説明

移動体用位置算出装置

【課題】カメラや画像認識装置を用いることなく簡易なアルゴリズムで交差点通過を判定して移動体位置を算出することができる移動体用位置算出装置の提供。
【解決手段】本発明は、移動体に搭載され、該移動体の位置を検出する移動体用位置算出装置において、地球回りを周回する複数の衛星からの電波を受信する受信手段と、前記受信手段における衛星からの電波の受信状態に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する交差点判定手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載され、該移動体の位置を検出する移動体用位置算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の周辺映像を収集し、周辺映像から所定の画像を識別して、車両の現在位置の特徴を検出する画像処理手段と、車両の現在位置を算出し、算出した現在位置と対応する地図情報とを共に表示可能なナビゲーション装置と、画像処理手段が検出する車両の現在位置の特徴と、ナビゲーション装置によって算出された車両の現在位置または地図情報とを比較し、比較結果に基づいて、ナビゲーション装置によって算出され表示された車両の現在位置を修正する制御手段とを備えるカーナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−152348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の特許文献1に記載の構成のように、画像認識により交差点通過を判定する構成では、高精度に交差点通過を判定できる反面、カメラや画像認識装置が交差点通過判定に必要となる。
【0004】
そこで、本発明は、カメラや画像認識装置を用いることなく簡易なアルゴリズムで交差点通過を判定して移動体位置を算出することができる移動体用位置算出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、移動体に搭載され、該移動体の位置を検出する移動体用位置算出装置において、
地球回りを周回する複数の衛星からの電波を受信する受信手段と、
前記受信手段における衛星からの電波の受信状態に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する交差点判定手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
ここで、用語の定義として、移動体が交差点を通過したか否かの判定は、移動体が交差点を通過し終えたか否かの判定のみならず、移動体が交差点を現に通過しているか否か(即ち移動体の現在位置が交差点内に位置するか否か)の判定を含む。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する衛星からの電波の受信状態に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第2の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、電波が受信できる観測可能な衛星の数であって、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する衛星の数(以下、着目衛星の数という)を監視し、該着目衛星の数の変動態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定することを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第3の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数が所定数以上増加した場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定することを特徴とする。
【0010】
ここで、用語の定義として、移動体が交差点を通過したとの判定は、移動体が交差点を通過し終えたとの判定のみならず、移動体が交差点を現に通過しているとの判定を含む。
【0011】
第5の発明は、第3の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数の平均値であって、所定距離又は所定時間内の着目衛星の数の平均値が、所定の基準数以下である状況から、前記着目衛星の数が前記所定の基準数を上回る状況になった場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定することを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置する衛星からの電波におけるマルチパスの発生態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定することを特徴とする。マルチパスの発生態様には、マルチパスの発生頻度等の他、マルチパスが発生した衛星の数の変動態様を含む。
【0013】
第7の発明は、第6の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置し且つマルチパスが発生した衛星の数(以下、着目衛星の数という)を監視し、該着目衛星の数の変動態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定することを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第7の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数が所定数以上減少した場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定することを特徴とする。
【0015】
第9の発明は、第7の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数の平均値であって、所定距離又は所定時間内の着目衛星の数の平均値が所定の基準数以上である状況から、前記着目衛星の数が前記所定の基準数を下回る状況になった場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定することを特徴とする。
【0016】
第10の発明は、第1の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信状態に基づいて導出される電波の受信強度に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
第11の発明は、第10の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信状態に基づいて導出される衛星電波の受信強度を監視し、該受信強度の変動態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
