説明

積層板の切断方法、電気コネクタの積層部分の切断方法及び該切断方法を用いた電気コネクタ

【課題】本発明は各層ごとの位置精度を維持でき、かつ、エラストマー16層を含んだものであっても所定の大きさに加工できる積層板の切断方法を提供する。
【解決手段】多数の電気接触子20を有する電気コネクタ10における上記目的は、複数の電気接点62を有するとともに所定位置に電気接点62よも突出した部分64を有する相手コネクタ60と嵌合する電気コネクタ10であって、電気コネクタ10は電気接点62と接触する電気接触子20を有し、かつ、各層ごとの位置決め精度を必要とする多層の積層部分からなり、少なくとも1枚のエラストマー16層を含んだ電気コネクタ10の積層部分の切断方法において、電気コネクタ10の相手コネクタ60の突出した部分64に対応する位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いることにより達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各層ごとに位置決め精度を要し、かつ、少なくともエラストマー層を含んだ多層の積層板を切断する切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板と表面実装型の電子部品との間に、シリコンゴム等弾性エラストマーを介在させ、このエラストマーの厚さ方向に複数の導電細線を埋設するとともに、このエラストマーの両面に夫々の導電線と接合する接点を設けて、回路基板と電子部品との間を導通させるようにしたコンタクトが用いられる。この種のコンタクトでは、回路基板と電子部品との間の導通を確実なものとするために、電子部品を回路基板に向けて押圧させる。そのため、このエラストマーの厚さ方向に埋設された導電細線は、例えば特願2001−270521号に示すように、弾性エラストマー内に埋設される複数の導電細線が、このエラストマーの表及び裏面に略垂直方向に伸びて直線状となり、且つ複数の導電細線の両端部は前記エラストマーの表及び裏面から夫々突出させるようにして、弾性エラストマーの両面接点用コネクタを形成している。
【特許文献1】特開2003−86268(特願2001−270521)の要約によると、直線状の導電細線を埋設した、弾性エラストマーの両面接点用コネクタを提供することを目的とし、弾性エラストマー内に埋設される複数の導電細線が、このエラストマーの表及び裏面に略直角方向に伸びて直線状となり、且つ複数の導電細線の両端部は前記エラストマーの表及び裏面から夫々突出させたことを特徴とする、弾性エラストマーの両面接点用コネクタを提供し、両面接点用コネクタは、所定厚さの弾性エラストマーに、略直角となるように導電細線を挿入・貫通させ、弾性エラストマーの表側及び裏側に所定長さだけ層の表面から突出させた状態で、導電細線の両側を所定の長さに切断することによって作成する。導電細線の端部には、腕部を持つ電気接点を取付けるか、又は、相手物の接触部分の形状に沿ったように、導電細線の端部の形状を成形する構造のものが開示されている。 ちなみに、特開2003−86268(特願2001−270521)の特許請求の範囲には、請求項1として、弾性エラストマー内に埋設される複数の導電細線が、このエラストマーの表及び裏面に略垂直方向に伸びて直線状となり、且つ複数の導電細線の両端部は前記エラストマーの表及び裏面から夫々突出させたことを特徴とする弾性エラストマーの両面接点用コネクタ。請求項2として、前記弾性エラストマーの両面接点用コネクタの表裏面に、相手物と接続する電気接点と貫通したスルーホールとこのスルーホールと該電気接点を導通させる導体とからなるフレキシブルプリント基板を、表及び裏面に夫々突出した複数の導電細線と前記スルーホールとが合致するように接合したことを特徴とする請求項1記載の弾性エラストマーの両面接点用コネクタ。請求項3として、所定厚さの弾性エラストマーに、略垂直となるように導電細線を挿入・貫通させ、弾性エラストマーの表側及び裏側に所定長さだけ層の表面から突出させた状態で、導電細線の両側を所定の長さに形成することによって作成した請求項1記載の弾性エラストマーの両面接点用コネクタ。請求項4として、弾性エラストマーの表裏面側に所定長さに突出された導電細線の中間部若しくは先端部を、相手物と接続できる形状に形成したことを特徴とする請求項3記載の弾性エラストマーの両面接点用コネクタ。請求項5として、弾性エラストマーの表裏面側に所定長さに突出された前記導電細線の中間部若しくは先端部を略S字状に屈曲形成したことを特徴とする請求項4記載の弾性エラストマーの両面接点用コネクタ。請求項6として、前記弾性エラストマーの両面接点用コネクタの一方の表面若しくは裏面に、相手物と接続する電気接点と貫通したスルーホールとこのスルーホールと該電気接点を導通させる導体とからなるフレキシブルプリント基板を、表面若しくは裏面に夫々突出した複数の導電細線と前記スルーホールとが合致するように接合し、もう一方の表面若しくは裏面側に所定長さに突出された導電細線の中間部若しくは先端部を、相手物と接続できる形状に形成したことを特徴とする請求項1記載の弾性エラストマーの両面接点用コネクタ。