説明

筒状シュリンクラベル、筒状シュリンクラベル付き容器およびこれらの製造方法

【課題】半導体レーザー光で溶着してなる生産性に優れる筒状シュリンクラベルを提供する。
【解決手段】縦一軸延伸した熱収縮性基材フィルムを延伸方向の所定サイズに切断してラベルを切り出し、前記ラベルの切断端を上下に重ねてラベルを筒状に成形し、前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとを半導体レーザー光で照射し、前記重ね部を半導体レーザー光で溶着することを特徴とする。筒状シュリンクラベル熱収縮率および接着強度に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸方向で切断したラベルの両端を筒状に重ねた後に半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光で溶着してなる筒状シュリンクラベル、該筒状シュリンクラベルを装着した容器およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料などの容器に全周にわたる筒状シュリンクラベルが使用され、このようなシュリンクラベルを装着した容器として、予め筒状のシュリンクラベルを調製し、これを容器外周に外嵌し、ついで熱処理してシュリンク形成するものがある(特許文献1)。該特許文献1では、筒状シュリンクラベルを製造する際に、シュリンクラベルの両端部にホットメルト型接着剤を貼付し、このホットメルト型接着剤を介してラベル両端を筒状に張り合わせている。
【0003】
また、筒状にシュリンクラベルを接着する際に、レーザー光によって溶着し、得られた筒状シュリンクラベルを容器に外嵌装着する方法もある(特許文献2)。前記特許文献2で使用するラベルは、印刷が施された合成樹脂製フィルムの両端部を重ね合わせてレーザー光の照射によって溶着して筒状に形成したラベルであって、基材と、該基材の両面側に積層された表面層とを備え、該表面層は、前記基材よりも融点の低い材料からなり、前記両端部の溶着面は、印刷層が施されていない無印刷部に形成されている、というものである。
【0004】
また、筒状シュリンクラベルの製造方法として、検出マークが印刷されたシュリンクラベル用ロールをラベル長に切断した後に筒状に成形してなる筒状シュリンクラベルもある(特許文献3)。長尺の熱収縮性のフィルム基材には、所定間隔ごとに検出マークが印刷され、該検出マークをセンサで検出することによりラベルの位置合わせなどを行うが、前記検出マークを熱収縮時の熱で消去可能なインキで印刷することで、別途特別な加熱工程を経ることなく検出マークを目立たなくすることができ、各ラベル及びフィルムに施したデザイン等の所定の表示の邪魔になるのを防止できる、という。特許文献3では、熱収縮フィルムの熱収縮方向の両端部を接着して筒状に成形するため、熱収縮フィルムを切断した後に切断ラベルを90度回転させ、ラベル両端を筒状に接着している。
【特許文献1】特開2006−117269号公報
【特許文献2】特開2000−141469号公報
【特許文献3】特開2003−43922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の筒状シュリンクラベルは、ホットメルト型接着剤によって容器と筒状シュリンクラベルとを接着する方法であるため、接着後に容器が高温条件下にある場合には、ホットメルト型接着剤が溶融し外観を損なう場合がある。特に、該容器の内容物が加温製品の場合には、内容物の保管温度によって移送中や販売期間内にホットメルト型接着剤が溶融する恐れがあり、シュリンクラベルの場合には熱収縮処理を行う際にホットメルト型接着剤が溶け出す場合がある。加えて、反応性ホットメルト型接着剤を使用すると、硬化後に熱に対する耐性を有するが、反応時間が長いために生産性が低下する。
【0006】
また、特許文献2記載のラベルは、レーザー光によって筒状ラベルとしたものであるが、レーザーでの接着性を確保するため、使用するラベルの層構成が複雑となる場合がある。特に、レーザー光はレーザーの波長によって作用が異なり、炭酸ガスレーザーは水に吸収され半導体レーザーなどは色素に吸収されるなど、物質に対する影響が異なる。このためPETフィルムに炭酸ガスレーザー光を照射するとフィルムに吸収されフィルム表面が溶融し、製品の外観を損ねる場合がある。
【0007】
一方、シュリンクラベルは延伸方向に熱収縮するため、延伸方向と胴巻き方向とを一致させて容器に装着する。従来は、横一軸延伸フィルムを使用し、例えば特許文献3の図3に示すように、所定ラベル長さに切断した後に切断ラベルを90度回転させた後に筒状に成形し、直立する容器の上部から筒状ラベルを鉛直方向に装着していた。すなわち、シュリンクラベル用ロールの切断面を接着部として使用できないため、筒状に接着する際にラベルを90度回転させる工程が必要となっている。しかしながら、このような工程をなくすことができれば、筒状シュリンクラベルの製造がより簡単な工程で製造できる。
【0008】
また、重ね部を溶着する際に、重ね部よりも溶着幅が狭いと、未溶着シロが残り、ラベルの熱収縮処理後に硬くなって立ち上がり、外観を損ねる場合がある。
【0009】
上記現状に鑑み、本発明は、接着剤を使用することなく製造され、接着強度および外観に優れる筒状シュリンクラベルを提供するものである。
【0010】
また本発明は、凹凸が際立つ容器にも装着することができ、容器形状の多様化、消費者の購買意欲を満たしうる、熱収縮率に優れる筒状シュリンクラベルを提供するものである。
【0011】
また本発明は、このような筒状シュリンクラベルを装着した容器を提供するものである。
【0012】
更に本発明は、簡便な工程で迅速に、生産効率に優れる筒状シュリンクラベルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、筒状シュリンクラベルについて詳細に検討した結果、熱収縮率に優れる縦一軸延伸フィルムを使用して筒状シュリンクラベルを製造すれば、延伸方向と移送方向とを同方向にできるため、フィルムを所定のラベル長に切断した後に切断面を溶着部として筒状に形成でき、ラベルを90度回転する工程を省略できること、ラベル重ね部を半導体レーザー光で溶着すれば接着剤の使用を行うことなくかつ短時間で効率的に溶着することができること、特に発振波長750〜1200nmの半導体レーザーや、ファイバーレーザーまたはディスクレーザーであれば、ラベルが2枚重なっている重ね部のほかに一枚のラベル部分に照射してもフィルムを切断したりフィルム表面を溶融することなく外観に優れる製品を製造しうること、および重ね部にレーザー光吸収剤を含まない場合であっても、重ね部を金属製の押さえ具で挟んでから半導体レーザー光を照射すると安定してラベルを溶着しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、熱収縮性基材フィルムの延伸方向にあるラベル両端を溶着してなる筒状シュリンクラベルであって、縦一軸延伸した熱収縮性基材フィルムを延伸方向の所定サイズに切断してラベルを切り出し、前記ラベルの切断端を上下に重ねてラベルを筒状に成形し、前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとを半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光で照射し、前記重ね部を前記レーザー光で溶着することを特徴とする、筒状シュリンクラベルを提供するものである。
