説明

真空充填装置及びその制御方法

【課題】タクトタイムを短くして生産効率を向上させることのできる真空充填装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】投入側サブチャンバー10とメインチャンバー20とを連通する第1連通口11aと、第1連通口11aを開閉可能な第1ゲート15と、第1ゲート15を制御可能なエアシリンダ16、17と、第1搬送用テーブル14にセットされたワークピースWを投入側サブチャンバー10からメインチャンバー20に搬入する3段スライダー13とを有している。また、排出側サブチャンバー30とメインチャンバー20とを連通する第2連通口31aと、第2連通口31aを開閉可能な第2ゲート35と、第2ゲート35を制御可能なエアシリンダ36、37と、第2搬送用テーブル34上のワークピースWをメインチャンバー20から排出側サブチャンバー30に搬出する3段スライダー33とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面を上向きに位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する真空充填装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された真空充填装置が知られている。この真空充填装置においては、所定の真空状態でワークピースに可塑性材料を押込充填するため、可塑性材料内のボイドを排出することができる。また、可塑性材料を押込充填後、真空状態を大気圧に近づけることにより、可塑性材料を確実に充填することができる。
そのため、この真空充填装置によれば、ワークピース上の穴径の小さなスルーホールやブラインドビアであっても、ボイドレスで可塑性材料を確実に充填して穴埋めすることができる。特に、スルーホールの場合は、ワークピースの下に樹脂フィルムをラミネートすれば、ビアを形成することができる。そして、可塑性材料をビアに押込充填してから真空状態を大気圧に近づけ、樹脂フィルムを剥離することにより、ボイドレスで可塑性材料をスルーホールに確実に充填して穴埋めすることができる。
また、この真空充填装置によれば、ワークピース上に形成された集積回路をボイドレスで精密に封止することもできる。さらに、この真空充填装置によれば、ワークピース上にバンプの形状をした穴が開いた樹脂フィルムをラミネートしてビアを形成し、可塑性材料としての半田ペーストをそのビアに埋めて樹脂フィルムを剥離することにより、ワークピース上にボイドレスのバンプを精密に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4152375号公報(P14〜P15、図6〜図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1記載の真空充填装置では、蓋を開けてワークピースを真空充填装置内にセットした後、蓋を閉め、真空ポンプにより真空充填装置内が所定の真空状態に達した後に可塑性材料を押込充填している。そのため、ワークピースを真空充填装置内にセットする毎に、真空充填装置内を大気圧から所定の真空状態にしなければならず、タクトタイムの向上に限界を生じていた。
【0005】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、タクトタイムを短くして生産効率を向上させることのできる真空充填装置及びその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る真空充填装置の特徴は、一面を上向きにして水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する真空充填装置において、前記ワークピースを第1搬送用テーブルにセットする投入側サブチャンバーと、該ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するメインチャンバーと、該可塑性材料が押込充填された該ワークピースを第2搬送用テーブルにより取り出す排出側サブチャンバーと、前記メインチャンバー、投入側サブチャンバー及び排出側サブチャンバーを真空状態にする真空ポンプと、を備え、前記投入側サブチャンバーと前記メインチャンバーとを連通する第1連通口と、該第1連通口を開閉可能な第1ゲートと、該投入側サブチャンバーに収納され、該第1ゲートを制御可能な第1開閉手段と、該投入側サブチャンバーに収納され、該第1連通口を介して、前記第1搬送用テーブルにセットされた前記ワークピースを該投入側サブチャンバーから該メインチャンバーに搬入する搬入手段と、前記排出側サブチャンバーと前記メインチャンバーとを連通する第2連通口と、該第2連通口を開閉可能な第2ゲートと、該排出側サブチャンバーに収納され、該第2ゲートを制御可能な第2開閉手段と、該排出側サブチャンバーに収納され、該第2連通口を介して、前記第2搬送用テーブル上の前記ワークピースを該メインチャンバーから該排出側サブチャンバーに搬出する搬出手段と、を有することである。