請求項7として、所定厚さの弾性エラストマーに対して、導電細線用ガイド孔を所定間隔で多数個設けた治具を、前記弾性エラストマーに対して略垂直となるように配置し、導電細線を前記治具に挿入し、弾性エラストマーを貫通させ、弾性エラストマーの表側及び裏側に所定長さだけ層の表面から突出させたことを特徴とする弾性エラストマーの両面接点用コネクタの製造方法。請求項8として、弾性エラストマー両側に突出した複数の導電細線を所定の長さにするために、裏面側は所定数の所定深さの孔の開いた板上に弾性エラストマーを配置し、導線細線の先端が孔の底面に接するまで差し込み、表面側は弾性エラストマー上に所定厚さの板を設置し、導電細線の差し込みが完了した後に前記治具を所定方向に移動させ導電細線を切断後、前記所定厚さの板を取り除いたことを特徴とする請求項7記載の弾性エラストマーの両面接点用コネクタの製造方法等が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、電気・電子機器の狭小化や小型化が進むにつれ、上述したような多層の積層板にあっては各層ごとにおける位置決め精度の要求が高まってきている。仕様によっては前記積層板の所定の位置に、凹部若しくは貫通溝加工を施す必要が生じる。各層ごとの位置精度が要求され、かつ、前記積層板に少なくとも1枚のエラストマー層を含んだ場合には、前記積層板に外部応力を加えての切断若しくは打ち抜きでは、エラストマーが弾性を有しているため、所定の大きさに凹部若しくは貫通溝加工が出来ないと言った課題があった。また、所定の大きさの加工を施すために、各層ごとに加工を施したのでは、各層ごとの位置精度を得にくいと言った問題点があった。
位置精度が得にくい理由について、図9及び図10を用いて説明する。図9のように、中空や切込みが入ると取り扱いによって、a1・a2寸法が、a1<a1’、a2>a2’となり易く、各層部品で、このことがバラバラ(方向性と寸法がまちまち)に起こり、数μmの精度で作るCSPソケット(0.3〜1.5mmのピッチで複数の行列に配置されたもの)においては、致命的(組立が出来ない等)な寸法変化になってしまう。図10のように、(A)に比べ(B)は、a−a’とb−b’方向に動き易く、各電気接触子20の位置精度を維持し難い。
特許文献1の構造のものは、エラストマー層を含んだものではあるが、所定の位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を意図したものではない。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、各層ごとの位置精度を維持でき、かつ、エラストマー層を含んだものであっても所定の大きさに加工できる積層板の切断方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、各層ごとの位置決め精度を必要とする多層の積層板であって、少なくとも1枚のエラストマー16層を含んだ積層板の切断方法において、前記積層板の所定位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いることにより達成できる。
【0006】
多数の電気接触子20を有する電気コネクタ10における上記目的は、複数の電気接点62を有するとともに所定位置に前記電気接点62よも突出した部分64を有する相手コネクタ60と嵌合する電気コネクタ10であって、前記電気コネクタ10は前記電気接点62と接触する電気接触子20を有し、かつ、各層ごとの位置決め精度を必要とする多層の積層部分からなり、少なくとも1枚のエラストマー16層を含んだ電気コネクタ10の積層部分の切断方法において、前記電気コネクタ10の相手コネクタ60の突出した部分64に対応する位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いることにより達成できる。
【0007】
請求項3は、前記積層板若しくは前記電気コネクタ10の内部に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いる請求項1又は2記載の切断方法。
内部とは、図1に示したような製品の内側である。
また、請求項4は、レーザ光として、炭酸ガスレーザやYAG高周波レーザを用いる請求項3記載の切断方法。
さらに、請求項5は、複数の電気接点62を有するとともに所定位置に前記電気接点62より突出した部分64を有する相手コネクタ60と嵌合する電気コネクタ10であって、スルーホール26と接合する複数の導電細線12が埋設されたエラストマー16層と、前記エラストマー16層の少なくとも1方面側に、前記電気接点62と接触する電気接触子20と該電気接触子20と導体部分24より連設したスルーホール26とを有するとともに該電気接触子20の周囲にU字形状のスリット22を有するフレキシブルプリント基板14層とを備え、該フレキシブルプリント基板14層と前記エラストマー16層との位置決め精度が必要な場合に相手コネクタ60の突出した部分64に対応する位置に、レーザを用いて凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す電気コネクタ10。