【0015】
また、前記筒状シュリンクラベルを装着し、熱収縮処理してなる筒状シュリンクラベル付き容器を提供するものである。
【0016】
また、縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送し、前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断し、前記ラベルを鉛直に配置されたシリンダにまき付けて、前記ラベルの切断端を上下に重ねて重ね部を成形し、前記重ね部を前記シリンダと押さえ具とではさみ、前記押さえ具側から前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとに半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射して前記重ね部を溶着して筒状シュリンクラベルを成形することを特徴とする、筒状シュリンクラベルの製造方法を提供するものである。
【0017】
さらに、縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送し、前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断し、前記ラベルを鉛直に配置されたシリンダにまき付けて、前記ラベルの切断端を上下に重ねて重ね部を成形し、前記重ね部を前記シリンダと押さえ具とではさみ、前記押さえ具側から前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとに半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射して前記重ね部を溶着して筒状シュリンクラベルを成形し、前記筒状シュリンクラベルの下部側または上部側から前記シリンダを抜き出し、かつラベルの上部側または下部側から容器を挿入して前記容器に筒状シュリンクラベルを装着し、ついで熱収縮処理することを特徴とする、筒状シュリンクラベル付き容器の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の筒状シュリンクレベルは半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射して調製され、前記レーザー光は透明樹脂を透過するためラベル樹脂表面を溶融することなく、外観に優れる。また、重ね部のみならず重ね部近傍の前記下ラベルとに前記レーザー光を照射するため、ラベル端部が硬くなって立ち上がることがなく、外観に優れる。
【0019】
本発明の筒状シュリンクラベルは接着剤を使用しないため、生産工程を簡略化することができ、コストも低下させることができる。また、ホットメルト型接着剤を使用する場合と比較して、広い温度幅の環境で保管、流通させることができる。
【0020】
本発明の筒状シュリンクレベルの製造方法は、重ね部を金属製の押さえ具で挟み、この金属製の押さえ具に半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射して製造することができ、これによりレーザー光吸収剤を使用しない、安価かつ環境汚染の影響が少なく、安全性に優れる筒状シュリンクラベルを製造することができる。
【0021】
本発明の筒状シュリンクレベルは、半導体レーザー光などを照射して短時間に筒状に溶着するため、生産効率に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の第一は、熱収縮性基材フィルムの延伸方向にあるラベル両端を溶着してなる筒状シュリンクラベルであって、縦一軸延伸した熱収縮性基材フィルムを延伸方向の所定サイズに切断してラベルを切り出し、前記ラベルの切断端を上下に重ねてラベルを筒状に成形し、前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとを半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光で照射し、前記重ね部を前記レーザー光で溶着することを特徴とする、筒状シュリンクラベルである。
【0023】
縦一軸延伸基材フィルムを使用することで、延伸方向にフィルムを移送して切断し、切断面を筒状に重ねて溶着することで筒状シュリンクラベルを製造することができ、このため溶着の際にラベル方向を90度回転させる必要がなく、従来よりもラベラーの構造を簡略化することができる。また、重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとを前記レーザー光で照射し、前記重ね部を溶着するため、ラベル端部のめくりあがりやラベル表面の溶融がなく外観に優れる。以下、本発明の筒状シュリンクラベル、筒状シュリンクラベル付き容器、筒状シュリンクラベルの製造方法について説明する。
【0024】
(1)筒状シュリンクラベルの構成
本発明の筒状シュリンクラベルは、縦一軸延伸した熱収縮性基材フィルムを延伸方向の所定サイズに切断し、前記ラベルの切断端を上下に重ねてラベルを筒状に成形し、前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとを半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光で照射し、前記重ね部を溶着して調製される。重ね部近傍にも前記レーザー光を照射することで、ラベル端部の立ち上がりを防止することができる。図1に、前記レーザーの照射幅(36)を斜線で示す。図1に示すように、得られた筒状シュリンクラベル(100)は、ラベル(30)の両端の重ね部(37)にレーザー溶着部(35)が形成されたものであり、円周方向と二重矢印で示すラベル延伸方向とが同方向となっている。また、ラベル上前の切断端が溶着され、熱収縮後にも立ち上がりを生ずることがない。
【0025】
筒状シュリンクラベルの長さや太さは、装着する容器の形状や装着の態様に応じて適宜選択することができる。一方、レーザー溶着部(35)の幅は、0.5〜10mmであることが好ましい。この範囲で十分な溶着強度を確保することができる。
【0026】
また、レーザー溶着のための筒状シュリンクラベルの溶着部の重ね部(37)の幅、および半導体レーザー、ファイバーレーザーまたはディスクレーザーの照射幅(36)は、3〜20mmであることが好ましい。この範囲であれば、2枚の重ね部と近傍の一枚のラベル部とを含む範囲(36)にレーザーを照射して、上記レーザー溶着部(35)を十分に確保することができ、かつラベルの美粧性を確保することができる。