【0007】
請求項2に係る真空充填装置の特徴は、請求項1又は2において、前記第1開閉手段は前記第1ゲートを投入側サブチャンバーの底面に対して垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダであり、前記第2開閉手段は前記第2ゲートを排出側サブチャンバーの底面に対して垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダであることである。
【0008】
請求項3に係る真空充填装置の特徴は、請求項1又は2において、前記第1開閉手段は前記第1ゲートを投入側サブチャンバーの底面に対して垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダであり、前記第2開閉手段は前記第2ゲートを排出側サブチャンバーの底面に対して垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダであることである。
【0009】
請求項4に係る真空充填装置の制御方法の特徴は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の真空充填装置の制御方法であって、前記ワークピースを前記投入側サブチャンバー内の第1搬送用テーブルにセットし、該投入側サブチャンバーを所定の真空状態とする第1工程と、前記第1連通口を開き、前記搬入手段により、該第1連通口を介して、前記ワークピースを前記投入側サブチャンバーから真空状態の前記メインチャンバーに搬入した後、該第1連通口を閉じる第2工程と、前記メインチャンバー内において、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填する第3工程と、前記搬出手段により、該第2連通口を介して、前記ワークピースを前記メインチャンバーから真空状態の前記排出側サブチャンバーに搬出した後、該第2連通口を閉じる第4工程と、前記排出側サブチャンバーから前記ワークピースを取り出す第5工程と、を有することである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る真空充填装置においては、ワークピースをセットする投入側サブチャンバーと、ワークピースに可塑性材料を押込充填するメインチャンバーと、可塑性材料が押込充填されたワークピースを取り出す排出側サブチャンバーと、メインチャンバー、投入側サブチャンバー及び排出側サブチャンバーを真空状態にする真空ポンプとを備えている。そして、投入側サブチャンバーとメインチャンバーとの間には開閉可能な第1連通口が設けられ、この第1連通口を通して搬入手段によりワークピースが投入側サブチャンバーからメインチャンバーに搬入される。また、排出側サブチャンバーとメインチャンバーとの間には開閉可能な第2連通口が設けられ、この第2連通口を通して搬出手段によりワークピースがメインチャンバーから排出側サブチャンバーに搬出される。そのため、少なくともメインチャンバーへのワークピースの搬入、搬出時に投入側サブチャンバー、排出側サブチャンバーを真空状態にすれば、メインチャンバーは常時略一定の真空状態に保たれる。これにより、ワークピース毎にメインチャンバー内を大気圧から真空状態にする必要がなくなり、タクトタイムの短縮が実現できる。特に、投入側サブチャンバー及び排出側サブチャンバーに比較して、メインチャンバーの容積は大きいため、この効果は大きなものとなる。したがって、本発明の真空充填装置によれば、タクトタイムを短くして生産効率を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る真空充填装置においては、搬入手段及び搬出手段は伸縮自在な3段スライダーであるため、投入側サブチャンバー及び排出側サブチャンバーを小さくすることができる。
【0012】
請求項3に係る真空充填装置においては、第1、2開閉手段は、前記第1、2ゲートを投入側サブチャンバー、排出側サブチャンバーの底面に対して垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダであるため、簡易な構成で、第1、2連通口を開閉できるとともに、メインチャンバーを密閉することができる。
