磁気抵抗を示す希釈磁性半導体ナノワイヤ
希釈磁性半導体(DMS)ナノワイヤを製作する方法について示した。この方法は、触媒がコーティングされた基板を提供するステップと、前記基板の少なくとも一部を、塩化物系蒸気搬送体を介して、半導体およびドーパントに暴露するステップと、を有し、ナノワイヤが合成される。この新しい塩化物系化学気相搬送処理方法を用いて、単結晶希釈磁性半導体ナノワイヤGa1−xMnxN(x=0.07)が合成される。ナノワイヤは、直径が〜10nm乃至100nmであり、全長は最大数十μmであり、キューリー点が室温を超える強磁性体であり、250K(ケルビン)まで磁気抵抗を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に半導体ナノワイヤに関し、特に希釈磁性半導体ナノワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の情報技術は、2つの独立のプロセスに依存している:電荷に基づく情報処理(マイクロプロセッサ)およびスピンに基づくデータ記憶である。一つの半導体媒体内で電荷とスピンの両方を同時に操作する技術は、スピントロニクスの領域につながる。多くのものの中で、希釈磁性半導体(DMS)は、そのような適用を代替するものとして有望視されている。理論的な研究では、遷移金属ドープGaNは、室温よりも高い強磁性遷移温度を有し、多くの提案されたスピントロニック用途に対して、有利であることが示されている。これらの薄膜の磁気不純物相分離の可能性については、活発な論争が続いているものの、そのような仮説を検証するため、既に多くの実験が実施されている。また、非平衡分子ビームエピタキシャル成長処理法によって生じたこれらの膜の固有の欠陥は、これらの材料の強磁性の基本的な理解を妨げている。
【0003】
一方、電子装置の小型化は、産業製品および学術的研究の両方において、恒久的なトレンドとなっている。多くの材料の中で、ナノチューブおよびナノワイヤは、サブ100nm以下の電子装置のブロックを構成することが可能な材料として、活発に研究されている。従って、低次元強磁性半導体ナノ構造の制御加工および根本的な理解は、半導体系スピントロニック装置およびスピン系量子計算方式を開発する上で重要である。
【0004】
DMS量子井戸およびドットの理解は進展しているが、DMS量子ワイヤの研究は、未だ初期段階である。次元および寸法は、システムの各種特性の決定に重要な影響を及ぼすことが知られている。この点から、nmスケールの一次元DMSシステム、すなわちDMSナノワイヤは、興味深い電磁気特性を示すことが期待され、いくつかの理由からスピントロニック装置を実現する上で、良好な代替材となり得ることが期待されている。第1に、ナノワイヤは、それ自身がナノスケールの電子および光電子装置用の、魅力的な構成ブロックである。第2に、磁気ナノワイヤは、スピンフィルタとして機能し、スピン分極キャリア電流を供給することができ、大きな磁気異方性エネルギーを有する。第3に、キャリアは、ナノワイヤの半径方向に閉じ込められるため、高キャリア濃度、およびスピン分極キャリアの有効な注入が可能となる。
【0005】
しかしながらDMSナノワイヤの合成は、難しい課題であり、最近、エピタキシャルナノテープ形状のものが得られたに過ぎない。DMSナノワイヤの重要な調査を実施するためには、理想的なワイヤは、単結晶である必要があり、遷移金属ドーパントは、相分離が生じないように、均一に分散させる必要がある。合成上の課題は、ナノ結晶のドーピング自身が難しいことに加えて、遷移金属の半導体の平衡溶解度が制限されていることである。分子ビームエピタキシー(MBE)およびインプランテーションのような処理プロセスでは、GaN系のようなIII−V族半導体からのDMSの調製に、限界があることが示されている。
【非特許文献1】サーマ(S.D.Sarma)、強磁性半導体:スピントロニックスにおける巨大外観、ネーチャーマテリアル(Nature Mater.)、2巻、p292−294、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の問題を解決する半導体ナノワイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の技術的な課題は、本発明によって解決される。本発明では、単結晶GaN:Mnナノワイヤは、特殊な塩化物系化学気相搬送処理法によって、制御された状態で製作加工される。特に、単結晶希釈磁性半導体ナノワイヤGa1−xMnxN(x=0.01〜0.09)が合成される。これらのナノワイヤは、約10nmから100nmの直径を有し、長さは、最大10μmで、強磁性を示し、キューリー点は300Kを超え、250Kまで磁気抵抗(MR)を示す。単一のナノワイヤトランジスタからのスピン依存電子輸送は、強磁性ナノワイヤが均一であることを示している。ナノワイヤ系発光ダイオード構造からのゲート依存コンダクタンスおよびエレクトロルミネッセンス(EL)は、これらがp型であることを明確に示しており、この結果は、ホール介在強磁性の理論と一致する。
【0008】
本発明の態様では、
希釈磁性半導体(DMS)ナノワイヤを製作する方法であって、
触媒がコーティングされた基板を提供するステップと、
前記基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露するステップと、
を有し、
前記ドーパント系溶液は、ドーパントと、磁性半導体ナノワイヤの合成を助長する塩化物系蒸気搬送体とを含むことを特徴とする方法が提供される。半導体系溶液は、従来から知られている、多数の異なる二元系半導体(例えば、GaN、GaAs、GaP、ZnO、InAs、InP、BeO、CdS、HgS等)のいずれか、または元素系半導体(例えばSi、Ge)を有する。通常ドーパントは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr等の遷移金属を有する。
【0009】
本発明のある態様では、アンモニア(NH3)の流束下で、ガリウム(Ga)およびマンガン塩化物(MnCl2)が基板上に搬送され、ナノワイヤが合成される。
【0010】
別の態様では、ナノワイヤの組成は、塩化物系蒸気の量を制御することにより制御される。特に、塩化物系蒸気の量を制御することによって、ナノワイヤ中のマンガン濃度が制御されても良い。
【0011】
好適実施例では、基板にガリウム、マンガンおよび塩化物系蒸気が提供される前に、基板は、800℃から1000℃の温度範囲に加熱される。
【0012】
別の実施例では、ガリウム半導体が、塩化物系蒸気を介して搬送される。搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3から、
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成される。
【0013】
単結晶GaN:Mnナノワイヤは、相分離が生じないようにし、さらにマンガンドーパントがナノワイヤ上に均一に分散するようにして、形成されることが好ましい。
【0014】
一般に、ナノワイヤは、キューリー点が300Kを超える強磁性体であり、250Kの温度まで磁気抵抗を示す。
【0015】
好適実施例では、触媒がコーティングされた基板は、ニッケルコーティングされた炭化珪素(SiC)基板を有する。あるいは、基板は、ニッケルコーティングされたサファイア基板を有する。
【0016】
本発明の別の実施例では、触媒がコーティングされた基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露することにより、希釈磁性半導体(DMS)ナノワイヤが形成される。ドーパント系溶液は、ドーパントと、塩化物系蒸気キャリアとを有する。好適実施例では、DMSナノワイヤは、GaN:Mnナノワイヤを有する。通常の場合、ナノワイヤは、全長が約10nmから100nmの範囲にある。GaN:Mnナノワイヤは、相分離が生じない単結晶であり、250Kまで磁気抵抗を示しても良い。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、希釈磁気半導体(DMS)ナノワイヤを合成する方法は、
基板に触媒をコーティングするステップと、
800℃から1000℃の温度に前記基板を加熱するステップと、
前記基板の少なくとも一部に、半導体およびドーパントを搬送するステップと、
を有する。ドーパントは、塩化物系蒸気を介して基板に搬送され、磁気半導体ナノワイヤの合成が助長される。ある態様では、半導体およびドーパントは、いずれも気体溶液である。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、GaN:Mnナノワイヤを製作する方法が提供され、この方法は、ニッケルメッキ基板を提供するステップと、塩化物系蒸気を介して、ガリウムおよびマンガン金属を基板に搬送するステップとを有し、GaN:Mnナノワイヤが形成される。GaN:Mnナノワイヤは、強磁性であり、磁気抵抗を示す。本発明の好適態様では、ガリウム塩化物(GaCl3)およびマンガン塩化物(MnCl2)が、アンモニア(NH3)の流束下で、基板上に搬送され、ナノワイヤが形成される。MnCl2は、ドーピング前駆体として作用するとともに、GaN:Mnナノワイヤを形成する上で、熱力学的に好ましい搬送剤となる。
【0019】
本発明の他の態様は、明細書の以下の部分によって明らかになろう。詳細な記載は、本発明の好適実施例を十分に開示するためのものであり、本発明は、これに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、添付図面を参照することにより、十分に理解することができる。図面は、一例を示すためにのみ使用される。
【0021】
本発明を説明するための図面を参照して、図1Aから図16Bに示した機器について説明する。ここに示した基本概念から逸脱しないで、機器の構成および細部の部品を変更しても良いこと、また本方法において、特定のステップおよび順番を変更しても良いことは明らかであろう。
(実施例1)
既存の遷移金属ドープDMSが、非平衡MBE処理プロセス(第2相の形成を抑制するため、低温で加工される)によって調製されるのに対して、本発明の希釈磁性半導体ナノワイヤは、高温の平衡蒸気搬送処理プロセスによって製作される。塩化物搬送体(例えばHCl)の存在により、本発明の処理プロセスを実施することが可能となる。GaN:Mnナノワイヤの場合、搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3によって、以下の反応により、GaN:Mn結晶相が形成される:
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
この反応では、GaCl3およびMnCl2は、単一のGaN:Mn結晶相の形成にとって、熱力学的に好ましい搬送剤として作用する。重要なことは、この処理プロセスでは、大部分のGaN:Mn薄膜研究において共通の問題であった相分離が生じず、粒界が存在しない単結晶GaN:Mnナノワイヤが形成されることである。
【0022】
図1Aには、本発明による二元系半導体組成ナノワイヤを合成するための、希釈磁性半導体加工組立体20の一例を示す。基板22は、最初に、ニッケル、金、コバルトまたは鉄等の触媒でコーティングされる。基板22は、サファイア(絶縁性の場合、導電性の場合は炭化珪素(SiC))を有しても良く、あるいは従来と同様の材料を有しても良い。
