説明

真空断熱構造体、真空断熱加熱ヒータおよび真空断熱加熱ヒータを用いた加熱装置

【課題】断熱対象物の遮熱性能を向上するとともに、断熱対象物の均熱を図る。
【解決手段】対向する第1および第2の金属板11A,11Bの間の内部空間15にこれら金属板11A,11Bより熱伝導率が小さいスペーサ(コア材18A〜18Cまたは球状部材23)を配設するとともに、内部空間15を真空排気してなる真空断熱構造体において、第1および第2の金属板11A,11Bのうち第1の金属板11Aとスペーサ(18A〜18C,23)との間だけに、第1の金属板11Aと接触し、この第1の金属板11Aより熱伝導率が高い熱伝導部材20を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉じられた内部空間を真空排気した真空断熱構造体、真空断熱加熱ヒータおよび真空断熱加熱ヒータを用いた加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱炉などの高温熱源は、その壁面に断熱材を敷設することにより外部(大気)との断熱を図っている。
【0003】
特許文献1には、断熱対象構造物の外壁面に配置する下側断熱要素と、この下側断熱要素の上側に積層配置する上側断熱要素とからなる複合断熱材が記載されている。そのうち、下側断熱要素は、金属製シートまたは無機質繊維シートからなる包囲体に、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体を配設してなる。また、上側断熱要素は、マイカ質断熱板などの断熱板と、無機質材料からなる繊維で形成された無機質繊維シートとを積層したものである。そして、この複合断熱材は、断熱対象構造物の外壁面に対してグラファイト系シートからなる熱伝導異方性シートを介して配設されている。
【0004】
しかし、この特許文献1の複合断熱材は、外壁面に下側断熱要素を敷設し、その上(外)側に複数の上側断熱要素を積層配置する必要があるため、部品点数が多いだけでなく、大きな占有スペースが必要である。その結果、狭い作業場での断熱要素としては適していない。
【0005】
また、特許文献2には、断熱材として、対向する第1金属板および第2金属板の間の内部空間を真空排気してなる真空断熱構造体が記載されている。この真空断熱構造体の内部空間には、スペーサが配設されるとともに、このスペーサと第1および第2金属板の間に位置するように金属箔が配設されている。
【0006】
この特許文献2に記載の断熱材は、内部に真空排気した断熱空間を有するため、特許文献1の断熱体の肉厚より薄い肉厚で同様の断熱性能が得られる。よって、狭い作業場での断熱要素として好適に使用できる。しかしながら、この真空断熱構造体においても更なる性能の向上が求められている。
【0007】
さらに、特許文献3には、加熱室の上下に加熱室内を加熱するための加熱ヒータを配設した加熱調理装置が記載されている。この加熱調理装置の加熱ヒータは、加熱室を区画する板材に、面状発熱体を配設するとともに、面状発熱体の外面に真空断熱材を配設し、熱のロスをなくし、高いレベルの断熱性能と加熱効率を確保できるようにしている。
【0008】
しかしながら、この特許文献3の加熱ヒータは、面状発熱体の外面に真空断熱材を配設しているため、部品点数が多く、組付作業性が悪い。また、面状発熱体は、所定形状に打ち抜いたまたは配設した発熱体をシートで挟み込んだものであるため、加熱室内を均一に加熱することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−82681号公報
【特許文献2】特開2002−130583号公報
【特許文献3】特開2002−267182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、断熱対象物からの遮熱性能を向上するとともに、断熱対象物の均熱を図ることが可能な真空断熱構造体を提供することを第1の課題とするものである。また、加熱効率が良好で、加熱対象物を均一に加熱することが可能な真空断熱加熱ヒータを提供することを第2の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の真空断熱構造体は、対向する第1および第2金属板の間の内部空間にこれら金属板より熱伝導率が小さいスペーサを配設するとともに、前記内部空間を真空排気してなる真空断熱構造体において、前記第1および第2金属板のうち前記第1金属板と前記スペーサとの間だけに、前記第1金属板と接触し、この第1金属板より熱伝導率が高い熱伝導部材を配設した構成としている。
【0012】
この真空断熱構造体は、熱伝導部材を配設した第1金属板を、断熱対象物である加熱源の側に配置する。そして、この真空断熱構造体では、第1金属板に加えられた熱は、熱伝導部材が吸熱するため、例え第1金属板に対して局部的に熱が加わった場合でも、第1金属板の全体に熱を分散する。その結果、局部的に加わった熱がスペーサを介して第2金属板へ伝熱することを抑制できる。また、熱伝導部材によって第1金属板に局部的に加わった熱を分散できるため、内部の均熱を図ることができる。
【0013】
この真空断熱構造体では、前記熱伝導部材はグラファイトシートからなることが好ましい。このようにすれば、前述の作用を十分かつ確実に得ることができる。また、グラファイトシートの耐熱温度は、大気中では400℃であり、真空中では大気中の2〜5倍である。そのため、このグラファイトシートを使用した真空断熱構造体は、加熱炉などの高温環境下でも十分に使用できる。
【0014】