【0013】
請求項4に係る真空充填装置の制御方法は、第1工程において、ワークピースを投入側サブチャンバー内の第1搬送用テーブルにセットし、投入側サブチャンバーを所定の真空状態にした後、第2工程において、第1連通口を開き、搬入手段により第1連通口を介してワークピースを投入側サブチャンバーからメインチャンバーに搬入した後、第1連通口を閉じる。また、第3工程において、ワークピースに可塑性材料を押込充填し、第4工程において、搬出手段により第2連通口を介してワークピースをメインチャンバーから排出側サブチャンバーに搬出した後、第2連通口を閉じる。そのため、メインチャンバーは常時略一定の真空状態に保たれる。これにより、ワークピース毎にメインチャンバー内を大気圧から真空状態にする必要がなくなり、タクトタイムの短縮が実現できる。特に、投入側サブチャンバー及び排出側サブチャンバーに比較して、メインチャンバーの容積は大きいため、この効果は大きなものとなる。したがって、本発明の真空充填装置の制御方法によれば、タクトタイムを短くして生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の真空充填装置の正面図。
【図2】実施形態の真空充填装置の平面図。
【図3】実施形態の真空充填装置に係り、前後テーブルの昇降機構の概略図。
【図4】実施形態の真空充填装置に係り、制御方法のフローチャート。
【図5】実施形態の真空充填装置に係り、第1搬送用テーブルに位置決め固定されたワークピースの一部拡大断面図。
【図6】実施形態の真空充填装置に係り、メインチャンバーに第1搬送用テーブルを搬入している状態の平面図。
【図7】実施形態の真空充填装置に係り、メインチャンバーに第2搬送用テーブルを挿入している状態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る真空充填装置及びその制御方法について、プリント基板のスルーホール及びブラインドビアに絶縁樹脂を充填する場合に具体化した実施形態を、図面に基づいて以下に説明する。図1、2は、この真空充填装置の正面図及び平面図である。ただし、図1は断面図であり、図2は後述する蓋12、22、32を省略した図である。図1、2に示すように、この真空充填装置は、投入側サブチャンバー10、メインチャンバー20、排出側サブチャンバー30及び真空ポンプP1、P2を備えている。
【0016】
投入側サブチャンバー10は、容器11と蓋12からなっている。投入側サブチャンバー10内には、第1搬送用テーブル14を先端部13cに取り付け、伸縮自在な3段スライダー13が収納されている。第1搬送用テーブル14には、両端から2つの溝14aが凹設され、各溝14aに案内されて移動可能に2本のピン14bが立設されている。このピン14bにより、第1搬送用テーブル14にワークピースWが位置決め固定される。また、第1搬送用テーブル14には、静電力によってワークピースWを吸着するフィルム状の静電チャック14cが貼付されている。この静電チャック14cを用いることにより、真空チャックのように差圧を必要としないため、投入側サブチャンバー10からメインチャンバー20へのワークピースWの搬送が容易になる。また、静電チャック14cとピン14bとを併用することにより、ワークピースWを第1搬送用テーブル14に確実に位置決め固定することができる。
【0017】
また、投入側サブチャンバー10の外側には、モータ13aがモータ軸を投入側サブチャンバー10に挿入して設けられ、モータ軸は図示しない減速機を介して3段のタイミングベルト13bに連結されている。このモータ13aとタイミングベルト13bとにより、3段スライダー13が伸縮自在にされている。すなわち、モータ13aを逆転させて3段スライダー13を縮ませると、第1搬送用テーブル14が投入側サブチャンバー10内の所定の位置に収納される。また、モータ13aを正転させて3段スライダー13を伸ばすと、第1搬送用テーブル14がメインチャンバー20内の所定の位置に挿入される。ここで、3段スライダー13が「搬入手段」である。
【0018】
