説明

移載装置

【課題】設置スペースを小さくすることができる移載装置を提供する。
【解決手段】移載動作の開始を指示されると、移載装置100は、ベーステーブル112をX軸方向に適宜移動させるとともに、下テーブル113をY軸方向に適宜移動させることにより、下テーブル113に載置されたウェーハリング801に保持された移載対象チップの位置決めを行う。次に、チップ保持部120を下降させて、フィンガー部121で移載対象チップを把持することによって、移載対象チップをピックアップする。次に、ベーステーブル112をX軸方向に適宜移動させるとともに、上テーブル114をY軸方向に適宜移動させることにより、上テーブル114において移載対象チップを載置する位置の位置決めを行う。次に、チップ保持部120を下降させて、ピックアップした移載対象チップを所定の位置に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小部品(例えば、半導体チップ)の移載を行う移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路等を製造する過程においては、半導体チップ(以下、単にチップという)の移載が必要になることがある。例えば、ウェーハを、粘着性のウェーハテープ(ウェーハシート)が貼り付けられたウェーハリング(ウェーハフレーム)に保持した状態でダイシングした後に、個片化されたチップの中から、良品のみを拾い上げて、トレイや、リードフレーム等に移載することが行われている。
【0003】
従来、このような移載を行うチップ移載装置では、ウェーハテープ上に貼り付けられたチップを拾い上げる際、ウェーハテープの下方に位置する突き上げ部(より正確には、突き上げ部の先端から突出する突き上げピン)によって、移載対象のチップを突き上げ、突き上げられたチップを、ウェーハテープ上方に位置する吸着ヘッドによって、チップ上面を吸着することで、拾い上げている。その後、吸着ヘッドを、移載先となるトレイ等の上方に移動させ、吸着ヘッドを下降させて、吸着を解除することで、移載先のトレイ等に移載対象のチップを載置していた。
【0004】
このようなチップ移載装置では、移載対象となるチップの位置決め、及び、移載先となるトレイ等におけるチップ載置位置の位置決めをするため、チップが貼り付けられたウェーハテープ(より正確には、ウェーハテープが貼り付けられたウェーハリング)を水平方向に移動させる移載元移動機構(例えば、XYステージ)、及び、移載先となるトレイ等を水平方向に移動させる移載先移動機構(例えば、XYステージ)を備えている。
【0005】
このように従来のチップ移載装置では、移載元及び移載先それぞれを水平方向に移動させるための機構及びスペースが必要となるので、装置が大型化し、広い設置スペースが必要となってしまう。一般に、装置及びその設置スペースは小さい方が望ましいが、特に、クリーンルーム内で使用される装置については、設置スペースをできるだけ小さくすることに対する要求が大きい。
【0006】
なお、特開平5−343502号公報には、粘着シート上のチップを第一のカメラ及び画像処理装置により位置を認識し、ピックアップできる位置にXYテーブル機構部で補正を行い、吸着コレットと突き上げピン機構部により粘着シート上のチップを突き上げながら吸着で剥離させ、ボンディングヘッドにより粘着シートからウエハまで移動を行い、第二のカメラ及び画像処理装置によりウエハの所望する位置を認識し、搭載する位置にXYテーブル機構部で補正を行い、チップを搭載するダイボンディング装置が開示されている。
【0007】
また、特開2003−110006号公報には、X軸方向及びZ軸方向に移動可能な吸着ヘッドと、上面にウェハリングが固定され、X軸方向及びY軸方向に移動可能なウェハリング支持テーブルと、複数個のチップ収納トレーをY軸方向に整列した状態で支持することができ、Y軸方向に移動可能なトレー支持テーブルとを備えた半導体チップ移送装置が開示されている。
【特許文献1】特開平5−343502号公報(段落0002、図2)
【特許文献2】特開2003−110006号公報(段落0002〜0012、図4,5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、設置スペースを小さくすることができる移載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る移載装置は、移載対象物(例えば、半導体チップ)が載置されるテーブル部と、前記テーブル部の上方に配置され、上下動可能な移載対象物保持部とを備えた移載装置であって、前記テーブル部は、第一の方向(例えば、X軸方向)に水平移動可能なベーステーブルと、前記ベーステーブル上に配置され、前記ベーステーブルに対して、前記第一の方向と垂直な第二の方向(例えば、Y軸方向)に水平移動可能な下テーブルと、前記ベーステーブル上に配置され、前記ベーステーブルに対して、前記第二の方向に水平移動可能な上テーブルとを備え、前記上テーブルは、前記下テーブルの上方に、間隔を開けて重なることが可能であり、前記移載対象物保持部は、前記下テーブル及び前記上テーブルのいずれか一方から、前記移載対象物を拾い上げ、他方へ載置することを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記ベーステーブル並びに前記上テーブル及び前記下テーブルのいずれか一方(例えば、下テーブル)を移動させることによって、移載対象物の位置決めを行い、前記移載対象物保持部を下降及び上昇させることによって、位置決めされた移載対象物を拾い上げ、前記ベーステーブル並びに前記上テーブル及び前記下テーブルのいずれか一方(例えば、上テーブル)を移動させることによって、前記移載対象物の載置位置の位置決めを行い、前記移載対象物保持部を下降させることによって、位置決めされた載置位置に、移載対象物を載置するようにしてもよい。
【0011】
また、以上の場合において、前記下テーブルに載置された移載対象物を下方から突き上げる突き上げ部を更に備えるようにしてもよい。この場合において、前記突き上げ部は、前記第一の方向に移動可能であるようにしてもよい。更に、前記突き上げ部は、前記第一の方向に外力が加わると、当該外力の方向に移動し、当該外力が作用しなくなると、原点位置に戻るようにしてもよい。この場合、前記第一の方向に長い長孔が形成された装置ベースを更に備え、前記突き上げ部は、前記長孔を介して、前記装置ベースの底面から突出する垂下部を備え、前記装置ベースの底面に、ストッパ部材と、前記垂下部及び前記ストッパ部材を挟むように配置され、前記第一の方向に移動可能な一対の可動ブロックと、前記一対の可動ブロックが、前記ストッパ部材に当接するように各可動ブロックを付勢する付勢手段(例えば、ばね)とを備えるようにしてもよい。
【0012】
また、以上の場合において、前記移載対象物保持部の上方に配置され、移載対象物及びその移載先の撮像を行う撮像手段(例えば、カメラ)を更に備えるようにしてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置スペースを小さくすることが可能な移載装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、ウェーハリングに保持されたチップを、チップ収容トレイに移載する移載装置について説明する。
【0015】
図1は、本発明による移載装置の構成を示す斜視図である。なお、以下では、X軸、Y軸及びZ軸の各軸の方向は、同図に示すように決められているものとする。また、例えば、X軸方向といった場合には、基本的に、正負両方の方向を含むものとする。
【0016】
同図に示すように、本発明による移載装置100は、テーブル部110と、チップ保持部120と、突き上げ部130と、カメラ140と、タッチパネル付き液晶ディスプレイ150とを備える。
【0017】
テーブル部110は、移載対象となるチップが載置されるものであり、より具体的には、移載対象となるチップを保持したウェーハリングと、ウェーハリングからピックアップされたチップを収容するチップ収容トレイ(以下、単にトレイという)とが載置される。同図に示すように、テーブル部110は、装置ベース111と、ベーステーブル112と、下テーブル113と、上テーブル114とを備える。そして、本実施形態では、ウェーハリングが下テーブル113に載置され、トレイが上テーブル114に載置される。テーブル部110の詳細については後述する。
【0018】
チップ保持部120は、移載対象となるチップを保持するものであり、テーブル部110の上方に配置されて、移載元となるウェーハリング(より正確には、ウェーハリングに貼り付けられたウェーハテープ)から移載対象となるチップをピックアップして、移載先となるトレイ内の所定位置に載置するものである。チップ保持部120は、テーブル部110の上方に架設された横板161に、上下動(Z軸方向に垂直移動)可能に取り付けられる。すなわち、チップ保持部駆動用のモータ162を正逆回転させることで、チップ保持部120を上下動させることができるように構成される。なお、同図に示すように、横板161は、装置ベース111の(X軸方向の)両端部に立設された側板163に固定されている。
【0019】
図2は、チップ保持部120及びその周辺部分を拡大した図である。
【0020】
同図に示すように、チップ保持部120は、移載対象物(本実施形態では、チップ)を把持(挟持)するための一対のフィンガー部121を備える。チップ保持部120は、一対のフィンガー部121の先端を開閉させることで、移載対象物の把持及び解放を行う。チップ保持部120は、その内部に、フィンガー部121の先端を開閉させるためのモータを備えている。チップ保持部120としては、例えば、特開2006−341361号公報に開示されている把持装置を利用することができる。
【0021】
なお、ここでは、チップ保持部120は、把持することでチップを保持するようにしているが、例えば、真空吸着することでチップを保持するようにしても良い。
【0022】
