説明

窒化物半導体トランジスタ及びその製造方法

【課題】動作電流が大きく且つスイッチング特性に優れたノーマリオフ型の窒化物半導体トランジスタを実現できるようにする。
【解決手段】窒化物半導体トランジスタは、第1の窒化物半導体層13と、第1の窒化物半導体層13の上に形成され、第1の窒化物半導体層13と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層14と、第2の窒化物半導体層14の上に形成された第3の窒化物半導体層15とを備えている。第3の窒化物半導体層15におけるゲート電極20の下側の領域には、p型の導電性を有するコントロール領域15aが形成され、第3の窒化物半導体層におけるゲート電極15とソース電極18及びドレイン電極19との間の領域には、コントロール領域15aよりも抵抗値が高い高抵抗領域15bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体トランジスタ及びその製造方法に関し、特に、パワーデバイスに応用可能なノーマリオフ型の窒化物半導体トランジスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波デバイス及び大電力デバイスとして窒化ガリウム(GaN)系の材料を用いた電界効果トランジスタ(FET)の研究が活発に行われている。GaN系の窒化物半導体はGaNだけでなく、窒化アルミニウム(AlN)及び窒化インジウム(InN)等がある。これらの窒化物半導体は様々な混晶を作ることができるので、従来の砒化ガリウム(GaAs)等の砒素系半導体と同様にヘテロ接合を形成することができる。しかし、窒化物半導体のヘテロ接合においては、窒化物半導体がドーピングされていない場合にも、その界面に自発分極又はピエゾ分極による高濃度のキャリアが発生する。このため、窒化物半導体を用いて形成したFETは、デプレッション型(ノーマリオン型)になりやすく、エンハンスメント型(ノーマリオフ型)の特性を得ることが難しい。一方、現在パワーエレクトロニクス市場で使用されているデバイスのほとんどは、ノーマリオフ型であるため、GaN系の窒化物半導体デバイスにおいてもノーマリオフ型が強く求められている。
【0003】
窒化物半導体を用いたノーマリーオフ型のFETの構造としては、単純にAlGaNとGaNとのヘテロ接合において障壁層となるAlGaN層の膜厚又はAl組成比を減少させる構造、ゲート部を掘り込むことによって閾値電圧をプラスにシフトさせる構造(例えば、非特許文献1を参照)、サファイア基板の(10−12)面上にFETを作製して窒化物半導体の結晶成長方向に分極電界を生じないようにした構造(例えば、非特許文献2を参照)等が知られている。
【0004】
また、ノーマリーオフ型のFETを実現する有望な構造として、図14に示すようなゲート部にp型GaN層を形成した接合型電界効果トランジスタ(JFET:Junction Field Effect Transistor)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。図14に示すように従来のJFET構造は、基板101の上に、バッファ層102と、アンドープGaNからなるチャネル層103と、nドープAlGaNからなるバリア層104とが順次形成されている。バリア層104の上には、ソース電極106及びドレイン電極107が互いに間隔をおいて形成され、ソース電極106とドレイン電極107との間には、p−GaN層105を介在させてゲート電極108が形成されている。
【0005】
従来のJFET構造は、アンドープGaNからなるチャネル層103とAlGaNからなるバリア層104とのヘテロ界面に発生するピエゾ分極は、AlGaNからなるバリア層104とp型GaN層105とのヘテロ界面に発生するピエゾ分極によって打ち消される。このため、ゲート部直下において2次元電子ガス濃度を選択的に小さくすることができ、ノーマリーオフ特性が実現できる。また、ショットキー接合よりもビルトインポテンシャルの大きなpn接合をゲートに用いることによって、ゲート立ち上がり電圧を大きくすることができ、正のゲート電圧を印加してもゲートリーク電流を小さく抑制できるという利点がある。
【非特許文献1】T. Kawasaki 他, "Solid State Devices and Materials 2005 tech. digest", 2005年, p206
【非特許文献2】M. Kuroda 他, "Solid State Devices and Materials 2005 tech. digest", 2005年, p470
【特許文献1】特開2005−244072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、窒化物半導体はシリコン半導体のようにイオン注入又は不純物拡散により材料を選択的にp型化したりn型化したりすることが困難である。このため、ゲート部を局所的にp型化する方法として、例えばゲート部に局所的にp型の窒化物半導体を選択再成長させる方法が考えられる。しかし、p型の窒化物半導体をゲート部に局所的に再成長させる方法には、再成長界面にn型不純物としてのシリコンが析出しやすく良好なpn接合を得ることが困難であるという問題がある。
【0007】
ゲート部を局所的にp型化する他の方法としては、p型窒化物半導体を堆積した後に選択的にエッチングを行い、局所的にp型の窒化物半導体層を残す方法が考えられる。しかし、この場合には、p型の窒化物半導体層をエッチングする際に、チャネル領域がエッチングによる損傷を受けやすく、またその損傷を回復させることが困難であるという問題がある。チャネル領域がエッチングにより損傷すると、ゲートドレイン間においてチャネル領域のキャリア濃度が低下し、ドレイン動作電流が減少する原因となる。また、チャネル領域の表面に形成された欠陥に電子がトラップされる等の影響により高速なスイッチング動作が阻害されてしまう、いわゆるコラプスが発生する。
【0008】
本発明は、前記従来の問題を解決し、動作電流が大きく且つスイッチング特性に優れ、ノーマリオフ化することが容易な窒化物半導体トランジスタを実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、窒化物半導体トランジスタを、ゲート電極の下側の領域に、p型不純物が活性化されたコントロール領域を有する構成とする。
