説明

着座センサ及び乗員安全装置

【課題】車両の座席に乗員が着座しているかどうかを正確に検知することが可能な着座センサ及びこのセンサを用いた乗員安全装置の提供。
【解決手段】車両の座席に乗員が着座しているかどうかを検知する着座センサにおいて、座席部にメンブレン型着座センサを配置するとともに、乗員の足元部に近接センサを配置し、前記メンブレン型着座センサは、導電パターン回路が形成された2枚の可撓性フィルム基板を、切欠部を有する絶縁スペーサを介して積層した構造を有し、前記近接センサは、近接配置された一組の電極と、各電極の静電容量の変化を検出する検出回路とを有する静電容量式近接センサであり、両方のセンサの検知情報から乗員の着座状態を検知することを特徴とする着座センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される着座センサに関するものである。本発明の着座センサは、座席部にメンブレン型センサを配置するだけでなく、足元部に近接センサを配置することによって、両者の検知情報から、乗員の着座状況を正確に把握することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されている助手席用エアバックの動作は、着座センサの情報を用いて制御されているものがあり、これは実際の自動車の使用状況を想定するためである。すなわち、運転席を除いて自動車のシート(座席)部分には人間が乗車している場合や荷物が置かれている場合など、様々な状況がある。従って、衝突時に動作するエアバックに対して、運転席以外の座席に人間が乗車しているかどうかの識別を行うことは、非常に重要である。
【0003】
人間の乗車がないにも関わらず、当該箇所のエアバックが動作することは好ましいことではないし、実際のところ不要である。よって、荷物が搭載されているのか人間が乗車しているのかを確実に検知する着座センサが必要であることは自明である。着座を検知するシステムとしては、比較的低コストでシステム構成することが可能なメンブレンスイッチを使用したものが用いられている。
【0004】
また、メンブレンの回路構造とセル配置を工夫することにより、座面に荷物が置いてある状態と、人が着座している状態とを区別して検知するセンサが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、メンブレンの着座センサおよび近接センサを同時に座席部に(もしくは近接センサは背面部に)配置し、着座状況を検知するシステムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−212496号公報
【特許文献2】特開2002−326554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1に開示されたセンサは、軽量の荷物であれば正しく検知できる(即ち、人間が乗車していないと検知できる)ものの、ある一定量以上の大きさと重量を有する荷物を座席に置いた場合は、人間が乗車していると判断する場合がある。
特許文献2に開示されたセンサは、静電容量センサが着座部、近接センサが着座部(もしくは背面部)に配置されているため、特許文献1と同様に、ある一定量以上の大きさと重量を有する荷物を座席に置いた場合は、人間が乗車していると誤って検知する可能性がある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、車両の座席に乗員が着座しているかどうかを正確に検知することが可能な着座センサ及びこのセンサを用いた乗員安全装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、車両の座席に乗員が着座しているかどうかを検知する着座センサにおいて、
座席部にメンブレン型着座センサを配置するとともに、乗員の足元部に近接センサを配置し、
前記メンブレン型着座センサは、導電パターン回路が形成された2枚の可撓性フィルム基板を、切欠部を有する絶縁スペーサを介して積層した構造を有し、
前記近接センサは、近接配置された一組の電極と、各電極の静電容量の変化を検出する検出回路とを有する静電容量式近接センサであり、
両方のセンサの検知情報から乗員の着座状態を検知することを特徴とする着座センサを提供する。
【0008】
また本発明は、前述した本発明に係る着座センサと、該着座センサの各センサからの出力を検出する検出回路と、検出回路で検出された出力信号から座席に乗員が着座しているかどうかを判定し、着座有無データを発する演算装置と、この着座有無データ及び車両の所定位置に配置された衝撃センサからの出力信号を入力し、乗員が着座し且つ衝撃センサから衝撃有りとの衝撃信号が出力されたときに、エアバッグを開く動作を行うエアバッグ制御回路とを有することを特徴とする乗員安全装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の座席に乗員が着座しているかどうかを正確に検知することが可能な着座センサ及びこのセンサを用いた乗員安全装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の着座センサ及びこのセンサを用いた乗員安全装置の一実施形態を示す構成図である。この図中、符号1は着座センサ、2はメンブレン型着座センサ、3は近接センサ、4は乗員、5は乗員の足、6は座席部、7は背もたれ、8はヘッドレスト、9は座席、10は乗員安全装置、11及び12は検出回路、13は演算装置、14は衝撃センサ、15はエアバッグ制御回路、16及び17は出力信号、18は着座有無データ、19は衝撃信号である。
