移動機、及び電力制御方法
【課題】送信電力を制御するための制御信号の判定性能を向上させる。
【解決手段】送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、第1の固有信号と受信信号に含まれる制御信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、を備える。
【解決手段】送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、第1の固有信号と受信信号に含まれる制御信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行なう移動機に関し、例えば、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)などの無線による無線通信を行う移動機に関する。
【背景技術】
【0002】
W−CDMA方式は、IMT−2000(International Mobile Telecommunications-2000)で定められた無線通信インタフェースの1つであり、最も主流の無線通信方式に位置づけられている。W−CDMAは、最大384Kbpsの伝送速度により、音声、動画像、データ等のマルチメディアアクセスを可能にしている。
【0003】
近年になってW−CDMAの技術をベースにしたHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)及びHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)と呼ばれる無線通信方式の研究・開発が進められている。
【0004】
図1は、HSUPAの通信を説明する図である。UE(User Equipment)から基地局への上り伝送時にHSUPAで通信を行う。UEは、基地局へ上りデータ伝送要求としてSI(Scheduling Information)を送信する。SIには、UEが送ろうとする送信データに関する情報がマッピングされており、例えば、「最優先論理チャネルID」「全論理チャネルデータ量」「最優先論理チャネルデータ量」「UEの送信可能な送信電力」の情報がマッピングされる。
【0005】
上りE−DPCCH(E-DCH Dedicated Physical Control Channel)には、上りデータに関する情報がマッピングされており、E−TFCI(E-DCH Transport Format Combination Indicator)、RSN(Retransmission Sequence Number)、Happybitがマッピングされる。
【0006】
基地局は、UEから送られた複数のSIを集計し、UEの通信品質や上りデータの優先度等に基づいて、上り伝送を行うUEの送信タイミングを決めるスケジューリングを行う。基地局はスケジューリング後、UEへ上り伝送許可としてGrantを送信する。Grantには、absolute grantとrelative grantの2種類があり、absolute grantは、下りE−AGCH(E-DCH Absolute Grant Channel)にて送信される。基地局は、各UEが送信することを許される最大電力を各UEに通知する。また、relative grantは、下りE−RGCH(E-DCH Relative Grant Channel)にて送信される。基地局は、各UEが送信する電力を現在より増加させるか、減少させるか、維持するかを、「Up(増加)、Down(減少)、又はHold(維持)」を信号成分として各UEに通知する。
【0007】
UEは、Grantに基づいて上り伝送を許可されてから、E−DCH(Enhanced Dedicated Channel)と呼ばれる個別チャネルによって、ユーザ情報を基地局へ伝送することで、高速上りアクセスを可能にする。HSUPAシステムでは、HSDPAシステムと同様に再送制御処理を行い、下りE−HICH(E-DCH HARQ Acknowledgement Indicator Channel)によりE−DCHのACK又はNACK情報をUEが受信する。
【0008】
HSUPAは、基地局のE−DCHの受信電力が所望のスループットとなるように、上り送信要求のあるUEに対して、E−RGCHの信号成分「Up、Down、又はHold」を用いて、送信電力の増加、維持、又は減少を指示する。UEは、E−RGCHの「Up、Down、又はHold」信号に従い、上りE−DCHの送信電力を決定する。E−RGCHは、基地局からE−RGCH固有のシグネチャパターンを掛けあわせて送信される。UEはE−RGCH固有のシグネチャパターンと受信したE−RGCH信号との相関値を算出することで、E−RGCHが表1のどのCommandで送信されたかを判断する。
【0009】
【表1】
【0010】
ここで、UE側では、「Up、Down、又はHold」の判定を行うのに、E−RGCH相関値と閾値とを比較する。例えば、以下のE−RGCH信号判定条件を用いる。
UP : CE−RGCH > Th
DOWN: CE−RGCH < −Th
HOLD:−Th ≦ CE−RGCH ≦ Th
CE−RGCHは、受信したE−RGCHとE−RGCHのシグネチャパターンとの相関値であり、ThはE−RGCHの閾値である。閾値Thは、例えば、移動機の出荷前に実験などを踏まえて適切な値に設定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】3GPP TS 25.211,5.3.2.4 E-DCH Relative Grant Channel
【非特許文献2】3GPP TS 25.212,Mapping for E RGCH Relative Grant
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
閾値Thは、例えば、受信環境の悪い環境下でもUp、Down、又はHoldを識別可能となるように予め設定される値である。受信環境の悪い環境下では、受信したE−RGCHとE−RGCHの固有のシグネチャパターンとの相関値が小さくなり、この相関値でUp、Down、又はHoldを判定するには閾値も小さな値を設定する必要がある。
【0013】
図2は、受信環境が悪い場合の相関値及び閾値の一例を示す図である。図2に示すように、受信環境が悪い場合、E−RGCHのシグネチャパターンとの相関値は小さくなるため、閾値A、Bもその絶対値が小さな値に設定される。以下、閾値A、Bの絶対値は同じとするが、必ずしも同じである必要はない。
【0014】
一方、E−RGCHのHold信号は、無送信状態なので、シグネチャパターンとの相関は低くなる。しかし、無送信状態はランダムパターンとなるので、このランダムパターンとシグネチャパターンとの相関が若干強くなる場合もある。この場合、無送信状態でも閾値よりE−RGCHの相関値が上回ってしまい、Up、またはDownと誤判定してしまう場合がある。以下、具体例について説明する。
【0015】
図3は、受信環境が良い場合の相関値及び閾値の一例を示す図である。図3に示すように、受信環境が良い場合には、Up信号の相関値は1に近い値となり、Down信号の相関値は−1に近い値となる。Hold信号はランダムパターンとなるので、Hold信号の相関値は0に近い値となる。しかし、図3に示す相関値Aのように相関値が若干強くなるHold信号もあり、この相関値Aは閾値A以上となるので、本来はHoldであるのにUpと誤判定されてしまう。
【0016】
HSUPAシステムとして、通信レートが良好な場合でも、E−RGCHの信号判定を誤ってしまうため、適正な送信電力設定が行えない場合がある。その結果、送信Powerが低く送信されてスループットの劣化や、送信Powerが過剰に送信されて他の端末への干渉が高くなり、システムスループットの劣化が発生してしまう。
【0017】
そこで、開示の移動機は、上記課題に鑑みてなされたものであり、送信電力を制御するための送信信号の判定性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
開示の一態様における移動機は、送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、前記比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、前記閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、を備える。
【0019】
また、他の態様における電力制御方法は、移動機における電力制御方法であって、送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信し、第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とに求められる相関値と比較される閾値を、受信環境に応じて変更し、変更された閾値と前記相関値とを比較し、比較結果に基づいて送信電力を制御する。
【発明の効果】
【0020】
開示の移動機、電力制御方法によれば、送信電力を制御するための制御信号の判定性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】HSUPAの通信を説明する図。
【図2】受信環境が悪い場合の相関値及び閾値の一例を示す図。
【図3】受信環境が良い場合の相関値及び閾値の一例を示す図。
【図4】実施例における移動機のハードウェアの一例を示すブロック図。
【図5】実施例1における移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図6】パス数を判定する一例を示す図。
【図7】パス数と閾値とを対応付けたテーブルの一例を示す図。
【図8】受信環境が良い場合の判定閾値の一例を示す図。
【図9】受信環境が良くない場合の判定閾値の一例を示す図。
【図10】測定1を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図11】パス数判定処理及び係数選択処理の一例を示すフローチャート。
【図12】測定1を用いる他の移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図13】測定2を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図14】測定2を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図15】測定3を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図16】測定3を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図17】測定4を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図18】測定4を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図19】測定5を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図20】測定5を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図21】測定6を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図22】測定6を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図23】測定7を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図24】測定7を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図25】測定8を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図26】測定8を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図27】実施例4における移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図28】実施例4における送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
図4は、実施例における移動機のハードウェアの一例を示すブロック図である。図1に示すように、移動機1は、アンテナ10、無線部20、ベースバンド処理部30、制御部40、端末インタフェース部50を有する。
【0024】
アンテナ10は、送信アンプで増幅された無線信号を送信し、また、基地局から無線信号を受信する。無線部20は、ベースバンド処理部30で拡散された送信信号をD/A変換し、直交変調により高周波信号に変換し、その信号を電力増幅器により増幅する。無線部20は、受信した無線信号を増幅し、その信号をA/D変換してベースバンド処理部30に伝送する。
【0025】
ベースバンド処理部30は、送信データの誤り訂正符号の追加、データ変調、拡散変調、受信信号の逆拡散、受信環境の判定、各チャネル信号の閾値判定、誤り訂正復号などのベースバンド処理を行う。
【0026】
制御部40は、制御信号の送受信などの無線制御を行う。端末インタフェース部50は、データ用アダプタ処理、ハンドセットおよび外部データ端末とのインタフェース処理を行う。
【0027】
図5は、実施例1における移動機1の機能の一例を示すブロック図である。移動機1は、受信部101、逆拡散部102、CPICHチャネル推定部103、同期検波部104、測定部105、閾値生成部106、E−RGCH閾値比較部107、R−RGCH判定部108、電力制御部109、E−AGCH復号処理部110、E−HICH閾値比較部111、E−HICH判定部112を有する。図5に示す機能は、図4に示すベースバンド処理部30で実現されうる。
【0028】
受信部101は、無線部20から入力された受信信号をE−AGCH、E−HICH、E−RGCH、CPICH(Common Pilot Channel)などの各チャネルに分離する。逆拡散部102は、受信部101から出力された各チャネルに対し、送信側の拡散符号と同一の拡散符号を乗算して逆拡散する。
【0029】
逆拡散部102は、E−AGCH逆拡散部121、E−HICH逆拡散部122、E−RGCH逆拡散部123、CPICH逆拡散部124を含む。各逆拡散部121〜124は、各チャネルに拡散符号を乗算して逆拡散する。
【0030】
CPICHチャネル推定部103は、CPICH逆拡散部124から出力されるチャネルの逆拡散値を取得し、取得した逆拡散値に基づいてチャネル補償を行う位相回転量を算出する。CPICHチャネル推定部103は、算出した位相回転量を同期検波部104に出力する。CPICHチャネル推定部103は、逆拡散値を取得したタイミングを復調タイミングとして同期検波部104に出力する。
【0031】
同期検波部104は、逆拡散部102から出力される各逆拡散値を取得し、取得した各逆拡散値に対して、CPICHチャネル推定部103から取得した復調タイミングで、位相回転量により位相補償を行って同期検波を行う。同期検波部104は、各チャネル信号の逆拡散値を同期検波するため、E−AGCH同期検波部131、E−HICH同期検波部132、E−RGCH同期検波部133、CPICH同期検波部134を有する。
【0032】
E−AGCH同期検波部131は、同期検波された信号をE−AGCH復号処理部110に出力する。E−HICH同期検波部132は、E−HICH相関値を算出し、算出した相関値をE−HICH閾値比較部111に出力する。
【0033】
E−RGCH同期検波部133は、逆拡散された信号に含まれるシグネチャパターンとE−RGCH固有のシグネチャパターンとの相関値であるE−RGCH相関値を算出し、算出した相関値をE−RGCH閾値比較部107に出力する。E−RGCH信号は、送信電力を制御するための制御信号である。
【0034】
CPICH同期検波部134は、CPICHの同期検波後、CPICH信号成分Sと干渉成分Iとを以下の式により算出する。
【0035】
【数1】
CpichSym(i):0シンボル目からN−1シンボル目までのCPICH逆拡散値
S:CPICH信号成分
I:CPICH干渉成分
CPICH同期検波部134は、所定の固有信号とCPICH信号との相関値を算出し、算出した相関値を測定部105に出力する。
【0036】
測定部105は、移動機1の受信環境を測定する。実施例1において、測定部105は、CPICH信号に基づいて受信環境を測定する。CPICH信号に基づく場合、様々な手法により受信環境が求められるが、詳細は後述する。測定部105は、求められた受信環境に関する情報、例えばパス数を閾値生成部106に出力する。
【0037】
閾値生成部106は、E−RGCH信号のUp、Down、又はHoldの判定に用いる判定閾値を生成する。判定閾値は、以下、閾値ともいう。閾値生成部106は、例えば、CPICH信号の干渉成分Iと受信環境を示す情報とに基づいて、閾値を生成する。閾値の生成の詳細は受信環境の判定と合わせて後述する。閾値生成部106は、生成した閾値をE−RGCH閾値比較部107に出力する。閾値生成部106は、移動機1の受信環境に応じて判定閾値を動的に生成することで、判定閾値を変更する。