【0023】
触媒(ニッケル)の成膜後、基板22は、成長チャンバ室24内に設置され、800℃から1000℃に加熱される。特に温度は、800℃と900℃の間であることが好ましい。通常の場合、ナノワイヤの成長32は、800℃から1000℃の温度範囲で生じる。二元系半導体の場合、気体溶液Gが、第1の半導体源26、第2の半導体源28およびドーパント源30を介してチャンバ室24に導入され、循環される。ドーパント溶液は、HCl29等の塩化物系蒸気によって基板22に搬送される。従って、ドーパントの濃度およびナノワイヤ32の組成は、HCl29のガス導入量によって制御される。必要であれば、ドーパントは、Mn、Ni、Co、Fe等の遷移金属を有しても良い。
【0024】
半導体系溶液は、広く知られている多くの二元系半導体(例えば、GaN、GaAs、GaP、ZnO、InAs、BeO、CdS、HgS等)のうちのいずれかを含んでも良い。
例えば、GaAsナノワイヤの場合、第1の半導体源26は、水素化砒素(ArH3)のような砒素(As)系ガスを含む。同様に、第2の半導体源28は、ガリウム(Ga)を有する。このガリウムは、HCl源29によって供給される塩化物系搬送体を有しても良く、この場合、ガリウム塩化物(GaCl3)が形成される。
【0025】
GaN:Mnナノワイヤの場合、ガリウム塩化物(GaCl3)およびマンガン塩化物(MnCl2)は、アンモニア(NH3)(窒素を提供するため)の流束下で、800℃の基板に搬送される。ナノワイヤ中のMn濃度を制御するため、GaCl3およびMnCl2は、金属Ga、Mnおよび塩化水素(HCl)ガスによって搬送される。温度および蒸気導入量は、所望のナノワイヤが成長するまで継続され、ナノワイヤの長さにもよるが、通常は、数分乃至1時間継続される。
【0026】
図1Bには、本発明による元素系半導体組成ナノワイヤを合成するための、一例としての希釈磁性半導体加工組立体21を示す。元素系半導体(例えばSi、Ge)は、元素系半導体源27を介してチャンバ室24内に供給される。HCl源29を用いて、ドーパント源30を介してドーパントが搬送される。必要であれば、HCl29は、元素系半導体、例えば四塩化珪素(SiCl4)の搬送に使用しても良い。
【0027】
図2Aには、基板上に成長したナノワイヤ31の通常の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。これらのナノワイヤの全長および直径は、それぞれ、10〜100nmおよび数十μmである。図2Bには、このナノワイヤ32の高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)像を示す。図2B のHRTEM像から、欠陥や二次相介在物のない、完全な単結晶が観察される。ワイヤに記録された、ウルツ鉱GaN構造に対応する選択領域電子回折(SAED)パターン34から、これらのナノワイヤが単相であることが確認された。XRDおよびTEM分析において、x=0〜0.09では、Ga1−xMnxNナノワイヤの構造特性の差異は、認められなかった。
【0028】
図2Cには、Ga0.93Mn0.07Nナノワイヤのエネルギー分散X線分光分析(EDS)によって得られた、典型的なMn濃度を示す。10本のナノワイヤから測定されたMnの平均濃度は、7%であり、Mnドーパントは、ナノワイヤ格子内に均一に分散されていることがわかった。
【0029】
図2Dには、GaN内のMnドーパントの価数状態を分析するための電子エネルギー損失分光分析(EELS)のグラフを示す。図において、結果は、MnO、Mn2O3およびMnO2の既知のカチオン酸化物状態の標準照合試料で得られるスペクトルと合わせて、示されている。EELSは、材料組成の微小分析に広く使用されており、遷移金属のEELSスペクトルは、金属の酸化状態に対して高い感度を示すことが知られている。図2Dに示すL3線とL2線の形状および相対強度比の比較から、Mnドーパントは、GaNマトリクス内にMn2+カチオン(d5電子配置を有する)として存在している。そのため、Mn2+は、高温で製作されたGaN:Mnナノワイヤ32内に、イオン化アクセプタとして存在する。
【0030】
さらにこの結果を、GaN:Mnナノワイヤ32の光ルミネッセンス(PL)の研究によって、検証した。図3には、GaN:MnナノワイヤのPLスペクトルのグラフを、300Kでの同様の寸法の純粋なGaNナノワイヤと比較して示す。励起源には、He−Cd CWレーザを使用した。PLスペクトルは、2.5〜3.2eVにおいて、ブロードな放射を示し、これは、MnがMn2+として存在するとした、過去のGaN:Mn薄膜の研究結果と良い一致を示す。図3において、GaN:Mnナノワイヤスペクトル40は、純粋なGaNナノワイヤのスペクトル42と明確に識別することができる
次に、図4Aに示す超伝導量子干渉装置(SQUID)磁気探知器50を用いて、ナノワイヤの磁気特性を測定した。基板54に設置されたナノワイヤ32を有する試験構造54は、挿入冶具52を用いて、SQUID磁気探知器50に挿入される。
【0031】
図4Bには、MR測定用の4端子試験構造60の一例を示す。試験構造60を製作するため、電子ビーム転写法を用いて、熱酸化Si(100)基板上に座標マークがパターン化され、さらにDCマグネトロンスパッタリングシステムおよび剥離処理によって金属成膜(Ti/Au、20/40nm)が実施される。ナノワイヤ溶液は、予めパターン化されたSi基板上に滴下され、パターン化マークに対する各ナノワイヤの位置は、原子間力顕微鏡像によって把握される。4つの電極64は、電子ビーム転写法によって定形され、ナノワイヤ32に接続される。Au層(40nm)が電極64上に設置され、剥離処理によって最終的な試験構造が製作される。
【0032】
MR測定は、温度範囲2〜300Kで、9テスラまでの外部磁場を印加して、PPMS(物理特性測定システム)を用いて実施した。図4Cには、4端子試験構造60での測定のため、本発明により製作された個々のナノワイヤ32の等温MRを示す。図4Cから、GaN:Mnナノワイヤは、250Kまでは、負の磁気抵抗(MR)を示す。2Kおよび250Kにおいて、9Tでは、負のMR(印加磁場の増大により減少する抵抗)は、それぞれ1.4%および0.4%である。MRは、室温付近で消滅する。このタイプの負のMRは、(Ga,Mn)Asおよび(Ga,Mn)Nのエピタキシャル薄膜においても観察されている。そのような負のMRは、印加磁場によるスピンの整列によって散乱が減少することで説明できる。一方、同様の温度および磁場での純粋なGaNナノワイヤのMR測定では、磁気抵抗の兆候は認められない。
【0033】
さらにナノワイヤの強磁性は、強磁性電極を用いた個々のナノワイヤのスピン依存電子輸送測定によって確認することができる。図5Aには、スピン依存輸送の研究に使用される、ナノワイヤ系トンネル磁気抵抗試験構造70のSEM像を示す。本発明の方法によって製作された個々のナノワイヤ32は、酸化したSi基板72上に設置される。ナノワイヤ32は、強磁性Co電極74(2および4)と、Ti/Au電極76(1および3)を横断して伸張している。
【0034】
電極リード線のパターンは、選択基板上の電子ビーム転写によって形成される。金属層(Ti/Au、20/50nm)が、熱蒸着によって、連続的に接触領域に設置される。ナノワイヤとTi/Au電極の間のオーム接続は、適正な熱処理によって達成される。オーム接続が形成された後、熱蒸着によって、予めパターン化された基板上に強磁性Co金属が設置され、磁気トンネルバリア接合が形成される。
【0035】
図5Bには、4.2Kにおいて、0.63mV(80)および2mV(82)の2つの異なるバイアス電圧を用いて、GaN:Mnナノワイヤを通る強磁性Co電極(2)とTi/Au電極(3)の間で測定された抵抗を示す。この結果は、トンネル磁気抵抗装置において良く観察されるヒステリシス挙動を明確に示している。4.2KでのI−V特性は、非線形挙動を示しており、これは、電極とナノワイヤの間にトンネルバリアが形成されていることを示している。直線領域での通常の抵抗は、4.2Kで約440kΩであり、0.6mVのバイアス電圧での抵抗変化ΔRは、約9kΩである。この場合、MR変化はΔR/R=1.3%となる。このヒステリシスMRは、約20Kまで観測される。2つの異なる金属接触を有するナノワイヤの抵抗は、以下の式で表される
【0036】
【数1】
ここでRCoおよびRNWは、それぞれCo電極およびナノワイヤの抵抗であり、RCo/NWおよびRNW/Tiは、Co/ナノワイヤおよびTi/ナノワイヤ接続部のトンネル抵抗である。これらの抵抗の中で、RCo/NW 、RCoおよびRNWは、ヒステリシスMRの基点である。ただし、RCoは、100Ω以下の抵抗であり、MR変化の大きさ(数十kΩ)を説明するには不十分である。また、非磁性のTiをナノワイヤに接続した実験から、RNW自身は、ヒステリシスMRには寄与しないことが示されている。そのため、Coとナノワイヤの間の磁気接続からの寄与(RCo/NW)が、ヒステリシスMRの観察された原因であると考えられる。
【0037】
図6Aおよび図6Aの一部の拡大図を示す6Bには、図4AのSQUID装置の下で検出された、Ga0.93Mn0.07Nナノワイヤ試料の磁化ループを示す。磁化ヒステリシスおよび残留磁気が、5Kおよび300Kの両方において明確に認められる。これは、GaN:Mnナノワイヤが、室温に置いても強磁性であることを示している。またこれは、図6Cに示すように、0.02および0.5Tで得られた磁化データの温度依存性を反映している。
【0038】
本発明により製作されたナノワイヤの、5Kおよび300Kで測定された磁化ループを、図7Aおよび7Bに示すが、ナノワイヤの王水処理によっても、磁気特性に変化は見られない。キューリー点(Tc)は、300Kを超えることが予想される。GaN:Mn相において観測された高いTcは、ホール介在強磁性の理論モデルで説明することが可能である。しかしながら、そのような高いTcには、高いホールおよびMn濃度(例えば、それぞれ3.5×1020cm−3および5%)が必要である。
【0039】
キャリアの種類および濃度を定めるため、本発明により製作したGaN:Mnナノワイヤを用いて、ナノワイヤ電界効果型トランジスタ(FET)構造を調製した。ナノワイヤは、100nm厚さの熱成長SiO2層を有するシリコンウェハを有する試験基板上に設置した。GaN:Mnナノワイヤを含むイソプロピルアルコール(IPA)溶液を調製し、これを予めパターン化されたSi基板上に、滴下して定形した。乾燥後、ナノワイヤの位置を同定し、写真転写法でソースおよびドレイン電極を定形し、ナノワイヤ電界効果型トランジスタ(FET)構造を得た。熱蒸着によって金属電極(Ni/Au、20/50nm)を設置する前に、緩衝HF(10:1)中でナノワイヤを処理した。ナノワイヤと電極間のオーム接続部は、適当な熱処理プロセスによって形成した。
【0040】
次に、図8Aおよび8Bに示すように、ナノワイヤ系FET構造からのバックゲート電圧が異なる場合の電流−電圧(I−V)曲線を測定した。直線的なI−V曲線から、Ni/Au電極を有する装置の金属電気接続部は、オーミック的である。弱いゲート効果、すなわちゲート電圧の正の増大とともに導電率が減少することが観察された。これは、試験ナノワイヤがp型のキャリア特性であることを意味している。文献調査の結果では、多くの過去の電気的な測定では、GaN:Mn薄膜は、n型導電挙動を示すことが示されている。これは、固有欠陥のため、伝導帯端部でのドナー状態が高密度であることに起因する。これらナノワイヤは、I−V測定では、室温でのVg=0Vにおいて、1.1×10−2Ω・cmの低い抵抗率を示した。この低い抵抗率および弱いゲート効果は、本発明のナノワイヤ内で高いキャリア濃度が得られていることを示唆している。移動度は、
