説明

積層体及びその製造方法

【課題】基材上に高純度で高品質な結晶薄膜が形成されており、その結晶特性を充分に発揮することのできる積層体、及びその積層体を従来のフラックス法に比べて、低コストで簡便に形成することができ、大型のものを大量に製造できる簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】積層体は、アルカリ金属とアルカリ土類金属と遷移金属と卑金属との少なくとも何れかの金属の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、アンモニウム塩、及び有機化合物から選ばれる結晶原材料から得られたアパタイト、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属含有複酸化物、卑金属酸化物、卑金属含有複酸化物、又はそれらのドーパント含有化合物からなるナノ無機結晶が、基材上に形成され積層している積層体であり、基材にコーティングされた結晶原材料と硝酸塩等のフラックスとが加熱等により結晶成長してナノ無機結晶が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性材料、光触媒機能性材料、光学材料、誘電材料、電池電極材料又は透明導電性材料として使用できるものであり、ナノ無機結晶を基板上に生成させて基材表面を機能化した積層体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶性化合物の結晶成長方法の1つに、結晶成分となる溶質(結晶原材料)と、目的である結晶性化合物を融点以下の温度で溶解するフラックス(融剤)とを混合させて結晶性化合物を得るフラックス法がある。この方法は、るつぼのような容器に溶質とフラックスとを充填して加熱し、溶解した後、徐冷またはフラックスを蒸発させることで結晶化させるものであり、簡便な操作で簡易に結晶成長させる方法である。この方法の利点は、フラックスにより、目的結晶化合物を融点以下の温度で溶解でき、高い融点の結晶化合物であっても、はるかに低い温度条件下で結晶を育成することができることである。さらに、高純度で高品質な結晶を得ることができ、自形結晶も得ることができる。
【0003】
例えば特許文献1に、層状ペロブスカイト型構造、又は層状構造を有するタンタル酸塩結晶粒子を用いた色素増感太陽電池が開示されており、そのタンタル酸塩結晶粒子は、混合試料を白金るつぼに充填してフラックス法により製造されている。
【0004】
このようなフラックス法を応用して、容器内で浸漬させた基板上に結晶薄膜を形成することが知られている。しかし、この方法で作製できる結晶薄膜の大きさは、限られた容量の容器中で結晶薄膜を形成する方法であるため、その容量に依存せざるを得ない。大面積の基板に結晶薄膜を形成する場合、容器を大型化する必要があり、一般的に高価な白金るつぼを容器として使用するので、容器の大型化により製造コストが高くなるばかりか、容器の大型化に限度があるという問題がある。また、容器の大型化に伴い、容器に充填させる試薬を多量に必要とすることや容器内濃度が均一に成り難いうえ、過剰なエネルギーを必要とすること等の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−190927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、基材上に高純度で高品質な結晶薄膜が形成されており、その結晶特性を充分に発揮することのできる積層体、及びその積層体を、容器を使用する従来のフラックス法に比べて、低コストで簡便に形成することができ、小型であっても大型であっても均質で大量に製造できる簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された積層体は、アルカリ金属とアルカリ土類金属と遷移金属と卑金属との少なくとも何れかの金属の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、アンモニウム塩、及び有機化合物から選ばれる結晶原材料から得られたアパタイト、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属含有複酸化物、卑金属酸化物、卑金属含有複酸化物、又はそれらのドーパント含有化合物からなるナノ無機結晶が、基材上に形成され、積層している積層体であって、
該基材にコーティングされた該結晶原材料と、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、塩化物、フッ化物、酸化物、水酸化物、及びアンモニウム塩から選ばれるフラックスとが加熱、活性エネルギー線照射又はプラズマ処理により結晶成長して該ナノ無機結晶が形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の積層体は、請求項1に記載されたものであって、前記金属が、リチウム、カリウム、ナトリウムから選ばれる前記アルカリ金属,マグネシウム、カルシウム、バリウムから選ばれる前記アルカリ土類金属,チタン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、インジウム、希土類金属から選ばれる前記遷移金属,アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、アンチモンから選ばれる前記卑金属であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の積層体は、請求項1に記載されたものであって、前記アパタイトが、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、又は水酸アパタイトであり、
前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウムであり、
前記遷移金属酸化物が、酸化チタン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化タングステン、又は希土類金属酸化物であり、
前記遷移金属含有複酸化物が、チタン酸塩、コバルト酸塩、ニッケル酸塩、ニオブ酸塩、モリブデン酸塩、タンタル酸塩、タングステン酸塩、又は希土類金属塩であり、
前記卑金属酸化物が、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化錫、又は酸化アンチモンであり、
前記卑金属含有複酸化物が、酸化インジウム錫、酸化亜鉛アルミニウム、又は酸化ガリウムアンチモンであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載された積層体は、請求項1に記載されたものであって、前記基材が、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる無機材、生体高分子、若しくはポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、及びポリ(メタ)アクリレートから選ばれる樹脂で形成され、又はこれらが複合された基材であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載された積層体は、請求項1に記載されたものであって、前記基材が、平面形状又は立体形状であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載された積層体は、請求項1に記載されたものであって、生体適合性材料、光触媒機能性材料、光学材料、誘電材料、電池電極材料、又は透明導電性材料であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載された積層体の製造方法は、アルカリ金属とアルカリ土類金属と