また、前記第1金属板または第2金属板に、前記熱伝導部材が位置するか否かを示す指示部を設けることが好ましい。このようにすれば、誤使用によって十分に遮熱性能が得られなくなることを防止できる。
さらに、前記第1金属板の所定位置に前記熱伝導部材を接触させるための支持部を設けることが好ましい。このようにすれば、確実に均熱効果を得ることができる。
または、前記第1金属板に、前記熱伝導部材が位置することを示すとともに、前記熱伝導部材を接触させるための凹部を設けることが好ましい。このようにすれば、誤使用によって十分に遮熱性能が得られなくなることを防止できるとともに、確実に均熱効果を得ることができる。
【0015】
さらに、この真空断熱構造体は、前記第1金属板は、加熱ヒータを内蔵していることが好ましい。
即ち、本発明の真空断熱加熱ヒータは、対向する第1および第2金属板の間の内容空間にこれら金属板より熱伝導率が小さいスペーサを配設するとともに、前記内部空間を真空排気したもので、前記第1および第2金属板のうち前記第1金属板と前記スペーサとの間だけに、前記第1金属板と接触し、この第1金属板より熱伝導率が高い熱伝導部材を配設するとともに、前記第1金属板に加熱ヒータを内蔵、または、前記第1金属板と前記熱伝導部材との間に加熱ヒータを配設、または、前記熱伝導部材と前記スペーサとの間に加熱ヒータを配設したものである。
【0016】
この真空断熱加熱ヒータは、加熱ヒータを第1金属板に内蔵しているため、部品点数の削減を図り、組付作業性を向上できる。また、加熱ヒータには、第1金属板より熱伝達率が高い熱伝導部材が接触しているため、加熱ヒータの熱を第1金属板に対して均等に分散できる。よって、加熱対象物を均等に加熱できる。さらに、真空断熱加熱ヒータは、加熱ヒータと反対の第2金属板の側に、真空排気した内部空間を有するため、第2金属板の側からの放熱を防止できる。よって、不要な電力消費を防止し、加熱効率の向上を図ることができる。
【0017】
この真空断熱加熱ヒータを用いた加熱装置は、前記第2金属板の温度を検出する温度検出手段を設け、この温度検出手段による検出温度が予め設定した基準温度を超えると、前記加熱ヒータによる加熱を停止することが好ましい。
【0018】
この加熱装置は、第2金属板が予め設定した基準温度を超えると、即ち内部空間の真空度が低下すると、加熱ヒータによる加熱を停止するため、安全性を確保できる。そのため、この加熱装置の1つであるホットプレートなどの家庭用電気製品に用いた場合に好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の真空断熱構造体では、第1金属板に加えられた熱を熱伝導部材が吸熱するため、例え第1金属板に対して局部的に熱が加わった場合でも、第1金属板の全体に熱を分散できる。よって、局部的に加わった熱がスペーサを介して第2金属板へ伝熱することを抑制できるため、遮熱性能を向上できる。しかも、熱伝導部材によって第1金属板の全体に熱を分散できるため、断熱対象物内の均熱を図ることができる。
【0020】
また、第1金属板に加熱ヒータを内蔵した真空断熱加熱ヒータは、加熱対象物を均一に加熱できるとともに、第2金属板の側からの放熱を防止できるため、不要な電力消費を防止し、加熱効率を向上できる。また、この真空断熱加熱ヒータを用いた加熱装置は、第2金属板の温度が予め設定した基準温度を超えると、加熱ヒータによる加熱を停止する構成とすることにより、特に家庭用電気製品として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の真空断熱構造体である断熱パネルを示し、(A)は第1金属板の側から見た斜視図、(B)は第2金属板の側から見た斜視図、(C)は要部断面図である。
【図2】図1の断熱パネルの組立前の分解斜視図である。
【図3】第2実施形態の断熱パネルを示し、(A)は第1金属板の側から見た斜視図、(B)は第2金属板の側から見た斜視図、(C)は要部断面図である。
【図4】図3の断熱パネルの組立前の分解斜視図である。
【図5】第3実施形態の断熱パネルを示し、(A)は第1金属板の側から見た斜視図、(B)は第2金属板の側から見た斜視図、(C)は要部断面図である。
【図6】第4実施形態の断熱パネルを示し、(A)は第1金属板の側から見た斜視図、(B)は第2金属板の側から見た斜視図、(C)は要部断面図である。
【図7】図5の断熱パネルの組立前の分解斜視図である。
【図8】第5実施形態の断熱パネルを示す要部断面図である。
【図9】本発明の効果を確認するための実験方法を説明するための断面図である。
【図10】実験結果を示すグラフである。
【図11】本発明の第6実施形態の真空断熱構造体である真空断熱加熱ヒータを用いた加熱装置を示す断面図である。
【図12】第6実施形態の真空断熱加熱ヒータを用いた他の加熱装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る真空断熱構造体である真空断熱パネル10Aを示す。この真空断熱パネル10Aは、図1(C)に示すように、一対の金属板11A,11B内に形成される内部空間15に、スペーサとして多数(本実施形態では3枚)のコア材18A〜18Cが配設されるとともに、各コア材18A〜18Cの間に金属箔19A,19Bが配設されている。そして、本実施形態の真空断熱パネル10Aには、内部空間15に、内外の遮熱性能を向上するとともに、内部の均熱を図るための熱伝導部材20を更に配設したものである。
【0024】
