説明

監視方法

【課題】警戒監視によって識別した追尾対象を移動ロボットで継続して追尾することが可能な監視方法を提供する。
【解決手段】
移動ロボット10に搭載するカメラとして、光学的ズーム機能を有する監視用カメラ11と操縦用カメラ12を用い、監視用カメラ11を広範囲視野の警邏状態にしてラスタースキャンしながら、操縦用カメラ12からの映像に基づいて移動ロボット10を走行させる警邏行動と、警邏行動中において、監視用カメラ11からの広範囲視野映像内に識別対象物A,Bを発見した際に監視用カメラ11を狭範囲視野の監視状態にして識別対象物A,Bをクローズアップする識別行動と、識別行動において、識別対象物A,Bが追尾対象であると識別した際に監視用カメラ11を狭範囲視野の監視状態に保ちながら、操縦用カメラ12からの映像に基づいて移動ロボット10を走行させて追尾対象を追尾する追尾行動を行う監視方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを搭載した移動ロボットを使用して、特定区域の監視を行う際に用いられる監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の監視方法に用いる移動ロボットとしては、例えば非特許文献1に記載されているように、全方位を監視するカメラや熱源探知カメラなどを搭載したものがある。この移動ロボットは、予め設定したルートを自動的に走行するか、カメラの映像に基づいて遠隔操縦されることとなる。また、全方位を監視するカメラには、例えば非特許文献2に全方位センサとして記載されているように、円錐形の全方位ミラーとCCDカメラなどを組み合わせたものがある。
【非特許文献1】http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0407/22/news061.html
【非特許文献2】http://www.vstone.co.jp/top/products/sensor/index.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記したような移動ロボットを用いた監視方法において、全方位監視カメラの映像を移動ロボットの操縦に用いる場合には、例えばオペレータによる遠隔操縦用の映像(画面)として使用することが容易である。
【0004】
しかしながら、全方位監視カメラの映像を監視に用いる場合には、その映像を投影変換してデジタルズームする手法が用いられるが、この際、カメラの画素数に限りがあるうえに、データ取得時にレンズで圧縮された情報をデジタル的に復元するため、遠方の状況を識別し難いことがある。
【0005】
このため、従来の移動ロボットを用いた監視方法では、移動ロボットを走行させて行う警邏行動と、監視用映像を継続して見て行なう警戒監視行動との両立を図ることが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、移動ロボットを用いて監視を行うに際し、移動ロボットを走行させて行う警邏行動と、継続的な警戒監視行動とを両立させることができ、その結果、警戒監視によって識別した追尾対象を移動ロボットで継続して追尾することが可能である監視方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の監視方法は、カメラを搭載した移動ロボットを走行させて特定区域の監視を行う方法であって、移動ロボットに搭載するカメラとして、光学的ズーム機能を有する監視用カメラと、移動ロボットの少なくとも前方を撮影する操縦用カメラを用い、監視用カメラを広範囲視野の警邏状態にしてラスタースキャンしながら、操縦用カメラからの映像に基づいて移動ロボットを走行させる警邏行動と、警邏行動中において、監視用カメラからの広範囲視野映像内に識別対象物を発見した際に監視用カメラを狭範囲視野の監視状態にして識別対象物をクローズアップする識別行動と、識別行動において、識別対象物が追尾対象であると識別した際に監視用カメラを狭範囲視野の監視状態に保ちながら、操縦用カメラからの映像に基づいて移動ロボットを走行させて追尾対象を追尾する追尾行動を行う構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
本発明の監視方法において、操縦用カメラからの映像に基づいて移動ロボットを走行させるには、オペレータによる遠隔操縦又は計算機による自動操縦がある。
