説明

積層板の製造方法

【課題】フレキシブルプリント基板などの積層板製造時の熱ラミネートに際し、加圧加熱成形温度が350℃以上であっても、皺などの外観不良発生を抑制できる積層板製造法を提供する。
【解決手段】少なくとも(a)非熱可塑性のポリイミドフィルム、(b)熱可塑性および/または熱圧着性の接着剤の層及び(c)金属層(箔)の三層を含む複数の被積層材料を、加圧加熱成形装置により貼り合わせてなる積層板の製造方法であって、前記装置の加圧面と前記被積層材料との間に耐熱性繊維を含むフェルトより成る緩衝材を配置し、350〜500℃の加圧加熱成形を行うことを特徴とする積層板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧加熱成形装置で製造される積層板の製造方法に関する。特には、電子電気機器等に用いられる特殊緩衝材を使用しての積層板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子電気機器用印刷回路基板に用いられる積層板には、金属層(箔)が熱硬化性樹脂等の熱硬化型接着剤によって貼付された積層板(熱硬化型の積層板)と、熱可塑性樹脂等の熱融着型接着剤によって貼付された積層板(熱融着型の積層板)とがある。
【0003】
熱硬化型の積層板の製造方法は種々研究されており、樹脂含浸紙、樹脂含浸ガラス布などと金属箔を種々プレス機にてプレスし、高温で数時間熱硬化させて積層板を得る方法や、ロール状の材料を1対の加熱ロールに挟んでラミネートし、高温で数時間熱硬化させて積層板を得る方法や、加熱ロールの代わりにダブルベルトプレス装置を用いて熱ラミネートする方法などが提案・実施されている。
【0004】
熱硬化型の積層板を製造する場合、加圧加熱成形温度は最高でも200℃程度であり、保護材料として紙、布、ゴム等やこれらを組み合わせた物が用いられてきた。また、この程度の加熱温度では、被積層材料にかかる熱応力が小さく、熱ラミネート時の皺等の外観不良は発生しにくい。
【0005】
一方、熱融着型の積層板を製造する場合、接着層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で加圧加熱を行わなければ熱融着ができない。
電子電気機器用積層板は、部品実装の過程で高温加熱を受けるので、接着層を構成する熱可塑性樹脂には少なくとも250℃以上のTgが求められる。故に熱融着のためには350℃以上の熱ラミネート温度が必要となる。この様な高温でのラミネートでは、被積層材料の熱膨張・熱収縮の変化が大きくなり、ラミネートされた積層体に皺等の外観不良を生じやすいという問題がある。
【0006】
皺等の外観不良の発生原因としては、例えば、熱ロールラミネート機で銅箔と熱可塑性ポリイミドをラミネートする場合、熱ロールラミネート機のプレスロール間を通過することで、銅箔と熱可塑性ポリイミドが貼り合わされる。ラミネート時、各被積層材料は熱によって膨張した状態にあるが、一般に銅箔の線膨張係数よりも熱可塑性ポリイミドの線膨張係数は大きいため、銅箔より面方向に大きく伸びた状態で熱可塑性ポリイミドは銅箔と熱ラミネートされ、逆に、冷却時には熱可塑性ポリイミドは銅箔より面方向に大きく縮む。このため、できた積層板は面方向に皺等の外観不良を生じる。これは、圧力が開放されるラミネート直後も、材料が熱を保持しており、その温度が熱可塑性ポリイミドのTgよりも高いために熱可塑性ポリイミドは流動状態にあり、皺等の外観不良の発生を抑止できないことも一因となっている。
特許文献1には、熱融着性の被積層材料を含む複数の被積層材料を加圧加熱成形装置により貼り合わせてなる積層板の製造方法で、装置の加圧面と金属箔との間にポリイミドフィルムよりなる保護材料を配置し200℃以上の加圧加熱成形して皺等の外観不良の発生原因を抑制する積層板の製造方法が提案されているが、加圧加熱成形温度が200〜300℃程度では効果が認められるものの、350℃以上ではほとんど効果がないのが実状である。
【特許文献1】特許第3989145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点に鑑み、加圧加熱成形温度が350℃以上であっても、熱ラミネート時に生じる皺等の外観不良のないフレキシブル基板材料として好適な積層板を提供するものである。すなわち、本発明者らは、上記同様の系でラミネート時に銅箔の外側にフェルト状の緩衝材を配してラミネートすると、ラミネート後のポリイミドフィルムは収縮しようとするが銅箔の外側にフェルト状緩衝材があり、面方向の動きが抑制されかつ皺等の外観不良がなく、非熱可塑性ポリイミドフィルムの動きが制限されて皺等の外観不良が発生しないことを見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は以下の構成による。
1. 少なくとも(a)非熱可塑性のポリイミドフィルム、(b)熱可塑性および/または熱圧着性の接着剤の層及び(c)金属層(箔)の三層を含む複数の被積層材料を、加圧加熱成形装置により貼り合わせてなる積層板の製造方法であって、前記装置の加圧面と前記被積層材料との間に耐熱性繊維を含むフェルトより成る目付け量が200〜1500g/mの緩衝材を配置し、350〜500℃の加圧加熱成形を行うことを特徴とする積層板の製造方法。