【0038】
E−RGCH閾値比較部107は、E−RGCH同期検波部133から取得したE−RGCH相関値と、閾値生成部106から取得した閾値とを比較する。E−RGCH閾値比較部107は、比較結果をE−RGCH判定部108に出力する。
【0039】
E−RGCH判定部108は、取得した比較結果に基づいて、E−RGCHの信号成分のUp、Down、又はHoldの判定を行う。具体的な判定は以下の通りである。
Up : CE−RGCH>Th
Down : CE−RGCH>−Th
Hold :−Th≦CE−RGCH≦Th
E−RGCH判定部108は、Up、Down、又はHoldの判定結果を電力制御部109に出力する。E−RGCH閾値比較部107とE−RGCH判定部108は1つの機能としてもよい。
【0040】
電力制御部109は、E−RGCH判定部108の判定結果に基づいて送信電力を制御する。例えば、電力制御部109は、Upと判定されていれば送信電力を上げるような制御信号を無線部10の送信電力増幅器に送信する。電力制御部109は、Holdと判定されていれば送信電力を維持するため、送信電力増幅器に対して制御信号を出力しない。電力制御部109は、Downと判定されていれば送信電力を下げるような制御信号を無線部10の送信電力増幅器に送信する。
【0041】
E−AGCH復号処理部110は、E−AGCH信号の復号処理を行う。E−HICH閾値比較部111は、E−HICH同期検波部132からE−HICH相関値を取得し、Ack/Nackの判定をするため、E−HICH相関値と閾値との比較を行う。比較結果は、E−HICH判定部112に出力される。
【0042】
E−HICH判定部112は、E−HICH閾値比較部111から比較結果を取得し、取得した比較結果に基づいて、ACK又はNACKの判定を行う。
【0043】
これにより、移動機1の受信環境に応じて送信電力を制御するための閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号の判定性能を向上させ、安定したスループットでの通信が可能となる。以下、CPICH信号に基づいた受信環境の測定方法について説明する。
【0044】
(測定1)
測定1は、CPICH信号からマルチパスを判定して受信環境を測定する。図5に示す測定部105は、相関値タイミング検出部141、相関値比較判定部142、パス数判定部143を有する。
【0045】
相関値タイミング検出部141は、タイミングを徐々に変化させて、各タイミングでの相関値をCPICH同期検波部134から取得し、さらに相関値が大きいいくつかのパスのタイミングを検出する。相関値比較判定部142は、相関値タイミング検出部141で検出されたタイミングでの相関値を相関閾値と比較し、比較結果をパス数判定部143に出力する。
【0046】
パス数判定部143は、CPICHの相関値のピーク値と相関閾値との比較結果に基づいてパス数を判定する。図6は、パス数を判定する一例を示す図である。図6に示す例では、相関値が相関閾値を超えた数をカウントし、カウント数が1であれば1パス、カウント数が2以上であればマルチパスであると判定する。他のパス判定方法として、最大ピーク値が他のピーク値の合計以上であれば1パス、小さければマルチパスと判定してもよい。他にも、最大ピーク値から所定値を減算した値より大きければピークと判定してもよい。1パスかマルチパスかの判定結果は、閾値生成部106に出力される。
【0047】
なお、パス数判定部143は、1パスかマルチパスかの判定だけでなく、マルチパスをさらに分けて判定してもよい。例えば、パス数判定部143は、1パス、2〜4パス、4〜7パス、8パス以上という判定をしてもよい。パス数判定部143は、パス数が切り替わった時にだけ、パス数を係数選択部151に出力するようにしてもよい。例えば、パス数の出力タイミングは、1パスからマルチパス、又はマルチパスから1パスに判定が変わった時などである。
【0048】
閾値生成部106は、係数選択部151、閾値算出部152を有する。係数選択部151は、測定部105から取得したパス数の判定結果に基づいて、係数を選択する。この係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するための係数である。係数選択部151は、1パスであれば係数α1を選択し、マルチパスであれば係数αmを選択する。選択された係数は閾値算出部152に出力する。
【0049】
閾値算出部152は、CPICH同期検波部134から取得したCPICH干渉成分Iと、係数選択部151から取得した係数とに基づいて、閾値Thを求める。例えば、以下の式により閾値Thを求めてもよい。
パス数=1の場合
閾値Th=係数α1×干渉成分I 式(2)
パス数>1の場合
閾値Th=係数αm×干渉成分I 式(3)
α1>αm:α1、αmは実験により適切な値を与えるとよい。閾値算出部152は、算出された閾値ThをE−RGCH閾値比較部107に出力する。
【0050】
閾値生成部106は、上記以外にも、パス数と閾値とを対応付けたテーブルを保持することで、閾値を求めてもよい。図7は、パス数と閾値とを対応付けたテーブルの一例を示す図である。閾値生成部106は、パス数判定部143から取得したパス数に基づいて、図7に示すようなテーブルを参照することで、閾値Thを求めてもよい。例えば、1パスであればT1を閾値Thとする。T1とT2との関係は、T1>T2とする。
【0051】
測定1によれば、マルチパスよりも1パスの方が、受信環境が良いとし、1パスの場合には判定閾値をマルチパスの場合よりも大きくする。これにより、移動機1は、パス数に応じて受信環境を測定し、受信環境に応じてE−RGCH信号の判定閾値を可変とすることができる。なお、パス数は、1パスかマルチパス以外にも、さらに細分化して閾値Thを3つ以上求めても良い。
【0052】
図8は、受信環境が良い場合の判定閾値の一例を示す図である。図8に示すように受信環境が良い場合、Up又はHoldの閾値A及びDown又はHoldの閾値Bの絶対値は、受信環境が良くない場合に比べて大きい。
【0053】
図9は、受信環境が良くない場合の判定閾値の一例を示す図である。図9に示すように受信環境が良くない場合、Up又はHoldの閾値A及びDown又はHoldの閾値Bの絶対値は、受信環境が良い場合に比べて小さい。受信環境が悪い場合の判定閾値の絶対値は、従来の判定閾値の絶対値よりも小さくしてもよい。これにより、受信環境をパス数に基づいて測定することで、マルチパス干渉による信号劣化に適応することが可能になる。
【0054】
次に、測定1を用いた送信電力の制御処理について説明する。図10は、測定1を用いた送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図10に示すステップS101で、受信部101は、アンテナ10から信号を受信し、各チャネル信号に分離する受信処理を行う。
【0055】
ステップS102で、CPICH逆拡散部124は、受信部101により分離されたCPICHに逆拡散処理を行い、CPICH逆拡散値を求める。ステップS103で、CPICHチャネル推定部103は、CPICH逆拡散部124から取得したCPICH逆拡散値からチャネル推定値を求める。
【0056】
ステップS104で、CPICH同期検波部134は、CPICHチャネル推定部103から取得したチャネル推定値を用いて同期検波を行う。同期検波後に、CPICH同期検波部134は、CPICH干渉成分Iを算出し、また、CPICH信号の相関値を算出する。
【0057】
ステップS105で、パス数判定部143は、CPICH相関値に基づいてパス数を判定する。ステップS106で、係数選択部151は、パス数判定部143により判定されたパス数に基づいて係数αを選択する。係数の選択は、パス数に応じた係数を保持するテーブルなどを参照することで選択してもよい。ステップS107で、閾値算出部152は、CPICH干渉成分Iと係数αを乗算して閾値Thを求める。
【0058】
ステップS108で、E−RGCH閾値比較部107は、閾値算出部152により算出された閾値とE−RGCH相関値との比較を行って判定処理を行う。ステップS108による判定処理は、例えば、以下の通りである。
|E−RGCH相関値|≦|閾値Th| ・・・条件1
条件1を満たせばステップS109に進む。ステップS109で、E−RGCH判定部108は、条件1を満たす場合Holdと判定する。
|E−RGCH相関値|>|閾値Th|かつE−RGCH>0 ・・・条件2
条件2を満たせばステップS110に進む。ステップS110で、E−RGCH判定部108は、条件2を満たす場合Upと判定する。
|E−RGCH相関値|>|閾値Th|かつE−RGCH<0 ・・・条件3
条件3を満たせばステップS111に進む。ステップS111で、E−RGCH判定部108は、条件3を満たす場合Downと判定する。
【0059】
ステップS112で、電力制御部109は、E−RGCH相関値の判定結果に基づいて、基地局に送信する際の電力を制御する。電力制御部109は、例えば、判定結果がUpであれば送信出力を上げるよう制御信号を受信部101の送信電力増幅器に出力し、判定結果がDownであれば制御信号を受信部101の送信電力増幅器に出力する。電力制御部109は、判定結果がHoldであれば、現在の送信出力を維持するため制御信号を出力しない。
【0060】
次に、ステップS105のパス数判定処理とステップS106の係数選択処理との詳細を説明する。図11は、パス数判定処理及び係数選択処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
パス数判定処理は、ステップS201からステップS203まで行う。ステップS201で、パス数判定部143は、CPICH相関値の閾値判定を行う。相関値の閾値判定は、相関値が相関閾値より大きければステップS202に進み、相関値が相関閾値以下であればステップS201に戻る。
【0062】
ステップS202で、パス数判定部143は、パス数のカウント値を累積する。ステップS203で、パス数判定部143は、カウントが終了したか否かを判定する。パス数判定部143は、全ての復調タイミングでの相関値の算出が終了していればステップS204に進み、終了していなければステップS201に戻る。
【0063】
係数選択処理は、ステップS204からステップS207まで行う。ステップS204で、係数選択部151は、パス数判定部143から取得したパス数がパス閾値以下か否かを判定する。パス閾値は、例えば1とする。
【0064】
ステップS204で、パス数がパス閾値以下であればステップS205に進み、パス数がパス閾値より大きい場合はステップS206に進む。ステップS205で、係数選択部151は、係数α1を選択する。ステップS206で、係数選択部151は、係数αmを選択する。なお、α1>αmである。
【0065】
これにより、受信環境をパス数に基づいて測定することで、マルチパス干渉による信号劣化に適応することが可能になる。
【0066】
次に、移動機が、パス数の判定結果をE−RGCH同期検波部107に適用する場合について説明する。図12は、測定1を用いる他の移動機の機能の一例を示すブロック図である。
【0067】
以下、パス数判定部201、E−RGCH同期検波部202について説明する。その他の機能は、図5と同様である。パス数判定部201は、パス数の判定結果を係数選択部151とE−RGCH同期検波部202に出力する。
【0068】
E−RGCH同期検波部202は、パス数判定部201から取得したパス数分のE−RGCH信号の同期検波を行う。例えば、パス数が1であれば、E−RGCH同期検波部202は、1つだけ同期検波をすればよい。パス数判定部201により判定されたパス数をE−RGCH同期検波部202に出力することで、E−RGCH同期検波部202は、E−RGCH信号の復調性能を向上させることができる。
【0069】
(測定2)
測定2は、CPICH信号からフェージング速度を判定して受信環境を測定する。図13は、測定2を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図13に示す測定部302は、ドップラー周波数算出部311、フェージング速度判定部312を有する。以下、測定部302によりフェージング速度を判定して閾値を生成する方法について説明する。CPICHチャネル推定部301、測定部302、係数選択部303、CPICH同期検波部304以外の機能は、図5に示す機能と同様である。
【0070】
CPICHチャネル推定部301は、CPICHチャネル推定値をCPICH同期検波部134及び測定部302に出力する。
【0071】
測定部302は、CPICHチャネル推定値に基づいてフェージング速度を求める。フェージング速度の求め方は以下説明する。ドップラー周波数算出部311は、取得したチャネル推定値に基づいて位相のズレを示すドップラー周波数を算出する。フェージング速度判定部312は、ドップラー周波数に基づいてフェージング速度を判定する。フェージング速度は、一般的な技術を用いて求めればよい。フェージング速度判定部312は、判定したフェージング速度を係数選択部303に出力する。フェージング速度判定部312は、速度閾値が、今回判定したフェージング速度と前回判定したフェージング速度との間にある場合に、今回判定したフェージング速度を係数選択部303に出力するようにしてもよい。これにより、フェージング速度判定部312は、フェージング速度を判定する度に、判定したフェージング速度を係数選択部303に出力しなくてもよい。
【0072】
係数選択部303は、フェージング速度判定部312から取得したフェージング速度に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる係数である。係数選択部303は、例えば、フェージング速度が60km/h(速度閾値)未満であれば係数αAを選択し、フェージング速度が、60km/h以上であれば係数αBを選択する。フェージング速度の速度閾値である60km/hは、適宜設定変更可能としてもよい。
【0073】
αAとαBとの関係は、αA>αBである。αAとαBを総称してαとする。係数αは、実験等により適切な値が設定されればよい。係数選択部303は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0074】
CPICH同期検波部304は、同期検波後、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを算出し、CPICH信号成分Sは、閾値生成部106に出力する。
【0075】
図14は、測定2を用いた送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図14に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS301で、CPICHチャネル推定部301は、求めたチャネル推定値をCPICH同期検波部304及び測定部302を出力する。
【0076】
ステップS302で、CPICH同期検波部304は、同期検波後、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iを算出し、CPICH干渉成分Iを閾値算出部152に出力する。
【0077】
ステップS303で、測定部302は、CPICHチャネル推定値からドップラー周波数を算出し、フェージング速度を判定する。判定したフェージング速度は、係数選択部303に出力される。
【0078】
ステップS304で、係数選択部303は、フェージング速度が例えば60km/h未満であれば係数αAを選択し、フェージング速度が例えば60km/h以上であれば係数αBを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0079】
これにより、フェージング速度から受信環境を測定することで、端末の高速移動による信号劣化に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0080】
(測定3)
測定3は、CPICH信号からCPICHのSIR(Signal to Interference Ratio)を算出して受信環境を測定する。SIRは、信号対干渉比である。図15は、測定3を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図15に示す測定部402は、SIR算出部411を有する。以下、測定部402によりSIR値を算出して閾値を生成する方法について説明する。CPICH同期検波部401、測定部402、係数選択部403以外の機能は、図5に示す機能と同様である。
【0081】
CPICH同期検波部401は、同期検波後、式1により、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを算出する。CPICH同期検波部401は、算出したCPICH信号成分S及びCPICH干渉成分Iを測定部402に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0082】