遷移金属と卑金属との少なくとも何れかの金属の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、アンモニウム塩、及び有機化合物から選ばれる結晶原材料と、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、塩化物、アンモニウム塩、及び酸化物から選ばれるフラックスとを水の存在又は不存在下で混合してから、基材へコーティングした後、加熱、活性エネルギー線照射又はプラズマ処理を施して、アパタイト、遷移金属酸化物、遷移金属含有複酸化物、卑金属酸化物、卑金属含有複酸化物、又はそれらのドーパント含有化合物からなるナノ無機結晶を該基材上に結晶成長させて結晶薄膜として積層することを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載された積層体の製造方法は、請求項7に記載されたものであって、前記加熱が、70〜1500℃で行われることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載された積層体の製造方法は、請求項7に記載されたものであって、前記活性エネルギー線照射が、紫外線、可視光線、赤外線、α線、β線、γ線、X線又は電子線の照射であることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載された積層体の製造方法は、請求項7に記載されたものであって、前記プラズマ処理が、大気圧プラズマ処理であることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載された積層体の製造方法は、請求項7に記載されたものであって、前記結晶薄膜を加熱し又は水洗して前記フラックスを除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層体は、高純度で高品質な結晶薄膜が基材上で均一に配向制御されて堆積されているため、その結晶薄膜に含有される結晶がナノ無機結晶であってもその結晶の特性を失わず、高機能性積層体となることができる。
【0019】
本発明の積層体の製造方法は、るつぼのような容器を使用することなく基材上へ結晶薄膜を直接形成することができるので、使用用途に応じた所望の大きさや形状の積層体を提供することができる。また、容器に基板を浸漬させ結晶薄膜を形成する従来のフラックス法に比べて、試薬量やエネルギー量を軽減させ、エネルギーのばらつきを抑えて溶解の均一化を向上させることができる。
【0020】
この製造方法によれば、結晶原材料とフラックスとを混合したものが、粉末状、液状、ペースト状のコーティング剤であっても高品質の結晶薄膜を形成することができるため、任意の性状の結晶原材料とフラックスとを適宜選択することができる。このため基材の形状が平面状であっても立体状であっても自在に結晶薄膜を形成することができる。
【0021】
このように、結晶原材料とフラックスとを幅広く選択できることにより、所望する結晶薄膜の種類、形状、特性を有する積層体を得ることができる。また、このコーティング剤における結晶原材料の濃度を適宜調製することで、ナノ無機結晶の形状や大きさを制御することができる。さらに、加熱、活性エネルギー線照射又はプラズマ処理において、結晶成長させる各処理条件を選択することで、結晶薄膜の組成、形状、膜厚を制御することもできる。このため、ナノ無機結晶の微細な凹凸による結晶薄膜の表面積を増大した膜とすること、一方、粒界が無くなめらかな膜とすることもできる。
【0022】
この製造方法によれば、耐熱性の低い基材を用いる場合は、選択的に低温フラックスを用いることで、結晶薄膜を低温成長することができ、耐熱性の低い基材であってもその基材上に結晶薄膜を積層させることができる。
【0023】
ナノ無機結晶がフッ素アパタイトである積層体によれば、その結晶薄膜が高品質であるため、薄膜であってもフッ素アパタイトの特性を十分に発揮することができ、柔軟性や耐酸性を有することができる。
【0024】
ナノ無機結晶が水酸アパタイト等である積層体によれば、吸着性、生体親和性を有することができる。
【0025】
ナノ無機結晶がチタン酸塩等である積層体によれば、その基材である金属チタンに由来するチタンを結晶核として結晶成長しているため、基材と結晶薄膜とが強固に結合し安定性を有し、光触媒性を示すことができる。
【0026】
ナノ無機結晶が酸化亜鉛や酸化錫等である積層体によれば、透明であり光を通し且つ導電性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用する積層体であって、ポリエチレンテレフタレート基板上にフッ素アパタイトが形成されたものの走査電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明を適用する積層体であって、ポリエチレンテレフタレート基板上にフッ素アパタイトが形成されたもののX線回折パターンを示す図である。
【図3】本発明を適用する積層体であって、大気圧プラズマ処理でSi基板上にフッ素アパタイトが形成されたものの走査電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明を適用する積層体であって、大気圧プラズマ処理でSi基板上にフッ素アパタイトが形成されたもののX線回折パターンを示す図である。
【図5】本発明を適用する積層体であって、大気圧マイクロプラズマ処理でSi基板上にフッ素アパタイトが形成されたものの走査電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明を適用外の積層体の走査電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明を適用する積層体であって、Ti基板上に五チタン酸四ナトリウムが形成されたものの走査電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明を適用する積層体であってTi基板上に五チタン酸四ナトリウムが形成されたもののフッ素樹脂処理後と、本発明を適用外の焼成Ti基板のフッ素樹脂処理後とでの水滴接触角の経時的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0029】
本発明の積層体は、目的のナノ無機結晶の融点以下の温度で溶解して結晶成長をさせることができるフラックス法を用いて、容器を使用せず、基材上で結晶原材料をナノ無機結晶へ結晶成長させて結晶薄膜として積層させているものである。
【0030】
本発明の積層体及びその製造方法の好ましい一形態について、詳細に説明する。
【0031】
カルシウム塩、リン酸塩、フッ化物、及びアンモニウム塩を結晶原材料とし、硝酸カリウム及び硝酸リチウムの混合物をフラックスとして混合して混練し、基材にコーティングするコーティング剤を調製する。このコーティング剤を所望の厚さで基材上にコーティングし、加熱することでエネルギーを与え、結晶原材料とフラックスとを溶融させる。これを徐冷することによって結晶成長させ、基材上にフッ素アパタイトの結晶薄膜を形成する。この結晶薄膜に残ったフラックスを水中に浸漬させることで水洗して除去し、高品質な結晶薄膜が基材上に積層している積層体を得る。
【0032】
積層体の結晶薄膜は、ナノ無機結晶の密集した堆積体である。そのナノ無機結晶は、自形の発達したもので、微細な結晶が基材状で緻密に結晶化しているものであると好ましい。ナノ無機結晶は、そのナノ無機結晶の均一性や配向性等の特性を有した結晶薄膜となり、積層体に生体適合性、光触媒性、光学特性、誘電性、電池特性あるいは透明導電性など様々な機能性を付与する。
【0033】