上述した切断(加工)とは凹部(目くら孔)や貫通穴や溝加工(貫通と止めの両方を含)を含んだものをいう(以下同様)。図1及び図2と図5に基づいて、加工形状について説明すると、図1及び図2に示したものが貫通した穴であり、図5(A)が加工物(電気コネクタ10)の端面に施した凹部若しくは溝(止め)にしたものであり、図5(B)は図1の状態(電気コネクタ10の内部)で貫通穴ではなく、凹部にしたものであり、図5(C)が加工物(電気コネクタ10)の端面に施した貫通した凹部若しくは溝にしたものである。
突出した部分64に対応する位置とは、図6(A)のように、突出している部品が1個の場合にはその周囲という意味である。また、図6(B)のように、突出している部品が複数個あり、かつ、その部品が密接している場合にはその密接している部品の全てを含む外周という意味である。さらに、図6(C)のように、突出している部品が複数個あり、その部品が離れている場合には、それぞれの部品の周囲という意味である。ここで、説明に使用した図5及び図6は加工形状と突出した部分に対応する位置の周囲とを説明するために使用した図面であり、電気接触子20やFPC14等が省略している。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明の切断方法や該方法を用いた電気コネクタによると、次のような優れた顕著な効果が得られる。
(1)各層ごとの位置決め精度を必要とする多層の積層板であって、少なくとも1枚のエラストマー16層を含んだ積層板の切断方法において、前記積層板の所定位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いているので、裁断や打抜き、切削等で被加工物に外力が加わることが無く、切断でき、かつ、バリ等の発生もなく、微細部が破損することもなく、各層の位置精度を容易に維持でき、容易、かつ、正確に所定の大きさに加工することができる。
(2)複数の電気接点62を有するとともに所定位置に前記電気接点62よも突出した部分64を有する相手コネクタ60と嵌合する電気コネクタ10であって、前記電気コネクタ10は前記電気接点62と接触する電気接触子20を有し、かつ、各層ごとの位置決め精度を必要とする多層の積層部分からなり、少なくとも1枚のエラストマー16層を含んだ電気コネクタ10の積層部分の切断方法において、前記電気コネクタ10の相手コネクタ60の突出した部分64に対応する位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いているので、裁断や打抜き、切削等で被加工物に外力が加わることが無く、切断でき、かつ、バリ等の発生もなく、微細部が破損することもなく、各層の位置精度を容易に維持でき、容易、かつ、正確に所定の大きさに加工することができる。
(3)前記積層板若しくは前記電気コネクタ10の内部に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いているので、裁断や打抜き、切削等で被加工物に外力が加わることが無く、切断でき、かつ、バリ等の発生もなく、微細部が破損することもなく、各層の位置精度を容易に維持でき、容易、かつ、正確に所定の大きさに加工することができる。
(4)レーザ光として、炭酸ガスレーザやYAG高周波レーザを用いているので、容易、かつ、正確に所定の大きさに加工することができる。
(5)複数の電気接点62を有するとともに所定位置に前記電気接点62より突出した部分64を有する相手コネクタ60と嵌合する電気コネクタ10であって、スルーホール26と接合する複数の導電細線12が埋設されたエラストマー16層と、前記エラストマー16層の少なくとも1方面側に、前記電気接点62と接触する電気接触子20と該電気接触子20と導体部分24より連設したスルーホール26とを有するとともに該電気接触子20の周囲にU字形状のスリット22を有するフレキシブルプリント基板14層とを備え、該フレキシブルプリント基板14層と前記エラストマー16層との位置決め精度が必要な場合に相手コネクタ60の突出した部分64に対応する位置に、レーザを用いて凹部若しくは貫通溝または穴加工を施しているので、裁断や打抜き、切削等で被加工物に外力が加わることが無く、切断でき、かつ、バリ等の発生もなく、微細部が破損することもなく、容易、かつ、正確に所定の大きさに加工することができ、各層の位置精度を容易に維持できる電気コネクタ10を提供でき、相手コネクタ60との安定した接続を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1から図7に基づいて、本発明の切断方法ならびに該切断方法を用いた電気コネクタの一実施例について説明する。
図1は電気コネクタと相手コネクタの平面図であり、図2は電気コネクタと相手コネクタの縦断面図である。図3は電気コネクタと相手コネクタとが嵌合した状態の縦断面図である。図4は電気コネクタの平面図と縦断面図の部分的な拡大図である。図5は加工形状を説明する図面であり、図6は突出した部分に対応する位置の周囲を説明する図面である。図7はレーザ加工説明図であり、図8はレーザ加工の光学系の説明図である。