【0041】
【数2】
で表され、ここで、μはキャリア移動度、Cは容量、Lはソースとドレイン間の距離である。ナノワイヤの容量は、
【0042】
【数3】
によって表され、ここで、εは誘電率、hはシリコン酸化層の厚さ、rは、ナノワイヤの直径である。キャリア移動度は、70cm2/V・sと見積もられる。移動度は、バルクおよび/または薄膜状のMn:GaNの値と比べると小さく、これは、一次元ナノスケール閉じ込めによる高いキャリア濃度によって、またはナノワイヤのナノスケール径での散乱の増大によって説明できる。高ドープ、キャリア閉じ込めナノワイヤのキャリア密度を算出することは難しい。バックゲート電圧によって、キャリアの十分な欠乏状態を得ることが難しいためである。実際には、Vgが−10乃至10Vの範囲での不完全な欠乏が観察される。単純な外挿によれば、キャリア濃度として、約2×1019cm−3が得られる。この値は、ドープされたGaN薄膜の値よりも大きいが、室温での理論モデルから得られる値(例えば、3.5×1020cm−3)よりは小さい。
【0043】
GaN:Mn薄膜で実施された過去の実験結果は、理論モデルによって予想されるホール介在強磁性を支持していない。しかしながら、試験データでは、ホールが電荷輸送と強磁性作用の両方に寄与することが示唆されている。すなわち、本発明の単結晶GaN:Mnナノワイヤでは、GaN:Mnは、ホール介在室温強磁性のツェナーモデルを支持する。ワイヤの完全単結晶では、構造欠陥および二次相(通常、薄膜中に存在する)の影響を排除されるため、この材料に固有の強磁性が観測される。
【0044】
DMSナノワイヤをベースとする新しいスピントロニック装置の一例として、本発明のナノワイヤは、GaN:Mnナノワイヤ系発光ダイオード(LED)構造を形成するように構成される。図9Aには、GaN:MnナノワイヤLEDの一例の概略図を示す。疑似垂直整列GaN:Mnナノワイヤ102は、Ni触媒によってn−SiC(0001)基板上に成長する。図10Aには、基板上の疑似垂直ナノワイヤ配列のSEM像を示す。ナノワイヤ102上にNi/Auバイレイヤ108を蒸着させ、および基板104上にNiバイレイヤ106を蒸着させることにより、オーム接続が得られ、その後、これらは急冷される。基板104の金属化の後、ナノワイヤ108が除去される領域に、シャドーマスクを介して、微小領域に厚いTaOx膜110が成膜される。次にNiおよびAuが蒸着され、ナノワイヤ102およびTaOx絶縁層110の上に連続接続層が得られる。実験は、TaOx絶縁膜を電源114に接続するプローブ112を用いて実施される。図9Cには、LED100からの発光115を示す。
【0045】
図10Bに示すように、ナノワイヤLED構造の輸送測定結果からは、p−nダイオードの整流特性が明確に認められる。特に、ソースドレインバイアスが−8Vまでの逆バイアスでは、電流はほとんど観測されず、約3Vの順方向バイアスにおいて、鋭い電流上昇が認められる。ナノワイヤおよび基板で記録されたI−Vデータは、対称なため、整流化は、ナノワイヤ−金属接続ではなく、ナノワイヤと基板の間のp−n接合によるものである。これらの接合のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトル測定結果を図10Cに示すが、ナノワイヤの光ルミネッセンスに対応する430nmを中心とする主放射ピーク120が観察されている。さらに図10Cの結果は、本発明のGaN:Mnナノワイヤがp型特性であること明確に示している。
(実施例2)
本発明では、アンモニア(NH3)流束下で、ガリウムおよびマンガン塩化物(MnCl2)の搬送によって、900℃のニッケルコーティングされたサファイア基板に、GaN:Mnナノワイヤ140を成長させた。図11Aには、基板に成長させたナノワイヤ150の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。これらのナノワイヤの全長および直径は、それぞれ10〜100nmおよび数十μmである。図11Bおよび11Cには、個々のナノワイヤ150の高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)像を示す。またX線回折パターン152は、これらのナノワイヤが単相であることを示している。
【0046】
図11Dには、ナノワイヤのエネルギー分散X線分光分析(EDS)によって得られたMn濃度を示す。10本のナノワイヤで測定されたMn濃度の平均は、7%であり、Mnドーパントは、ナノワイヤ格子内に均一に分散していることがわかった。
【0047】
本発明のGaN:Mnナノワイヤは、高温での平衡蒸気搬送処理法によって調製した。搬送されるGaとMnCl2、およびNH3によって、以下の反応により、GaN:Mn結晶相が形成される:
Ga + xMnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 2xHCl + (3−2x)/2 H2
この反応において、MnCl2は、GaN:Mn相を形成する上で、熱力学的に好ましい搬送剤として機能用するとともに、ドーピングの前駆体として機能する。
【0048】
ナノワイヤの磁気特性は、図4Aに示すSQUID磁気探知器を用いて測定した。5Kおよび300Kの両方において、磁化ヒステリシス挙動および残留磁場が明確に観測された。0.02テスラ(T)および0.5Tでの磁化の温度依存性については、図12Bに示すように、10K以下では、強磁性および常磁性相の共存のため、磁化が増大した。また、キューリー点Tcは、300Kを超えると予想される。
【0049】
図13には、個々のナノワイヤ150の等温磁気抵抗(MR)の試験装置を示す。MRを測定するため、ナノワイヤ150は、試験基板154上の2つの電極156を跨ぐように設置される。
【0050】
図14では、GaN内のMnドーパントの価数状態をELLS分析法によって分析し、既知のカチオン酸化状態を有する標準試料(MnO、Mn2O3およびMnO2)で得られたスペクトルと比較した。この図においても、L3線とL2線の形状および相対強度の比較から、Mnドーパントは、GaNマトリクス内で、Mn2+カチオンとして存在していることが示された。同様に図15に示すPLスペクトルは、2.5〜3.2eVにおいて、ブロードな放射が生じることを示している。
【0051】
これらのGaN:Mnナノワイヤ内のキャリアタイプを調べるため、ナノワイヤ系FET構造を用いて、ナノワイヤの導電性を測定した。装置は、酸化させたシリコン基板の表面において、エタノール中にナノワイヤのサスペンションを分散させることにより調製した。下地のシリコンは、広いバックゲートとして使用した。ソースおよびドレイン電極は、集束イオンビームによる白金の成膜によって作製した。ゲート依存輸送の研究では、正のゲート電圧の減少によって、ワイヤの導電性が僅かに増大するため、キャリアタイプは、p型キャリアであることがわかった。
【0052】
図16Aおよび16BのGaN均一接続構造160は、シリコンドープn型GaNナノワイヤ162で構成される。GaNナノワイヤ均一接続は、約3.4Vの開始電圧で、整流挙動を示した。これもまた、MnドープGaNナノワイヤがp型特性であることを示している。これは、ホールが電荷輸送と強磁性相互作用の両方に寄与していることを示している。本発明のGaN:Mnナノワイヤの結果は、GaN:Mnが、ホール介在室温強磁性のツェナーモデルに一致することを支持している。
【0053】
本発明による単結晶GaN:Mnナノワイヤを調製する塩化物系搬送法では、一次元ナノ構造のGaNマトリクス内への遷移金属イオンのドーピングが容易となる。この合成によって、キューリー点が室温を超え、室温近傍で磁気抵抗を示し、さらにスピン依存輸送およびp型特性を示す、新しい種類の希釈磁性半導体ナノワイヤが得られる。本発明のp型DMSGaN:Mnナノワイヤは、希釈磁性半導体の強磁性の発生に関する基礎研究の新たな機会を提供する。そのようなナノワイヤの利用性によって、ナノメートルスケールのスピントロニックおよび光電子装置、例えばLED、トランジスタおよび超高密度不揮発性半導体メモリの実現に対する新たな機会が生まれる。
【0054】
前述の説明には、多くのことが含まれているが、これらは、単に本発明の好適実施例のいくつかを説明するためのものであり、これらを本発明の範囲を限定するものと解してはならない。本発明の範囲は、当業者には明らかな他の実施例も包含すること、および本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されることは明らかである。特に説明がない限り、単数形で示された素子は、「一つおよび一つのみ」であることを意味するのではなく、「ひとつまたはそれ以上」であることを意味する。前述の好適実施例の素子に対する、当業者にとって明らかな全ての構造上、化学的および機能上の等価物は、参照文献によって明確に本願に取り入れられており、本願の請求項によって網羅されている。また、本願の請求項に含まれるのであれば、装置または方法が、必ずしも本発明によって解決される課題の各々および全てを取り扱う必要はない。さらに、本願の素子、部品、または方法ステップは、素子、部品、または方法ステップが請求項に明確に記載されているかどうかに関わらず、一般に提供することを意図してはいない。請求項に記載されていない素子は、その素子が「ミーンズクレーム」を用いて表現されたものではない限り、米国特許法第112条第6パラグラフの下で解釈される。
【0055】
本願は、2004年1月14日に出願され、本願の参照文献として取り入れられている、出願番号60/536569の仮出願の優先権を主張するものである。
【0056】
本発明は、エネルギー省によって認可された認可番号DE−FG03−02ER46021号、および国立科学基金によって認可された認可番号DMR−0092086号により、政府支援の下で行われたものである。政府は、本発明についてある権利を有する。
【0057】
本願の資料の一部は、米国著作権法および他国の下で著作権の保護を受けている。著作権者は、米国特許商標庁においてファイルおよび記録を公的に利用することができるように、本願の資料または開示された特許資料の他人によるファクシミリによる複製については許容するが、それ以外の全ての権利は、放棄されていない。著作権者は、これらのいずれの権利も放棄しておらず、本特許出願資料は、秘密性を維持しており、米国特許法に準拠した権利を含む。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本発明による二元系半導体組成ナノワイヤ用の、希釈磁性半導体加工組立体の一例を示す図である。
【図1B】本発明による元素系半導体組成ナノワイヤ用の、希釈磁性半導体加工組立体の一例を示す図である。
【図2A】本発明により、基板上に成長させたGaN:MnナノワイヤのSEM像である。
【図2B】本発明によって成長させたGaN:MnナノワイヤのHRTEM像である。
【図2C】本発明によって成長させたGaN:MnナノワイヤのEDSスペクトルである。