2. 耐熱性繊維を含むフェルトが、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維から選ばれた一種以上の繊維を主成分とするフェルトである前記1の積層板の製造方法。
3. 接着剤が、ポリイミド、ポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤であり、ガラス転移温度が250〜450℃である前記1又は2のいずれかの積層板の製造方法。
4. 金属層(箔)が、厚みが50μm以下の銅箔である前記1〜3のいずれかの積層板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層板の製造方法においては、350〜500℃の加圧加熱成形であっても、積層装置の加圧面と被積層材料との間に耐熱性フェルトより成る緩衝材を配置し、かつ特定の耐熱性の接着剤を用いることにより、フェルトの構造上の作用機構と接着剤との相乗効果によって、皺などの外観不良の発生を抑制することができ、積層板製造における生産効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法で得られる積層板の用途は特に限定されるものではないが、主として電子電気用のフレキシブル積層板として用いられるものである。
被積層材料としては、非熱可塑性ポリイミドフィルム、熱可塑性および/または熱圧着性の接着剤の層と、金属層(箔)が挙げられるが、この三層はこの積層板に必須の構成体であるが、他の層を適宜含有積層してもよい。
非熱可塑性ポリイミドフィルムとしては耐熱性を有するものが好ましく、例えば芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドフィルムであれば、とくに限定されるものではないが、好ましくは下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.ジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイミドフィルムを製造するための組み合わせが好ましい。
本発明で用いる特に好ましいポリイミドフィルムは、具体的にはベンゾオキサゾール構造を有するジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類の縮合により得られるポリイミドを主原料とするフィルムである。
【0011】
熱可塑性および/または熱圧着性の接着剤の層として使用される接着剤としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどが挙げられ、ポリイミド、ポリアミドイミドが特に好適に用いられ得るが、これらのガラス転移温度(Tg)は250〜450℃であるものが好ましく、より好ましくは260〜430℃、更に好ましくは270〜400℃である。Tgが250℃未満では基板材料としての信頼性に欠け、450℃を超えると充分な接着性を得ることができない。
これら熱可塑性および/または熱圧着性の接着剤を50%以上含有する熱融着性の接着シートも本発明には用いてもよく、特にエポキシ樹脂やアクリル樹脂のような熱硬化性樹脂等を配合したこれらの接着シート(層)の使用は好ましい。
さらに、これらの接着剤は、熱天秤測定(TGA)によって求められる、窒素中での5%重量減少温度が400℃以上であることが好ましい。
【0012】
本発明における金属箔(層)としては、銅、アルミニウム、銀、金、錫などの導電性金属の単体もしくはこれらの合金の箔が使用できるが、好ましくは厚みが50μm以下の銅箔、特に35μm以下の銅箔が好ましい。35μm以下の銅箔はそれ以上の厚みの銅箔に比べてコシがなく、熱積層する際に皺などの外観不良が生じやすいため、35μm以下の銅箔については顕著な効果を発揮する。銅箔の種類としては圧延銅箔、電解銅箔、HTE銅箔などが挙げられるが特に制限はない。
【0013】
加圧加熱成形装置については、被積層材料を加熱して圧力を加えてラミネートする装置であれば特にこだわらず、単動プレス装置、多段プレス装置、真空プレス装置、多段真空プレス装置、オートクレーブ装置、熱ロールラミネート機、ダブルベルトプレス機などが挙げられる。
これらの装置における加熱方法について、所定の温度で加熱することができるものであれば特にこだわらず、熱媒循環方式、熱風加熱方式、誘電加熱方式等が挙げられる。加熱温度は電子部品実装のために積層板が雰囲気温度240℃の半田リフロー炉を通過する用途に供される場合には、それに応じたTgを有する熱融着シートを使用するため350℃以上500℃以下の加熱が好ましい。加圧方式についても所定の圧力を加えることができるものであれば特にこだわらず、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等が挙げられ、圧力は特に限定されない。
【0014】
本発明で用いる耐熱性繊維を含むフェルトより成る緩衝材は、積層板の皺などの外観不良が発生しないようにできるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維から選ばれた一種以上の繊維を主成分とするフェルトであり、より好ましくはポリベンゾオキサゾール繊維から選ばれた一種以上の繊維を主成分とするフェルトである。