図1(A),(B),(C)に示すように、第1および第2の金属板11A,11Bは、熱伝導率が低く、加工性に優れた薄肉(約0.1〜1.0mm)のステンレス(SUS304またはSUS310など)により構成されている。これら金属板11A,11Bは、それぞれ矩形状をなす配設部12A,12Bを有し、その外周部には屈曲加工により外壁部13A,13Bと接合部14A,14Bとが形成されている。外壁部13A,13Bは、配設部12A,12Bの外周部から内面側となる方向に屈曲されている。接合部14A,14Bは、配設部12A,12Bに対して平行に延びるように外壁部13A,13Bの縁から外向きに屈曲されている。そして、これら接合部14A,14Bは、互いに重畳するように位置決めされ、シーム溶接等の圧接またはTIG溶接等の融接、MIGブレージング等によって接合される。なお、この金属板11A,11Bは、熱伝導率が16.7W/m・Kである。
【0025】
これら金属板11A,11Bは、互いの接合部14A,14Bを接合した状態では、外壁部13A,13Bにより互いの配設部12A,12B間に所定間隔の内部空間15が形成される。また、本実施形態の真空断熱パネル10Aは、第1の金属板11Aを断熱対象物に接触させて配設する構成としている。そのため、図2に示すように、断熱対象物に接触しない外部(大気)側に位置される第2の金属板11Bの配設部12Bには、略中央に円筒形状をなすように突出する排気部16が形成されている。この排気部16は、内部空間15を真空排気した後に封止される。この第1実施形態の排気部16は、形成されている第2の金属板11Bの側には熱伝導部材20が位置しないことを示す指示部の役割をなす。なお、排気部16には、チップ管を配設する構成としてもよい。
【0026】
コア材18A,18B,18Cは、第1および第2の金属板11A,11Bより熱伝導率が小さい、弾性変形が可能なスペーサである。これらコア材18A〜18Cは、金属板11A,11Bへの配設状態で、外側部が外壁部13A,13Bに接触しないように構成されている。本実施形態では、密度が約100〜160kg/mで、約220±30kg/mまで圧縮可能なセラミックウールを使用している。但し、コア材18A〜18Cは、弾性変形可能なセラミックウールに限られず、セラミックボードなどの弾性的な変形が不可能なものを適用することも可能である。また、これらセラミック系のコア材18A〜18Cは、その耐熱温度が1200℃であるため、高温加熱に最適であるが、被加熱温度が500℃未満である場合には、グラスウールを適用してもよい。
【0027】
金属箔19A,19Bは、輻射伝熱を防止するもので、各コア材18A〜18Cの間にそれぞれ配設されている。即ち、金属箔19A,19Bは、第1の金属板11Aとコア材18Aとの間、および、第2の金属板11Bとコア材18Cとの間には、配設されていない。金属箔19A,19Bは、銅やアルミニウムからなり、コア材18A〜18Cと略同一面積の矩形状に形成されている。これにより金属箔19A,19Bが金属板11A,11Bの外壁部13A,13Bには接触しないように構成している。
【0028】
熱伝導部材20は、断熱対象物の側に配置される第1の金属板11Aとコア材18Aとの間だけに、面接触するように配設されている。即ち、熱伝導部材20は、断熱対象物の側に位置しない第2の金属板11Bとコア材18Cとの間には、配設されない。この熱伝導部材20は、第1の金属板11Aの配設部12Aと略同一面積で設けられている。本実施形態の熱伝導部材20は、第1および第2の金属板11A,11Bより熱伝導率が高い薄肉(100μm)のグラファイトシートからなる。ここで、このグラファイトシートは、炭素原子が層状に集まったもので、熱伝導率が800W/m・Kである。また、グラファイトシートの耐熱温度は、大気中では400℃であり、真空中では大気中の2〜5倍である。そのため、このグラファイトシートを使用した真空断熱構造体は、加熱炉などの高温環境下でも十分に使用できる。
【0029】
これらの構成部品からなる真空断熱パネル10Aを製造する場合には、例えば、第1の金属板11Aの内面側を上向きに配置した状態で、熱伝導部材20、コア材18A、金属箔19A、コア材18B、金属箔19Bおよびコア材18Cを順番に配置する。また、金属板11Aの内部所定位置に、真空排気後に内部空間15で発生したガス等を吸収し、所望の真空度を維持するためのゲッター(図示せず)を配設する。そして最後に、コア材18Cの上側に被せるように第2の金属板11Bを配置する。この際、非圧縮状態のコア材18A〜18Cが圧縮される。なお、第2の金属板11Bに対して各部材を配設することも可能である。
【0030】
このようにして第1および第2の金属板11A,11B内に各部材を収容させると、重畳された接合部14A,14Bを接合する。この状態で、排気部16に周知の排気装置を接続して、内部空間15が所定の真空度に達するまで真空排気する。そして、内部空間15を所定の真空度まで排気すると、排気部16を封止して内部空間15を密封する。
【0031】
このように構成した真空断熱パネル10Aは、断熱対象物である加熱炉の壁面に対して、第1の金属板11Aが接触するように配置する。この際、本実施形態では、第2の金属板11Bに排気部16を設けているため、この排気部16が壁面側に位置しないように配置するだけで、確実に壁面側に熱伝導部材20が位置するように配置できる。
【0032】
そして、この真空断熱パネル10Aは、金属板11A,11Bの間の内部空間15を真空排気したものであるため、全体の厚さを薄肉化したうえで高い断熱性能を得ることができる。そして、各コア材18A〜18Cの間には、輻射伝熱を防止する金属箔19A,19Bを配設しているため、断熱性能を向上できる。