測定部402に含まれるSIR算出部411は、取得したCPICH信号成分S及びCPICH干渉成分Iに基づいてSIR値を算出する。SIR値は、信号成分Sを干渉成分Iで除算することにより求められる。SIR算出部411は、算出したSIR値を係数選択部403に出力する。SIR算出部411は、SIR閾値が、今回算出したSIR値と前回算出したSIR値との間にある場合に、今回算出したSIR値を係数選択部403に出力するようにしてもよい。これにより、SIR算出部411は、SIR値を算出する度に、算出したSIR値を係数選択部403に出力しなくてもよい。
【0083】
係数選択部403は、SIR算出部411から取得したSIR値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部403は、SIR値が例えば10dB(SIR閾値)未満であれば係数αAを選択し、SIR値が10dB以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部403は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0084】
図16は、測定3を用いた送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図16に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS401で、CPICH同期検波部401は、算出したCPICH信号成分S及びCPICH干渉成分Iを測定部402に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0085】
ステップS402で、SIR算出部411は、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを用いてSIR値を算出する。SIR算出部411は、算出したSIR値を係数選択部403に出力する。
【0086】
ステップS403で、係数選択部403は、取得したSIR値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部403は、例えば、SIR値が10dB以上であれば係数αBを選択し、10dB未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0087】
これにより、SIR値に基づいて受信環境を測定することで、干渉電力の信号劣化に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0088】
(測定4)
測定4は、CPICH信号からCPICHのSIRを算出してCQI(Channel Quality Indicator)に変換し、受信環境を測定する。CQIは、チャネル品質インジケータである。図17は、測定4を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図17に示す測定部501は、SIR算出部411、CQI変換部511を有する。以下、測定部501によりCQI値を算出して閾値を生成する方法について説明する。測定部501、係数選択部502以外の機能は、図5及び図15に示す機能と同様である。
【0089】
測定部501は、算出したSIR値からCQI値に変換する。具体的には、CQI変換部511は、SIR算出部411から取得したSIR値に基づいてCQI値に変換する。CQI変換部511は、例えば、SIR値からCQI値へ変換する変換テーブルを保持し、この変換テーブルを参照することでCQI値へ変換してもよい。CQI変換部511は、変換したCQI値を係数選択部502に出力する。CQI変換部511は、CQI閾値が、今回変換したCQI値と前回変換したCQI値との間にある場合に、今回変換したCQI値を係数選択部502に出力するようにしてもよい。これにより、CQI変換部511は、CQI値に変換する度に、変換したCQI値を係数選択部502に出力しなくてもよい。
【0090】
係数選択部502は、CQI変換部511から取得したCQI値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部502は、CQI値が例えば10(CQI閾値)未満であれば係数αAを選択し、CQI値が10以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部502は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0091】
図18は、測定4を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図16に示す処理で、図10及び図16と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS501で、測定部501は、CQI値を求める。具体的には、CQI変換部511は、SIR算出部411からSIR値を取得し、SIR値をCQI値に変換する。CQI変換部511は、CQI値を係数選択部502に出力する。
【0092】
ステップS502で、係数選択部502は、取得したCQI値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部502は、例えば、CQI値が10以上であれば係数αBを選択し、10未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0093】
これにより、CQI値に基づいて受信環境を測定することで、端末の受信品質を指標化した値に応じてE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0094】
(測定5)
測定5は、CPICH信号からCPICHの受信電力を算出して受信環境を測定する。図19は、測定5を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図19に示す測定部602は、受信電力算出部611を有する。以下、測定部602により受信電力を算出して閾値を生成する方法について説明する。CPICH同期検波部601、測定部602、係数選択部603以外の機能は、図5に示す機能と同様である。
【0095】
CPICH同期検波部601は、同期検波後、式1により、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを算出する。CPICH同期検波部601は、算出したCPICH信号成分Sを測定部602に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0096】
測定部602に含まれる受信電力算出部611は、CPICH信号成分Sに基づいて所定の周期でCPICHの受信電力RSCP(Received Signal Code Power)を算出する。受信電力算出部611は、算出した受信電力を係数選択部603に出力する。受信電力算出部611は、電力閾値が、今回算出した受信電力と前回算出した受信電力との間にある場合に、今回算出した受信電力を係数選択部603に出力するようにしてもよい。これにより、受信電力算出部611は、受信電力を算出する度に、算出した受信電力を係数選択部603に出力しなくてもよい。
【0097】
係数選択部603は、受信電力算出部611から取得した受信電力に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部603は、受信電力が例えば50dBm(電力閾値)未満であれば係数αAを選択し、受信電力が50dBm以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部603は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0098】
図20は、測定5を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図20に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS601で、CPICH同期検波部601は、算出したCPICH信号成分Sを測定部602に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0099】
ステップS602で、受信電力算出部611は、CPICH信号成分Sを用いて受信電力を算出する。受信電力算出部611は、算出した受信電力を係数選択部603に出力する。
【0100】
ステップS603で、係数選択部603は、取得した受信電力に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部603は、例えば、受信電力が50dBm以上であれば係数αBを選択し、50dBm未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0101】
これにより、受信電力に基づいて受信環境を測定することで、端末が弱電界環境にあるか否かに適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0102】
以上、実施例1によれば、CPICH信号に基づいて測定した受信環境に応じてE−RGCHの判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0103】
[実施例2]
次に、実施例2における移動機について説明する。実施例2では、DPCH信号に基づいて受信環境を測定する。以下、DPCH信号に基づいて受信環境を測定する測定6と測定7について説明する。
【0104】
(測定6)
図21は、測定6を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図21に示す移動機は、受信部701、逆拡散部702、同期検波部703、DPCH復号処理部704、係数選択部705を有する。その他の機能は、図5に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。受信部701は、受信信号を受信し、E−AGCH、E−HICH、E−RGCH、DPCH、CPICHの各チャネル信号に分離する。
【0105】
DPCH逆拡散部711は、受信部701から取得したDPCH信号に逆拡散処理を行い、DPCHの逆拡散値を求める。DPCH逆拡散部711は、求めた逆拡散値をDPCH同期検波部721に出力する。
【0106】
DPCH同期検波部721は、DPCH逆拡散部711から逆拡散値を取得し、CPICHチャネル推定部103から取得した位相回転量により位相補償を行って同期検波を行う。同期検波された信号は、DPCH復号処理部704に出力される。
【0107】
CPICH同期検波部722は、CPICHのチャネル推定値からCPICHの干渉成分Iを算出する。算出の仕方は例えば式1の通りである。CPICH同期検波部722は、CPICHの干渉成分Iを閾値算出部152に出力する。
【0108】
DPCH復号処理部704は、同期検波されたDPCH信号に対して復号処理を行う。復号処理は、誤り訂正処理、CRC(Cyclic Redundancy Check)判定までの復号処理を行なう。DPCH復号処理部704は、CRCの判定結果を係数選択部705に出力する。測定6では、DPCH復号処理部704が受信環境を測定する測定部の機能に相当する。DPCH復号処理部704は、CRC閾値が、今回判定したCRC結果と前回判定したCRC結果との間にある場合に、今回判定したCRC結果を係数選択部705に出力するようにしてもよい。
【0109】
係数選択部705は、DPCH復号処理部704から取得したCRC判定結果に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部705は、DPCH信号のBLER(BLock Error Rate)が、例えば0.05未満であれば係数αAを選択し、BLERが0.05(CRC閾値)以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部705は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0110】
図22は、測定6を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図22に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS701で、DPCH逆拡散部711は、DPCH逆拡散値をDPCH同期検波部721に出力する。
【0111】
ステップS702で、DPCH同期検波部721は、DPCH逆拡散値に対し、同期検波を行い、同期検波後の信号をDPCH復号処理部704に出力する。
【0112】
ステップS703で、DPCH復号処理部721は、DPCH信号の復号処理を行い、CRC判定による判定結果から取得できるBLER(ブロックエラーレート)を係数選択部705に出力する。
【0113】
ステップS704で、係数選択部705は、取得したCRC判定結果、例えばBLERに基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部705は、例えば、BLERが0.05以上であれば係数αBを選択し、0.05未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0114】
これにより、DPCHの誤り率に基づいて受信環境を測定することで、端末の復号性能に適応してE−RGCHの判定閾値を可変にすることができる。
【0115】
(測定7)
図23は、測定7を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図23に示す移動機は、DPCH同期検波部801、DPCH復号処理部802、係数選択部803を有する。その他の機能は、図21に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。測定7を用いる場合は、DPCH同期検波部801が受信環境の測定を行う測定部の機能に相当する。
【0116】
DPCH同期検波部801は、例えば、同期検波を行ったDPCH信号に含まれるDPDCH(Dedicated Physical Data Channel)信号のSIR値を求める。DPCH同期検波部801は、DPDCH信号のSIR値を係数選択部803に出力する。DPCH同期検波部801は、同期検波されたDPCH信号をDPCH復号処理部802に出力する。DPCH同期検波部801は、SIR閾値が、今回算出したSIR値と前回算出したSIR値との間にある場合に、今回算出したSIR値を係数選択部803に出力するようにしてもよい。これにより、DPCH同期検波部801は、SIR値を算出する度に、算出したSIR値を係数選択部803に出力しなくてもよい。
【0117】
DPCH復号処理部802は、同期検波されたDPCH信号に対して復号処理を行う。復号処理は、誤り訂正処理、CRC(Cyclic Redundancy Check)判定などの復号処理を行なう。
【0118】
係数選択部803は、DPCH同期検波部801から取得したDPDCH信号のSIR値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部803は、DPDCH信号のSIR値が、例えば10dB(SIR閾値)未満であれば係数αAを選択し、SIR値が10以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部803は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0119】
図24は、測定7を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図24に示す処理で、図10及び図22と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS801で、DPCH同期検波部801は、DPCH逆拡散値に対し、同期検波を行い、DPDCH信号のSIR値を係数選択部803に出力する。
【0120】
ステップS802で、係数選択部803は、取得したSIR値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部803は、例えば、SIR値が10dB以上であれば係数αBを選択し、10dB未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0121】
これにより、CPICH以外のチャネル品質に基づいて受信環境を測定することで、受信性能に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0122】
以上、実施例2によれば、DPCH信号に基づいて測定した受信環境に応じてE−RGCHの判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0123】
[実施例3]
次に、実施例3における移動機について説明する。実施例3では、各チャネル信号に基づいて受信環境を測定する。以下、各チャネル信号に基づいて受信環境を測定する測定8について説明する。
【0124】
(測定8)
