説明

眠気検出装置及びそれを用いた運転制御装置

【課題】運転時の安全性を格段と向上させることができる眠気検出装置及びそれを用いた運転制御装置を提供すること。
【解決手段】車両を運転している運転者の眠気を検出する眠気検出装置であって、運転者が眠気を帯びているか否かを判定する居眠り判定手段は、車両が走行している路面の凹凸状態を検出する路面状態検出手段の検出結果から、上記路面の凹凸状態に応じた上記車両に対する外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段及び/又は車両の走行方向を変えるための操舵力を検出する操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正するための操舵角及び/又は操舵力であるとき、上記運転者は覚醒していると判定し、上記車両の走行方向を修正することなく、該走行方向が上記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、上記走行方向を修正する操舵角及び/又は操舵力が得られないとき、上記運転者は眠気を帯びていると判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眠気検出装置及びそれを用いた運転制御装置に関し、特に、車両が走行している路面の状況や、運転者毎に異なる運転癖に影響されることなく、運転者の注意力の低下(眠気)を検知する眠気検出装置及びそれを用いた運転制御装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、運転者に対し走行を支援する様々な支援装置が提案されてきている。例えば、車両運転中の運転者が居眠りしたときなどに、この居眠りを検知する装置として、一般的にステアリングホイール(以下、これを単にハンドルと称す)の近くに配設され、運転者の自由なハンドルの操作状態を検知する舵角センサを利用して、例えば操舵状況から居眠り運転を検出する居眠り運転検出装置が知られている。
【0003】
この場合、舵角のみを検出するのでは、路面からの入力(キックバックなど)による外乱の影響を受け、居眠り中の操舵と、路面の轍、カント、キャンバなど(以下、これらを単に轍と称す)による修正操舵との判別が困難であるため、居眠り運転検出装置が誤作動することがあり、居眠り状態を的確に判別することが難しいという問題がある。従って、居眠り運転をより正確に検知するには、轍などによる外乱を検知ないし判別する必要があった。
【0004】
そこで、かかる問題を解決するべく、運転者がハンドルに自ら加える操舵荷重(操舵力)と、路面の凹凸状況に応じてハンドルに作用される路面からの入力(外乱)に基づく荷重とを比較することにより、運転者が覚醒しているか否かを識別する(すなわち、居眠り運転を検出する)ようにした居眠り運転検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、安全運転を支援する運転警報装置として、運転者による操舵操作が時間遅れを伴うことなく直接反映される操舵トルクを用い、道路(路面)の曲率と操舵トルクとの関係に基づいて、運転者が道路の曲率に応じた車両の操舵を行わない場合に操舵の異常、言い換えれば脇見運転や、居眠り運転等の異常運転であることを速やかに検出し、かかる異常運転に関する警報を運転者に対し、早期に行う運転警報装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−262162号公報
【特許文献2】特開平10−166891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、かかる特許文献1の居眠り運転検出装置では、応力センサから出力される応力信号の値(以下、これを応力値と称する)と、舵角センサから出力される舵角パルスとが居眠り運転時特有のパターンになったとき、運転者が居眠り運転状態になっていると判定するようにしているので、応力値が判断基準応力値を越えていない場合、運転者が居眠り運転状態になっていると判定しない。
【0007】
このため、例えば車両が傾斜した路面に差し掛かり、傾斜の無い状態から傾斜を有する状態の路面を走行する際に、運転者がハンドルをとられ、これに対応してホイール、ハンドルが共に、路面の傾斜に沿って流されたものの、応力値が判断基準応力値を越えていないとき、運転者が居眠り運転を行なっていても、これを検知することが困難となる問題があった。
【0008】
また、かかる特許文献2の運転警報装置では、操舵異常などによって車両の挙動に異常が検出されない場合、車両が異常な状態にあるとは判断されない。すなわち、カーブ等による路面の曲率に応じた車両の操舵が行なわれない場合、脇見運転や居眠り運転などの異常運転であると判定(検出)して警報の発生が行なわれるが、脇見運転や居眠り運転であっても路面の状態(曲率等)に応じた車両の操舵が行なわれていれば、異常運転を検出することなく、警報の発生を行なわない。
【0009】