【0009】
また、本発明の監視方法において、監視用カメラは、遠方の識別対象物を明確に識別するためには、時間的に連続する詳細なデータが必要であるから、光学的ズーム機能を有するものとし、このズーム機能によって広範囲視野の警邏状態と狭範囲視野の監視状態を切り替える。この監視用カメラは、例えば従来既知のパンチルトジンバル機構等により保持されてラスタースキャンを行う。
【0010】
他方、操縦用カメラは、少なくとも移動ロボットの前方の所定範囲を撮影できるものであれば良いが、移動ロボットの周囲の状況を適切に把握するためには、魚眼レンズ等の広角レンズや全方位ミラーを備えたものがより望ましい。
【0011】
本発明の監視方法では、監視用カメラを広範囲視野の警邏状態にしてラスタースキャンしながら移動ロボットを走行させる警邏行動中において、監視用カメラからの広範囲視野映像内に識別対象物を発見した場合には、識別行動として、移動ロボットを停止させて、監視用カメラを狭範囲視野の監視状態にして識別対象物をクローズアップする。
【0012】
そして、識別行動において識別対象物が追尾対象であると識別した場合には、追尾行動として、監視用カメラを狭範囲視野の監視状態に保ちながら、操縦用カメラからの映像に基づいて移動ロボットを走行させ得るので、警戒監視で識別した追尾対象を移動ロボットで継続して追尾し得ることとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の監視方法によれば、移動ロボットを用いて監視を行うに際し、移動ロボットを走行させて行う警邏行動と継続的な警戒監視行動とを両立させることができる。そして、光学的ズーム機能を有する監視用カメラをラスタースキャンすることにより、広域に対して高い識別精度で警戒監視を行いながら、操縦用カメラの映像に基づいて移動ロボットを走行させることができるので、警戒監視によって識別した追尾対象を移動ロボットで継続して追尾することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の監視方法において、操縦用カメラからの映像に基づく移動ロボットの走行が、オペレータの遠隔操縦による走行であって、監視用カメラからの広範囲視野映像内に識別対象物を発見した際には、オペレータが監視用カメラ専用のモニタに設けた画像指示装置を操作することで識別対象物をクローズアップする構成を採用することができ、例えば、画像指示装置をタッチスクリーンとし、オペレータがタッチスクリーンに触れることで識別対象物をクローズアップする構成を採用することができる。
【0015】
上記画像指示装置をタッチスクリーンとする構成を採用すると、マンマシンインターフェースが極めて簡便なものとなり、オペレータの作業負荷が軽減されることとなる。
【0016】
さらに、本発明の監視方法において、監視用カメラからの広範囲視野映像内に識別対象物を発見した際に、コンピュータの画像処理により自動的に識別対象物をクローズアップする構成を採用することができる。
【0017】
この構成を採用した場合には、オペレータの作業負荷の大幅な軽減が図られることとなる。
【0018】
本発明の監視方法において、識別対象物の識別及び追尾のアルゴリズムには、多数ある公知の技術を適宜採用することができる。
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の監視方法の実施形態を説明する。
【0020】
図1及び図2は、本発明の監視方法の一実施形態を説明する図である。図1に示すように、この監視方法は、光学的ズーム機能を有する監視用カメラ(可視監視用カメラ及び赤外線監視用カメラ)11と、少なくとも移動ロボット10の前方を撮影する操縦用カメラ(操縦用可視カメラ及び操縦用赤外線カメラ)12を車両タイプの移動ロボット10に搭載し、この移動ロボット10を走行させて特定区域の監視を行う方法であって、この実施形態では、管制局1のオペレータOpの遠隔操縦で移動ロボット10を走行させる。
【0021】
監視用カメラ11は、遠方の識別対象物を明確に識別するためには、時間的に連続する詳細なデータが必要であるから、光学的ズーム機能を有するものとしている。他方、操縦用カメラ12は、移動ロボット10の周囲の状況を適切に把握するためには、魚眼レンズ等の広角レンズや全方位ミラーを備えたものがより望ましい。
【0022】