【0010】
具体的に、本発明に係る窒化物半導体トランジスタは、基板の上に形成された第1の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層の上に形成され、第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層の上に形成された第3の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層における第2の窒化物半導体層との界面領域に生成されたチャネル領域と電気的に接続されるように互いに間隔をおいて形成されたソース電極及びドレイン電極と、第3の窒化物半導体層の上におけるソース電極とドレイン電極との間に形成されたゲート電極とを備え、第3の窒化物半導体層におけるゲート電極の下側の領域には、p型の導電性を有するコントロール領域が形成され、第3の窒化物半導体層は、ゲート電極の下側の領域に形成され、p型の導電性を有するコントロール領域と、少なくともコントロール領域とソース電極との間及びコントロール領域とドレイン電極との間の領域に形成され、コントロール領域よりも抵抗値が高い高抵抗領域とを含んでいることを特徴とする。
【0011】
本発明の窒化物半導体トランジスタによれば、第3の窒化物半導体層におけるゲート電極の下側の領域には、p型の導電性を有するコントロール領域が形成されているため、コントロール領域にチャネル領域に対して順方向のバイアス電圧を印加することにより、チャネル領域に正孔を注入することが可能となる。注入された正孔は、チャネル領域内に電子の発生を促すため、チャネル領域におけるキャリア濃度を高くすることができ、チャネル領域の電流を大幅に増大させることが可能となる。その結果、ノーマリオフ型の窒化物半導体トランジスタにおいても動作電流を大きくすることができる。また、第2の窒化物半導体層の上に第3の窒化物半導体層を形成しているため、第2の窒化物半導体層の表面がダメージを受け、チャネル領域のキャリア濃度が低下したりコラプスが発生したりすることを抑えることができる。
【0012】
本発明の窒化物トランジスタにおいて、ソース電極とドレイン電極との間の電気伝導度の大きさは、チャネル領域に対して順方向のバイアス電圧をコントロール領域に印加して、チャネル領域に正孔を注入することにより制御されることが好ましい。
【0013】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、第3の窒化物半導体層は、p型不純物を含み、p型不純物は、コントロール領域においては活性化されており、高抵抗領域においては水素と結合した不活性な状態であることが好ましい。このような構成とすることにより、第3の窒化物半導体層に選択的にp型の導電性を有する領域を形成することができる。従って、第3の窒化物半導体層をエッチングにより除去する必要がなく、チャネル領域がエッチングによるダメージを受けるおそれがない。
【0014】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、高抵抗領域における少なくともゲート電極とドレイン電極との間の領域には、コントロール領域のよりも膜厚が薄い部分が形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、ゲートドレイン間の耐圧を向上させることができる。
【0015】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、コントロール領域に含まれる正孔の数が、第3の半導体層を形成する前に第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との界面領域に生成される2次元電子ガスの電子の数よりも多いことが好ましい。このような構成とすることにより、確実にノーマリオフ型の窒化物半導体トランジスタを実現できる。
【0016】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、第3の窒化物半導体層の上に形成され、第3の窒化物半導体層が加熱された際に、高抵抗領域から水素が脱離することを防ぐ水素バリア膜をさらに備え、水素バリア膜は、コントロール領域の少なくとも一部を露出する開口部を有していることが好ましい。
【0017】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、水素バリア膜は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム又は窒化シリコンからなることが好ましい。
【0018】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、第3の窒化物半導体層の上に形成され、第3の窒化物半導体層が加熱された際に、高抵抗領域に水素を供給する水素拡散膜をさらに備え、水素拡散膜は、少なくともコントロール領域を露出する開口部を有していることが好ましい。
【0019】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、水素拡散膜は、水素を1×1020個/cm3以上含むシリコン窒化膜であることが好ましい。
【0020】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、第1の窒化物半導体層は、GaNからなり、第2の窒化物半導体層は、AlxGa1-xN(0<x≦1)からなり、第3の窒化物半導体層は、AlyGa1-yN(0≦y≦1)からなることが好ましい。
【0021】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、基板と第1の窒化物半導体層との間に形成され、第1の窒化物半導体層に対して価電子帯にポテンシャル障壁を形成する材料からなる第4の窒化物半導体層をさらに備えていることが好ましい。このような構成とすることにより、チャネル領域に注入された正孔が散逸することがなく、効果的にチャネル領域の電子濃度を増大させることが可能となる。
