説明

筒型防振組付体

【課題】ゴムストッパの軸部材に対する優れた組付性と、ゴムストッパの軸部材からの脱落防止とが、より有利に図られ得る筒型防振組付体を提供する。
【解決手段】外筒部材16に対して、内挿状態で、本体ゴム弾性体18にて連結された軸部材14の一端部に、筒状又はリング状のゴムストッパ12を外挿すると共に、該軸部材14の一端部への該ゴムストッパ12の外挿部位の内周面に対して、該軸部材14の一端部とは反対側の他端部の側から該一端部の側に向かって傾斜して突出する返り凸部36を一体形成し、そして、かかる返り凸部36を、該ゴムストッパ12の内周面と該軸部材14の一端部の外周面との間に、圧縮変形状態で位置せしめて、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型防振組付体に係り、特に、自動車のデフマウントやメンバマウント、ボデーマウント等の筒型防振装置にストッパゴムが組み付けられてなる筒型防振組付体の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、振動伝達系を構成する第一の部材と第二の部材との間に介装されて、それら二つの部材を連結する防振連結体の一種として、軸部材と、かかる軸部材の周りに径方向外方に離間して配置された外筒部材とが、それらの間に介装された本体ゴム弾性体にて連結されてなる筒型防振装置がある。このような筒型防振装置は、通常、軸部材が、第一の部材に固定される一方、外筒部材が、第二の部材に対して、それに設けられた装着孔内に圧入されることにより固定されて、軸部材と外筒部材との間に軸方向や軸直角方向において入力される振動荷重(振動)が、本体ゴム弾性体の弾性変形によって吸収されるようになっている。そして、かかる筒型防振装置は、自動車等の車両において、例えば、デフマウントやメンバマウント、ボデーマウント等として、好適に使用されている。
【0003】
ところで、かくの如き構造を有する筒型防振装置の多くのものには、大きな振動荷重が軸方向に入力された際に、軸部材と外筒部材の軸方向における相対的変位量を規制して、本体ゴム弾性体の過大な変形を防止するストッパ手段が、本体ゴム弾性体の耐久性の向上等を目的として、取り付けられる。このストッパ手段としては各種のものがあり、その中の一種として、筒型防振装置とは別個のゴム弾性体からなり、筒型防振装置の軸方向一端側に組み付けられるゴムストッパが、知られている。そして、このようなゴムストッパが用いられる場合には、筒型防振装置が、かかるゴムストッパが組み付けられてなる筒型防振組付体として、構成されているのである。
【0004】
この筒型防振装置に組み付けられるゴムストッパは、通常、円筒状乃至は円環状や円板状等のリング状の全体形状を有し、筒型防振装置の軸部材の一端部に外挿されて、筒型防振装置に組み付けられている。そして、軸部材が、ストッパゴムの外挿側の軸方向一端側に、外筒部材に対して過大に相対変位したときに、第二の部材や外筒部材が、ストッパゴムを介して、第一の部材に当接することにより、軸部材と外筒部材の軸方向一端側への相対的変位が弾性的に規制されるようになっている。なお、軸部材と外筒部材の軸方向他端側への相対的変位は、通常、筒型防振装置の軸方向他端側に位置する外筒部材の端部外周面に周設された外フランジ部が、そこに本体ゴム弾性体と一体に形成されるストッパゴム部を介して、第一の部材に当接することで、規制されるようになっている。
【0005】
このような構造を有する筒型防振組付体は、一般に、筒型防振装置とゴムストッパとが組み付けられた状態で、車両の組立工場に搬送されて、車両に装着されるのであるが、単に、ゴムストッパが、軸部材に対して外挿されているだけであるため、搬送の途中で、ゴムストッパが、筒型防振装置から脱落する恐れがあった。
【0006】
そこで、従来では、軸部材の一端部の外周面に、前記本体ゴム弾性体と一体で形成されたゴム膜が一定の厚さで固着されて、このゴム膜に対して、係合凸部や係合凹部が形成されている。そして、ゴムストッパが軸部材の一端部に外挿される際に、ゴムストッパが、軸部材の一端部に設けられたゴム膜の係合凸部や係合凹部の側壁部を乗り越えて、軸部材の他端部側に向けて位置された係合凸部や係合凹部の側面に係合することによって、ゴムストッパを軸部材に接着する面倒な作業を行うことなく、ゴムストッパの軸部材からの脱落が阻止されるようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0007】