図25は、測定8を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図25に示す移動機は、逆拡散部901、同期検波部902、Ior/Ioc算出部903、係数選択部904を有する。その他の機能は、図5に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。測定8を用いる場合は、Ior/Ioc算出部903が受信環境の測定を行う測定部の機能に相当する。
【0125】
逆拡散部902は、受信部701から取得した各チャネル信号に逆拡散処理を行う。逆拡散部902は、E−AGCH逆拡散部911、E−HICH逆拡散部912、E−RGCH逆拡散部913、DPCH逆拡散部914、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)逆拡散部915、SCCH(Shared Control Channel)逆拡散部916、CPICH逆拡散部917を有する。各逆拡散部911〜917は、逆拡散を行った逆拡散値をIor/Ioc算出部903及び同期検波部902に出力する。
【0126】
同期検波部902に含まれるCPICH同期検波部921は、CPICHの逆拡散値を同期検波した後に算出したCPICH干渉成分Iを、閾値算出部152及びIor/Ioc算出部903に出力する。
【0127】
Ior/Ioc算出部903は、取得した各チャネルの逆拡散値から全てのチャネルの信号(Ior)を求め、CPICH干渉成分Iからノイズ信号(Ioc)を求める。Ior/Ioc算出部903は、IorをIocで除算してIor/Ioc値を算出する。算出されたIor/Ioc値は、係数選択部904に出力される。Ior/Ioc算出部903は、Ior/Ioc閾値が、今回算出したIor/Ioc値と前回算出したIor/Ioc値との間にある場合に、今回算出したIor/Ioc値を係数選択部904に出力するようにしてもよい。これにより、Ior/Ioc算出部903は、Ior/Ioc値を算出する度に、算出したIor/Ioc値を算出しなくてもよい。
【0128】
係数選択部904は、Ior/Ioc算出部903から取得したIor/Ioc値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCHの判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部904は、Ior/Ioc値が、例えば10dB(Ior/Ioc閾値)未満であれば係数αAを選択し、Ior/Ioc値が10dB以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部904は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0129】
図26は、測定8を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図26に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS901で、逆拡散部901は、各チャネルの逆拡散値をIor/Ioc算出部902に出力する。
【0130】
ステップS902で、Ior/Ioc算出部903は、当該移動機宛ての信号の全てを示すIorを当該移動機宛てではない信号を示すIocで除算してIor/Ioc値を算出する。
【0131】
ステップS903で、係数選択部904は、取得したIor/Ioc値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部904は、例えば、Ior/Ioc値が10dB以上であれば係数αBを選択し、10dB未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0132】
これにより、移動機の受信信号成分と干渉電力成分とを考慮したIor/Ioc値に基づいて受信環境を測定することで、受信性能に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0133】
以上、実施例3によれば、各チャネル信号に基づいて測定した受信環境に応じてE−RGCHの判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0134】
[実施例4]
次に、実施例4における移動機について説明する。実施例4では、前述した各測定を任意に組み合わせて受信環境を測定する。以下、測定1と測定5とを組み合わせる例について説明する。
【0135】
図27は、実施例4における移動機の機能の一例を示すブロック図である。図27に示す移動機は、CPICH同期検波部1001、測定部1002、係数選択部1003を有する。その他の機能は、図5と図19に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。
【0136】
CPICH同期検波部1001は、算出したCPICH相関値及びCPICH信号成分Sを測定部1002に出力する。
【0137】
測定部1002は、測定1で説明したように相関値タイミング算出部141、相関値比較判定部142、パス数判定部143により、パス数を判定し、判定したパス数を係数選択部1003に出力する。測定部1002は、測定5で説明したように受信電力算出部611により、受信電力を算出し、算出した受信電力を係数選択部1003に出力する。
【0138】
係数選択部1003は、測定部1002から取得したパス数、及び受信電力に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部1003は、パス数がパス閾値(例えば1)より大きい場合、もしくは、受信電力が電力閾値(例えば50dBm)以上の場合に受信環境が悪いと判定して係数αBを選択する。係数選択部1003は、パス数がパス閾値以下、かつ、受信電力が電力閾値未満の場合に受信環境が良いと判定して係数αAを選択する。係数選択部1003は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0139】
図28は、実施例4における送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図28に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS1001で、CPICH同期検波部1001は、算出したCPICH相関値及びCPICH信号成分Sを測定部1002に出力する。
【0140】
ステップS1002で、測定部1003は、CPICH相関値に基づいてパス数を判定する。また、測定部1003は、CPICH信号成分Sに基づいて受信電力を算出する。パス数及び受信電力は、係数選択部1003に出力される。
【0141】
ステップS1003で、係数選択部1003は、取得したパス数及び受信電力に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部904は、例えば、パス数がパス閾値以下、かつ、受信電力が電力閾値未満の場合に受信環境が良いと判定して係数αAを選択し、それ以外の場合は受信環境が悪いと判定して係数αBを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0142】
これにより、例えば2つの測定方法を組み合わせることにより、受信環境が良いと判定される条件を制限し、1つの測定方法を用いるよりもE−RGCH信号の誤判定を少なくすることもできる。実際は受信環境が悪いにも係わらず、受信環境が良いと判定された場合、判定閾値の値が大きくなってしまうことで、誤判定が多くなってしまうことを防止する。
【0143】
実施例4では、測定1と測定5とを組み合わせたが、他の測定同士を組み合わせて、いずれも受信環境が良いと判定された場合に、係数選択部1003は、受信環境が良いと判定して係数αAを選択してもよい。
【0144】
以上、実施例4によれば、受信環境の各測定方法を任意に組み合わせて測定した受信環境に応じてE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0145】
次に、上述した各実施例における変形例について説明する。上述した各実施例で説明した送信電力の制御手順を移動機に実行させるためのプログラムとし、このプログラムをインストールして、移動機に実行させることにより上述した送信電力の制御処理を実現させることも可能である。
【0146】
また、このプログラムを、インターネットを介して移動機に送信し、このプログラムを受信した移動機は、このプログラムをインストールして、前述した送信電力の制御処理を実現させることも可能である。上記各実施例では、係数αは2つの場合の例を示したが、3つ以上あってもよく、この場合、受信環境を細分化して測定すればよい。各実施例において、係数αを選択する方法を説明したが、各閾値生成部は、測定1で説明したように、受信環境の指標と判定閾値とを対応付けたテーブルによって、判定閾値を生成又は選択してもよい。
【0147】
また、上記実施例では、HSUPA通信を例に説明したが、E−RGCH信号のように、移動機の送信電力を制御するための制御信号を用いる通信であれば、上記実施例は適用可能である。
【0148】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、上記変形例以外にも種々の変形及び変更が可能である。
【0149】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、
前記受信信号に含まれる前記制御信号と第1の固有信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、
前記閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、
を備える移動機。
(付記2)
前記受信信号に含まれる所定の信号に基づいて前記移動機の受信環境を測定する測定部をさらに備え、
前記閾値生成部は、
測定された受信環境に応じて前記閾値を生成する付記1記載の移動機。
(付記3)
前記閾値は、増加と維持とを判定する第1閾値と、減少と維持とを判定する第2閾値とを有し、
前記閾値生成部は、
受信環境に応じて前記第1閾値及び前記第2閾値を生成する付記2記載の移動機。
(付記4)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記判定部は、
前記共通パイロットチャネル信号と固有の信号との相関値に基づいて前記移動機の受信環境を判定する付記2又は3記載の移動機。
(付記5)
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の相関値に基づいてパス数を判定し、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と
を備える付記4記載の移動機。
(付記6)
判定されたパス数分の前記制御信号の同期検波を行う同期検波部をさらに備える付記5記載の移動機。
(付記7)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネル信号の受信電力を算出する電力算出部を備え、
前記閾値生成部は、
算出された受信電力に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記8)
前記測定部は、
前記受信環境を測定する方法を複数有し、
前記閾値生成部は、
複数の前記受信環境の測定結果に応じて前記閾値を生成する付記1記載の移動機。
(付記9)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の相関値に基づいてパス数を判定するパス数判定部と、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネルの受信電力を算出する電力算出部とを備え、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数、及び算出された受信電力に基づいて前記閾値を生成する付記2又は8記載の移動機。
(付記10)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号のチャネル推定値からフェージング速度を判定する速度判定部を備え、
前記閾値判定部は、
判定されたフェージング速度に応じて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記11)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の受信品質を算出する品質算出部を備え、
前記閾値生成部は、
算出された受信品質に応じて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記12)
前記受信信号は個別物理チャネル信号を含み、
前記閾値生成部は、
前記個別物理チャネル信号に含まれる個別物理データチャネル信号のCRCの計算結果、又は信号対干渉比の計算結果に基づいて前記閾値を生成する付記2又は3記載の移動機。
(付記13)
前記閾値生成部は、
前記受信信号に含まれる各チャネル信号の逆拡散値と共通パイロットチャネル信号の干渉成分とに基づいてIor/Ioc値を算出する算出部と、
算出されたIor/Ioc値に応じて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記14)
移動機における電力制御方法であって、
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信し、
前記受信信号に含まれる前記制御信号と第1の固有信号とにより求められる相関値と比較される閾値を、受信環境に応じて変更し、
変更された閾値と前記相関値とを比較し、
比較結果に基づいて送信電力を制御する電力制御方法。
【符号の説明】
【0150】
10 無線部
20 ベースバンド処理部
40 制御部
50 端末インタフェース部
101、701 受信部
102、702、901 逆拡散部
103、301 CPICHチャネル推定部
104、703、902 同期検波部
105、302、402、501、602、1002 測定部
106 閾値生成部
107 E−RGCH閾値比較部
108 E−RGCH判定部
109 電力制御部
151、303、403、502、603、705、803、904、1003 係数選択部
201 パス数判定部
202 E−RGCH同期検波部
304、401、601 CPICH同期検波部
704、802 DPCH復号処理部
801 DPCH同期検波部
903 Ior/Ioc算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行なう移動機に関し、例えば、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)などの無線による無線通信を行う移動機に関する。
【背景技術】
【0002】
W−CDMA方式は、IMT−2000(International Mobile Telecommunications-2000)で定められた無線通信インタフェースの1つであり、最も主流の無線通信方式に位置づけられている。W−CDMAは、最大384Kbpsの伝送速度により、音声、動画像、データ等のマルチメディアアクセスを可能にしている。
【0003】
近年になってW−CDMAの技術をベースにしたHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)及びHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)と呼ばれる無線通信方式の研究・開発が進められている。
【0004】
図1は、HSUPAの通信を説明する図である。UE(User Equipment)から基地局への上り伝送時にHSUPAで通信を行う。UEは、基地局へ上りデータ伝送要求としてSI(Scheduling Information)を送信する。SIには、UEが送ろうとする送信データに関する情報がマッピングされており、例えば、「最優先論理チャネルID」「全論理チャネルデータ量」「最優先論理チャネルデータ量」「UEの送信可能な送信電力」の情報がマッピングされる。
【0005】
上りE−DPCCH(E-DCH Dedicated Physical Control Channel)には、上りデータに関する情報がマッピングされており、E−TFCI(E-DCH Transport Format Combination Indicator)、RSN(Retransmission Sequence Number)、Happybitがマッピングされる。
【0006】
基地局は、UEから送られた複数のSIを集計し、UEの通信品質や上りデータの優先度等に基づいて、上り伝送を行うUEの送信タイミングを決めるスケジューリングを行う。基地局はスケジューリング後、UEへ上り伝送許可としてGrantを送信する。Grantには、absolute grantとrelative grantの2種類があり、absolute grantは、下りE−AGCH(E-DCH Absolute Grant Channel)にて送信される。基地局は、各UEが送信することを許される最大電力を各UEに通知する。また、relative grantは、下りE−RGCH(E-DCH Relative Grant Channel)にて送信される。基地局は、各UEが送信する電力を現在より増加させるか、減少させるか、維持するかを、「Up(増加)、Down(減少)、又はHold(維持)」を信号成分として各UEに通知する。