言い換えれば、かかる運転警報装置は、運転者が眠気を帯びていても、例えば車両が平坦且つ直線の道路を走行していて、路面状態に応じた車両の操舵が行なわれることによって、当該車両の挙動が異常を来たすことなく走行している場合には、当該運転者の眠気を検知しないため、運転者の眠気を正確、且つ、確実に検出することが困難である未だ不十分な問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、路面状態に拘らず、運転者の居眠り状態を確実に検知することができ、これにより、運転時の安全性を格段と向上させることができる眠気検出装置及びそれを用いた運転制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車両を運転している運転者の眠気を検出する眠気検出装置であって、上記車両が走行している路面の凹凸状態を検出する路面状態検出手段と、上記車両の走行方向を変えるための操舵角を検出する操舵角検出手段、及び/又は、上記走行方向を変えるときの操舵力を検出する操舵力検出手段と、上記路面状態検出手段による路面状態の検出結果と、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果との相関に基づいて、上記運転者が眠気を帯びているか否かを判定する居眠り判定手段とを有し、上記居眠り判定手段は、上記路面状態検出手段の検出結果から、上記路面の凹凸状態に応じた上記車両に対する外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正するための操舵角、及び/又は、操舵力であるとき、上記運転者は覚醒していると判定し、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正することのない操舵角、及び/又は、操舵力であり、該走行方向が上記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、上記走行方向を修正する操舵角、及び/又は、操舵力が得られないとき、上記運転者は眠気を帯びていると判定するようにした。
【0012】
従って、本発明の一態様によれば、車両の走行中に、路面状態検出手段によって検出された路面状態に応じて車体へ与えられる外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正するための操舵角、及び/又は、操舵力であるとき、上記運転者が覚醒していると明確に判定することができる。
【0013】
これと共に、本発明の一態様によれば、車両の走行中に、路面状態検出手段によって検出された路面状態に応じた車体へ与えられる外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正することのない操舵角、及び/又は、操舵力であり、該走行方向が上記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、上記走行方向を修正する操舵角、及び/又は、操舵力が得られないとき、上記運転者が眠気を帯びていることが、より精度よく判定することができる。
【0014】
かくして、本発明の一態様によれば、路面状態に拘らず、運転者の居眠り状態を確実に検知することができる。これにより、運転時の安全性を格段と向上させることができる。
【0015】
しかも、本発明の一態様において、上記路面状態検出手段は、上記車両における左右対称の車輪部にそれぞれ設けられたGセンサを用いることにより、左右の車輪における路面からの外乱に起因した動きを正確に把握することができ、左右の車輪の動きの差を明確に検出することができる。
【0016】
さらに、本発明の一態様において、上記居眠り判定手段によって上記運転者の眠気が検出された場合、当該運転者を覚醒させる覚醒手段を備えることにより、運転者が眠気を帯びたまま運転することを回避することができるため、運転時の安全性をより一層向上させることができる。
【0017】
また、本発明の一態様において、車両を運転している運転者の眠気を検出する眠気検出部を備え、該眠気検出部によって上記運転者の眠気が検出された場合、当該運転者を覚醒させ、及び/又は、当該車両の運転を制御する運転制御装置であって、上記眠気検出部は、上記車両が走行している路面の凹凸状態を検出する路面状態検出手段と、上記車両の走行方向を変えるための操舵角を検出する操舵角検出手段、及び/又は、上記走行方向を変えるときの操舵力を検出する操舵力検出手段と、上記路面状態検出手段による路面状態の検出結果と、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果との相関に基づいて、上記運転者が眠気を帯びているか否かを判定する居眠り判定手段とを有し、上記居眠り判定手段は、上記路面状態検出手段の検出結果から、上記路面の凹凸状態に応じた上記車両に対する外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正するための操舵角、及び/又は、操舵力であるとき、上記運転者は覚醒していると判定し、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正することのない操舵角、及び/又は、操舵力であり、該走行方向が上記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、上記走行方向を修正する操舵角、及び/又は、操舵力が得られないとき、上記運転者は眠気を帯びていると判定するようにした。