【図2D】標準的照合サンプル:MnO、Mn2O3、MnO2から得られたスペクトルと重ね合わせて示した、本発明によって成長させたGaN:MnナノワイヤのEELSスペクトル図である。
【図3】本発明によるGaN:Mnナノワイヤからの、300Kで記録されたPLスペクトルを示す図である。
【図4A】SQUID磁気測定を利用した、磁気抵抗測定装置の概略図である。
【図4B】ナノワイヤ試験基板のSEM像である。
【図4C】いくつかの異なる温度におけるGaN:Mnナノワイヤの磁気抵抗のグラフである。
【図5A】2つのオーム接続部Ti/Au(1および3)と、2つの強磁性Co電極(2および4)とを有するGaN:MnナノワイヤのSEM像である。
【図5B】4.2Kにおける、バイアス電圧が0.63および2.0mVでの図5Aの電極2と3の間の磁場の関数としての、抵抗変化を示すグラフである。
【図6A】5Kおよび300Kで測定された、本発明によるGaN:Mnナノワイヤの磁化ループを示す図である。
【図6B】図6Aの一部の拡大図である。
【図6C】磁化の温度依存性を示す図である。
【図7A】5Kおよび300Kで測定された、Ga:Mnナノワイヤの磁化ループを示す図である
【図7B】図7Aの一部の拡大図である。
【図7C】磁化の温度依存性を示す図である。
【図8A】Ga:Mnナノワイヤの電流電圧特性のグラフである。
【図8B】図8Aのグラフの一部の拡大図である。
【図9A】本発明によるGaN:MnナノワイヤLED構造の概略図である。
【図9B】TaOx膜上でのプローブ接触によって、測定を実施するための装置構成図である。
【図9C】ナノLEDからの発光画像である。
【図10A】基板上の疑似垂直ナノワイヤ配列のSEM像である。
【図10B】n−SiC基板/GaN:Mnナノワイヤ接合のI−V挙動を示すグラフである。
【図10C】18Vの順方向バイアスでのナノワイヤLEDからのエレクトロルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図11A】基板上に成長させた本発明によるGaN:MnナノワイヤのSEM像である。
【図11B】本発明によるGaN:MnナノワイヤのHRTEM像である。
【図11C】本発明によるGaN:MnナノワイヤのHRTEM像である。
【図11D】本発明によるGaN:MnナノワイヤのEDSスペクトルのグラフである。
【図12A】本発明によるGaN:Mnナノワイヤの、5Kおよび300Kで測定された磁化ループを示す図である。
【図12B】本発明によるGaN:Mnナノワイヤの磁化の温度依存性を示す図である。
【図13】ナノワイヤ試験装置のSEM像である。
【図14】標準照合サンプルで得られたスペクトルと合わせてプロットされた、GaN:MnナノワイヤのEELSスペクトルを示すグラフである。
【図15】本発明によるGaN:Mnナノワイヤからの、300Kで記録されたPLスペクトルのグラフである。
【図16A】本発明によるシリコンドープされたGaN/GaN:Mn接合のI−V挙動を示す図である。
【図16B】スケールバーが5μmの、交差したn−GaN/GaN:Mnナノワイヤ接合のSEM像である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に半導体ナノワイヤに関し、特に希釈磁性半導体ナノワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の情報技術は、2つの独立のプロセスに依存している:電荷に基づく情報処理(マイクロプロセッサ)およびスピンに基づくデータ記憶である。一つの半導体媒体内で電荷とスピンの両方を同時に操作する技術は、スピントロニクスの領域につながる。多くのものの中で、希釈磁性半導体(DMS)は、そのような適用を代替するものとして有望視されている。理論的な研究では、遷移金属ドープGaNは、室温よりも高い強磁性遷移温度を有し、多くの提案されたスピントロニック用途に対して、有利であることが示されている。これらの薄膜の磁気不純物相分離の可能性については、活発な論争が続いているものの、そのような仮説を検証するため、既に多くの実験が実施されている。また、非平衡分子ビームエピタキシャル成長処理法によって生じたこれらの膜の固有の欠陥は、これらの材料の強磁性の基本的な理解を妨げている。
【0003】
一方、電子装置の小型化は、産業製品および学術的研究の両方において、恒久的なトレンドとなっている。多くの材料の中で、ナノチューブおよびナノワイヤは、サブ100nm以下の電子装置のブロックを構成することが可能な材料として、活発に研究されている。従って、低次元強磁性半導体ナノ構造の制御加工および根本的な理解は、半導体系スピントロニック装置およびスピン系量子計算方式を開発する上で重要である。
【0004】
DMS量子井戸およびドットの理解は進展しているが、DMS量子ワイヤの研究は、未だ初期段階である。次元および寸法は、システムの各種特性の決定に重要な影響を及ぼすことが知られている。この点から、nmスケールの一次元DMSシステム、すなわちDMSナノワイヤは、興味深い電磁気特性を示すことが期待され、いくつかの理由からスピントロニック装置を実現する上で、良好な代替材となり得ることが期待されている。第1に、ナノワイヤは、それ自身がナノスケールの電子および光電子装置用の、魅力的な構成ブロックである。第2に、磁気ナノワイヤは、スピンフィルタとして機能し、スピン分極キャリア電流を供給することができ、大きな磁気異方性エネルギーを有する。第3に、キャリアは、ナノワイヤの半径方向に閉じ込められるため、高キャリア濃度、およびスピン分極キャリアの有効な注入が可能となる。
【0005】
しかしながらDMSナノワイヤの合成は、難しい課題であり、最近、エピタキシャルナノテープ形状のものが得られたに過ぎない。DMSナノワイヤの重要な調査を実施するためには、理想的なワイヤは、単結晶である必要があり、遷移金属ドーパントは、相分離が生じないように、均一に分散させる必要がある。合成上の課題は、ナノ結晶のドーピング自身が難しいことに加えて、遷移金属の半導体の平衡溶解度が制限されていることである。分子ビームエピタキシー(MBE)およびインプランテーションのような処理プロセスでは、GaN系のようなIII−V族半導体からのDMSの調製に、限界があることが示されている。
【非特許文献1】サーマ(S.D.Sarma)、強磁性半導体:スピントロニックスにおける巨大外観、ネーチャーマテリアル(Nature Mater.)、2巻、p292−294、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の問題を解決する半導体ナノワイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の技術的な課題は、本発明によって解決される。本発明では、単結晶GaN:Mnナノワイヤは、特殊な塩化物系化学気相搬送処理法によって、制御された状態で製作加工される。特に、単結晶希釈磁性半導体ナノワイヤGa1−xMnxN(x=0.01〜0.09)が合成される。これらのナノワイヤは、約10nmから100nmの直径を有し、長さは、最大10μmで、強磁性を示し、キューリー点は300Kを超え、250Kまで磁気抵抗(MR)を示す。単一のナノワイヤトランジスタからのスピン依存電子輸送は、強磁性ナノワイヤが均一であることを示している。ナノワイヤ系発光ダイオード構造からのゲート依存コンダクタンスおよびエレクトロルミネッセンス(EL)は、これらがp型であることを明確に示しており、この結果は、ホール介在強磁性の理論と一致する。
【0008】
本発明の態様では、
希釈磁性半導体(DMS)ナノワイヤを製作する方法であって、
触媒がコーティングされた基板を提供するステップと、
前記基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露するステップと、
を有し、
前記ドーパント系溶液は、ドーパントと、磁性半導体ナノワイヤの合成を助長する塩化物系蒸気搬送体とを含むことを特徴とする方法が提供される。半導体系溶液は、従来から知られている、多数の異なる二元系半導体(例えば、GaN、GaAs、GaP、ZnO、InAs、InP、BeO、CdS、HgS等)のいずれか、または元素系半導体(例えばSi、Ge)を有する。通常ドーパントは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr等の遷移金属を有する。
【0009】
本発明のある態様では、アンモニア(NH3)の流束下で、ガリウム(Ga)およびマンガン塩化物(MnCl2)が基板上に搬送され、ナノワイヤが合成される。
【0010】
別の態様では、ナノワイヤの組成は、塩化物系蒸気の量を制御することにより制御される。特に、塩化物系蒸気の量を制御することによって、ナノワイヤ中のマンガン濃度が制御されても良い。
【0011】
好適実施例では、基板にガリウム、マンガンおよび塩化物系蒸気が提供される前に、基板は、800℃から1000℃の温度範囲に加熱される。
【0012】
別の実施例では、ガリウム半導体が、塩化物系蒸気を介して搬送される。搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3から、
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成される。
【0013】
単結晶GaN:Mnナノワイヤは、相分離が生じないようにし、さらにマンガンドーパントがナノワイヤ上に均一に分散するようにして、形成されることが好ましい。
【0014】
一般に、ナノワイヤは、キューリー点が300Kを超える強磁性体であり、250Kの温度まで磁気抵抗を示す。
【0015】
好適実施例では、触媒がコーティングされた基板は、ニッケルコーティングされた炭化珪素(SiC)基板を有する。あるいは、基板は、ニッケルコーティングされたサファイア基板を有する。
【0016】
本発明の別の実施例では、触媒がコーティングされた基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露することにより、希釈磁性半導体(DMS)ナノワイヤが形成される。ドーパント系溶液は、ドーパントと、塩化物系蒸気キャリアとを有する。好適実施例では、DMSナノワイヤは、GaN:Mnナノワイヤを有する。通常の場合、ナノワイヤは、全長が約10nmから100nmの範囲にある。GaN:Mnナノワイヤは、相分離が生じない単結晶であり、250Kまで磁気抵抗を示しても良い。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、希釈磁気半導体(DMS)ナノワイヤを合成する方法は、
基板に触媒をコーティングするステップと、
800℃から1000℃の温度に前記基板を加熱するステップと、
前記基板の少なくとも一部に、半導体およびドーパントを搬送するステップと、
を有する。ドーパントは、塩化物系蒸気を介して基板に搬送され、磁気半導体ナノワイヤの合成が助長される。ある態様では、半導体およびドーパントは、いずれも気体溶液である。
【0018】