【0033】
また、本実施形態の真空断熱パネル10Aは、断熱対象物の側に位置するように内部空間15に熱伝導部材20を配設している。そして、この熱伝導部材20は、第1の金属板11Aに加えられた熱を吸熱して、全面に伝熱(放熱)する。即ち、第1の金属板11Aに対して局部的に熱が加わった場合でも、第1の金属板11Aの全体に熱を分散する。その結果、局部的に加わった熱がコア材18A〜18Cを介して第2の金属板11Bへ伝熱することを抑制できるため、遮熱性能を向上できる。また、熱伝導部材20によって第1の金属板11Aに局部的に加わった熱を分散できるため、断熱対象物内の均熱を図ることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図3および図4は第2実施形態の真空断熱パネル10Bを示す。この真空断熱パネル10Bは、第1の金属板11Aに補強用の凹部21a〜21dを設け、この凹部21a〜21dによって熱伝導部材20が位置することを示すとともに、熱伝導部材20を均等に接触させるようにした点で、第1実施形態と大きく相違している。
【0035】
具体的には、図3(A),(B),(C)に示すように、第1および第2の金属板11A,11Bのうち、熱伝導部材20を接触配置する第1の金属板11Aには、配設部12Aに内向きに窪む凹部21a〜21dが設けられている。凹部21aは、配設部12Aの中心に位置する平面視円形状の窪みである。凹部21bは、凹部21aの外周に所定間隔をもって位置する円環状の窪みである。凹部21cは、凹部21bの外周に所定間隔をもって位置する円環状の窪みである。凹部21dは、配設部12Aの4隅に位置するように凹部21cの外周に所定間隔をもって位置する略三角形状の窪みである。このような凹部21a〜21dは、逆側に位置する第2の金属板11Bには形成していない。
【0036】
また、第2実施形態の真空断熱パネル10Bには、排気部16を第2の金属板11Bの配設部12Bに設ける代わりに、第1の金属板11Aの一辺の接合部14A−1に設ける構成としている。具体的には、図4に示すように、接合前の第1の金属板11Aは、一辺の接合部14A−1が外向きに突出するように延設され、その延設部分に円筒形状をなすように突出する排気部16が形成されている。この排気部16は、内部空間15と連通するように開口されている。同様に、第2の金属板11Bには、排気部16の下面を閉塞するように一辺の接合部14B−1が延設されている。なお、延設した接合部14A−1,14B−1に排気部16を設ける代わりに、第1実施形態と同様に、第2の金属板11Bの配設部12Bに排気部16を設けてもよい。
【0037】
そして、この第2実施形態の真空断熱パネル10Bを製造する場合には、第1実施形態と同様にして、第1および第2の金属板11A,11Bの内部に、熱伝導部材20、コア材18A、金属箔19A、コア材18B、金属箔19Bおよびコア材18Cを配置する。
【0038】
その後、重畳された接合部14A,14Bを接合する。この際、接合部14A−1,14B−1は、排気部16から外壁部13A,13Bにかけた所定領域を除いて接合する。この状態で、排気部16に周知の排気装置を接続して、内部空間15が所定の真空度に達するまで真空排気する。なお、この真空排気は、排気部16から外壁部13A,13Bにかけた所定領域を接合していないため、その隙間から十分に排気可能である。そして、内部空間15を所定の真空度まで排気すると、排気部16を封止して内部空間15を密封する。
【0039】
この第2実施形態の真空断熱パネル10Bは、第1実施形態と同様に、断熱対象物である加熱炉の壁面に対して、第1の金属板11Aが接触するように配置する。この際、本実施形態では、第1の金属板11Aに凹部21a〜21dを設けているため、この指示部の役割をなす凹部21a〜21dを壁面側に位置するように配置するだけで、確実に壁面側に熱伝導部材20が位置するように配置できる。
【0040】
そして、この真空断熱パネル10Bを使用すると、第1実施形態と同様の作用および効果を確実に得ることができる。即ち、第1の金属板11Aには、主に配設部12Aの凹部21a〜21dを除く領域から熱が加わり、熱伝導により凹部21a〜21dに伝わる。そして、熱伝導部材20は、第1の金属板11Aに加えられた熱を凹部21a〜21dから吸熱して、全面に伝熱する。即ち、これら凹部21a〜21dは、その底部が熱伝導部材20を第1の金属板11Aに対して全面的に均等に接触させるための支持部の役割をなす。ここで、凹部21a〜21dを設けない場合、第1の金属板11Aは、変形が生じると熱伝導部材20が一部しか接触しない。しかし、本実施形態では、配設部12Aに対して均等に位置するように設けた凹部21a〜21dにより、第1の金属板11Aに対して局部的に熱が加わった場合でも、第1の金属板11Aの全体に熱を分散する。その結果、遮熱性能を向上できるとともに、断熱対象物内の均熱を図ることができる。
【0041】
(第3実施形態)
図5(A),(B),(C)は第3実施形態の真空断熱パネル10Cを示す。この第3実施形態では、第1および第2の金属板11A,11Bの両方に補強用の凹部21a〜21d,22を設けた点で、第2実施形態と相違する。具体的には、第1の金属板11Aの配設部12Aには、第2実施形態と同様の凹部21a〜21dが設けられている。また、第2の金属板11Bの配設部12Bには、均等に位置するように矩形状をなす4個の第2凹部22が設けられている。即ち、第3実施形態では、金属板11A,11Bの両方に補強用の凹部21a〜21d,22を設けているが、その凹部21a〜21d,22による模様が異なるように構成している。このように構成した第3実施形態では、第2実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。なお、この第3実施形態においても、延設した接合部14A−1,14B−1に排気部16を設ける代わりに、第1実施形態と同様に、第2の金属板11Bの配設部12Bに排気部16を設けてもよい。