フェルトの目付け量は、積層後の積層板の皺などの外観不良形成を抑制する目的から、200〜1500g/mであることが必要であり、好ましくは230〜1000g/m、より好ましくは250〜500g/mである。目付け量が200g/m未満ではフェルトが軟らかすぎて緩衝材として機能せず、同様に1500g/mを超えるとフェルトが硬すぎて緩衝材として機能しない。
フェルトの厚みは特に限定されないが、積層後の積層板の皺などの外観不良を抑制する目的から、好ましくは0.5〜10mmである。
フェルトを構成する繊維の太さは、フェルトの柔軟性およびフェルトの製造の観点から、好ましくは1〜10dtex、より好ましくは1.5〜5.5dtexである。また、繊維の繊維長は、フェルトを製造するに適した長さであれば特に限定されないが、好ましくは38〜100mmの長さの繊維が用いられる。ニードルパンチ法などによるフェルト加工の場合は、これらの単繊維繊度を有する繊維に押し込み法などにより3〜10の捲縮を与え、30mmから100mmの繊維長にカットして短繊維の形態とし、フェルトに加工する。これらの繊維の長繊維をそのままフェルトとしてもよい。
また、フェルトを構成する繊維は非熱可塑性であることが必要であり、さらに、これらの繊維は熱天秤測定(TGA)によって求められる、窒素中での5%重量減少温度が500℃以上であることが好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0016】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
【0017】
2.ポリイミドフィルムの厚み
測定対象のポリイミドフィルムについて、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0018】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件で引張破壊試験を行い、MD方向について、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフ
サンプル長さ : 100mm
サンプル幅 : 10mm
引張り速度 : 50mm/min
チャック間距離 : 40mm
【0019】
4.ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、90〜100℃、100〜110℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値をCTE(ppm/℃)として算出した。
装置名 : MACサイエンス社製 TMA4000S
サンプル長さ : 10mm
サンプル幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0020】
5.接着剤のガラス転移温度(Tg)
測定対象の接着剤について、下記条件で粘弾性測定(DMA)を行い、tanδピークの最大値よりガラス転移点を求めた。
装置名 : ユービーエム社製 Rheogel−E4000
冶具 : 伸張冶具
試料長さ : 14mm
試料幅 : 5mm
周波数 : 10Hz
昇温開始温度 : 30℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : 窒素
【0021】
6.接着剤の5%重量減少温度
測定対象の接着剤について、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度とした。
装置名 : MACサイエンス社製 TG−DTA2000S
パン : アルミパン(非気密型)
試料重量 : 10mg
昇温開始温度 : 30℃
昇温速度 : 20℃/min
雰囲気 : 窒素
【0022】
〔製造例1〕
(ポリイミドフィルムAの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(登録商標)DMAC−ST30(日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Aを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、厚さ25μmのポリイミドフィルムAを得た。
得られたポリイミドフィルムAの物性値を表1に示す。
【0023】
〔製造例2〕
(ポリイミドフィルムBの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ジアミノジフェニルエーテル200質量部、N−メチル−2−ピロリドン4170質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(登録商標)DMAC−ST30(日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度は3.6dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Bを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目400℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、厚さ25μmのポリイミドフィルムBを得た。
得られたポリイミドフィルムBの物性値を表1に示す。
【0024】
〔製造例3〕
