説明

目地部材用止め金具

【課題】トンネル、ボックスカルバート構造物等コンクリート構造物間の目地部等の被覆部材を均等に前記コンクリート構造物に密着させる技術を提供する。
【解決手段】構造物26の目地部又は接合部にFRP板等でなる被覆部材27を覆う。そして、表・裏面が凹凸形状を有する目地部材用止め金具28を前記被覆部材27に当接し、該金具28の両端辺28a、28aを該被覆部材27の表面に設定・配置する。該金具28の第1及び第2頂点部28b、28cは前記被覆部材27の表面から浮かせた状態で配置する。そして、アンカーボルト等ボルト29のボルト軸29aを前期目地部材用止め金具28のボルト孔28dに挿通し、該ボルト軸29aの先端部分29bをコンクリート構造物26に打込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル、ボックスカルバート構造物等コンクリート構造物間の目地部又は接合部を被覆するゴムシート等の被覆部材をアンカー支圧力を分散させて線状方向に均等に前記コンクリート構造物に密着させるようにする目地部材用止め金具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としてのコンクリート躯体に於ける目地部分の漏止水処理工法の第1例は、図6(a)、(b)に示すような特開平11−22394号公開特許公報に開示した技術がある。これについて説明すれば、図6(a)は高速道路の山岳部のトンネルに於ける処理施工態様を示すものであり、コンクリート躯体1の所定部位にまず、45°角に所定深さのダイヤモンドカットの斜面カットを電動ハンマーやエアハンマーにより行う。この場合、新規施工にあってはセントル等の型枠のジョイント部に予め目地を作成し、又は、面木を当ておく。そして、当該斜面カット部2に対し予め設計に従う所定深さ幅の導水溝3をコンクリート躯体1に対し内部斫りで形成する。また、ダイヤモンドカットの斜面カット部2にプライマー及びパテ材等の樹脂ライニング4を塗布し、該両斜面カット部2に端部を当てW型の波型に予め形成したゴム板の漏止水用樋板5を当接させて導水溝3をアンダーハング状に遮蔽してカバーする。次いで、該漏止水用樋板5の斜面カット部2にカバー状にアングル6をセットし、所定の接着剤により接着する。そして、アングル6、6の双方の相対向する端部、すなわち、アングル押え7の端部についても同様であるが、コンクリート躯体1の経時的伸縮及び漏止水用樋板5の経時的伸縮による相互の干渉による挙動を拘束しないように相互に遊び幅の間隙部8を設けるか、又は、オーバーラップさせて相互摺動が可能であるようにセットする。そして、最後にアンカー9、9をボルト締めにより締結する。この際、当該漏止水用樋板5の斜面カット部2はコンクリート躯体1に対する伝導ハンマーやエアハンマーによるダイヤモンドカットであるためにプライマー及びパテ材を介しての接着セットは充分に相互に馴染み性をもって密着タイプに接着され、確実な漏止水機能をもたせる。
尚、図6(b)に示す実施例は漏止水用樋板5のセットに先立ち導水溝3にポリウレタン等の発泡性弾性材10を密に充填して止水性を高めておくこともできる。又、該漏止水用樋板5の先端部は内空面Aから外部へ突出しないように予めサイズを設計する。
【0003】
次に、従来技術としてのトンネルの漏水案内装置の第2例は、図7に示すような特開平2−132300号公開特許公報に開示した技術がある。これについて説明すれば、導水樋は、次のような構造である。図7に示すように、軟質ビニール材で被覆された硬質塩化ビニール製のドレンコーナ11が、独立発泡体すなわち、不連続気泡を有する発泡体から成るドレンシーラ12を介してアンカボルト13とナツト14でコンクリート壁15に固定されている。これらドレンコーナ11は、コンクリート内壁面に沿つて縦方向に延設された左右一対から成り、その先端部に対向設置された溝部16に、特殊アクリル変性樹脂と塩化ビニルとをブレンド成形した導水プレート17が水密状態に挿入・把持される。ドレンシーラ12は、弾力性があり、水を吸収しないため、コンクリート壁15の凹凸面によく対応して密着し、水を遮断する。これらドレンコーナ11、導水プレート17は、トンネル内壁面との間に水路13を形成する。導水樋は、必要に応じて、各種規格の導水プレート17を使用することにより、幅方向が可変とされるとともに、長さ方向へは、複数のドレンコーナ11および導水プレート17を接続して調整される。この接続に当り、ドレンコーナ11は、長さ方向に突き合せ状態に配置されて、アンカボルト13、ナツト14によって固定される。導水プレート17は、下流側の導水プレート17の上部をドレンコーナ11の頂面より上方に突出させ、この突出部分の左右両端部を斜めに切断し、突出部分を外側にして上流側導水プレート17の下部と重ね合せ、この重ね合わされた隙間にシリコン系コーキング材を充填して接着される。導水樋は、耐寒用として、第7図に示すように、保温材18を導水プレート17の内側面に装着したものも用いられる。この保温材18は、たとえば、独立発泡体から成る断熱材に、ビニールシートを貼り合わせたものである。
