説明

移動体位置特定装置

【課題】より精度良く移動体の位置を特定することが可能な移動体位置特定装置を提供すること。
【解決手段】衛星からの電波に基づき移動体の位置を演算する第1の演算手段と、移動体の挙動に基づき前記移動体の位置を演算する第2の演算手段と、第1の演算手段による演算結果と第2の演算手段による演算結果のいずれか一方、又は双方に基づいて移動体の位置を特定する位置特定手段と、を備える移動体位置特定装置であって、位置特定手段は、移動体が強電磁界領域内に在るか否かを判定し、移動体が強電磁界領域内に在ると判定した場合には、判定手段により前記移動体が強電磁界領域に在ると判定されなかった場合に比して、第2の演算手段による演算結果を重く用いて前記移動体の位置を特定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星からの電波と移動体の挙動に基づいて移動体の位置を特定する移動体位置特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GNSS(Global Navigation Satellite System)、すなわちGPS(Global Positioning System)、Galileo、Glonass等の衛星を用いた測位システムが自動車や船舶、携帯電話等(以下、移動体と総称する)に広く用いられている。
【0003】
また、移動体の挙動(速度、加速度、ヨーレート等をいう)に基づいて移動体の位置変化を演算して移動体の位置を特定する手法が用いられており、INS(Inertial Navigation System;慣性航法システム)と称されている。
【0004】
そして、上記GNSSにおける衛星からの電波の受信状態が悪い場合に、INSによって演算される移動体の位置変化を用いて代替ないし補完することで、継続的な位置特定を行なうことができる。
【0005】
これに関連し、INSを用いた測位装置についての発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、GPS衛星からの電波が遮断された場合に、INSによる測位結果や、地図を規範とした測位結果を用いるものとしている。
【特許文献1】特開2008−26282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、衛星からの電波を受信する際には、遮蔽物によって遮断されていない場合であっても、種々の要因によって誤差や受信ミスを生じる場合がある。上記特許文献1に記載の装置は、このような課題について考慮がなされていない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、より精度良く移動体の位置を特定することが可能な移動体位置特定装置を提供することを、主たる目的とする。
【0008】
なお、本発明は、建物等によって電波が反射されて伝播経路長にズレを生じる、いわゆるマルチパスの問題を解消することを主眼とするものではないが、マルチパスの問題を解消するための構成と組み合わせることにより、更に精度良く移動体の位置を特定することができるのは勿論である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
衛星からの電波を受信する受信手段と、
該受信手段により受信された衛星からの電波に基づき移動体の位置を演算する第1の演算手段と、
前記移動体の挙動を検出する挙動検出手段と、
該挙動検出手段により検出された移動体の挙動に基づき前記移動体の位置を演算する第2の演算手段と、
前記第1の演算手段による演算結果と前記第2の演算手段による演算結果のいずれか一方、又は双方に基づいて移動体の位置を特定する位置特定手段と、
を備える移動体位置特定装置であって、
前記位置特定手段は、
前記移動体が強電磁界領域内に在るか否かを判定し、
前記移動体が強電磁界領域内に在ると判定した場合には、前記判定手段により前記移動体が強電磁界領域に在ると判定されなかった場合に比して、前記第2の演算手段による演算結果を重く用いて前記移動体の位置を特定することを特徴とする、
移動体位置特定装置である。
【0010】
この本発明の一態様によれば、衛星からの電波に誤差や受信ミスを生じる可能性が高い強電磁界領域内を車両が走行している間は、電波の誤差や受信ミスの影響を受けない第2の演算手段による演算結果を重く用いて車両の位置を特定するため、より精度良く移動体の位置を特定することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、
衛星からの電波を受信する受信手段と、
該受信手段により受信された衛星からの電波に基づき移動体の位置を演算する第1の演算手段と、
前記移動体の挙動を検出する挙動検出手段と、
該挙動検出手段により検出された移動体の挙動に基づき前記移動体の位置を演算する第2の演算手段と、
前記第1の演算手段による演算結果と前記第2の演算手段による演算結果のいずれか一方、又は双方に基づいて移動体の位置を特定する位置特定手段と、
を備える移動体位置特定装置であって、
前記位置特定手段は、
前記移動体が森林・林間領域内に在るか否かを判定し、
前記移動体が森林・林間領域内に在ると判定した場合には、季節に応じて前記受信手段における受信閾値を変更するように前記第1の演算手段に指示することを特徴とする、
移動体位置特定装置である。
【0012】
また、本発明の他の態様は、
衛星からの電波を受信する受信手段と、
該受信手段により受信された衛星からの電波に基づき移動体の位置を演算する第1の演算手段と、
前記移動体の挙動を検出する挙動検出手段と、
該挙動検出手段により検出された移動体の挙動に基づき前記移動体の位置を演算する第2の演算手段と、