また、図1に示すように、突き上げ部130は、チップ保持部120の下方に配置され、下テーブル113に載置されたウェーハリングに保持された移載対象チップを、ウェーハテープを介して突き上げて、チップ保持部120による移載対象チップのピックアップを容易にするものである。突き上げ部130の詳細については後述する。
【0023】
カメラ140は、チップ保持部120のフィンガー部121の先端付近の真上に配置され、フィンガー部121の先端部分の直下に位置するチップやトレイ等の撮像を行うものである。カメラ140によって撮像された画像データは、画像処理され、移載対象チップの位置決めや、移載先となるトレイの位置決めや、チップの良品・不良品の判別に利用される。カメラ140も、チップ保持部120と同様に、テーブル部110の上方に架設された横板161に、上下動(Z軸方向に垂直移動)可能に取り付けられる。すなわち、カメラ駆動用のモータ164を正逆回転させることで、カメラ140を上下動させることができるように構成される。
【0024】
タッチパネル付き液晶ディスプレイ150は、カメラ140で撮像された画像を表示したり、移載装置100の操作に必要な各種メニューや装置の状態を表示したりすると共に、オペレータの指示を入力するためのものである。
【0025】
なお、同図には示していないが、移載装置100は、更に、各部の動作を制御する制御部を備える。制御部は、例えば、モータコントローラ、モータドライバ、コンピュータ等によって構成され、各部と信号線で接続されている。カメラ140によって撮像された画像データの画像処理も、制御部によって行われる。更に、移載装置100は、各部の動作に必要な電力を供給する電源部等も備えている。
【0026】
次に、テーブル部110の詳細について説明する。
【0027】
図3及び図4は、テーブル部110の詳細を示す図である。図3は平面図を示し、図4は正面図を示す。なお、図4では、簡単のため、突き上げ部130は省略してある。
【0028】
前述したように、テーブル部110は、装置ベース111と、ベーステーブル112と、下テーブル113と、上テーブル114とを備える。そして、図3及び図4に示すように、まず、装置ベース111上に、ベーステーブル112が配置され、ベーステーブル112は、装置ベース111に対してX軸方向に移動可能に構成されている。すなわち、装置ベース111上には、2本のリニアガイド301,302が、X軸方向に伸びるように配置されており、各リニアガイド301,302のレールが装置ベース111の上面に固定され、リニアガイド301,302のスライダ(キャリッジ)が、ベーステーブル112の底面に固定される。
【0029】
更に、図3及び図4に示すように、ベーステーブル112上には、下テーブル113及び上テーブル114が配置され、下テーブル113及び上テーブル114はそれぞれ、ベーステーブル112に対してY軸方向に移動可能に構成されている。すなわち、ベーステーブル112上には、X軸方向の両端部付近に、片側2本ずつ、合計4本のリニアガイド303〜306が、Y軸方向に伸びるように配置されており、各リニアガイド303〜306のレールがベーステーブル112の上面に固定される。そして、内側の2本のリニアガイド304,305のスライダが、下テーブル113に固定され、外側の2本のリニアガイド303,306のスライダが、上テーブル114に固定される。
【0030】
また、図3及び図4に示すように、上テーブル114は、下テーブル113の上に重なることが可能なように構成される。すなわち、下テーブル113の底面に内側のリニアガイド304,305のスライダを固定すると共に、上テーブル114を、平板状の天板401と、断面がコの字状の側板402とによって構成して、側板402の底面に、外側のリニアガイド303,306のスライダを固定することにより、下テーブル113と上テーブル114とが所定の間隔を空けて上下方向に重なることができるように構成される。なお、下テーブル113と上テーブル114との間隔は、下テーブル113の上に上テーブル114が重なる際に、下テーブル113に載置された物(本実施形態では、チップを保持するウェーハリング)が、上テーブル114と干渉することがないように、適当な間隔に決められる。また、上テーブル114の高さ(天板401のZ軸方向の位置)は、下テーブル113との関係だけではなく、突き上げ部130との関係によっても決まる。すなわち、上テーブル114が、突き上げ部130の上方に移動する際に、突き上げ部130と干渉しないような高さに決められる。
【0031】
下テーブル113及び上テーブル114のY軸方向の移動は、それぞれ、独立に制御される。すなわち、ベーステーブル112上には、下テーブル113及び上テーブル114それぞれを駆動するためのボールネジ307,308が、Y軸方向に伸びるように設けられている。そして、下テーブル用のボールネジ307のナット部403が下テーブル113に連結され、下テーブル用のボールネジ307のネジ軸が、カップリングを介して、下テーブル駆動用のモータ309の出力軸に接続される。同様に、上テーブル用のボールネジ308のナット部404が上テーブル114に連結され、上テーブル用のボールネジ308のネジ軸が、カップリングを介して、上テーブル駆動用のモータ310の出力軸に接続される。このような構成となっているので、下テーブル駆動用のモータ309を正逆回転させることで、下テーブルをY軸方向に前後動(進退)させることができ、上テーブル用のモータ310を正逆回転させることで、上テーブル114をY軸方向に前後動(進退)させることができる。