【0007】
UEは、Grantに基づいて上り伝送を許可されてから、E−DCH(Enhanced Dedicated Channel)と呼ばれる個別チャネルによって、ユーザ情報を基地局へ伝送することで、高速上りアクセスを可能にする。HSUPAシステムでは、HSDPAシステムと同様に再送制御処理を行い、下りE−HICH(E-DCH HARQ Acknowledgement Indicator Channel)によりE−DCHのACK又はNACK情報をUEが受信する。
【0008】
HSUPAは、基地局のE−DCHの受信電力が所望のスループットとなるように、上り送信要求のあるUEに対して、E−RGCHの信号成分「Up、Down、又はHold」を用いて、送信電力の増加、維持、又は減少を指示する。UEは、E−RGCHの「Up、Down、又はHold」信号に従い、上りE−DCHの送信電力を決定する。E−RGCHは、基地局からE−RGCH固有のシグネチャパターンを掛けあわせて送信される。UEはE−RGCH固有のシグネチャパターンと受信したE−RGCH信号との相関値を算出することで、E−RGCHが表1のどのCommandで送信されたかを判断する。
【0009】
【表1】
【0010】
ここで、UE側では、「Up、Down、又はHold」の判定を行うのに、E−RGCH相関値と閾値とを比較する。例えば、以下のE−RGCH信号判定条件を用いる。
UP : CE−RGCH > Th
DOWN: CE−RGCH < −Th
HOLD:−Th ≦ CE−RGCH ≦ Th
CE−RGCHは、受信したE−RGCHとE−RGCHのシグネチャパターンとの相関値であり、ThはE−RGCHの閾値である。閾値Thは、例えば、移動機の出荷前に実験などを踏まえて適切な値に設定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】3GPP TS 25.211,5.3.2.4 E-DCH Relative Grant Channel
【非特許文献2】3GPP TS 25.212,Mapping for E RGCH Relative Grant
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
閾値Thは、例えば、受信環境の悪い環境下でもUp、Down、又はHoldを識別可能となるように予め設定される値である。受信環境の悪い環境下では、受信したE−RGCHとE−RGCHの固有のシグネチャパターンとの相関値が小さくなり、この相関値でUp、Down、又はHoldを判定するには閾値も小さな値を設定する必要がある。
【0013】
図2は、受信環境が悪い場合の相関値及び閾値の一例を示す図である。図2に示すように、受信環境が悪い場合、E−RGCHのシグネチャパターンとの相関値は小さくなるため、閾値A、Bもその絶対値が小さな値に設定される。以下、閾値A、Bの絶対値は同じとするが、必ずしも同じである必要はない。
【0014】
一方、E−RGCHのHold信号は、無送信状態なので、シグネチャパターンとの相関は低くなる。しかし、無送信状態はランダムパターンとなるので、このランダムパターンとシグネチャパターンとの相関が若干強くなる場合もある。この場合、無送信状態でも閾値よりE−RGCHの相関値が上回ってしまい、Up、またはDownと誤判定してしまう場合がある。以下、具体例について説明する。
【0015】
図3は、受信環境が良い場合の相関値及び閾値の一例を示す図である。図3に示すように、受信環境が良い場合には、Up信号の相関値は1に近い値となり、Down信号の相関値は−1に近い値となる。Hold信号はランダムパターンとなるので、Hold信号の相関値は0に近い値となる。しかし、図3に示す相関値Aのように相関値が若干強くなるHold信号もあり、この相関値Aは閾値A以上となるので、本来はHoldであるのにUpと誤判定されてしまう。
【0016】
HSUPAシステムとして、通信レートが良好な場合でも、E−RGCHの信号判定を誤ってしまうため、適正な送信電力設定が行えない場合がある。その結果、送信Powerが低く送信されてスループットの劣化や、送信Powerが過剰に送信されて他の端末への干渉が高くなり、システムスループットの劣化が発生してしまう。
【0017】
そこで、開示の移動機は、上記課題に鑑みてなされたものであり、送信電力を制御するための送信信号の判定性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
開示の一態様における移動機は、送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、前記比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、前記閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、を備える。
【0019】
また、他の態様における電力制御方法は、移動機における電力制御方法であって、送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信し、第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とに求められる相関値と比較される閾値を、受信環境に応じて変更し、変更された閾値と前記相関値とを比較し、比較結果に基づいて送信電力を制御する。
【発明の効果】
【0020】
開示の移動機、電力制御方法によれば、送信電力を制御するための制御信号の判定性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】HSUPAの通信を説明する図。
【図2】受信環境が悪い場合の相関値及び閾値の一例を示す図。
【図3】受信環境が良い場合の相関値及び閾値の一例を示す図。
【図4】実施例における移動機のハードウェアの一例を示すブロック図。
【図5】実施例1における移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図6】パス数を判定する一例を示す図。
【図7】パス数と閾値とを対応付けたテーブルの一例を示す図。
【図8】受信環境が良い場合の判定閾値の一例を示す図。
【図9】受信環境が良くない場合の判定閾値の一例を示す図。
【図10】測定1を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図11】パス数判定処理及び係数選択処理の一例を示すフローチャート。
【図12】測定1を用いる他の移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図13】測定2を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図14】測定2を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図15】測定3を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図16】測定3を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図17】測定4を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図18】測定4を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図19】測定5を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図20】測定5を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図21】測定6を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図22】測定6を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図23】測定7を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図24】測定7を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図25】測定8を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図26】測定8を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【図27】実施例4における移動機の機能の一例を示すブロック図。
【図28】実施例4における送信電力の制御処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
図4は、実施例における移動機のハードウェアの一例を示すブロック図である。図1に示すように、移動機1は、アンテナ10、無線部20、ベースバンド処理部30、制御部40、端末インタフェース部50を有する。
【0024】
アンテナ10は、送信アンプで増幅された無線信号を送信し、また、基地局から無線信号を受信する。無線部20は、ベースバンド処理部30で拡散された送信信号をD/A変換し、直交変調により高周波信号に変換し、その信号を電力増幅器により増幅する。無線部20は、受信した無線信号を増幅し、その信号をA/D変換してベースバンド処理部30に伝送する。
【0025】
ベースバンド処理部30は、送信データの誤り訂正符号の追加、データ変調、拡散変調、受信信号の逆拡散、受信環境の判定、各チャネル信号の閾値判定、誤り訂正復号などのベースバンド処理を行う。
【0026】
制御部40は、制御信号の送受信などの無線制御を行う。端末インタフェース部50は、データ用アダプタ処理、ハンドセットおよび外部データ端末とのインタフェース処理を行う。
【0027】
図5は、実施例1における移動機1の機能の一例を示すブロック図である。移動機1は、受信部101、逆拡散部102、CPICHチャネル推定部103、同期検波部104、測定部105、閾値生成部106、E−RGCH閾値比較部107、R−RGCH判定部108、電力制御部109、E−AGCH復号処理部110、E−HICH閾値比較部111、E−HICH判定部112を有する。図5に示す機能は、図4に示すベースバンド処理部30で実現されうる。
【0028】
受信部101は、無線部20から入力された受信信号をE−AGCH、E−HICH、E−RGCH、CPICH(Common Pilot Channel)などの各チャネルに分離する。逆拡散部102は、受信部101から出力された各チャネルに対し、送信側の拡散符号と同一の拡散符号を乗算して逆拡散する。
【0029】
逆拡散部102は、E−AGCH逆拡散部121、E−HICH逆拡散部122、E−RGCH逆拡散部123、CPICH逆拡散部124を含む。各逆拡散部121〜124は、各チャネルに拡散符号を乗算して逆拡散する。
【0030】
CPICHチャネル推定部103は、CPICH逆拡散部124から出力されるチャネルの逆拡散値を取得し、取得した逆拡散値に基づいてチャネル補償を行う位相回転量を算出する。CPICHチャネル推定部103は、算出した位相回転量を同期検波部104に出力する。CPICHチャネル推定部103は、逆拡散値を取得したタイミングを復調タイミングとして同期検波部104に出力する。
【0031】
同期検波部104は、逆拡散部102から出力される各逆拡散値を取得し、取得した各逆拡散値に対して、CPICHチャネル推定部103から取得した復調タイミングで、位相回転量により位相補償を行って同期検波を行う。同期検波部104は、各チャネル信号の逆拡散値を同期検波するため、E−AGCH同期検波部131、E−HICH同期検波部132、E−RGCH同期検波部133、CPICH同期検波部134を有する。
【0032】
E−AGCH同期検波部131は、同期検波された信号をE−AGCH復号処理部110に出力する。E−HICH同期検波部132は、E−HICH相関値を算出し、算出した相関値をE−HICH閾値比較部111に出力する。
【0033】
E−RGCH同期検波部133は、逆拡散された信号に含まれるシグネチャパターンとE−RGCH固有のシグネチャパターンとの相関値であるE−RGCH相関値を算出し、算出した相関値をE−RGCH閾値比較部107に出力する。E−RGCH信号は、送信電力を制御するための制御信号である。
【0034】
CPICH同期検波部134は、CPICHの同期検波後、CPICH信号成分Sと干渉成分Iとを以下の式により算出する。
【0035】
【数1】
CpichSym(i):0シンボル目からN−1シンボル目までのCPICH逆拡散値
S:CPICH信号成分
I:CPICH干渉成分
CPICH同期検波部134は、所定の固有信号とCPICH信号との相関値を算出し、算出した相関値を測定部105に出力する。
【0036】
測定部105は、移動機1の受信環境を測定する。実施例1において、測定部105は、CPICH信号に基づいて受信環境を測定する。CPICH信号に基づく場合、様々な手法により受信環境が求められるが、詳細は後述する。測定部105は、求められた受信環境に関する情報、例えばパス数を閾値生成部106に出力する。
【0037】
閾値生成部106は、E−RGCH信号のUp、Down、又はHoldの判定に用いる判定閾値を生成する。判定閾値は、以下、閾値ともいう。閾値生成部106は、例えば、CPICH信号の干渉成分Iと受信環境を示す情報とに基づいて、閾値を生成する。閾値の生成の詳細は受信環境の判定と合わせて後述する。閾値生成部106は、生成した閾値をE−RGCH閾値比較部107に出力する。閾値生成部106は、移動機1の受信環境に応じて判定閾値を動的に生成することで、判定閾値を変更する。
【0038】
E−RGCH閾値比較部107は、E−RGCH同期検波部133から取得したE−RGCH相関値と、閾値生成部106から取得した閾値とを比較する。E−RGCH閾値比較部107は、比較結果をE−RGCH判定部108に出力する。
【0039】
E−RGCH判定部108は、取得した比較結果に基づいて、E−RGCHの信号成分のUp、Down、又はHoldの判定を行う。具体的な判定は以下の通りである。
Up : CE−RGCH>Th
Down : CE−RGCH>−Th
Hold :−Th≦CE−RGCH≦Th
E−RGCH判定部108は、Up、Down、又はHoldの判定結果を電力制御部109に出力する。E−RGCH閾値比較部107とE−RGCH判定部108は1つの機能としてもよい。
【0040】
電力制御部109は、E−RGCH判定部108の判定結果に基づいて送信電力を制御する。例えば、電力制御部109は、Upと判定されていれば送信電力を上げるような制御信号を無線部10の送信電力増幅器に送信する。電力制御部109は、Holdと判定されていれば送信電力を維持するため、送信電力増幅器に対して制御信号を出力しない。電力制御部109は、Downと判定されていれば送信電力を下げるような制御信号を無線部10の送信電力増幅器に送信する。
【0041】
E−AGCH復号処理部110は、E−AGCH信号の復号処理を行う。E−HICH閾値比較部111は、E−HICH同期検波部132からE−HICH相関値を取得し、Ack/Nackの判定をするため、E−HICH相関値と閾値との比較を行う。比較結果は、E−HICH判定部112に出力される。
【0042】
E−HICH判定部112は、E−HICH閾値比較部111から比較結果を取得し、取得した比較結果に基づいて、ACK又はNACKの判定を行う。
【0043】
これにより、移動機1の受信環境に応じて送信電力を制御するための閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号の判定性能を向上させ、安定したスループットでの通信が可能となる。以下、CPICH信号に基づいた受信環境の測定方法について説明する。
【0044】
(測定1)
測定1は、CPICH信号からマルチパスを判定して受信環境を測定する。図5に示す測定部105は、相関値タイミング検出部141、相関値比較判定部142、パス数判定部143を有する。
【0045】
相関値タイミング検出部141は、タイミングを徐々に変化させて、各タイミングでの相関値をCPICH同期検波部134から取得し、さらに相関値が大きいいくつかのパスのタイミングを検出する。相関値比較判定部142は、相関値タイミング検出部141で検出されたタイミングでの相関値を相関閾値と比較し、比較結果をパス数判定部143に出力する。
【0046】
パス数判定部143は、CPICHの相関値のピーク値と相関閾値との比較結果に基づいてパス数を判定する。図6は、パス数を判定する一例を示す図である。図6に示す例では、相関値が相関閾値を超えた数をカウントし、カウント数が1であれば1パス、カウント数が2以上であればマルチパスであると判定する。他のパス判定方法として、最大ピーク値が他のピーク値の合計以上であれば1パス、小さければマルチパスと判定してもよい。他にも、最大ピーク値から所定値を減算した値より大きければピークと判定してもよい。1パスかマルチパスかの判定結果は、閾値生成部106に出力される。