ナノ無機結晶がフッ素アパタイトである例を示したが、これに限定されず、アパタイトの組成として、具体的に、CaF(PO,Ca(OH)(PO,CaCl(PO,Ca(PO)・5HO,CaHPO,Ca(POのようなフッ素アパタイト、水酸アパタイト、塩素アパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウムが挙げられる。
【0034】
ナノ無機結晶は、長さ、幅、厚さのうちのいずれかのサイズが1〜1000nmのナノオーダー、特に1〜500nmであることが好ましく、1〜100nmであると更に好ましい。
【0035】
このナノ無機結晶が密集した結晶薄膜の厚さは、10nm〜1000μmであることが好ましく、10nm〜500μmであると更に好ましい。
【0036】
このナノ無機結晶であるフッ素アパタイトの結晶原材料は、具体的に、結晶水を有していてもよいカルシウム塩であり、硝酸カルシウム四水和物、硝酸カルシウムn水和物、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化カルシウム二水和物、塩化カルシウムn水和物、クエン酸カルシウム四水和物、ギ酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化カルシウムn水和物、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫化カルシウム、亜硫酸カルシウム0.5水和物、硫酸カルシウム二水和物、シュウ酸カルシウム一水和物、酢酸カルシウム一水和物、酢酸カルシウムn水和物、水酸化カルシウム;結晶水を有していてもよいリン酸塩であり、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム12水、リン酸水素アンモニウムナトリウム四水和物、リン酸水素カリウム三水和物、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸水素二ナトリウム12水、リン酸ナトリウム無水、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸二水素リチウム、リン酸二ナトリウム無水、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二ナトリウム七水和物、リン酸二ナトリウム12水、リン酸リチウム;フッ化物として、フッ化カリウム、フッ化カリウム二水和物、フッ化水素カリウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウム;アンモニウム塩として、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化アンモニウムがそれぞれ挙げられる。
【0037】
これらの結晶原材料を、それぞれ適宜選択して用いることにより、前記組成であるアパタイトのナノ無機結晶となる。
【0038】
フラックスは、結晶薄膜を形成した後に加熱蒸発や水洗いで除去するため、水溶性であり、水中に浸漬させることで溶解させることができるものや水で洗い流すことができるものであると好ましい。フラックスは、硝酸カリウム及び硝酸リチウムの混合物に限られず、硝酸カリウム又は硝酸リチウムをそれぞれ1種類で用いてもよい。フラックスとして、通常用いられるものであれば特に限定されないが、具体的に、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、及びそれらの混合物や、それらに対応するアンモニウム塩が挙げられる。
【0039】
これらのフラックスは、その基材や結晶原材料によって選択的に用いられる。例えば、耐熱性の低い基材には低温フラックスを選択し、耐熱性の高い基材には低温フラックスに限定されずに選択することができる。
【0040】
このコーティング剤は、その結晶原材料に由来する結晶水や付着水、湿気等の水分を含んでいてもよく、また、含んでいなくてもよい。コーティング剤の状態は、粉末状、液状、液体のフラックス中に粉末の結晶原材料が分散したペースト状、または水分中でフラックスと結晶原材料とが分散したペースト状であってもよい。
【0041】
コーティング剤に含有される結晶原材料の濃度は、0.1〜95mol%であると好ましく、75mol%以下であると一層好ましく、0.5〜50mol%であると更に一層好ましい。結晶原材料の濃度が95mol%より大きくなると、結晶原材料が充分に溶融せず、自形の発達した高品質な結晶を得ることができなくなる恐れがある。
【0042】
基材は、金属材料、ガラス材料、セラミックス材料、樹脂材料、生体高分子材料、生体適合性材料、または、これらの複合体材料から形成されたものである。これらの基材は、真空紫外光照射、紫外光照射、各種プラズマ処理、酸・アルカリなどの溶液処理、熱CVD処理、単分子膜被覆処理により表面処理をされていてもよい。基材の表面処理により、親水性をもたせることができる。
【0043】
金属材料として、具体的に、Si,Ti,Nb,Cu,Cr,Ni,Ta,W,Mo,Zn,Co,V,Al,Mg,Sn,In,Hf,Ru,Rh,Pt,Au,Ag,ステンレス鋼が挙げられる。
【0044】
ガラス材料として、ケイ酸、ソーダ灰、石灰、炭酸カリウム、酸化鉛、硼酸、石英、シリカ、ライムが挙げられる。
【0045】
セラミックス材料として、具体的に、リン酸カルシウム、アルミナ、チタニア、カルシア、イットリア、ジルコニア、セリア、ハフニア、サマリア、イットリウム安定化ジルコニアが挙げられる。
【0046】
樹脂材料は、生体内で安定であり、加工が容易であり、優れた柔軟性を示すものであると好ましい。樹脂材料として、具体的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリイミドが挙げられる。
【0047】
生体高分子材料として、具体的に、コラーゲンが挙げられる。
【0048】
生体適合性材料として、具体的に、ポリ乳酸、シリコーン、セルロースが挙げられる。
【0049】
複合体材料は、特性の異なる材料を組み合わせたものであり、それぞれの短所を補うものであると好ましい。複合体材料として、具体的に、コラーゲン−リン酸カルシウム複合体、ポリエチレン−チタン複合体、セルロース−リン酸カルシウム複合体が挙げられる。
【0050】
これらの材料から形成された基材の形状は、平面形状又は立体形状であってもよく、特に限定されない。形状として、例えば、板状、球状、管状、棒状、柱状、錐状、多形状、線状、繊維状、メッシュ状、ハニカム状、三次元立体状が挙げられる。
【0051】
基材にコーティングする方法は、ディップコート法、スクリーニング法、溶液滴下法、印刷法、ロール・ツー・ロール法、スピンコート法、転写法、バーコート法、スキージ法、インクジェット法が挙げられる。基材の全面にコーティングしてもよく、一部を塗りつぶし又はパターンを付してコーティングしてもよい。
【0052】
加熱する温度は、70〜1500℃であると好ましく、よりこの好ましくは、100〜1300℃である。さらに加熱温度は基材の材料により異なり、樹脂材料の場合は70〜250℃、ガラス材料の場合は70〜700℃、金属材料の場合は70〜800℃、セラミックス材料の場合は70〜1500℃であることが好ましい。
【0053】
加熱は、0.1〜100℃/分、例えば15℃/分の昇温速度で、一方徐冷は、0.1〜2000℃/分、例えば200℃/時の冷却で行われることが好ましい。電気炉プログラムで徐々に冷却してもよく、水冷などで、30秒で1000℃冷却してもよい。
【0054】
加熱によりエネルギーを与える方法を記載したが、これに限定されず、結晶成長のエネルギー源として、活性エネルギー線照射、プラズマ処理が挙げられる。これらの手段として、具体的に、電気炉、ヒーター、大気圧プラズマジェット、大気圧マイクロプラズマジェット、レーザー、真空紫外光、紫外光が挙げられる。
【0055】
別な積層体の一形態として、基材である金属チタンに由来するチタンを結晶核として結晶成長し結晶薄膜を形成している積層体及びその製造方法を以下に説明する。