【0027】
本発明の筒状シュリンクラベルは、ラベル−ラベル間の剥離強度、すなわちレーザー溶着部(35)の剥離強度を、0.5〜30N/15mm、より好ましくは2.5〜20N/15mmとすることができる。また、レーザー溶着部(35)の剪断強度は、2〜65N/15mm、より好ましくは3.5〜60N/15mmである。なお、剥離強度および剪断強度は、後記する実施例で記載する数値である。
【0028】
なお、前記重ね部のレーザ溶着部と平行に、1以上のミシン目列が形成されていてもよい。使用後の容器からラベルを離脱することが容易だからである。
【0029】
(i)熱収縮性基材フィルム
本発明の筒状シュリンクラベルは、縦一軸延伸した熱収縮性基材フィルムを使用する。
【0030】
熱収縮性基材フィルムとしては、ポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ乳酸系フィルム、およびこれらのフィルムの2種以上の積層フィルムであって、縦一軸延伸したものを好適に使用することができる。より好ましくは、前記ポリオレフィン系フィルムが縦一軸延伸ポリプロピレン系フィルムであり、前記ポリエステル系フィルムが縦一軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムであり、その他ポリエステル−ポリスチレン共押出しフィルムの縦一軸延伸フィルムなどである。従来から、縦一軸延伸フィルムは存在したが、縦一軸延伸フィルムをシュリンクラベルとして使用することはなかった。しかしながら、本発明では縦一軸延伸フィルムを使用することで製造工程を簡略化できることを見出し、特に縦一軸延伸フィルムに限定して使用することにした。
【0031】
一般には、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜したものを使用することができ、テンター方式やチューブラー方式等で縦一軸延伸してなる各種の延伸フィルムを使用することができる。
【0032】
本発明において、熱収縮性基材フィルムの厚みは特に限定されないが、耐熱性、剛性、機械適性、外観等を損なわない範囲で適宜選択され、非発泡性縦一軸延伸フィルムの場合には15〜50μmである。上記範囲であれば、容器に装着して使用する際に、十分な機械的強度を確保しうると共に、半導体レーザー光などで溶着強度に優れるからである。なお、前記ラベル厚は、熱収縮前の層厚である。
【0033】
上記の熱収縮性基材フィルムには、必要に応じて、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤等の各種添加剤が添加されたものであってもよい。また、熱収縮性基材フィルムの表面には、印刷性を向上させるためにコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などの慣用の表面処理を施してもよい。
【0034】
本発明では、上記熱収縮性基材フィルムとして、縦方向の熱収縮率が温度100℃で5〜85%、より好ましくは20〜70%のものを好適に使用することができる。熱収縮率に優れるため凹部を有する容器にも好適に使用することができる。なお、本発明における熱収縮率とは、100℃の温水による熱収縮率であって、延伸方向の熱収縮率が下記式に従うものとする。従って、縦一軸延伸フィルムの場合には、収縮方向は、フィルム流れ方向であるため、流れ方向に対する熱収縮率が5〜85%である。
【0035】
【数1】

本発明の筒状シュリンクラベルのサイズは、貼付対象の容器のサイズに応じて適宜選択することができる。同様に、溶着部のサイズも、例えばラベル貼付装置の使用態様などに応じて適宜選択することができる。
【0036】
本発明では、熱収縮性基材フィルムとして市販のフィルムを使用してもよい。PET縦一軸延伸フィルム(熱収縮率;100℃、10秒、50%、)、ポリプロピレン縦一軸延伸フィルム(熱収縮率;80℃、10秒;10%、100℃、10秒、25%)、ポリサックプラスチックインダストリーリミテッド(Polysack Plastic Industries Ltd.)の商品名「ポリファンFIT ST(Polyphane FIT ST)」などの100℃での縦方向最大収縮率19%、130℃で70%の縦一軸延伸ポリスチレンフィルム、エクロンモービル社製、商品名「Label−Lyte−Roll−On−Shink−on LR210」、縦方向最大収縮率18%などの縦一軸延伸ポリプロピレンフィルム、縦一軸延伸白色ポリプロピレンフィルム、縦一軸延伸PLA系フィルムなどを好適に使用することができる。
【0037】
なお、本発明において「シュリンクラベル」とは、熱処理によって収縮しうるラベルであるが熱収縮の有無は問わない。従って、熱収縮前後のいずれにおいても、シュリンクラベルである。
【0038】
(ii)レーザー吸収層
本発明の筒状シュリンクラベルは、前記重ね部の前記熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとの間に、熱収縮性基材フィルムのガラス転位温度(Tg)よりも低いTgの樹脂からなるレーザー吸収層が積層されることが好ましい。熱収縮性基材フィルム/レーザー吸収層/熱収縮性基材フィルムとなるようにラベル端部を重ね、いずれかの熱収縮性基材フィルムから半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射すると、レーザー光が熱収縮性基材フィルムを透過してレーザー吸収層に到達し、レーザー光のエネルギーを吸収し当該端部の熱収縮性基材フィルムを軟化し、下側熱収縮性基材フィルムとの溶着を促進することができるからである。
【0039】
本発明では、レーザー吸収層として、前記熱収縮性基材フィルムのガラス転位温度よりも低いTgの樹脂を使用することが好ましい。レーザー吸収層を積層することで照射時間を短くし、生産性を向上させることができる。このような樹脂としては、前記した熱収縮性基材フィルムを構成する樹脂の中から適宜選択することができる。より好ましくは、熱収縮性基材フィルムと同種の樹脂を使用することである。例えば、熱収縮性基材フィルムがポリエステル系樹脂の場合には、レーザー吸収層に使用する樹脂もポリエステル系樹脂とし、熱収縮性基材フィルムがポリオレフィン系樹脂の場合には、レーザー吸収層に使用する樹脂もポリオレフィン系樹脂とする。
【0040】
また、レーザー吸収層には、更にレーザー吸収剤を含有していてもよい。このようなレーザー吸収剤として、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、近赤外線吸収剤、ブラックカーボン、印刷インク用顔料、印刷インク用染料、アルミノシリケート、シリカ微粉末やカオリン珪藻土、エポキシ樹脂、ポリメチルメタアクリレート等の微粒子などが例示できる。このため、墨印刷などの印刷層をレーザー吸収層として使用することができる。墨印刷に使用される墨インクは、赤外線を吸収するブラックカーボンを顔料として含むため、レーザー吸収層となりうるからである。