【0011】
本実施形態の着座センサ1は、車両の座席9に乗員4が着座しているかどうかを検知する着座センサにおいて、座席部6にメンブレン型着座センサ2を配置するとともに、乗員4の足5を検知可能なように足元部に近接センサ3を配置し、両方のセンサ2,3の検知情報から乗員4の着座状態を検知することを特徴としている。この座席9は、自動車等の車両の座席(補助席、助手席、後部座席など)であり、座席部6(着座シート)、背もたれ7及びヘッドレスト8とから構成されている。
【0012】
図2は、本実施形態の着座センサ1に用いているメンブレン型着座センサ2の一例を示す組立斜視図である。このメンブレン型着座センサ2は、導電パターン回路23が形成された2枚の可撓性フィルム基板20,21を、切欠部24が形成された絶縁スペーサ22を介して積層した構造を有している。可撓性フィルム基板20,21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの合成樹脂フィルムが用いられる。導電パターン回路23は、銀ペーストなどの導電性ペーストを印刷し、或いは銅箔などを所望の回路形状に打ち抜き又はエッチングして合成樹脂製フィルムに貼り付けた導電パターン回路を用いることができる。絶縁スペーサ22についても、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの合成樹脂フィルムを用いることができる。
【0013】
図3は、このメンブレン型着座センサ2の回路図である。このメンブレン型着座センサ2は、座席部6に配置し、一方の可撓性フィルム基板20の導電パターン回路23と、他方の可撓性フィルム基板20の導電パターン回路23との間に電圧を印加し、両方の導電パターン回路23,23間に流れる電流の有無を検出回路12で検知する構造になっている。座席9に乗員4が着座した場合、その荷重によって一方の可撓性フィルム基板20が撓み、その導電パターン回路23が、絶縁スペーサ22の切欠部24を通して他方の可撓性フィルム基板21の導電パターン回路23と接触し、電流が流れる。この電流を検出回路12で検出し、演算装置13に出力信号17を発する。乗員4が座席9から離れた場合、導電パターン回路23,23同士の接触がなくなり、電流が流れなくなり、出力信号17は発せられなくなる。
【0014】
図4は、本実施形態の着座センサ1に用いている近接センサ3の一例を示す図である。本例において近接センサ3は、一組の電極25,26からなり、(a)は近傍に人体がない状態(Ca)を、(b)は近傍に人体がある状態(Cb)を表している。電極25,26の静電容量は、人体が近接し或いは離れることで変化する(Ca>Cb)。この容量変化を検出回路11で検出することで、人体が近接したことを検知することができる。
【0015】
図5は、前記近接センサ3の検出回路11の一例を示す回路図である。この検出回路11は、電極25,26の静電容量が変化した場合、その容量変化が検出回路11によって出力電圧Voutに応じたデジタルデータに変換され、そのデジタルデータ(出力信号16)が演算回路13に送られるように構成されている。
【0016】
本発明の乗員安全装置10は、座席部6に配置したメンブレン型着座センサ2と足5が接する直下に配置された近接センサ3とを有する前記着座センサ1と、該着座センサ1の各センサ2,3からの出力を検出する検出回路11,12と、検出回路11,12で検出された出力信号16,17から座席9に乗員4が着座しているかどうかを判定し、着座有無データ18を発する演算装置13と、この着座有無データ18及び車両の所定位置に配置された衝撃センサ14からの出力信号19を入力し、乗員4が着座し且つ衝撃センサ14から衝撃有りとの衝撃信号19が出力されたときに、エアバッグを開く動作を行うエアバッグ制御回路15とを有する構成になっている。
【0017】
この乗員安全装置10によれば、座席部6に配置したメンブレン型着座センサ2と、足5が接する直下に配置された近接センサ3との出力信号16,17を判定基準として、乗員4の着座状態を把握することで、座席部6に比較的重い荷物を載せた場合であっても、これを「乗員あり」と判定することが無くなり、乗員の着座状態を正確に判定することができる。表1に、本実施形態の着座センサ1及び乗員安全装置10による判定結果の一例をまとめて記す。
【0018】
【表1】

【0019】
表1中、事例1は、座席部6に軽い荷物を載せた場合である。この場合、荷物が軽いため、着座センサは出力OFFの状態であり、近接センサも出力OFFであり、乗員なしと判定される。
事例2は、座席部6に重い荷物を載せた場合である。この場合、荷物が重くなったことで、着座センサは出力ONとなるが、近接センサの出力はOFFであり、乗員なしと判定される。
事例3及び事例4は、足元部に荷物(小)または(大)を置いた場合である。この場合、近接センサは出力ONとなるが、着座センサは出力OFFであり、乗員なしと判定される。