前記第1の演算手段による演算結果と前記第2の演算手段による演算結果のいずれか一方、又は双方に基づいて移動体の位置を特定する位置特定手段と、
を備える移動体位置特定装置であって、
前記位置特定手段は、
前記移動体が森林・林間領域内に在るか否かを判定し、
前記移動体が森林・林間領域内に在ると判定した場合には、前記移動体が森林・林間領域内に在ると判定しなかった場合に比して、前記第2の演算手段による演算結果を重く用いて前記移動体の位置を特定することを特徴とする、
移動体位置特定装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より精度良く移動体の位置を特定することが可能な移動体位置特定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0015】
<第1実施例>
以下、本発明の第1実施例に係る移動体位置特定装置1について説明する。移動体位置特定装置1は、いわゆるGNSS(Global Navigation Satellite System)における移動体側装置として機能するものである。移動体位置特定装置1は、車両や船舶、携帯電話等に適用されうるが、以下では車両に搭載されたものとして説明する。また、GNSSを構成する衛星は多種存在するが、移動体位置特定装置1は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波に基づいて移動体の位置を測位演算するものとする。
【0016】
GPS衛星は、航法メッセージ(衛星信号)を地球に向けて常時放送している。航法メッセージには、対応するGPS衛星に関する衛星軌道情報(エフェメリス=自衛星の位置パラメータや、アルマナク=他衛星の位置パラメータを含む)、時計の補正値、電離層の補正係数が含まれている。航法メッセージは、C/Aコードにより拡散されたL1波(周波数:1575.42MHz)に乗せられて、地球に向けて常時放送されている。なお、L1波は、C/Aコードで変調されたSin波とPコード(Precision Code)で変調されたCos波の合成波であり、直交変調されている。C/Aコード及びPコードは、擬似雑音(Pseudo Noise)符号であり、−1と1が不規則に周期的に並ぶ符号列である。
【0017】
なお、現在、24個のGPS衛星が高度約20,000kmの上空で地球を一周しており、各4個のGPS衛星が55度ずつ傾いた6つの地球周回軌道面に均等に配置されている。従って、天空が開けている場所であれば、地球上のどの場所にいても、常時少なくとも5個以上のGPS衛星が観測可能である。
【0018】
図1は、本発明の第1実施例に係る移動体位置特定装置1のシステム構成例である。移動体位置特定装置1は、主要な構成として、GPSアンテナ10と、INS(Inertial Navigation System)用センサー20と、情報処理装置30と、を備える。
【0019】
INS用センサー20は、車両挙動を検出するためのセンサー群であり、例えば、Gセンサー、車速センサー、ヨーレートセンサー、地磁気センサー等を含む。
【0020】
情報処理装置30は、例えば、CPUを中心としてROMやRAM等がバスを介して相互に接続されたコンピューターユニットであり、その他、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、CD(Compact Disc)ドライブ、フラッシュメモリ等の記憶装置32や高周波回路34、A/D変換回路36、その他、I/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。情報処理装置30は、一般的な車両においてはナビゲーション制御用コンピュータとしても機能する。
【0021】
記憶装置32には、地図データ32Aが格納されている。地図データ32Aは、例えば、交差点等を表し、座標(緯度、経度)を有するノード点と、ノード点を接続し、道路幅や道路曲率が付随して記憶されたリンクと、により道路形状を表現している。また、地図データ32Aには、発電所、変電所、鉄道線路等の付近の領域であって、これらの施設が発する電磁波が所定程度以上強い、強電磁界領域に関する情報が含まれている。強電磁界領域は、例えば境界線を示す座標の連なりとして表現される。
【0022】
高周波回路34は、GPSアンテナ20を介して供給される微弱なRF信号をA/D変換できるレベルまで増幅すると共に、RF信号の周波数を信号処理できる中間周波数(典型的には、1MHz〜20MHz)に変換する。このようにRF信号をダウンコンバートして得られる信号を、IF(Intermediate frequency)信号と称する。
【0023】
A/D変換回路36は、高周波回路34から供給されるIF信号(アナログ信号)を、デジタル信号処理ができるようにデジタルIF信号に変換する。
【0024】
また、情報処理装置30は、ROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、第1演算部40と、第2演算部42と、位置特定部44と、を備える。なお、これらの機能ブロックが明確に別のプログラムに基づく必要はなく、同一プログラムの中に複数の機能ブロックを実現する部分が含まれていてもよい。
【0025】
第1演算部40は、A/D変換回路36から供給されるデジタルIF信号からC/Aコード同期を行って航法メッセージを取り出し、GPS衛星と車両との間の擬似距離ρを算出する。なお、以下の処理は電波を受信可能な全てのGPS衛星について行なわれるが、説明を簡略化するために、或る一のGPS衛星についての処理として説明する。擬似距離ρは、時計誤差(クロックバイアス)や電波伝搬速度変化による誤差を含んでおり、次式(1)で示される。式中、cは光速であり、bは、誤差成分であり、主に、時計誤差による距離誤差に対応する。τuは、GPS衛星から車両までのトラベル時間を示す。