本発明のさらに別の態様では、GaN:Mnナノワイヤを製作する方法が提供され、この方法は、ニッケルメッキ基板を提供するステップと、塩化物系蒸気を介して、ガリウムおよびマンガン金属を基板に搬送するステップとを有し、GaN:Mnナノワイヤが形成される。GaN:Mnナノワイヤは、強磁性であり、磁気抵抗を示す。本発明の好適態様では、ガリウム塩化物(GaCl3)およびマンガン塩化物(MnCl2)が、アンモニア(NH3)の流束下で、基板上に搬送され、ナノワイヤが形成される。MnCl2は、ドーピング前駆体として作用するとともに、GaN:Mnナノワイヤを形成する上で、熱力学的に好ましい搬送剤となる。
【0019】
本発明の他の態様は、明細書の以下の部分によって明らかになろう。詳細な記載は、本発明の好適実施例を十分に開示するためのものであり、本発明は、これに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、添付図面を参照することにより、十分に理解することができる。図面は、一例を示すためにのみ使用される。
【0021】
本発明を説明するための図面を参照して、図1Aから図16Bに示した機器について説明する。ここに示した基本概念から逸脱しないで、機器の構成および細部の部品を変更しても良いこと、また本方法において、特定のステップおよび順番を変更しても良いことは明らかであろう。
(実施例1)
既存の遷移金属ドープDMSが、非平衡MBE処理プロセス(第2相の形成を抑制するため、低温で加工される)によって調製されるのに対して、本発明の希釈磁性半導体ナノワイヤは、高温の平衡蒸気搬送処理プロセスによって製作される。塩化物搬送体(例えばHCl)の存在により、本発明の処理プロセスを実施することが可能となる。GaN:Mnナノワイヤの場合、搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3によって、以下の反応により、GaN:Mn結晶相が形成される:
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
この反応では、GaCl3およびMnCl2は、単一のGaN:Mn結晶相の形成にとって、熱力学的に好ましい搬送剤として作用する。重要なことは、この処理プロセスでは、大部分のGaN:Mn薄膜研究において共通の問題であった相分離が生じず、粒界が存在しない単結晶GaN:Mnナノワイヤが形成されることである。
【0022】
図1Aには、本発明による二元系半導体組成ナノワイヤを合成するための、希釈磁性半導体加工組立体20の一例を示す。基板22は、最初に、ニッケル、金、コバルトまたは鉄等の触媒でコーティングされる。基板22は、サファイア(絶縁性の場合、導電性の場合は炭化珪素(SiC))を有しても良く、あるいは従来と同様の材料を有しても良い。
【0023】
触媒(ニッケル)の成膜後、基板22は、成長チャンバ室24内に設置され、800℃から1000℃に加熱される。特に温度は、800℃と900℃の間であることが好ましい。通常の場合、ナノワイヤの成長32は、800℃から1000℃の温度範囲で生じる。二元系半導体の場合、気体溶液Gが、第1の半導体源26、第2の半導体源28およびドーパント源30を介してチャンバ室24に導入され、循環される。ドーパント溶液は、HCl29等の塩化物系蒸気によって基板22に搬送される。従って、ドーパントの濃度およびナノワイヤ32の組成は、HCl29のガス導入量によって制御される。必要であれば、ドーパントは、Mn、Ni、Co、Fe等の遷移金属を有しても良い。
【0024】
半導体系溶液は、広く知られている多くの二元系半導体(例えば、GaN、GaAs、GaP、ZnO、InAs、BeO、CdS、HgS等)のうちのいずれかを含んでも良い。
例えば、GaAsナノワイヤの場合、第1の半導体源26は、水素化砒素(ArH3)のような砒素(As)系ガスを含む。同様に、第2の半導体源28は、ガリウム(Ga)を有する。このガリウムは、HCl源29によって供給される塩化物系搬送体を有しても良く、この場合、ガリウム塩化物(GaCl3)が形成される。
【0025】
GaN:Mnナノワイヤの場合、ガリウム塩化物(GaCl3)およびマンガン塩化物(MnCl2)は、アンモニア(NH3)(窒素を提供するため)の流束下で、800℃の基板に搬送される。ナノワイヤ中のMn濃度を制御するため、GaCl3およびMnCl2は、金属Ga、Mnおよび塩化水素(HCl)ガスによって搬送される。温度および蒸気導入量は、所望のナノワイヤが成長するまで継続され、ナノワイヤの長さにもよるが、通常は、数分乃至1時間継続される。
【0026】
図1Bには、本発明による元素系半導体組成ナノワイヤを合成するための、一例としての希釈磁性半導体加工組立体21を示す。元素系半導体(例えばSi、Ge)は、元素系半導体源27を介してチャンバ室24内に供給される。HCl源29を用いて、ドーパント源30を介してドーパントが搬送される。必要であれば、HCl29は、元素系半導体、例えば四塩化珪素(SiCl4)の搬送に使用しても良い。
【0027】
図2Aには、基板上に成長したナノワイヤ31の通常の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。これらのナノワイヤの全長および直径は、それぞれ、10〜100nmおよび数十μmである。図2Bには、このナノワイヤ32の高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)像を示す。図2B のHRTEM像から、欠陥や二次相介在物のない、完全な単結晶が観察される。ワイヤに記録された、ウルツ鉱GaN構造に対応する選択領域電子回折(SAED)パターン34から、これらのナノワイヤが単相であることが確認された。XRDおよびTEM分析において、x=0〜0.09では、Ga1−xMnxNナノワイヤの構造特性の差異は、認められなかった。
【0028】
図2Cには、Ga0.93Mn0.07Nナノワイヤのエネルギー分散X線分光分析(EDS)によって得られた、典型的なMn濃度を示す。10本のナノワイヤから測定されたMnの平均濃度は、7%であり、Mnドーパントは、ナノワイヤ格子内に均一に分散されていることがわかった。
【0029】
図2Dには、GaN内のMnドーパントの価数状態を分析するための電子エネルギー損失分光分析(EELS)のグラフを示す。図において、結果は、MnO、Mn2O3およびMnO2の既知のカチオン酸化物状態の標準照合試料で得られるスペクトルと合わせて、示されている。EELSは、材料組成の微小分析に広く使用されており、遷移金属のEELSスペクトルは、金属の酸化状態に対して高い感度を示すことが知られている。図2Dに示すL3線とL2線の形状および相対強度比の比較から、Mnドーパントは、GaNマトリクス内にMn2+カチオン(d5電子配置を有する)として存在している。そのため、Mn2+は、高温で製作されたGaN:Mnナノワイヤ32内に、イオン化アクセプタとして存在する。
【0030】
さらにこの結果を、GaN:Mnナノワイヤ32の光ルミネッセンス(PL)の研究によって、検証した。図3には、GaN:MnナノワイヤのPLスペクトルのグラフを、300Kでの同様の寸法の純粋なGaNナノワイヤと比較して示す。励起源には、He−Cd CWレーザを使用した。PLスペクトルは、2.5〜3.2eVにおいて、ブロードな放射を示し、これは、MnがMn2+として存在するとした、過去のGaN:Mn薄膜の研究結果と良い一致を示す。図3において、GaN:Mnナノワイヤスペクトル40は、純粋なGaNナノワイヤのスペクトル42と明確に識別することができる
次に、図4Aに示す超伝導量子干渉装置(SQUID)磁気探知器50を用いて、ナノワイヤの磁気特性を測定した。基板54に設置されたナノワイヤ32を有する試験構造54は、挿入冶具52を用いて、SQUID磁気探知器50に挿入される。
【0031】
図4Bには、MR測定用の4端子試験構造60の一例を示す。試験構造60を製作するため、電子ビーム転写法を用いて、熱酸化Si(100)基板上に座標マークがパターン化され、さらにDCマグネトロンスパッタリングシステムおよび剥離処理によって金属成膜(Ti/Au、20/40nm)が実施される。ナノワイヤ溶液は、予めパターン化されたSi基板上に滴下され、パターン化マークに対する各ナノワイヤの位置は、原子間力顕微鏡像によって把握される。4つの電極64は、電子ビーム転写法によって定形され、ナノワイヤ32に接続される。Au層(40nm)が電極64上に設置され、剥離処理によって最終的な試験構造が製作される。
【0032】
MR測定は、温度範囲2〜300Kで、9テスラまでの外部磁場を印加して、PPMS(物理特性測定システム)を用いて実施した。図4Cには、4端子試験構造60での測定のため、本発明により製作された個々のナノワイヤ32の等温MRを示す。図4Cから、GaN:Mnナノワイヤは、250Kまでは、負の磁気抵抗(MR)を示す。2Kおよび250Kにおいて、9Tでは、負のMR(印加磁場の増大により減少する抵抗)は、それぞれ1.4%および0.4%である。MRは、室温付近で消滅する。このタイプの負のMRは、(Ga,Mn)Asおよび(Ga,Mn)Nのエピタキシャル薄膜においても観察されている。そのような負のMRは、印加磁場によるスピンの整列によって散乱が減少することで説明できる。一方、同様の温度および磁場での純粋なGaNナノワイヤのMR測定では、磁気抵抗の兆候は認められない。
【0033】
さらにナノワイヤの強磁性は、強磁性電極を用いた個々のナノワイヤのスピン依存電子輸送測定によって確認することができる。図5Aには、スピン依存輸送の研究に使用される、ナノワイヤ系トンネル磁気抵抗試験構造70のSEM像を示す。本発明の方法によって製作された個々のナノワイヤ32は、酸化したSi基板72上に設置される。ナノワイヤ32は、強磁性Co電極74(2および4)と、Ti/Au電極76(1および3)を横断して伸張している。
【0034】
電極リード線のパターンは、選択基板上の電子ビーム転写によって形成される。金属層(Ti/Au、20/50nm)が、熱蒸着によって、連続的に接触領域に設置される。ナノワイヤとTi/Au電極の間のオーム接続は、適正な熱処理によって達成される。オーム接続が形成された後、熱蒸着によって、予めパターン化された基板上に強磁性Co金属が設置され、磁気トンネルバリア接合が形成される。
【0035】
図5Bには、4.2Kにおいて、0.63mV(80)および2mV(82)の2つの異なるバイアス電圧を用いて、GaN:Mnナノワイヤを通る強磁性Co電極(2)とTi/Au電極(3)の間で測定された抵抗を示す。この結果は、トンネル磁気抵抗装置において良く観察されるヒステリシス挙動を明確に示している。4.2KでのI−V特性は、非線形挙動を示しており、これは、電極とナノワイヤの間にトンネルバリアが形成されていることを示している。直線領域での通常の抵抗は、4.2Kで約440kΩであり、0.6mVのバイアス電圧での抵抗変化ΔRは、約9kΩである。この場合、MR変化はΔR/R=1.3%となる。このヒステリシスMRは、約20Kまで観測される。2つの異なる金属接触を有するナノワイヤの抵抗は、以下の式で表される
【0036】
【数1】
ここでRCoおよびRNWは、それぞれCo電極およびナノワイヤの抵抗であり、RCo/NWおよびRNW/Tiは、Co/ナノワイヤおよびTi/ナノワイヤ接続部のトンネル抵抗である。これらの抵抗の中で、RCo/NW 、RCoおよびRNWは、ヒステリシスMRの基点である。ただし、RCoは、100Ω以下の抵抗であり、MR変化の大きさ(数十kΩ)を説明するには不十分である。また、非磁性のTiをナノワイヤに接続した実験から、RNW自身は、ヒステリシスMRには寄与しないことが示されている。そのため、Coとナノワイヤの間の磁気接続からの寄与(RCo/NW)が、ヒステリシスMRの観察された原因であると考えられる。
