファー、懸濁化剤及び分配剤、増粘剤、浸透促進剤等の適切な水性または非水性賦形剤が含まれる。クリーム又はペーストのような更なる固体には、基質としての水、油、アルコール又は潤滑油、並びにポリエチレングリコールのようなポリマー、増粘剤、固体等が含まれる。液状製剤又は固形製剤には、リポソーム、マイクロソーム、マイクロスポンジのような強化された送達法が含まれる。
【0094】
液状、半固形状及び固体局所組成物のための前記成分は単に具体例である。他の材料並びに加工法は、前述した、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0095】
医薬組成物が経皮投与される場合、それらは、通常、液体又はゲルとして用いられる。これらの設定においては、DHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体の濃度は、個々に、又は組み合わせて、組成物の約0.1%〜約20%であり、好ましくは約0.1〜約10%であり、更に好ましくは1%〜5%であり、残りはアルコールのような水性混合物又は非水性賦形剤、懸濁化剤、ゲル化剤、界面活性剤等である。適切なこのような物質の具体例は後述する。
【0096】
本明細書に開示されるDHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体は、徐放性経皮製剤において、又は経皮徐放性薬物送達システムから投与することもできる。代表的な徐放性物質の記載は、前述したRemington’s Pharmaceutical Sciences中に記載された物質中に見いだすことができる。
【0097】
全身投与のための組成物には、液状又は固体の経口投与用組成物、注射用液状組成物又は懸濁液、直腸、結腸、膣、鼻及び非経口投与のための製剤が含まれる。
【0098】
経口投与用組成物は、バルク液体溶液又は懸濁液、若しくはバルク粉末の形態を取り得る。しかし、更に一般的には、組成物は正確な投与を促進するために単位投与形態で存在する。「単位投与形態」なる用語は、ヒト患者及び他の哺乳動物のための単位投与として適切な物理的に分離した単位を意味し、各単位は、適切な薬学的なオキュパント(occupant)と関連し、所望の治療効果を生じるために計算された所定量の活性物質を含む。通常の単位投与製剤は、液体組成物のプロファイルされ、予め測定されたアンプル又は注射器を含み、又は固体組成物の場合には丸薬、錠剤、カプセル剤を含む。このような組成物においては、DHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体は、単独で、又は組み合わせて、通常は微量成分であり(約0.01〜約20重量%、好ましくは約0.1〜約10重量%、又は1重量%〜5重量%)、残りは、所望の投与形態を生成するのに有用な種々の賦形剤、担体又は加工助剤である。
【0099】
経口投与に適した液状製剤には、適切な水性又は非水性賦形剤、並びにバッファー、懸濁化剤及び分配剤、着色料、香料等が含まれるが、これらに限定されない。固形製剤には、以下の任意の成分又は同様の性質の化合物:すなわち、微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンのようなバインダー;デンプン又は乳糖のようなオキュパント(occupant);アルギン酸、Primogel(登録商標)又はコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;コロイド性二酸化ケイ素のような流動促進剤;ショ糖又はサッカリンのような甘味剤;若しくはペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香味料のような香味料が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
注射用組成物は、通常、無水生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水、又は当業界において公知の他の注射用担体をベースとする。前述したように、このような組成物中のDHE及び/又はIE及び/又はEV又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体は、通常は微量であり、例えば、約0.005〜10重量%、又は0.1〜2重量%の場合があり、残りは注射用担体等である。
【0101】
前述の経口又は上皮投与用組成物、若しくは注射用組成物は単に具体例である。他の材料並びに加工法等は、前述のRemington’s Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0102】
以下の製剤の実施例は、本発明の代表的な化粧品及び医薬組成物を示す。しかし、本発明は以下の医薬組成物に限定されるものではない。
【0103】
具体的な製剤
製剤1−ローション
好ましい実施態様においては、DHEを最終濃度2%の局所用ローションに製剤化し、UVB−照射により誘発される日焼けを阻止するその能力について試験した。ボランティアに、日焼けを誘発するのに十分なUVB照射源(約3MDE放射線量)で照射し、照射後、1mLの2%局所用DHEローションを2箇所のうちの1箇所に塗布した。他の照射部位は未処理で放置した。2〜6時間経過し、未処理のUBV部位には紅斑が示されたが、局所用DHEで処理した部位には紅斑は示されなかった。
【0104】
製剤2−液剤
DHE(合計125mg)の製剤及びキサンタンガム(4mg)を混合し、米国の篩いNo.10メッシュを通過させ、次いで、予め作成しておいた微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロース(11:89、50mg)の水/イソプロパノール(75:25)混合物中の溶液と混合した。3〜6.5のpHを維持するために、十分な水/イソプロパノール、並びに2%以下又は十分量のサリチル酸を加え、全量を5mLとした。