【0041】
一方、墨印刷は黒色であるため色彩が限定される。本発明では、墨印刷などのレーザー吸収剤に代えて少量のパール顔料を使用すると透明から銀白色であるため他の染料や顔料に影響を与えることなくレーザー光の吸収率を高めることができ、筒状シュリンクラベルの美粧性を向上できることを見出した。パール顔料をレーザー吸収層に配合するとレーザー光の吸収性を向上させることが判明した。したがって、本発明では、レーザー吸収層に上記レーザー吸収剤に代えて、又はレーザー吸収剤と共にパール顔料が配合されていてもよい。なお、パール顔料とは、天然雲母に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコートした顔料である。白色雲母の粒子径5〜130μの微粉末であり、市販品であってもよい。このようなパール顔料として、例えば、メルク社製の商品名「レーザーフレア800」、「イリオジン100シリーズ」、「イリオジン200シリーズ」、などを使用することができる。
【0042】
本発明では、上記レーザー吸収剤またはパール顔料の合計は、レーザー吸収層中に3〜80質量%含有されることが好ましい。この範囲で、フィルムがレーザーをより効率よく吸収して、接着に十分な熱を得ることにより、強度及び生産効率のより優れる溶着を行うことができる。
【0043】
レーザー吸収層は、熱収縮性基材フィルムに、上記レーザー吸収剤やパール顔料と熱収縮性基材フィルムを構成する樹脂よりもTgの低い樹脂とからなる組成物を印刷し、または塗布することで形成することができる。
【0044】
(iii)デザイン印刷層
本発明の筒状シュリンクラベル(100)は、熱収縮性基材フィルムのラベル最内層または最外層にデザイン印刷層を有するものであってもよい。ただし、前記重ね部(37)において、筒状に重ねる際に熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとの間には印刷層がないことが好ましい。半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光による溶着を阻害する場合があるからである。
【0045】
印刷方法に限定はなく、例えばグラビア印刷で印刷層を形成することができる。印刷層としては、樹脂と溶媒から通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を調製し、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の助剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。
【0046】
このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。インクビヒクルは、版から被印刷物に着色剤を運び、被膜として固着させる働きをする。
【0047】
また、溶剤によってインキの乾燥性が異なる。印刷インキに使用される主な溶剤は、トルエン、MEK、酢酸エチル、IPAであり、速く乾燥させるために沸点の低い溶剤を用いるが、乾燥が速すぎると印刷物がかすれたり、うまく印刷できない場合があり、沸点の高い溶剤を適宜混合することができる。これによって、細かい文字もきれいに印刷できるようになる。着色剤には、溶剤に溶ける染料と、溶剤には溶けない顔料とがあり、グラビアインキでは顔料を使用する。顔料は無機顔料と有機顔料に分けられ、無機顔料としては酸化チタン(白色)、カーボンブラック(黒色)、アルミ粉末(金銀色)などがあり、有機顔料としてはアゾ系のものを好適に使用することができる。
【0048】
上記は、グラビア印刷で説明したが、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。また、印刷は、裏印刷でも、表印刷でもよい。
【0049】
本発明で好適に使用できるラベルの構成を図5に示す。熱収縮性基材フィルム(10)のレーザー溶着部の重ね部の双方(37,37’)を除いて印刷層(15)が裏印刷された態様を示し、図5(b)は、前記印刷層(15)と共に、レーザー溶着部の重ね部の一方(37’)にレーザー吸収層(17)が裏印刷された態様を示す。図5(a)を筒状に成形すると、熱収縮性基材フィルム/熱収縮性基材フィルムとなり、図5(b)は、熱収縮性基材フィルム/レーザー吸収層/熱収縮性基材フィルムとなる。
【0050】
(iv)外層
本発明の筒状シュリンクラベルは、前記熱収縮性基材フィルムの表面側に更に外層を設けてもよい。このような外層としては、筒状シュリンクラベルの用途や意匠性などによって適宜選択することができ、ラベル表面の滑り性を付与する場合にはOPニスを、ラベルを触ったときの触感を付与する場合にはスエードインキによる印刷層を、マット感を付与する場合にはマットOPなどを使用することが好ましい。なお、外層は、2層以上の積層とすることができ、外層にデザイン印刷層を形成してもよい。ただし、重ね部のレーザー照射範囲(図1の符号36)には外層には印刷層が形成されないことが好ましい。レーザー光のラベル透過性を低下させ、溶着を困難とする場合がある。この際、重ね部(37’)の外側の外層には墨を含む印刷層(15)は形成されないことが好ましい。切断しやすくなる場合があるからである。
【0051】
(2)容器
本発明の筒状シュリンクラベルを添付しうる容器としては、ガラス容器;PETなどの合成樹脂性容器;セラミックボトルなどの無機物容器;アルミや鉄、SUSなどの金属製容器;ガラス、合成樹脂、セラミック、金属、紙などを含む複合材からなる容器に好適に装着することができる。
【0052】
一方、前記容器が合成樹脂製容器である場合には、該容器を構成する熱可塑性樹脂層としては、PETなどのポリエステル樹脂、PPなどのポリオレフィン系樹脂を使用することが、軽量で、機械的強度、耐熱性、ガス遮断性、耐薬品性、保香性、衛生性等に優れるため好ましい。容器は、ポリエステル樹脂やポリオレフィン系樹脂を射出成形、真空成形、圧空成形等することにより製造することができる。
【0053】
容器の形状としては、筒状シュリンクラベルが装着される容器の横断面が丸型に限定されず、四角、八角などの多角型であってもよい。また、筒状シュリンクラベルが装着される容器胴部は、胴部の全長に亘って同一径である場合に限定されず、容器の胴部縦断面が四角である以外に、たとえばひょうたん型などであってもよい。むしろ、本発明では、熱収縮率に優れる縦一軸延伸フィルムを使用するため、容器が凹凸のある形状であっても好適に装着することができる。従って、図2に示すように、容器の筒状シュリンクラベル装着部の最大周径に対する最小周径(最小周径×100/最大周径(%))が50〜100%、より好ましくは70〜90%、特に好ましくは75〜85%のものを好適に使用することができる。
【0054】
本発明の筒状シュリンクラベルを図2の容器に装着し、熱収縮処理した後の筒状シュリンクラベル付き容器を図3に示す。
【0055】
(3)筒状シュリンクラベルの製造方法
(i)ラベルの調製