【0032】
また、ベーステーブル112のX軸方向の移動も、下テーブル113及び上テーブル114それぞれのY軸方向の移動とは独立に制御される。すなわち、装置ベース111の後端部(Y軸方向の一方の端部)には、ベーステーブル112を駆動するためのボールネジ311が、X軸方向に伸びるように設けられており、ボールネジ311のナット部312が、ベーステーブル112に連結され、ボールネジ311のネジ軸が、カップリングを介して、ベーステーブル駆動用のモータ313の出力軸に接続される。このような構成となっているので、ベーステーブル駆動用のモータ313を正逆回転させることで、ベーステーブル112を、その上に配置された下テーブル113及び上テーブル114と共に、X軸方向に前後動(進退)させることができる。
【0033】
図5は、テーブル部110を構成する各構成要素111〜114の形状を説明するための図であり、同図(a)は、装置ベース111の平面図を示し、同図(b)は、ベーステーブル112の平面図を示し、同図(c)は、下テーブル113の平面図を示し、同図(d)は、上テーブル114の平面図を示す。
【0034】
同図(a)に示すように、装置ベース111は、平板状の部材であって、中央部に、X軸方向(同図における左右方向)に長い長孔501が形成されている。当該長孔501には、突き上げ部130の下端部が挿入される。後述するように、突き上げ部130は、当該長孔501に沿って、移動可能(スライド動作可能)に構成される。
【0035】
同図(b)に示すように、ベーステーブル112は、平板状の部材であって、中央部に、X軸方向に長い矩形状の孔502が形成されている。当該孔502は、突き上げ部130の中間部分及び突き上げ部130の動きを案内するリニアガイドを収容するため、装置ベース111に形成された長孔501より幅広になっている。また、当該孔502の長さは、ベーステーブル112のX軸方向の可動範囲内において、突き上げ部130と干渉しないような長さに決められる。
【0036】
同図(c)に示すように、下テーブル113は、概ね正方形状の平板部材の中央部分を、概ね正方形状にくり抜いたような形状を有する。下テーブル113は、ベーステーブル112と共にX軸方向に動く一方で、Y軸方向にも動くので、その全可動範囲内において、突き上げ部130と干渉しないように、正方形状の孔503が形成されている。
【0037】
同図(d)に示すように、上テーブル114は、平板状の天板401と、天板401の両端に連結される側板402とによって構成されている。
【0038】
次に、突き上げ部130の詳細について説明する。
【0039】
図6は、突き上げ部130の構造を説明するための断面図であり、図7は、装置ベース111の底面側から見た突き上げ部130及びその周辺の構造を示す斜視図である。
【0040】
図6及ぶ図7に示すように、突き上げ部130は、突き上げベース601と、突き上げピン603と、直進ガイド607と、偏心カム609と、垂下部610と、モータ611とを備える。
【0041】
突き上げベース601は、突き上げ部130のベースとなる部材であって、その内部に突き上げピン603を収容するものである。突き上げベース601の上面には、その中心部分に、突き上げピン603が通過できる孔612が形成され、更に、孔612の周囲には、ウェーハテープを真空吸着するための孔613が複数形成されている。
【0042】
突き上げピン603は、突き上げベース601の上面に形成された孔612から突き出ることで、その直上にあるチップをウェーハテープを介して突き上げ、当該チップのウェーハテープからの剥離を促し、当該チップのピックアップを容易にするものである。
【0043】
突き上げピン603の中間部分には、直進ガイド607が装着されている。直進ガイド607は、突き上げピン603の動きを案内するものであって、突き上げベース601の内周面に固定されている。
【0044】
また、突き上げピン603は、その底面において、偏心カム609と当接している。突き上げピン603は、圧縮コイルばね614によって、下方向に付勢されており、常に、偏心カム609に押し付けられるようになっている。なお、突き上げピン603の底面と偏心カム609との接触を転がり接触とするため、偏心カム609には、ボールベアリング615が装着されている。
【0045】
偏心カム609は、円板状の部材であって、その中心からずれた位置に形成された孔を介して、モータ611の出力軸に固定されるものである。モータ611は、偏心カム609を回転駆動するものである。モータ611によって偏心カム609を適宜回転させることで、突き上げピン603を上下動させることが可能となる。