【0004】
また、他の従来技術としての導水樋の第3例は、図8に示すような特開平9−256800号公開特許公報に開示した技術がある。これについて説明すれば、導水樋は、トンネルなどのコンクリート構造体表面との間に導水用空間を形成する樋本体19、この樋本体19を構造体に固定するアンカー20を備えた固定具21及びアンカー20を外部から覆う水滴落下防止用のアンカーカバー12によって構成される。樋本体19は硬質樹脂製でクラック部分を覆う巾を有する平坦部19aと、平坦部19aの両側を折り曲げて形成した屈曲部19bとからなる。屈曲部19bは固定具21に着脱自在に装着するためのもので、平坦部19aからほぼ直角方向に折り曲げられている。22は屈曲部19aの外側に接着剤で取り付けられた断面円形の押えゴムで、その表面には、後述するベースプレート23の係合片に充分抵抗させ脱落しないようにする目的で長手方向に溝が形成されている。固定具21は、アンカー20及び硬質プラスチック製のベースプレート23からなり、ベースプレート23の両端には端片23aが形成され、その内側には、端片23aと同じ方向に、先端に鈎型の係合片を有する係合突起23bが形成されている。アンカー20は、後端外周に雌ねじを形成し先端が構造物内で開いて構造物に固定されるアンカーボルト20a、このアンカーボルト20aに螺合されるナット20b及びナット20bとベースプレート23との間に、ベースプレート23を均等に固定する目的で設けられるサドル20cによって構成される。24はベースプレート23の両端壁面側に設けられた発泡樹脂製の凸型シール材で、このシール材24が圧縮された状態で構造物壁面に密着することにより、この部分からの漏水を防止する。特に、シール材24の表面を凸型とすることによって、コンクリート壁面25とシール材24が完全密着状態となる。アンカーカバー12は、断面形状が船底形をしたアンカーカバー本体に、ベースプレート23の係合片と係合する係合爪を有する係合突起12aを形成している。このアンカーカバー12を、ベースプレート23の下方から押し込むことによって、ベースプレート23の係合片とアンカーカバー12の係合爪とが機械的に嵌合し、アンカーカバー12を固定具21に装着する。このアンカーカバー12は、例えば石などの飛来、接触や火災などに対して耐衝撃性や難燃性を考慮した硬質樹脂製とし、かつアンカーカバー12の表面に衝撃吸収用の軟質樹脂層を形成することもある。従来の導水樋の構造は、上述の如くであった。
【特許文献1】特開平11−22394号公開特許公報
【特許文献2】特開平2−132300号公開特許公報
【特許文献3】特開平9−256800号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術は、叙上した構成、作用であるので次の課題が存在した。
すなわち、トンネルや接合工に於いて、従来使用されている金具はかなり複雑に加工されたものであり、その構成に開示されている樋の設置方法は板状部材を介してコンクリートアンカーで点状に締結し、均等に押圧される構造である。又躯体とは接着剤を用いている場合が多い。そして、樋或いは固定部は伸縮機能を付帯しなければならないので比較的柔らかい部材であり、これに板状部材を重ねボルトで締結する構造であるので、比較的薄い板状部材であると押圧力が均等に作用できないという問題点があった。また経年による樋部材の弾性力の減少により本来の機能である漏水防止機能が作用しなくなるものであった。従来の面状バネはボルト周りに位置し、点状での押圧であるので同様の問題点が存在した。
【0006】
さらに、従来の技術では、図9で示すように漏止水用樋板5(フラットバー)をコンクリートアンカーで留めるのが一般的であるが、この場合はアンカー部に集中的に支圧力Sが導入されるため、アンカーとアンカーの間は支圧力がほとんどなくコンクリート構造物1に密着できない状態になる。止水を目的とした導水樋5などでは、上記の状態では要求性能を満たさないため、別途接着剤等を用いることが必要であるという課題があった。