また、容器11のメインチャンバー20側の側壁には、投入側サブチャンバー10とメインチャンバー20とを連通する第1連通口11aが設けられている。そして、エアシリンダ16、17により第1連通口11aを開閉可能な第1ゲート15が投入側サブチャンバー10内に設けられている。エアシリンダ16、17は、第1ゲート15を投入側サブチャンバー10の容器11の底面11bに対して垂直方向及び水平方向に移動可能にされている。このエアシリンダ17のロッドを後退させ、エアシリンダ16のロッドを下げると、第1ゲート15が下がって第1連通口11aが開き、3段スライダー13を伸ばして第1搬送用テーブル14をメインチャンバー20内の所定の位置に挿入することができる。また、エアシリンダ16のロッドを上げ、エアシリンダ17のロッドを前進させると、第1ゲート15が上がって第1連通口11aが閉じ、投入側サブチャンバー10とメインチャンバー20とを分離することができる。ここで、エアシリンダ16、17が「第1開閉手段」である。
【0019】
容器11の前面には、マルチディスプレイ40が設けられている。マルチディスプレイ40は、タッチパネル式の入出力ディバイスであり、各種入力スイッチ及び表示器を備えている。
【0020】
メインチャンバー20は、容器21と蓋22からなっている。メインチャンバー20内には、前後テーブル24、スクリーン25、ローラ26、スキージ27、カム28及びシリンダ29等が収納されている。ただし、図2においては、スクリーン25、ローラ26、スキージ27、カム28及びシリンダ29が省略されている。
【0021】
前後テーブル24は、前テーブル24aと後テーブル24bとからなる。前テーブル24a及び後テーブル24bは、水平かつ間隔をおいて配設され、その間に第1搬送用テーブル14及び後述する第2搬送用テーブル34が挿入されるようになっている。前テーブル24a及び後テーブル24bには、静電力によってワークピースWを吸着するフィルム状の静電チャック23a、23bが貼付されている。この静電チャック23a、23bを用いることにより、真空チャックのように差圧を必要とせず、ワークピースWを前テーブル24a及び後テーブル24bに固定することができる。また、前テーブル24a及び後テーブル24bには、ワークピースWを押圧して固定するクランププレート23c、23dも設けられている。このクランププレート23c、23dは、ワークピースWの前後両端に可塑性材料を押込充填する部分がない場合に使用可能であり、静電チャック23a、23bと併用することにより、前テーブル24a及び後テーブル24bにワークピースWをより強力に固定することができる。
【0022】
スクリーン25、ローラ26、スキージ27等は、ワークピースWの所定の位置に可塑性材料を押込充填するものである。ローラ26は図示しないタイミングベルトにより図1の前後方向に移動可能にされ、スキージ27はローラ26の軸回りに回動可能にされている。ただし、タイミングベルト以外の他の手段、例えば、ボールネジとナットとを用いることもできる。スクリーン25とローラ26との間に可塑性材料を供給し、ローラ26の周面をスクリーン25に接近しつつ、スキージ27と連動させローラ26を往復動させることにより、ワークピースWの所定の位置に可塑性材料が押込充填される。なお、可塑性材料を押込充填する方法については、特許第4152375号公報に記載されており、その詳細な記載は省略する。
【0023】
カム28及びシリンダ29は、前テーブル24a及び後テーブル24bを同時に上下方向に移動させるものである。図3に示すように、カム28は、シリンダ29のロッドにとりつけられており、第1段28a、第2段28b及び第3段28cを有している。シリンダ29のロッドが前進及び後退すると、カム28が矢印のように前進及び後退し、前後テーブル24の上面が3つの位置A、B、Cとなるように上下方向に移動する。この際、第1段28a、第2段28b及び第3段28cと、位置A、位置B及び位置Cとが対応している。ここで、第1搬送用テーブル14及び第2搬送用テーブル34が挿入された場合、第1、2搬送用テーブル14、34の上面が位置Bになるようになっている。
【0024】
図1、2に示すように、排出側サブチャンバー30は、容器31と蓋32からなっている。排出側サブチャンバー30内には、第2搬送用テーブル34を先端部33cに取り付け、伸縮自在な3段スライダー33が収納されている。第2搬送用テーブル34には、静電力によってワークピースWを吸着するフィルム状の静電チャック34cが貼付されている。この静電チャック34cを用いることにより、真空チャックのように差圧を必要としないため、メインチャンバー20から排出側サブチャンバー30へのワークピースWの搬送が容易になる。また、第2搬送用テーブル34には、第1搬送用テーブル14の溝14a及びピン14bに相当するものが設けられていない。これは、第2搬送用テーブル34の主目的はワークピースWの搬送であり、正確な位置決め固定の必要がないからである。