【0042】
(第4実施形態)
図6および図7は第4実施形態の真空断熱パネル10Dを示す。この第4実施形態では、図6(A),(B),(C)に示すように、第1および第2の金属板11A,11Bを異なる形状(構成)で形成し、かつ、内部空間15に配設するスペーサの構成を変更した点で、各実施形態と大きく相違する。
【0043】
具体的には、図7に示すように、第4実施形態の第1の金属板11Aは、各実施形態と同様に、外壁部13Aと接合部14Aとを備えている。そのうち、外壁部13Aは、各実施形態の外壁部13Bを加算した寸法で形成している。一方、第2の金属板11Bは、各実施形態に示す外壁部13Bを設けることなく、配設部12Bの外周部に接合部14Bを一体的かつ平面状をなすように設けたものである。なお、図7中2点鎖線は、配設部12Bと接合部14Bの境界を示すことを目的とした仮想線である。また、この第4実施形態においても、延設した接合部14A−1,14B−1に排気部16を設ける代わりに、第1実施形態と同様に、第2の金属板11Bの配設部12Bに排気部16を設けてもよい。
【0044】
また、第4実施形態のスペーサは、多数の球状部材23からなり、この球状部材23を位置決め部材24によって内部空間15の所定位置に位置決めして配設したものである。
【0045】
球状部材23は、第1および第2の金属板11A,11Bの間に配設される球状のものである。この球状部材23は、金属板11A,11Bより熱伝導率が低く耐熱性が高い、硬質(ビッカーズ硬さ1150〜1200HV)なセラミックの一種であるジルコニア(Zro)により形成されている。本実施形態の球状部材23は、内部空間15でマトリクス状をなすように縦横に所定間隔をもって配設され、その直径は、内部空間15の間隔と熱伝導部材20の肉厚を減算した寸法で形成されている。なお、球状部材23はセラミックボールに限られず、シリカ(SiO)製や耐熱性樹脂製であってもよく、熱伝導率が低く硬質なものであればいずれでもよい。
【0046】
位置決め部材24は、球状部材23を所定位置に位置決めして金属板11A,11Bの間に配設するためのものである。この位置決め部材24は、第1および第2の金属板11A,11Bより熱伝導率が小さく、可撓性を有する軟質な繊維シートからなる。本実施形態の位置決め部材24は、短いガラス繊維またはセラミック繊維からなり、配設部12A,12Bと略同一面積の矩形状で、肉厚は球状部材23の直径より薄肉に形成されている。また、位置決め部材24には、球状部材23を配設する位置に、この球状部材23より小径の貫通孔からなる位置決め部25が設けられている。これにより、位置決め部材24は、金属板11Bおよび熱伝導部材20の両方または一方に対して非接触状態を維持した状態で配置できるように構成している。なお、位置決め部材24を一方に接触させる場合には、その接触側は、熱伝導部材20を配設していない第2の金属板11Bに位置させることが好ましい。
【0047】
この第4実施形態の真空断熱パネル10Dを製造する場合には、第1の金属板11Aの内部に熱伝導部材20を配設した後に、その上側に球状部材23を位置決めした位置決め部材24を配設する。そして、各実施形態と同様に、第2の金属板11Bを配設して接合した後、真空排気して封止する。
【0048】
そして、この第4実施形態の真空断熱パネル10Dは、各実施形態と同様に、断熱対象物である加熱炉の壁面に対して、第1の金属板11Aが接触するように配置する。この際、本実施形態では、第1の金属板11Aには外壁部13Aを設け、第2の金属板11Bには外壁部13Bを設けていないため、その形状の違いが指示部の役割をなす。よって、確実に壁面側に熱伝導部材20が位置するように配置できる。
【0049】
また、この真空断熱パネル10Dを使用すると、各実施形態と同様の作用および効果を確実に得ることができる。即ち、真空断熱パネル10Dの内部には多数の球状部材23が配設されている。そして、この球状部材23は、熱伝導部材20を第1の金属板11Aの平面状をなす配設部12Aに対して均等に点接触させるための支持部の役割をなす。よって、熱伝導部材20は、第1の金属板11Aに対して局部的に熱が加わった場合でも、第1の金属板11Aの全体に熱を分散する。その結果、遮熱性能を向上できるとともに、断熱対象物内の均熱を図ることができる。しかも、本実施形態のスペーサは球状部材23からなり、内部の殆どが空間となるため、球状部材23および位置決め部材24を介して第2の金属板11Bへ伝熱することを確実に抑制できる。
【0050】
また、本実施形態のスペーサである球状部材23は、位置決め部材24によって所定位置に配設されるため、組立作業性は良好である。しかも、位置決め部材24の位置決め部25は、球状の球状部材23より小径の孔からなるため、球状部材23を容易かつ確実に所定位置に配置した状態で、金属板11A,11Bの間に配設できる。そして、位置決め部材24は、球状部材23の直径より薄肉の繊維シートからなるため、少なくとも熱伝導部材20に接しないように配設することが可能であり、この位置決め部材24を介した伝熱を防止できる。
