説明

積層誘電体および層状誘電体の製造方法

【課題】高周波領域での比誘電率が6〜10である低誘電率誘電体層が積層された誘電体の製造。
【解決手段】層数が奇数の積層誘電体の製造方法で、偶数番目の原料層が含有するガラス粉末が、モル%で、SiO 23〜35%、B 0〜15%、Al 2〜15%、MgO 30〜50%、CaO 0〜12%、SrO 0〜12%、BaO 0〜4%、ZnO 2〜12%、等からなり、奇数番目の原料層が含有するガラス粉末が、SiO 36〜55%、B 0〜5%、Al 5〜20%、MgO 20〜45%、CaO+SrO 0〜20%、BaO 0〜10%、ZnO 0〜15%、等からなり、隣り合う誘電体層の線膨張係数の差が15×10−7/℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路やアンテナの基板などに好適な積層誘電体または層状誘電体を低温焼成によって製造するのに好適な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波帯等の高周波領域で用いられる携帯電話等小型電子機器の回路やアンテナ等の基板としては、層構造を有し、基板表面、層間または層内に銀、銅等を主成分とする導体からなる導電部が形成されている多層誘電体基板(低温同時焼成セラミックス基板)が使用されている。
【0003】
低温同時焼成セラミックス基板はガラスセラミックス材料と導体材料を同時に焼成して製造されるが、ガラスセラミックス材料の収縮開始温度が導体材料の収縮開始温度より高く、また前者の収縮率が後者より大きいために基板が変形する問題があった。
この問題を解決する方法として、収縮開始温度が異なる2種以上のガラスセラミックス材料を積層して焼成する方法が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−69236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、典型的には9GHzというような高周波領域での比誘電率がたとえば6〜10である低誘電率誘電体が積層されている多層誘電体基板、または、少なくとも1層において低誘電率誘電体とその比誘電率よりも3以上大きい比誘電率を有する高誘電率誘電体が隣接して存在し、その層が低誘電率誘電体層によって挟まれている多層誘電体基板の製造が求められている。
本発明はこのような課題を解決できる多層誘電体基板製造方法およびそのような製造方法に好適なガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、nを正の整数として(2n+1)個の誘電体層が積層されている積層誘電体の製造方法であって、焼成されて前記誘電体層となる(2n+1)個のガラス粉末含有原料層を積層して焼成するものであり、
焼成されて偶数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末が、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 23〜35%、B 0〜15%、Al 2〜15%、MgO 30〜50%、CaO 0〜12%、SrO 0〜12%、BaO 0〜4%、ZnO 2〜12%、TiO+ZrO+SnO 0〜5%、から本質的になり、
焼成されて奇数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末が、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 36〜55%、B 0〜5%、Al 5〜20%、MgO 20〜45%、CaO+SrO 0〜20%、BaO 0〜10%、ZnO 0〜15%、TiO+ZrO+SnO 0〜10%、から本質的になり、
隣り合うガラス粉末含有原料層がそれらを焼成して得られる誘電体層の50〜350℃における平均線膨張係数の差の絶対値が15×10−7/℃以下であるものである積層誘電体製造方法を提供する。
【0007】
また、nを正の整数として(2n+1)個の層を有し、1個以上の偶数番目の層において9GHzにおける比誘電率が互いに3以上異なる高誘電率誘電体と低誘電率誘電体とが隣接して存在し、それ以外に偶数番目の層が存在する場合にはその層中に存在する誘電体は前記低誘電率誘電体である層状誘電体の製造方法であって、焼成されて前記(2n+1)個の層となる(2n+1)個のガラス粉末含有原料層を積層して焼成するものであり、
焼成されて前記高誘電率誘電体となる前記1個以上の偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層のガラス粉末含有原料体が、質量百分率表示で、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 15〜40%、B 5〜37%、Al 2〜15%、MgO+CaO+SrO 1〜25%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜35%、TiO+ZrO+SnO 0〜15%、から本質的になり、SiO+Alが25〜50モル%、B+ZnOが15〜45モル%であり、鉛およびアルカリ金属のいずれも含有しないガラス粉末30〜70%と、BaとTiを含有しモル比(Ti/Ba)が3.5〜5.7であるBa−Ti化合物粉末30〜70%とから本質的になり、
焼成されて前記低誘電率誘電体となる前記1個以上の偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層のガラス粉末含有原料体が含有するガラス粉末および焼成されて前記それ以外に偶数番目の層が存在する場合におけるその偶数番目の層となるガラス粉末含有原料体が含有するガラス粉末のいずれもが、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 23〜35%、B 0〜15%、Al 2〜15%、MgO 30〜50%、CaO 0〜12%、SrO 0〜12%、BaO 0〜4%、ZnO 2〜12%、TiO+ZrO+SnO 0〜5%、から本質的になり、
焼成されて奇数番目の層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末が、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 36〜55%、B 0〜5%、Al 5〜20%、MgO 20〜45%、CaO+SrO 0〜20%、BaO 0〜10%、ZnO 0〜15%、TiO+ZrO+SnO 0〜10%、から本質的になり、
焼成されて前記高誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体、焼成されて前記低誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体、前記それ以外に偶数番目の層が存在する場合におけるその偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層および焼成されて奇数番目の層となるガラス粉末含有原料層を焼成して得られる各誘電体の50〜350℃における平均線膨張係数の互いの差が15×10−7/℃以下であるものである層状誘電体製造方法を提供する。
【0008】
また、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 23〜32%、B 0〜15%、Al 2〜15%、MgO 35〜50%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜4%、ZnO 2〜12%、TiO+ZrO+SnO 0〜5%、から本質的になり、CaO+SrO+BaOが2〜10モル%であるガラス(本発明のガラス)を提供する。
【0009】