ところが、このような脱落阻止構造が付与された従来の筒型防振組付体にあっては、ゴムストッパの軸部材からの脱落を確実に防止するために、係合凸部の高さや係合凹部の深さを、ある程度大きくする必要があるが、そうすると、ゴムストッパの軸部材に対する外挿が困難となって、ゴムストッパの軸部材への組付性が損なわれてしまうといった問題が生ずる。また、係合凸部や係合凹部を備えたゴム膜は、本体ゴム弾性体が射出成形等の金型成形により軸部材に一体成形される際に、本体ゴム弾性体と一体で形成される。そのため、本体ゴム弾性体の金型成形時の離型方向が、軸部材の軸方向と同一方向であると、係合凸部や係合凹部の側壁部が不可避的にアンダーカットとなって、離型性を損ねるものとなり、その上、そのような係合凸部や係合凹部の側壁部の高さの高いものであると、離型性が更に悪化するといった懸念があったのである。
【0008】
また、本体ゴム弾性体の成形性と軸部材に対するゴムストッパの組付性とを考慮して、軸部材の外周面には、凹凸部を有するゴム膜を何等設けることなく、ゴムストッパの内周面のみに対して、ゴムストッパの軸部材に対する外挿時に、ゴムストッパの外挿方向とは逆方向に屈曲変形する突起部を設けてなる筒型防振組付体も、提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。この筒型防振組付体では、ゴムストッパが、軸部材への外挿方向とは反対側の方向に向かって、軸部材に対して相対移動させられたときに、突起部が、その突出方向において縮み変形し、その復元力に基づいて、ゴムストッパと軸部材との間の摩擦抵抗(摺動抵抗)が上昇させられるようになっている。
【0009】
しかしながら、かかる従来の筒型防振組付体にあっては、ゴムストッパの軸部材に対する外挿下において、突起部が、ゴムストッパの内孔内から外側に飛び出して、単に、軸部材の外周面に接触しただけの状態となっているところから、ゴムストッパの軸部材に対する外挿方向とは反対側への相対移動時に、突起部が、突出方向での縮み変形量の増大に伴って、ゴムストッパの径方向外方に膨出してしまい、そのために、突起部の突出方向での縮み変形に伴って生ずる復元力を十分に得ることが出来なかった。それ故、そのような突起部の縮み変形状態からの復元力に基づいて発揮されるゴムストッパと軸部材との間の摩擦抵抗が不十分なものとなってしまうことが避けられず、従って、そのような突起部によって、ゴムストッパの軸部材からの抜出しを十分に阻止することは、到底、困難であったのである。
【0010】
【特許文献1】特開2000−205323号公報
【特許文献2】特開平9−196095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、ゴムストッパが軸部材の一端部に外挿されて、組み付けられてなる筒型防振組付体において、ゴムストッパの軸部材に対する組付性の向上と、ゴムストッパの軸部材からの脱落防止とが、より有利に図られ得るように改良された構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明にあっては、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0013】
(1) 第一の部材に固定される軸部材と、該第一の部材と防振連結されるべき第二の部材に固定される、該軸部材の径方向外方に離間して配置された外筒部材とを本体ゴム弾性体にて連結してなる筒型防振装置の該軸部材の一端部に、筒状又はリング状のゴムストッパを外挿して、組み付けてなる筒型防振組付体であって、
前記軸部材の一端部への前記ゴムストッパの外挿部位の内周面に対して、該軸部材の一端部とは反対側の他端部の側から該一端部の側に向かって傾斜して突出する返り凸部が一体形成されて、かかる返り凸部が、該ゴムストッパの内周面と該軸部材の一端部の外周面との間に、圧縮変形状態で位置せしめられていることを特徴とする筒型防振組付体。
【0014】
(2) 前記返り凸部が、前記軸部材の一端部への前記ゴムストッパの外挿部位の内周面に対して、その全周に亘って周方向に連続して延びるように一体形成されている上記態様(1)に記載の筒型防振組付体。
【0015】