【0056】
ナトリウム塩を結晶原材料とした硝酸ナトリウムに水を加え原料ペーストを調製し、このペーストを金属チタン基材上に滴下する。これを加熱することで、チタン基材の表面を部分的に溶解させる。その後、一定時間保持し、以降冷却することで、それを結晶核として結晶成長させると、チタン酸塩であるナノ無機結晶を含有している結晶薄膜を形成して積層体となる。
【0057】
この積層体は、結晶核を基材表面から供給することができるため、基材と結晶薄膜とが強固に結合しているものである。
【0058】
ナノ無機結晶であるチタン酸塩の組成として、具体的に、NaTi12,NaTi,NaTi13,NaTiO,Na0.8Ti,NaTi,NaTi14が挙げられる。結晶原材料としたNa金属とTi金属との複酸化物であるチタン酸塩を例示したが、結晶原材料となる金属を選択することで、他の金属とTi金属とのチタン酸塩となる。そのチタン酸塩の組成として、具体的に、KTi13,KTi,KTiO,KTi,KTi,LiTiO,LiTiO,LiTi,LiTi13,LiTi12,LaTi,La0.35Li0.55Ti,BaTiO,BaTiO,BaTi,BaTi,BaTi20,BaTiO13,BaTi20,BaTi1330,SrTiO,SrTiO,SrTi,CaTiO,LaTi,CoTiO,NiTiO,NiTiO,FeTiO,ZnTiO,ZnTiOが挙げられる。
【0059】
このチタン酸塩となる結晶原材料として硝酸ナトリウムを例示したが、その他の化合物として、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムアセチルアセトナード、ナトリウムアセチリド、ピロリン酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、ナトリウムアミド、りん酸水素アンモニウムナトリウム4水和物、アントラニル酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、臭素酸ナトリウム、臭化ナトリウム、酪酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、クロロ酢酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム2水和物、デヒドロ酢酸ナトリウム、りん酸二水素ナトリウム、β−プロピオン酸ナトリウム、二硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ナトリウムエトキシド、ギ酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、よう素酸ナトリウム、よう化ナトリウム、乳酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、マンデル酸ナトリウム、メルカプト酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ミリスチン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、りん酸ナトリウム、ピクリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムが挙げられる。また、カリウム、リチウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、ランタン、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛である金属の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、フッ化物、酸化物、水酸化物及び酢酸塩が挙げられる。
【0060】
フラックスは、ナノ無機結晶がアパタイトである積層体と同様のフラックスを用いることができる。
【0061】
ナノ無機結晶がアパタイト又はチタン酸塩である積層体を例示したが、ナノ無機結晶はこれに限定されず、例えば、酸化マグネシウムのようなアルカリ土類金属酸化物;酸化チタン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化タングステン、又は希土類金属酸化物のような遷移金属酸化物;チタン酸塩の他、コバルト酸塩、ニッケル酸塩、ニオブ酸塩、モリブデン酸塩、タンタル酸塩、タングステン酸塩、又は希土類金属塩のような遷移金属含有複酸化物;酸化インジウム錫、酸化亜鉛アルミニウム、又は酸化ガリウムアンチモンのような卑金属含有複酸化物がそれぞれ挙げられる。
【0062】
ナノ無機結晶である遷移金属含有複酸化物の組成を、以下に例示する。
コバルト酸塩の組成として、具体的に、LiCoO,NaCoO,LiCo1-x(M=Ni,Mn,Al),LiCoPO,LiCoVO,LiCoMn2-y,LiCoO,KCoO,RbCoO,NaCoO,KNaCo,LiCoO,Na10Coが挙げられる。
ニッケル酸塩の組成として、具体的に、LiNiO,LiNi1-xCo,LiNi1-xMn,LiNi1-x-yMnCo,LiNiMn2-y,LiNi0.5Ge0.5,LiNiVO,LiNiPO,LiNi10,LiNiO,LiNiOが挙げられる。
ニオブ酸塩の組成として、具体的に、KNb21,KNb17,KNb1849,KNb,KNbO,KNb1333,KNb11,KNbO,KNb19,KNb,LiNbO,LiNb,Li16Nb18,LiNbO,LiNbO,NaNbO,NaNb1333,NaNb,NaNb11,NaNbO,NaNbO,SrNb,SrNb16,SrNb1027,SrNb,SrNb,SrNb15,SrNb11,CaNb2O6,CsNb11,FeNb,FeNb,MgNb,MgNb,MnNb,NiNb,ZnNb,LiLaNb12,KCaNb10が挙げられる。
モリブデン酸塩の組成として、具体的に、CaMoO,CuMoO,GdGeMoO,BaMoO,BiMo,BiMo12,NaLa(MoO,NaNd(MoO,LiYb(MoO,Fe(MoO,Gd(MoOが挙げられる。
タンタル酸塩の組成として、具体的に、NaTaO,KTaO,LiTaO,SrTa,InTaO,NaTa11,SrTa11,RbLaTa,RbCaTa10,(RbSr)Ta13,KSrTa,KTa17,KTaSi13,RbTa17,MgTaO,MgTa,BaTa,LiTaO,NaTaO,KTa13,MgTa,LiTa,LiTaOが挙げられる。
タングステン酸塩の組成として、具体的に、MnWO,MgWO,CaWO,BaWO,NiWO,CoWO,ZnWO,FeWO,PbWO,CdWO,SrWO,BiWO,Na13,GdGeWO,NaLa(WO,NaNd(WO,NaGd(WO,KGd(WO,KY(WO,KYb(WO,LiNd(WO,Al(WO,NdNa16が挙げられる。
希土類金属塩の組成として、具体的に、NaReF,LiReF,KReF,RePO,ReAl12,Al2Re,ReVO,Re,ReAlO,ReNbO,ReFeO,YWO,NdWO,EuWO,YbWO,LiEuO,BaY,YBO(Re=希土類元素)が挙げられる。
【0063】
これらのナノ無機結晶となる結晶原材料は、アパタイト及びチタン酸塩で例示した化合物であり、さらに、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、希土類金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、アンチモン等の上記遷移金属含有複酸化物の組成に含有される金属の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、及びアンモニウム塩である無機原材料が挙げられる。
【0064】