本発明者は、特許文献1の表1に記載されている試料No.1のガラス(質量百分率表示組成は、SiO 18%、B 18%、Al 0.6%、MgO 45%、CaO 0.4%、BaO 15%、ZrO 0.1%、SnO 1.9%、P 1%。モル%表示組成は、SiO 16.6%、B 14.3%、Al 0.3%、MgO 61.8%、CaO 0.4%、BaO 5.4%、ZrO 0.04%、SnO 0.7%、P 0.4%。)を、500gのガラスが得られるようにSiO、MgO、B、Al、CaCO、BaCO、SnO、ZrO、メタリン酸マグネシウムの各粉末を調合、混合し、これを白金ルツボを用いて1600℃で溶融した後、ステンレス鋼製ローラ上に融液を流し出して急冷した。融液を流し出した後のルツボを見るとルツボ内には失透したガラスが認められ、また、急冷して得られたガラスの一部にも失透が認められた。
このことから、特許文献1に開示されているガラスは安定性に欠けているので前記課題を解決するものとしては不十分と考え、本発明をなすに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、近年ニーズが高くなっている前記多層誘電体基板を小さな収縮率で製造でき、その寸法精度を高くできる。
本発明の好ましい態様によれば、多層誘電体基板の誘電体の9GHzという高周波における誘電損失を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ガラス粉末含有原料層およびガラス粉末原料体(以下、これらを被焼成体と総称することがある。)はいずれもガラス粉末がその中に分散しているものであり、通常はそのガラス粉末がセラミックス粉末と混合されたガラスセラミックス組成物がその中に分散している。なお、セラミックス粉末としては、融点が1000℃以上であるセラミックスの粉末または軟化点(Ts)が1000℃以上であるガラスの粉末が典型的である。
【0012】
本発明の製造方法においては、通常はグリーンシート法が用いられる。以下、グリーンシート法を用いる場合について説明するが本発明はこれに限定されない。なお、この場合、被焼成体は1枚または複数枚の同じグリーンシートを重ねたものである。
【0013】
ガラスセラミックス組成物が分散されたグリーンシートはたとえば次のようにして作製される。すなわち、被焼成体の構成成分であるガラスセラミックス組成物をポリビニルブチラールやアクリル樹脂等の樹脂とトルエン、キシレン、ブタノール等の溶剤と、さらに必要に応じてフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の可塑剤や分散剤を添加して混合し、スラリーとする。次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム上にドクターブレード法等によって、前記スラリーをシート状に成形する。このシート状に成形されたものを乾燥して溶剤を除去し、グリーンシートとする。
グリーンシート法を用いたこの場合には被焼成体は、樹脂、その中に分散しているガラス粉末、セラミックス粉末等からなる。
【0014】
同じグリーンシートを複数枚重ねて被焼成体とし、このようにして得られた(2n+1)個の被焼成体を重ねて焼成し積層または層状の誘電体とする場合には通常、前記重ねられた被焼成体を80〜120℃に加熱してプレスしたもの(層状被焼成体)について焼成が行われる。
本発明の層状誘電体の製造方法においては、当該誘電体の(2n+1)個の層のうち1個以上の偶数番目の層に対応する被焼成体は2種類以上のガラス粉末含有原料体からなる。
【0015】
焼成は通常、800〜900℃、典型的には850〜880℃に5〜120分間保持して行われる。
また、グリーンシートには必要に応じてあらかじめ配線導体等が銀ペースト等を用いてスクリーン印刷等によって形成される。
【0016】
本発明の製造方法によって製造される積層誘電体の誘電体層(以下、単に誘電体層ということがある。)および層状誘電体の前記低誘電率誘電体(以下、単に低誘電率誘電体ということがある。)の9GHzにおける比誘電率(以下、この比誘電率をεという。)は典型的には6〜10、より典型的には6.5〜8.5である。なお、εは室温、典型的には20〜25℃における比誘電率である。
前記誘電体層および前記低誘電率誘電体の9GHzにおける誘電損失(以下、この誘電損失をtanδという。)は、好ましくは0.0050以下、より好ましくは0.0030以下である。
なお、本発明にいう「9GHzにおける比誘電率」とは(9±1.5)GHzにおける比誘電率であり、tanδについても同様である。
【0017】
本発明の層状誘電体の前記高誘電率誘電体のεは、それと隣接して同じ層内に存在する前記低誘電率誘電体のεよりも3以上大きく、典型的には16以上、より典型的には18〜24である。
また、その高誘電率誘電体のtanδは、好ましくは0.0050以下、より好ましくは0.0040以下である。
【0018】
本発明の積層誘電体における隣り合う誘電体層間のεの差は3未満であることが好ましく、その差は典型的には0.5以下である。
また、本発明の層状誘電体において、偶数番目の層に存在する低誘電率誘電体のεとその層と隣り合う奇数番目の層の誘電体のεの差は3未満であることが好ましく、その差は典型的には0.5以下である。
【0019】
本発明の積層誘電体における隣り合う誘電体層間の50〜350℃における平均線膨張係数(α)の差は15×10−7/℃以下となるようにされているので、積層誘電体中に亀裂が生じるおそれが軽減されている。前記αの差は好ましくは10×10−7/℃以下、典型的には5×10−7/℃以下である。
【0020】
また、本発明の層状誘電体において、偶数番目の層に存在する低誘電率誘電体のαとその層と隣り合う奇数番目の層の誘電体のαの差、偶数番目の層に高誘電率誘電体が存在する場合におけるその高誘電率誘電体のαとそれと隣接する低誘電率誘電体のαの差、その偶数番目の層の高誘電率誘電体のαとその偶数番目の層と隣り合う奇数番目の層の誘電体のαの差はいずれも15×10−7/℃以下となるようにされているので、層状誘電体中に亀裂が生じるおそれが軽減されている。前記αの差はいずれも好ましくは10×10−7/℃以下、典型的には5×10−7/℃以下である。
なお、本発明の積層誘電体の誘電体層および層状誘電体の各誘電体のαは典型的には70×10−7〜90×10−7/℃、より典型的には75×10−7〜85×10−7/℃である。
【0021】
本発明の積層誘電体および層状誘電体における各層の厚みは典型的には0.1〜0.8mmであり、中央の層を中心にして上下対称の位置にある層同士の厚みは等しいことが好ましい。たとえば7層の場合第1層と第7層、第2層と第6層、第3層と第5層の厚みが等しいことが好ましい。このようなものでないと積層誘電体または層状誘電体が変形しやすくなるおそれがある。
【0022】
次に、本発明の積層誘電体の製造方法において用いられるガラス粉末含有原料層について説明する。なお、以下では特に断らないかぎりガラスの組成はモル%表示のものとし、単に%と表記する。
まず、焼成されて偶数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層(以下、原料層Aという。)が含有するガラス粉末(以下、ガラス粉末Aという。)について説明する。
【0023】
ガラス粉末Aの50%粒径(D50)は0.5〜10μmであることが好ましい。0.5μm未満ではたとえばグリーンシート中にガラス粉末を均一に分散させることが困難になるおそれがある。より好ましくは1μm以上である。10μm超では緻密な焼成体が得にくくなる。より好ましくは4μm以下である。
【0024】
ガラス粉末Aのガラス転移点(Tg)は550〜700℃であることが好ましい。550℃未満であると、グリーンシート中の有機物バインダ(樹脂)を除去しにくくなる。700℃超であると、焼成時の収縮開始温度が高くなり、積層誘電体の寸法精度が低下するおそれがある。
【0025】