(3) 前記ゴムストッパの前記返り凸部の形成部位の内部に、剛性の補強部材が埋設されて、該返り凸部が、該補強部材と前記軸部材の一端部との間で挟圧されている上記態様(1)又は(2)に記載の筒型防振組付体。
【発明の効果】
【0016】
要するに、本発明に従う筒型防振組付体にあっては、軸部材の一端部へのゴムストッパの外挿部位の内周面に設けられた返り凸部が、軸部材の他端部側から一端部側に向かって、つまり軸部材の一端部へのゴムストッパの外挿方向とは反対側に向かって、斜めに突出している。そのため、ゴムストッパの軸部材の一端部への外挿時に、返り凸部が、ゴムストッパの外挿方向とは反対側に位置する側面部分をゴムストッパの内周面に接近乃至は接触させる側に倒れ込むように変形させられる。それ故、ゴムストッパを軸部材に外挿するのに、返り凸部が大きな障害となることもなく、ゴムストッパが、軸部材の一端部に対して、スムーズに且つ容易に外挿され得る。
【0017】
しかも、本発明に係る筒型防振組付体では、ゴムストッパの軸部材に対する外挿状態下で、軸部材の一端部へのゴムストッパの外挿方向とは反対側、つまり軸部材の一端部側からのゴムストッパの抜出し方向に向かって傾斜して、突出する返り凸部が、ゴムストッパの内周面と軸部材の一端部の外周面との間に、圧縮変形状態で位置せしめられている。このため、ゴムストッパが、軸部材の一端部側からの抜出し方向に向かって、軸部材に対して相対移動させられたときに、軸部材から返り凸部に対して、それを、軸部材の一端部側からのゴムストッパの抜出し方向とは反対側の方向に反り返らせる作用力、換言すれば、返り凸部を、その基部を回動中心として、軸部材の一端部側からのゴムストッパの抜出し方向とは反対側の方向に回動させるような作用力が加えられる。それ故、ゴムストッパが、軸部材に対して、その一端部側からの抜出し方向に相対移動せしめられる際に、かかるゴムストッパの移動量の増加によって、外周面とゴムストッパの内周面との間で圧縮変形された返り凸部の圧縮量が、徐々に増していくようになる。
【0018】
かくして、本発明の筒型防振組付体においては、ゴムストッパと軸部材との相対移動時に、ゴムストッパの径方向外方への膨出が許容された状態で縮み変形される突起部がゴムストッパに形成された従来品とは異なって、ゴムストッパが、軸部材に対して、その一端部側からの抜出し方向に向かって相対移動したときに、返り凸部の圧縮量の増加に伴って、返り凸部の圧縮変形状態からの復元力が増大し、その結果、かかる復元力に基づいて、ゴムストッパと軸部材との間に、より大きな摩擦抵抗が生ぜしめられるようになる。
【0019】
従って、かくの如き本発明に従う筒型防振組付体にあっては、ゴムストッパの軸部材に対する組付性が、極めて効果的に高められ得ると共に、軸部材の一端部側からのゴムストッパの脱落が、より有利に且つ確実に防止され得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0021】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する筒型防振組付体の一実施形態として、自動車のディファレンシャルを車体に対して防振連結する筒型防振組付体が、その縦断面において、概略的に示されている。かかる図から明らかなように、本実施形態の筒型防振組付体は、筒型防振装置としてのデフマウント10と、このデフマウント10に組み付けられたゴムストッパ12とを有して、構成されている。
【0022】
この本実施形態の筒型防振組付体を構成するデフマウント10は、図1及び図2から明らかなように、軸部材としての内筒金具14と、外筒部材としての外筒金具16とが、前者を後者に内挿した状態で、互いに径方向に所定距離を隔てて配置されると共に、それらの間に本体ゴム弾性体18が介装されて、内外筒金具14,16が互いに弾性的に連結されてなる、公知の構造を有している。
【0023】