【0051】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態の真空断熱パネル10Eを示す。この第5実施形態では、第4実施形態と同様の金属板11A,11Bの内部空間15に、第1乃至第3実施形態と同様のコア材18A〜18Cと金属箔19A,19Bをスペーサとして配設した点で、第4実施形態と相違している。このように構成した第5実施形態は、第1乃至第3実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0052】
(実験例)
本発明者らは、本発明の構成による効果を確認するために、第1実施形態に示す真空断熱パネル10Aと、この真空断熱パネル10Aとは熱伝導部材20を配設していない点でのみ相違する比較例を用いて熱伝導に関する実験を行った。この実験では、図9に示すように、第1の金属板11Aの中心位置Aに100℃を超える高熱を加え、その中心位置A、配設部12Aの外周位置C、これらの中間位置B、対称に位置する第2の金属板11Bの中心位置F、外周位置Dおよび中間位置Eの温度を測定した。その実験結果を図10に示す。
【0053】
図10に示すように、白抜きの棒グラフで示す熱伝導部材20がない比較(従来)例の真空断熱パネルでは、第1の金属板11Aは、加熱点である中心位置Aが101.8℃、中間位置Bが6℃、外側位置Cが1.7℃であった。また、断熱側である第2の金属板11Bは、外側位置Dが1℃、中間位置Eが2.3℃、中心位置Fが3.9℃であった。即ち、比較例の真空断熱パネルは、第1の金属板11Aでの伝熱が少なく、第2の金属板11Bの中心位置Fの温度が他の位置D,Eより高い。この結果から、第1の金属板11Aに加えられた熱は、コア材18A〜18Cを介して第2の金属板11Bの対称位置に伝熱していることが解る。
【0054】
一方、黒塗りの棒グラフで示す熱伝導部材20を配設した本発明品の真空断熱パネル10Aでは、第1の金属板11Aは、加熱点である中心位置Aが43℃、中間位置Bが13.8℃、外側位置Cが6.1℃であった。また、断熱側である第2の金属板11Bは、外側位置Dが1.3℃、中間位置Eが1.7℃、中心位置Fが2.2℃であった。即ち、本発明品の真空断熱パネル10Aは、第1の金属板11Aでの伝熱(放熱)が多く、第2の金属板11Bの中心位置Fの温度が他の位置D,Eより高いが殆ど差は無いに等しい。この結果から、第1の金属板11Aに加えられた熱は、コア材18A〜18Cを介して第2の金属板11Bの対称位置に伝熱しているが、その伝熱温度は、第1の金属板11Aでの伝熱(放熱)作用により少なくなっていることが解る。
【0055】
そして、遮熱性能は、第2の金属板11Bの位置D,E,Fの温度から判断できる。即ち、これら3箇所の平均温度は、比較例である真空断熱パネルが2.4℃で、本発明品である真空断熱パネル10Aが1.73℃である。この結果から、本発明品の真空断熱パネル10Aは、比較例の真空断熱パネルより、6.3℃(約30%)遮熱性能を向上できている。
【0056】
また、均熱性能は、第1の金属板11Aの位置A,B,Cの温度から判断できる。即ち、これら3箇所の最大温度差は、比較例である真空断熱パネルが100.1℃で、本発明品である真空断熱パネル10Aが36.9℃である。この結果から、本発明の真空断熱パネル10Aは、比較例に対して約3倍の均熱効果があると言える。
【0057】
そのため、このように遮熱性能が高く、均熱性能も高い本発明の真空断熱パネル10A〜10Eは、加熱炉に使用すれば、十分な断熱効果および遮熱効果を得ることができる。しかも、内部の均熱化を図ることが可能であるため、加熱源からの熱を炉内に効率的に充満させることができ、それに伴って加熱源による過剰な加熱が抑制可能となり、省エネを図ることが可能である。
【0058】
なお、本発明の真空断熱構造体は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、各実施形態では、熱伝導部材20が位置するか否かを示す指示部の構成は、希望に応じて変更が可能である。さらに、第1の金属板11Aに対して均等に接触させるための支持部の構成も、希望に応じて変更が可能である。
【0060】
そして、各実施形態では、本発明の真空断熱構造体として平面状をなす真空断熱パネル10A〜10Eを用いて説明したが、有底筒状をなす真空断熱容器や、筒状をなす真空断熱ジャケット等、所定形状の真空断熱構造体でも同様に適用可能である。
【0061】
また、前記実施形態の真空断熱構造体は、加熱源を有しない真空断熱パネル10A〜10Eとしたが、加熱源を有する真空断熱加熱ヒータ10Fとしてもよい。
【0062】
(第6実施形態)
図11は第6実施形態の真空断熱構造体である真空断熱加熱ヒータ10Fを適用した加熱装置を示す。この加熱装置は、所定の調理物を載せて加熱するホットプレート30(家庭用電気製品)である。
【0063】
ホットプレート30は、受皿状をなす外装体31内に真空断熱加熱ヒータ10Fを着脱可能に配設したものである。外装体31には、底中央に通気孔32が設けられている。また、外装体31の底には、所定位置に脚枠33が下向きに突出するように設けられ、この脚枠33内にテーブルなどの設置面に載置する脚部材34が配設されている。さらに、外装体31には、外周部の所定位置にソケット配設部35が設けられている。なお、図中符号36は、真空断熱加熱ヒータ10Fの上端開口を閉塞する蓋である。
【0064】