【0025】
また、排出側サブチャンバー30の外側には、モータ33aがモータ軸を排出側サブチャンバー30に挿入して設けられ、モータ軸は図示しない減速機を介して3段のタイミングベルト33bに連結されている。このモータ33aとタイミングベルト33bとにより、3段スライダー33が伸縮自在にされている。すなわち、モータ33aを逆転させて3段スライダー33を縮ませると、第2搬送用テーブル34が排出側サブチャンバー30内の所定の位置に収納される。また、モータ33aを正転させて3段スライダー33を伸ばすと、第2搬送用テーブル34がメインチャンバー20内の所定の位置に挿入される。ここで、3段スライダー33が「搬出手段」である。
【0026】
また、容器31のメインチャンバー20側の側壁には、排出側サブチャンバー30とメインチャンバー20とを連通する第2連通口31aが設けられている。そして、エアシリンダ36、37により第2連通口31aを開閉可能な第2ゲート35が排出側サブチャンバー30内に設けられている。エアシリンダ36、37は、第2ゲート35を排出側サブチャンバー30容器31の底面31bに対して垂直方向及び水平方向に移動可能にされている。このエアシリンダ37のロッドを後退させ、エアシリンダ36のロッドを下げると、第2ゲート35が下がって第2連通口31aが開き、3段スライダー33を伸ばして第2搬送用テーブル34をメインチャンバー20内の所定の位置に挿入することができる。また、エアシリンダ36のロッドを上げ、エアシリンダ37のロッドを前進させると、第1ゲート35が上がって第2連通口31aが閉じ、排出側サブチャンバー30とメインチャンバー20とを分離することができる。ここで、エアシリンダ36、37が「第2開閉手段」である。
【0027】
真空ポンプP1、P2は、投入側サブチャンバー10、メインチャンバー20、排出側サブチャンバー30内を真空状態にするものである。ここで、本実施形態において、真空状態とは100Pa〜10000Paの真空圧をいう。真空ポンプP1は、バルブ45を介してメインチャンバー20に接続されている。このバルブ45を開閉することにより、メインチャンバー20内の真空圧を調整することができる。真空ポンプP2は、バルブ46、47を介して投入側サブチャンバー10、排出側サブチャンバー30に接続されている。このバルブ46を開閉することにより、投入側サブチャンバー10内の真空圧を調整することができ、バルブ47を開閉することにより、排出側サブチャンバー30内の真空圧を調整することができる。
【0028】
上記の機械的構成をした真空充填装置により、プリント基板のスルーホール及びブラインドビアに絶縁樹脂を充填する場合の制御方法を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。まず、真空ポンプP1、P2を作動させる。そして、バルブ45、47により、真空ポンプP1とメインチャンバー20及び真空ポンプP2と排出側サブチャンバー30を導通させ、メインチャンバー20及び排出側サブチャンバー30が真空にされる。ただし、投入側サブチャンバー10は、バルブ46により大気圧に開放され、真空ポンプP2とは遮断される。次に、種々のパラメータをマルチディスプレイ40から入力する。パラメータには、投入側サブチャンバー10、メインチャンバー20、排出側サブチャンバー30内の真空圧、ローラ26の回転速度、ローラ26の走行速度等がある。その後、マルチディスプレイ40のスタートスイッチを押すと、図4に示すフローチャートの内容が制御装置(図示なし)により実行される。
【0029】
ステップS1においては、投入側サブチャンバー10の蓋12を開け、第1搬送用テーブル14にワークピースWをセットする。図5に示すように、ワークピースWは、プリント基板90の裏面に樹脂フィルム91をラミネートしたものである。プリント基板90及び樹脂フィルム91の両端部には、ピン穴90aが開けられている。また、プリント基板90には、ブラインドビア90b、スルーホール90cが多数設けられている。そして、プリント基板90の裏面に樹脂フィルム91をラミネートすることにより、スルーホール90cを形式的にビアにすることができる。ワークピースWのピン穴90aに、第1搬送用テーブル14に突設されたピン14bを嵌通して、第1搬送用テーブル14にワークピースWが位置決め固定される。さらに、静電チャック14cにより、ワークピースWが第1搬送用テーブル14に確実に位置決め固定される。なお、ピン14bは、溝14aに案内されて移動可能にされており、ワークピースWのピン穴90aの位置にスライドして調整することができる。第1搬送用テーブル14にワークピースWを位置決め固定した後、投入側サブチャンバー10の蓋12を閉める。ここで、ステップS1が「第1工程」である。