ガラス粉末Aは、典型的には850〜900℃で焼成したときに結晶が析出するものであることが好ましい。結晶が析出するものでなければ、焼成体(誘電体層)の機械的強度が低くなるおそれがある。
また、DTAで測定した結晶化ピーク温度(Tc)は900℃以下であることが好ましい。900℃超であると積層誘電体の寸法精度が低下するおそれがある。
【0026】
ガラス粉末Aはそれを焼成したときにフォルステライト結晶が析出するものであることが特に好ましい。このようなものでないと焼成体のtanδが大きくなるおそれがある。
また、tanδをより小さくしたい場合には、フォルステライト結晶に加えて、ディオプサイド、スピネル、ガーナイト、アノーサイト、バリウムアルミノシリケート、ストロンチウムアルミノシリケートのいずれか1種以上の結晶が析出することが好ましい。
【0027】
ガラス粉末Aの組成について以下で説明する。
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、必須である。23%未満では安定なガラスを得にくくなる。好ましくは24%以上、より好ましくは25%以上である。35%超ではTsまたはTgが高くなりすぎるおそれがあり、好ましくは32%以下である。焼成体のtanδを小さくしたい場合にはやはり32%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下である。
【0028】
は必須ではないがガラスを安定化する等のために15%まで含有してもよい。15%超では焼成体のtanδが大きくなる、または化学的耐久性が低下するおそれがある。好ましくは12%以下である。Bを含有する場合、好ましくは2%以上である。
【0029】
Alはガラスの安定性または化学的耐久性を高める成分であり、必須である。2%未満ではガラスが不安定となる。好ましくは8%以上である。15%超ではTsまたはTgが高くなりすぎる。好ましくは12%以下、より好ましくは11%以下である。
【0030】
MgOはフォルステライトの構成成分であって焼成体のtanδを低くする成分であり、必須である。30%未満ではフォルステライトの析出量が不十分となりやすい。好ましくは32%以上である。焼成体のtanδを小さくしたい場合には35%以上であることが好ましい。50%超ではガラスが不安定になる。好ましくは45%以下、特に好ましくは42%以下である。
【0031】
CaOは必須ではないがガラスを安定化させる、焼成体のtanδを低下させる、等のために12%まで含有してもよい。焼成体のtanδを小さくしたい場合には10%以下であることが好ましい。また、CaOはディオプサイド、アノーサイトの構成成分であり、これらの結晶を析出させたい場合にはその含有量は好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。
【0032】
SrOは必須ではないがガラスを安定化させる、焼成体のtanδを低下させる、等のために12%まで含有してもよい。焼成体のtanδを小さくしたい場合には10%以下であることが好ましい。
BaOは必須ではないが、焼成体のαを大きくする、ガラスを安定化させる等のために4%まで含有してもよい。4%超では焼成体の熱膨張曲線に屈曲が生じ、焼成体が破壊しやすくなるおそれがある。
焼成体のtanδを小さくしたい場合などにおいてはCaO、SrOおよびBaOの含有量の合計は2〜12%であることが好ましい。2%未満ではガラスが不安定になるおそれがある、または焼成体のtanδが大きくなるおそれがある。好ましくは5%以上である。12%超であるとガラスが不安定になりやすい。焼成体のtanδを小さくしたい場合には10%以下とすることが好ましい。
【0033】
ZnOはTsまたはTgを低下させる成分であり、必須である。2%未満ではTsまたはTgが高くなる。典型的には4%以上である。12%超ではガラスの化学的耐久性、特に耐酸性が低下し、好ましくは8%以下である。
【0034】
TiO、ZrOおよびSnOはいずれも必須ではないが、ガラスの化学的耐久性を高める、焼成体の結晶化率を高める等のために合計で5%まで含有してもよい。これら成分の含有量合計が5%超ではTsが高くなりすぎる、または焼成体の緻密性が低下するおそれがある。
焼成体が灰色に着色するのを防止したい等の場合にはこれら成分の中ではSnOを含有することが好ましい。その場合のSnO含有量は典型的には0.1〜1%である。
焼成体のtanδを小さくしたい場合にはTiOは含有しないことが好ましい。
【0035】
ガラス粉末Aは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は10%以下であることが好ましい。
なお、アルカリ金属酸化物を含有する場合その含有量合計は1%以下であることが好ましい。1%超では焼成体の電気絶縁性が低下するおそれがある。
また、鉛酸化物は含有しない。
【0036】
ガラス粉末Aは、焼成体のtanδを小さくしたい場合には本発明のガラスの粉末であることが好ましい。これは本発明の層状誘電体の製造方法においても同様である。
本発明のガラスの組成について以下で説明する。なお、その組成の一部はガラス粉末Aの組成の一部と同一であり、その同一部分の説明についてはガラス粉末Aの組成の該当部分の説明と同じになるので省略する。
【0037】
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、必須である。23%未満では安定なガラスを得にくくなる。好ましくは24%以上、より好ましくは25%以上である。32%超ではTsまたはTgが高くなりすぎるおそれがある、または焼成体のtanδが大きくなるおそれがある。好ましくは30%以下である。
【0038】
MgOはフォルステライトの構成成分であって焼成体のtanδを低くする成分であり、必須である。35%未満ではフォルステライトの析出量が不十分となりやすい。好ましくは38%以上である。50%超ではガラスが不安定になる。好ましくは45%以下、特に好ましくは42%以下である。
【0039】
CaO、SrOおよびBaOはガラスを安定化させる、または焼成体のtanδを小さくする等のためにこれら3成分のうちの1成分以上を含有しなければならない。2%未満ではガラスが不安定になる、または焼成体のtanδが大きくなる。好ましくは5%以上である。10%超であるとガラスが不安定になりやすい。
【0040】
CaOはガラスを安定化させる、焼成体のtanδを低下させる、等のために10%まで含有してもよい。また、CaOはディオプサイド、アノーサイトの構成成分であり、これらの結晶を析出させたい場合にはその含有量は好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。
SrOはガラスを安定化させる、焼成体のtanδを低下させる、等のために10%まで含有してもよい。
BaOは、焼成体のαを大きくする、ガラスを安定化させる等のために4%まで含有してもよい。4%超では焼成体の熱膨張曲線に屈曲が生じ、焼成体が破壊しやすくなるおそれがある。
TiOは含有しないことが好ましい。
【0041】
本発明のガラスはここで説明した成分とB、Al、ZnO、ZrO、SnOを本質的成分とするが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それらの含有量の合計は10%以下であることが好ましい。
なお、アルカリ金属酸化物を含有する場合その含有量合計は1%以下であることが好ましい。1%超では焼成体の電気絶縁性が低下するおそれがある。
また、鉛酸化物は含有しない。
【0042】
本発明のガラスのTg、Tsはそれぞれ典型的には550〜700℃、750〜800℃である。
本発明のガラスの粉末は、典型的には850〜900℃で焼成したときに結晶が析出するものであることが好ましい。
また、そのTcは900℃以下であることが好ましい。
【0043】