【0022】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、第1の窒化物半導体層は、GaNからなり、第2の窒化物半導体層は、AlxGa1-xN(0<x≦1)からなり、第3の窒化物半導体層は、AlyGa1-yN(0≦y≦1)からなり、第4の窒化物半導体層は、AlzGa1-zN(0<z≦1)からなることが好ましい。このような構成とすることにより、チャネル領域内の電子の濃度は、第2の窒化物半導体層と第4の窒化物半導体層との自発分極量の差に等しくなる。例えば、第2の窒化物半導体層と第4の窒化物半導体層とを同じ材料とすれば、無バイアス時にチャネル領域内の平均電子濃度がゼロとなり、確実にノーマリオフ動作の条件を満たすことができる。
【0023】
本発明の窒化物半導体トランジスタにおいて、ソース電極及びドレイン電極は、第3の窒化物半導体層及び第2の窒化物半導体層を貫通し、第1の窒化物半導体層と接していることが好ましい。このような構成とすることにより、コンタクト抵抗が小さいソース電極及びドレイン電極が形成でき、オン抵抗が低い窒化物半導体トランジスタが実現できる。
【0024】
本発明に係る窒化物半導体トランジスタの製造方法は、基板の上に第1の窒化物半導体層及び該第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層を下側から順次形成する工程(a)と、第2の窒化物半導体層の上に、水素と結合したp型不純物を含む第3の窒化物半導体層を形成する工程(b)と、第3の窒化物半導体層の一部において、p型不純物から水素を脱離させることにより、p型の導電性を有するコントロール領域を形成する工程(c)と、コントロール領域の上にゲート電極を形成する工程(d)と、ゲート電極の両側に、第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との界面領域に生成するチャネル領域と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極を形成する工程(e)とを備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明の窒化物半導体トランジスタの製造方法によれば、第2の窒化物半導体層の上に、水素と結合したp型不純物を含む第3の窒化物半導体層を形成する工程と、第3の窒化物半導体層の一部において、p型不純物から水素を脱離させることにより、p型の導電性を有するコントロール領域を形成する工程とを備えているため、第3の窒化物半導体層をエッチングすることなく、p型の導電性を有するコントロール領域を選択的に形成することができる。従って、第2の窒化物半導体層がエッチングによるダメージを受けることがなく、動作電流が大きく且つ高速なスイッチング動作を行う窒化物半導体トランジスタが実現できる。
【0026】
本発明の窒化物半導体トランジスタの製造方法において、工程(c)は、第3の窒化物半導体層の上に、水素の透過を防止する水素バリア膜を形成した後、コントロール領域を形成する位置に開口部を形成する工程(c1)と、工程(c1)よりも後に、第3の窒化物半導体層を熱処理する工程(c2)とを含むことが好ましい。
【0027】
この場合において、水素バリア膜は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム又は窒化シリコンからなることが好ましい。このような構成とすることにより、コントロール領域以外の部分において不純物が活性化されることを確実に防ぐことができる。
【0028】
本発明の窒化物半導体トランジスタの製造方法において、工程(c)は、第3の窒化物半導体層の上に、加熱により水素を脱離する水素拡散膜を形成した後、コントロール領域を形成する位置に開口部を形成する工程(c1)と、工程よりも後に、第3の窒化物半導体層を熱処理する工程(c2)とを含むことが好ましい。
【0029】
この場合において、水素拡散膜は、水素を1×1020個/cm3以上含むシリコン窒化膜であることが好ましい。このような構成とすることにより、コントロール領域以外の部分において不純物と水素とを結合させて、さらに不活性化することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る窒化物半導体トランジスタ及びその製造方法によれば、動作電流が大きく且つスイッチング特性に優れ、ノーマリオフ化することが容易な窒化物半導体トランジスタを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタの断面構成を示している。
【0032】
図1に示すように、シリコンからなり主面が(111)面である基板11の主面上に膜厚が100nmのAlNからなるバッファ層12が形成されている。
【0033】
バッファ層12の上には、膜厚が2μmのアンドープのGaNからなる第1の窒化物半導体層13と、膜厚が25nmのアンドープのAl0.15Ga0.85Nからなる第2の窒化物半導体層14とが形成されている。第1の窒化物半導体層13と第2の窒化物半導体層14との界面領域には、後で述べるように、トランジスタのチャネル領域が生成される。
【0034】
第2の窒化物半導体層14の上には、膜厚が200nmのマグネシウム(Mg)がドープされたAl0.15Ga0.85Nからなる第3の窒化物半導体層15が形成されている。Mgがドープされた第3の窒化物半導体層は、Mgが活性化されてp型の導電性を有するコントロール領域15aと、Mgが活性化されておらずコントロール領域15aよりも抵抗値が高い高抵抗領域15bとからなる。コントロール領域15aは、例えば、幅が1μmのストライプ状に形成する。
【0035】
第3の窒化物半導体層15の上には、膜厚が100nmのAlNからなる水素バリア膜16が形成されている。水素バリア膜16は、コントロール領域15aを露出する開口部を有している。水素バリア膜16の上には開口部を埋めるようにゲート電極20が形成されている。ゲート電極20は、パラジウム(Pd)からなりコントロール領域15aとオーミック接触している。
【0036】
ゲート電極20の両側には、ソース電極18とドレイン電極19とが形成されている。