第12の発明は、第11の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信強度が所定値以上増加した場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定することを特徴とする。
【0019】
第13の発明は、第11の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信強度の平均値であって、所定距離又は所定時間内の平均値が所定の基準値以下である状況から、衛星からの電波の受信強度が前記所定の基準値を上回る状況になった場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定することを特徴とする。
【0020】
第14の発明は、第10〜13のいずれかの発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、所定の高仰角範囲内に位置する衛星の電波の受信強度に基づいて、前記判定を行うことを特徴とする。
【0021】
第15の発明は、第1〜14のいずれかの発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段は、交差点の位置情報を含む所与の地図データに基づいて、前記移動体が交差点に対して所定距離内の交差点周辺に位置することを検出する検出手段を備え、
前記交差点判定手段は、前記検出手段により前記移動体が交差点周辺に位置することが検出された場合に、前記判定を行うことを特徴とする。
【0022】
第16の発明は、第1〜15のいずれかの発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記交差点判定手段において前記移動体が交差点を通過したと判定された場合に、所与の交差点位置情報に基づいて、移動体の位置情報を補正する補正手段を更に備えることを特徴とする。
【0023】
第17の発明は、第16の発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記補正手段は、前記交差点判定手段において前記移動体が交差点を通過したと判定された場合に、該交差点の位置に移動体が位置するように、移動体の位置情報を補正することを特徴とする。
【0024】
第18の発明は、第1〜17のいずれかの発明に係る移動体用位置算出装置において、
前記移動体は車両であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、カメラや画像認識装置を用いることなく簡易なアルゴリズムで交差点通過を判定して移動体位置を算出することができる移動体用位置算出装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明に係る移動体用位置算出装置が適用されるGPS(Global Positioning System)の全体的な構成を示すシステム構成図である。図1に示すように、GPSは、地球周りを周回するGPS衛星10と、地球上に位置し地球上を移動しうる車両90とから構成される。尚、車両90は、あくまで移動体の一例であり、その他の移動体としては、自動二輪車、鉄道、船舶、航空機、ホークリフト、ロボットや、人の移動に伴い移動する携帯電話等の情報端末等がありうる。
【0028】
GPS衛星10は、航法メッセージ(衛星信号)を地球に向けて常時放送する。航法メッセージには、対応するGPS衛星10に関する衛星軌道情報(エフェメリスやアルマナク)、時計の補正値、電離層の補正係数が含まれている。航法メッセージは、C/Aコードにより拡散されL1波(周波数:1575.42MHz)に乗せられて、地球に向けて常時放送されている。尚、L1波は、C/Aコードで変調されたSin波とPコード(Precision Code)で変調されたCos波の合成波であり、直交変調されている。C/Aコード及びPコードは、擬似雑音(Pseudo Noise)符号であり、−1と1が不規則に周期的に並ぶ符号列である。
【0029】
尚、現在、24個のGPS衛星10が高度約20,000kmの上空で地球を一周しており、各4個のGPS衛星10が55度ずつ傾いた6つの地球周回軌道面に均等に配置されている。従って、天空が開けている場所であれば、地球上のどの場所にいても、常時、少なくとも5個以上のGPS衛星10が観測可能である。
【0030】
車両90には、GPS受信機1及びナビゲーション装置2が搭載される。
【0031】
GPS受信機1は、GPSアンテナを介してGPS衛星10から受信した電波を中間周波数に変換後、GPS受信機内で発生させたC/Aコードを用いてC/Aコード同期を行い、航法メッセージを取り出す。GPS受信機1は、航法メッセージに含まれる衛星軌道情報に基づいて、各GPS衛星10の位置(方位及び仰角)に関する情報(以下、GPS衛星位置情報という)を生成し、ナビゲーション装置2に供給する。
【0032】
また、GPS受信機1は、GPS衛星10から受信した電波に基づいて、車両90の位置や速度を測位し、車両90の位置や速度に関する情報(以下、車両位置情報という)を生成し、ナビゲーション装置2に供給する。尚、測位方法は、任意であり、単独測位や干渉測位が用いられてもよいし、搬送波のドップラ周波数や車速センサ等から得られる速度情報を用いた慣性航法が併用されてもよい。慣性航法は、特に観測可能なGPS衛星10の数が足りない場合等、衛星航法のみでは車両位置情報が取得できない場合に併用されるのが好適である。
【0033】
ナビゲーション装置2は、図2に示すように、各種情報処理を行うECU20と、ディスプレイ22と、地図データを保有する地図データベース24とを備える。ECU20は、マイクロコンピュータによって構成されており、例えば、CPU,制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する。ディスプレイ22は、例えば車両90のインストルメントパネルに設置される液晶ディスプレイであってよい。地図データベース24には、交差点の位置に関する情報(以下、交差点位置情報という)や、後述の周辺環境(市街地や都市環境、街路樹の有無等)を表す情報(以下、周辺環境情報という)が記憶される。
【0034】
図3は、ナビゲーション装置2のECU20により実現される要部処理の基本アルゴリズムを示す図である。ナビゲーション装置2のECU20においては、図3に示すように、車両90が交差点を通過した(又は通過している、以下同じ)か否かを判定する交差点判定処理が実行され、車両90が交差点を通過したと判定された場合には、当該交差点へのマップマッチング処理が実行される。
【0035】
図4は、ナビゲーション装置2のECU20により実現される交差点判定処理の一例を示すフローチャートである。図4に示す処理ルーチンは、例えばGPS受信機1の車両位置の測位周期に同期した所定周期毎に繰り返し実行されてもよい。