本発明のガラスの粉末はそれを焼成したときにフォルステライト結晶が析出するものであることが好ましい。フォルステライト結晶に加えて、ディオプサイド、スピネル、ガーナイト、アノーサイト、バリウムアルミノシリケート、ストロンチウムアルミノシリケートのいずれか1種以上の結晶が析出することがより好ましい。
【0044】
原料層Aはガラス粉末Aを含有するガラスセラミックス組成物を含有するものであることが好ましい。
このようなガラスセラミックス組成物の好ましい態様(以下、この態様のものをガラスセラミックス組成物Aという。)について、質量百分率表示を用いて以下で説明する。
ガラスセラミックス組成物Aは40〜75%のガラス粉末Aおよび25〜60%のセラミックス粉末からなる。
【0045】
ガラス粉末Aは焼成体の緻密性を高くする成分である。40%未満では緻密性が不十分になる。好ましくは50%以上である。75%超ではεが小さくなるまたはtanδが大きくなる。好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下である。
【0046】
セラミックス粉末は焼成体の強度を高くする、または焼成体の形状を保持する成分である。25%未満では焼成体の強度が低下する。60%超では焼成体の緻密性が不十分になる。好ましくは50%以下である。
【0047】
セラミックス粉末は典型的には、アルミナ、ムライトおよびフォルステライトからなる群から選ばれる1種以上のセラミックスの粉末である。
焼成体の強度をより高くしたい場合にはアルミナ粉末を含有することが好ましい。
焼成体の結晶化率を高くしたい、または焼成時の結晶化開始温度を低くしたい場合にはフォルステライト粉末を含有することが好ましい。フォルステライト粉末を含有する場合のその含有量は典型的には1〜10%である。
銀導体と同時に焼成するときに生じる着色を抑制したい等の場合にはセラミックス粉末は酸化セリウム粉末を含有するものであることが好ましく、その含有量は典型的には0.1〜5%である。
【0048】
セラミックス粉末のD50は1〜12μmであることが好ましい。1μm未満ではたとえばグリーンシート中にセラミックス粉末を均一に分散させることが困難になるおそれがある。より好ましくは1.5μm以上である。12μm超では緻密な焼成体が得にくくなる。より好ましくは5μm以下、典型的には3.5μm以下である。
次に、焼成されて奇数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層(以下、原料層Bという。)が含有するガラス粉末(以下、ガラス粉末Bという。)について説明する。
【0049】
ガラス粉末BのD50は0.5〜20μmであることが好ましい。0.5μm未満ではたとえばグリーンシート中にガラス粉末を均一に分散させることが困難になるおそれがある。より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上である。20μm超では緻密な焼成体が得にくくなる。より好ましくは15μm以下、特に好ましくは7μm以下、典型的には5μm以下である。
【0050】
ガラス粉末BのTgは典型的には650〜780℃である。
ガラス粉末BのTgが700〜780℃である場合そのTgは、その原料層Bに隣り合う原料層Aが含有するガラス粉末AのTgよりも50℃以上高いことが好ましく、70℃以上高いことがより好ましい。
【0051】
ガラス粉末BのTsは910℃以下であることが好ましい。Tsが910℃超では900℃以下の温度で焼成した場合に緻密な焼成体が得られないおそれがある。また、Tsは典型的には800℃以上である。
【0052】
ガラス粉末Bは、典型的には850〜900℃で焼成したときに結晶が析出するものであることが好ましい。結晶が析出するものでなければ、焼成体(誘電体層)の機械的強度が低くなるおそれがある。
また、ガラス粉末BのTcは850℃以下であることが好ましい。850℃超であると積層誘電体の寸法精度が低下するおそれがある。
【0053】
焼成体のtanδをより小さくしたい場合には、ガラス粉末Bはそれを焼成したときにフォルステライト、エンスタタイト、ディオプサイドおよびアノーサイトからなる群から選ばれる1種以上の結晶を析出するものであることが好ましく、フォルステライト結晶を析出するものであることがより好ましい。
【0054】
ガラス粉末Bの組成について以下で説明する。
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、必須である。36%未満では安定なガラスを得にくくなる、またはガラスの安定性が不充分となって隣り合う誘電体層との界面で反応が生じやすくなる。好ましくは40%以上、より好ましくは42%以上である。55%超ではTsまたはTgが高くなりすぎるおそれがある。好ましくは52%以下である。
【0055】
は必須ではないがガラスを安定化する等のために5%まで含有してもよい。5%超では焼成体のtanδが大きくなる、または化学的耐久性が低下するおそれがある。
【0056】
Alはガラスの安定性または化学的耐久性を高める成分であり、必須である。5%未満ではガラスが不安定となる。好ましくは6%以上である。20%超ではTsまたはTgが高くなりすぎる。好ましくは10%以下、より好ましくは8.5%以下である。
【0057】
SiOおよびAlの含有量の合計は45%以上であることが好ましい。45%未満ではTsが低くなりすぎて焼成体の寸法精度が低下するおそれがある。好ましくは48%以上である。また、前記合計は66%以下であることが好ましい。66%超ではTsが高くなって900℃以下で焼成したときに緻密な焼成体を得にくくなるおそれがある。
【0058】
MgOはガラスを安定化する、またはガラスからの結晶析出を促進する効果を有し、必須である。20%未満では前記効果が不十分となる。好ましくは25%以上である。45%超ではガラスが不安定になる。好ましくは40%以下、より好ましくは38%以下である。
【0059】
CaOは必須ではないがガラスを安定化させる、焼成体のtanδを低下させる、等のために20%まで含有してもよい。また、CaOはディオプサイド、アノーサイトの構成成分であり、これらの結晶を析出させたい場合にはその含有量は好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。アノーサイトを析出させたい場合には、CaOを14%以上含有することが特に好ましい。CaOが20%超ではガラスが不安定になるおそれがあり、好ましくは18%以下である。アノーサイトを析出させたくない場合にはCaOは12%以下であることが好ましい。
【0060】
SrOは必須ではないがガラスを安定化させる、焼成体のtanδを低下させる、等のために含有してもよい。SrOを含有する場合その含有量は典型的には10%以下である。
CaOまたはSrOを含有する場合それらの含有量の合計は20%以下である。
【0061】
BaOは必須ではないが、ガラスを安定化させる等のために10%まで含有してもよい。10%超では焼成体のtanδが大きくなるおそれがある。
ZnOは必須ではないが、TsまたはTgを低下させる等のために15%まで含有してもよい。15%超ではガラスの化学的耐久性、特に耐酸性が低下する。好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。ZnOを含有する場合その含有量は好ましくは2%以上である。
【0062】
TiO、ZrOおよびSnOはいずれも必須ではないが、ガラスの化学的耐久性を高める、焼成体の結晶化率を高める等のために合計で10%まで含有してもよい。これら成分の合計が10%超ではTsが高くなりすぎる、または焼成体の緻密性が低下するおそれがある。
SiOは40〜55%、Alは5〜10%、MgOは28〜40%、CaOは0〜18%、SnOは0〜5%であることが好ましい。
【0063】