【0007】
また、例えば、鉄道橋梁接合工法に於いては、新設時の施工時間に余裕ある状況の中での施工であり、接合部の目地充填材の劣化によるひび割れ、形成ゴムの剥がれ等による漏水部の補修を施工するについて、鉄道運行過密ダイヤ間で従来技術での補修は困難であり、工法の簡略化による施工時間の短縮化が要求されるという課題があった。
【0008】
また、高架橋におけるつららの発生箇所は接合目地部に発生しているのが大部分あり、このつららが発生している部分は、内部(路盤側)に何ら対策を講じていない接合目地部に多く観察され、雨水および融雪水が間詰め材(エラスタイトおよびゴム系)と遊間の隙間を浸透してくることによる。また、雨水や融雪水は冬季にコンクリート面に浸透したり滞留すると凍結融解を繰り返すこととなり、コンクリートの劣化を促進させる原因になるという問題点があった。
本発明が解決しようとする課題は、背景技術で述べた問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る目地部材用止め金具は、フラットな板状部材を必要とせず樋等の被覆部材を固定できる金具であって、分布しかつ均等の押圧力を保持可能とする簡単な構造で構成できることを特徴とし、さらに、接合部上面に被覆部材としての防水シートをコンクリートアンカーで締め付けることによりバネ構造でなる金具のバネ効果を発揮することで、集中荷重を分布荷重として持続的な圧着効果を出し、従来技術と比較し大幅に工程の簡略化を図るべくした目地部材用止め金具を提供することを目的としたものであり、次の構成、手段から成立する。
【0010】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、コンクリート構造物間の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から凹凸形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、コンクリート構造物を覆う前記被覆部材を押圧して固定することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、コンクリート構造物間の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から断面略M字形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、コンクリート構造物を覆う前記被覆部材を押圧して固定することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、トンネル又はボックスカルバート構造物の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から凹凸形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、地山からの漏水を導水すると共にコンクリート構造物端部の該コンクリートの剥落防止をする前記被覆部材としての透明な耐候性を備えたFRP板(繊維補強プラスチック材)を押圧して固定することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1、2又は3記載の発明に於いて、前記被覆部材は、前記コンクリート構造物の被覆面に接着剤で塗布・固定したことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、請求項3記載の発明に於いて、前記FRP板(繊維補強プラスチック材)は、不飽和ポリエステル等でなりかつ自己消化性を備えた樹脂を使用した板材で構成されたを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明によれば、請求項1、2、3又は7記載の発明に於いて、前記コンクリート構造物はラーメン高架橋であることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明によれば、トンネル又はボックスカルバート構造物の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から凹凸形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、前記被覆部材を押圧して固定し、雨水及び融雪水を止水することを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明によれば、請求項1、2、3、4又は7記載の発明に於いて、前記被覆部材はエチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、高純度クロロプレンゴム、天然ゴム、再生ゴム、高減衰ゴムの一つ又は二つ以上の組成物で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る目地部材用止め金具は、叙上の構成を有するので次の効果がある。