【0037】
図6Aおよび図6Aの一部の拡大図を示す6Bには、図4AのSQUID装置の下で検出された、Ga0.93Mn0.07Nナノワイヤ試料の磁化ループを示す。磁化ヒステリシスおよび残留磁気が、5Kおよび300Kの両方において明確に認められる。これは、GaN:Mnナノワイヤが、室温に置いても強磁性であることを示している。またこれは、図6Cに示すように、0.02および0.5Tで得られた磁化データの温度依存性を反映している。
【0038】
本発明により製作されたナノワイヤの、5Kおよび300Kで測定された磁化ループを、図7Aおよび7Bに示すが、ナノワイヤの王水処理によっても、磁気特性に変化は見られない。キューリー点(Tc)は、300Kを超えることが予想される。GaN:Mn相において観測された高いTcは、ホール介在強磁性の理論モデルで説明することが可能である。しかしながら、そのような高いTcには、高いホールおよびMn濃度(例えば、それぞれ3.5×1020cm−3および5%)が必要である。
【0039】
キャリアの種類および濃度を定めるため、本発明により製作したGaN:Mnナノワイヤを用いて、ナノワイヤ電界効果型トランジスタ(FET)構造を調製した。ナノワイヤは、100nm厚さの熱成長SiO2層を有するシリコンウェハを有する試験基板上に設置した。GaN:Mnナノワイヤを含むイソプロピルアルコール(IPA)溶液を調製し、これを予めパターン化されたSi基板上に、滴下して定形した。乾燥後、ナノワイヤの位置を同定し、写真転写法でソースおよびドレイン電極を定形し、ナノワイヤ電界効果型トランジスタ(FET)構造を得た。熱蒸着によって金属電極(Ni/Au、20/50nm)を設置する前に、緩衝HF(10:1)中でナノワイヤを処理した。ナノワイヤと電極間のオーム接続部は、適当な熱処理プロセスによって形成した。
【0040】
次に、図8Aおよび8Bに示すように、ナノワイヤ系FET構造からのバックゲート電圧が異なる場合の電流−電圧(I−V)曲線を測定した。直線的なI−V曲線から、Ni/Au電極を有する装置の金属電気接続部は、オーミック的である。弱いゲート効果、すなわちゲート電圧の正の増大とともに導電率が減少することが観察された。これは、試験ナノワイヤがp型のキャリア特性であることを意味している。文献調査の結果では、多くの過去の電気的な測定では、GaN:Mn薄膜は、n型導電挙動を示すことが示されている。これは、固有欠陥のため、伝導帯端部でのドナー状態が高密度であることに起因する。これらナノワイヤは、I−V測定では、室温でのVg=0Vにおいて、1.1×10−2Ω・cmの低い抵抗率を示した。この低い抵抗率および弱いゲート効果は、本発明のナノワイヤ内で高いキャリア濃度が得られていることを示唆している。移動度は、
【0041】
【数2】
で表され、ここで、μはキャリア移動度、Cは容量、Lはソースとドレイン間の距離である。ナノワイヤの容量は、
【0042】
【数3】
によって表され、ここで、εは誘電率、hはシリコン酸化層の厚さ、rは、ナノワイヤの直径である。キャリア移動度は、70cm2/V・sと見積もられる。移動度は、バルクおよび/または薄膜状のMn:GaNの値と比べると小さく、これは、一次元ナノスケール閉じ込めによる高いキャリア濃度によって、またはナノワイヤのナノスケール径での散乱の増大によって説明できる。高ドープ、キャリア閉じ込めナノワイヤのキャリア密度を算出することは難しい。バックゲート電圧によって、キャリアの十分な欠乏状態を得ることが難しいためである。実際には、Vgが−10乃至10Vの範囲での不完全な欠乏が観察される。単純な外挿によれば、キャリア濃度として、約2×1019cm−3が得られる。この値は、ドープされたGaN薄膜の値よりも大きいが、室温での理論モデルから得られる値(例えば、3.5×1020cm−3)よりは小さい。
【0043】
GaN:Mn薄膜で実施された過去の実験結果は、理論モデルによって予想されるホール介在強磁性を支持していない。しかしながら、試験データでは、ホールが電荷輸送と強磁性作用の両方に寄与することが示唆されている。すなわち、本発明の単結晶GaN:Mnナノワイヤでは、GaN:Mnは、ホール介在室温強磁性のツェナーモデルを支持する。ワイヤの完全単結晶では、構造欠陥および二次相(通常、薄膜中に存在する)の影響を排除されるため、この材料に固有の強磁性が観測される。
【0044】
DMSナノワイヤをベースとする新しいスピントロニック装置の一例として、本発明のナノワイヤは、GaN:Mnナノワイヤ系発光ダイオード(LED)構造を形成するように構成される。図9Aには、GaN:MnナノワイヤLEDの一例の概略図を示す。疑似垂直整列GaN:Mnナノワイヤ102は、Ni触媒によってn−SiC(0001)基板上に成長する。図10Aには、基板上の疑似垂直ナノワイヤ配列のSEM像を示す。ナノワイヤ102上にNi/Auバイレイヤ108を蒸着させ、および基板104上にNiバイレイヤ106を蒸着させることにより、オーム接続が得られ、その後、これらは急冷される。基板104の金属化の後、ナノワイヤ108が除去される領域に、シャドーマスクを介して、微小領域に厚いTaOx膜110が成膜される。次にNiおよびAuが蒸着され、ナノワイヤ102およびTaOx絶縁層110の上に連続接続層が得られる。実験は、TaOx絶縁膜を電源114に接続するプローブ112を用いて実施される。図9Cには、LED100からの発光115を示す。
【0045】
図10Bに示すように、ナノワイヤLED構造の輸送測定結果からは、p−nダイオードの整流特性が明確に認められる。特に、ソースドレインバイアスが−8Vまでの逆バイアスでは、電流はほとんど観測されず、約3Vの順方向バイアスにおいて、鋭い電流上昇が認められる。ナノワイヤおよび基板で記録されたI−Vデータは、対称なため、整流化は、ナノワイヤ−金属接続ではなく、ナノワイヤと基板の間のp−n接合によるものである。これらの接合のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトル測定結果を図10Cに示すが、ナノワイヤの光ルミネッセンスに対応する430nmを中心とする主放射ピーク120が観察されている。さらに図10Cの結果は、本発明のGaN:Mnナノワイヤがp型特性であること明確に示している。
(実施例2)
本発明では、アンモニア(NH3)流束下で、ガリウムおよびマンガン塩化物(MnCl2)の搬送によって、900℃のニッケルコーティングされたサファイア基板に、GaN:Mnナノワイヤ140を成長させた。図11Aには、基板に成長させたナノワイヤ150の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。これらのナノワイヤの全長および直径は、それぞれ10〜100nmおよび数十μmである。図11Bおよび11Cには、個々のナノワイヤ150の高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)像を示す。またX線回折パターン152は、これらのナノワイヤが単相であることを示している。
【0046】
図11Dには、ナノワイヤのエネルギー分散X線分光分析(EDS)によって得られたMn濃度を示す。10本のナノワイヤで測定されたMn濃度の平均は、7%であり、Mnドーパントは、ナノワイヤ格子内に均一に分散していることがわかった。
【0047】
本発明のGaN:Mnナノワイヤは、高温での平衡蒸気搬送処理法によって調製した。搬送されるGaとMnCl2、およびNH3によって、以下の反応により、GaN:Mn結晶相が形成される:
Ga + xMnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 2xHCl + (3−2x)/2 H2
この反応において、MnCl2は、GaN:Mn相を形成する上で、熱力学的に好ましい搬送剤として機能用するとともに、ドーピングの前駆体として機能する。
【0048】
ナノワイヤの磁気特性は、図4Aに示すSQUID磁気探知器を用いて測定した。5Kおよび300Kの両方において、磁化ヒステリシス挙動および残留磁場が明確に観測された。0.02テスラ(T)および0.5Tでの磁化の温度依存性については、図12Bに示すように、10K以下では、強磁性および常磁性相の共存のため、磁化が増大した。また、キューリー点Tcは、300Kを超えると予想される。
【0049】
図13には、個々のナノワイヤ150の等温磁気抵抗(MR)の試験装置を示す。MRを測定するため、ナノワイヤ150は、試験基板154上の2つの電極156を跨ぐように設置される。
【0050】
図14では、GaN内のMnドーパントの価数状態をELLS分析法によって分析し、既知のカチオン酸化状態を有する標準試料(MnO、Mn2O3およびMnO2)で得られたスペクトルと比較した。この図においても、L3線とL2線の形状および相対強度の比較から、Mnドーパントは、GaNマトリクス内で、Mn2+カチオンとして存在していることが示された。同様に図15に示すPLスペクトルは、2.5〜3.2eVにおいて、ブロードな放射が生じることを示している。
【0051】
これらのGaN:Mnナノワイヤ内のキャリアタイプを調べるため、ナノワイヤ系FET構造を用いて、ナノワイヤの導電性を測定した。装置は、酸化させたシリコン基板の表面において、エタノール中にナノワイヤのサスペンションを分散させることにより調製した。下地のシリコンは、広いバックゲートとして使用した。ソースおよびドレイン電極は、集束イオンビームによる白金の成膜によって作製した。ゲート依存輸送の研究では、正のゲート電圧の減少によって、ワイヤの導電性が僅かに増大するため、キャリアタイプは、p型キャリアであることがわかった。
【0052】
図16Aおよび16BのGaN均一接続構造160は、シリコンドープn型GaNナノワイヤ162で構成される。GaNナノワイヤ均一接続は、約3.4Vの開始電圧で、整流挙動を示した。これもまた、MnドープGaNナノワイヤがp型特性であることを示している。これは、ホールが電荷輸送と強磁性相互作用の両方に寄与していることを示している。本発明のGaN:Mnナノワイヤの結果は、GaN:Mnが、ホール介在室温強磁性のツェナーモデルに一致することを支持している。
【0053】
本発明による単結晶GaN:Mnナノワイヤを調製する塩化物系搬送法では、一次元ナノ構造のGaNマトリクス内への遷移金属イオンのドーピングが容易となる。この合成によって、キューリー点が室温を超え、室温近傍で磁気抵抗を示し、さらにスピン依存輸送およびp型特性を示す、新しい種類の希釈磁性半導体ナノワイヤが得られる。本発明のp型DMSGaN:Mnナノワイヤは、希釈磁性半導体の強磁性の発生に関する基礎研究の新たな機会を提供する。そのようなナノワイヤの利用性によって、ナノメートルスケールのスピントロニックおよび光電子装置、例えばLED、トランジスタおよび超高密度不揮発性半導体メモリの実現に対する新たな機会が生まれる。
【0054】