真空断熱加熱ヒータ10Fは、第1の金属板11Aに加熱源である加熱ヒータ37が一体的に内蔵されている。そして、各実施形態と同様に、第1および第2の金属板11A,11Bの間の内部空間15に、コア材18A,18B、金属箔19および熱伝導部材20を配設したものである。
【0065】
加熱ヒータ37はシーズヒータであり、その両端部には温度調節器39の接続穴に着脱可能に挿入される接続端子38を備えている。温度調節器39は、電源コードのプラグを兼ねるもので、後述するソケット47に装着することにより、挿入された接続端子38を介して加熱ヒータ37に電力を供給するものである。この温度調節器39は、調理プレートである第1の金属板11Aの熱を検出するための感熱棒40を備えている。また、温度調節器39の上面には、温度調節ダイヤル41が設けられている。本実施形態の温度調節器39は、内部にマイコン(図示せず)が配設され、このマイコンにより加熱ヒータ37による加熱制御などを行う。
【0066】
第1の金属板11Aはアルミニウム製であり、鋳造により加熱ヒータ37を一体的にインサート成型したものである。この第1の金属板11Aは平面状をなす調理プレート部42を備えている。この調理プレート部42の外周縁には、調理枠壁43が立設されている。この調理枠壁43の上部には、蓋36を載置するための段部44が設けられている。
【0067】
調理プレート部42の底面は、加熱ヒータ37が位置する部分が下向きに膨出した厚肉部45となっている。また、調理プレート部42の外周部には、加熱ヒータ37の一対の接続端子38,38が突出されている。これら接続端子38,38の間には、温度調節器39の感熱棒40を挿入するための挿入穴46が設けられている。この挿入穴46の挿入端は、気密に閉鎖されている。
【0068】
調理プレート部42の外周縁には、各実施形態と同様に、第2の金属板11Bに向けて下向きに突出する外壁部13Aが設けられ、その下端縁にフランジ状をなすように接合部14Aが設けられている。なお、外壁部13Aの下端は、厚肉部45の下端と同一になるように設けられている。
【0069】
第2の金属板11Bは、第1の金属板11Aと同様のアルミニウム製である。この第2の金属板11Bは、調理プレート部42と対向する同一外形状をなし、その外周縁に外壁部13Bが設けられ、その上端縁に接合部14Aと重畳する接合部14Bが設けられている。
【0070】
そして、これら第1および第2の金属板11A,11Bの間の内部空間15には、第1の金属板11Aの調理プレート部42に、第1の金属板11Aより熱伝導率が高い熱伝導部材20が接触するように配設される。また、この熱伝導部材20の下面には、コア材18A、金属箔19およびコア材18Bが順番に配設され、このコア材18Bが第2の金属板11Bに接触される。
【0071】
このように加熱ヒータ37を内蔵した真空断熱加熱ヒータ10Fには、一対の接続端子38,38および挿入穴46を覆うようにソケット47が取り付けられる。このソケット47の底には、後述するセンサ接続端子50との干渉を回避する挿通溝48が、開口端から真空断熱加熱ヒータ10Fに向けて延びるように設けられている。
【0072】
また、本実施形態のホットプレート30には、第2の金属板11Bの温度を検出する温度検出手段としてサーミスタ49が配設されている。このサーミスタ49は、外装体31に真空断熱加熱ヒータ10Fを装着した状態で、第2の金属板11Bに面接触するように脚部材34に埋設されている。このサーミスタ49のリード線は、ソケット配設部35内に配線され、その先端に温度調節器39に接続するためのセンサ接続端子50が配設されている。
【0073】
そして、温度調節器39のマイコンは、この温度調節器39がソケット47の内部に取り付けられ、温度調節ダイヤル41が操作されると、加熱ヒータ37による加熱を行う。そして、感熱棒40を介して第1の金属板11Aの温度を検出し、ユーザが指定した温度になるように加熱ヒータ37を制御する。また、加熱ヒータ37に対する通電(加熱)状態を、図示しないLEDなどの表示手段で表示する。さらに、センサ接続端子50およびリード線を介して第2の金属板11Bの温度を検出し、第2の金属板11Bが予め設定した基準温度を超えると、加熱ヒータ37による加熱を停止する。そして、第2の金属板11Bが過熱状態になった状況を、図示しないLEDなどの表示手段で表示する。
【0074】
この真空断熱加熱ヒータ10Fは、加熱ヒータ37を第1の金属板11Aに内蔵しているため、部品点数の削減を図り、組付作業性を向上できる。また、この真空断熱加熱ヒータ10Fを用いたホットプレート30は、加熱ヒータ37を内蔵した第1の金属板11Aに、熱伝達率が高い熱伝導部材20を接触配置しているため、局部的に配管した加熱ヒータ37の熱を第1の金属板11Aに対して均等に分散できる。よって、調理物などの加熱対象物を、調理プレート部42の何処に載せても均等に加熱できる。また、調理プレート部42において調理物を載せた局部は、加熱により熱が奪われるが、熱伝導部材20の作用により直ぐに温度が均され、直ぐにでも他の調理物を加熱可能な状態とすることができる。
【0075】
さらに、真空断熱加熱ヒータ10Fは、真空断熱パネル10A〜10Eと同様に、加熱ヒータ37と反対の第2の金属板11Bの側に、真空排気した内部空間15を有するため、第2の金属板11Bの側からの放熱を防止できる。よって、不要な電力消費を防止し、加熱効率の向上を図ることができる。
【0076】
しかも、本実施形態のホットプレート30は、サーミスタ49によって第2の金属板11Bの温度を検出し、第2の金属板11Bが予め設定した基準温度を超えて昇温すると、加熱ヒータ37による加熱を停止する。ここで、第2の金属板11Bが基準温度を超えるという状況は、真空断熱加熱ヒータ10Fの内部空間15の真空度が低下したことを意味する。そして、この状況になると加熱ヒータ37による加熱を停止するため、安全性を確保できる。