【0019】
すなわち、請求項1ないし8記載の発明によれば、例えば、ボックスカルバートの横断目地や道路トンネルの横断目地等を跨いで、FRP板や防水シートを防水線状に取り付ける工法であり、目的として止水性が要求される場合には、FRP板やシートをコンクリート躯体・構造物に対して隙間無く密着させ、本発明は、例えば20〜70cm程度のピッチにコンクリートアンカー等ボルトでFRP板や防水シートを取り付けるだけで、接着剤等を使う必要もなくコンクリート壁に固定させることができるという効果がある。
【0020】
また、1枚のステンレス鋼板を折り曲げて曲げ剛性を高めるとともに、アンカーボルト設置位置の板と被覆部材の間にクリアランスを確保し、アンカーボルトを締め付ける際に、上記クリアランスがバネ効果を発揮することで、集中荷重であるアンカー支圧力を分散させて、鋼板からコンクリート構造物に伝達される箇所において分布荷重に変換させ、これにより、被覆部材を線状方向に均等にコンクリート躯体・構造物に密着させることができるという効果がある。
【0021】
そして、ステンレス鋼板でなる目地部材用止め金具を例えば略M型に折り曲げて曲げ剛性を高めるとともに、アンカーボルト等ボルトの設置位置で被覆部材としてのゴムシートと目地部材用止め金具の間にクリアランスを確保することにより、アンカーボルトを締め付ける際にクリアランスがバネ効果を発揮することで、集中荷重であるアンカー支圧力を分散させて、持続的に被覆部材を線状方向に均等にコンクリート構造物例えばコンクリート床版に密着させることができる効果がある。
【0022】
また、接合部上面に被覆部材としての防水シートをコンクリートアンカーで締め付けることによりバネ構造でなる金具のバネ効果を発揮することで、集中荷重を分布荷重として持続的な圧着効果を出し、従来技術と比較し大幅に工程の簡略化を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る目地部材用止め金具の実施の形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る目地部材用止め金具を使用してコンクリート構造物に覆う被覆部材を押圧して固定した状態を示す断面図である。
図2は、被覆部材上に所定間隔を有して例えば、コンクリートアンカーで本発明に係る目地部材用止め金具の全体をコンクリート構造物に固定した状態を示す模式図であって、該目地部材用止め金具が該被覆部材に分布荷重として圧着する状態を示した図である。
【0025】
26はトンネル、ボックスカルバート、橋梁、鉄道構造物等各種のコンクリート構造物である。27は、該コンクリート構造物の目地部(図示せず)又は接合部(図示せず)を覆う被覆部材である。この被覆部材は、前記コンクリート構造物26の押え対象物として機能し、具体的には厚さ3(mm)程度の防水シートや例えば、透明な耐候性を備えたFRP板(繊維補強プラスチック材)等でなる。
【0026】
28は本発明に係る目地部材用止め金具であって、コンクリート構造物26の目地部又は接合部を覆う前記被覆部材27を該コンクリート構造物26の略両端部付近で固定するための金具である。該目地部材用止め金具28は、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さを持つ板状物で構成され、その幅方向の表・裏面形状、つまり側面形状は両端辺から凹凸形状を形成している。そして、目地部材用止め金具28は1枚の鋼板、例えば、ステンレス鋼板又はバネ鋼を図1に示すように略M形に折曲した簡単な構成とし、曲げ剛性を高めるように形成している。
【0027】