本発明で使用するラベルは縦一軸延伸フィルムを使用し、適宜印刷層やレーザー吸収層を形成することで調製することができる。
【0056】
(ii)ラベルの筒状成形
本発明の筒状シュリンクラベルは、縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送し、前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断し、前記ラベルを鉛直に配置されたシリンダにまき付けて、前記ラベルの切断端を上下に重ねて重ね部を成形し、前記重ね部を前記シリンダと押さえ具とではさみ、前記押さえ具側から前記重ね部(37)と、重ね部近傍の下ラベルからなる前記レーザー光照射幅(3)とにレーザー光を照射して前記重ね部に溶着部(35)を形成して筒状シュリンクラベルを成形し、筒状シュリンクラベルを製造することができる。この方法によれば、フィルム搬送方向と延伸方向とが同方向であるから、切断したラベルを筒状に成形して切断端を重ねると延伸方向の両端部を溶着することができる。すなわち、フィルムを水平方向に移動させるだけでフィルム切断、ラベル筒状溶着を行うことができるために、横一軸延伸フィルムを使用する場合のように、ラベルを90度回転させる工程が不要となる。また、ラベル上前の切断端の端部が下ラベルに溶着されるため、熱収縮後にも外観に優れる筒状シュリンクラベルとなる。また、半導体などのレーザー光で溶着するため、接着剤を使用することなく接着でき、短時間で効率的な溶着が行える。また、容器リサイクル時にラベルを剥がした際、接着剤で接着する場合と相違して、溶着部分が汚れることがなくリサイクル性に優れる。
【0057】
より具体的には図4に示すように、鉛直に配置されたシリンダ(20)にまきつけるように前記熱収縮性基材フィルム(10)を繰り出し、所定のラベル長に切断し、ラベル(30)の前端部からシリンダ(20)を回転させながらまきつけ、前記ラベル前端部の上にラベル後端部を重ね、ラベル後端部をガラス板やSUS板などの押さえ具で固定し、斜線で示す、重ね部(35)と、重ね部近傍の前記下ラベルとからなるレーザー照射幅(36)を、押さえ具側からレーザー光を照射して溶着し、溶着幅0.5〜10mmのレーザー溶着部(35)部を形成し、筒状シュリンクラベル(100)を製造することができる。使用するシリンダ(20)は、その表面に空気を吸引しまたは排出する空気孔(25)が多数設けられたものであれば、切断されたラベル(30)を前記シリンダ表面で吸引しながら安定してまき付けることができる。また、シリンダ(20)を鉛直方向を軸として回転させればラベル(30)のまき付けが容易となる。一般には重ね部は、幅3〜20mmである。この重ね部は、ガラス板などの押さえ具で固定することでレーザー光の照射を安定して行うことができる。
【0058】
本発明では、半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射して溶着する点に特徴があり、ガラス板などの押さえ具側から前記レーザー光をシリンダに向けて照射し、溶着させる。したがって、押さえ具は、前記レーザー光を透過する必要がある。このような材質のものとして、ガラス、石英ガラスなどがあり、その他、半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光の透過性樹脂などを好ましく使用することができる。本発明では、半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を使用するが、これらはいずれも、PETフィルムなどの熱収縮性基材フィルムを透過するため、前記レーザー光照射幅(36)の範囲でラベルが一枚の部分を切断したり、ラベル表面を溶融することがなく、外観に優れる筒状シュリンクラベルを製造することができるからである。一方、重ね部(37)の熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとの間にレーザー吸収層を積層すれば短時間に重ね部を溶着することができ、かつ筒状シュリンクラベルとして実用的な接着強度を確保することができる。また、前記重ね部をガラス板、石英や半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光の透過性樹脂などの押さえ具で固定することで、重ね部のズレを回避することができる。重ね部(37)の熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとの間にレーザー吸収層が積層される場合には、押さえ具は石英ガラスなどのガラス板であることが好ましい。前記レーザー光がガラス板および熱収縮性基材フィルムを経てレーザー吸収層に到達し、レーザー吸収層を溶融して熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとの溶着を効率的に行うことができるからである。
【0059】
一方、本発明の筒状シュリンクラベルの製造方法では、重ね部(37)の熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとの間にレーザー吸収層がない場合でも、熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとを短時間で溶着することができる。前記重ね部を金属製の押さえ具で挟み、いずれかの金属製の押さえ具側から半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射すると、金属製の押さえ具で挟まれた熱収縮性基材フィルムを溶着しうるからである。具体的には、シリンダ(20)がSUSなどの金属製である場合には、押さえ具としてSUS板を使用し、SUS板側から前記レーザー光を照射すればよい。なお、押さえ具の形状としては板状に限定されず、例えば略平行に連結した二本の金属棒を使用し、金属棒のない個所からレーザー光を照射してもよい。金属製の押さえ具で重ね部を挟むことで溶着できる理由は明確ではないが、金属がレーザー光を吸収して発熱する一方、レーザー光の反射板として機能し、この結果、金属製の押さえ具に挟まれた熱収縮性基材フィルムが溶着すると考えられる。本発明では、ラベルがシリンダ(20)に巻き取られているため、シリンダ(20)がSUSなどの金属製であれば、重ね部(37)を形成した後にSUSからなる押さえ具で重ね部(37)を押さえ、SUS板側から半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射するだけで、連続して重ね部(37)にレーザー溶着部(35)を形成することができる。これにより、レーザー光吸収剤を使用しない場合であっても、筒状シュリンクラベルとしての実用的な接着強度を確保することができる。
【0060】
レーザー照射条件は、スポット径0.1〜15mm、出力5〜500W、加工速度1〜300mm/secである。これにより実用的な接着強度を確保することができる。
【0061】
(4)筒状シュリンクラベル付き容器の製造方法