ソース電極18及びドレイン電極19は、水素バリア膜16、第3の窒化物半導体層15の高抵抗領域15b及び第2の窒化物半導体層14を貫通し、第1の窒化物半導体層13の一部を掘り込むように形成された凹部に埋め込まれた、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とからなる。このような構成とすることにより、ソース電極18及びドレイン電極19が、第1の窒化物半導体層13と第2の窒化物半導体層14とのヘテロ界面に生成する2DEGからなるチャネル領域と良好なオーミック接触を形成できる。コントロール領域15aからドレイン電極19の端までの距離は、3μm以上とすることがドレイン耐圧を大きくするために好ましい。
【0037】
なお、1個のトランジスタのみを図示しているが、素子分離領域(図示せず)により分離された複数の素子領域を形成し、複数のトランジスタを基板の上に形成してもよい。
【0038】
以下に、第1の実施形態に係るトランジスタの動作原理を説明する。図2(a)及び(b)は本実施形態のトランジスタのエネルギーバンドであり、(a)はコントロール領域について示しており、(b)はコントロール領域以外の素子領域について示している。
【0039】
図2(a)及び(b)に示すように、コントロール領域においても、それ以外の素子領域においても、第1の窒化物半導体層13と第2の窒化物半導体層14とのヘテロ界面には、伝導帯に溝が形成されている。これは、第1の窒化物半導体層13と第2の窒化物半導体層14との界面に、自発分極及びピエゾ分極により電荷が生じるためである。コントロール領域以外の素子領域においては、(b)に示すように伝導帯の溝はフェルミレベルよりも低い位置にあり、2DEGが形成されている。これは、第3の窒化物半導体層15に含まれるp型不純物が活性化されておらず、第3の窒化物半導体層15が単なる高抵抗の窒化物半導体層として機能するためである。一方、コントロール領域においては、(a)に示すように第3の窒化物半導体層15に含まれるp型不純物が活性化されているため、第2の窒化物半導体層14及び第1の窒化物半導体層13のエネルギーレベルが引き上げられる。このため、第1の窒化物半導体層13と第2の窒化物半導体層14とのヘテロ界面における伝導帯の溝が、フェルミレベルよりも高い位置になる。その結果、コントロール領域にバイアス電圧を印加しないときには、2DEGが形成されないため、ノーマリオフ型のトランジスタを実現できる。
【0040】
例えば、膜厚が2μmのアンドープのGaNと、膜厚が25nmのアンドープのAl0.15Ga0.85Nとの界面領域に生成される2DEG層の電子の数は、1×1013cm-2程度となる。第3の窒化物半導体層15にドープするMgの濃度を1×1019cm-3程度とし、コントロール領域15aにおけるキャリア濃度を、1×1018cm-3程度とする。この際に、コントロール領域15aの膜厚を200nmとするとp型のキャリア濃度を2×1013cm-2程度とすることができる。コントロール領域15aに含まれる正孔の数を、コントロール領域15aがない場合にチャネル領域に生成する電子の数よりも多くでき、ノーマリオフ型の窒化物半導体トランジスタを実現することが可能となる。
【0041】
第1の実施形態のトランジスタは、コントロール領域をチャネル領域に対して順方向にバイアスすることにより、チャネル領域内に正孔を注入している。窒化物半導体においては正孔の移動度は、電子の移動度よりもはるかに低いため、チャネル領域に注入された正孔は電流を流す担体としてほとんど寄与しない。このため、コントロール領域から注入された正孔は同量の電子をチャネル領域内に発生させるため、チャネル領域の電流を飛躍的に増加させることが可能であり、動作電流が大きいトランジスタを実現できる。
【0042】
さらに、コントロール領域のバンドギャップをチャネル領域におけるバンドギャップよりも大きくすることにより、コントロール領域からチャネル領域に注入される正孔の量を、チャネル領域からコントロール領域に注入される電子の量よりも大きくすることができる。これにより、チャネル領域内のキャリア濃度をさらに効率よく高くすることが可能となる。
【0043】
チャネル領域内に注入された正孔の移動度がゼロに近いほど、チャネル領域内に電子を発生させる効果が高くなり、ドナーイオンのような機能を発揮する。つまり、チャネル領域内においてキャリア濃度の変調を行うことが可能となるため、動作電流が大きいノーマリオフ型の窒化物半導体トランジスタを実現することが可能となる。
【0044】
本発明の構造はJFETに類似しているが、キャリア注入を意図的に行うという点で、ゲート電界によりチャネル領域内のキャリア変調を行う接合型電界効果トランジスタ(JFET)とは全く異なった動作原理により動作する。
【0045】
図3(a)及び(b)は、第1の実施形態におけるトランジスタの特性であり、(a)はゲート電圧とドレイン電流との相関を示し、(b)はドレイン電圧とドレイン電流との相関を示している。図3(a)及び(b)に示すように閾値電圧は約1Vであり、ノーマリオフ特性を実現している。ゲート電極に5V以上の正バイアスを印加しても顕著なゲートリーク電流は観測されず、300mA/mm程度の最大ドレイン電流が得られている。
【0046】
窒化物半導体トランジスタは、一般に、GaN層の上に、膜厚が20nm〜30nmの薄いAlGaN層が形成され、GaN層とAlGaN層とのヘテロ界面がチャネル領域となっている。また、AlGaN層がトランジスタの最表面となる。このため、トランジスタの最表面からチャネル領域までの距離が非常に近くなり、窒化物半導体表面の結晶欠陥等に起因した電子トラップの影響を受けやすい。電子トラップの影響を受けると、トランジスタの電流をオンオフさせてスイッチング動作をさせる際に、電流のオンオフの切り替えを短時間で行うことができなくなり、駆動できる電流が大きく減少してしまうという、いわゆる、電流コラプス現象が生じ、高速なスイッチング動作が阻害されてしまう。本実施形態のトランジスタは、第2の窒化物半導体層の上に第3の窒化物半導体層が形成されているため、トランジスタの最表面とチャネル領域との距離を十分に離すことが可能となり、コラプス現象を抑制できるという効果も得られる。
【0047】
以下に、本実施形態のトランジスタの製造方法を説明する。まず、有機金属気相堆積(MOCVD)法等を用いて、基板11の上にAlNからなるバッファ層12、アンドープのGaNからなる第1の窒化物半導体層13及びアンドープのAl0.15Ga0.85Nからなる第2の窒化物半導体層14を順次成長させる。この後、p型不純物としてMgを添加してAl0.15Ga0.85Nからなる第3の窒化物半導体層15を成長させる。続いて、AlNからなる水素バリア膜16を形成する。