一実施例の電気コネクタ10は、少なくともエラストマー16と導電細線12とフレキシブルプリント基板14(以下「FPC」という)層とを備えている。
【0010】
各部位及び切断方法について説明する前に、相手コネクタ60について説明する。
前記相手コネクタ60には、図2のような複数の平板状をした電気接点62が基板上に図1のように配列されている。また、前記基板の中央部分には、図1のように、前記電気接点よりも突出したコンデンサやICチップや抵抗等も配列されている。仕様に応じて、前記電気接点62とコンデンサやICチップや抵抗等とは基板の表面もしくは内部で接続されている。前記電気接点62の配列は仕様等によって適宜設計している。
【0011】
まず、FPC14層について説明する。前記FPC14には前記相手コネクタ60の電気接点62に対応する位置に、複数の電気接触子20が設けられている。前記電気接触子20の形状は、前記電気接点62の形状との最適化を図り、接触し易いように半球状にしている。前記FPC14の中央部分には、前記相手コネクタ60の電気接点62よりも突出したコンデンサやICチップや抵抗等に対応する位置に、コンデンサやICチップや抵抗等の逃げとして凹部若しくは貫通溝(貫通孔18含む)が設けられている。本実施例では貫通孔18にしている。凹部若しくは貫通溝または穴加工としての切断方法については、後述するレーザ加工を用いている。部品段階では切込みや穴等の中空のない、外力に対して寸法的に変化し難く、安定した形状で精度良く各層重ね合わせて層間位置を固定した後(電気コネクタ10になった段階)、レーザによる切断加工を施すことで、高い位置精度を得ることができる。凹部若しくは貫通溝の大きさは、前記相手コネクタ60の電気接点62よりも突出したコンデンサやICチップや抵抗等を逃げられればよく、コネクタ10の小型化や位置精度等を考慮して適宜設計する。
【0012】
前記FPC14の電気接触子20の周囲には、略U字形状をしたスリット22が設けられている。該スリット22は、相手コネクタ60の電気接点62と接続した際に、前記エラストマー16の弾性によって、前記電気コネクタ10の電気接触子20が摺動するようにするためのものである。前記スリット22の大きさは、このような役割とコネクタ10の小型化などを考慮して適宜設計する。前記電気接触子20は、図1のように導体部分24によってスルーホール26と接続され、該スルーホール26は前記導電細線12と接続する部分である。前記スルーホール26の大きさは、前記導電細線12が入り、半田付け等によって接続できればよく、コネクタ10の小型化や導電細線12の強度や接続性を考慮して適宜設計する。
【0013】
次に、導電細線12について説明する。前記導電細線12は略円柱状をしており、両端部が細い径で、中央部が太い径といった2段になっている。前記導電細線12は金属製であり、導電特性の良い金属、例えば黄銅製棒状体を所定寸法に切断し、両端部分を更に小径になるように加工したものである。両端部分は前記スルーホール26に入る部分であり、両端部分の径は前記スルーホール26に入り、半田付けによって接続できるように適宜設計している。中央部分の径は、前記エラストマー16に埋設する部分であり、コネクタ10の小型化や狭ピッチ化や導電性を考慮して適宜設計している。それぞれの径部分の長さは、前記FPC14の厚さや前記エラストマー16の厚さを考慮して適宜設計する。
【0014】
次に、エラストマー16について説明する。前記エラストマー16には、前記導電細線12を挿入するための挿入孔28が設けられ、該挿入孔28の大きさは前記導電細線12が挿入できればよく、前記導電細線12の保持力等を考慮して適宜設計する。本実施例では、前記導電細線12の中央部分の径より20μm程度小さくしている。また、前記挿入孔28の両端には、前記導電細線12の肩部30にエラストマー16の肉が被ることによる前記エラストマー16の反りを防止するために、窪み部32を設けたことが望ましい。前記エラストマー16はシリコンゴムやフッ素ゴムによって作成されている。
【0015】
最後に、前記エラストマー16に前記導電細線12を埋設し、前記導電細線12に前記FPC14を接続した状態で、前記電気コネクタ10の中央部分に凹部若しくは貫通溝を施す切断方法について説明する。本実施例では、貫通孔18にしている。レーザ加工について説明すると、図7のように、レーザ光より照射すたものをレンズ52によって一点に集光させ、つまり、熱エネルギーを一点に集めて、切断加工を行なっている。また、別のレーザ加工の光学系としては、図8のように、反射ミラー、ガルバノメータ38、fθ(エフシータ)レンズ40を用いたYAG第3高周波レーザを使用することもある。即ち、前記エラストマー16や前記導電細線12や前記FPC14が組み込まれた電気コネクタ10の所定の箇所(相手コネク60の前記電気接点62よりも突出したコンデンサやICチップや抵抗等も配列された部分に対応する部分)に、レーザ加工を施す場合には、突出した部分64に対応する位置によって、図7か図8のレーザの光学系を使用するかを適宜設計する。