【0105】
製剤3−クリーム
市販の鉱油−水コールドクリーム基剤を得る。この基剤100グラムに、1mgのDHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル又は誘導体を、連続的に撹拌し基剤中に粉末を懸濁しながら微粉又は液体として加え、化粧品又は医薬組成物を得た。
【0106】
一実施態様において、この組成物は、以下の:脱イオン水(55.6重量%);ナイアシンアミド(2.0%);グリセリン(4.0%);フェノニップ(1.0%);プロピレングリコール(5.0%);トランスクトール(3.2%);ホホバ油(3.5%);イソセチルアルコール(2.0%);ステアリン酸イソセチル(3.5%);鉱油(3.0%);ジヒドロオイゲノール(1.0%);サリチル酸(2%);パルミチン酸イソステアリル(3.0%);PEG−7グリセリルココエート(2.0%);グリセレス−7(2.0%);POLYSORBATE−20(登録商標)(0.2%);リシノール酸セチル(1.0%);ステアリン酸グリセリル/PEG−100ステアリン酸塩(4.0%);及びSEPIGEL(登録商標)(2.0%)を含む。
【0107】
製剤4−クリーム
脱イオン水(56.4重量%);カフェイン(1.0%);ブタンジオール(4.0%);グリセリン(1.0%);フェノニップ(1.0%);POLYSORBATE−20(登録商標)(0.2%);ナイアシンアミド(2.0%);アラセル(6.0%);ステアリン酸イソセチル(3.5%);リシノール酸セチル(1.0%);protaderm B(10.0%);ホホバ油(3.5%);ステアリルアルコール(3.0%);セテアレス20(0.4%);PEG−12(3.0%);ジヒドロオイゲノール(2.0%);SEPIGEL(登録商標)(2.0%)。
【0108】
製剤5−クリーム
水(44.4重量%);ナイアシンアミド(2.0%);プロピレングリコール(3%);PEG−100ステアリン酸塩(1%);ajidew(1%);グリセリン(1%);EDTA(0.1%); カーボポール(20%);スクアレン(2%);ホホバ油(2%);ステアリン酸(2%);ステアリン酸グリセリル(1%);セチルアルコール(1.5%);ビタミンE(1%);ジメチコン(1%);カプリル酸/カプリルトリグリセリド(2%);ジヒドロオイゲノール(2%);ワセリン(1%);promulgen D(2%);PP2(2%);ステアリン酸グリコール(1%);ジメチルイソソルビド−DMI(3%);及び乳化後にgermaben(1%)<55°;及びトリエタノールアミン(1%)を加える。
【0109】
製剤6−錠剤
3〜6.5のpHに維持するために、DHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル又は誘導体、並びにサリチル酸を、ゼラチンバインダー及びデンプン希釈剤と、0.1:1:1の重量比で混合する。潤滑化する量のステアリン酸マグネシウムを加え、混合物を、10mgのDHE、IE又はEV、若しくは本明細書に開示される他の化合物を含む210mgの錠剤に錠剤化した。
【0110】
製剤7−注射剤
3〜6.5のpHに維持するために、DHE及び/又はIE及び/又はそれらの塩、エステル又は誘導体、並びにサリチル酸を1mg/mLの濃度で注射用生理食塩水媒体に溶解した。
【0111】
エチルバニリン(EV)製剤−局所用
以下は、EVを化学的に安定な状態に維持する、EVを含む5種の非水製剤である。
【0112】
1.シクロメチコン(及び)ジメチコノール(20〜90%)、カプリル酸/カプリルトリグリセリド(1〜20%)、ジメチコン(1〜10%)、エチルバニリン(0.1〜5%)。
【0113】
2.シクロメチコン(及び)ジメチコノール(5〜60%)、シクロペンタシロキサン(及び)ジメチコンクロスポリマー(5〜60%)、カプリル酸/カプリルトリグリセリド(1〜20%)、ジメチコン(1〜10%)、ホホバ油(1〜10%)、スクアレン(1〜10%)、エチルバニリン(0.1〜5%)。
【0114】
3.SDアルコール(5〜50%)、オクタン酸セテアリル(1〜10%)、ビタミンE(0.5%)、シクロメチコン(10〜50%)、PPG−26オレイン酸塩(1〜10%)、カプリル酸/カプリルトリグリセリド(1〜10%)、エチルバニリン(0.1〜5%)。
【0115】
4.PPG−15ステアリルエーテルシクロメチコン(10〜50%)、ひまわり油(10〜50%)、イソプロピルアルコール(1〜10%)、パルミチン酸イソステアリル(1〜10%)、エチルバニリン(0.1〜5%)。
【0116】
5.ラウリン酸ベンジル(5〜25%)、PPG−10ブタンジオール(1〜10%)、鉱油(10〜70%)、スクアレン(1〜10%)、カプリル酸/カプリルトリグリセリド(1〜10%)、エチルバニリン(0.1〜5%)。
【0117】
有用性及び投与
本発明の組成物及び方法は、紫外線角膜炎、座瘡、瘢痕、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、紅斑(日焼け)、手湿疹、痒み、刺激性接触皮膚炎、乾癬、脂漏性湿疹(皮膚炎)、他の湿疹、酒さ、色素沈着過度、円形脱毛症、UV照射、IR照射及び他のイオン化放射線を含む放射線からの損傷(放射線皮膚炎)、並びに本明細書の他の部分に開示した皮膚病変のような皮膚病変を治療するために局所的に用いることができる。
【0118】
化粧品及び医薬品のいずれの組成物も、日焼けを治療及び抑制し、UV誘発性炎症及び損傷、並びにイオン化放射線の他の形態からの損傷を治療及び予防することができる。
【0119】
これらの応用において、化粧品及び医薬組成物は、所望の化粧品効果又は局所治療効果を達成するために局所投与される。
【0120】