【0048】
次に、水素バリア膜16を選択的にエッチングすることにより、第3の窒化物半導体層15を露出する開口部を形成する。
【0049】
次に、窒素ガス(N2ガス)雰囲気において800℃の温度で20分〜60分程度の熱処理を行う。これにより、第3の窒化物半導体層15における開口部から露出した部分においては、Mgが活性化されp型の導電性を有するコントロール領域15aが形成される。なお、N2ガスに代えてアルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0050】
MOCVD法により窒化物半導体層を結晶成長させる際に、例えばp型の不純物としてMgを添加すると、窒化物半導体中にMgが導入される。しかし、窒化物半導体中に導入されたMgは、水素原子と結合した不活性な状態である。不活性ガス雰囲気において800℃の温度で20分〜60分程度の熱処理を行うと、Mgから水素原子が脱離するため、不純物が活性化されて窒化物半導体層はp型の導電性を示す。
【0051】
図4は、1×1019cm-3程度の濃度となるようにMgをドープしたAl0.15Ga0.85N層を熱処理した場合の熱処理温度と抵抗率との相関を示している。なお、熱処理は窒素雰囲気において20分間行った。図4に示すようにAlNからなる水素バリア膜がない場合には、熱処理温度が高くなるに従い、Al0.15Ga0.85N層の抵抗率が低下し、800℃付近においてほぼ一定となった。一方、AlNからなる水素バリア膜を設けた場合には、熱処理温度が高くなってもAl0.15Ga0.85N層の抵抗率はほぼ一定であった。これは、水素バリア膜を設けることにより、Mgから水素が脱離できなくなり、Mgが不活性な状態に保たれることを示している。
【0052】
本実施形態においては、Mgが導入された第3の窒化物半導体層15が、開口部を有する水素バリア膜16により覆われた状態で熱処理を行っている。このため、第3の窒化物半導体層15の開口部から露出した部分においては、Mgから水素原子が脱離して、p型の不純物が活性化される。しかし、第3の窒化物半導体層15の水素バリア膜16に覆われた部分においては、Mgから水素が脱離できないため、p型不純物が活性化されない。従って、p型不純物が活性化され、p型の導電性を有するコントロール領域15aと、p型不純物が活性化されておらず、高抵抗の高抵抗領域15bとを選択的に形成することができる。
【0053】
このように、本実施形態のトランジスタの製造方法によれば、窒化物半導体をエッチング加工することなく、p型のコントロール領域を局所的に形成でき、簡便なプロセスでダメージを与えることなくトランジスタのゲートを形成することができる。
【0054】
なお、高抵抗領域の抵抗値は、高い方が望ましいが、少なくともコントロール領域よりも高いことが必要であり、高抵抗領域とコントロール領域との抵抗率の差が4桁以上あることが好ましい。
【0055】
本実施形態においては、基板として主面が(111)面であるシリコン基板を用いたが、炭化硅素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)又はサファイア等からなる基板を用いてもよい。また、良好な結晶性を実現できる限り、主面はいかなる面方位でもよい。第2の窒化物半導体層14と第3の窒化物半導体層とは、Al組成が同一である必要はなく、第3の窒化物半導体層は、Alを含まないGaNであってもよい。第1の窒化物半導体層及び第2の窒化物半導体層がアンドープである例を説明したが、第2の窒化物半導体層がSi等のn型不純物を含んでいる場合にも同様の効果が得られる。
【0056】
水素バリア膜16をAlNとする例を示したが、AlNに代えて酸化アルミニウム(Al23)又は窒化硅素(SiN)等を用いてもよい。コントロール領域15aを形成した後の工程において、400℃以上の温度に曝される熱処理工程がない場合には、コントロール領域15aを形成した後に水素バリア膜16を除去してもよい。
【0057】
ゲート電極20をPdとする例を示したが、コントロール領域とオーミック接触させることができればよく、ニッケル等を用いてもよい。また、複数の金属材料からなる積層膜としてもよい。ソース電極18及びドレイン電極19を、チャネル領域と直接接するように形成する例を示したが、チャネル領域に対してオーミック接触を形成できれば、必ずしもチャネル領域と接している必要はない。
【0058】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図5は第2の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタの断面構成を示している。図5において図1と同一の構成要素には同一の符号を附すことにより説明を省略する。
【0059】
図5に示すように第2の実施形態のトランジスタは、高抵抗領域15bにおけるコントロール領域15aとドレイン電極19及びソース電極18との間の部分に、膜厚が薄い部分が形成されている。
【0060】
コントロール領域15aとドレイン電極19との間における高抵抗領域15bの抵抗値が高いほどゲートドレイン間のリーク電流を減少させることができる。高抵抗領域15bの抵抗値は、膜厚が薄いほど高くなる。このため、本実施形態のトランジスタは、コントロール領域15aとドレイン電極19との間の領域において、膜厚が約100nmとなるまで高抵抗領域15bをエッチングしている。
【0061】
図6は第2の実施形態におけるトランジスタのオフ耐圧特性を示している。図6においてゲート電圧は0Vとした。図6に示すように高抵抗領域15bの膜厚が薄い方がドレイン電圧を増加させた際のドレインリーク電流が小さく、トランジスタの耐圧特性が向上していることがわかる。
【0062】
本実施形態においては、コントロール領域とソース電極との間においても高抵抗領域の膜厚を薄くしたが、ゲートドレイン間のリーク電流を減少させ、耐圧を向上させるためには、少なくともコントロール領域とドレイン電極との間における高抵抗領域の膜厚を薄くすればよい。
【0063】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図7は第3の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタの断面構成を示している。図7において図5と同一の構成要素には同一の符号を附すことにより説明を省略する。