【0036】
ステップ400では、地図データベース24内の地図データ(周辺環境情報)と、GPS受信機1からの自車位置情報とに基づいて、車両90が市街地や都市環境を走行しているか否かが判定される。尚、市街地や都市環境は、GPS衛星10からの電波の受信を妨げる高層建物のような電波遮蔽物が多く存在する環境を表す具体例である。車両90が市街地や都市環境を走行している場合には、ステップ402に進み、車両90が市街地や都市環境を走行していない場合には、ステップ400に戻る。
【0037】
ステップ402では、GPS受信機1からのGPS衛星位置情報と自車位置情報とに基づいて、車両進行方向(移動方向)に直角な方向に位置するGPS衛星10の受信状態が把握される。車両進行方向は、GPS受信機1からの自車位置情報から把握されてもよいし、他の車載センサ(例えば車速センサ)からの情報から把握されてもよい。車両進行方向に直角な方向は、平面視で車両進行方向に完全に直角な1方向である必要はなく、典型的には、平面視で車両進行方向に略直角な方向であり、例えば平面視で車両進行方向に直角な方向を中心として所定角度範囲(例えば±10)で規定されてよい。
【0038】
ステップ404では、上記ステップ402の処理結果に基づいて、所定の低仰角範囲内に位置するGPS衛星10の数の平均値が規定値未満であるか否かが判定される。所定の低仰角範囲は、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下で当該高層建物により電波が受信できなくなるような低仰角範囲であり、試験結果等に基づいて適切に決定されてもよい。例えば、所定の低仰角範囲は、水平面から30ないし45度以内の角度であってよい。所定の低仰角範囲内に位置するGPS衛星10の数の平均値は、過去の所定距離(例えば500m)の走行過程における平均値であってもよく、過去の所定時間(例えば10秒間)の走行過程における平均値であってもよい。
【0039】
ここで、所定の低仰角範囲内に位置するGPS衛星10の数の平均値は、上記ステップ404の処理結果に基づいて算出されるので、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数の平均値である。ここで、観測可能なGPS衛星10とは、当該GPS衛星10から電波が所定レベル以上の受信強度で受信されているGPS衛星10を意味する。従って、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下では、当該GPS衛星10の数の平均値は、高層建物が無く周辺が開けた環境下よりも有意に小さくなる。本ステップ404における規定値は、かかる環境の変化を切り分けるための閾値であり、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下と周辺が開けた環境下とで実際に車両を走行させて得られるGPS衛星10の受信状態(試験結果)等に基づいて適切に決定されてもよい。
【0040】
本ステップ404において、所定の低仰角範囲内に位置するGPS衛星10の数の平均値が規定値未満である場合には、ステップ406に進み、それ以外の場合には、ステップ402に戻る。
【0041】
ステップ406では、所定の低仰角範囲内に位置するGPS衛星10の数の平均値が規定値未満であることから、車両90が現在交差点以外を走行中であると判別してステップ408に進む。
【0042】
ステップ408では、地図データベース24内の地図データ(交差点位置情報)と、GPS受信機1からの自車位置情報とに基づいて、車両90が交差点周辺に位置するか否かが判定される。例えば、車両90が交差点から所定距離(例えば±100m)以内に位置する場合に、車両90が交差点周辺に位置すると判定されることとしてもよい。車両90が交差点周辺に位置すると判定された場合には、ステップ410に進み、それ以外の場合には、ステップ402に戻る。
【0043】
ステップ410では、今回周期の上記ステップ402の処理結果に基づいて、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数が、規定値以上であるか否かが判定される。規定値は、上記ステップ404で用いられる規定値と同様であってよい。車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数が、規定値以上である場合には、ステップ412に進み、それ以外の場合には、ステップ402に戻る。
【0044】
ステップ412では、車両90が交差点を通過した(又は通過している、以下同じ)と判定し、本処理ルーチンが終了される。
【0045】
ところで、車両90が、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下において、交差点を通過すると、交差点通過時に周囲が急に開けるので、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ低仰角範囲内に位置するGPS衛星10が観測可能な状態に変化する。以上の図4に示す処理によれば、この点に着目して、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数の増加態様に基づいて、車両90が交差点を通過したか否かを判定するので、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出することができる。
【0046】
このようにして車両90が交差点を通過したと判定されると、図3を参照して上述した如くマップマッチング処理が実行される。マップマッチング処理では、車両90が交差点を通過したと判定されると、地図データベース24内の地図データ(交差点位置情報)に基づいて、車両90の位置情報(自車位置情報)が補正される。この補正態様は、多種多様であり、任意の適切な方法が採用されてもよい。例えば、車両90が交差点を通過したと判定されると、当該交差点の位置情報を、自車位置情報として用いることとしてもよい。即ち、当該交差点の位置に車両90が位置するように自車位置情報が補正されることとしてもよい。また、判定に要する時間や通信時間等の遅れ時間を考慮して、交差点の中心位置からずれた位置に自車位置を補正してもよい。このようにしてマップマッチング処理により自車位置情報が補正されると、ナビゲーション装置2は、当該補正された自車位置情報に基づいて、ディスプレイ22に表示した地図上の自車位置表示の位置を補正することとしてよい。
【0047】
以上説明した本実施例1に係る移動体用位置算出装置によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0048】
上述の如く、本実施例1によれば、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数の増加態様(変動態様)に基づいて、車両90が交差点を通過したか否かを判定するので、車両90が交差点を通過したことを簡易なアルゴリズムにて精度良く検出することができる。