また、これらの無機原材料は有機化合物を含有していてもよく、無機原材料と有機化合物との無機−有機複合原材料として、例えば、チタンテトライソブロポキシドが挙げられる。
【0065】
なお、結晶原材料及びフラックスを混合しているコーティング剤は、その組成中に、蒸発抑制剤や増粘剤を含有していてもよい。具体的に、B、B・HO、B2.5等が挙げられる。
【0066】
本発明の積層体は、多岐に渡り用いられるもので、バイオマテリアル;人工心肺、人工関節、人工腎臓、人工血管、人工靭帯、う歯充填剤、コンタクトレンズ、インプラント、生体埋込螺子など各種の医療器;光学材料;光触媒材料等に利用される。
【0067】
例えば、その用途はナノ無機結晶により異なり、具体的に、ナノ無機結晶が酸化亜鉛又は酸化錫であると透明導電体、ナノ無機結晶がニオブ酸ナトリウム又はチタン酸ストロンチウムであると誘電体、ナノ無機結晶がコバルト酸リチウムであると二次電池用電極、ナノ無機結晶がニオブ酸カリウム又はタンタル酸ナトリウムであると光触媒、ナノ無機結晶がタングステン酸ナトリウムであるとクロミック、ナノ無機結晶が希土類添加フッ化イットリウムナトリウムであるとアップコンバージョン蛍光体となる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の積層体の製造方法の実施例について、詳細に説明する。
【0069】
本発明を適用する、結晶薄膜がフッ素アパタイトである積層体を実施例1、結晶薄膜が五チタン酸四ナトリウムである積層体を実施例2に示す。また、本発明の適用外であるフラックスを使用せずに形成した積層体を比較例として示す。
【0070】
(実施例1)
フッ素アパタイトの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
【0071】
Ca(NO・4HO、(NHHPO、及びKFを結晶原材料とし、KNO−LiNO(6:4)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度がそれぞれ1、10、20、15、50mol%であるペースト状のコーティング剤を調製した。各コーティング剤における、結晶原材料及びフラックスの配合量を表1に示す。
【表1】

【0072】
(実施例1−1)
基材となる、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板及びポリカーボネート(PC)基板の両端にテープを張り、その間に調製したコーティング剤1をそれぞれのせ、コンラージ棒で基板表面をスキージし、テープの厚み以上の過剰なコーティング剤1を除去することで、基板上にコーティング剤1をコーティングした。同様の操作でコーティング剤3をPET基板、PC基板に、それぞれコーティングした。これを、電気炉で、加熱速度:15℃/分、保持時間:10時間、保持温度:150℃、冷却速度:200℃/分、停止温度:100℃として加熱した。これを冷却して温水に浸漬してフラックスを除去し、積層体を形成した。
【0073】
得られた積層体のX線回折(XRD)測定、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)分析、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行った。
【0074】
得られた積層体において、PET基板を用いた場合、基板から放射状に結晶成長し、PC基板を用いた場合、自形の発達した六角柱状の結晶が基板から垂直に成長した。これらの積層体は、基板と結晶薄膜とが密着しており、湾曲させても亀裂や剥離を生じることなく柔軟性を示した。
【0075】
PET基板にコーティング剤1を用いた積層体を(a)、PET基板にコーティング剤3を用いた積層体を(b)として、それらのSEM像を図1に示す。図1から明らかな通り、結晶原材料濃度の差異により、結晶の大きさ、緻密さが異なることがわかった。
【0076】
また、PET基板にコーティング剤3を用いた積層体のXRD結果を図2に示す。粉末X線回折データベース(International Centre for Diffraction Data(ICDD)−Powder Diffraction File(PDF)),01−070−8135,CaF(POよりフッ素アパタイト結晶(CaF(PO)が得られていることを確認した。また、FT−IR分析より、950〜1100cm−1及び550〜650cm−1にPO3−のピークを確認した。
【0077】
(実施例1−2−1)
実施例1−1と同様の方法で、調製したコーティング剤1、4及び5をSi基板(2cm×2cm)にコーティングし、大気圧プラズマジェットで、投入電力:150W、プラズマガス:N、窒素流量:5.0標準リットル毎分、処理時間:3又は10秒間、基板−トーチ間距離:10mmとして処理をした。これを温水に浸漬してフラックスを除去し積層体を形成した。
【0078】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。
【0079】
大気圧プラズマジェットの処理時間を10秒間として、コーティング剤1を用いた積層体を(c)、コーティング剤4を用いた積層体を(d)、コーティング剤5を用いた積層体を(e)として、それらのSEM像を図3に示す。結晶原材料濃度を下げると結晶は小型化し、結晶原材料濃度を上げると自形の発達が乏しくなった。結晶原材料濃度が15mol%であるコーティング剤4を用いた積層体において、最も自形が発達した六角柱状の結晶が得られた。自形の発達した六角柱状のフッ素アパタイト結晶は、約70nm×300nmの大きさであった。
【0080】
また、このコーティング剤4を用いた積層体のXRD結果を図4に示す。大気圧プラズマジェット処理の処理時間に関わらず、フッ素アパタイトの結晶薄膜を形成していることがわかった。
【0081】
(実施例1−2−2)
実施例1−1と同様の方法で、調製したコーティング剤1、2及び4をSi基板(2cm×2cm)にコーティングし、大気圧マイクロプラズマジェットで、投入電力:20W、プラズマガス:Ar、アルゴン流量:200標準立方センチメートル毎分、処理時間:1,3又は10秒間、基板−トーチ間距離:3mmとして処理をした。これを温水に浸漬してフラックスを除去し積層体を形成した。
【0082】
得られた積層体のSEM観察を行った。コーティング剤1を用いた積層体を(f)、コーティング剤2を用いた積層体を(g)、コーティング剤4を用いた積層体を(h)として、それらのSEM像を図5に示す。結晶原材料の濃度が1mol%から15mol%へ上がると共に、柱状の自形が発達した。
【0083】
また、大気圧マイクロプラズマの処理時間1〜10秒間において、全て、フッ素アパタイトの結晶薄膜が形成された。大気圧マイクロプラズマの処理時間を増加させるとともに、結晶の大きさは大きくなり、基板上を密に覆った。
【0084】
実施例1−2−1及び1−2−2より、結晶成長のエネルギー源がプラズマ処理である場合、処理時間及び投入電力を減少させるにつれて結晶が小型化した。
【0085】
(比較例1)
Ca(NO・4HOを2.341g、(NHHPOを0.786g、及びKFを0.115g、混合して結晶原材料濃度が100mol%であるフラックス非含有コーティング剤とした。
【0086】
(比較例1−1)
PET基板上にフラックス非含有コーティング剤をコーティングすること以外は、実施例1−1と同様の操作また条件により積層体を形成した。
【0087】
得られた積層体のSEM像を図6の(i)に示す。フラックスを含有していないため、結晶の自形は見られなかった。
【0088】
(比較例1−2)
Si基板上にフラックス非含有コーティング剤をコーティングすること以外は、実施例1−2−1と同様の操作また条件により積層体を形成した。
【0089】
得られた積層体のSEM像を図6の(j)に示す。フラックスを含有していないため、結晶の自形は見られなかった。
【0090】
(実施例2)