【0018】
従って、本発明の一態様によれば、車両の走行中に、路面状態検出手段によって検出された路面状態に対する車体への外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正するための操舵角、及び/又は、操舵力であるとき、上記運転者が覚醒していると明確に判定することができる。
【0019】
これと共に、本発明の一態様によれば、車両の走行中に、路面状態検出手段によって検出された路面状態に対する車体への外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角検出手段、及び/又は、上記操舵力検出手段の検出結果が、上記車両の走行方向を修正することのない操舵角、及び/又は、操舵力であり、該走行方向が上記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、上記走行方向を修正する操舵角、及び/又は、操舵力が得られないとき、上記運転者が眠気を帯びていることが、より精度よく判定することができる。
【0020】
かくして、本発明の一態様によれば、路面状態に拘らず、運転者の居眠り状態を確実に検知することができる。これにより、運転時の安全性を格段と向上させることができる。
【0021】
また、本発明の一態様において、上記眠気検出部によって上記運転者の眠気が検出された場合、当該運転者を覚醒させる覚醒手段を備えることが好ましい。これにより、運転者が眠気を帯びたまま運転することを回避することができるため、運転時の安全性をより一層向上させることができる。
【0022】
さらに、本発明の一態様において、上記眠気検出部によって上記運転者の眠気が検出された場合、上記車両の速度を低減させるように、当該車両の走行を制御する走行制御手段を備えることが好ましい。これにより、運転者が覚醒したか否かに拘らず、車両の速度を低減して停車させるように走行を制御することができるため、危険運転となることを未然に回避して運転時の安全性をより一段と向上させることができる。
【0023】
しかも、本発明の一態様において、上記走行制御手段は、上記車両が走行している走行車線から逸脱しないように、当該車両の走行を制御することにより、当該車両が車線から逸脱することを未然に回避することができ、運転時の安全性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、路面状態に拘らず、運転者の居眠り状態を確実に検知することができ、かくして、運転時の安全性を格段と向上させることができる眠気検出装置及びそれを用いた運転制御装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。但し、本発明の眠気検出装置が搭載される車両としては、一般的な車両を広く適用することができる。従って、該車両の基本的な構成、概念および制御手法、主要なハードウェア構成、作動原理等については当業者には既知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0026】
図1は、本発明による眠気検出装置を用いた運転制御装置の一実施例における概略構成を示すブロック図である。
【0027】
本実施例の運転制御装置1は、車両の走行方向を変えるためにハンドルを介して操作される操舵角を検出する操舵角検出手段としての操舵角センサ2と、上記走行方向を変えるときの操舵力を検出する操舵力検出手段としての操舵トルクセンサ3とを備えている。
【0028】
また、運転制御装置1は、車両の下方側、いわゆるばね下の例えばサスペンションの下端部に配設され、車両が走行している路面の凹凸状態(すなわち路面状況)を検出する路面状態検出手段としてのばね下Gセンサ4を備えている。具体的には、図2に示すように、かかるばね下Gセンサ4(4R、4L)は、車両10における左右対称の車輪部であるタイヤ11L、11R(ここでは便宜上、前輪について説明する)に結合されるサスペンション(図示省略する)のそれぞれの下端部などに設けられ、路面の凹凸状態に応じて車両のタイヤ11L、11Rが上下動することにより、サスペンション等を介して車体へ入力される外乱を検出するためのセンサである。
【0029】
因みに、本実施例では、操舵角センサ2および操舵トルクセンサ3は、ハンドル12と連結されるステアリングシャフト13と結合されるステアリングギア14のボックス内に配設されるが、この限りではない。
【0030】
さらに、運転制御装置1は、車両の速度を検出する車速センサ5と、これら各センサ2〜5における検出結果に基づいて、運転者の覚醒状態(つまり、居眠りしているか否か)を判定する居眠り判定部7と、該居眠り判定部7の判定に基づいて車両の運転を自動的に制御する走行制御手段としての運転制御部9とを備えている。
【0031】