このガラス粉末は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の成分を含有してもよい。たとえば、ガラス溶融温度を低下させる等の目的でP等を、ガラスを着色する、結晶化率を高める等の目的でCuO、CoO、CeO、Y、La、Nd、Sm、Bi、WO等を含有してもよい。
このような他の成分を含有する場合その含有量は合計で10%以下であることが好ましい。なお、アルカリ金属酸化物および鉛酸化物はいずれも含有しない。
【0064】
原料層Bはガラス粉末Bを含有するガラスセラミックス組成物を含有するものであることが好ましい。
このようなガラスセラミックス組成物の好ましい態様(以下、この態様のものをガラスセラミックス組成物Bという。)について、質量百分率表示を用いて以下で説明する。
ガラスセラミックス組成物Bは30〜90%のガラス粉末Bおよび10〜70%のセラミックス粉末からなる。
【0065】
ガラス粉末Bは焼成体の緻密性を高くする成分である。30%未満では緻密性が不十分になる。好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、典型的には60%以上である。90%超では焼成体の強度が低下する。好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下である。
【0066】
セラミックス粉末は焼成体の強度を高くする、または焼成体のαを調整する成分である。10%未満では焼成体の強度が低下する。典型的には15%以上である。70%超では焼成体の緻密性が不十分になる。典型的には45%以下である。
【0067】
セラミックス粉末は典型的には、アルミナ、ムライト、コージェライト、フォルステライトおよびセルシアンからなる群から選ばれる1種以上のセラミックスの粉末である。
焼成体の強度をより高くしたい等の場合、アルミナ粉末を含有することが好ましい。
銀導体と同時に焼成するときに生じる着色を抑制したい等の場合にはセラミックス粉末は酸化セリウム粉末を含有するものであることが好ましく、その含有量は典型的には0.1〜10%である。
【0068】
セラミックス粉末のD50は1〜12μmであることが好ましい。1μm未満ではたとえばグリーンシート中にセラミックス粉末を均一に分散させることが困難になるおそれがある。より好ましくは1.5μm以上である。12μm超では緻密な焼成体が得にくくなる。より好ましくは5μm以下、典型的には3.5μm以下である。
ガラスセラミックス組成物Bはたとえば850〜900℃で焼成したときに結晶が析出するものであるが、その結晶は通常ガラス粉末Bから析出する。
【0069】
次に、本発明の層状誘電体の製造方法において用いられるガラス粉末含有原料層について説明する。
焼成されて高誘電率誘電体と低誘電率誘電体とが隣接して存在する層になるガラス粉末含有原料層(以下、原料層Cという。)中の焼成されて当該高誘電率誘電体となる部分であるガラス粉末含有原料体は、先に述べたようなガラス粉末およびBa−Ti化合物粉末から本質的になるガラスセラミックス組成物(以下、ガラスセラミックス組成物Cという。)を含有するものである。
【0070】
ガラスセラミックス組成物Cの必須成分であるガラス粉末(以下、ガラス粉末Cという。)は焼成体の緻密性を高くするためのものである。
ガラス粉末CのD50は0.5〜10μmであることが好ましい。0.5μm未満ではたとえばグリーンシート中にガラス粉末を均一に分散させることが困難になるおそれがある。より好ましくは1μm以上である。10μm超では緻密な焼成体が得にくくなる。より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0071】
ガラス粉末CのTsは800℃以下であることが好ましい。Tsが800℃超では900℃以下の温度で焼成した場合に緻密な焼成体が得られないおそれがある、または緻密な焼成体を得るためにこのガラス粉末の含有量を多くしなければならなくなり、その結果焼成体のεが小さくなる、またはtanδが大きくなるおそれがある。Tsは、より好ましくは780℃以下である。880℃以下の温度で焼成しても緻密な焼成体を得られるようにしたい場合にはTsは、好ましくは770℃以下、より好ましくは760℃以下である。
ガラス粉末CのTgは典型的には550〜650℃である。
【0072】
ガラス粉末Cは、典型的には850〜900℃のいずれかの温度で焼成した時に結晶を析出するものであることが好ましい。このようなものでないと、焼成体の強度が低下する、または隣接する誘電体または誘電体層との界面での反応が顕著になる。
ガラス粉末Cは焼成時にバリウムアルミノシリケート結晶を析出するものであることが好ましい。そのようなものでないと、焼成体の強度が低下する、または焼成体のtanδが大きくなるおそれがある。
【0073】
次に、ガラス粉末Cの組成について説明する。
SiOはガラスのネットワークフォーマであり、必須である。15%未満ではガラス化しにくくなる。好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である。40%超ではTsが高くなり900℃以下での焼成が困難になる、または焼成体のεが小さくなる。好ましくは39%以下、より好ましくは36%以下、特に好ましくは35%以下である。
【0074】
はガラスを安定化させる、またはTsを低下させる効果を有し、必須である。5%未満では前記効果が小さい。好ましくは11%以上、より好ましくは15%以上である。37%超ではガラスの化学的安定性が低下するおそれがある。好ましくは35%以下、より好ましくは28%以下、特に好ましくは22%以下である。
【0075】
Alはガラスを安定化させる、または化学的耐久性を高める効果を有し、必須である。2%未満では前記効果が小さい。好ましくは4%以上、より好ましくは6%以上である。15%超ではTsが高くなる。好ましくは12%以下、より好ましくは8%以下である。
【0076】
SiOおよびAlの含有量の合計が25%未満ではガラスの化学的安定性が不充分になる。典型的には32%以上である。50%超では900℃以下で焼成したときに緻密な焼成体を得にくくなる。典型的には44%以下である。
【0077】
MgO、CaOおよびSrOはガラスを安定化させるまたはBaOに比べてtanδを低下させる効果を有し、いずれか1種以上を含有しなければならない。MgO、CaOおよびSrOの含有量の合計が1%未満では前記効果が小さい。好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上である。25%超ではガラスがかえって不安定になる、またはεが小さくなる。好ましくは20%以下、より好ましくは17%以下、典型的には10%以下である。
【0078】
MgOを含有する場合、その含有量は1〜7%であることが好ましい。7%超であるとBa−Ti化合物粉末が焼成時にガラス成分と反応して焼成体中にBa−Ti化合物が残存しにくくなり焼成体のεが小さくなる、またはtanδが大きくなるおそれがある。典型的には5%以下である。
CaOは5%以上含有することが好ましい。
SrOを含有する場合、その含有量は1%以上であることが好ましい。
【0079】
BaOは焼成体中にBa−Ti化合物を残存させることを目的とする成分であり、必須である。5%未満では、Ba−Ti化合物粉末が焼成時にガラス成分と反応して焼成体中にBa−Ti化合物が残存しにくくなり焼成体のεが小さくなる、またはtanδが大きくなる。好ましくは7%以上、より好ましくは10%以上、典型的には13%以上である。25%超ではガラスが不安定になる、またはtanδが大きくなる。好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下である。
【0080】
ZnOは必須ではないが、Tsを低下させるため、またはガラスを安定化させるために35%まで含有してもよい。35%超では化学的耐久性、特に耐酸性が低下する、またはかえってガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは25%以下、典型的には20%以下である。ZnOを含有する場合その含有量は好ましくは2%以上、より好ましくは6%以上、典型的には11%以上である。