【0047】
なお、パス数判定部143は、1パスかマルチパスかの判定だけでなく、マルチパスをさらに分けて判定してもよい。例えば、パス数判定部143は、1パス、2〜4パス、4〜7パス、8パス以上という判定をしてもよい。パス数判定部143は、パス数が切り替わった時にだけ、パス数を係数選択部151に出力するようにしてもよい。例えば、パス数の出力タイミングは、1パスからマルチパス、又はマルチパスから1パスに判定が変わった時などである。
【0048】
閾値生成部106は、係数選択部151、閾値算出部152を有する。係数選択部151は、測定部105から取得したパス数の判定結果に基づいて、係数を選択する。この係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するための係数である。係数選択部151は、1パスであれば係数α1を選択し、マルチパスであれば係数αmを選択する。選択された係数は閾値算出部152に出力する。
【0049】
閾値算出部152は、CPICH同期検波部134から取得したCPICH干渉成分Iと、係数選択部151から取得した係数とに基づいて、閾値Thを求める。例えば、以下の式により閾値Thを求めてもよい。
パス数=1の場合
閾値Th=係数α1×干渉成分I 式(2)
パス数>1の場合
閾値Th=係数αm×干渉成分I 式(3)
α1>αm:α1、αmは実験により適切な値を与えるとよい。閾値算出部152は、算出された閾値ThをE−RGCH閾値比較部107に出力する。
【0050】
閾値生成部106は、上記以外にも、パス数と閾値とを対応付けたテーブルを保持することで、閾値を求めてもよい。図7は、パス数と閾値とを対応付けたテーブルの一例を示す図である。閾値生成部106は、パス数判定部143から取得したパス数に基づいて、図7に示すようなテーブルを参照することで、閾値Thを求めてもよい。例えば、1パスであればT1を閾値Thとする。T1とT2との関係は、T1>T2とする。
【0051】
測定1によれば、マルチパスよりも1パスの方が、受信環境が良いとし、1パスの場合には判定閾値をマルチパスの場合よりも大きくする。これにより、移動機1は、パス数に応じて受信環境を測定し、受信環境に応じてE−RGCH信号の判定閾値を可変とすることができる。なお、パス数は、1パスかマルチパス以外にも、さらに細分化して閾値Thを3つ以上求めても良い。
【0052】
図8は、受信環境が良い場合の判定閾値の一例を示す図である。図8に示すように受信環境が良い場合、Up又はHoldの閾値A及びDown又はHoldの閾値Bの絶対値は、受信環境が良くない場合に比べて大きい。
【0053】
図9は、受信環境が良くない場合の判定閾値の一例を示す図である。図9に示すように受信環境が良くない場合、Up又はHoldの閾値A及びDown又はHoldの閾値Bの絶対値は、受信環境が良い場合に比べて小さい。受信環境が悪い場合の判定閾値の絶対値は、従来の判定閾値の絶対値よりも小さくしてもよい。これにより、受信環境をパス数に基づいて測定することで、マルチパス干渉による信号劣化に適応することが可能になる。
【0054】
次に、測定1を用いた送信電力の制御処理について説明する。図10は、測定1を用いた送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図10に示すステップS101で、受信部101は、アンテナ10から信号を受信し、各チャネル信号に分離する受信処理を行う。
【0055】
ステップS102で、CPICH逆拡散部124は、受信部101により分離されたCPICHに逆拡散処理を行い、CPICH逆拡散値を求める。ステップS103で、CPICHチャネル推定部103は、CPICH逆拡散部124から取得したCPICH逆拡散値からチャネル推定値を求める。
【0056】
ステップS104で、CPICH同期検波部134は、CPICHチャネル推定部103から取得したチャネル推定値を用いて同期検波を行う。同期検波後に、CPICH同期検波部134は、CPICH干渉成分Iを算出し、また、CPICH信号の相関値を算出する。
【0057】
ステップS105で、パス数判定部143は、CPICH相関値に基づいてパス数を判定する。ステップS106で、係数選択部151は、パス数判定部143により判定されたパス数に基づいて係数αを選択する。係数の選択は、パス数に応じた係数を保持するテーブルなどを参照することで選択してもよい。ステップS107で、閾値算出部152は、CPICH干渉成分Iと係数αを乗算して閾値Thを求める。
【0058】
ステップS108で、E−RGCH閾値比較部107は、閾値算出部152により算出された閾値とE−RGCH相関値との比較を行って判定処理を行う。ステップS108による判定処理は、例えば、以下の通りである。
|E−RGCH相関値|≦|閾値Th| ・・・条件1
条件1を満たせばステップS109に進む。ステップS109で、E−RGCH判定部108は、条件1を満たす場合Holdと判定する。
|E−RGCH相関値|>|閾値Th|かつE−RGCH>0 ・・・条件2
条件2を満たせばステップS110に進む。ステップS110で、E−RGCH判定部108は、条件2を満たす場合Upと判定する。
|E−RGCH相関値|>|閾値Th|かつE−RGCH<0 ・・・条件3
条件3を満たせばステップS111に進む。ステップS111で、E−RGCH判定部108は、条件3を満たす場合Downと判定する。
【0059】
ステップS112で、電力制御部109は、E−RGCH相関値の判定結果に基づいて、基地局に送信する際の電力を制御する。電力制御部109は、例えば、判定結果がUpであれば送信出力を上げるよう制御信号を受信部101の送信電力増幅器に出力し、判定結果がDownであれば制御信号を受信部101の送信電力増幅器に出力する。電力制御部109は、判定結果がHoldであれば、現在の送信出力を維持するため制御信号を出力しない。
【0060】
次に、ステップS105のパス数判定処理とステップS106の係数選択処理との詳細を説明する。図11は、パス数判定処理及び係数選択処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
パス数判定処理は、ステップS201からステップS203まで行う。ステップS201で、パス数判定部143は、CPICH相関値の閾値判定を行う。相関値の閾値判定は、相関値が相関閾値より大きければステップS202に進み、相関値が相関閾値以下であればステップS201に戻る。
【0062】
ステップS202で、パス数判定部143は、パス数のカウント値を累積する。ステップS203で、パス数判定部143は、カウントが終了したか否かを判定する。パス数判定部143は、全ての復調タイミングでの相関値の算出が終了していればステップS204に進み、終了していなければステップS201に戻る。
【0063】
係数選択処理は、ステップS204からステップS207まで行う。ステップS204で、係数選択部151は、パス数判定部143から取得したパス数がパス閾値以下か否かを判定する。パス閾値は、例えば1とする。
【0064】
ステップS204で、パス数がパス閾値以下であればステップS205に進み、パス数がパス閾値より大きい場合はステップS206に進む。ステップS205で、係数選択部151は、係数α1を選択する。ステップS206で、係数選択部151は、係数αmを選択する。なお、α1>αmである。
【0065】
これにより、受信環境をパス数に基づいて測定することで、マルチパス干渉による信号劣化に適応することが可能になる。
【0066】
次に、移動機が、パス数の判定結果をE−RGCH同期検波部107に適用する場合について説明する。図12は、測定1を用いる他の移動機の機能の一例を示すブロック図である。
【0067】
以下、パス数判定部201、E−RGCH同期検波部202について説明する。その他の機能は、図5と同様である。パス数判定部201は、パス数の判定結果を係数選択部151とE−RGCH同期検波部202に出力する。
【0068】
E−RGCH同期検波部202は、パス数判定部201から取得したパス数分のE−RGCH信号の同期検波を行う。例えば、パス数が1であれば、E−RGCH同期検波部202は、1つだけ同期検波をすればよい。パス数判定部201により判定されたパス数をE−RGCH同期検波部202に出力することで、E−RGCH同期検波部202は、E−RGCH信号の復調性能を向上させることができる。
【0069】
(測定2)
測定2は、CPICH信号からフェージング速度を判定して受信環境を測定する。図13は、測定2を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図13に示す測定部302は、ドップラー周波数算出部311、フェージング速度判定部312を有する。以下、測定部302によりフェージング速度を判定して閾値を生成する方法について説明する。CPICHチャネル推定部301、測定部302、係数選択部303、CPICH同期検波部304以外の機能は、図5に示す機能と同様である。
【0070】
CPICHチャネル推定部301は、CPICHチャネル推定値をCPICH同期検波部134及び測定部302に出力する。
【0071】
測定部302は、CPICHチャネル推定値に基づいてフェージング速度を求める。フェージング速度の求め方は以下説明する。ドップラー周波数算出部311は、取得したチャネル推定値に基づいて位相のズレを示すドップラー周波数を算出する。フェージング速度判定部312は、ドップラー周波数に基づいてフェージング速度を判定する。フェージング速度は、一般的な技術を用いて求めればよい。フェージング速度判定部312は、判定したフェージング速度を係数選択部303に出力する。フェージング速度判定部312は、速度閾値が、今回判定したフェージング速度と前回判定したフェージング速度との間にある場合に、今回判定したフェージング速度を係数選択部303に出力するようにしてもよい。これにより、フェージング速度判定部312は、フェージング速度を判定する度に、判定したフェージング速度を係数選択部303に出力しなくてもよい。
【0072】
係数選択部303は、フェージング速度判定部312から取得したフェージング速度に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる係数である。係数選択部303は、例えば、フェージング速度が60km/h(速度閾値)未満であれば係数αAを選択し、フェージング速度が、60km/h以上であれば係数αBを選択する。フェージング速度の速度閾値である60km/hは、適宜設定変更可能としてもよい。
【0073】
αAとαBとの関係は、αA>αBである。αAとαBを総称してαとする。係数αは、実験等により適切な値が設定されればよい。係数選択部303は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0074】
CPICH同期検波部304は、同期検波後、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを算出し、CPICH信号成分Sは、閾値生成部106に出力する。
【0075】
図14は、測定2を用いた送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図14に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS301で、CPICHチャネル推定部301は、求めたチャネル推定値をCPICH同期検波部304及び測定部302を出力する。
【0076】
ステップS302で、CPICH同期検波部304は、同期検波後、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iを算出し、CPICH干渉成分Iを閾値算出部152に出力する。
【0077】
ステップS303で、測定部302は、CPICHチャネル推定値からドップラー周波数を算出し、フェージング速度を判定する。判定したフェージング速度は、係数選択部303に出力される。
【0078】
ステップS304で、係数選択部303は、フェージング速度が例えば60km/h未満であれば係数αAを選択し、フェージング速度が例えば60km/h以上であれば係数αBを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0079】
これにより、フェージング速度から受信環境を測定することで、端末の高速移動による信号劣化に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0080】
(測定3)
測定3は、CPICH信号からCPICHのSIR(Signal to Interference Ratio)を算出して受信環境を測定する。SIRは、信号対干渉比である。図15は、測定3を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図15に示す測定部402は、SIR算出部411を有する。以下、測定部402によりSIR値を算出して閾値を生成する方法について説明する。CPICH同期検波部401、測定部402、係数選択部403以外の機能は、図5に示す機能と同様である。
【0081】
CPICH同期検波部401は、同期検波後、式1により、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを算出する。CPICH同期検波部401は、算出したCPICH信号成分S及びCPICH干渉成分Iを測定部402に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0082】
測定部402に含まれるSIR算出部411は、取得したCPICH信号成分S及びCPICH干渉成分Iに基づいてSIR値を算出する。SIR値は、信号成分Sを干渉成分Iで除算することにより求められる。SIR算出部411は、算出したSIR値を係数選択部403に出力する。SIR算出部411は、SIR閾値が、今回算出したSIR値と前回算出したSIR値との間にある場合に、今回算出したSIR値を係数選択部403に出力するようにしてもよい。これにより、SIR算出部411は、SIR値を算出する度に、算出したSIR値を係数選択部403に出力しなくてもよい。
【0083】
係数選択部403は、SIR算出部411から取得したSIR値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部403は、SIR値が例えば10dB(SIR閾値)未満であれば係数αAを選択し、SIR値が10dB以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部403は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0084】
図16は、測定3を用いた送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図16に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS401で、CPICH同期検波部401は、算出したCPICH信号成分S及びCPICH干渉成分Iを測定部402に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0085】
ステップS402で、SIR算出部411は、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを用いてSIR値を算出する。SIR算出部411は、算出したSIR値を係数選択部403に出力する。
【0086】
ステップS403で、係数選択部403は、取得したSIR値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部403は、例えば、SIR値が10dB以上であれば係数αBを選択し、10dB未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0087】
これにより、SIR値に基づいて受信環境を測定することで、干渉電力の信号劣化に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0088】
(測定4)
測定4は、CPICH信号からCPICHのSIRを算出してCQI(Channel Quality Indicator)に変換し、受信環境を測定する。CQIは、チャネル品質インジケータである。図17は、測定4を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図17に示す測定部501は、SIR算出部411、CQI変換部511を有する。以下、測定部501によりCQI値を算出して閾値を生成する方法について説明する。測定部501、係数選択部502以外の機能は、図5及び図15に示す機能と同様である。
【0089】