【0049】
また、図4のステップ408に示すように、地図データベース24内の地図データを用いて、車両90が交差点周辺に位置することが検出されたことを必要条件として、車両90が交差点を通過したと判定されるので、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出することができる。尚、同様の観点から、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出するために、その他の条件が同様に必要条件として採用されてもよい。例えば、ステアリングセンサ(舵角センサ)からの情報に基づいて右左折状態が検出されたことが必要条件として採用されてもよい。この条件は、例えばルート案内の経路情報から、車両が交差点を右左折することが予測できる場合のみ採用されてもよい。また、上述の実施例1は、特に一定以上の大きさの交差点(例えば2車線以上の道路が交差する交差点)の通過を判定するのに好適であるので、地図データベース24内の地図データを用いて一定以上の大きさの交差点周辺に車両90が位置することが検出されたことを必要条件として用いてもよい。
【0050】
尚、上述の実施例1においては、図4に示すステップ410において、今回周期(最新の処理周期)のステップ402の処理結果に基づいて、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数が、規定値以上であるか否かが判定されている。しかしながら、今回周期以前の所定数の周期の上記ステップ402の処理結果に基づいて、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数の平均値を算出し、当該平均値が規定値以上であるか否かを判定してもよい。この際、所定数は、ノイズ等の影響を無くすために必要な数であるが(但しステップ404の平均値よりも短い区間の平均値となるような数)、交差点の大きさ(地図データから取得)に応じて可変されてもよい。また、同様の観点(ノイズ等の影響を無くす観点)から、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数(又は平均値)はフィルタ処理されてもよい。
【0051】
また、上述の実施例1においては、観測可能なGPS衛星10とは、当該GPS衛星10から電波が所定レベル以上の受信強度で受信されているGPS衛星10であったが、観測可能なGPS衛星10とは、当該GPS衛星10から電波が所定レベル以上の受信強度で受信され、且つ、マルチパスが発生してない(即ち直接波が受信されている)GPS衛星10とされてもよい。
【0052】
また、上述の実施例1に対する変形例として、図4に示す処理と同様の観点から、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数(単一周期の数、又は複数周期の数の平均値)が、所定数以上増加した場合に、車両90が交差点を通過したと判定することとしてもよい。これは、車両90が、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下において、交差点を通過すると、交差点通過時に周囲が急に開けるので、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数が急激に増加することを考慮したものである。この際、所定数は、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下で実際に交差点を通過させて得られる各種の試験結果等に基づいて適切に決定されてもよい。
【実施例2】
【0053】
実施例2は、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の受信状態を考慮する上述の実施例1に対して、車両進行方向に直角な方向に位置するGPS衛星10からの電波におけるマルチパスの発生態様を考慮する点が主に異なる。以下では、実施例2に特有の構成を中心に説明し、その他の必要な構成は上述の実施例1と同様であってよい。
【0054】
GPS受信機1は、GPS衛星10から受信した電波に基づいて、マルチパスの発生状態を検出する。マルチパスの検出方法は、多種多様な方法が提案され知られており、任意の適切な方法が採用されてもよい。例えば、直接波に対してマルチパスによる反射波が重畳された場合に、位相追従時の相関ピーク値がずれることを考慮して、相関ピーク値のずれ量に基づいてマルチパスが検出されてもよい。GPS受信機1は、マルチパスが検出されたGPS衛星10を特定する情報(以下、マルチパス情報という)を生成し、ナビゲーション装置2に供給する。
【0055】
実施例2のナビゲーション装置2は、上述の実施例1に対して、図2に示したハードウェア構成及び図3に示した基本アルゴリズムについては同様であり、以下で説明するように、交差点判定処理方法が異なる。
【0056】
図5は、実施例2のナビゲーション装置2のECU20により実現される交差点判定処理の一例を示すフローチャートである。図5に示す処理ルーチンは、例えばGPS受信機1の車両位置の測位周期に同期した所定周期毎に繰り返し実行されてもよい。
【0057】
ステップ500では、地図データベース24内の地図データ(周辺環境情報)と、GPS受信機1からの自車位置情報に基づいて、車両90が市街地や都市環境を走行しているか否かが判定される。尚、市街地や都市環境は、GPS衛星10からの直接波の受信を妨げる建物が多く存在する環境(即ちマルチパスが発生し易い環境)を表す具体例である。車両90が市街地や都市環境を走行している場合には、ステップ502に進み、車両90が市街地や都市環境を走行していない場合には、ステップ500に戻る。
【0058】
ステップ502では、GPS受信機1からのGPS衛星位置情報と自車位置情報とに基づいて、車両進行方向(移動方向)に直角な方向に位置するGPS衛星10の受信状態が把握される。車両進行方向は、GPS受信機1からの自車位置情報から把握されてもよいし、他の車載センサ(例えば車速センサ)からの情報から把握されてもよい。車両進行方向に直角な方向は、完全に直角な1方向である必要はなく、典型的には、平面視で車両進行方向に略直角な方向であり、例えば直角な方向を中心として所定角度範囲(例えば±10)で規定されてよい。
【0059】
ステップ504では、GPS受信機1からのマルチパス情報と上記ステップ502の処理結果とに基づいて、マルチパスが検出されたGPS衛星10の数の平均値が規定値以上であるか否かが判定される。マルチパスが検出されたGPS衛星10の数の平均値は、過去の所定距離(例えば500m)の走行過程における平均値であってもよく、過去の所定時間(例えば10秒間)の走行過程における平均値であってもよい。
【0060】