【0081】
およびZnOの含有量の合計が15%未満ではガラスが不安定になる、またはTsが高くなる。好ましくは25%以上である。45%超では化学的耐久性が低下する。好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。
【0082】
TiO、ZrOおよびSnOはいずれも必須ではないが、εを大きくするため、または化学的耐久性を高くするために合計で15%まで含有してもよい。15%超では焼成時の結晶化速度が大きくなって焼結しにくくなり、焼成体の緻密性が低下する等の問題が起こる。好ましくは10%以下である。なお、通常はTiOを5%以上含有することが好ましい。
【0083】
ガラス粉末Cは本質的に上記成分からなるが、Tsをより低下させる、ガラスを着色させる、等のためにその他の成分を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。そのような成分を含有する場合当該成分の含有量は合計で10%以下であることが好ましい。
当該合計は、10%超ではガラスが不安定になるおそれがあり、より好ましくは5%未満である。
【0084】
そのような成分としては、P、Y、Ga、In、Ta、Nb、CeO、La、Sm、MoO、WO、Fe、MnO、CuO、CoO、Crが例示される。
なお、電気絶縁性が低下するおそれがあるのでLiO、NaO、KO等のアルカリ金属酸化物は含有せず、またPbOも含有しない。
【0085】
ガラスセラミックス組成物Cの他の必須成分であるBa−Ti化合物粉末は焼成体のεを増大させるためのものである。
Ba−Ti化合物粉末はBaとTiを含有しモル比(Ti/Ba)が3.5〜5.7である化合物(Ba−Ti化合物)の粉末であり、そのモル比は典型的には3.5〜5.0である。
Ba−Ti化合物は結晶に限らず固溶体であってもよく、BaTi結晶、BaTi11結晶、BaTi20結晶、BaSmTi14結晶、Ba(BaO,Sm)4TiO固溶体、等が例示されるが、高周波領域における比誘電率が大きくかつ誘電損失が小さいという特徴を有するBaTi結晶を含有することが好ましい。
【0086】
BaTi結晶を含有するBa−Ti化合物粉末はたとえば次のようにして作製される。すなわち、炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末をTi/Baモル比が3.5〜4.5の範囲となるように含有する混合粉末をボールミル等によって粉砕し粉砕混合粉末とする。得られた粉砕混合粉末を1000〜1500℃に保持して炭酸バリウム粉末と酸化チタン粉末を反応させる。前記保持する温度は好ましくは1050〜1250℃である。
このようにして作製された粉末(以下、BT粉末という。)のX線回折パターンにはBaTi結晶の回折ピークパターンが認められる。
また、BT粉末にはBaTi結晶以外の結晶、たとえばBaTi20結晶、BaTi11結晶、TiO結晶等の回折ピークパターンが認められることがある。
【0087】
次に、ガラスセラミックス組成物Cの組成について質量百分率表示を用いて説明する。
ガラス粉末Cが30%未満では緻密性が不十分になる。好ましくは35%以上である。70%超ではεが小さくなるまたはtanδが大きくなる。好ましくは55%以下、より好ましくは45%以下である。
Ba−Ti化合物粉末が30%未満では焼成体のεが小さくなるおそれがある。好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上である。70%超では緻密な焼成体が得にくくなる。好ましくは65%以下である。
【0088】
ガラスセラミックス組成物Cは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。当該その他の成分の含有量は合計で、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0089】
前記その他成分としては以下のようなものが例示される。
すなわち、εをより高くしたい場合には、TiO結晶、(Ca,Mg)TiO固溶体、BaZrO結晶、BaWO結晶、Ba(Zr,Zn,Ta)O固溶体、Ba(Ti,Zr)O固溶体などの粉末が挙げられ、εをより高くする他に焼成体の緻密性を高くしたい、またはtanδを小さくしたい場合にはTiO結晶粉末を含有することが好ましい。
また、εを大きくする、εの温度係数τを調整する、αを調整する等の目的で、MgTiO、CaTiO、SrTiO、ZrOからなる群から選ばれる1種以上の結晶の粉末を含有してもよい。
上記例示した粉末を含有する場合、それらの含有量合計は好ましくは0.1〜10%、典型的には0.5〜5%である。
【0090】
原料層C中の焼成されて低誘電率誘電体となる部分であるガラス粉末含有原料体および低誘電率誘電体からなる偶数番目の層が存在する場合に焼成されてその層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末はガラス粉末Aと同じものである。
また、そのガラス粉末含有原料体およびそのガラス粉末含有原料層はガラス粉末Aを含有するガラスセラミックス組成物を含有するものであることが好ましく、特にガラスセラミックス組成物Aを含有するものであることが好ましい。
【0091】
焼成されて奇数番目の層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末はガラス粉末Bと同じものである。
また、そのガラス粉末含有原料層はガラス粉末Bを含有するガラスセラミックス組成物を含有するものであることが好ましく、特にガラスセラミックス組成物Bを含有するものであることが好ましい。
【0092】
なお、ガラス粉末A、B、Cおよびガラスセラミックス組成物A、B、Cは、高誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体、低誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体、前記低誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料層が存在する場合におけるその原料層および奇数番目の層となるガラス粉末含有原料層を焼成して得られる各誘電体のαが同じまたは互いに15×10−7/℃以下の範囲で異なるようなものとなるように選ばれる。
【実施例】
【0093】
表1、2のSiOからSnOまでの欄にモル%表示で示す組成となるように原料を調合、混合し、この混合された原料を白金ルツボに入れて1550〜1600℃で60分間溶融後、溶融ガラスを流し出し冷却した。得られたガラスをアルミナ製ボールミルでエチルアルコールを溶媒として20〜60時間粉砕してガラス粉末G1〜G9を得た。G1、G2、G6〜G9はガラス粉末A、そのうちG1、G6、G7は本発明のガラスの粉末、G3、4はガラス粉末B、G5はガラス粉末Cである。
なお、各ガラスの質量百分率表示組成を参考のために表中に括弧書きで示すが、G1〜G7、G9はいずれも特許文献1に開示されているガラスとは異なる。
【0094】
各ガラス粉末のD50(単位:μm)を島津製作所製レーザー回折式粒度分布計SALD2100を用いて、Tg(単位:℃)、Ts(単位:℃)、結晶化ピーク温度Tc(単位:℃)をマックサイエンス社製熱分析装置TG−DTA2000を用いて昇温速度10℃/分の条件で1000℃まで、それぞれ測定した。
【0095】