また、前記目地部材用止め金具28は、図1に示すように、両端辺28a、28aから幅方向中央に向って凹凸形状、具体的には全体として例えば略M字形状を形成し、その第1頂点部28bと中央点である第2頂点部28cを形成している。この第1及び第2頂点部28cは前記被覆部材27の表面には接触せず、浮いた状態に位置し、該第2頂点部28cは、被覆部材27の表面から間隔tを確保し、例えば、図2に示すようにアンカーボルト等ボルト29が目地部材用止め金具28の所定長さ毎、つまり3個を該目地部材用止め金具28に締結した際、該目地部材用止め金具28のバネ作用が働き、該目地部材用止め金具28が図示するように前記被覆部材27に対し継続的にアンカー支圧力又は押圧力が長さ方向に均等に作用し、分布荷重Qとして圧着効果の向上を図る。
【0028】
前記被覆部材27は例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、高純度クロロプレンゴム、天然ゴム、再生ゴム、高減衰ゴムの一つ又は二つ以上の組成物で構成する。また、被覆部材27は、地山からの漏水を導水すると共にコンクリート構造物端部の該コンクリートの剥落防止をする機能を有する。また、前記被覆部材27を押圧して固定し、雨水及び融雪水を止水する機能を有する。
【0029】
尚、前記被覆部材27の中央点である第2頂点部28cに於ける該被覆部材27の長手方向には所定間隔を有して前記アンカーボルト等のボルト29が挿通するボルト孔28dを穿孔している。
ここで、被覆部材27をコンクリート構造物26に覆う施工工事としては剥落防止用工事、導水対策工事及びメンテナンス工事がある。該剥落防止用工事は、目地部周辺からのコンクリート辺落下の実績調査によれば、落下したコンクリート塊の重さは例えば目地部の周方向1m当たり、0.5kN(50kgf)程度である。安全率を考慮し、載荷試験によって例えば、2kN/mの荷重保持能力を有することが望まれており実験にて剥落防止機能が確認されている。
【0030】
該導水対策工事は、在来工法のトンネルでは、横断目地部は剥落対策と同時に漏水対策が望まれる箇所である。そこで、FRP板の両サイドに発泡ポリエチレンフォームでなる止水材を設置し導水樋としての機能を持たせている。実験にて止水性試験を実施おり、FRP板の継ぎ手部は突き合わせとして粘着性シートを貼り付け止水性能は良好である。
【0031】
該メンテナンス工事は、剥落防止板は透明性の高いFRP板を使用しているため、樋内部の変状例えば剥落や土砂の詰まりが監視しやすく適切なメンテナンスが可能となる。また、トンネル内での火災時の安全性を考慮し、FRP板の材料として自己消化性の樹脂を使用している。
【0032】
次に、本発明に係る目地部材用止め金具の実施の形態に於ける組付手順や作用等について説明する。
【0033】
先づ、トンネルやボックスカルバート構造物等のコンクリート構造物26の目地部又は接合部に例えば、FRP板(繊維補強プラスチック材)等でなる被覆部材27を覆う。そして、表・裏面が凹凸形状、例えば断面形状が略M字形状を有する目地部材用止め金具28を前記被覆部材27に当接する。具体的には、該目地部材用止め金具28の両端辺28a、28aを該被覆部材27の表面に設定・配置する。この際、該目地部材用止め金具28の両端辺28a、28aから中央部分に位置する前記第1及び第2頂点部28b、28cは前記被覆部材27の表面から浮かせた状態で配置する。
【0034】
そして、アンカーボルト等ボルト29のボルト軸29aを前記目地部材用止め金具28のボルト孔28dに挿通し、該ボルト軸29aの先端部分29bは図1に示すようにコンクリート構造物26に打込まれる。このとき、アンカーボルト等該ボルト29の頭部29cが前記目地部材用止め金具28のボルト孔28dの周縁部28eを押圧する。而して、図3に示す目地部材用止め金具28の作用分布荷重Qの模式図から明らかなように、ボルト29の支圧力Pが目地部材用止め金具28に印加し、該目地部材用止め金具28により前記被覆部材27を均等に支圧力又は押圧力が加わり、コンクリート構造物26への固着効果を向上させたことが判明した。
【0035】
このように、ステンレス鋼板でなる目地部材用止め金具28を略M型にベンダー折り又はフォーミングプレスで折り曲げて曲げ剛性を高めるとともに、アンカーボルト等ボルト29の設置位置で被覆部材27としてのゴムシートと目地部材用止め金具28の間にクリアランスを確保していることにより、アンカーボルト等ボルト29を締め付ける際にクリアランスがバネ効果を発揮することで、集中荷重であるアンカー支圧力を分散させて、持続的に被覆部材27を線状方向に均等にコンクリート構造物26、例えばコンクリート床版に密着させることが可能となる。
【実施例1】
【0036】
次に、本発明に係る目地部材用止め金具を使用し、コンクリート構造物の接合工として施工した実施例1について図4に基づき説明する。