ここで、マルチパスが検出されたGPS衛星10の数の平均値は、上記ステップ504の処理結果に基づいて算出されるので、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数の平均値である。従って、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下では、マルチパスが発生し易くなるので、当該GPS衛星10の数の平均値は、高層建物が無く周辺が開けた環境下よりも有意に大きくなる。本ステップ504における規定値は、かかる環境の変化を切り分けるための閾値であり、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下と周辺が開けた環境下とで実際に車両を走行させて得られるGPS衛星10の受信状態(マルチパスの発生状態に関する試験結果)等に基づいて適切に決定されてもよい。
【0061】
本ステップ504において、マルチパスが検出されたGPS衛星10の数の平均値が規定値以上である場合には、ステップ506に進み、それ以外の場合には、ステップ502に戻る。
【0062】
ステップ506では、マルチパスが検出されたGPS衛星10の数の平均値が規定値以上であることから、車両90が現在交差点以外を走行中であると判別してステップ508に進む。
【0063】
ステップ508では、地図データベース24内の地図データ(交差点位置情報)と、GPS受信機1からの自車位置情報とに基づいて、車両90が交差点周辺に位置するか否かが判定される。例えば、車両90が交差点から所定距離(例えば±100m)以内に位置する場合に、車両90が交差点周辺に位置すると判定されることとしてもよい。車両90が交差点周辺に位置すると判定された場合には、ステップ510に進み、それ以外の場合には、ステップ502に戻る。
【0064】
ステップ510では、今回周期の上記ステップ502の処理結果に基づいて、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数が、規定値未満であるか否かが判定される。規定値は、上記ステップ504で用いられる規定値と同様であってよい。車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数が、規定値未満である場合には、ステップ512に進み、それ以外の場合には、ステップ502に戻る。
【0065】
ステップ512では、車両90が交差点を通過したと判定し、本処理ルーチンが終了される。
【0066】
ところで、車両90が、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下において、交差点を通過すると、交差点通過時に周囲が急に開けるので、車両進行方向に直角な方向に位置するGPS衛星10から直接波が受信できるようになる(即ちマルチパスが発生しなくなる)。以上の図5に示す処理によれば、この点に着目して、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数の変動態様に基づいて、車両90が交差点を通過したか否かを判定するので、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出することができる。
【0067】
このようにして車両90が交差点を通過したと判定されると、図3を参照して上述した如くマップマッチング処理が実行される。マップマッチング処理では、車両90が交差点を通過したと判定されると、地図データベース24内の地図データ(交差点位置情報)に基づいて、車両90の位置情報(自車位置情報)が補正される。この補正態様は、多種多様であり、任意の適切な方法が採用されてもよい。例えば、車両90が交差点を通過したと判定されると、当該交差点の位置情報を、自車位置情報として用いることとしてもよい。即ち、当該交差点の位置に車両90が位置するように自車位置情報が補正されることとしてもよい。また、判定に要する時間や通信時間等の遅れ時間を考慮して、交差点の中心位置からずれた位置に自車位置を補正してもよい。このようにしてマップマッチング処理により自車位置情報が補正されると、ナビゲーション装置2は、当該補正された自車位置情報に基づいて、ディスプレイ22に表示した地図上の自車位置表示の位置を補正することとしてよい。
【0068】
以上説明した本実施例2に係る移動体用位置算出装置によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0069】
上述の如く、本実施例2によれば、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数の変動態様(減少態様)に基づいて、車両90が交差点を通過したか否かを判定するので、車両90が交差点を通過したことを簡易なアルゴリズムにて精度良く検出することができる。
【0070】
また、図5のステップ508に示すように、地図データベース24内の地図データを用いて、車両90が交差点周辺に位置することが検出されたことを必要条件として、車両90が交差点を通過したと判定されるので、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出することができる。尚、同様の観点から、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出するために、その他の条件が同様に必要条件として採用されてもよい。例えば、ステアリングセンサ(舵角センサ)からの情報に基づいて右左折状態が検出されたことが必要条件として採用されてもよい。この条件は、例えばルート案内の経路情報から、車両が交差点を右左折することが予測できる場合のみ採用されてもよい。また、上述の実施例2は、特に一定以上の大きさの交差点(例えば2車線以上の道路が交差する交差点)に対して好適であるので、一定以上の大きさの交差点周辺に車両90が位置することが検出されたことを必要条件として用いてもよい。
【0071】
尚、上述の実施例2においては、図5に示すステップ510において、今回周期(最新の処理周期)のステップ502の処理結果に基づいて、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数が、規定値未満であるか否かが判定されている。しかしながら、今回周期以前の所定数の周期の上記ステップ502の処理結果に基づいて、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数の平均値を算出し、当該平均値が規定値未満であるか否かを判定してもよい。この際、所定数は、ノイズ等の影響を無くすために必要な数(但しステップ504の平均値よりも短い区間の平均値となるような数)であるが、交差点の大きさ(地図データから取得)に応じて可変されてもよい。また、同様の観点(ノイズ等の影響を無くす観点)から、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数(又は平均値)はフィルタ処理されてもよい。
【0072】