測定部501は、算出したSIR値からCQI値に変換する。具体的には、CQI変換部511は、SIR算出部411から取得したSIR値に基づいてCQI値に変換する。CQI変換部511は、例えば、SIR値からCQI値へ変換する変換テーブルを保持し、この変換テーブルを参照することでCQI値へ変換してもよい。CQI変換部511は、変換したCQI値を係数選択部502に出力する。CQI変換部511は、CQI閾値が、今回変換したCQI値と前回変換したCQI値との間にある場合に、今回変換したCQI値を係数選択部502に出力するようにしてもよい。これにより、CQI変換部511は、CQI値に変換する度に、変換したCQI値を係数選択部502に出力しなくてもよい。
【0090】
係数選択部502は、CQI変換部511から取得したCQI値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部502は、CQI値が例えば10(CQI閾値)未満であれば係数αAを選択し、CQI値が10以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部502は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0091】
図18は、測定4を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図16に示す処理で、図10及び図16と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS501で、測定部501は、CQI値を求める。具体的には、CQI変換部511は、SIR算出部411からSIR値を取得し、SIR値をCQI値に変換する。CQI変換部511は、CQI値を係数選択部502に出力する。
【0092】
ステップS502で、係数選択部502は、取得したCQI値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部502は、例えば、CQI値が10以上であれば係数αBを選択し、10未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0093】
これにより、CQI値に基づいて受信環境を測定することで、端末の受信品質を指標化した値に応じてE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0094】
(測定5)
測定5は、CPICH信号からCPICHの受信電力を算出して受信環境を測定する。図19は、測定5を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図19に示す測定部602は、受信電力算出部611を有する。以下、測定部602により受信電力を算出して閾値を生成する方法について説明する。CPICH同期検波部601、測定部602、係数選択部603以外の機能は、図5に示す機能と同様である。
【0095】
CPICH同期検波部601は、同期検波後、式1により、CPICH信号成分SとCPICH干渉成分Iとを算出する。CPICH同期検波部601は、算出したCPICH信号成分Sを測定部602に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0096】
測定部602に含まれる受信電力算出部611は、CPICH信号成分Sに基づいて所定の周期でCPICHの受信電力RSCP(Received Signal Code Power)を算出する。受信電力算出部611は、算出した受信電力を係数選択部603に出力する。受信電力算出部611は、電力閾値が、今回算出した受信電力と前回算出した受信電力との間にある場合に、今回算出した受信電力を係数選択部603に出力するようにしてもよい。これにより、受信電力算出部611は、受信電力を算出する度に、算出した受信電力を係数選択部603に出力しなくてもよい。
【0097】
係数選択部603は、受信電力算出部611から取得した受信電力に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部603は、受信電力が例えば50dBm(電力閾値)未満であれば係数αAを選択し、受信電力が50dBm以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部603は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0098】
図20は、測定5を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図20に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS601で、CPICH同期検波部601は、算出したCPICH信号成分Sを測定部602に出力し、CPICH干渉成分Iを閾値生成部106に出力する。
【0099】
ステップS602で、受信電力算出部611は、CPICH信号成分Sを用いて受信電力を算出する。受信電力算出部611は、算出した受信電力を係数選択部603に出力する。
【0100】
ステップS603で、係数選択部603は、取得した受信電力に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部603は、例えば、受信電力が50dBm以上であれば係数αBを選択し、50dBm未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0101】
これにより、受信電力に基づいて受信環境を測定することで、端末が弱電界環境にあるか否かに適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0102】
以上、実施例1によれば、CPICH信号に基づいて測定した受信環境に応じてE−RGCHの判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0103】
[実施例2]
次に、実施例2における移動機について説明する。実施例2では、DPCH信号に基づいて受信環境を測定する。以下、DPCH信号に基づいて受信環境を測定する測定6と測定7について説明する。
【0104】
(測定6)
図21は、測定6を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図21に示す移動機は、受信部701、逆拡散部702、同期検波部703、DPCH復号処理部704、係数選択部705を有する。その他の機能は、図5に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。受信部701は、受信信号を受信し、E−AGCH、E−HICH、E−RGCH、DPCH、CPICHの各チャネル信号に分離する。
【0105】
DPCH逆拡散部711は、受信部701から取得したDPCH信号に逆拡散処理を行い、DPCHの逆拡散値を求める。DPCH逆拡散部711は、求めた逆拡散値をDPCH同期検波部721に出力する。
【0106】
DPCH同期検波部721は、DPCH逆拡散部711から逆拡散値を取得し、CPICHチャネル推定部103から取得した位相回転量により位相補償を行って同期検波を行う。同期検波された信号は、DPCH復号処理部704に出力される。
【0107】
CPICH同期検波部722は、CPICHのチャネル推定値からCPICHの干渉成分Iを算出する。算出の仕方は例えば式1の通りである。CPICH同期検波部722は、CPICHの干渉成分Iを閾値算出部152に出力する。
【0108】
DPCH復号処理部704は、同期検波されたDPCH信号に対して復号処理を行う。復号処理は、誤り訂正処理、CRC(Cyclic Redundancy Check)判定までの復号処理を行なう。DPCH復号処理部704は、CRCの判定結果を係数選択部705に出力する。測定6では、DPCH復号処理部704が受信環境を測定する測定部の機能に相当する。DPCH復号処理部704は、CRC閾値が、今回判定したCRC結果と前回判定したCRC結果との間にある場合に、今回判定したCRC結果を係数選択部705に出力するようにしてもよい。
【0109】
係数選択部705は、DPCH復号処理部704から取得したCRC判定結果に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部705は、DPCH信号のBLER(BLock Error Rate)が、例えば0.05未満であれば係数αAを選択し、BLERが0.05(CRC閾値)以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部705は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0110】
図22は、測定6を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図22に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS701で、DPCH逆拡散部711は、DPCH逆拡散値をDPCH同期検波部721に出力する。
【0111】
ステップS702で、DPCH同期検波部721は、DPCH逆拡散値に対し、同期検波を行い、同期検波後の信号をDPCH復号処理部704に出力する。
【0112】
ステップS703で、DPCH復号処理部721は、DPCH信号の復号処理を行い、CRC判定による判定結果から取得できるBLER(ブロックエラーレート)を係数選択部705に出力する。
【0113】
ステップS704で、係数選択部705は、取得したCRC判定結果、例えばBLERに基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部705は、例えば、BLERが0.05以上であれば係数αBを選択し、0.05未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0114】
これにより、DPCHの誤り率に基づいて受信環境を測定することで、端末の復号性能に適応してE−RGCHの判定閾値を可変にすることができる。
【0115】
(測定7)
図23は、測定7を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図23に示す移動機は、DPCH同期検波部801、DPCH復号処理部802、係数選択部803を有する。その他の機能は、図21に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。測定7を用いる場合は、DPCH同期検波部801が受信環境の測定を行う測定部の機能に相当する。
【0116】
DPCH同期検波部801は、例えば、同期検波を行ったDPCH信号に含まれるDPDCH(Dedicated Physical Data Channel)信号のSIR値を求める。DPCH同期検波部801は、DPDCH信号のSIR値を係数選択部803に出力する。DPCH同期検波部801は、同期検波されたDPCH信号をDPCH復号処理部802に出力する。DPCH同期検波部801は、SIR閾値が、今回算出したSIR値と前回算出したSIR値との間にある場合に、今回算出したSIR値を係数選択部803に出力するようにしてもよい。これにより、DPCH同期検波部801は、SIR値を算出する度に、算出したSIR値を係数選択部803に出力しなくてもよい。
【0117】
DPCH復号処理部802は、同期検波されたDPCH信号に対して復号処理を行う。復号処理は、誤り訂正処理、CRC(Cyclic Redundancy Check)判定などの復号処理を行なう。
【0118】
係数選択部803は、DPCH同期検波部801から取得したDPDCH信号のSIR値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部803は、DPDCH信号のSIR値が、例えば10dB(SIR閾値)未満であれば係数αAを選択し、SIR値が10以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部803は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0119】
図24は、測定7を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図24に示す処理で、図10及び図22と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS801で、DPCH同期検波部801は、DPCH逆拡散値に対し、同期検波を行い、DPDCH信号のSIR値を係数選択部803に出力する。
【0120】
ステップS802で、係数選択部803は、取得したSIR値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部803は、例えば、SIR値が10dB以上であれば係数αBを選択し、10dB未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0121】
これにより、CPICH以外のチャネル品質に基づいて受信環境を測定することで、受信性能に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0122】
以上、実施例2によれば、DPCH信号に基づいて測定した受信環境に応じてE−RGCHの判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0123】
[実施例3]
次に、実施例3における移動機について説明する。実施例3では、各チャネル信号に基づいて受信環境を測定する。以下、各チャネル信号に基づいて受信環境を測定する測定8について説明する。
【0124】
(測定8)
図25は、測定8を用いる移動機の機能の一例を示すブロック図である。図25に示す移動機は、逆拡散部901、同期検波部902、Ior/Ioc算出部903、係数選択部904を有する。その他の機能は、図5に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。測定8を用いる場合は、Ior/Ioc算出部903が受信環境の測定を行う測定部の機能に相当する。
【0125】
逆拡散部902は、受信部701から取得した各チャネル信号に逆拡散処理を行う。逆拡散部902は、E−AGCH逆拡散部911、E−HICH逆拡散部912、E−RGCH逆拡散部913、DPCH逆拡散部914、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)逆拡散部915、SCCH(Shared Control Channel)逆拡散部916、CPICH逆拡散部917を有する。各逆拡散部911〜917は、逆拡散を行った逆拡散値をIor/Ioc算出部903及び同期検波部902に出力する。
【0126】
同期検波部902に含まれるCPICH同期検波部921は、CPICHの逆拡散値を同期検波した後に算出したCPICH干渉成分Iを、閾値算出部152及びIor/Ioc算出部903に出力する。
【0127】
Ior/Ioc算出部903は、取得した各チャネルの逆拡散値から全てのチャネルの信号(Ior)を求め、CPICH干渉成分Iからノイズ信号(Ioc)を求める。Ior/Ioc算出部903は、IorをIocで除算してIor/Ioc値を算出する。算出されたIor/Ioc値は、係数選択部904に出力される。Ior/Ioc算出部903は、Ior/Ioc閾値が、今回算出したIor/Ioc値と前回算出したIor/Ioc値との間にある場合に、今回算出したIor/Ioc値を係数選択部904に出力するようにしてもよい。これにより、Ior/Ioc算出部903は、Ior/Ioc値を算出する度に、算出したIor/Ioc値を算出しなくてもよい。
【0128】
係数選択部904は、Ior/Ioc算出部903から取得したIor/Ioc値に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCHの判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部904は、Ior/Ioc値が、例えば10dB(Ior/Ioc閾値)未満であれば係数αAを選択し、Ior/Ioc値が10dB以上であれば係数αBを選択する。αAとαBとの関係は、αA>αBである。係数選択部904は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0129】
図26は、測定8を用いる送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図26に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS901で、逆拡散部901は、各チャネルの逆拡散値をIor/Ioc算出部902に出力する。
【0130】
ステップS902で、Ior/Ioc算出部903は、当該移動機宛ての信号の全てを示すIorを当該移動機宛てではない信号を示すIocで除算してIor/Ioc値を算出する。
【0131】
ステップS903で、係数選択部904は、取得したIor/Ioc値に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部904は、例えば、Ior/Ioc値が10dB以上であれば係数αBを選択し、10dB未満であれば係数αAを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0132】