本発明の筒状シュリンクラベル付き容器は、上記で製造した筒状シュリンクラベルに、ラベルの上部または下部から容器を挿入して容器に筒状シュリンクラベルを装着し、ついで熱収縮処理することで製造することができる。なお、以下は、半導体レーザーの場合で説明するが、ファイバーレーザー光やディスクレーザー光の場合も同様である。
【0062】
例えば、図6、図7に示すように、(a)ラベル(30)をシリンダ(20)にまき付け、(b)ラベル切断端の重ね部(37)を形成し押さえ具で押さえ、(c)押さえ具側から、前記レーザー光照射幅で半導体レーザーを照射して、重ね部(37)にレーザー溶着部(35)を形成して筒状に溶着する。次いで、(d)シリンダ(20)を下方から引き抜く。具体的には、シリンダ(20)には多数の空気孔(25)が設けられており、半導体レーザー光で溶着した後にシリンダ(20)の前記空気孔(25)から空気を排出させると、シリンダ(20)とラベル(30)との間に空気を送り込むことができる。この状態で、シリンダ(20)をラベルの下端から下方に移動させると、容易に筒状シュリンクラベルからシリンダ(20)を引き抜くことができる。(e)これにより筒状シュリンクラベル(100)を鉛直した状態で製造することができる。
【0063】
次いで、(f)筒状シュリンクラベルの上部から容器(90)を降下させ、(g)筒状シュリンクラベル(100)を容器(90)に装着し、次いで(h)熱収縮処理を順次行う。熱収縮処理は、ラベルの熱収縮性基材フィルムの種類や厚さ、延伸率などによって適宜選択することができ、例えば、60〜230℃の熱風や、水蒸気及び水蒸気が結露した湯気により加熱するスチームや、赤外線等の輻射熱を作用させてシュリンクラベルを周方向に高収縮させ、容器の胴部をシュリンクラベルで被覆することができる。なお、上記は、シリンダ(20)を、筒状シュリンクラベルの下部側から引き抜き、上部側から容器を挿入する態様を示したが、筒状シュリンクラベルの上部側から引き抜き、下部側から容器を挿入する態様であってもよい。
【0064】
本発明では、前記したように、フィルムを水平方向に移動するだけでフィルムの切断、ラベルの筒状溶着を行うことができるため、鉛直に配置されたシリンダにまきつければラベルの筒状化を円滑かつ容易に行うことができ、シリンダの外部から半導体レーザー光を照射することで、簡便かつ確実にレーザー溶着部を行うことができる。
【0065】
(5)筒状シュリンクラベル付き容器
本発明の筒状シュリンクラベル付き容器は、上記筒状シュリンクラベル(100)が容器(90)の全長に亘って被覆するように装着されたものでもよく、容器(90)の上部のみ、下部のみ、蓋部のみ、など容器の一部のみに装着してもよい。更に、容器底部を包み込むように熱収縮させたり、容器蓋部から底部の全体に筒状シュリンクラベルを装着し、熱収縮させて、全面被覆することもできる。
【実施例】
【0066】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0067】
(実施例1)
115mm巾、フィルム厚さが25μmのPET縦一軸延伸フィルム(熱収縮率;100℃、10秒、50%、Tg81℃)を使用し、ラベルデザイン印刷をラベル後端の溶着部を除いて裏刷りし、および前記ラベル後端の溶着部に、ポリエステル樹脂(ユニチカ製、商品名「エリーテルUE3223」、Tg4℃)にパール顔料(メルク社製、商品名「レーザーフレア820」)を1:1で配合したレーザー吸収層を8g/m2となるように裏印刷し、延伸方向に巻き取った。
【0068】
ラベラーに上記印刷ロールラベルをセット、延伸方向に繰り出してロータリーカッター部分で238mmの長さにカットして枚葉ラベルとした。
【0069】
前記枚葉ラベルの切断した先端部を前記シリンダにエアーで吸引しながら巻きつけ、ラベル両端部に4mmの重なりを設け、重ね部に石英ガラス板を圧着させて固定した。前記重ね部は、ガラス板側から、PET/レーザー吸収層/PET/墨を含まないデザイン印刷層/シリンダとなる。
【0070】
ラベル重ね部および重ね部近傍の下ラベルの幅4mmに、ガラス板の上部から半導体レーザー光を照射して溶着した。照射は、半導体励起ファイバーレーザー、ミヤチテクノス社製、ML6500A、波長1080nm、最大出力300W、CW発振(連続)を使用し、スポットサイズ1.2mm、出力30W、加工速度400mm/secで行い、溶着幅1.0mmの筒状シュリンクラベルを調製した。
【0071】
レーザー照射表面(PET)はラベル重ね部(2枚の部分)と非重ね部(一枚の部分)ともにレーザー光による損傷がなく、ラベル後端に未溶着部も存在せず、外観良好であった。なお、接着強度は、剪断強度7.5N/15mm、剥離強度28N/15mm)であった。
【0072】
なお、剥離強度は、試験片を長さ50mm、幅15mmに切出し、端部をはがしてつまみしろを作成した。これを引張試験機(オリエンテック社製)を用いて、JIS K6854に準じて、180度剥離により300mm/分の引張速度で測定し、15mm当たりの剥離強度(単位:N/15mm)で評価した。また、剪断強度は、試験片を長さ70mm、幅15mmに切り出し、引張り試験機でJIS K6850に準じて300mm/分で測定した。
【0073】
次いで、前記筒状シュリンクラベルを500mLの変形PETボトルの上部から装着し、熱風式シュリンクトンネルで95℃×10秒加熱してラベルを収縮させた。
【0074】
得られた筒状シュリンクラベルは、熱収縮時にも溶着部分が剥がれることなかった。また、得られたシュリンクラベル装着容器は、50cmの高さから落下してもラベルの脱落がなく、十分な溶着強度を有していた。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例2)
860mm巾、フィルム厚さが25μmのPET縦一軸延伸フィルム(熱収縮率;100℃、10秒、50%、Tg81℃)を使用し、ラベルデザイン印刷をラベル後端の溶着部を除いて裏刷りし、および前記ラベル後端の溶着部に、ポリエステル樹脂(ユニチカ製、商品名「エリーテルUE9200」、Tg65℃)にパール顔料(メルク社製、商品名「レーザーフレア820」)を1:1で配合したレーザー吸収層を3g/m2となるように裏印刷し、72mm巾で10列のラベルをスリットして延伸方向に巻き取った。
【0076】
ラベラーに上記印刷ロールラベルをセット、延伸方向に繰り出してロータリーカッター部分で238mmの長さにカットして枚葉ラベルとした。
【0077】
前記枚葉ラベルの切断した先端部を前記シリンダにエアーで吸引しながら巻きつけ、ラベル両端部に4mmの重なりを設け、重ね部にガラス板を圧着させて固定した。前記重ね部は、ガラス板側から、PET/レーザー吸収層/PET/デザイン印刷層/シリンダとなる。
【0078】
ラベル重ね部および重ね部近傍の下ラベルの幅4mmに、ガラス板の上部から半導体レーザー光を照射して溶着した。半導体レーザーとして、ミヤチテクノス社製、LD励起ファイバーレーザー「ML6500A」を使用し、スポット径4.1mm、出力30W、加工速度400mm/secでレーザー溶着し、溶着幅3.5mmの筒状シュリンクラベルを調製した。