また、上述の実施例2に対する変形例として、図5に示す処理と同様の観点から、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数(単一周期の数、又は複数周期の数の平均値)が、所定数以上減少した場合に、車両90が交差点を通過したと判定することとしてもよい。これは、車両90が、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下において、交差点を通過すると、交差点通過時に周囲が急に開けるので、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されたGPS衛星10の数が急激に減少することを考慮したものである。この際、所定数は、市街地や都市環境等のような高層建物が建つ環境下で実際に交差点を通過させて得られる各種の試験結果等に基づいて適切に決定されてもよい。
【0073】
また、上述の実施例2に対する等価的な変形例として、車両進行方向に直角な方向に位置する各GPS衛星10に対してマルチパスの発生頻度(平均値に相当)を監視し、各GPS衛星10に関してマルチパスの発生頻度が高い状況下で、マルチパスの発生頻度が急激に減少した場合に、車両90が交差点を通過したと判定することとしてもよい。また、上述の実施例2に対する等価的な変形例として、車両進行方向に直角な方向に位置し且つマルチパスが検出されないGPS衛星10の数が、所定数以上増加した場合に、車両90が交差点を通過したと判定することとしてもよい。
【実施例3】
【0074】
実施例3は、上述の実施例1に対して、車両進行方向に直角な方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する観測可能なGPS衛星10の数の変動態様に代えて、GPS衛星10からの受信電波強度の変動態様を考慮する点が主に異なる。以下では、実施例3に特有の構成を中心に説明し、その他の必要な構成は上述の実施例1と同様であってよい。
【0075】
GPS受信機1は、各GPS衛星10から受信した電波強度を検出する。電波強度の検出方法は、多種多様な方法が提案され知られており、任意の適切な方法が採用されてもよい。GPS受信機1は、各GPS衛星10から受信した電波強度を表す情報(以下、電波強度情報という)を生成し、ナビゲーション装置2に供給する。
【0076】
実施例3のナビゲーション装置2は、上述の実施例1に対して、図2に示したハードウェア構成及び図3に示した基本アルゴリズムは同様であり、以下で説明するように、交差点判定処理方法が異なる。
【0077】
図6は、実施例3のナビゲーション装置2のECU20により実現される交差点判定処理の一例を示すフローチャートである。図6に示す処理ルーチンは、例えばGPS受信機1の車両位置の測位周期に同期した所定周期毎に繰り返し実行されてもよい。
【0078】
ステップ600では、地図データベース24内の地図データ(周辺環境情報)と、GPS受信機1からの自車位置情報に基づいて、車両90が市街地や都市環境を走行しているか否かが判定される。尚、市街地や都市環境は、GPS衛星10からの電波(直接波)の受信を妨げる街路樹が歩道に多く存在する環境(即ちGPS衛星10からの電波が減衰して受信されやすい環境)を表す具体例である。車両90が市街地や都市環境を走行している場合には、ステップ602に進み、車両90が市街地や都市環境を走行していない場合には、ステップ600に戻る。
【0079】
ステップ602では、GPS受信機1からの電波強度情報に基づいて、各GPS衛星10からの電波強度が監視される。
【0080】
ステップ604では、上記ステップ602の監視結果に基づいて、電波強度の平均値が規定値未満であるか否かが判定される。ここで、市街地や都市環境等のような街路樹の多い環境下では、歩道の街路樹によりGPS衛星10からの電波が減衰され易くなるので、電波強度の平均値は、街路樹が存在しない周辺が開けた環境下よりも有意に小さくなる。本ステップ604における規定値は、かかる環境の変化を切り分けるための閾値であり、市街地や都市環境等のような街路樹の多い環境下と街路樹が存在しない環境下とで実際に車両を走行させて得られるGPS衛星10の受信状態(電波強度に関する試験結果)等に基づいて適切に決定されてもよい。電波強度の平均値は、過去の所定距離(例えば500m)の走行過程における平均値であってもよく、過去の所定時間(例えば10秒間)の走行過程における平均値であってもよい。また、電波強度の平均値は、観測可能な全てのGPS衛星10に関する電波強度の平均値であってもよいし、観測可能な全てのGPS衛星10うちの特定のGPS衛星10に関する電波強度の平均値であってもよい。特定のGPS衛星10としては、好ましくは、天頂付近に位置するGPS衛星10である。このような天頂付近に位置するGPS衛星10からの電波が特に街路樹により減衰されやすいからである。
【0081】
本ステップ604において、電波強度の平均値が規定値未満である場合には、ステップ606に進み、それ以外の場合には、ステップ602に戻る。
【0082】
ステップ606では、電波強度の平均値が規定値未満であることから、車両90が現在街路樹などの電波遮蔽物の下を走行中であると判別してステップ608に進む。
【0083】
ステップ608では、地図データベース24内の地図データ(交差点位置情報)と、GPS受信機1からの自車位置情報とに基づいて、車両90が交差点周辺に位置するか否かが判定される。例えば、車両90が交差点から所定距離(例えば±100m)以内に位置する場合に、車両90が交差点周辺に位置すると判定されることとしてもよい。車両90が交差点周辺に位置すると判定された場合には、ステップ610に進み、それ以外の場合には、ステップ602に戻る。
【0084】
ステップ610では、今回周期の上記ステップ602の処理結果に基づいて、電波強度が規定値以上であるか否かが判定される。規定値は、上記ステップ604で用いられる規定値と同様であってよい。ここで規定値と比較される電波強度は、上記ステップ604で平均値を算出するのに用いたGPS衛星10に関する電波強度である。上記ステップ604で平均値を算出するのに用いたGPS衛星10が複数である場合には、それらのGPS衛星10の各電波強度の平均値が用いられて規定値と比較されてもよい。
【0085】
本ステップ610において、電波強度が規定値以上である場合には、ステップ612に進み、それ以外の場合には、ステップ602に戻る。
【0086】
ステップ612では、車両90が交差点を通過したと判定し、本処理ルーチンが終了される。
【0087】
ところで、車両90が、市街地や都市環境等のような街路樹の多い環境下において、交差点を通過すると、交差点通過時に周囲の街路樹が無くなるので、GPS衛星10からの電波を高い受信強度で受信できるようになる。以上の図6に示す処理によれば、この点に着目して、GPS衛星10からの電波強度の変動態様に基づいて、車両90が交差点を通過したか否かを判定するので、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出することができる。