これにより、移動機の受信信号成分と干渉電力成分とを考慮したIor/Ioc値に基づいて受信環境を測定することで、受信性能に適応してE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることができる。
【0133】
以上、実施例3によれば、各チャネル信号に基づいて測定した受信環境に応じてE−RGCHの判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0134】
[実施例4]
次に、実施例4における移動機について説明する。実施例4では、前述した各測定を任意に組み合わせて受信環境を測定する。以下、測定1と測定5とを組み合わせる例について説明する。
【0135】
図27は、実施例4における移動機の機能の一例を示すブロック図である。図27に示す移動機は、CPICH同期検波部1001、測定部1002、係数選択部1003を有する。その他の機能は、図5と図19に示す機能と同様であるため、同じ符号を付す。
【0136】
CPICH同期検波部1001は、算出したCPICH相関値及びCPICH信号成分Sを測定部1002に出力する。
【0137】
測定部1002は、測定1で説明したように相関値タイミング算出部141、相関値比較判定部142、パス数判定部143により、パス数を判定し、判定したパス数を係数選択部1003に出力する。測定部1002は、測定5で説明したように受信電力算出部611により、受信電力を算出し、算出した受信電力を係数選択部1003に出力する。
【0138】
係数選択部1003は、測定部1002から取得したパス数、及び受信電力に基づいて係数を選択する。係数は、E−RGCH信号の判定閾値を生成するのに用いられる。係数選択部1003は、パス数がパス閾値(例えば1)より大きい場合、もしくは、受信電力が電力閾値(例えば50dBm)以上の場合に受信環境が悪いと判定して係数αBを選択する。係数選択部1003は、パス数がパス閾値以下、かつ、受信電力が電力閾値未満の場合に受信環境が良いと判定して係数αAを選択する。係数選択部1003は、選択した係数αを閾値算出部152に出力する。閾値算出部152は、測定1同様、係数αとCPICH干渉成分Iとを乗算して判定閾値Thを求める。
【0139】
図28は、実施例4における送信電力の制御処理の一例を示すフローチャートである。図28に示す処理で、図10と同様の処理のものは同じ符号を付す。ステップS1001で、CPICH同期検波部1001は、算出したCPICH相関値及びCPICH信号成分Sを測定部1002に出力する。
【0140】
ステップS1002で、測定部1003は、CPICH相関値に基づいてパス数を判定する。また、測定部1003は、CPICH信号成分Sに基づいて受信電力を算出する。パス数及び受信電力は、係数選択部1003に出力される。
【0141】
ステップS1003で、係数選択部1003は、取得したパス数及び受信電力に基づいて閾値を算出するのに用いる係数を選択する。係数選択部904は、例えば、パス数がパス閾値以下、かつ、受信電力が電力閾値未満の場合に受信環境が良いと判定して係数αAを選択し、それ以外の場合は受信環境が悪いと判定して係数αBを選択する。係数が決まれば、以降の処理は図10に示す処理と同様である。
【0142】
これにより、例えば2つの測定方法を組み合わせることにより、受信環境が良いと判定される条件を制限し、1つの測定方法を用いるよりもE−RGCH信号の誤判定を少なくすることもできる。実際は受信環境が悪いにも係わらず、受信環境が良いと判定された場合、判定閾値の値が大きくなってしまうことで、誤判定が多くなってしまうことを防止する。
【0143】
実施例4では、測定1と測定5とを組み合わせたが、他の測定同士を組み合わせて、いずれも受信環境が良いと判定された場合に、係数選択部1003は、受信環境が良いと判定して係数αAを選択してもよい。
【0144】
以上、実施例4によれば、受信環境の各測定方法を任意に組み合わせて測定した受信環境に応じてE−RGCH信号の判定閾値を可変にすることで、相対的許可チャネルE−RGCHの信号成分の判定性能を向上させることができる。
【0145】
次に、上述した各実施例における変形例について説明する。上述した各実施例で説明した送信電力の制御手順を移動機に実行させるためのプログラムとし、このプログラムをインストールして、移動機に実行させることにより上述した送信電力の制御処理を実現させることも可能である。
【0146】
また、このプログラムを、インターネットを介して移動機に送信し、このプログラムを受信した移動機は、このプログラムをインストールして、前述した送信電力の制御処理を実現させることも可能である。上記各実施例では、係数αは2つの場合の例を示したが、3つ以上あってもよく、この場合、受信環境を細分化して測定すればよい。各実施例において、係数αを選択する方法を説明したが、各閾値生成部は、測定1で説明したように、受信環境の指標と判定閾値とを対応付けたテーブルによって、判定閾値を生成又は選択してもよい。
【0147】
また、上記実施例では、HSUPA通信を例に説明したが、E−RGCH信号のように、移動機の送信電力を制御するための制御信号を用いる通信であれば、上記実施例は適用可能である。
【0148】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、上記変形例以外にも種々の変形及び変更が可能である。
【0149】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、
前記受信信号に含まれる前記制御信号と第1の固有信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、
前記閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、
を備える移動機。
(付記2)
前記受信信号に含まれる所定の信号に基づいて前記移動機の受信環境を測定する測定部をさらに備え、
前記閾値生成部は、
測定された受信環境に応じて前記閾値を生成する付記1記載の移動機。
(付記3)
前記閾値は、増加と維持とを判定する第1閾値と、減少と維持とを判定する第2閾値とを有し、
前記閾値生成部は、
受信環境に応じて前記第1閾値及び前記第2閾値を生成する付記2記載の移動機。
(付記4)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記判定部は、
前記共通パイロットチャネル信号と固有の信号との相関値に基づいて前記移動機の受信環境を判定する付記2又は3記載の移動機。
(付記5)
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の相関値に基づいてパス数を判定し、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と
を備える付記4記載の移動機。
(付記6)
判定されたパス数分の前記制御信号の同期検波を行う同期検波部をさらに備える付記5記載の移動機。
(付記7)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネル信号の受信電力を算出する電力算出部を備え、
前記閾値生成部は、
算出された受信電力に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記8)
前記測定部は、
前記受信環境を測定する方法を複数有し、
前記閾値生成部は、
複数の前記受信環境の測定結果に応じて前記閾値を生成する付記1記載の移動機。
(付記9)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の相関値に基づいてパス数を判定するパス数判定部と、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネルの受信電力を算出する電力算出部とを備え、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数、及び算出された受信電力に基づいて前記閾値を生成する付記2又は8記載の移動機。
(付記10)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号のチャネル推定値からフェージング速度を判定する速度判定部を備え、
前記閾値判定部は、
判定されたフェージング速度に応じて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記11)
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の受信品質を算出する品質算出部を備え、
前記閾値生成部は、
算出された受信品質に応じて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記12)
前記受信信号は個別物理チャネル信号を含み、
前記閾値生成部は、
前記個別物理チャネル信号に含まれる個別物理データチャネル信号のCRCの計算結果、又は信号対干渉比の計算結果に基づいて前記閾値を生成する付記2又は3記載の移動機。
(付記13)
前記閾値生成部は、
前記受信信号に含まれる各チャネル信号の逆拡散値と共通パイロットチャネル信号の干渉成分とに基づいてIor/Ioc値を算出する算出部と、
算出されたIor/Ioc値に応じて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える付記2又は3記載の移動機。
(付記14)
移動機における電力制御方法であって、
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信し、
前記受信信号に含まれる前記制御信号と第1の固有信号とにより求められる相関値と比較される閾値を、受信環境に応じて変更し、
変更された閾値と前記相関値とを比較し、
比較結果に基づいて送信電力を制御する電力制御方法。
【符号の説明】
【0150】
10 無線部
20 ベースバンド処理部
40 制御部
50 端末インタフェース部
101、701 受信部
102、702、901 逆拡散部
103、301 CPICHチャネル推定部
104、703、902 同期検波部
105、302、402、501、602、1002 測定部
106 閾値生成部
107 E−RGCH閾値比較部
108 E−RGCH判定部
109 電力制御部
151、303、403、502、603、705、803、904、1003 係数選択部
201 パス数判定部
202 E−RGCH同期検波部
304、401、601 CPICH同期検波部
704、802 DPCH復号処理部
801 DPCH同期検波部
903 Ior/Ioc算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、
第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、
前記閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、
を備える移動機。
【請求項2】
前記受信信号に含まれる所定の信号に基づいて前記移動機の受信環境を測定する測定部をさらに備え、
前記閾値生成部は、
測定された受信環境に応じて前記閾値を生成する請求項1記載の移動機。
【請求項3】
前記閾値は、増加と維持とを判定する第1閾値と、減少と維持とを判定する第2閾値とを有し、
前記閾値生成部は、
受信環境に応じて前記第1閾値及び前記第2閾値を生成する請求項2記載の移動機。
【請求項4】
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号と第2の固有信号との相関値に基づいて前記移動機の受信環境を測定する請求項2又は3記載の移動機。
【請求項5】
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の相関値に基づいてパス数を判定し、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と
を備える請求項4記載の移動機。
【請求項6】
測定されたパス数分の前記制御信号の同期検波を行う同期検波部をさらに備える請求項5記載の移動機。
【請求項7】
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネル信号の受信電力を算出する電力算出部を備え、
前記閾値生成部は、
算出された受信電力に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える請求項2又は3記載の移動機。
【請求項8】
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号と第2の固有信号との相関値に基づいてパス数を判定するパス数判定部と、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネル信号の受信電力を算出する電力算出部とを備え、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数、及び算出された受信電力に基づいて前記閾値を生成する請求項2又は3記載の移動機。
【請求項9】
移動機における電力制御方法であって、
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信し、
第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とにより求められる相関値と比較される閾値を、受信環境に応じて変更し、
変更された閾値と前記相関値とを比較し、
比較結果に基づいて送信電力を制御する電力制御方法。
【請求項1】
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信する受信部と、
第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とにより求められる相関値を閾値と比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて送信電力を制御する制御部と、
前記閾値を、受信環境に応じて変更する閾値生成部と、
を備える移動機。
【請求項2】
前記受信信号に含まれる所定の信号に基づいて前記移動機の受信環境を測定する測定部をさらに備え、
前記閾値生成部は、
測定された受信環境に応じて前記閾値を生成する請求項1記載の移動機。
【請求項3】
前記閾値は、増加と維持とを判定する第1閾値と、減少と維持とを判定する第2閾値とを有し、
前記閾値生成部は、
受信環境に応じて前記第1閾値及び前記第2閾値を生成する請求項2記載の移動機。
【請求項4】
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号と第2の固有信号との相関値に基づいて前記移動機の受信環境を測定する請求項2又は3記載の移動機。
【請求項5】
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号の相関値に基づいてパス数を判定し、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と
を備える請求項4記載の移動機。
【請求項6】
測定されたパス数分の前記制御信号の同期検波を行う同期検波部をさらに備える請求項5記載の移動機。
【請求項7】
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネル信号の受信電力を算出する電力算出部を備え、
前記閾値生成部は、
算出された受信電力に基づいて係数を選択する選択部と、
選択された係数を前記共通パイロットチャネル信号の干渉成分に乗算することで前記閾値を算出する閾値算出部と、
を備える請求項2又は3記載の移動機。
【請求項8】
前記受信信号は共通パイロットチャネル信号を含み、
前記測定部は、
前記共通パイロットチャネル信号と第2の固有信号との相関値に基づいてパス数を判定するパス数判定部と、
前記共通パイロットチャネル信号から前記共通パイロットチャネル信号の受信電力を算出する電力算出部とを備え、
前記閾値生成部は、
判定されたパス数、及び算出された受信電力に基づいて前記閾値を生成する請求項2又は3記載の移動機。
【請求項9】
移動機における電力制御方法であって、
送信電力を制御するための制御信号を含む受信信号を基地局から受信し、
第1の固有信号と前記受信信号に含まれる前記制御信号とにより求められる相関値と比較される閾値を、受信環境に応じて変更し、
変更された閾値と前記相関値とを比較し、
比較結果に基づいて送信電力を制御する電力制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2011−188053(P2011−188053A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48687(P2010−48687)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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