【0064】
図7に示すように本実施形態のトランジスタは、第3の窒化物半導体層15の上に、水素バリア膜ではなく水素を供給するための水素拡散膜17が形成されている。水素拡散膜17は、例えば、プラズマCVD法により堆積され、水素を1×1020個/cm3以上含む窒化硅素(SiN)を用いればよい。水素を含むSiN膜は、熱処理により水素を放出する。従って、第3の窒化物半導体層15の水素拡散膜17に覆われた部分には、不純物を選択的に活性化する熱処理の際に、水素拡散膜17から水素が供給される。このため、第3の窒化物半導体層15の水素拡散膜17に覆われた部分においては、不純物から水素が脱離せず、不純物が不活性な状態が保たれる。一方、第3の窒化物半導体層15の開口部から露出した部分においては、不純物が活性化されp型の導電性を有するコントロール領域15aを選択的に形成することができる。
【0065】
図8は、1×1019cm-3程度の濃度となるようにMgをドープしたAl0.15Ga0.85N層を熱処理した場合の熱処理温度と抵抗率との相関を示している。なお、熱処理は窒素雰囲気において20分間行った。図8に示すように水素を含むSiNからなる水素拡散膜を設けた場合には、熱処理温度を高くするとAl0.15Ga0.85N層の抵抗率が若干上昇している。これは、水素拡散膜から水素が供給されAl0.15Ga0.85N層中のMgと結合することによると考えられる。
【0066】
図9は、MgをドープしたAl0.15Ga0.85N層を水素拡散膜により被覆して熱処理した際の、水素拡散膜に含まれる水素濃度と、Al0.15Ga0.85N層の抵抗率との相関を示している。図9において熱処理温度は800℃とし、熱処理時間は20分とした。図9に示すように水素拡散膜に含まれる水素濃度を1×1020cm-3以上とすることにより、Mgの不活性化を促進し抵抗率を上昇させることができる。適切な濃度の水素を含むSiN膜は、プラズマCVD法を用いてSiN膜を形成する際の成膜条件を適切に設定することにより容易に形成することができる。
【0067】
なお、第2の実施形態と同様に高抵抗領域15bの一部の膜厚を薄くした例を示したが、第1の実施形態のように、高抵抗領域15bの膜厚を一定としてもよい。また、コントロール領域15aを形成した後の工程において、400℃以上の温度に曝される熱処理工程がない場合には、コントロール領域15aを形成した後に水素拡散膜17を除去してもよい。
【0068】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態について図面を参照して説明する。図10は第4の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタの断面構成を示している。図10において図7と同一の構成要素には同一の符号を附すことにより説明を省略する。
【0069】
図10に示すように第4の実施形態のトランジスタは、GaNからなる第1の窒化物半導体層13の膜厚を10nmとし、第1の窒化物半導体層の下に、厚さが1μmのアンドープのAl0.08Ga0.92Nからなる第4の窒化物半導体層21を備えている。
【0070】
図11は本実施形態のトランジスタのコントロール領域におけるエネルギーバンドを示している。図11に示すようにバンドギャップが大きいAlGaNからなる第4の窒化物半導体層21と第2の窒化物半導体層14との間に挟まれたているため、第1の窒化物半導体層13においてバンドギャップにくぼみが生じ、伝導帯及び価電子帯にポテンシャル井戸が生じている。
【0071】
本実施形態のトランジスタは、第1の窒化物半導体層13と第4の窒化物半導体層21との界面において、価電子帯にポテンシャル井戸が形成されている。このため、コントロール領域15aからチャネル領域に注入された正孔が、ポテンシャル井戸によって閉じ込められる。このため、チャネル領域に注入された正孔によるチャネル領域電流の増大をより効率よく行うことができる。
【0072】
図12はゲート電圧とドレイン電流との相関を示している。図12に示すように第4の窒化物半導体層21を設けることにより、閾値電圧が約2Vとなり、ゲート電極に5V以上の正バイアスを印加しても顕著なゲートリーク電流は流れず、400mA/mm程度の最大ドレイン電流が得られた。
【0073】
本実施形態において、第2の窒化物半導体層と第4の窒化物半導体層とのAl組成比は、特に限定されないが、第2の窒化物半導体層のAl組成比を第4の窒化物半導体層のAl組成比よりも高くした方が、チャネル領域のキャリア濃度を高くするという観点からは好ましい。また、チャネル領域内の電子の濃度は第4の窒化物半導体層21と第2の窒化物半導体層14との自発分極量の差と等しくなる。従って、第4の窒化物半導体層21を第2の窒化物半導体層と同一のAl組成とすれば、コントロール領域にバイアスを印加しない場合にチャネル領域内の平均電子濃度をほぼゼロとすることが可能となる。これにより、コントロール領域からチャネル領域に注入された正孔の量に応じてチャネル領域の電流を増大させることが可能となる。
【0074】
なお、図10には水素拡散膜を設ける例を示しているが、水素バリア膜を設けた場合にも同様の効果が得られる。
【0075】
(第5の実施形態)
以下に、本発明の第5の実施形態について図面を参照して説明する。図13は第5の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタの断面構成を示している。図13において図7と同一の構成要素には同一の符号を附すことにより説明を省略する。
【0076】
図13に示すように本実施形態のトランジスタはソース電極18が基板11の裏面に引き出されている。高抵抗領域15b、第2の窒化物半導体層14、第1の窒化物半導体層13、バッファ層12を貫通し、シリコンからなる基板11の一部をエッチングするように形成されたビアホールに導電性材料が埋め込まれてビアプラグ23が形成されている。ビアホールの底面である基板11の上にはAl等からなるビアホールメタル膜24が形成されており、基板11とビアプラグ23とはオーミック接触している。
【0077】