蒸留水4mlに硝酸ナトリウム1gを溶解させた水溶液を調製した。真空紫外(VUV)光照射で表面を親水性とした金属Ti基板(2cm×2cm)に、160μlの調製水溶液であるコーティング剤を滴下して、電気炉で、加熱速度:500℃/分、保持時間:1〜10時間、保持温度:500℃、冷却速度:5〜100℃/分として加熱した。これを冷却して温水に浸漬させてフラックスを除去し、積層体を形成した。
【0091】
得られた積層体のSEM観察を行った。保持時間10時間で得られた積層体を(k)、保持時間1時間で得られた積層体を(l)として、それらのSEM像を図7に示す。得られた積層体のナノ無機結晶は、五チタン酸四ナトリウム(NaTi12)であった。保持時間10時間で得られた積層体では、約1〜3μmの六角板状結晶が得られた。結晶は、花びら状に成長しており、その膜厚は、約2μmであった。保持時間1時間で得られた積層体では、板状結晶が基板に対して垂直に成長し、その膜厚は、約1.5μmであった。また、保持時間が1時間であっても10時間であっても、結晶形状への影響はなかった。
【0092】
また、実施例2のように保持時間10時間で得られた積層体の光触媒効果の実験を行った。この積層体とフルオロアルキルシラン(FAS)(CF(CF(CHSi(OCH)とをテフロン(登録商標)容器中に静置し、150℃、1時間の条件において、熱化学蒸着(CVD)法により長鎖フルオロ基を有する有機シランを積層体上に自己組織化させ、UV光照射(200W水銀キセノンランプ)した。一方、本発明を適用外で結晶薄膜を有しないものであって、同様に、積層体と同条件で加熱処理した焼成Ti基板(TiO・ルチル)を用いて、長鎖フルオロ基を有する有機シランを基板上に自己組織化させ、UV光照射した。
【0093】
この積層体と焼成Ti基板との水滴接触角の変化を測定した。その測定結果を図8に示す。焼成Ti基板の水滴接触角は変化しないが、積層体の水滴接触角は、時間の経過と共に接触角が減少した。積層体が光触媒として、自己組織化させた長鎖フルオロ基を有する有機シランを分解していることがわかる。
【0094】
(実施例3)
水酸アパタイトの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
Ca(NO・4HO(0.128g)、(NHHPO(0.043g)、及びKOH(0.006g)を結晶原材料とし、KNO−LiNO(6:4)(0.650g:0.296g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度が1mol%であるペースト状のコーティング剤を調製した。さらに蒸留水を1ml添加し、混合した。
【0095】
このコーティング剤とTi基板とを用いたこと、加熱における保持温度を250℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0096】
得られた積層体のXRD測定、FT−IR分析、SEM観察を行った。得られた積層体において、Ti基板全体に幅約30nmの繊維状でフレキシブルな結晶が密に育成した。また、積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,09−0432,Ca(OH)(POより水酸アパタイト結晶(Ca(OH)(PO)が得られていることを確認した。また、FT−IR分析より、950〜1100cm−1及び550〜650cm−1にPO3−及び3570cm−1にOHのピークを確認した。
【0097】
(実施例4−1)
酸化亜鉛の結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
Zn(NO・6HO(6.476g)を結晶原材料とし、KNO−Ca(NO・4HO(55:45)(1.211g:2.313g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度が50mol%であるペースト状のコーティング剤を調製した。
【0098】
このコーティング剤とガラス基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:50℃/時、保持時間:1時間、保持温度:300〜500℃、冷却速度:100℃/時、停止温度:100℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0099】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体において、ガラス基板に柱状及びバルク状の結晶が成長した。これらの積層体は、基板と結晶とが密着しており、爪でこすっても剥れなかった。また、ガラス基板にコーティング剤を用いた積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,36−1451,ZnOより酸化亜鉛結晶(ZnO)が得られていることを確認した。
【0100】
(実施例4−2)
酸化錫の結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
SnCl(5.394g)を結晶原材料とし、KNO−Ca(NO・4HO(55:45)(1.582g:3.024g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度が50mol%であるペースト状のコーティング剤を調製した。
【0101】
このコーティング剤とガラス基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:50℃/時、保持時間:1時間、保持温度:500℃、冷却速度:100℃/時、停止温度:100℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0102】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体において、ガラス基板から結晶が成長した。これらの積層体は、基板と結晶とが密着しており、爪でこすっても剥れなかった。また、ガラス基板にコーティング剤を用いた積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,01−071−0652,SnOより酸化錫結晶(SnO)が得られていることを確認した。
【0103】
(実施例5−1)
六ニオブ酸カリウムの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
CO(0.274g)、及びNb(0.792g)を結晶原材料とし、KNO−KCl(65:35)(6.458g:2.564g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度が1mol%とした。さらに、蒸留水を10ml加え、ペースト状のコーティング剤を調製した。
【0104】
このコーティング剤とガラス基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:10℃/分、保持時間:10時間、保持温度:500℃、冷却速度:100℃/時、停止温度:250℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0105】
得られた積層体のXRD測定、FT−IR分析、SEM観察を行った。得られた積層体において、ガラス基板を用いた場合、自形の発達した結晶が成長した。これらの積層体は、基板と結晶薄膜とが密着していた。また、ガラス基板にコーティング剤を用いた積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,76−0977,KNb17より六ニオブ酸カリウム結晶(KNb17)が得られていることを確認した。
【0106】
(実施例5−2)
三ニオブ酸カリウムの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