【0077】
(第6実施形態の変形例)
図12は第6実施形態の真空断熱加熱ヒータ10Fを用いた他の加熱装置であるオーブンレンジ51を示す。このオーブンレンジ51は、外装体52の内部に、第1の金属板11Aが内側に位置するように真空断熱加熱ヒータ10Fを敷設したものである。そして、この真空断熱加熱ヒータ10Fを用いたオーブンレンジ51は、前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0078】
なお、真空断熱加熱ヒータ10Fを適用可能な加熱機器は、ホットプレート30やオーブンレンジ51に限定されず、炊飯器などの加熱源が必要な電気製品であれば適用可能である。また、ホットプレート30として使用する場合、真空断熱加熱ヒータ10Fは断熱性能が高いため、外装体31を設けない構成としてもよい。しかも、真空断熱加熱ヒータ10Fの使途は家庭用電気製品に限られず、加熱炉などの加熱設備にも適用可能である。
【0079】
さらに、加熱機器として使用する場合には、真空度が低下したことを検出するための温度検出手段はサーミスタ49に限定されるものではない。例えば、サーモスタットを第2の金属板11Bに接触するように配設し、過熱状態になると加熱ヒータ37への通電を遮断する構成としてもよい。また、このサーミスタ49は、第2の金属板11Bの温度が降下すると自動的に復帰する自動復帰型のもの、温度ヒューズを含む温度が降下しても復帰しないもののいずれでも適用可能である。
【0080】
さらにまた、本発明の真空断熱構造体に適用する熱伝導部材20は、グラファイトシートに限定されるものではない。即ち、熱伝導部材20は、第1の金属板11Aより熱伝導率が高いものであれば、希望に応じて変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10A〜10E…真空断熱パネル
10F…真空断熱加熱ヒータ
11A,11B…金属板
12A,12B…配設部
13A,13B…外壁部
14A,14B…接合部
15…内部空間
16…排気部(指示部)
18A〜18C…コア材(スペーサ)
19A,19B…金属箔
20…熱伝導部材
21a〜21d…凹部(指示部および支持部)
22…第2凹部(指示部)
23…球状部材(スペーサおよび支持部)
24…位置決め部材
25…位置決め部
30…ホットプレート(加熱機器)
37…加熱ヒータ
49…サーミスタ(温度検出手段)
50…センサ接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2金属板の間の内部空間にこれら金属板より熱伝導率が小さいスペーサを配設するとともに、前記内部空間を真空排気してなる真空断熱構造体において、
前記第1および第2金属板のうち前記第1金属板と前記スペーサとの間だけに、前記第1金属板と接触し、この第1金属板より熱伝導率が高い熱伝導部材を配設したことを特徴とする真空断熱構造体。
【請求項2】
前記熱伝導部材はグラファイトシートからなることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱構造体。
【請求項3】
前記第1金属板または第2金属板に、前記熱伝導部材が位置するか否かを示す指示部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱構造体。
【請求項4】
前記第1金属板の所定位置に前記熱伝導部材を接触させるための支持部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空断熱構造体。
【請求項5】
前記第1金属板に、前記熱伝導部材が位置することを示すとともに、前記熱伝導部材を接触させるための凹部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱構造体。
【請求項6】
前記第1金属板は、加熱ヒータを内蔵していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の真空断熱構造体。
【請求項7】
対向する第1および第2金属板の間の内容空間にこれら金属板より熱伝導率が小さいスペーサを配設するとともに、前記内部空間を真空排気したもので、
前記第1および第2金属板のうち前記第1金属板と前記スペーサとの間だけに、前記第1金属板と接触し、この第1金属板より熱伝導率が高い熱伝導部材を配設するとともに、
前記第1金属板に加熱ヒータを内蔵、または、前記第1金属板と前記熱伝導部材との間に加熱ヒータを配設、または、前記熱伝導部材と前記スペーサとの間に加熱ヒータを配設したことを特徴とする真空断熱加熱ヒータ。
【請求項8】
請求項7に記載の真空断熱加熱ヒータを用いた加熱装置であって、
前記第2金属板の温度を検出する温度検出手段を設け、この温度検出手段による検出温度が予め設定した基準温度を超えると、前記加熱ヒータによる加熱を停止するようにしたことを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−174602(P2011−174602A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115255(P2010−115255)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】