前述の説明には、多くのことが含まれているが、これらは、単に本発明の好適実施例のいくつかを説明するためのものであり、これらを本発明の範囲を限定するものと解してはならない。本発明の範囲は、当業者には明らかな他の実施例も包含すること、および本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されることは明らかである。特に説明がない限り、単数形で示された素子は、「一つおよび一つのみ」であることを意味するのではなく、「ひとつまたはそれ以上」であることを意味する。前述の好適実施例の素子に対する、当業者にとって明らかな全ての構造上、化学的および機能上の等価物は、参照文献によって明確に本願に取り入れられており、本願の請求項によって網羅されている。また、本願の請求項に含まれるのであれば、装置または方法が、必ずしも本発明によって解決される課題の各々および全てを取り扱う必要はない。さらに、本願の素子、部品、または方法ステップは、素子、部品、または方法ステップが請求項に明確に記載されているかどうかに関わらず、一般に提供することを意図してはいない。請求項に記載されていない素子は、その素子が「ミーンズクレーム」を用いて表現されたものではない限り、米国特許法第112条第6パラグラフの下で解釈される。
【0055】
本願は、2004年1月14日に出願され、本願の参照文献として取り入れられている、出願番号60/536569の仮出願の優先権を主張するものである。
【0056】
本発明は、エネルギー省によって認可された認可番号DE−FG03−02ER46021号、および国立科学基金によって認可された認可番号DMR−0092086号により、政府支援の下で行われたものである。政府は、本発明についてある権利を有する。
【0057】
本願の資料の一部は、米国著作権法および他国の下で著作権の保護を受けている。著作権者は、米国特許商標庁においてファイルおよび記録を公的に利用することができるように、本願の資料または開示された特許資料の他人によるファクシミリによる複製については許容するが、それ以外の全ての権利は、放棄されていない。著作権者は、これらのいずれの権利も放棄しておらず、本特許出願資料は、秘密性を維持しており、米国特許法に準拠した権利を含む。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本発明による二元系半導体組成ナノワイヤ用の、希釈磁性半導体加工組立体の一例を示す図である。
【図1B】本発明による元素系半導体組成ナノワイヤ用の、希釈磁性半導体加工組立体の一例を示す図である。
【図2A】本発明により、基板上に成長させたGaN:MnナノワイヤのSEM像である。
【図2B】本発明によって成長させたGaN:MnナノワイヤのHRTEM像である。
【図2C】本発明によって成長させたGaN:MnナノワイヤのEDSスペクトルである。
【図2D】標準的照合サンプル:MnO、Mn2O3、MnO2から得られたスペクトルと重ね合わせて示した、本発明によって成長させたGaN:MnナノワイヤのEELSスペクトル図である。
【図3】本発明によるGaN:Mnナノワイヤからの、300Kで記録されたPLスペクトルを示す図である。
【図4A】SQUID磁気測定を利用した、磁気抵抗測定装置の概略図である。
【図4B】ナノワイヤ試験基板のSEM像である。
【図4C】いくつかの異なる温度におけるGaN:Mnナノワイヤの磁気抵抗のグラフである。
【図5A】2つのオーム接続部Ti/Au(1および3)と、2つの強磁性Co電極(2および4)とを有するGaN:MnナノワイヤのSEM像である。
【図5B】4.2Kにおける、バイアス電圧が0.63および2.0mVでの図5Aの電極2と3の間の磁場の関数としての、抵抗変化を示すグラフである。
【図6A】5Kおよび300Kで測定された、本発明によるGaN:Mnナノワイヤの磁化ループを示す図である。
【図6B】図6Aの一部の拡大図である。
【図6C】磁化の温度依存性を示す図である。
【図7A】5Kおよび300Kで測定された、Ga:Mnナノワイヤの磁化ループを示す図である
【図7B】図7Aの一部の拡大図である。
【図7C】磁化の温度依存性を示す図である。
【図8A】Ga:Mnナノワイヤの電流電圧特性のグラフである。
【図8B】図8Aのグラフの一部の拡大図である。
【図9A】本発明によるGaN:MnナノワイヤLED構造の概略図である。
【図9B】TaOx膜上でのプローブ接触によって、測定を実施するための装置構成図である。
【図9C】ナノLEDからの発光画像である。
【図10A】基板上の疑似垂直ナノワイヤ配列のSEM像である。
【図10B】n−SiC基板/GaN:Mnナノワイヤ接合のI−V挙動を示すグラフである。
【図10C】18Vの順方向バイアスでのナノワイヤLEDからのエレクトロルミネッセンススペクトルを示すグラフである。
【図11A】基板上に成長させた本発明によるGaN:MnナノワイヤのSEM像である。
【図11B】本発明によるGaN:MnナノワイヤのHRTEM像である。
【図11C】本発明によるGaN:MnナノワイヤのHRTEM像である。
【図11D】本発明によるGaN:MnナノワイヤのEDSスペクトルのグラフである。
【図12A】本発明によるGaN:Mnナノワイヤの、5Kおよび300Kで測定された磁化ループを示す図である。
【図12B】本発明によるGaN:Mnナノワイヤの磁化の温度依存性を示す図である。
【図13】ナノワイヤ試験装置のSEM像である。
【図14】標準照合サンプルで得られたスペクトルと合わせてプロットされた、GaN:MnナノワイヤのEELSスペクトルを示すグラフである。
【図15】本発明によるGaN:Mnナノワイヤからの、300Kで記録されたPLスペクトルのグラフである。
【図16A】本発明によるシリコンドープされたGaN/GaN:Mn接合のI−V挙動を示す図である。
【図16B】スケールバーが5μmの、交差したn−GaN/GaN:Mnナノワイヤ接合のSEM像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈磁性半導体(DMS)ナノワイヤを製作する方法であって、
触媒がコーティングされた基板を提供するステップと、
前記基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露するステップと、
を有し、
前記ドーパント系溶液は、ドーパントと、磁性半導体ナノワイヤの合成を助長する塩化物系蒸気搬送体とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記半導体系溶液は、二元系半導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体系溶液は、元素系半導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ドーパントは、遷移金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露するステップは、アンモニア(NH3)の流束下で、前記基板上にガリウム(Ga)およびマンガン塩化物(MnCl2)を搬送するステップを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
さらに、塩化物系蒸気の量を制御することにより、ナノワイヤの組成を制御するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記基板をガリウム、マンガンおよび塩化物系蒸気に暴露する前に、800℃から1000℃の温度範囲に前記基板を加熱するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
搬送されるGa、MnCl2およびNH3から、
Ga + xMnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 2xHCl + (3−2x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ガリウムは、塩化物系蒸気搬送体によって、GaCl3として搬送されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3から、
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤは、キューリー点が300K(ケルビン)を超える強磁性体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノワイヤは、250Kの温度まで磁気抵抗を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒がコーティングされた基板を提供するステップは、ニッケルコーティングされた炭化珪素(SiC)基板を提供するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製作された希釈磁気半導体(DMS)ナノワイヤ。
【請求項15】
GaN:Mnナノワイヤを含むことを特徴とする請求項14に記載のDMSナノワイヤ。
【請求項16】
前記ナノワイヤは、約10から100nmの範囲の全長を有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記GaN:Mnナノワイヤは、相分離のない単結晶ナノワイヤを有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
マンガンは、ナノワイヤに均一に分散されていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノワイヤは、250Kまでの温度で磁気抵抗を示すことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
希釈磁気半導体(DMS)ナノワイヤを合成する方法であって、
基板に触媒をコーティングするステップと、
800℃から1000℃の温度に前記基板を加熱するステップと、
前記基板の少なくとも一部に、半導体およびドーパントを搬送するステップと、
を有し、
前記ドーパントは、磁気半導体ナノワイヤの合成を助長する塩化物系蒸気を介して、前記基板に搬送されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記半導体およびドーパントは、気体溶液として搬送されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記半導体は、二元系半導体を有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基板の少なくとも一部に、半導体およびドーパントを搬送するステップは、アンモニア(NH3)の流束下で、前記基板にガリウム(Ga)およびマンガン塩化物(MnCl2)を搬送するステップを有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
搬送されるGa、MnCl2およびNH3から、
Ga + xMnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 2xHCl + (3−2x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ガリウム半導体は、GaCl3として前記基板に搬送されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3から、
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項25に記載の
【請求項27】