そして、従来と同様に、外筒金具16が、第二の部材たる車体側又はディファレンシャル側(本実施形態では、車体側)の筒状固定部20(図1に二点鎖線で示す)に対して、圧入状態で固定されている。一方、内筒金具14は、その内孔22内に挿通された、第一の部材たるディファレンシャル側又は車体側(本実施形態では、ディファレンシャル側)の取付部材24(図1に二点鎖線で示す)に立設される固定ボルト(スタッドボルト)26(図1に二点鎖線で示す)にて固定されている。これによって、デフマウント10が、ディファレンシャルと車体との間に介在して、装着されて、ディファレンシャルを車体に防振連結し得るようになっている。そうして、かかる装着状態下で、デフマウント10には、内外筒金具14,16間に、主たる振動荷重が、図1及び図2中の上下方向となる軸方向に入力されるようになっている。なお、以下からは、便宜上、デフマウント10によるディファレンシャルの車体への防振連結状態下で、内筒金具14の内孔22内に固定ボルト26を挿通する側(図1及び図2中の上側)を上方側と言い、取付部材24が位置する側(図1及び図2中の下側)を下方側と言うこととする。
【0024】
ところで、内筒金具14は、略厚肉の円筒形状を有している。また、外筒金具16は、内筒金具14よりも大なる径と十分に小さな軸方向長さとを有する薄肉の円筒形状を呈している。この外筒金具16の下端部には、径方向外方に所定高さ突出し、且つ全周に亘って周方向に連続して延びる外フランジ部28が、一体的に設けられている。そして、かかる内筒金具14が、その上端側部分と下端側部分とを、外筒金具16の上側開口部と下側開口部とを通じて、上方と下方とにそれぞれ突出させた状態で、外筒金具16に対して同軸的に内挿配置されている。
【0025】
そして、それら内筒金具14と外筒金具16との間には、全体として、略厚肉の円筒形状を有する本体ゴム弾性体18が介装されて、この本体ゴム弾性体18の内周面に内筒金具14が、その外周面に外筒金具16が、それぞれ加硫接着されている。かくして、デフマウント10が、本体ゴム弾性体18の内外周面に内筒金具14と外筒金具16とが加硫接着された一体加硫成形品として構成されているのである。
【0026】
また、外筒金具16の下端部に一体形成された外フランジ部28の下端面には、本体ゴム弾性体18に一体形成されたストッパゴム部30が、加硫接着されている。更に、外筒金具16の外フランジ部28は、ストッパゴム部30の加硫接着側とは反対側の上端面において、外筒金具16が固定される前記筒状固定部20の上端面に接触している。
【0027】
そして、外筒金具16の上側開口部から上方に突出した内筒金具14の上端部には、筒状のゴムストッパ12が、外挿されて、組み付けられている。なお、内筒金具14の上端部へのゴムストッパ12の組付前の状態を示す図2から明らかなように、ゴムストッパ12は、内筒金具14の上端部に対して、図2の白抜きの矢印で示されるように、内筒金具14の上端側から外挿されて、組み付けられている。
【0028】
また、図1に示されるように、ゴムストッパ12は、内筒金具14への組付状態下で、下端面が、筒状固定部20の上端面に接触し、また、上端面が、内筒金具14を固定する固定ボルト26に外挿された略厚肉円板状のストッパ金具32の下面に接触している。
【0029】
かくして、内筒金具14の上端部に外挿されたゴムストッパ12が、筒状固定部20とストッパ金具32との間に介装されている。そして、ストッパ金具32よりも上方で固定ボルト26に螺合されるナット34の締付けにより、ゴムストッパ12が、筒状固定部20とストッパ金具32との間で挟圧されて、圧縮変形させられている。また、ナット34の締付け力に基づいて、内筒金具14が、取付部材24とストッパ金具32との間で挟圧された状態で、取付部材24に固定されている。そして、そのような内筒金具14の取付部材24への固定状態下で、取付部材24の上面と外筒金具16の外フランジ部28の下端面との間に、ストッパゴム部30が、介装配置されている。
【0030】
これによって、本実施形態の筒型防振組付体によるディファレンシャルの車体への防振連結状態下で、内外筒金具14,16間に軸方向の振動荷重が入力された際に、本体ゴム弾性体18が剪断変形せしめられると同時に、振動荷重の入力方向に応じて、ゴムストッパ12とストッパゴム層30の何れか一方が弾性的に圧縮変形せしめられるようになっている。そうして、内外筒金具14,16間に入力される軸方向の振動荷重が、本体ゴム弾性体18の剪断変形とゴムストッパ12及びストッパゴム層30の圧縮変形との協働作用により有効に吸収され得るようになっている。
【0031】