また、各ガラス粉末を900℃に2時間保持(焼成)して得られた焼成体についてX線回折法により結晶析出の有無を調べたところ、G1、G6の焼成体ではフォルステライト結晶、ガーナイト結晶およびバリウムアルミノシリケート結晶が、G2、G9の焼成体ではフォルステライト結晶およびバリウムストロンチウムアルミノシリケートと推定される結晶(回折パターンがバリウムアルミノシリケート結晶およびストロンチウムアルミノシリケート結晶の双方の回折パターンに似ているが一致しているとまでは言えない結晶)が、G3の焼成体ではフォルステライト結晶およびエンスタタイト結晶が、G4、G8の焼成体ではフォルステライト結晶、ディオプサイド結晶およびエンスタタイト結晶が、G5の焼成体ではバリウムアルミノシリケート結晶およびルチル結晶が、G7の焼成体ではフォルステライト結晶およびガーナイト結晶が、それぞれ析出していることが認められた。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
表3、4のガラス粉末から酸化チタン粉末までの欄に質量百分率表示で示す組成のガラスセラミックス組成物GC1〜GC9を作製した。ガラスとしてはガラス種類欄に示すものを使用した。GC1、GC2、GC6〜GC9はガラスセラミックス組成物A、GC3、4はガラスセラミックス組成物B、GC5はガラスセラミックス組成物Cである。
【0099】
アルミナ粉末としては住友化学工業社製スミコランダムAA2(D50=2.0μm)を、フォルステライト粉末としてはチタン工業社製F−300(D50=1.1μm)を、酸化セリウム粉末としては新日本金属化学社製酸化セリウム−100(D50は約6μm)を、酸化チタン粉末としては東邦チタニウム社製HT0210(D50=1.8μm)をそれぞれ使用した。
【0100】
BT粉末は次のようにして作製した。すなわち、BaCO粉末(堺化学工業社製炭酸バリウムBW−KT)88gとTiO粉末(東邦チタニウム社製HT0210)130gとを水を溶媒としてボールミルで混合し、乾燥後1150℃に2時間保持した。その後ボールミルで60時間粉砕してD50が0.9μmである粉末を得た。この粉末についてX線回折測定を行ったところBaTi結晶の強い回折ピークパターンが認められた。
【0101】
GC1〜GC9各5gについて金型を用いてプレス成形し、875℃に2時間保持する焼成を行って焼成体を得、これを研磨加工して直径5mm、長さ20mmの棒状サンプルを作製した。このサンプルを用いて、マックサイエンス社製示差熱膨張計DILATOMETERを用いて前記α(単位:×10−7/℃)を測定した。結果を表3、4に示す。
【0102】
また、GC1〜GC9各4〜5gを別に用意し、別の金型を用いてプレス成形し、同様な焼成を行って焼成体を得、これを研磨加工して直径約13mm、高さ約10mmの円柱状サンプルを得た。なお、GC5については比誘電率が大きいのでそのサンプルは直径約9mm、高さ約8mmの円柱状とした。
これらサンプルについて、ネットワークアナライザとキーコム社製平行導体共振法誘電率測定システムを使用して(9±1.5)GHzにおける比誘電率と誘電正接を測定した。結果を、その測定周波数すなわち共振周波数(単位:GHz)とともに表3、4に示す。
【0103】
また、GC1〜GC9の各ガラスセラミックス組成物を900℃に2時間保持して得られた焼成体に存在する結晶をX線回折法により調べたところ、各ガラスセラミックス組成物中に存在していた結晶以外の結晶として、GC1、GC6の焼成体ではガーナイト、バリウムアルミノシリケート、GC2、GC9の焼成体ではバリウムストロンチウムアルミノシリケートと推定されるもの、GC3の焼成体ではエンスタタイト、フォルステライト、GC4の焼成体ではディオプサイド、アノーサイト、フォルステライト、GC5の焼成体ではバリウムアルミノシリケート、GC6の焼成体ではディオプサイド、アノーサイト、GC7の焼成体ではガーナイトの存在がそれぞれ認められた。
【0104】
50gのGC1に有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、樹脂(デンカ社製ポリビニルブチラールPVK#3000K)5gと分散剤(ビックケミー社製BYK180)を混合してスラリーとした。このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法を利用して塗布し、乾燥して厚さが0.2mmのグリーンシートS1を得た。また、GC2〜GC9を用いて同様にしてグリーンシートS2〜S9を作製した。
【0105】
グリーンシートS1を6枚重ねたものを、10MPaで1分間圧着プレスした。その圧着体(被焼成体)を550℃に5時間保持して樹脂成分を分解除去した後、875℃に2時間保持する焼成を行って強度試験用焼成体を作製した。この焼成体を切断して幅5mmの短冊状に加工したものを用いてGC1の焼成体の3点曲げ強度を測定した。スパンは15mm、クロスヘッドスピードは0.5cm/分とした。グリーンシートS2〜S6を用いて同様にしてGC2〜GC6の焼成体の3点曲げ強度を測定した。これら測定結果を表3、4の強度の欄に示す(単位:MPa)。
【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
(例1)
S1およびS3をそれぞれ40mm×40mmに切断し、S3を2枚、S1を4枚、S3を2枚の計8枚のグリーンシートをこの順で重ねて、原料層積層体とした。2枚のS3が重ねられたものは焼成されて1番目および3番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層であり、4枚のS1が重ねられたものは焼成されて2番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層である。
【0109】
次に、この原料層積層体を10MPaで1分間圧着プレスした。得られたプレス品に1辺30mmの正方形の頂点を形成するように4個のパンチ孔をあけ、550℃に5時間保持して樹脂成分を分解除去した後、875℃に2時間保持する焼成を行って積層誘電体を作製した。この積層誘電体中の前記パンチ孔によって形成された正方形の1辺の長さを顕微鏡下で測定し収縮率を算出したところ、2.1%であった。なお、この収縮率は5%以下であることが好ましい。
【0110】
また、先にGC1の焼成体の3点曲げ強度を測定したのと同様にしてこの積層誘電体の3点曲げ強度を測定したところ、271MPaであった。なお、この強度は200MPa以上であることが好ましい。
【0111】
(例2)
例1のS1をS2に、S3をS4に変えた以外は例1と同様にして積層誘電体を作製し、前記パンチ孔によって形成された正方形の1辺の長さを測定し収縮率を算出したところ、4.1%であった。
また、その積層誘電体の3点曲げ強度は251MPaであった。
【0112】
(例3)
比較のために、例1のS1をS4に変えた以外は例1と同様にして積層誘電体を作製し、前記パンチ孔によって形成された正方形の1辺の長さを測定し収縮率を算出したところ、10.2%であった。
また、その積層誘電体の3点曲げ強度は192MPaであった。
【0113】
(例4)
40mm×40mmに切断したS1を4枚重ねたものと40mm×40mmに切断したS5を4枚重ねたものを用意し、それぞれプレス圧着して圧着体とした。
これら圧着体の中央部分から金型を用いて30mm×5mmの長方形圧着体を打ち抜いた。
中央部分が打ち抜かれたS1圧着体のその中央部分に、S5圧着体から打ち抜いて得られた30mm×5mmの長方形圧着体を入れ、はめ込み圧着体とした。前記S1圧着体は焼成されて低誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体であり、30mm×5mmのS5長方形圧着体は焼成されて高誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体である。
【0114】
40mm×40mmに切断したS3を2枚重ね合わせたものの上に前記はめ込み圧着体、40mm×40mmに切断したS3を2枚重ね合わせたものを順次積層し、プレスした。