【0046】
垂下部610は、矩形状の平板部材で構成され、下方に伸びるように、突き上げベース601に固定される。垂下部610は、装置ベース111に形成された長孔501に挿入されて、その下端部分(先端部分)が、装置ベース11の底面から下方に突出するようになる。
【0047】
後述するように、移載装置100では、以上のような構造を有する突き上げ部130を、必要に応じて、装置ベース111に形成された長孔501に沿って、移動できるようにしている。そのため、図6に示すように、装置ベース111の上面には、一対のリニアガイド616が設けられている。当該一対のリニアガイド616は、装置ベース111に形成された長孔501の長さ方向に伸びるように、長孔501を挟んで配置される。そして、当該一対のリニアガイド616のレールが、装置ベース111の上面に固定され、スライダが、突き上げベース601に固定される。
【0048】
また、図6及び図7に示すように、装置ベース111の底面にも、装置ベース111に形成された長孔501の長さ方向に伸びるリニアガイド620が設けられている。当該リニアガイド620は、2つのスライダ部を備えており、当該スライダ部には、一対の可動ブロック631,641が固定されている。一方、リニアガイド620のレールは、装置ベース111の底面に固定されている。
【0049】
そして、同図に示すように、一対の可動ブロック631,641によって、垂下部610の先端部分が挟まれるようになっている。また、各可動ブロック631,641には、引っ張りコイルばね632,642が接続されている。なお、引っ張りコイルばね632,642の中間部分については、略記して図示している。引っ張りコイルばね632,642は、各可動ブロック631,641を、原点方向に付勢する付勢手段であり、リニアガイド620と同じ方向に伸びるように配置されている。より具体的には、引っ張りコイルばね632,642は、各可動ブロック631,641を、リニアガイド620に隣接して設けられたストッパ部材650に向けて付勢する。
【0050】
ストッパ部材650は、装置ベース111の底面に固定された部材であって、各可動ブロック631,641の一方方向の動きを規制するものである。すなわち、同図において、可動ブロック631の右側面と当接することによって、可動ブロック631の右方向の動きを規制し、可動ブロック641の左側面と当接することによって、可動ブロック641の左方向の動きを規制する。なお、正確には、各可動ブロック631,641は、ストッパ部材650に直接当接するのではなく、各可動ブロック631,641に取り付けられた調整ネジ633,643を介して、当接する。調整ネジ633,643は、両可動ブロック631,641がストッパ部材650に当接した状態での両可動ブロック631,641間の距離の微調整や、両可動ブロック631,641の位置の微調整に利用される。
【0051】
装置ベース111の底面に以上のような機構(調心機構)を設けることにより、突き上げ部130は、X軸方向に外力が加わった場合に、外力が加わった方向に一旦は移動するが、外力が加わらなくなると、元の位置(原点位置)に戻るようになる。すなわち、突き上げ部130にX軸方向の外力が加わった場合、突き上げ部130は、垂下部610の先端部分で、いずれか一方の可動ブロック631,641を押して、外力に応じた方向に移動するが、外力が加わらなくなると、今度は、垂下部610に押されていた可動ブロック631,641が、引っ張りコイルばね632,642の付勢力によって、垂下部610の先端部分を逆方向に押すこととなり、可動ブロック631,641(調整ネジ633,643)がストッパ部材650に当接するまで、垂下部610を押し続けることで、突き上げ部130を原点位置に戻すこととなる。
【0052】
突き上げ部130のスライド動作の更なる詳細については後述する。
【0053】
次に、以上のような構造を有する移載装置100の動作について説明する。以下では、下テーブル113に載置されたウェーハリングから、チップをピックアップして、上テーブル114に載置されたトレイに移し替える場合について説明する。なお、移載先となるトレイについては予めオペレータによって上テーブル114に載置されているものとし、更に、簡単のため、上テーブル114に載置されているトレイについては図示を省略する。
【0054】
まず、図1に示した状態において、オペレータは、移載対象となるチップが保持されたウェーハリングを下テーブル113の上に載置する。図8は、ウェーハリング801が下テーブル113に載置された状態を示す図である。なお、同図では、簡単のため、ウェーハリングに張着されたウェーハテープ及びウェーハテープに貼り付けられたチップについては図示を省略している。以下の図においても同様に、ウェーハリングのみを示す。下テーブル113に載置されたウェーハリング801は、不図示の固定用治具によって、下テーブル113に固定される。
【0055】
以上のようにして、ウェーハリングの載置及び固定が終了すると、オペレータは、移載動作の開始を指示する。