また、内外筒金具14,16間に軸方向の大きな振動荷重が入力されて、内筒金具14が、外筒金具16に対して、軸方向の下方側に過大に相対変位せしめられた際には、ゴムストッパ12の圧縮変形量が限界値に達した時点で、かかる内外筒金具14,16の過大変位が阻止される一方、内筒金具14が、外筒金具16に対して、軸方向の上方側に過大に相対変形せしめられた際には、ストッパゴム部30の圧縮変形量が限界値に達した時点で、かかる内外筒金具14,16の過大変位が阻止される。その結果、内外筒金具14,16間への軸方向の大振動荷重の入力時に、本体ゴム弾性体18の弾性変形量が制限されて、その破断や損傷の発生が未然に防止され得るようになっている。
【0032】
ところで、本実施形態の筒型防振組付体においては、内筒金具14の上端部に外挿されて、組み付けられるゴムストッパ12が、従来には見られない特別な構造を有している。
【0033】
より具体的には、ゴムストッパ12は、図1及び図2に示されるように、全体として、デフマウント10よりも十分に高さの低い厚肉円筒形状を有しており、その内径が、内筒金具14の外径よりも所定寸法だけ大なる大きさとされている。このゴムストッパ12は、外筒金具16の上端部に外挿された状態下で、下端側部分の内周面が、外筒金具16の上端部の外周側に、その外周面と対向して、離間位置せしめられている。
【0034】
そして、図1乃至図3から明らかなように、かかるゴムストッパ12の下端部の内周面に対して、径方向内方に突出する返り凸部36が、上方に向かって傾斜して延びるように一体形成されている。つまり、返り凸部36が、ゴムストッパ12の内筒金具14への外挿部位の内周面から、内筒金具14の上端部へのゴムストッパ12の外挿方向(図2中の白抜き矢印や図3中の矢印Aにて示される方向)とは反対側の方向に向かって傾斜して、所謂返りの形態をもって、突出している。換言すれば、図1に示されるように、内筒金具14の上端部へのゴムストッパ14の外挿状態下で、ゴムストッパ12の内周面の下端部に設けられた返り凸部36が、内筒金具14の、ゴムストッパ12が外挿される上端部側とは反対の下端部側から、ゴムストッパ12が外挿される上端側に向かって傾斜して、突出している。また、この返り凸部36は、ゴムストッパ12の内筒金具14への外挿前及び外挿後の何れにおいても、ゴムストッパ12の内孔45の上側開口部や下側開口部を通じて、内孔45の外側に部分的に飛び出すことなく、全体が、内孔45の内側に位置せしめられている。
【0035】
そして、本実施形態では、そのような返り凸部36が、ゴムストッパ12の内周面の下端部に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延出せしめられている。これによって、返り凸部36の全体形状が、上方に向かって次第に小径化するテーパ筒形状とされている。そして、そのようなテーパ筒状の返り凸部36の外周面が、その内周面よりも上側に位置する上側テーパ面38とされている一方、かかる返り凸部36の内周面が、その外周面よりも下側に位置する下側テーパ面40とされている。
【0036】
また、ゴムストッパ12の形成部位たるゴムストッパ12の下端部の内部には、剛性の補強部材としての補強リング42が、埋設されている。この補強リング42は、厚肉円環状の金属板からなっている。換言すれば、ここでは、補強リング42の内周面と外周面と下端面とが、ゴムストッパ12に一体で形成されたゴム膜44にて被覆された状態で、ゴムストッパ12の下端面に加硫接着されている。そして、この補強リング42の内周面を被覆するゴム膜44部分の内周面に、前記せる如き構造を有するテーパ筒状の返り凸部36が、一体形成されているのである。
【0037】
そして、そのような構造とされたゴムストッパ12が、内筒金具14の上端部に外挿されて、組み付けられた状態下で、図1及び図4に示されるように、ゴムストッパ12の下端部の内周面に一体形成された返り凸部36が、補強リング42を被覆するゴム膜44の内周面に、上側テーパ面38を接近させる側に倒れ込み、且つかかるゴム膜44及び補強リング42と内筒金具14の上端部との間で圧縮変形せしめられた状態で、ゴムストッパ12の内周面と内筒金具14の上端部の外周面との間に位置せしめられているのである。また、その際、返り凸部36が、内筒金具14の上端部の外周面に対して、それとの間に何等の介在物もなしに、直接に接触した状態となる。
【0038】