この場合、居眠り判定部7は、上記各センサ2〜5との間に接続手段としての入力インターフェース6が設けられていると共に、運転制御部9との間に出力インターフェース8が設けられ、これら入出力インターフェース6、8によって、各々対応する上記各センサ2〜5や運転制御部9と接続されている。
【0032】
かかる居眠り判定部7は、入力インターフェース6を介して入力される操舵角センサ2の検出結果および/または操舵トルクセンサ3の検出結果と、ばね下Gセンサ4の検出結果との相関、並びに、車速センサ5による車両の速度検出結果に基づいて、当該車両の運転者が眠気を帯びているか否か、すなわち居眠り状態にあるか否かを判定するようになっている。
【0033】
具体的に、居眠り判定部7は、ローパスフィルタ71(LPF:Low-Pass Filter;低域通過濾波器)と、演算部72とを有している。かかるローパスフィルタ71は、操舵角センサ2、および/または、操舵トルクセンサ3の検出結果としての電気信号と、ばね下Gセンサ4R、4Lの検出結果としての電気信号と、車速センサ5の検出結果としての電気信号に対し、DSP処理(Digital Signal Processor:積和演算処理)等のデジタルフィルタ処理を施すことにより、低い周波数成分を取り出すフィルタ回路である。また、演算部72は、ローパスフィルタ71によって上記各電気信号から抽出された低い周波数成分に基づいて、後述する車輪の動きと、該動きに対する操舵の方向(すなわち運転者の操作)を演算し、運転者の居眠りを判定するようになっている。
【0034】
このとき、居眠り判定部7では、ローパスフィルタ71において、上記各センサ2〜5から入力される検出結果としての電気信号に対し、フィルタ処理を施すことによって、当該電気信号における不要な高い周波数成分を抑制することができるようになっている。なお、本実施例では、ローパスフィルタ71において、DSP処理等のデジタルフィルタ処理を施す場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は上記電気信号に対して高周波成分を取り除くフィルタ処理を施すものであれば、この他、種々の一般的なアナログのフィルタ処理を施すようにしても良い。
【0035】
ここで、車両の車輪部分には、車両の走行方向(タイヤの向き)を変えるためのリンク機構が連結されているため、車輪が上下に動くと該リンクも連鎖して上下に動くことにより、タイヤの向きを変えてしまう現象が生じる。
【0036】
つまり、車両10は走行している状態において、車輪部が図3に示すような縦軸にサスペンションストローク、横軸にタイヤの切れ角を表すロールステアの特性を生じる。このため、左右両方の車輪がそれぞれバウンドすることによって、左右の車輪が同じ上向きの動きをするとき、車両進行方向に向かって左のタイヤ11Lは車体の外側へ、同じく右のタイヤ11Rも車体の外側へ向き、タイヤ11L、11Rが各々相反する方向を示す。これにより、車両10が進もうとするベクトルが打ち消され、車両10の走行方向は変わらない(図2参照)。
【0037】
同様に、左右両方の車輪がそれぞれリバウンドすることによって、左右の車輪が同じ下向きの動きをするとき、車両進行方向に向かって左のタイヤ11Lは車体の内側へ、同じく右のタイヤ11Rも車体の内側へ向き、上述と同様に車両10の走行方向は変わらない。このように、路面の凹凸状態によって車輪が上下動することに起因してタイヤ11L、11Rの向きが変わることをばね下の特性と称する。
【0038】
ところが、左右の車輪が逆に動いた場合、すなわち例えば左の車輪がリバウンドし、右の車輪がバウンドすることによって、左の車輪が下向きの動きをし、右の車輪が上向きの動きをするとき、ばね下の特性としては、タイヤ11Lが車体の内側へ、11Rが車体の外側へ向くため、車両10が進もうとするベクトルが進行方向に向かって右側を指し、車両10の走行方向は右側へ傾いてしまう(この逆も然り)。
【0039】
従って、このような路面の凹凸状態による、ばね下の特性に起因した車輪の動きによって、車両10の走行方向が変化することを有効に、言い換えれば高精度で判断するために、居眠り判定部7では、ローパスフィルタ71におけるフィルタ処理を実施するようになっている。
【0040】
かくして、居眠り判定部7は、縦軸に操舵角センサ2によって検出された操舵角、横軸にばね下Gセンサ4L、4Rによって検出された路面の凹凸状態によるばね下の特性を表す図4(a)に示すように、上述の如く得られた路面の凹凸状態によって車両10の向きが変えられると予想される走行方向に対し、ハンドルの操作方向(つまり、操舵角センサ2の検出結果、および/または、操舵トルクセンサ3の検出結果)が、かかる車両10の向きが変えられると予想される走行方向を修正する(打ち消す)方向の結果であれば、運転者が覚醒していると正確に判定することができる。
【0041】
これとは逆に、居眠り判定部7は図4(b)に示すように、路面の凹凸状態によって車両10の向きが変えられると予想される走行方向に対し、ハンドルの操作方向(つまり、操舵角センサ2の検出結果、および/または、操舵トルクセンサ3の検出結果)が、かかる車両10の向きが変えられると予想される走行方向を修正しない方向の結果であれば、運転者が眠気を帯びている(言い換えれば居眠りしている)と正確に判定することができる。