【0037】
コンクリート構造物26、26の相互間には目地部30が介在し、この目地部30内に例えば円筒状に形成されたゴム部材31を嵌入する。該ゴム部材31は目地部30内で圧縮されかつ変形されて漏水防止機能を備える。この目地部30の上方からシール剤32を封入した後、前記コンクリート構造物26、26表面上であって、該目地部30を跨ぐようにして約3(mm)程度の厚さを有する防水シート等の被覆部材27を覆う。
【0038】
前述した目地部材用止め金具28を寸法約50(mm)の幅を有し、例えば、汎用設計手順によれば、目地部30を介在させて約200(mm)程度の間隔で前記被覆部材27の所定位置に配置する。そして、アンカーボルト等ボルト29のボルト軸29aを前記目地部材用止め金具28のボルト孔28dに挿通し、該ボルト軸29aの先端部分29bはコンクリート構造物26に打込まれる。このとき、アンカーボルト等該ボルト29の頭部29cが前記目地部材用止め金具28のボルト孔28dの周縁部を押圧する。
【0039】
尚、前記被覆部材27の下面とコンクリート構造物26の表面の接合度合いを高めるために被覆部材27とコンクリート構造物26間に接着剤を塗布してもよい。
【実施例2】
【0040】
本発明に係る目地部材用止め金具は、図1に示す他にその実施例2として図5(a)ないし(e)に示す各種の形状を有するものを適用する。
【0041】
(a)に示す目地部材用止め金具28Aは、概ね図1に示す形状と略同一である。その相違点は両端辺が平坦面28A1、28A1を形成している。図中、28A2は中央点に形成したボルト孔である。
【0042】
(b)に示す目地部材用止め金具28Bは中央部分が円弧状部28B1を形成したことを特徴としている。
図中、28B2は中央点に形成したボルト孔である。
【0043】
(c)に示す目地部材用止め金具28Cは略全体が緩やかな円弧状部28C1を形成したことを特徴としている。
図中、28C2は中央点に形成したボルト孔である。
【0044】
(d)に示す目地部材用止め金具28Dは中央部分が平面状部28D1を形成したことを特徴としている。
図中、28D2は中央点に形成したボルト孔である。
【0045】
(e)に示す目地部材用止め金具28Eは左・右にそれぞれ円弧状部28E1、28E1及びそれに介在した連なる平面部28E2を形成したことを特徴としている。
図中、28E3は中央点に形成したボルト孔である。
上述した各種の形状でなる目地部材用止め金具28を漏水防止等施工現場の設計仕様に応じて適宜選択して使用することにより被覆部材27に於ける所期の圧着効果を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る目地部材用止め金具を被覆部材に固定した状態を示すものであって、本発明の実施の形態を示す垂直断面図である。
【図2】本発明に係る目地部材用止め金具を被覆部材に固定した状態を示すものであって、本発明の実施の形態を示す模式図である。
【図3】本発明に係る目地部材用止め金具を被覆部材に固定した状態を示すものであって、本発明の実施の形態を示すものであり、アンカーボルトの支圧力の分布荷重を示す模式図である。
【図4】本発明に係る目地部材用止め金具をコンクリート構造物の接合工に使用した実施例1を示す垂直断面図である。
【図5】本発明に係る目地部材用止め金具の各種実施の変形例を示す側面図であって、(a)は概ね図1に示す形状と略同一の図面である。(b)は中央部分が円弧状部を形成した図面である。(c)は略全体が緩やかな円弧状部を形成した図面である。(d)は中央部分が平面状部を形成した図面である。(e)は左・右にそれぞれ円弧状部及びそれに介在して連なる平面部を形成した図面である。
【図6】従来の技術の第1例であって、コンクリート躯体の目地部分の漏止水処理工法を示す図面であり、(a)は垂直断面図、(b)はポリウレタン等の発泡性弾性剤を充填した状態を示す垂直断面図である。
【図7】従来の技術の第2例であって、トンネルの漏水案内装置の一例を示す垂直断面図である。
【図8】従来の技術の第3例であって、導水樋の一例を示す垂直断面図である。
【図9】従来技術に於けるコンクリート構造物に被覆されたクラットバーにアンカーボルトによる支圧力Sが印加される状態を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0047】
26 コンクリート構造物
27 被覆部材
28 目地部材用止め金具
28A〜28E 目地部材用止め金具