【0030】
ステップS2においては、バルブ46により真空ポンプP2と投入側サブチャンバー10とを導通させ、投入側サブチャンバー10内が所定の真空圧になるまで待つ。投入側サブチャンバー10内が所定の真空圧になると(Y)、ステップS3において、図6に示すように、メインチャンバー20内にワークピースWが搬入される。具体的には、まず、エアシリンダ17のロッドを後退させ、エアシリンダ16のロッドを下げると、第1ゲート15が下げられて第1連通口11aが開けられる。そして、モータ13aを正転させると、3段スライダー13が伸ばされ、第1搬送用テーブル14が前後テーブル24(前テーブル24a及び後テーブル24b)の間に挿入される。この際、図3に示すように、前後テーブル24の上面は位置Aにあり、第1搬送用テーブル14の上面は位置Bに挿入される。これにより、第1搬送用テーブル14上に位置決め固定されたワークピースWは、前後テーブル24と衝突することなく、メインチャンバー20内に搬入される。
【0031】
その後、静電チャック14cの吸着を解除するとともに、シリンダ29のロッドを前進させ、前後テーブル24の上面を位置Cに移動させることにより、第1搬送用テーブル14上のワークピースWが前後テーブル24の上面に移される。この際、ワークピースWは、静電チャック23a、23bにより吸着され、前後テーブル24上に位置決め固定される。また、ワークピースWは、クランププレート23c、23dにより押圧され、より強力に位置決め固定される。そして、モータ13aを逆転させると、3段スライダー13が縮み、第1搬送用テーブル14が投入側サブチャンバー10内に収納される。その後、エアシリンダ16のロッドを上げ、エアシリンダ17のロッドを前進させると、第1ゲート15が上げられて第1連通口11aが閉じられる。その後、投入側サブチャンバー10は、バルブ46により大気圧に開放され、真空ポンプP2とは遮断される。ここで、ステップS2、3が「第2工程」である。
【0032】
ステップS4においては、排出側サブチャンバー30内が所定の真空圧になると(Y)、ステップS5において、図7に示すように、メインチャンバー20内に第2搬送用テーブル34が挿入される。具体的には、まず、エアシリンダ37のロッドを後退させ、エアシリンダ36のロッドを下げると、第2ゲート35が下げられて第2連通口31aが開けられる。そして、モータ33aを正転させると、3段スライダー33が伸ばされ、第2搬送用テーブル34が前後テーブル24の間に挿入される。この際、図3に示すように、前後テーブル24の上面は位置Cにあり、第2搬送用テーブル34の上面は位置Bに挿入される。これにより、前後テーブル24上に位置決め固定されたワークピースWと、第2搬送用テーブル34とは衝突することがない。
【0033】
その後、シリンダ29のロッドを後退させ、前後テーブル24の上面を位置Bに移動させることにより、第2搬送用テーブル34が前後テーブル24の間に嵌入される。これにより、前後テーブル24及び第2搬送用テーブル34の上面が面一となり、広い作業用領域が確保される。また、静電チャック34cにより、ワークピースWが第2搬送用テーブル34に固定される。
【0034】
ステップS6においては、ワークピースWの所定に位置に絶縁樹脂が押込充填される。具体的には、スクリーン25とローラ26との間に絶縁樹脂を供給し、ローラ26の周面をスクリーン25に接近しつつ、スキージ27と連動させローラ26を往復動させることにより、プリント基板90のブラインドビア90b及びスルーホール90bに絶縁樹脂が押込充填される。この際、メインチャンバー20及び排出側サブチャンバー30内が所定の真空圧にされているため、絶縁樹脂内のボイドを取り去ることができる。また、ローラ26の往動時(絶縁樹脂の押込充填時)より、復動時(絶縁樹脂のカキトリ時)の方が大気圧に近い真空圧にしているため、ブラインドビア90b及びスルーホール90bに絶縁樹脂が確実に押込充填される。これは、ローラ26の往動時にブラインドビア90b及びスルーホール90bの一部に絶縁樹脂が押込充填されていない部分があったとしても、復動時にその部分に絶縁樹脂が押し込まれるためである。ここで、ステップS4、5、6が「第3工程」である。
【0035】