それ故、本実施形態の筒型防振組付体にあっては、ゴムストッパ12が、内筒金具14に対して、その上端部から上方に抜け出す方向に相対移動したときに、図4に二点差線で示される如く、内筒金具14の外周面と、それに接触する返り凸部36の下側テーパ面40との間の摺動抵抗により、返り凸部36が下側に捲られるようにして、返り凸部36の上側テーパ面38がゴムストッパ12の内周面から離間させられつつ、下側テーパ面40の内筒金具14の外周面との接触面積が増加せしめられることによって、それらゴムストッパ12の内周面と内筒金具14の外周面との間で返り凸部36を押し縮めるような作用力が、返り凸部36に加えられる。以て、内筒金具14から上方に抜け出す方向へのゴムストッパ12の相対移動量の増加に伴って、ゴムストッパ12の内周面と内筒金具14の外周面との間で圧縮変形された返り凸部36の圧縮変形量が、徐々に増していくようになる。
【0039】
かくして、かかる筒型防振組付体では、ゴムストッパ12が、内筒金具14に対して、その上端部から上方に抜け出す方向に向かって相対移動したときに、返り凸部36の圧縮変形量の増加に伴って、返り凸部36の圧縮変形状態からの復元力が増大し、その結果、そのような大きな復元力に基づいて、ゴムストッパ12と内筒金具14との間に、より大きな摩擦抵抗が生ぜしめられるようになる。
【0040】
従って、かくの如き本実施形態の筒型防振組付体にあっては、内筒金具14の上端部から上方へのゴムストッパ12の脱落が、より有利に且つ確実に防止され得るのである。
【0041】
しかも、かかる筒型防振組付体では、返り凸部36が、ゴムストッパ12における補強リング42の埋設部分たる下端部に設けられている。換言すれば、ゴムストッパ12の下端面に固着された補強リング42の内外周面を被覆するゴム膜44の内周面に、返り凸部36が一体形成されている。それ故、内筒金具14に対して、その上端部から上方に抜け出す方向に向かって相対移動したときに、返り凸部36が、内筒金具14の外周面と剛性の補強リング42の内周面との間で、より確実に且つ十分に圧縮変形させられる。従って、ゴムストッパ12が、内筒金具14に対して、その上端部から上方に抜け出す方向に向かって相対移動したときに、かかる返り凸部36の圧縮変形状態からの復元力が、より十分に発揮され、その結果として、内筒金具14の上端部から上方へのゴムストッパ12の脱落が、更に一層確実に防止され得るのである。
【0042】
また、本実施形態においては、返り凸部36が、テーパ筒形状を有し、ゴムストッパ12の内周面に対して、その全周に亘って連続して延びるように形成されている。このため、例えば、返り凸部が、ゴムストッパ12の内周面に対して、周方向の複数箇所で分断されつつ、周方向に延びるように設けられる場合、つまり、周方向に所定距離を隔てて複数設けられる場合に比して、返り凸部36の内筒金具14の外周面に対する接触面積が、より大きく為され得る。その結果、返り凸部36の圧縮変形状態からの復元力に基づいて、返り凸部36と内筒金具14の外周面との間に生ずる摩擦抵抗も、より十分に大きくされ得る。これによっても、内筒金具14の上端部から上方へのゴムストッパ12の脱落が、更に一層確実に防止され得るのである。
【0043】
そして、本実施形態の筒型防振組付体にあっては、返り凸部36が、上方に向かうに従って次第に小径となるテーパ筒形状を有して、内筒金具14の上端部に対する上端側からの外挿方向とは反対側の方向に向かって斜めに突出している。そのため、ゴムストッパ12の内筒金具14の上端部への外挿時に、テーパ筒状の返り凸部36が、ゴムストッパ12の外挿方向とは反対側に位置する上側テーパ面38をゴムストッパ12の内周面に接近させる側に倒れ込むように変形させられる。それ故、ゴムストッパ12を内筒金具12に外挿するのに、返り凸部36が大きな障害となることもなく、ゴムストッパ12が、内筒金具12の上端部に対して、スムーズに且つ容易に外挿され得る。その結果として、ゴムストッパ12の内筒金具14に対する組付性、ひいては筒型防振組付体の製作性が、極めて効果的に高められ得ることとなるのである。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態に関する具体的な記載によって、何等限定的に解釈されるものではない。
【0045】