(ポリイミドフィルムCの作成)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、フェニレンジアミン108質量部、N−メチル−2−ピロリドン4010質量部を加えて完全に溶解させた後、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(登録商標)DMAC−ST30(日産化学工業社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)と、ジフェニルテトラカルボン酸二無水物292.5質量部を加え、25℃の反応温度で12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度は4.3dl/gであった。
このポリアミド酸溶液Cを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし、110℃にて5分間乾燥後、支持体から剥がさずにポリアミド酸フィルムを巻き取った。ポリアミド酸フィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分間、2段目220℃×2分間、3段目460℃×4分間の熱処理を行い、テンター通過後20分間に6本のロールを通過させて両面フリーのプロセスを与え、最終的に500mm幅にスリットして、厚さ25μmのポリイミドフィルムCを得た。
得られたポリイミドフィルムCの物性値を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
〔製造例4〕
(ポリイミド系接着剤Aの調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物145g(0.45モル)、ピロメリト酸二無水物10.91g(0.05モル)、及びナトリウムメチレート0.2g(0.0037モル)をDMF597gに溶解した。反応混合物を80℃に加熱し、80%の2,4−異性体、及び20%の2,6−異性体からなるトルエンジイソシアネート87.08g(0.5モル)を、窒素雰囲気中、定速攪拌下に4時間かけて滴加した。その後、最終的重縮合溶液をCO発生が終了するまで80℃で1時間攪拌して、ポリイミド系接着剤Aを得た。
得られたポリイミド系接着剤Aのポリマーのガラス転移温度は340℃、5%重量減少温度は450℃であった。
【0027】
〔製造例5〕
(ポリアミドイミド系接着剤Aの調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、トリメリット酸無水物190g、及びオキシジアニリンジイソシアネート250gを仕込み、さらにN−メチル−2−ピロリドンをポリマー濃度が40%となるように仕込んだ。120℃で約1時間反応させた後、180℃に昇温して5時間攪拌しながら反応させた。次に加熱を止め、冷却しながら、さらにN−メチル−2−ピロリドンを加え希釈して、固形分濃度が20%のポリアミドイミド系接着剤Aを得た。
得られたポリアミドイミド系接着剤Aのポリマーのガラス転移温度は290℃、5%重量減少温度は495℃であった。
【0028】
〔製造例6〕
(ポリアミドイミド系接着剤Bの調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、トリメリット酸無水物192g、o−トリジンジイソシアネート211g(80モル%)、2,4−トリレンジイソシアネート35g、及びトリエチレンジアミン1gを仕込み、さらにN−メチル−2−ピロリドンをポリマー濃度が40%となるように仕込んだ。120℃で約1時間反応させた後、さらに180℃で5時間攪拌しながら反応させた。次に加熱を止め、冷却しながら、さらにN−メチル−2−ピロリドンを加え希釈して、固形分濃度が20%のポリアミドイミド系接着剤Bを得た。
得られたポリアミドイミド系接着剤Bのポリマーのガラス転移温度は320℃、5%重量減少温度は485℃であった。
【0029】
〔実施例1〕
ポリイミドフィルムA上の片面に、ポリイミド系接着剤Aを塗布し、100℃にて1時間乾燥し、更にTg付近の温度(340℃)にて15分間加熱処理を行い、厚みが20μmとなるよう調整した。このポリイミドフィルムA/ポリイミド系接着剤Aの2層品のポリイミド系接着剤A側に20μmの電解銅箔を配し、さらにその両側に緩衝材としてポリベンゾオキサゾール繊維(東洋紡績(株)製、商品名:ザイロン)のフェルト(厚み2.3mm、目付け量340g/m)を配して、熱プレス機(プレス温度400℃、プレス圧力10MPa、プレス時間10分間)で積層板1を作製した。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得ることができた。
【0030】
〔実施例2〕
緩衝材としてポリベンゾオキサゾール繊維(東洋紡績(株)製、商品名:ザイロン)のフェルト(厚み2.8mm、目付け量600g/m)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板2を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得ることができた。
【0031】
〔実施例3〕
緩衝材としてポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン(株)製、商品名:ケブラー)のフェルトを使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板3を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0032】