このようにして得られたプレス体を例1の場合と同様に焼成したところ、2層目に高誘電率誘電体と低誘電率誘電体が存在する3層の層状誘電体が、特に変形することなく平坦な基板状のものとして得られた。
【0115】
(例5)
比較のために、例4のS1をS3に変えた以外は例4と同様にして3層の層状誘電体を作製したところ、長方形のS5圧着体をはめ込んだ部分の周囲が大きく変形し、平坦な基板状のものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
誘電体が積層された電子回路基板、アンテナ基板等の製造に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
nを正の整数として(2n+1)個の誘電体層が積層されている積層誘電体の製造方法であって、焼成されて前記誘電体層となる(2n+1)個のガラス粉末含有原料層を積層して焼成するものであり、
焼成されて偶数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末が、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 23〜35%、B 0〜15%、Al 2〜15%、MgO 30〜50%、CaO 0〜12%、SrO 0〜12%、BaO 0〜4%、ZnO 2〜12%、TiO+ZrO+SnO 0〜5%、から本質的になり、
焼成されて奇数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末が、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 36〜55%、B 0〜5%、Al 5〜20%、MgO 20〜45%、CaO+SrO 0〜20%、BaO 0〜10%、ZnO 0〜15%、TiO+ZrO+SnO 0〜10%、から本質的になり、
隣り合うガラス粉末含有原料層がそれらを焼成して得られる誘電体層の50〜350℃における平均線膨張係数の差の絶対値が15×10−7/℃以下であるものである積層誘電体製造方法。
【請求項2】
焼成されて偶数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末において、SiOが23〜32モル%、MgOが35〜50モル%、CaOが0〜10モル%、SrOが0〜10モル%、CaO+SrO+BaOが2〜10モル%である請求項1に記載の積層誘電体製造方法。
【請求項3】
焼成されて奇数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末のガラス転移点が700〜780℃であって、焼成されてその誘電体層の隣り合う誘電体層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末のガラス転移点よりも50℃以上高い請求項1または2に記載の積層誘電体製造方法。
【請求項4】
焼成されて奇数番目の誘電体層となるガラス粉末含有原料層に含有されるガラス粉末が、焼成されたときにフォルステライト結晶を析出するものである請求項1、2または3に記載の積層誘電体製造方法。
【請求項5】
積層誘電体の各誘電体層の9GHzにおける比誘電率が6〜10であり、隣り合う誘電体層間の同比誘電率の差が3未満である請求項1〜4のいずれかに記載の積層誘電体製造方法。
【請求項6】
積層誘電体の各誘電体層の9GHzにおける誘電正接が0.0050以下である請求項1〜5のいずれかに記載の積層誘電体製造方法。
【請求項7】
nを正の整数として(2n+1)個の層を有し、1個以上の偶数番目の層において9GHzにおける比誘電率が互いに3以上異なる高誘電率誘電体と低誘電率誘電体とが隣接して存在し、それ以外に偶数番目の層が存在する場合にはその層中に存在する誘電体は前記低誘電率誘電体である層状誘電体の製造方法であって、焼成されて前記(2n+1)個の層となる(2n+1)個のガラス粉末含有原料層を積層して焼成するものであり、
焼成されて前記高誘電率誘電体となる前記1個以上の偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層のガラス粉末含有原料体が、質量百分率表示で、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 15〜40%、B 5〜37%、Al 2〜15%、MgO+CaO+SrO 1〜25%、BaO 5〜25%、ZnO 0〜35%、TiO+ZrO+SnO 0〜15%、から本質的になり、SiO+Alが25〜50モル%、B+ZnOが15〜45モル%であり、鉛およびアルカリ金属のいずれも含有しないガラス粉末30〜70%と、BaとTiを含有しモル比(Ti/Ba)が3.5〜5.7であるBa−Ti化合物粉末30〜70%とから本質的になり、
焼成されて前記低誘電率誘電体となる前記1個以上の偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層のガラス粉末含有原料体が含有するガラス粉末および焼成されて前記それ以外に偶数番目の層が存在する場合におけるその偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末のいずれもが、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 23〜35%、B 0〜15%、Al 2〜15%、MgO 30〜50%、CaO 0〜12%、SrO 0〜12%、BaO 0〜4%、ZnO 2〜12%、TiO+ZrO+SnO 0〜5%、から本質的になり、
焼成されて奇数番目の層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末が、下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 36〜55%、B 0〜5%、Al 5〜20%、MgO 20〜45%、CaO+SrO 0〜20%、BaO 0〜10%、ZnO 0〜15%、TiO+ZrO+SnO 0〜10%、から本質的になり、
焼成されて前記高誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体、焼成されて前記低誘電率誘電体となるガラス粉末含有原料体、前記それ以外に偶数番目の層が存在する場合におけるその偶数番目の層となるガラス粉末含有原料体および焼成されて奇数番目の層となるガラス粉末含有原料層を焼成して得られる各誘電体の50〜350℃における平均線膨張係数の互いの差が15×10−7/℃以下であるものである層状誘電体製造方法。
【請求項8】
焼成されて前記低誘電率誘電体となる前記1個以上の偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層のガラス粉末含有原料体が含有するガラス粉末および焼成されて前記それ以外に偶数番目の層が存在する場合におけるその偶数番目の層となるガラス粉末含有原料層が含有するガラス粉末のいずれにおいても、SiOが23〜32モル%、MgOが35〜50モル%、CaOが0〜10モル%、SrOが0〜10モル%、CaO+SrO+BaOが2〜10モル%である請求項7に記載の層状誘電体製造方法。
【請求項9】
下記酸化物基準のモル%表示で、SiO 23〜32%、B 0〜15%、Al 2〜15%、MgO 35〜50%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜4%、ZnO 2〜12%、TiO+ZrO+SnO 0〜5%、から本質的になり、CaO+SrO+BaOが2〜10モル%であるガラス。

【公開番号】特開2007−145688(P2007−145688A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85438(P2006−85438)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】