【0056】
オペレータから移載動作の開始を指示されると、移載装置100の制御部は、まず、移載対象チップの位置決めを行う。すなわち、ベーステーブル112をX軸方向に適宜移動させるとともに、下テーブル113をY軸方向に適宜移動させることにより、一番最初に移載を行うチップを、突き上げ部130の直上(フィンガー部121の先端部分の直下)に位置させる。図9は、移載対象チップの位置決めがされた状態の例を示す図である。
【0057】
以上のようにして、移載対象チップの位置決めが終了すると、移載装置100の制御部は、移載対象チップのピックアップを行う。すなわち、まず、突き上げ部130の突き上げピン603を上昇させると共に、チップ保持部120を下降させて、フィンガー部121によって、移載対象チップを把持する。次に、移載対象チップをフィンガー部121で把持した状態のままチップ保持部120を上昇させて、移載対象チップをウェーハテープから剥離させて拾い上げる。移載対象チップのピックアップが終了すると、移載装置100の制御部は、突き上げピン603を下降させる。なお、移載対象チップのピックアップを行う際は、突き上げ部130の上面に形成された孔613を介して、ウェーハテープの真空吸着が行われる。
【0058】
以上のようにして、移載対象チップのピックアップが終了すると、移載装置100の制御部は、移載対象チップを載置するトレイ(載置位置)の位置決めを行う。すなわち、ベーステーブル112をX軸方向に適宜移動させるとともに、上テーブル114をY軸方向に適宜移動させることにより、移載先となるトレイ内において移載対象チップを載置する位置を、フィンガー部121の先端部分の直下に位置させる。図10は、トレイの位置決めがされた状態の例を示す図である。
【0059】
以上のようにして、トレイの位置決めが終了すると、移載装置100の制御部は、ピックアップした移載対象チップの載置を行う。すなわち、移載対象チップが移載先となるトレイの所定位置に載置された状態になるまで、チップ保持部120を下降させ、その状態で、フィンガー部121の先端を開くことで、ピックアップした移載対象チップの載置を完了する。
【0060】
以上のようにして、ピックアップした移載対象チップの載置が終了すると、次の移載対象チップの移載を行うため、次の移載対象チップの位置決めを行う。そのため、移載装置100の制御部は、上テーブル114を後退させると共に、ベーステーブル112及び下テーブル113を適宜移動させることによって、次に移載を行うチップを、突き上げ部130の直上(フィンガー部121の先端部分の直下)に位置させる。以下、移載対象チップのピックアップ及び載置を、前述したようにして行う。そして、以上のような動作を、すべての移載対象チップの移載が行われるまで繰り返す。
【0061】
以上のようにして、下テーブル113に載置されたウェーハリング801から、上テーブル114に載置されたトレイへ、チップの移載が行われる。
【0062】
次に、突き上げ部130のスライド動作について説明する。
【0063】
図11は、スライド動作が必要な場合を説明するための図である。
【0064】
同図は、下テーブル113と、下テーブル113に載置されたウェーハリング801と、上テーブル114とが上下方向に重なった状態を示す平面図である。
【0065】
同図に示すように、上テーブル114は、ウェーハリング801や下テーブル113より、X軸方向(同図における左右方向)の幅が広くなっている。すなわち、チップを載置可能な場所も、ウェーハリング801や下テーブル113よりも、X軸方向には広くなっている。そのため、スペース的には、ウェーハリング801や下テーブル113(の内周)の外側にあたる領域(例えば、領域1111〜1113等)に、チップを載置することも可能となっている。しかしながら、突き上げ部130は、突き上げ位置を安定させるため、その先端部が、下テーブル113に載置・固定されたウェーハリング801の上面より少し(例えば、2mm程度)高くなるように構成されるので、突き上げ部130を装置ベース111に固定してしまうと、突き上げ部130の先端部分が、下テーブル113やウェーハリング801(の内周部)と干渉して、上テーブル114の領域1111〜1113等を、突き上げ部130の直上に位置させることはできないことになってしまう。このことは、すなわち、上テーブル114の領域1111〜1113等を、フィンガー部121の先端部分の直下に位置させることができないことも意味するので、結局、上テーブル114の領域1111〜1113等には、チップを載置することができないことになってしまう。そこで、本実施形態では、突き上げ部130の先端部分が、下テーブル113やウェーハリング801と干渉した場合は、一時的に、突き上げ部130を移動(スライド)させて、ウェーハリング801や下テーブル113の外側にあたる部分についても、フィンガー部121の先端部分の直下に位置させることをできるようにして、上テーブル114において実際にチップ載置可能な領域の拡大を図っている。
【0066】
次に、突き上げ部130のスライド動作の具体例について説明する。