【0026】
ρ=c・τu+b …(1)
【0027】
第1演算部40は、航法メッセージに含まれる衛星軌道情報、及び現在の時間に基づいて、GPS衛星のワールド座標系における現在位置(X1、Y1、Z1)を計算する。GPS衛星は人工衛星の1つであるので、その運動は、地球重心を含む一定面内(軌道面)に限定される。従って、GPS衛星の軌道は地球重心を1つの焦点とする楕円運動であり、ケプラーの方程式を逐次数値計算することで、軌道面上におけるGPS衛星の位置が計算できる。そして、GPS衛星の位置(X1、Y1、Z1)は、GPS衛星の軌道面とワールド座標系の赤道面が回転関係にあることを考慮して、軌道面上におけるGPS衛星の位置を3次元的な回転座標変換することで得られる。ここで、ワールド座標系とは、地球重心を原点として、赤道面内で互いに直交するX軸及びY軸、並びに、この両軸に直交するZ軸により定義される。
【0028】
第1演算部40は、上記算出した擬似距離のρと、GPS衛星の位置(X1、Y1、Z1)に基づいて、車両の位置(Xu,Yu,Zu)を演算する。車両の位置の演算は、例えば、3つのGPS衛星に対して得られるそれぞれの擬似距離及び衛星位置を用いて三角測量の原理で導出され、4つ目のGPS衛星に対して得られる擬似距離及び衛星位置を用いて時計誤差成分が除去される。なお、車両の位置の演算手法は、上記の如き手法に限られず、干渉測位(既知の点に設置された固定局での受信データを併用する方式)であってもよい。干渉測位の場合、固定局及び車両にてそれぞれ得られる擬似距離の一重位相差や2重位相差等を用いて車両の位置が演算されることになる。
【0029】
第2演算部42は、INS用センサー20の出力に基づいて、サンプル期間における車両の移動量を算出する。そして、車両の移動量を逐次加算していくことにより、車両の位置(Xu#,Yu#,Zu#)を演算する。係る演算において、車両の速度ベクトル(Vx、Vy)は、車体を基準としたボディ座標系に基づいているため、速度ベクトル(Vx、Vy)を、ローカル座標系を介してワールド座標系へと座標変換した上で車両の移動量を算出するものとしてよい。ここで、座標の回転変換は、オイラー角を用いて実現できるが、ボディ座標系からローカル座標系への変換に関しては、ロール角及びピッチ角が小さいとしてヨー角ψのみで実現することとしてよい(但し、ロール角及びピッチ角を考慮することも、ヨー角を無視することも当然に可能である)。また、ローカル座標系からワールド座標系への変換に関しては、車両位置の経度及び緯度を用いた変換で実現される。なお、第2演算部42は、地図データ32Aを用いたマップマッチングにより演算結果を補正してよい。
【0030】
位置特定部44は、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)と第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)のいずれか一方、又は双方に基づいて移動体の位置を特定する。具体的には、原則として第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)を採用し、特定の場合に第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を採用する。また、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)と第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)の加重平均等によって車両の位置を特定してもよい。
【0031】
また、位置特定部44は、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)又は第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を用いて地図データ32Aを参照し、車両が強電磁界領域内に在るか否かを判定する。そして、車両が強電磁界領域内に在ると判定した場合には、車両が強電磁界領域内に在ると判定されなかった場合に比して、第2の演算手段による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を重く用いて車両の位置を特定する。これによって、GPS衛星からの電波に誤差や受信ミスを生じる可能性が高い強電磁界領域内を車両が走行している間は、電波の誤差や受信ミスの影響を受けない第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を重く用いて車両の位置を特定することとなり、より精度良く移動体の位置を特定することができる。
【0032】
ここで、「重く用いて」とは、例えば第2の演算手段による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)のみを用いて車両の位置を特定することであってもよいし、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)と第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)の加重平均等によって車両の位置を特定している場合は、第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)に乗ずる係数を大きくして車両の位置を特定することであってもよい。
【0033】
図2は、第1実施例に係る位置特定部44が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの一例である。本フローは、所定周期をもって繰り返し実行される。
【0034】
まず、上記の如く、車両が強電磁界領域内に在るか否かを判定する(S100)。