28A1 目地部材用止め金具の平坦面
28A2 目地部材用止め金具の中央点
28B1 目地部材用止め金具の円弧状部
28B2 目地部材用止め金具のボルト孔
28C1 目地部材用止め金具の円弧状部
28C2 目地部材用止め金具のボルト孔
28D1 目地部材用止め金具の平面状部
28D2 目地部材用止め金具のボルト孔
28E1 目地部材用止め金具の円弧状部
28E2 目地部材用止め金具の平面部
28E3 目地部材用止め金具のボルト孔
28a、28a 目地部材用止め金具の両端辺
28b 目地部材用止め金具の第1頂点部
28c 目地部材用止め金具の第2頂点部
28d 目地部材用止め金具のボルト孔
28e 目地部材用止め金具のボルト孔の周縁部
29 ボルト
29a ボルトのボルト軸
29b ボルトのボルト軸の先端部分
29c ボルトの頭部
30 目地部
31 ゴム部材
32 シール剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物間の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から凹凸形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、コンクリート構造物を覆う前記被覆部材を押圧して固定することを特徴とする目地部材用止め金具。
【請求項2】
コンクリート構造物間の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から断面略M字形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、コンクリート構造物を覆う前記被覆部材を押圧して固定することを特徴とする目地部材用止め金具。
【請求項3】
トンネル又はボックスカルバート構造物の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から凹凸形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、地山からの漏水を導水すると共にコンクリート構造物端部の該コンクリートの剥落防止をする前記被覆部材としての透明な耐候性を備えたFRP板(繊維補強プラスチック材)を押圧して固定することを特徴とする目地部材用止め金具。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記コンクリート構造物の被覆面に接着剤で塗布・固定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の目地部材用止め金具。
【請求項5】
前記FRP板(繊維補強プラスチック材)は、不飽和ポリエステル等でなりかつ自己消化性を備えた樹脂を使用した板材で構成されたことを特徴とする請求項3記載の目地部材用止め金具。
【請求項6】
前記コンクリート構造物はラーメン高架橋であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の目地部材用止め金具。
【請求項7】
トンネル又はボックスカルバート構造物の目地部又は接合部を覆う被覆部材を該構造物の略両端部付近で固定するための金具であって、目地部又は接合部の長手方向に所定の長さをもつ板状物で、かつその幅方向の表・裏面は両端辺から凹凸形状を形成してなり、該幅方向の中央部を長手方向に所定の間隔に穿孔されたボルト孔にボルトを挿通して締結し、前記被覆部材を押圧して固定し、雨水及び融雪水を止水することを特徴とする目地部材用止め金具。
【請求項8】
前記被覆部材はエチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、高純度クロロプレンゴム、天然ゴム、再生ゴム、高減衰ゴムの一つ又は二つ以上の組成物で構成したこと特徴とする請求項1、2、3、4又は7記載の目地部材用止め金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−56604(P2007−56604A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245211(P2005−245211)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(505323426)和興工事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】