返り凸部は、軸部材の一端部に対するゴムストッパの外挿部位の内周面に設けられておれば、その具体的位置が、何等限定されるものではない。つまり、ゴムストッパが外挿される軸部材の一端部の外周面に対して対向位置するゴムストッパの内周面部分であれば、かかる内周面部分の端部や中間部の何れの箇所に、返り凸部が設けられていても良いのである。
【0046】
また、前記実施形態では、返り凸部36が、上方に向かって次第に小径となるテーパ筒形状の全体形状を呈し、ゴムストッパの内周面に対して、その全周に亘って周方向に連続して延びるように設けられていたが、例えば、返り凸部を、例示のテーパ筒形状を周方向の複数箇所で分割乃至は分断してなる分割テーパ筒体形状として、ゴムストッパの内周面に対して、周方向に互いに所定間隔をおいて位置するように形成することも出来る。或いは、返り凸部を、軸部材の一端部とは反対側の他端部の側から、かかる一端部の側に向かって傾斜して突出する棒状体や板状体にて構成して、ゴムストッパの内周面に対して、周方向に互いに所定間隔をおいて位置するように形成することも可能である。
【0047】
さらに、軸部材たる内筒金具14に対して、ゴムストッパ12が外挿されて、組み付けられるものであれば、内筒金具14に対するゴムストッパ12の組付構造は、前記実施形態に示されるものに、何等限定されるものではない。また、筒型防振組付体の車体側やディファレンシャル側の固定部材に対する固定構造も、例示のものに、特に限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
【0048】
加えて、本実施形態では、本発明を、自動車用デフマウントにゴムストッパが組み付けられてなる筒型防振組付体に適用したものの具体例を示したが、本発明は、自動車用のメンバマウントやボデーマウント等の筒型防振装置、或いは自動車用以外の筒型防振装置に対して、ゴムストッパが組み付けられてなる筒型防振組付体の何れに対しても有利に適用され得ることは、勿論である。
【0049】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に従う構造を有する筒型防振組付体の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示される筒型防振組付体の、筒型防振装置とゴムストッパとを組み付ける前の状態を示す縦断面説明図である。
【図3】図2における III部拡大説明図である。
【図4】図1におけるIV部拡大説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 デフマウント 12 ゴムストッパ
14 内筒金具 16 外筒金具
18 本体ゴム弾性体 20 筒状固定部
24 取付部材 36 返り凸部
42 補強リング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材に固定される軸部材と、該第一の部材と防振連結されるべき第二の部材に固定される、該軸部材の周りに径方向外方に離間して配置された外筒部材とを本体ゴム弾性体にて連結してなる筒型防振装置の該軸部材の一端部に、筒状又はリング状のゴムストッパを外挿して、組み付けてなる筒型防振組付体であって、
前記軸部材の一端部への前記ゴムストッパの外挿部位の内周面に対して、該軸部材の一端部とは反対側の他端部の側から該一端部の側に向かって傾斜して突出する返り凸部が一体形成されて、かかる返り凸部が、該ゴムストッパの内周面と該軸部材の一端部の外周面との間に、圧縮変形状態で位置せしめられていることを特徴とする筒型防振組付体。
【請求項2】
前記返り凸部が、前記軸部材の一端部への前記ゴムストッパの外挿部位の内周面に対して、その全周に亘って周方向に連続して延びるように一体形成されている請求項1に記載の筒型防振組付体。
【請求項3】
前記ゴムストッパの前記返り凸部の形成部位の内部に、剛性の補強部材が埋設されて、該返り凸部が、該補強部材と前記軸部材の一端部との間で挟圧されている請求項1又は請求項2に記載の筒型防振組付体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−84807(P2010−84807A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252251(P2008−252251)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】