凹部(めくら孔)にするには、照射エネルギー出力や照射回数を制御することによって対応可能である。
【0016】
上述したように、本実施例では、多点接触の電気コネクタ10の中央部分に貫通孔18を設けるものについて説明したが、これは一実施例であって、各層ごとに位置精度が要求され、かつ、エラストマー16層を含むものにあっては、加工位置や加工形状、加工部分の大きさは如何なるものでもよく、エラストマー16に外部応力が加わらないレーザであればよい。即ち、例えば、加工位置としては電気コネクタ10の内部(本実施例のように中央部分やコネクタ内部の両方)や端面などが考えられ、加工形状としては貫通孔やめくら孔(凹部)や端面に行なう溝や凹部などが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の活用例としては、回路基板と表面実装型の電子部品との間に嵌挿される電気コネクタ10に活用され、特に各層ごとに位置決め精度を有し、かつ、少なくともエラストマー16層を含んだ多層の積層板を切断する切断方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電気コネクタと相手コネクタの平面図である。
【図2】電気コネクタと相手コネクタの縦断面図である。
【図3】電気コネクタと相手コネクタとが嵌合した状態の縦断面図である。
【図4】電気コネクタの平面図と縦断面図の部分的な拡大図である。
【図5】加工形状を説明する図面である。
【図6】突出した部分に対応する位置の周囲を説明する図面である。
【図7】レーザ加工説明図である。
【図8】レーザ加工の光学系の説明図である。
【図9】位置精度の課題を説明する図面である。
【図10】位置精度の課題を説明する別の図面である。
【符号の説明】
【0019】
10 電気コネクタ
12 導電細線
14 FPC(フレキシブルプリント基板)
16 エラストマー
17 加工形状部分
18 貫通孔
20 電気接触子
22 U字状スリット
24 導体部分
26 スルーホール
28 挿入孔
30 肩部
32 窪み部
34 被加工物(電気コネクタ)
36 レーザ発振器
38 ガルバノメータ
40 fθレンズ
42 LDによるYAGロッドの励起
44 YAGロッド
46 赤外線(λ=1.064μm)
48 非線形結晶(波長変換素子)
50 紫外線(λ=0.355μm)
52 レンズ
60 相手コネクタ
62 電気接点
64 突出した部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各層ごとの位置決め精度を必要とする多層の積層板であって、少なくとも1枚のエラストマー層を含んだ積層板の切断方法において、
前記積層板の所定位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いることを特徴とする積層板の切断方法。
【請求項2】
複数の電気接点を有するとともに所定位置に前記電気接点より突出した部分を有する相手コネクタと嵌合する電気コネクタであって、前記電気コネクタは前記電気接点と接触する電気接触子を有し、かつ、各層ごとの位置決め精度を必要とする多層の積層部分からなり、少なくとも1枚のエラストマー層を含んだ電気コネクタの積層部分の切断方法において、
前記電気コネクタの相手コネクタの突出した部分に対応する位置に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いることを特徴とする電気コネクタの積層部分の切断方法。
【請求項3】
前記積層板若しくは前記電気コネクタの内部に、凹部若しくは貫通溝または穴加工を施す際にレーザを用いることを特徴とする請求項1若しくは2記載の切断方法。
【請求項4】
レーザ光として、炭酸ガスレーザやYAG高周波レーザを用いることを特徴とする請求項3記載の切断方法。
【請求項5】
複数の電気接点を有するとともに所定位置に前記電気接点より突出した部分を有する相手コネクタと嵌合する電気コネクタであって、
スルーホールと接合する複数の導電細線が埋設されたエラストマー層と、前記エラストマー層の少なくとも1方面側に前記電気接点と接触する電気接触子と該電気接触子と導体部分より連設した前記スルーホールとを有するとともに該電気接触子の周囲にU字形状のスリットを有するフレキシブルプリント基板層とを備え、該フレキシブルプリント基板層と前記エラストマー層との位置決め精度が必要な場合に相手コネクタの突出した部分に対応する位置に、レーザを用いて凹部若しくは貫通溝または穴加工を施すことを特徴とする電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−38283(P2007−38283A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227735(P2005−227735)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000208835)第一電子工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】