【0079】
レーザー照射表面(PET)はラベル重ね部(2枚の部分)と非重ね部(一枚の部分)ともにレーザー光による損傷がなく、ラベル後端に未溶着部も存在せず、外観良好であった。なお、接着強度は、剪断強度20N/15mm、剥離強度5N/15mm)であった。
【0080】
次いで、前記筒状シュリンクラベルを500mLの変形PETボトルの上部から装着し、熱風式シュリンクトンネルで95℃×10秒加熱してラベルを収縮させた。
【0081】
得られた筒状シュリンクラベルは、熱収縮時にも溶着部分が剥がれることなかった。また、得られたシュリンクラベル装着容器は、50cmの高さから落下してもラベルの脱落がなく、十分な溶着強度を有していた。結果を表1に示す。また、断面形状を図9に示す。
【0082】
(実施例3)
115mm巾、フィルム厚さが40μmのポリプロピレン縦一軸延伸フィルム(熱収縮率;100℃、10秒、25%)を使用し、ラベルデザイン印刷をラベル後端の溶着部を除いて裏刷りし、および前記ラベル後端の溶着部に、ポリオレフィン樹脂(商品名「アローベース」)にパール顔料(メルク社製、商品名「レーザーフレア820」)を1:1で配合したレーザー吸収層を8g/m2となるように裏印刷し、延伸方向に巻き取った。
【0083】
ラベラーに上記印刷ロールラベルをセット、延伸方向に繰り出してロータリーカッター部分で238mmの長さにカットして枚葉ラベルとした。
【0084】
前記枚葉ラベルの切断した先端部を前記シリンダにエアーで吸引しながら巻きつけ、ラベル両端部に4mmの重なりを設け、重ね部にガラス板を圧着させて固定した。前記重ね部は、ガラス板側から、PP/レーザー吸収層/PP/デザイン印刷層/シリンダとなる。
【0085】
ラベル重ね部および重ね部近傍の下ラベルの幅4mmに、ガラス板の上部から半導体レーザー光を照射して溶着した。半導体レーザーとしてミヤチテクノス社製、商品名「半導体レーザーCWタイプ」を使用し、スポットサイズ1.2mm、750W、速度400mm/secで、レーザー加工幅4mmで溶着し溶着幅1.0mmの筒状シュリンクラベルを調製した。
【0086】
レーザー照射表面(PP)はラベル重ね部(2枚の部分)と非重ね部(一枚の部分)ともにレーザー光による損傷がなく、ラベル後端に未溶着部も存在せず、外観良好であった。なお、接着強度は、剪断強度25N/15mm、剥離強度6.2N/15mm)であった。
【0087】
次いで、前記筒状シュリンクラベルを500mLの変形PETボトルの上部から装着し、熱風式シュリンクトンネルで120℃×10秒加熱してラベルを収縮させた。
【0088】
得られた筒状シュリンクラベルは、熱収縮時にも溶着部分が剥がれることなかった。また、得られたシュリンクラベル装着容器は、50cmの高さから落下してもラベルの脱落がなく、十分な溶着強度を有していた。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例4)
860mm巾、フィルム厚さが25μmのPET縦一軸延伸フィルム(熱収縮率;100℃、10秒、50%、Tg81℃)を使用し、ラベルデザイン印刷をラベル後端の溶着部を除いて裏刷りし、72mm巾で10列のラベルをスリットして延伸方向に巻き取った。
【0090】
ラベラーに上記印刷ロールラベルをセット、延伸方向に繰り出してロータリーカッター部分で238mmの長さにカットして枚葉ラベルとした。
【0091】
前記枚葉ラベルの切断した先端部を前記シリンダにエアーで吸引しながら巻きつけ、ラベル両端部に4mmの重なりを設け、重ね部に厚さ0.1mmのSUS板を圧着させて固定した。前記重ね部は、SUS板側から、PET(無地)/PET/デザイン印刷層/シリンダとなる。
【0092】
ラベル重ね部および重ね部近傍の下ラベルの幅4mmに、ラベル重ね部のSUS板の上部から半導体レーザー光を照射して溶着した。半導体レーザーとして、ミヤチテクノス社製、LD励起ファイバーレーザー 商品名「ML6500A」を使用し、スポット径4.1mm、出力120W、加工速度100mm/secでレーザー溶着し、溶着幅2.5mmの筒状シュリンクラベルを調製した。
【0093】
レーザー照射表面(PET)はラベル重ね部(2枚の部分)と非重ね部(一枚の部分)ともにレーザー光による損傷がなく、ラベル後端に未溶着部も存在せず、外観良好であった。なお、接着強度は、剪断強度15N/15mm、剥離強度3.8N/15mm)であった。
【0094】
次いで、前記筒状シュリンクラベルを500mLの変形PETボトルの上部から装着し、熱風式シュリンクトンネルで95℃×10秒加熱してラベルを収縮させた。
【0095】
得られた筒状シュリンクラベルは、熱収縮時にも溶着部分が剥がれることなかった。また、得られたシュリンクラベル装着容器は、50cmの高さから落下してもラベルの脱落がなく、十分な溶着強度を有していた。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例1)
ラベル重ね部に、スポットサイズ0.96mmで半導体レーザー光を照射し、幅1mmの溶着幅を形成した以外は、実施例1と同様に操作して、筒状シュリンクラベルを製造した。なお、接着強度は、剪断強度24N/15mm、剥離強度8.0N/15mm)であった。この筒状シュリンクラベルの外観を図8に示す。
【0097】
次いで、前記筒状シュリンクラベルを500mLの変形PETボトルの上部から装着し、熱風式シュリンクトンネルで95℃×10秒加熱してラベルを収縮させた。
【0098】
得られた筒状シュリンクラベルは、熱収縮時後にラベル端部が硬化し、めくれ上がった。結果を表1に示す。
【0099】
(比較例2)
重ね部のデザイン印刷層に墨印刷を行い、出力を120Wにしてレーザー光を照射した以外は実施例2と同様に操作して、筒状シュリンクラベルを製造した。前記重ね部は、ガラス板側から、PET/レーザー吸収層/PET/墨印刷を含むデザイン印刷層/シリンダとなる。その結果、ラベルが2枚の重ね部は溶着したが、ラベルが1枚の個所は、切断されてしまった。
【0100】
(比較例3)
出力を80Wに変更した以外は、比較例2と同様に操作して、筒状シュリンクラベルを製造した。前記重ね部は、ガラス板側から、PET/レーザー吸収層/PET/墨印刷を含むデザイン印刷層/シリンダとなる。その結果、接着強度は、剥離強度が0.8N/15mmと極めて弱いものとなってしまった。
【0101】
(比較例4)
レーザー光の照射条件を、コヒレント社製、DIAMOND K−250(出力250W、100Hz、波長10.6μ)の炭酸ガスレーザーを使用し、パルス間隔500μs、パルス幅19μs、加工速度12m/minの条件で、溶着線巾が約2mmとなるように焦点距離をずらしてレーザー光を照射した以外は、実施例1と同様に操作して筒状シュリンクラベルを製造した。比較例2と同様に、ラベルが2枚の重ね部は溶着したが、ラベルが1枚の個所は、切断されてしまった。