CO(2.322g)、及びNb(13.397g)を結晶原材料とし、KCl(10.020g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度が20mol%とした。さらに、蒸留水を25ml加え、ペースト状のコーティング剤を調製した。
【0107】
このコーティング剤とコランダム基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:250℃/時、保持時間:5時間、保持温度:800℃、冷却速度:250℃/時、停止温度:500℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0108】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体において、コランダム基板を用いた場合、自形の発達した結晶が成長した。これらの積層体は、基板と結晶薄膜とが密着していた。また、コランダム基板にコーティング剤を用いた積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,75−2182,KNbより三ニオブ酸カリウム結晶(KNb)が得られていることを確認した。
【0109】
(実施例5−3)
SrTiOの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
SrCO(0.20g)及びTiO(anatase)(0.11g)を結晶原材料とし、KCl−LiCl(6:4)(0.54g:0.20g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度が10mol%であるペースト状のコーティング剤を調製した。
【0110】
このコーティング剤とAl(0001)基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:200℃/分、保持時間:10時間、保持温度:600℃、冷却速度:5℃/分、停止温度:500℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0111】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体において、自形の発達した平均サイズ0.5〜1μmの立方体状結晶が基板上へ生成した。また、積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,35−0734,SrTiOよりチタン酸ストロンチウム結晶(SrTiO)が得られていることを確認した。
【0112】
(実施例6−1)
コバルト酸リチウムの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
Co(1.323g)、LiOH・HO(0.869g)を結晶原材料とし、NaCl(18.380g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度を5mol%とした。さらに、蒸留水(10mL)を加えて混合し、ペースト状のコーティング剤を調製した。
【0113】
このコーティング剤と基材としてサファイア基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:900℃/時間、保持時間:5時間、保持温度:900℃、冷却速度:200℃/時、停止温度:500℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0114】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体において、サファイア基板を用いた場合、基板に六角形を基本形状とした結晶が成長した。これらの積層体は、基板と結晶薄膜とが密着していた。また、基板にコーティング剤を用いた積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,75−0532,LiCoOよりコバルト酸リチウム結晶(LiCoO)が得られていることを確認した。
【0115】
(実施例6−2)
コバルト酸リチウムの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
Co(3.961g)、LiOH・HO(5.142g)を結晶原材料とし、LiNO(13.104g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度を5mol%とした。さらに、蒸留水(10mL)を加えて混合し、ペースト状のコーティング剤を調製した。
【0116】
このコーティング剤と基材としてアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:1000℃/時間、保持時間:3時間、保持温度:500℃、冷却速度:200℃/時、停止温度:100℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0117】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体において、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼を用いた場合、基板にバルク形を基本形状とした結晶が成長した。これらの積層体は、基板と結晶薄膜とが密着していた。また、基板にコーティング剤を用いた積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,75−0532,LiCoOよりコバルト酸リチウム結晶(LiCoO)が得られていることを確認した。
【0118】
(実施例6−3)
チタン酸リチウムの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
TiOアナターゼ(2.855g)、LiCO(7.716g)を結晶原材料とし、NaCl(1.129g)をフラックスとして混合して、結晶原材料濃度を50mol%とした。さらに、蒸留水(10mL)を加えて混合し、ペースト状のコーティング剤を調製した。
【0119】
このコーティング剤と基材としてサファイア基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:45℃/時、保持時間:10時間、保持温度:700℃、冷却速度:200℃/時、停止温度:500℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0120】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体において、サファイア基板を用いた場合、基板に自形の発達した八面体状結晶が成長した。これらの積層体は、基板と結晶とが密着していた。また、基板にコーティング剤を用いた積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,49−0207,LiTi12よりチタン酸リチウム結晶(LiTi12)が得られていることを確認した。
【0121】
(実施例7)
四タングステン酸ナトリウムの結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
WO(0.845g)及びNaNO(0.154g)を混合し、さらに蒸留水を1ml加え、ペースト状のコーティング剤を調製した。
【0122】