【0088】
このようにして車両90が交差点を通過したと判定されると、図3を参照して上述した如くマップマッチング処理が実行される。マップマッチング処理では、車両90が交差点を通過したと判定されると、地図データベース24内の地図データ(交差点位置情報)に基づいて、車両90の位置情報(自車位置情報)が補正される。この補正態様は、多種多様であり、任意の適切な方法が採用されてもよい。例えば、車両90が交差点を通過したと判定されると、当該交差点の位置情報を、自車位置情報として用いることとしてもよい。即ち、当該交差点の位置に車両90が位置するように自車位置情報が補正されることとしてもよい。また、判定に要する時間や通信時間等の遅れ時間を考慮して、交差点の中心位置からずれた位置に自車位置を補正してもよい。このようにしてマップマッチング処理により自車位置情報が補正されると、ナビゲーション装置2は、当該補正された自車位置情報に基づいて、ディスプレイ22に表示した地図上の自車位置表示の位置を補正することとしてよい。
【0089】
以上説明した本実施例3に係る移動体用位置算出装置によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0090】
上述の如く、本実施例3によれば、GPS衛星10からの電波強度の変動態様(増加態様)に基づいて、車両90が交差点を通過したか否かを判定するので、車両90が交差点を通過したことを簡易なアルゴリズムにて精度良く検出することができる。
【0091】
また、図6のステップ608に示すように、地図データベース24内の地図データを用いて、車両90が交差点周辺に位置することが検出されたことを必要条件として、車両90が交差点を通過したと判定されるので、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出することができる。尚、同様の観点から、車両90が交差点を通過したことを精度良く検出するために、その他の条件が同様に必要条件として採用されてもよい。例えば、ステアリングセンサ(舵角センサ)からの情報に基づいて右左折状態が検出されたことが必要条件として採用されてもよい。この条件は、例えばルート案内の経路情報から、車両が交差点を右左折することが予測できる場合のみ採用されてもよい。また、上述の実施例3は、特に一定以上の大きさの交差点(例えば2車線以上の道路が交差する交差点)に対して好適であるので、一定以上の大きさの交差点周辺に車両90が位置することが検出されたことを必要条件として用いてもよい。
【0092】
尚、上述の実施例3においては、図6に示すステップ610において、今回周期(最新の処理周期)のステップ602の処理結果に基づいて、GPS衛星10からの電波強度が規定値以上であるか否かが判定されている。しかしながら、今回周期以前の所定数の周期の上記ステップ602の処理結果に基づいて、GPS衛星10からの電波強度の平均値を算出し、当該平均値が規定値以上であるか否かを判定してもよい。この際、所定数は、ノイズ等の影響を無くすために必要な数(但しステップ604の平均値よりも短い区間の平均値となるような数)であるが、交差点の大きさ(地図データから取得)に応じて可変されてもよい。また、同様の観点(ノイズ等の影響を無くす観点)から、GPS衛星10からの電波強度(又は平均値)はフィルタ処理されてもよい。
【0093】
また、上述の実施例3に対する等価的な変形例として、図6に示す処理と同様の観点から、受信電波強度が所定レベル以上のGPS衛星10の数(単一周期の数、又は複数周期の数の平均値)が、所定数以上増加した場合に、車両90が交差点を通過したと判定することとしてもよい。これは、車両90が、市街地や都市環境等のような街路樹の多い環境下において、交差点を通過すると、交差点通過時に街路樹がなくなるので、受信電波強度が所定レベル以上のGPS衛星10の数が急激に増加することを考慮したものである。この際、所定数は、市街地や都市環境等のような街路樹の多い環境下で実際に交差点を通過させて得られる各種の試験結果等に基づいて適切に決定されてもよい。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0095】
例えば、上述の実施例では、ナビゲーション装置2のECU20により交差点判定処理が実現されているが、GPS受信機1内部のマイコンにより実現されてもよいし、ナビゲーション装置2のECU20及びGPS受信機1内部のマイコンにより協動して実現されてもよいし、他のECUにより実現されてもよい。
【0096】
また、上述の実施例では、GPSに本発明が適用された例を示したが、本発明は、GPS以外の衛星システム、例えばガリレオ等の他のGNSS (Global Navigation Satellite System)にも適用可能である。
【0097】
また、未満や以上という不等号の形式であり、以下やより大きいという不等号に置換されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る移動体用位置算出装置が適用されるGPSの全体的な構成を示すシステム構成図である。
【図2】ナビゲーション装置2のECUにより実現される要部処理の基本アルゴリズムを示す図である。
【図3】ナビゲーション装置2のECU20により実現される要部処理の基本アルゴリズムを示す図である。
【図4】実施例1のナビゲーション装置2のECU20により実現される交差点判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施例2のナビゲーション装置2のECU20により実現される交差点判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施例3のナビゲーション装置2のECU20により実現される交差点判定処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1 GPS受信機
2 ナビゲーション装置
10 GPS衛星10
20 ECU
22 ディスプレイ
24 地図データベース
90 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、該移動体の位置を検出する移動体用位置算出装置において、
地球回りを周回する複数の衛星からの電波を受信する受信手段と、
前記受信手段における衛星からの電波の受信状態に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する交差点判定手段とを備えることを特徴とする、移動体用位置算出装置。
【請求項2】
前記交差点判定手段は、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する衛星からの電波の受信状態に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する、請求項1に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項3】