〔実施例4〕
緩衝材としてポリパラフェニレン−3,4−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)製、商品名:テクノーラ)のフェルトを使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板4を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0033】
〔実施例5〕
緩衝材として全芳香族ポリエステル繊維(クラレ(株)製、商品名:ベクトラン)のフェルトを使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板5を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0034】
〔実施例6〕
接着剤としてポリアミドイミド系接着剤Aを使用し、熱プレス(プレス温度350℃、プレス圧力10MPa、プレス時間10分間)を行う以外は、実施例1と同様にして、積層板6を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0035】
〔実施例7〕
接着剤としてポリアミドイミド系接着剤Bを使用し、熱プレス(プレス温度380℃、プレス圧力10MPa、プレス時間10分間)を行う以外は、実施例1と同様にして、積層板7を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0036】
〔実施例8〕
金属箔として実施例1の電解銅箔よりシワが発生しやすい20μmの圧延銅箔を配し、さらにその両側に保護フィルムとして前記125μmのポリイミドフィルムを配す以外は、実施例1と同様にして、積層板8を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0037】
〔実施例9〕
ポリイミドフィルムBを使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板9を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0038】
〔実施例10〕
ポリイミドフィルムCを使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板10を得た。
その結果、皺などの外観不良のない積層板を得た。
【0039】
〔比較例1〕
緩衝材を使用せず、それ以外は実施例1と同様にして、積層板11を得た。
その結果、皺などの外観不良が顕著に発生した。
【0040】
〔比較例2〕
緩衝材としてポリベンゾオキサゾール繊維(東洋紡績(株)製、商品名:ザイロン)のフェルト(厚み0.8mm、目付け量100g/m)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板12を得た。
その結果、皺などの外観不良が少なからず発生した。
【0041】
〔比較例3〕
緩衝材としてポリベンゾオキサゾール繊維(東洋紡績(株)製、商品名:ザイロン)のフェルト(厚み7.5mm、目付け量2700g/m)を使用する以外は、実施例1と同様にして、積層板13を得た。
その結果、皺などの外観不良が少なからず発生した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の積層板の製造方法によれば、フェルトの構造上の作用機構及び特定の耐熱性の接着剤を用いることにより、皺などの外観不良の発生が顕著に抑制でき、積層板製造における生産効率が向上し、フレキシブルプリント基板などの電子部品製造分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)非熱可塑性のポリイミドフィルム、(b)熱可塑性および/または熱圧着性の接着剤の層及び(c)金属層(箔)の三層を含む複数の被積層材料を、加圧加熱成形装置により貼り合わせてなる積層板の製造方法であって、前記装置の加圧面と前記被積層材料との間に耐熱性繊維を含むフェルトより成る目付け量が200〜1500g/mの緩衝材を配置し、350〜500℃の加圧加熱成形を行うことを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項2】
耐熱性繊維を含むフェルトが、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維から選ばれた一種以上の繊維を主成分とするフェルトである請求項1に記載の積層板の製造方法。
【請求項3】
接着剤が、ポリイミド、ポリアミドイミドから選ばれた一種以上の接着剤であり、ガラス転移温度が250〜450℃である請求項1又は2のいずれかに記載の積層板の製造方法。
【請求項4】
金属層(箔)が、厚みが50μm以下の銅箔である請求項1〜3のいずれかに記載の積層板の製造方法。

【公開番号】特開2009−178885(P2009−178885A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18592(P2008−18592)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】