【0035】
車両が強電磁界領域内にないと判定した場合は、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)を用いて車両の位置を特定する(S102)。
【0036】
一方、車両が強電磁界領域内に在ると判定した場合は、第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を用いて車両の位置を特定する(S104)。
【0037】
なお、前述の如く、GPS衛星からの電波を受信するに際して、強電磁界領域内を走行していることに起因する障害の他、周知のマルチパスや電波遮蔽による障害も存在するため、マルチパスや電波遮蔽を検知した際にも第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)で車両の位置特定を補完してもよい。この場合のフローチャートは、図3の如くである。なお、マルチパスや電波遮蔽の検知手法については既に種々の手法が公知となっているため、説明を省略する。
【0038】
すなわち、まず、上記の如く、車両が強電磁界領域に在るか否かを判定する(S100)。
【0039】
車両が強電磁界領域内にないと判定した場合は、マルチパスや電波遮蔽による他の障害が発生しているか否かを判定する(101)。
【0040】
他の障害が発生していないと判定した場合は、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)を用いて車両の位置を特定する(S102)。
【0041】
一方、車両が強電磁界領域内に在ると判定した場合、及び他の障害が発生している場合は、第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を用いて車両の位置を特定する(S104)。
【0042】
以上説明した本実施例の移動体位置特定装置1によれば、より精度良く移動体の位置を特定することができる。
【0043】
なお、車両が強電磁界領域内であるか否かは、無線通信により取得される情報に基づいて判定されてもよい。この場合、車両は、携帯電話の電波網やインターネット、FM多重通信、ビーコン等を介して取得される強電磁界領域に関する情報を取得する。そして、受信した強電磁界領域に関する情報を参照して車両が強電磁界領域内に在るか否かを判定する。更にこの場合、車両の位置を車外設備(自動車メーカーが運営する情報センターや公共情報センター等)に送信し、車両が強電磁界領域内に在るか否かを示す信号を受信して、係る信号に基づいて車両が強電磁界領域内に在るか否かを判定してもよい。
【0044】
<第2実施例>
以下、本発明の第2実施例に係る移動体位置特定装置2について説明する。移動体位置特定装置2は、いわゆるGNSS(Global Navigation Satellite System)における移動体側装置として機能するものである。移動体位置特定装置2は、車両や船舶、携帯電話等に適用されうるが、以下では車両に搭載されたものとして説明する。また、GNSSを構成する衛星は多種存在するが、移動体位置特定装置2は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波に基づいて移動体の位置を測位演算するものとする。
【0045】
第2実施例に係る移動体位置特定装置2は、第1実施例に係る移動体位置特定装置1と主要なハードウエア構成について共通するため、ここでは第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0046】
第2実施例に係る記憶装置32に格納された地図データ32Aには、森林・林間領域(上部を木々に覆われた領域)に関する情報が含まれている。森林・林間領域は、例えば境界線を示す座標の連なりとして表現される。
【0047】
そして、第2実施例に係る位置特定部44は、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)又は第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を用いて地図データ32Aを参照し、車両が森林・林間領域内に在るか否かを判定する。そして、車両が森林・林間領域内に在ると判定した場合には、季節に応じてGPS衛星からの電波受信における受信閾値を変更するように第1演算部40に指示する。具体的には、夏季には、木々に葉が生い茂って電波の遮蔽程度が大きくなるため、受信閾値を低くする。一方、冬季には、木々の葉が枯れて落下し電波の遮蔽程度が小さくなるため、受信閾値を夏季に比して高くする。これによって、GPS衛星からの電波が遮蔽されて電波強度が弱くなる可能性が高い森林・林間領域内を車両が走行している間は、その電波強度が弱くなる程度に応じて受信閾値を変更することとなり、より精度良く移動体の位置を特定することができる。
【0048】
図4は、第2実施例に係る位置特定部44が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0049】
まず、上記の如く、車両が森林・林間領域内に在るか否かを判定する(S200)。
【0050】
車両が森林・林間領域内にないと判定した場合は、通常の測位演算を行なうように第1演算部40に指示する(S202)。
【0051】
一方、車両森林・林間領域内に在ると判定した場合は、季節に応じてGPS衛星からの電波受信における受信閾値を変更するように第1演算部40に指示する(S204)。
【0052】
以上説明した本実施例の移動体位置特定装置2によれば、より精度良く移動体の位置を特定することができる。
【0053】
<第3実施例>