事例5は、人が乗車した場合であり、座席部に人の体重が加わることで着座センサは出力ONとなり、また足の近接によって近接センサも出力ONとなる。この場合には、乗員ありと判定される。
【実施例】
【0020】
[実施例]
図6に示すように、座席部6の着座面に、図2に示す構造のメンブレン型着座センサ2を配置し、且つ足元部に図4に示す静電容量式近接センサ3を配置した。
この着座センサによって、表1中に示す事例1〜事例5と同じ条件で各センサの出力ON/OFFを測定し、乗員の有無の判定を行った。
図6は、座席9に乗員4が着座した状態(事例5)を示す構成図である。また図7は、座席部6に荷物27を乗せた状態(事例1又は事例2)を示す構成図である。この判定結果を表2に示す。
【0021】
[比較例1]
足元部に近接センサ3を配置しなかったこと以外は、実施例と同様とした。この判定結果を表2に示す。
【0022】
[比較例2]
特許文献2に開示されたセンサの構造を参考として、図8に示すように、座席部6に着座センサ2と近接センサ3を両方配置した。それ以外は実施例1と同様とした。この判定結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
表2に示す判定結果から、本発明に係る実施例の着座センサによれば、乗員の着座状態を、座席部への荷物の積載と明確に区別して正確に判定することができた。
事例1のように、軽い荷物を座席部に載せた場合には、実施例及び比較例1,2のいずれも、乗員なしと判定された。
また、事例5のように、座席に乗員が着座した場合には、実施例及び比較例1,2のいずれも、乗員ありと判定された。
しかし、事例2のように、重い荷物を座席部に載せた場合には、比較例1及び比較例2では、乗員ありと判定されてしまう。一方、実施例では、事例2では足元部に配置した近接センサが出力OFFであることから、乗員なしと正確に判定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の着座センサ及び乗員安全装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】図1の着座センサに用いるメンブレン型着座センサの一例を示す組立斜視図である。
【図3】図2のメンブレン型着座センサの検出回路の一例を示す回路図である。
【図4】図1の着座センサに用いる近接センサの一例を示し、(a)は電極周辺に人体が存在しない状態を示す図、(b)は電極に人体が近接した状態を示す図である。
【図5】図4の近接センサの検出回路の一例を示す回路図である。
【図6】本発明に係る実施例での着座センサの構造を示し、座席に乗員が着座した状態を示す構成図である。
【図7】本発明に係る実施例での着座センサの構造を示し、座席部に荷物を載せた状態を示す構成図である。
【図8】比較例2での着座センサの構造を示す構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1…着座センサ、2…メンブレン型着座センサ、3…近接センサ、4…乗員、5…足、6…座席部、7…背もたれ、8…ヘッドレスト、9…座席、10…乗員安全装置、11,12…検出回路、13…演算装置、14…衝撃センサ、15…エアバッグ制御回路、16,17…出力信号、18…着座有無データ、19…衝撃信号、20,21…可撓性フィルム基板、22…絶縁スペーサ、23…導電パターン回路、24…切欠、25,26…電極、27…荷物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に乗員が着座しているかどうかを検知する着座センサにおいて、
座席部にメンブレン型着座センサを配置するとともに、乗員の足元部に近接センサを配置し、
前記メンブレン型着座センサは、導電パターン回路が形成された2枚の可撓性フィルム基板を、切欠部を有する絶縁スペーサを介して積層した構造を有し、
前記近接センサは、近接配置された一組の電極と、各電極の静電容量の変化を検出する検出回路とを有する静電容量式近接センサであり、
両方のセンサの検知情報から乗員の着座状態を検知することを特徴とする着座センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の着座センサと、該着座センサの各センサからの出力を検出する検出回路と、検出回路で検出された出力信号から座席に乗員が着座しているかどうかを判定し、着座有無データを発する演算装置と、この着座有無データ及び車両の所定位置に配置された衝撃センサからの出力信号を入力し、乗員が着座し且つ衝撃センサから衝撃有りとの衝撃信号が出力されたときに、エアバッグを開く動作を行うエアバッグ制御回路とを有することを特徴とする乗員安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−285052(P2008−285052A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132757(P2007−132757)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】