ビアプラグ23とソース電極18とは、トランジスタの上面を覆うSiNからなるパッシベーション膜25を貫通して形成されたメタル配線26により電気的に接続されている。基板11の裏面には、AuGeSb、Cr、NiCr及びNiの積層膜等からなる裏面電極27が形成されており、ソース電極18は、基板11の裏面から接地することができる。
【0078】
図13には第3の実施形態のトランジスタについてソース電極を基板の裏面に引き出す例を示したが、他の実施形態のトランジスタについても同様にしてソース電極を基板の裏面に引き出すことができる。
【0079】
なお、各実施形態においてノーマリオフ型のトランジスタについて説明を行ったが、コントロール領域におけるp型不純物の濃度並びに第2の窒化物半導体層となるAlGaN層の膜厚及びAl組成等を調整することによりノーマリオン型のトランジスタを形成することも可能である。ノーマリオン型のトランジスタにおいてもコントロール領域からチャネル領域に正孔が注入され、動作電流を増大させることが可能となるばかりでなく、ゲート電極に5V以上の大きな正バイアスを印加することが可能となり、窒化物半導体トランジスタのゲート駆動回路の設計が容易となる等の大きな効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る窒化物半導体トランジスタ及びその製造方法は、動作電流が大きく且つスイッチング特性に優れたノーマリオフ化することが容易な窒化物半導体トランジスタを実現でき、例えば、高耐圧パワートランジスタ等の窒化物半導体トランジスタ及びその製造方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタを示す断面図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタのエネルギーバンド構造を示し、(a)はコントロール領域であり、(b)はコントロール領域以外の素子領域の及びコントロール領域である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタの特性を示し、(a)はドレイン電流とゲート電圧との相関を示すグラフであり、(b)はドレイン電流とドレイン電圧との相関を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタにおけるp型不純物を含む窒化物半導体層の抵抗率と熱処理温度との相関を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタを示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタにおけるドレイン電流とドレイン電圧との相関を示すグラフである。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタを示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタにおけるp型不純物を含む窒化物半導体層の抵抗率と熱処理温度との相関を示すグラフである。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタにおけるp型不純物を含む窒化物半導体層の抵抗率と水素拡散膜の水素濃度との相関を示すグラフである。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタを示す断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタのエネルギーバンド構造を示すバンド図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタにおけるドレイン電流とゲート電圧との相関を示すグラフである。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る窒化物半導体トランジスタを示す断面図である。
【図14】従来例に係る窒化物半導体トランジスタを示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
11 基板
12 バッファ層
13 第1の窒化物半導体層
14 第2の窒化物半導体層
15 第3の窒化物半導体層
15a コントロール領域
15b 高抵抗領域
16 水素バリア膜
17 水素拡散膜
18 ソース電極
19 ドレイン電極
20 ゲート電極
21 第4の窒化物半導体層
23 ビアプラグ
24 ビアホールメタル膜
25 パッシベーション膜
26 メタル配線
27 裏面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成された第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上に形成され、前記第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層の上に形成された第3の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層における前記第2の窒化物半導体層との界面領域に生成されたチャネル領域と電気的に接続されると共に、互いに間隔をおいて形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記第3の窒化物半導体層の上における前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に形成されたゲート電極とを備え、
前記第3の窒化物半導体層は、前記ゲート電極の下側の領域に形成され、p型の導電性を有するコントロール領域と、少なくとも前記コントロール領域と前記ソース電極との間及び前記コントロール領域と前記ドレイン電極との間の領域に形成され、前記コントロール領域よりも抵抗値が高い高抵抗領域とを含むことを特徴とする窒化物半導体トランジスタ。
【請求項2】
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電気伝導度の大きさは、前記チャネル領域に対して順方向のバイアス電圧を前記コントロール領域に印加して、前記チャネル領域に正孔を注入することにより制御されることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項3】
前記第3の窒化物半導体層は、p型不純物を含み、