以下、本発明の第3実施例に係る移動体位置特定装置2について説明する。移動体位置特定装置3は、いわゆるGNSS(Global Navigation Satellite System)における移動体側装置として機能するものである。移動体位置特定装置3は、車両や船舶、携帯電話等に適用されうるが、以下では車両に搭載されたものとして説明する。また、GNSSを構成する衛星は多種存在するが、移動体位置特定装置3は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波に基づいて移動体の位置を測位演算するものとする。
【0054】
第3実施例に係る移動体位置特定装置3は、第1実施例に係る移動体位置特定装置1と主要なハードウエア構成について共通するため、ここでは第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0055】
第3実施例に係る記憶装置32に格納された地図データ32Aには、森林・林間領域(上部を木々に覆われた領域)に関する情報が含まれている。森林・林間領域は、例えば境界線を示す座標の連なりとして表現される。
【0056】
そして、第3実施例に係る位置特定部44は、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)又は第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を用いて地図データ32Aを参照し、車両が森林・林間領域内に在るか否かを判定する。そして、車両が森林・林間領域内に在ると判定した場合には、車両が森林・林間領域内に在ると判定されなかった場合に比して、第2の演算手段による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を重く用いて車両の位置を特定する。これによって、これによって、GPS衛星からの電波が遮蔽されて電波強度が弱くなる可能性が高い森林・林間領域内を車両が走行している間は、電波強度の弱化の影響を受けない第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を重く用いて車両の位置を特定することとなり、より精度良く移動体の位置を特定することができる。
【0057】
図5は、第3実施例に係る位置特定部44が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【0058】
まず、上記の如く、車両が森林・林間領域内に在るか否かを判定する(S300)。
【0059】
車両が森林・林間領域内にないと判定した場合は、第1演算部40による演算結果(Xu,Yu,Zu)を用いて車両の位置を特定する(S302)。
【0060】
一方、車両が森林・林間領域内に在ると判定した場合は、第2演算部42による演算結果(Xu#,Yu#,Zu#)を用いて車両の位置を特定する(S304)。
【0061】
以上説明した本実施例の移動体位置特定装置3によれば、より精度良く移動体の位置を特定することができる。
【0062】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0063】
例えば、第2実施例及び第3実施例においても、マルチパスや電波遮蔽による他の障害が発生しているか否かを判定する処理を追加してよい。
【0064】
また、第1ないし第3実施例は、排他的な関係に在るものではなく、組み合わされて使用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施例に係る移動体位置特定装置1のシステム構成例である。
【図2】第1実施例に係る位置特定部44が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図3】第1実施例に係る位置特定部44が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの他の例である。
【図4】第2実施例に係る位置特定部44が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図5】第3実施例に係る位置特定部44が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3 移動体位置特定装置
10 GPSアンテナ
20 INS用センサー
30 情報処理装置
32 記憶装置
32A 地図データ
34 高周波回路
36 A/D変換回路
40 第1演算部
42 第2演算部
44 位置特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からの電波を受信する受信手段と、
該受信手段により受信された衛星からの電波に基づき移動体の位置を演算する第1の演算手段と、
前記移動体の挙動を検出する挙動検出手段と、
該挙動検出手段により検出された移動体の挙動に基づき前記移動体の位置を演算する第2の演算手段と、
前記第1の演算手段による演算結果と前記第2の演算手段による演算結果のいずれか一方、又は双方に基づいて移動体の位置を特定する位置特定手段と、
を備える移動体位置特定装置であって、
前記位置特定手段は、
前記移動体が強電磁界領域内に在るか否かを判定し、
前記移動体が強電磁界領域内に在ると判定した場合には、前記判定手段により前記移動体が強電磁界領域に在ると判定されなかった場合に比して、前記第2の演算手段による演算結果を重く用いて前記移動体の位置を特定することを特徴とする、
移動体位置特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145178(P2010−145178A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321372(P2008−321372)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】