前記交差点判定手段は、電波が受信できる観測可能な衛星の数であって、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置し且つ所定の低仰角範囲内に位置する衛星の数(以下、着目衛星の数という)を監視し、該着目衛星の数の変動態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する、請求項2に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項4】
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数が所定数以上増加した場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定する、請求項3に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項5】
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数の平均値であって、所定距離又は所定時間内の着目衛星の数の平均値が、所定の基準数以下である状況から、前記着目衛星の数が前記所定の基準数を上回る状況になった場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定する、請求項3に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項6】
前記交差点判定手段は、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置する衛星からの電波におけるマルチパスの発生態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する、請求項1に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項7】
前記交差点判定手段は、移動体の移動方向に対して直角な方向を中心とした所定範囲内の方向に位置し且つマルチパスが発生した衛星の数(以下、着目衛星の数という)を監視し、該着目衛星の数の変動態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する、請求項6に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項8】
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数が所定数以上減少した場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定する、請求項7に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項9】
前記交差点判定手段は、前記着目衛星の数の平均値であって、所定距離又は所定時間内の着目衛星の数の平均値が所定の基準数以上である状況から、前記着目衛星の数が前記所定の基準数を下回る状況になった場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定する、請求項7に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項10】
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信状態に基づいて導出される電波の受信強度に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する、請求項1に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項11】
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信状態に基づいて導出される衛星電波の受信強度を監視し、該受信強度の変動態様に基づいて、前記移動体が交差点を通過したか否かを判定する、請求項10に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項12】
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信強度が所定値以上増加した場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定する、請求項11に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項13】
前記交差点判定手段は、衛星からの電波の受信強度の平均値であって、所定距離又は所定時間内の平均値が所定の基準値以下である状況から、衛星からの電波の受信強度が前記所定の基準値を上回る状況になった場合に、前記移動体が交差点を通過したと判定する、請求項11に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項14】
前記交差点判定手段は、所定の高仰角範囲内に位置する衛星の電波の受信強度に基づいて、前記判定を行う、請求項10〜13のうちのいずれか1項に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項15】
前記交差点判定手段は、交差点の位置情報を含む所与の地図データに基づいて、前記移動体が交差点に対して所定距離内の交差点周辺に位置することを検出する検出手段を備え、
前記交差点判定手段は、前記検出手段により前記移動体が交差点周辺に位置することが検出された場合に、前記判定を行う、請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項16】
前記交差点判定手段において前記移動体が交差点を通過したと判定された場合に、所与の交差点位置情報に基づいて、移動体の位置情報を補正する補正手段を更に備える、請求項1〜15のうちのいずれか1項に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項17】
前記補正手段は、前記交差点判定手段において前記移動体が交差点を通過したと判定された場合に、該交差点の位置に移動体が位置するように、移動体の位置情報を補正する、請求項16に記載の移動体用位置算出装置。
【請求項18】
前記移動体は、車両である、請求項1〜17のうちのいずれか1項に記載の移動体用位置算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−192257(P2009−192257A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30662(P2008−30662)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】