このコーティング剤とシリカガラス基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:250℃/時間、保持時間:5時間、保持温度:500℃、冷却速度:100℃/分、停止温度:150℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0123】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察を行った。得られた積層体は、SEM観察より板状の結晶が基板上で成長していることが観察された。また、XRD結果にて、ICDD−PDF,70−2022,Na13より四タングステン酸ナトリウム(Na13)が得られていることを確認した。
【0124】
(実施例8)
フッ化イットリウムナトリウム(NaYF)の結晶薄膜となるコーティング剤の調製を以下に示す。
NaF(0.0043g)、YF(0.0135g)、YbF(0.0024g)及びErF(0.0003g)を結晶原材料とし、NaF−NaCl(70:30)(03049:0.1793g)をフラックスとして乾式混合した。この粉末混合物に蒸留水500μlを滴下し混合することで、結晶原材料濃度が1mol%であるペースト状のコーティング剤を調製した。
【0125】
このコーティング剤とサファイア基板とを用いたこと、加熱を電気炉で、加熱速度:45℃/分、保持時間:5時間、保持温度:700℃、冷却速度:200℃/分、停止温度:500℃としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法及び条件で積層体を形成した。
【0126】
得られた積層体のXRD測定、SEM観察及び近赤外レーザー(波長:980nm)により、アップコンバージョン発光を評価した。得られた積層体のSEM観察より、基板表面に自形の発達した立方体形状及び大きさ1μm以下の球状結晶を観察した。また、積層体のXRD結果にて、ICDD−PDF,00−028−1192,フッ化イットリウムナトリウム(Na(Y0.57Yb0.39Er0.04)F)結晶が主として得られていることを確認した。また、近赤外レーザー照射下で緑色のアップコンバージョン発光を示すことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の積層体の製造方法により形成された積層体は、基材と結晶薄膜との各種選択により、生体材料、透明導電材料、光学材料、光触媒材料、ディスプレイ・半導体材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属とアルカリ土類金属と遷移金属と卑金属との少なくとも何れかの金属の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、アンモニウム塩、及び有機化合物から選ばれる結晶原材料から得られたアパタイト、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属含有複酸化物、卑金属酸化物、卑金属含有複酸化物、又はそれらのドーパント含有化合物からなるナノ無機結晶が、基材上に形成され、積層している積層体であって、
該基材にコーティングされた該結晶原材料と、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、塩化物、フッ化物、酸化物、水酸化物、及びアンモニウム塩から選ばれるフラックスとが加熱、活性エネルギー線照射又はプラズマ処理により結晶成長して該ナノ無機結晶が形成されたことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記金属が、リチウム、カリウム、ナトリウムから選ばれる前記アルカリ金属,マグネシウム、カルシウム、バリウムから選ばれる前記アルカリ土類金属,チタン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、インジウム、希土類金属から選ばれる前記遷移金属,アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、アンチモンから選ばれる前記卑金属であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記アパタイトが、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、又は水酸アパタイトであり、
前記アルカリ土類金属酸化物が、酸化マグネシウムであり、
前記遷移金属酸化物が、酸化チタン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化タングステン、又は希土類金属酸化物であり、
前記遷移金属含有複酸化物が、チタン酸塩、コバルト酸塩、ニッケル酸塩、ニオブ酸塩、モリブデン酸塩、タンタル酸塩、タングステン酸塩、又は希土類金属塩であり、
前記卑金属酸化物が、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化錫、又は酸化アンチモンであり、
前記卑金属含有複酸化物が、酸化インジウム錫、酸化亜鉛アルミニウム、又は酸化ガリウムアンチモンであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材が、金属、ガラス、及びセラミックスから選ばれる無機材、生体高分子、若しくはポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、及びポリ(メタ)アクリレートから選ばれる樹脂で形成され、又はこれらが複合された基材であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材が、平面形状又は立体形状であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
生体適合性材料、光触媒機能性材料、光学材料、誘電材料、電池電極材料、又は透明導電性材料であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
アルカリ金属とアルカリ土類金属と遷移金属と卑金属との少なくとも何れかの金属の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物、リン酸塩、アンモニウム塩、及び有機化合物から選ばれる結晶原材料と、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、塩化物、アンモニウム塩、及び酸化物から選ばれるフラックスとを水の存在又は不存在下で混合してから、基材へコーティングした後、加熱、活性エネルギー線照射又はプラズマ処理を施して、アパタイト、遷移金属酸化物、遷移金属含有複酸化物、卑金属酸化物、卑金属含有複酸化物、又はそれらのドーパント含有化合物からなるナノ無機結晶を該基材上に結晶成長させて結晶薄膜として積層することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記加熱が、70〜1500℃で行われることを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記活性エネルギー線照射が、紫外線、可視光線、赤外線、α線、β線、γ線、X線又は電子線の照射であることを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記プラズマ処理が、大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記結晶薄膜を加熱し又は水洗して前記フラックスを除去することを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−63452(P2011−63452A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213242(P2009−213242)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】