相分離のない単結晶GaN:Mnナノワイヤが製作されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基板に触媒をコーティングするステップは、炭化珪素(SiC)基板にニッケルをコーティングするステップを有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項29】
GaN:Mnナノワイヤを製作する方法であって、
触媒メッキ基板を提供するステップと、
ガリウムおよびマンガン金属を前記基板に搬送するステップと、
を有し、
マンガンは、塩化物系蒸気を介して前記基板に搬送され、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする方法。
【請求項30】
前記ガリウムおよびマンガン金属を搬送するステップは、アンモニア(NH3)の流束下で、塩化ガリウム(GaCl3)およびマンガン塩化物(MnCl2)を前記基板に搬送するステップを有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノワイヤは、強磁性体であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノワイヤは、磁気抵抗を示すことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項33】
さらに、塩化物系蒸気の量を制御することにより、ナノワイヤの組成を制御するステップを有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項34】
MnCl2は、GaN:Mnナノワイヤを形成する上で、熱力学的に好ましい搬送剤として機能するとともに、ドーピング前駆体として機能することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
さらに、800℃から1000℃の温度範囲に、前記基板を加熱するステップを有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項1】
希釈磁性半導体(DMS)ナノワイヤを製作する方法であって、
触媒がコーティングされた基板を提供するステップと、
前記基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露するステップと、
を有し、
前記ドーパント系溶液は、ドーパントと、磁性半導体ナノワイヤの合成を助長する塩化物系蒸気搬送体とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記半導体系溶液は、二元系半導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体系溶液は、元素系半導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ドーパントは、遷移金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の少なくとも一部を、半導体系溶液およびドーパント系溶液に暴露するステップは、アンモニア(NH3)の流束下で、前記基板上にガリウム(Ga)およびマンガン塩化物(MnCl2)を搬送するステップを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
さらに、塩化物系蒸気の量を制御することにより、ナノワイヤの組成を制御するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記基板をガリウム、マンガンおよび塩化物系蒸気に暴露する前に、800℃から1000℃の温度範囲に前記基板を加熱するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
搬送されるGa、MnCl2およびNH3から、
Ga + xMnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 2xHCl + (3−2x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ガリウムは、塩化物系蒸気搬送体によって、GaCl3として搬送されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3から、
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤは、キューリー点が300K(ケルビン)を超える強磁性体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノワイヤは、250Kの温度まで磁気抵抗を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒がコーティングされた基板を提供するステップは、ニッケルコーティングされた炭化珪素(SiC)基板を提供するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製作された希釈磁気半導体(DMS)ナノワイヤ。
【請求項15】
GaN:Mnナノワイヤを含むことを特徴とする請求項14に記載のDMSナノワイヤ。
【請求項16】
前記ナノワイヤは、約10から100nmの範囲の全長を有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記GaN:Mnナノワイヤは、相分離のない単結晶ナノワイヤを有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
マンガンは、ナノワイヤに均一に分散されていることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノワイヤは、250Kまでの温度で磁気抵抗を示すことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
希釈磁気半導体(DMS)ナノワイヤを合成する方法であって、
基板に触媒をコーティングするステップと、
800℃から1000℃の温度に前記基板を加熱するステップと、
前記基板の少なくとも一部に、半導体およびドーパントを搬送するステップと、
を有し、
前記ドーパントは、磁気半導体ナノワイヤの合成を助長する塩化物系蒸気を介して、前記基板に搬送されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記半導体およびドーパントは、気体溶液として搬送されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記半導体は、二元系半導体を有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基板の少なくとも一部に、半導体およびドーパントを搬送するステップは、アンモニア(NH3)の流束下で、前記基板にガリウム(Ga)およびマンガン塩化物(MnCl2)を搬送するステップを有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
搬送されるGa、MnCl2およびNH3から、
Ga + xMnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 2xHCl + (3−2x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ガリウム半導体は、GaCl3として前記基板に搬送されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
搬送されるGaCl3、MnCl2およびNH3から、
(1−x) GaCl3 + x MnCl2 + NH3 → MnxGa1−xN + 3/2 HCl + (3−x)/2 H2
の反応によって、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする請求項25に記載の
【請求項27】
相分離のない単結晶GaN:Mnナノワイヤが製作されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基板に触媒をコーティングするステップは、炭化珪素(SiC)基板にニッケルをコーティングするステップを有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項29】
GaN:Mnナノワイヤを製作する方法であって、
触媒メッキ基板を提供するステップと、
ガリウムおよびマンガン金属を前記基板に搬送するステップと、
を有し、
マンガンは、塩化物系蒸気を介して前記基板に搬送され、GaN:Mnナノワイヤが形成されることを特徴とする方法。
【請求項30】
前記ガリウムおよびマンガン金属を搬送するステップは、アンモニア(NH3)の流束下で、塩化ガリウム(GaCl3)およびマンガン塩化物(MnCl2)を前記基板に搬送するステップを有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノワイヤは、強磁性体であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノワイヤは、磁気抵抗を示すことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項33】
さらに、塩化物系蒸気の量を制御することにより、ナノワイヤの組成を制御するステップを有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項34】
MnCl2は、GaN:Mnナノワイヤを形成する上で、熱力学的に好ましい搬送剤として機能するとともに、ドーピング前駆体として機能することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
さらに、800℃から1000℃の温度範囲に、前記基板を加熱するステップを有することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【公表番号】特表2007−526200(P2007−526200A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549665(P2006−549665)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/001415
【国際公開番号】WO2005/067547
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(501325945)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (10)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/001415
【国際公開番号】WO2005/067547
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(501325945)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (10)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]