ステップS7においては、排出側サブチャンバー30内にワークピースWが搬出される。具体的には、まず、静電チャック23a、23bの吸着を解除し、クランププレート23c、23dによる押圧を解除する。これにより、ワークピースWの前後テーブル24への位置決め固定が解除される。ただし、静電チャック34cの吸着は解除されず、ワークピースWは第2搬送用テーブル34に固定されている。そして、シリンダ29のロッドを後退させ、前後テーブル24の上面を位置Aに移動させることにより、ワークピースWが前後テーブル24の上面から離れ、第2搬送用テーブル34上に移される。
【0036】
その後、モータ33aを逆転させると、3段スライダー33が縮み、ワークピースWが第2搬送用テーブル34とともに排出側サブチャンバー30内に収納される。その後、エアシリンダ36のロッドを上げ、エアシリンダ37のロッドを前進させると、第2ゲート35が上げられて第2連通口31aが閉じられる。ここで、ステップS7が「第4工程」である。
【0037】
ステップS8においては、排出側サブチャンバー30は、バルブ47により大気圧に開放され、真空ポンプP2とは遮断される。そして、静電チャック34cの吸着が解除される。その後、排出側サブチャンバー30の蓋32を開け、第2搬送用テーブル34上のワークピースWを取り出す。そして、ワークピースWから樹脂フィルム91を剥がすと、ブラインドビア90b、スルーホール90cに絶縁樹脂が押込充填されたプリント基板90が完成する。なお、排出側サブチャンバー30の蓋32を閉じると、バルブ47により真空ポンプP2と排出側サブチャンバー30を導通させ、排出側サブチャンバー30が真空にされる。ここで、ステップS8が「第5工程」である。
【0038】
本実施形態に係る真空充填装置及びその制御方法においては、ワークピースWをセットする投入側サブチャンバー10と、ワークピースWに絶縁樹脂を押込充填するメインチャンバー20と、絶縁樹脂が押込充填されたワークピースWを取り出す排出側サブチャンバー30と、メインチャンバー20、投入側サブチャンバー10及び排出側サブチャンバー30を真空状態にする真空ポンプP1、2とを備えている。そして、投入側サブチャンバー10とメインチャンバー20との間には開閉可能な第1連通口11aが設けられ、この第1連通口11aを通して3段スライダー13によりワークピースWが投入側サブチャンバー10からメインチャンバー20に搬入される。また、排出側サブチャンバー30とメインチャンバー20との間には開閉可能な第2連通口31aが設けられ、この第2連通口31aを通して3段スライダー33によりワークピースWがメインチャンバー20から排出側サブチャンバー30に搬出される。そのため、少なくともメインチャンバー20へのワークピースWの搬入、搬出時に投入側サブチャンバー10、排出側サブチャンバー30を真空状態にすれば、メインチャンバー20は常時略一定の真空状態に保たれる。これにより、ワークピースW毎にメインチャンバー20内を大気圧から真空状態にする必要がなくなり、タクトタイムの短縮が実現できる。特に、投入側サブチャンバー10及び排出側サブチャンバー30に比較して、メインチャンバー20の容積は大きいため、この効果は大きなものとなる。したがって、本実施形態の真空充填装置及びその制御方法によれば、タクトタイムを短くして生産効率を向上させることができる。
【0039】
また、この真空充填装置においては、伸縮自在な3段スライダー13、33を搬入手段及び搬出手段としているため、投入側サブチャンバー10及び排出側サブチャンバー30を小さくすることができる。
【0040】
さらに、この真空充填装置においては、第1、2ゲート15、35を垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダを第1、2開閉手段としているため、簡易な構成で、第1、2連通口11a、31aを開閉できるとともに、メインチャンバー20を密閉することができる。
【0041】
本実施形態の真空充填装置及びその制御方法では、プリント基板のスルーホール及びブラインドビアに絶縁樹脂を充填する場合に具体化したが、これだけに限らず例えば、ワークピース上に形成された集積回路をボイドレスで精密に封止する場合にも具体化できる。また、ワークピース上にバンプの形状をした穴が開いた樹脂フィルムをラミネートしてビアを形成し、可塑性材料としての半田ペーストをそのビアに埋めて樹脂フィルムを剥離することにより、ワークピース上にボイドレスのバンプを精密に形成する場合にも具体化できる。
【0042】