【0042】
従って、運転制御部9は、居眠り判定部7の判定結果に基づいて、運転者が居眠り状態である旨の判定結果である場合、別体として車両に搭載される専用の警報装置やナビゲーション装置を流用する等の手法によって該装置を制御することにより、運転者に対しフラッシュを与えたり、警告音やアナウンス等を発生させたりして、視覚的・聴覚的に覚醒を促し居眠り運転を警告する。これに加えて、運転制御部9は、居眠り運転されている車両の走行を制御することにより、車両の速度を低減させ、最寄の安全地帯に退避させる。このとき、運転制御部9は、当該車両が車線を逸脱して走行しないように車両の走行を制御するようにしても良い。
【0043】
かくして、本実施例の運転制御装置1によれば、車両10の走行中に、ばね下Gセンサ4L、4Rによって検出された路面の凹凸状態に応じて車体へ与えられる外乱に起因して、当該車両10の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角センサ2、および/または、上記操舵トルクセンサ3の検出結果が、上記車両10の走行方向を修正するための操舵角、および/または、操舵力であるとき、上記運転者が覚醒していると明確に判定することができる。
【0044】
これと共に、本実施例によれば、車両10の走行中に、ばね下Gセンサ4L、4Rによって検出された路面の凹凸状態に応じて車体へ与えられる外乱に起因して、当該車両10の走行方向が変えられると予測される場合、上記操舵角センサ2、および/または、上記操舵トルクセンサ3の検出結果が、上記車両10の走行方向を修正することのない操舵角、および/または、操舵力であり、該走行方向が上記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、上記走行方向を修正する操舵角、および/または、操舵力が得られないとき、当該車両10の運転者が眠気を帯びていることが、より高精度に判定することができる。かくして、本実施例の運転制御装置1によれば、運転者の居眠り状態を確実に検知することができ、これにより、運転時の安全性を格段と向上させることができる。
【0045】
また、本実施例の運転制御装置1によれば、居眠り判定部7によって運転者の眠気が検出された場合、当該運転者を覚醒させる警告音を発生させ、またはアナウンスを行うことにより、運転者を覚醒させるため、当該運転者が眠気を帯びたまま運転を続けることを回避することができ、運転時の安全性をより一層向上させることができる。
【0046】
さらに、本実施例の運転制御装置1によれば、居眠り判定部7によって運転者の眠気が検出された場合、運転制御部9は上記車両10の速度を低減させるように、当該車両の走行を制御する。これにより、運転者が覚醒したか否かに拘らず、車両の速度を低減して停車させるように走行を制御することができるため、危険運転となることを未然に回避して運転時の安全性をより一段と向上させることができる。
【0047】
しかも、このとき、上記運転制御部9は、車両10が走行している走行車線から逸脱しないように、当該車両10の走行を制御することにより、当該車両10が車線から逸脱することを未然に回避することができ、運転時の安全性をさらに向上させることができる。
【0048】
かくして、本実施例の運転制御装置1によれば、路面状態に拘らず、運転者の居眠り状態を確実に検知することができる。これにより、運転時の安全性を格段と向上させることができる。
【0049】
なお、本実施例においては、居眠り判定部7における居眠りの判定について、上述した操舵角センサ2の検出結果に加えて、操舵トルクセンサ3の検出結果を用いるようにすることが望ましい。これにより、上記路面の凹凸状態によって車両10の向きが変えられると予想される走行方向に対する操舵角の修正量(すなわち、変えられると予想される走行方向を打ち消す方向のハンドル操作量)が小さい場合であっても、操舵トルク量を検出することで精度よく鋭敏にハンドル操作の方向を取得することができ、これによって、当該居眠りの判定をより一段と確実に行うことが可能となる。すなわち、運転者の居眠りをより一層高精度で判定することができる。
【0050】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。但し、適用される車両の形状、サイズ、排気量等のスペックに関しては、あらゆるものに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例にかかる眠気検出装置を用いた運転制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる運転制御装置が搭載される車両を概略的に透視して示す斜視図である。
【図3】サスペンションストロークに対するタイヤの切れ角を表すロールステアの特性を示すグラフである。
【図4】路面の凹凸状態によるばね下の特性を表し、(a)は運転者の覚醒時、(b)は運転者の居眠り時を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