これらの用途において、投与レベル又は塗布レベルは、皮膚に送達される、DHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体の量を単位として表すことができる。例えば、1日あたり1〜約5回の投与で、約0.001g〜約1gのDHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体、若しくはそれらの組み合わせを含むそれぞれを用いることができる。
【0121】
また、投与量レベルは、投与される製剤組成物の容量を単位として表すことができる。
例えば、1日あたり1〜約5回の投与又は塗布であり、それぞれは、DHE及び/又はIE及び/又はEV及び/又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体を、それぞれ約0.01重量%〜約10重量%、特には0.02重量%〜8重量%、又は0.1重量%〜5重量%、更に好ましくは1.0〜4重量%含む、約1〜約30グラムの組成物を含む。
【0122】
サンケアローションのようなサンケア製品において用いる場合、DHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体の濃度は前記に記載することができ、製品は日光露出の前、間又は後の日光露出の強度及び時間に基づいて必要に応じて塗布することができる。
【0123】
また、DHE及び/又はIE及び/又はEV又はそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体が、IL−1α又は本明細書に引用される他のもののようなサイトカインの遊離を効率的に阻害することがわかったので、このような化合物は、サイトカイン、特にIL−1αの過剰産生又は生産の調節異常により特徴づけられる疾患の治療に有用であり、治療は前記サイトカインを減少させる。前述したように、IL−1α及び他のサイトカインのレベルの上昇は、リウマチ様関節炎、細菌性ショック、癩性結節性紅斑、敗血症、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、炎症性腸疾患(IBD)、ぶどう膜炎、イオン化放射線からの損傷等の多種多様の炎症状態と関連している。
【0124】
このような炎症状態を治療するための経皮投与の場合に、皮膚表面積に対して、DHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体の効果的な全身の血流濃度を達成するのに適した本発明の組成物の量、例えば、約0.5μM〜約1000μM、及び更に好ましくは約1μM〜約500μM、又は本明細書に示す他の濃度を投与することができる。局所塗布又は全身投与するための製剤においては、皮膚薄層(上皮及び/又は真皮)に、その中の活性薬剤の濃度を、1μM〜1000μM、更に好ましくは10μM〜500μM、更に好ましくは50μM〜300μM、更に好ましくは100μM〜200μMに維持するに作用することが好ましい。
【0125】
炎症状態を治療するための注射投与量は、約0.01mg/kg/時〜少なくとも1mg/kg/時であり、全て、約1〜約120時間であり、特には24〜96時間の範囲であり得る(しかし、これらに限定されない)。例えば、約0.01mg/kg〜約1mg/kg又はそれ以上の前もって負荷が加えられた急速静注(preloading bolus)も、適切な定常状態レベルを達成するために投与され得る。
【0126】
1日あたり、1〜5回、2〜4回、通常は3回の経口投与が、代表的な投薬計画である。3種の投与パターンを用いて、それぞれの投与は、好ましくは約0.01〜10mg/kgのDHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体を提供し、好ましい投与量は、それぞれ、約0.01〜約5mg/kg、又は本明細書に記載される他の投与量を提供する。
【0127】
DHE及び/又はIE及び/又はEV、若しくはそれらの塩、エステル、エーテル又は誘導体は、単独の活性薬剤として投与することができ、又は、それらは単独で又は組み合わせて、若しくは他の活性薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0128】
変更は、以下に記載する請求項の精神及び範囲を逸脱することなく、本明細書に開示される製剤、並びに種々の組成物及び製剤の使用法においてなされ、又は本明細書に開示される方法の工程において、又は工程の順番においてなされる。
【0129】
本明細書で 引用された、全ての特許、公開特許公報、論文又は文献は、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソオイゲノール、ジヒドロオイゲノール又はエチルバニリン、若しくはそれらの塩、エステル又はエーテルの少なくとも1種を含む活性薬剤;及び
患者の皮膚の表皮又は真皮内へ活性薬剤を輸送するに有効であるか、又は通過を可能にする薬学的に許容される担体又は賦形剤を含み、活性薬剤がその効果を有する、患者における皮膚疾患、皮膚病又は皮膚病変の局所治療用組成物。
【請求項2】
患者の皮膚疾患、皮膚病又は皮膚病変が、酒さ、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、放射線皮膚炎、紅斑、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、紫外線角膜炎、座瘡、色素沈着過度、瘢痕、老化及び円形脱毛症の少なくとも1種である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記薬学的に許容される担体又は賦形剤が浸透促進剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記活性薬剤が、主として可溶性エチルバニリン及び薬学的に許容される担体を含むか、又は賦形剤が非水性であり、乳化剤を含まず、前記可溶性エチルバニリンが少なくとも3ヶ月間安定であり続ける、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記担体が、主として少なくとも25重量%のシリコーンを含む、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