【0067】
まず、図7に示した状態において、ベーステーブル112をX軸方向に移動させた結果、ベーステーブル112と共にX軸方向に移動している下テーブル113に載置されたウェーハリング801が、突き上げ部130の先端部分と干渉すると、突き上げ部130はX軸方向に押されることになる。
【0068】
例えば、突き上げ部130が、下テーブル113に載置されたウェーハリングと干渉した結果、同図における左(やや)上方向に押されたとすると、突き上げ部130は、装置ベース111の上面に設けられたリニアガイド616に案内されて、同図における左上方向に移動を開始する。そして、突き上げ部130の移動に伴い、突き上げ部130の垂下部610が、可動ブロック631を、引っ張りコイルばね632を引き伸ばしながら、左上方向に押すことになる。図12は、突き上げ部130が、ウェーハリングと干渉した結果、同図における左上方向にスライドされた状態を示す図である。
【0069】
同図に示した状態において、ベーステーブル112をX軸方向に移動させた結果、突き上げ部130が、下テーブル113に載置されたウェーハリングと干渉しなくなると、それまで垂下部610によって左上方向に押されていた可動ブロック631は、今度は、引っ張りコイルばね632の付勢力によって、垂下部610の先端部分を右(やや)下方向に押すようになり、可動ブロック631(調整ネジ633)がストッパ部材650に当接するまで、垂下部610を押し続けることで、突き上げ部130を原点位置に戻すこととなる。
【0070】
一方、図7に示した状態において、突き上げ部130が、下テーブル113に載置されたウェーハリングと干渉した結果、同図における右下方向に押されたとすると、突き上げ部130は、装置ベース111の上面に設けられたリニアガイド616に案内されて、同図における右下方向に移動を開始する。そして、突き上げ部130の移動に伴い、突き上げ部130の垂下部610が、可動ブロック641を、引っ張りコイルばね642を引き伸ばしながら、右下方向に押すことになる。図13は、突き上げ部130が、ウェーハリングと干渉した結果、同図における右下方向にスライドされた状態を示す図である。
【0071】
同図に示した状態において、ベーステーブル112をX軸方向に移動させた結果、突き上げ部130が、下テーブル113に載置されたウェーハリングと干渉しなくなると、それまで垂下部610によって右下方向に押されていた可動ブロック641は、今度は、引っ張りコイルばね642の付勢力によって、垂下部610の先端部分を左上方向に押すようになり、可動ブロック641(調整ネジ643)がストッパ部材650に当接するまで、垂下部610を押し続けることで、突き上げ部130を原点位置に戻すこととなる。
【0072】
以上のようにして、突き上げ部130のスライド動作が実現される。
【0073】
以上説明したように、上述した実施形態においては、ベーステーブル112上に、移載元となるウェーハリングを載置する下テーブル113と、移載先となるトレイを載置する上テーブル114とを上下方向に重なることができるように配置しているので、従来に比べて、装置の設置スペースを小さくすることが可能となる。
【0074】
また、上述した実施形態においては、チップ保持部120は垂直方向にのみ移動し、水平方向には移動しないので、位置決め等に利用されるカメラは一台ですむことになり、従来に比べて、装置のコストを削減することが可能となる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、当然のことながら、本発明の実施形態は、上記のものに限られない。例えば、使用条件等によって、上テーブル114において移載対象物を載置する範囲が、突き上げ部130が下テーブル113に載置されたウェーハリング等と干渉しない範囲に限られるのであれば、突き上げ部130をスライド動作させる必要はなくなる。
【0076】
また、上述した実施形態では、下テーブル113から上テーブル114へ移載対象チップを移載していたが、突き上げ部130が不要な場合、例えば、あるトレイから別のトレイへの移載を行うような場合は、上テーブル114から下テーブル113への移載を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による移載装置の構成を示す斜視図である。
【図2】チップ保持部120及びその周辺部分を拡大した図である。
【図3】テーブル部110の詳細を示す平面図である。
【図4】テーブル部110の詳細を示す正面図である。
【図5】テーブル部110を構成する各構成要素111〜114の形状を説明するための図である。
【図6】突き上げ部の構造を説明するための断面図である。
【図7】装置ベース111の底面側から見た突き上げ部130及びその周辺の構造を示す斜視図である。
【図8】ウェーハリング801が下テーブル113に載置された状態を示す図である。
【図9】下テーブル113の位置決めがされた状態を示す図である。
【図10】上テーブル114の位置決めがされた状態を示す図である。