移動ロボット10を遠隔操縦する管制局1は、管制コンピューター2と、遠隔操縦装置(監視用カメラ11の遠隔操作装置を含む)3と、移動ロボット10の監視用カメラ11で捉えた映像を映す監視用モニタ4と、操縦用カメラ12で捉えた映像を映す操縦用モニタ5を備えており、監視用モニタ4には画像指示装置としてのタッチスクリーン6が設けてある。
【0023】
移動ロボット10は、監視用カメラ11やレーザ測距装置及びこれらを駆動するパンチルトジンバル機構を具備した監視ユニットと、操縦用カメラ12やGPSや各種センサなどの機器を具備した操縦センサユニットと、駆動系ユニットと、電源ユニットと、コンピュータユニットを備えている。コンピュータユニットは、車載コンピュータのほかに、各カメラ11,12で捉えた画像を送信する送信機と、車載コンピュータで解析された操縦センサユニットからの車両操縦データや監視用カメラ11の姿勢データを送信する通信機を具備している(レーザ測距装置、パンチルトジンバル機構、駆動系ユニット、電源ユニット及びコンピュータユニットはいずれも図示省略)。
【0024】
この場合、監視ユニットの監視用カメラ11及びレーザ測距装置は、車体20の中央に立設したシャフト21の上端球状部に配置してある。また、操縦センサユニットの操縦用カメラ12はシャフト21の中間部分に配置してあると共に、操縦用レーザ測距装置は車体20の前部に配置してある。
【0025】
上記管制局1のオペレータOpの遠隔操縦で移動ロボット10を走行させて監視を行う場合、まず、図1(a)に示すように、広範囲視野映像Wを得るべく監視用カメラ11を広範囲視野の警邏状態にしてラスタースキャンし、その映像を監視用モニタ4に映すと共に、オペレータOpが、操縦用カメラ12の映像を映す操縦用モニタ5を見ながら遠隔操縦装置3を操って移動ロボット10に全域の警邏行動を行わせる(図2におけるステップS1)。
【0026】
この警邏行動中において、図1(b)に示すように、監視用カメラ11からの広範囲視野映像W内に識別対象物A,Bを発見した場合には、オペレータOpの操作により移動ロボット10を停止させるのに続いて、図2のステップS2において、コンピュータ画像処理による対象物検出か、オペレータOpによる対象物選択かのいずれかをオペレータOpが選択する。
【0027】
そして、オペレータOpによる対象物選択を選んだ場合には、図2のステップS3において、識別対象物A,Bを広範囲視野映像W内で特定するのに続いて、図2のステップS4において、識別行動としてオペレータOpが監視用モニタ4のタッチスクリーン6上で識別対象物A(又は識別対象物B)に触れることで、図2のステップS5において、監視用カメラ11を狭範囲視野の監視状態にして、監視用モニタ4に識別対象物A(又は識別対象物B)をクローズアップした狭範囲視野映像Ta(又は狭範囲視野映像Tb)を映し出して、追尾対象であるか否かを識別する。
【0028】
次いで、図2のステップS6において、識別対象物Aが追尾対象であると識別した場合には、追尾行動として、監視用モニタ4に識別対象物Aをクローズアップした狭範囲視野映像Taを映し出させたまま、すなわち、監視用カメラ11を狭範囲視野の監視状態に保ったまま、操縦用モニタ5に映し出される映像M1,M2,M3に基づくオペレータOpの遠隔操縦により移動ロボット10を走行させて追尾対象を追尾する。
【0029】
このように、上記した監視方法では、移動ロボット10を走行させて行う警邏行動と継続的な警戒監視行動とを両立させることができ、識別対象物A,Bを捉えた後には、監視用モニタ4に識別対象物Aをクローズアップした狭範囲視野映像Taを映し出させたまま、オペレータOpの遠隔操縦により移動ロボット10を走行させ得るので、警戒監視で識別した追尾対象Aを移動ロボット10で継続して追尾し得ることとなる。なお、識別対象物A,Bが追尾対象ではないと判断した場合には、監視用カメラを広範囲視野に戻して警邏行動を再開する。
【0030】
また、上記した監視方法では、光学的ズーム機能を有する監視用カメラ11をラスタースキャンすることから、広域に対して高い識別精度で警戒監視を行いながら、操縦用カメラ12の映像に基づいて移動ロボットを円滑に走行させることができる。
【0031】