桂皮アルデヒドを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
表皮又は真皮内で前記活性薬剤が10μM〜500μMの範囲に維持することができるように、経皮感染に有効な、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
イソオイゲノール、ジヒドロオイゲノール又はエチルバニリン、若しくはそれらの塩、エステル又はエーテルの少なくとも1種を含む活性薬剤;及び患者の皮膚の表皮又は真皮内へ活性薬剤を輸送するに有効であるか、又は通過を可能にする薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む組成物を供給し;及び
皮膚疾患、皮膚病又は皮膚病変により影響される患者の皮膚の部分に、
一定量の前記組成物を局所塗布することを含む、
患者における皮膚疾患、皮膚病又は皮膚病変の治療方法。
【請求項9】
前記皮膚疾患、皮膚病又は皮膚病変が、酒さ、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、放射線皮膚炎、脂漏性皮膚炎、紅斑、乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹、紫外線角膜炎、座瘡、色素沈着過度、老化、瘢痕及び円形脱毛症の少なくとも1種である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が桂皮アルデヒドを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が浸透促進剤を含む、請求項8記載の方法
【請求項12】
前記組成物の活性薬剤が、エチルバニリン、若しくはその塩、エステル又はエーテルであり、前記皮膚病変が老化及び/又は瘢痕である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記組成物がコラーゲン、エラスチン及びTIMPsの皮膚産生を促進し、MMPsの産生を阻害する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記活性薬剤が、ジヒドロオイゲノール、若しくはその塩、エステル又はエーテルを含み、前記皮膚病変が酒さ又はアトピー性皮膚炎である、請求項8記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、更に桂皮アルデヒドを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記活性薬剤が、更にイソオイゲノール、若しくはその塩、エステル又はエーテルを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記活性薬剤がジヒドロオイゲノールを含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記活性薬剤が、ジヒドロオイゲノール、若しくはその塩、エステル又はエーテルを含み、前記皮膚病変が放射線皮膚炎及び/又は紅斑である、請求項8記載の方法。
【請求項19】
前記活性薬剤がジヒドロオイゲノールを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ジヒドロオイゲノールが、組成物の0.5重量%〜5重量%含まれる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ジヒドロオイゲノールが、組成物の1重量%〜4重量%含まれる、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記活性薬剤が、更にイソオイゲノール、若しくはその塩、エステル又はエーテルを含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記活性薬剤が、イソオイゲノール、若しくはその塩、エステル又はエーテルであり、前記皮膚病変が色素沈着過度である、請求項8記載の方法。
【請求項24】
前記活性薬剤が、ジヒドロオイゲノール及びイソオイゲノール、若しくはそれらの塩、エステル及び方法、並びに桂皮アルデヒドであり、前記皮膚病変が座瘡である、請求項8記載の方法。
【請求項25】
前記活性薬剤が、ジヒドロオイゲノール、若しくはその塩、エステル又はエーテル、並びにイソオイゲノール、若しくはその塩、エステル又はエーテルを含み、前記皮膚病変が乾癬である、請求項8記載の方法。
【請求項26】
前記活性薬剤が、皮膚の表皮又は真皮内で10μM〜500μMの範囲の濃度に維持される、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【公表番号】特表2011−500597(P2011−500597A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529089(P2010−529089)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/079534
【国際公開番号】WO2009/049172
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510093509)セラメティックス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】