1…運転制御装置
2…操舵角センサ(操舵角検出手段)
3…操舵トルクセンサ(操舵力検出手段)
4(4L、4R)…ばね下Gセンサ(路面状態検出手段)
5…車速センサ
6…入力インターフェース
7…居眠り判定部(眠気検出装置)
71…ローパスフィルタ
72…演算部(居眠り判定手段)
8…出力インターフェース
9…運転制御部(走行制御手段)
10…車両
11L…左側タイヤ
11R…右側タイヤ
12…ハンドル(ステアリングホイール)
13…ステアリングシャフト
14…ステアリングギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転している運転者の眠気を検出する眠気検出装置であって、
前記車両が走行している路面の凹凸状態を検出する路面状態検出手段と、
前記車両の走行方向を変えるための操舵角を検出する操舵角検出手段、及び/又は、前記走行方向を変えるときの操舵力を検出する操舵力検出手段と、
前記路面状態検出手段による路面状態の検出結果と、前記操舵角検出手段、及び/又は、前記操舵力検出手段の検出結果との相関に基づいて、前記運転者が眠気を帯びているか否かを判定する居眠り判定手段とを有し、
前記居眠り判定手段は、
前記路面状態検出手段の検出結果から、前記路面の凹凸状態に応じた前記車両に対する外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、
前記操舵角検出手段、及び/又は、前記操舵力検出手段の検出結果が、前記車両の走行方向を修正するための操舵角、及び/又は、操舵力であるとき、前記運転者が覚醒していると判定し、
前記操舵角検出手段、及び/又は、前記操舵力検出手段の検出結果が、前記車両の走行方向を修正することのない操舵角、及び/又は、操舵力であり、該走行方向が前記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、前記走行方向を修正する操舵角、及び/又は、操舵力が得られないとき、前記運転者が眠気を帯びていると判定する
ことを特徴とする眠気検出装置。
【請求項2】
前記路面状態検出手段は、前記車両における左右対称の車輪部にそれぞれ設けられたGセンサである
ことを特徴とする請求項1に記載の眠気検出装置。
【請求項3】
前記居眠り判定手段によって前記運転者の眠気が検出された場合、当該運転者を覚醒させる覚醒手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の眠気検出装置。
【請求項4】
車両を運転している運転者の眠気を検出する眠気検出部を備え、該眠気検出部によって前記運転者の眠気が検出された場合、当該運転者を覚醒させ、及び/又は、当該車両の運転を制御する運転制御装置であって、
前記眠気検出部は、
前記車両が走行している路面の凹凸状態を検出する路面状態検出手段と、
前記車両の走行方向を変えるための操舵角を検出する操舵角検出手段、及び/又は、前記走行方向を変えるときの操舵力を検出する操舵力検出手段と、
前記路面状態検出手段による路面状態の検出結果と、前記操舵角検出手段、及び/又は、前記操舵力検出手段の検出結果との相関に基づいて、前記運転者が眠気を帯びているか否かを判定する居眠り判定手段とを有し、
前記居眠り判定手段は、
前記路面状態検出手段の検出結果から、前記路面の凹凸状態に応じた前記車両に対する外乱に起因して、当該車両の走行方向が変えられると予測される場合、
前記操舵角検出手段、及び/又は、前記操舵力検出手段の検出結果が、前記車両の走行方向を修正するための操舵角、及び/又は、操舵力であるとき、前記運転者は覚醒していると判定し、
前記操舵角検出手段、及び/又は、前記操舵力検出手段の検出結果が、前記車両の走行方向を修正することのない操舵角、及び/又は、操舵力であり、該走行方向が前記外乱によって変えられたにも拘らず、所定時間、前記走行方向を修正する操舵角、及び/又は、操舵力が得られないとき、前記運転者は眠気を帯びていると判定する
ことを特徴とする運転制御装置。
【請求項5】
前記眠気検出部によって前記運転者の眠気が検出された場合、当該運転者を覚醒させる覚醒手段を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の運転制御装置。
【請求項6】
前記眠気検出部によって前記運転者の眠気が検出された場合、前記車両の速度を低減させるように、当該車両の走行を制御する走行制御手段を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の運転制御装置。
【請求項7】
前記走行制御手段は、前記車両が走行している走行車線から逸脱しないように、当該車両の走行を制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−146209(P2010−146209A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321529(P2008−321529)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】