さらに、上記した監視方法では、監視用モニタ4に画像指示装置としてのタッチスクリーン6を設け、監視用カメラ11からの広範囲視野映像W内に識別対象物A,Bを発見した際に、オペレータOpが監視用モニタ4のタッチスクリーン6上で識別対象物A(又は識別対象物B)に触れることで識別対象物A(又は識別対象物B)をクローズアップするようにしているので、マンマシンインターフェース(図2におけるステップ2〜4,6)が極めて簡便なものとなり、オペレータOpの作業負荷が軽減されることとなる。
【0032】
上記した実施形態では、監視用カメラ11からの広範囲視野映像W内に識別対象物A,Bを発見した場合、図2のステップS2において、コンピュータ画像処理による対象物検出かオペレータOpによる対象物選択かのいずれかをオペレータOpが選ぶようにしているが、コンピュータ画像処理による対象物検出を選んだ場合には、図2のステップS7において、コンピュータ画像処理による識別対象物A,Bの特定が自動的に成されることから、この場合も、オペレータOpの作業負荷の大幅な軽減が図られることとなる。
【0033】
本発明の監視方法は、例えば、空港、港湾、基地、公園及び各種建物等の様々な施設のパトロールに適用することが可能である。また、火災が発生した場合や、テロ集団等に占拠された場合において、人員の救出活動に先立って行う状況監視行動(偵察行動)に適用することも可能である。
【0034】
そして、本発明の監視方法は、光学的ズーム機能を有する監視用カメラをラスタースキャンしながら、操縦用カメラの映像に基づいて移動ロボットを走行させるので、建物上部等の高所からの警戒監視行動や、地上だけでなく上空をも含む広範囲に対する警戒監視行動に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態による監視方法の警邏行動から追尾対象の追尾行動に至るまでの監視用モニタの映像の変化を説明する図(a),(b)である。
【図2】図1における監視方法の警邏行動から追尾対象の追尾行動に至るまでの流れを説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1 管制局
4 監視用モニタ
5 操縦用モニタ
6 タッチスクリーン(画像指示装置)
10 移動ロボット
11 監視用カメラ
12 操縦用カメラ
Op オペレータ
W 広範囲視野映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを搭載した移動ロボットを走行させて特定区域の監視を行う方法であって、
移動ロボットに搭載するカメラとして、光学的ズーム機能を有する監視用カメラと、移動ロボットの少なくとも前方を撮影する操縦用カメラを用い、
監視用カメラを広範囲視野の警邏状態にしてラスタースキャンしながら、操縦用カメラからの映像に基づいて移動ロボットを走行させる警邏行動と、
警邏行動中において、監視用カメラからの広範囲視野映像内に識別対象物を発見した際に監視用カメラを狭範囲視野の監視状態にして識別対象物をクローズアップする識別行動と、
識別行動において、識別対象物が追尾対象であると識別した際に監視用カメラを狭範囲視野の監視状態に保ちながら、操縦用カメラからの映像に基づいて移動ロボットを走行させて追尾対象を追尾する追尾行動を行うことを特徴とする監視方法。
【請求項2】
操縦用カメラからの映像に基づく移動ロボットの走行が、オペレータの遠隔操縦による走行であって、監視用カメラからの広範囲視野映像内に識別対象物を発見した際に、オペレータが監視用カメラ専用のモニタに設けた画像指示装置を操作することで識別対象物をクローズアップすることを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項3】
画像指示装置をタッチスクリーンとし、オペレータがタッチスクリーンに触れることで識別対象物をクローズアップすることを特徴とする請求項2に記載の監視方法。
【請求項4】
監視用カメラからの広範囲視野映像内に識別対象物を発見した際に、コンピュータの画像処理により自動的に識別対象物をクローズアップすることを特徴とする請求項1に記載の監視方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−301175(P2009−301175A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152698(P2008−152698)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【Fターム(参考)】