【図11】スライド動作が必要な場合を説明するための図である。
【図12】スライド動作を行った際の、突き上げ部130及び調心機構の状態を示す斜視図(その1)である。
【図13】スライド動作を行った際の、突き上げ部130及び調心機構の状態を示す斜視図(その2)である。
【符号の説明】
【0078】
100 移載装置
110 テーブル部
111 装置ベース
112 ベーステーブル
113 下テーブル
114 上テーブル
120 チップ保持部
121 フィンガー部
130 突き上げ部
140 カメラ
150 タッチパネル付き液晶ディスプレイ
161 横板
162 チップ保持部駆動用モータ
163 側板
164 カメラ駆動用モータ
301〜306 リニアガイド
307,308 ボールネジ
309 下テーブル駆動用モータ
310 上テーブル駆動用モータ
311 ボールネジ
312 ナット部
313 ベーステーブル駆動用モータ
401 天板
402 側板
403,404 ナット部
501 長孔
502,503 孔
601 突き上げベース
603 突き上げピン
607 直進ガイド
609 偏心カム
610 垂下部
611 偏心カム駆動用モータ
612 突き上げピン通過孔
613 真空吸着用孔
614 圧縮コイルばね
615 ボールベアリング
616,620 リニアガイド
631,641 可動ブロック
632,642 引っ張りコイルばね
633,643 調整ネジ
650 ストッパ部材
801 ウェーハリング
1111〜1113 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移載対象物が載置されるテーブル部と、
前記テーブル部の上方に配置され、上下動可能な移載対象物保持部と
を備えた移載装置であって、
前記テーブル部は、
第一の方向に水平移動可能なベーステーブルと、
前記ベーステーブル上に配置され、前記ベーステーブルに対して、前記第一の方向と垂直な第二の方向に水平移動可能な下テーブルと、
前記ベーステーブル上に配置され、前記ベーステーブルに対して、前記第二の方向に水平移動可能な上テーブルと
を備え、
前記上テーブルは、前記下テーブルの上方に、間隔を開けて重なることが可能であり、
前記移載対象物保持部は、前記下テーブル及び前記上テーブルのいずれか一方から、前記移載対象物を拾い上げ、他方へ載置する
ことを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記ベーステーブル並びに前記上テーブル及び前記下テーブルのいずれか一方を移動させることによって、移載対象物の位置決めを行い、
前記移載対象物保持部を下降及び上昇させることによって、位置決めされた移載対象物を拾い上げ、
前記ベーステーブル並びに前記上テーブル及び前記下テーブルのいずれか一方を移動させることによって、前記移載対象物の載置位置の位置決めを行い、
前記移載対象物保持部を下降させることによって、位置決めされた載置位置に、移載対象物を載置する
ことを特徴とする請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記下テーブルに載置された移載対象物を下方から突き上げる突き上げ部を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移載装置。
【請求項4】
前記突き上げ部は、前記第一の方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項3に記載の移載装置。
【請求項5】
前記突き上げ部は、前記第一の方向に外力が加わると、当該外力の方向に移動し、当該外力が作用しなくなると、原点位置に戻る
ことを特徴とする請求項4に記載の移載装置。
【請求項6】
前記第一の方向に長い長孔が形成された装置ベースを更に備え、
前記突き上げ部は、前記長孔を介して、前記装置ベースの底面から突出する垂下部を備え、
前記装置ベースの底面に、
ストッパ部材と、
前記垂下部及び前記ストッパ部材を挟むように配置され、前記第一の方向に移動可能な一対の可動ブロックと、
前記一対の可動ブロックが、前記ストッパ部材に当接するように各可動ブロックを付勢する付勢手段と
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の移載装置。
【請求項7】
前記移載対象物保持部の上方に配置され、移載対象物及びその移載先の撮像を行う撮像手段を
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−135351(P2009−135351A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311911(P2007−311911)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(598113900)アクテス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】