前記p型不純物は、前記コントロール領域においては活性化されており、前記高抵抗領域においては水素と結合した不活性な状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項4】
前記高抵抗領域における少なくとも前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の領域には、前記コントロール領域よりも膜厚が薄い部分が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項5】
前記コントロール領域に含まれる正孔の数が、前記第3の半導体層を形成する前に前記第1の窒化物半導体層と前記第2の窒化物半導体層との界面領域に生成される2次元電子ガスの電子の数よりも多いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項6】
前記第3の窒化物半導体層の上に形成され、前記第3の窒化物半導体層が加熱された際に、前記高抵抗領域から水素が脱離することを防ぐ水素バリア膜をさらに備え、
前記水素バリア膜は、前記コントロール領域の少なくとも一部を露出する開口部を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項7】
前記水素バリア膜は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム又は窒化シリコンからなることを特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項8】
前記第3の窒化物半導体層の上に形成され、前記第3の窒化物半導体層が加熱された際に、前記高抵抗領域に水素を供給する水素拡散膜をさらに備え、
前記水素拡散膜は、少なくとも前記コントロール領域を露出する開口部を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項9】
前記水素拡散膜は、水素を1×1020個/cm3以上含むシリコン窒化膜であることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項10】
前記第1の窒化物半導体層は、GaNからなり、
前記第2の窒化物半導体層は、AlxGa1-xN(0<x≦1)からなり、
前記第3の窒化物半導体層は、AlyGa1-yN(0≦y≦1)からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項11】
前記基板と前記第1の窒化物半導体層との間に形成され、前記第1の窒化物半導体層に対して価電子帯にポテンシャル障壁を形成する材料からなる第4の窒化物半導体層をさらに備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項12】
前記第1の窒化物半導体層は、GaNからなり、
前記第2の窒化物半導体層は、AlxGa1-xN(0<x≦1)からなり、
前記第3の窒化物半導体層は、AlyGa1-yN(0≦y≦1)からなり、
前記第4の窒化物半導体層は、AlzGa1-zN(0<z≦1)からなることを特徴とする請求項11に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項13】
前記ソース電極及びドレイン電極は、前記第3の窒化物半導体層及び第2の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層と接していることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の窒化物半導体トランジスタ。
【請求項14】
基板の上に第1の窒化物半導体層及び該第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層を下側から順次形成する工程(a)と、
前記第2の窒化物半導体層の上に、水素と結合したp型不純物を含む第3の窒化物半導体層を形成する工程(b)と、
前記第3の窒化物半導体層の一部において、前記p型不純物から水素を脱離させることにより、p型の導電性を有するコントロール領域を形成する工程(c)と、
前記コントロール領域の上にゲート電極を形成する工程(d)と、
前記ゲート電極の両側に、前記第1の窒化物半導体層と前記第2の窒化物半導体層との界面領域に生成するチャネル領域と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極を形成する工程(e)とを備えていることを特徴とする窒化物半導体トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記工程(c)は、
前記第3の窒化物半導体層の上に、水素の透過を防止する水素バリア膜を形成した後、前記コントロール領域を形成する位置に開口部を形成する工程(c1)と、
前記工程(c1)よりも後に、前記第3の窒化物半導体層を熱処理する工程(c2)とを含むことを特徴とする請求項14に記載の窒化物半導体トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記水素バリア膜は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム又は窒化シリコンからなることを特徴とする請求項15に記載の窒化物半導体トランジスタの製造方法。
【請求項17】
前記工程(c)は、
前記第3の窒化物半導体層の上に、加熱により水素を脱離する水素拡散膜を形成した後、前記コントロール領域を形成する位置に開口部を形成する工程(c1)と、
前記工程よりも後に、前記第3の窒化物半導体層を熱処理する工程(c2)とを含むことを特徴とする請求項14に記載の窒化物半導体トランジスタの製造方法。
【請求項18】
前記水素拡散膜は、水素を1×1020個/cm3以上含むシリコン窒化膜であることを特徴とする請求項17に記載の窒化物半導体トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−98434(P2008−98434A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278913(P2006−278913)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】