以上、本発明の真空充填装置及びその制御方法を実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10…投入側サブチャンバー、11a…第1連通口、11b…底面、13…搬入手段(3段スライダー)、13c…先端部、14…第1搬送用テーブル、15…第1ゲート、16、17…第1開閉手段(エアシリンダ)、20…メインチャンバー、30…排出側サブチャンバー、31a…第2連通口、31b…底面、33…搬出手段(3段スライダー)、33c…先端部、34…第2搬送用テーブル、35…第1ゲート、36、37…第2開閉手段(エアシリンダ)、P1、P2…真空ポンプ、W…ワークピース、S1…第1工程、S2、3…第2工程、S4、5、6…第3工程、S7…第4工程、S8…第5工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を上向きにして水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する真空充填装置において、
前記ワークピースを第1搬送用テーブルにセットする投入側サブチャンバーと、
該ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するメインチャンバーと、
該可塑性材料が押込充填された該ワークピースを第2搬送用テーブルにより取り出す排出側サブチャンバーと、
前記メインチャンバー、投入側サブチャンバー及び排出側サブチャンバーを真空状態にする真空ポンプと、を備え、
前記投入側サブチャンバーと前記メインチャンバーとを連通する第1連通口と、
該第1連通口を開閉可能な第1ゲートと、
該投入側サブチャンバーに収納され、該第1ゲートを制御可能な第1開閉手段と、
該投入側サブチャンバーに収納され、該第1連通口を介して、前記第1搬送用テーブルにセットされた前記ワークピースを該投入側サブチャンバーから該メインチャンバーに搬入する搬入手段と、
前記排出側サブチャンバーと前記メインチャンバーとを連通する第2連通口と、
該第2連通口を開閉可能な第2ゲートと、
該排出側サブチャンバーに収納され、該第2ゲートを制御可能な第2開閉手段と、
該排出側サブチャンバーに収納され、該第2連通口を介して、前記第2搬送用テーブル上の前記ワークピースを該メインチャンバーから該排出側サブチャンバーに搬出する搬出手段と、を有することを特徴とする真空充填装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記搬入手段は前記第1搬送用テーブルを先端部に取り付け、伸縮自在な3段スライダーであり、前記搬出手段は前記第2搬送用テーブルを先端部に取り付け、伸縮自在な3段スライダーであることを特徴とする真空充填装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1開閉手段は前記第1ゲートを投入側サブチャンバーの底面に対して垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダであり、前記第2開閉手段は前記第2ゲートを排出側サブチャンバーの底面に対して垂直方向及び水平方向に移動可能なエアシリンダであることを特徴とする真空充填装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の真空充填装置の制御方法であって、
前記ワークピースを前記投入側サブチャンバー内の第1搬送用テーブルにセットし、該投入側サブチャンバーを所定の真空状態とする第1工程と、
前記第1連通口を開き、前記搬入手段により、該第1連通口を介して、前記ワークピースを前記投入側サブチャンバーから真空状態の前記メインチャンバーに搬入した後、該第1連通口を閉じる第2工程と、
前記メインチャンバー内において、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填する第3工程と、
前記搬出手段により、該第2連通口を介して、前記ワークピースを前記メインチャンバーから真空状態の前記排出側サブチャンバーに搬出した後、該第2連通口を閉じる第4工程と、
前記排出側サブチャンバーから前記ワークピースを取り出す第5工程と、を有することを特徴とする真空充填装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−228542(P2011−228542A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98143(P2010−98143)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000219783)東海精機株式会社 (18)
【出願人】(000219772)東海商事株式会社 (21)
【Fターム(参考)】