【0102】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る筒状シュリンクラベルは、半導体レーザー光で溶着によりラベルを筒状に成形するものであり、生産性高く、かつ接着剤を使用することなく筒状シュリンクラベルを製造することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、本発明の筒状シュリンクラベルを説明する斜視図である。
【図2】図2は、本発明で使用しうる容器であって、胴部のラベル溶着部における最大周径に対する最小周径(最小周径×100/最大周径(%))が、50〜100%の凹部を有するものを説明する図である。
【図3】図3は、本発明の筒状シュリンクラベル付き容器の好ましい態様の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の筒状シュリンクラベルを製造する工程を説明する図である。
【図5】図5は、本発明で使用できるラベルの層構成を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の筒状シュリンクラベル付き容器を製造する工程のうち、(a)ラベルのシリンダへのまき付け、(b)切断端の重ね、(c)重ね部のレーザー溶着部、(d)シリンダの下方への移動を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の筒状シュリンクラベル付き容器を製造する工程のうち、(e)筒状シュリンクラベルの鉛直、(f)容器の降下、(g)筒状シュリンクラベルの容器への装着、(h)熱収縮処理した筒状シュリンクラベル付き容器を説明する図である。
【図8】比較例1で製造した筒状シュリンクラベルの外観を示す図である。
【図9】実施例2のラベル溶着部の断面図である。
【符号の説明】
【0105】
10・・・熱収縮性基材フィルム、
13・・・外層、
15・・・印刷層、
17・・・レーザー吸収層、
20・・・シリンダ、
25・・・空気孔、
30・・・ラベル、
35・・・レーザー溶着部、
36・・・レーザー照射範囲、
37・・・ラベル重ね部、
90・・・容器、
100・・・筒状シュリンクラベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性基材フィルムの延伸方向にあるラベル両端を溶着してなる筒状シュリンクラベルであって、
縦一軸延伸した熱収縮性基材フィルムを延伸方向の所定サイズに切断してラベルを切り出し、
前記ラベルの切断端を上下に重ねてラベルを筒状に成形し、
前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとを半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光で照射し、前記重ね部を前記レーザー光で溶着することを特徴とする、筒状シュリンクラベル。
【請求項2】
前記重ね部の前記熱収縮性基材フィルムと熱収縮性基材フィルムとの間に、熱収縮性基材フィルムのガラス転位温度よりも低いTgの樹脂からなるレーザー吸収層が積層され、前記レーザー光をレーザー吸収層に照射して前記重ね部を溶着することを特徴とする、請求項1記載の筒状シュリンクラベル。
【請求項3】
前記レーザー吸収層は、更にレーザー光吸収剤および/またはパール顔料を含むことを特徴とする、請求項2記載の筒状シュリンクラベル。
【請求項4】
前記熱収縮性基材フィルムが、ポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ乳酸系フィルム、およびこれらのフィルムの2種以上の積層フィルムであって、縦方向の熱収縮率が温度100℃で5〜85%である、請求項1〜3のいずれかに記載の筒状シュリンクラベル。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系フィルムが縦一軸延伸ポリプロピレン系フィルムであり、前記ポリエステル系フィルムが縦一軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムである、請求項4記載の筒状シュリンクラベル。
【請求項6】
前記筒状シュリンクラベルは、熱収縮性基材フィルムのラベル最内層または最外層にデザイン印刷層を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の筒状シュリンクラベル。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の筒状シュリンクラベルを装着し、熱収縮処理してなる筒状シュリンクラベル付き容器。
【請求項8】
前記容器は、容器の筒状シュリンクラベル装着部の最大周径に対する最小周径(最小周径×100/最大周径(%))が50〜100%の凹部を有することを特徴とする、請求項7記載の筒状シュリンクラベル付き容器。
【請求項9】
縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送し、
前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断し、
前記ラベルを鉛直に配置されたシリンダにまき付けて、前記ラベルの切断端を上下に重ねて重ね部を成形し、
前記重ね部を前記シリンダと押さえ具とではさみ、
前記押さえ具側から前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとに半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射して前記重ね部を溶着して筒状シュリンクラベルを成形することを特徴とする、筒状シュリンクラベルの製造方法。
【請求項10】
前記シリンダと押さえ具とが、共に金属製である、請求項9記載の筒状シュリンクラベルの製造方法。
【請求項11】
縦一軸延伸してなる熱収縮性基材フィルムを延伸方向に搬送し、
前記フィルムを延伸方向の所定ラベル長に切断し、
前記ラベルを鉛直に配置されたシリンダにまき付けて、前記ラベルの切断端を上下に重ねて重ね部を成形し、
前記重ね部を前記シリンダと押さえ具とではさみ、
前記押さえ具側から前記重ね部と、重ね部近傍の前記下ラベルとに半導体レーザー光、ファイバーレーザー光またはディスクレーザー光を照射して前記重ね部を溶着して筒状シュリンクラベルを成形し、
前記筒状シュリンクラベルの下部側または上部側から前記シリンダを抜き出し、かつラベルの上部側または下部側から容器を挿入して前記容器に筒状シュリンクラベルを装着し、
ついで熱収縮処理することを特徴とする、筒状シュリンクラベル付き容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−12781(P2009−12781A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173317(P2007−173317)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】