説明

管腔内補綴のエンドリーク管理

【課題】本発明は、血管内グラフトの周囲のグラフト周囲空間内におけるエンドリークを管理するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】一実施態様では、血管内グラフトを通る血流は一時的に減少し、塞栓物質はグラフト周囲空間内に供給され、その際、血管内グラフトを通る血流は減少する。塞栓物質は、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管系の疾患を治療するシステムおよび方法に関する。詳細には、本発明は、管腔内補綴エンドリークの管理に関する。
【背景技術】
【0002】
腹部大動脈瘤(AAA)および胸部大動脈瘤(TAA)の場合、伝統的な観血療法は未だに慣習的であり、動脈瘤のサイズが、動脈瘤が破裂する危険性が外科手術の欠点を上回る点まで成長した時に、最も広く使用されている治療法である。外科的修復は、動脈瘤がグラフトによって形成された血管部分の置換を伴う。これは、動脈瘤破裂による死亡を防止する点で効果的であり、その長期間の効果は良く知られている。外科手順の一例は、非特許文献1でCooleyが説明している。
【非特許文献1】Surgical Treatment of Aortic Aneurysms、1986年(W.B.Saunders Company)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、観血療法は、その利点にも関わらず、主に、手順が本質的に侵襲的かつ複雑であるため、罹病率および死亡率が比較的高いという点で問題である。外科手術に関連する問題としては、たとえば、動脈瘤破裂の可能性、四肢に対する血流が長期間限られることに関連する機能消失、失血、心筋梗塞、鬱血性心不全、不整脈、並びに全身麻酔および機械的換気システムの使用に関連する問題が挙げられる。さらに、動脈瘤を修復する必要性がある代表的な患者は高齢者および虚弱者であり、これは、問題の可能性を著しく増加させる事実である。
【0004】
外科的介入の危険性および複雑さにより、このような疾患などを治療するための代わりの方法を開発するため、様々な試みが行われた。腹部大動脈瘤に関してある程度成功した方法の1つは、大腿動脈を介して分岐ステント−グラフトをカテーテルベースで供給し、大動脈内から動脈瘤を除去することである。胸部大動脈瘤の血管内修復も、許容可能な治療方法として支持されている。
【0005】
大動脈瘤および胸部動脈瘤の血管内修復は、従来の外科的修復技術に代わる有望かつ魅力的な方法である。医療上の合併症の危険性は、手順の侵襲的性質が減少するために著しく減少する。回復時間も著しく減少し、付随して入院の長さおよび費用も減少する。たとえば、腹部大動脈瘤を修復する観血療法は、平均9日間の入院、および集中治療室での2日間を必要とする。対照的に、血管内修復は、一般に、2〜3日間の入院を必要とする。血管内修復の恩恵を受ける患者は、退院すると、2週間で完全に回復するが、手術を受けた患者は、少なくとも6〜8週間を要する。
【0006】
しかし、上記およびその他の著しい利点にも関わらず、血管内を利用するシステムは多くの欠点を有する。たとえば、すべての血管内AAA修復の少なくとも20%は、タイプIまたはタイプIIのエンドリークを発生すると予測される。タイプIのAAA漏れは、大動脈または腸骨動脈に対する血管内グラフトの近位端および/または遠位端の不完全な封止によって生じる動脈瘤嚢内への血流を意味する。タイプIIのAAAのエンドリークは、分岐または側副動脈、たとえば下腸間膜動脈(IMA)または腰動脈を通る逆流を介した動脈瘤嚢の潅流を意味する。エンドリークが発生すると、動脈瘤嚢内への連続的かつ持続的な血流が生じ、その結果、嚢を加圧し、患者には、動脈瘤破裂の危険性が残る。
【0007】
タイプIおよびタイプIIのAAAのエンドリークを治療する方法としては、コイル(Ritchart等に付与された米国特許第4,994,069号、およびTekulveに付与された米国特許第6,117,157号に記載されている)、粒子または液体塞栓物質を動脈瘤嚢内に導入するなどの治療法が挙げられる。液体塞栓物質の具体的な一例は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶媒中で溶解するエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)であり、たとえば、カリフォルニア州、アーヴィンのMicro Therapeutics,Inc.がOniyxの商標で製造販売しており、Ricci等に付与された米国特許第6,203,779号に記載されている。嚢の分岐血管の螺旋化は、時間と費用がかかり、包括的なX線透視を必要とする(望ましくない放射線曝露が付随する)。エンドリークを治療する1つの問題は、動脈瘤嚢から離れて塞栓物質を遠位に潅流させる可能性である。塞栓物質のこのような遠位の潅流によって、腸管および抹消循環における塞栓合併症の可能性が生じる。
【0008】
上記の理由から、管腔内補綴周囲のエンドリークを効果的に管理し、しかも、動脈瘤嚢から離れて望ましくない遠位の潅流が生じる可能性を最小限にするために、改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、動脈などの体内腔の疾患部分に位置する血管内グラフト周囲におけるエンドリークを管理するための方法、塞栓物質、システムおよびキットを提供する。
【0010】
本発明は、一態様では、グラフト周囲空間内の血管内グラフトと動脈壁との間に入る血流を減少させる方法を提供する。この方法は、供給デバイスを使ってグラフト周囲空間に接近するステップと、供給デバイスを使って塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給するステップとを含む。塞栓物質は、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤を含む。
【0011】
塞栓物質の個々の成分は、生体外または生体内で混合され、塞栓物質を生成する。緩衝剤はグリシルグリシンを含み、約5〜約40重量%、好ましくは約22〜約27重量%の範囲の割合で提供される。別法によると、緩衝剤は、N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’[2−エタンスルホン酸](HEPES)を含む。
【0012】
ポリエチレングリコールジアクリレートは、一般に、約700〜約800の分子量を有し、約50〜約55重量%の範囲の割合で提供される。ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)は、存在するポリエチレングリコールジアクリレートの約0.31〜約0.53倍の重量%の割合で提供される。望ましい場合、生理食塩水またはその他の不活性生体適合性物質が、3成分塞栓物質に添加される。
【0013】
任意に、この方法は、血管内グラフトを通る血流を一時的に減少させるステップと、塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給し、その際、血管内グラフトを通る血流を減少または停止させるステップとを含む。塞栓物質の供給時に、血管内グラフトおよび/またはグラフト周囲空間を通る血流を実質的に停止し、その結果、グラフト周囲空間からの塞栓物質の遠位の潅流量を減少させるか、または好ましくは停止させる。グラフト周囲空間内に存在する一時的に静止している血液によって、グラフト周囲空間内への塞栓物質の注射が可能になり、動脈瘤嚢からの塞栓物質の過度な遠位の流れの問題を伴うことがない。血流は、動脈内の閉塞部材を血管内グラフトの上流に配置することによって減少させる。閉塞部材は多くの形態を取ることができるが、一般に、膨張可能なバルーンの形態である。血管内グラフトを通る血流は、塞栓物質が、膨張可能なバルーンを収縮させることにより実質的に硬化した後に回復した。
【0014】
塞栓物質を注射するためのグラフト周囲空間に接近することは、管腔内または経皮経腰的に達成される。たとえば、塞栓物質は、カテーテルを使って血管内的にグラフト周囲空間内に注射され、カテーテルは、遠位端が血管内グラフトと動脈壁との間に配置される。さらに、または代わりに、塞栓物質は、シリンジおよび経腰的ニードルなどの供給デバイスを使って、グラフト周囲空間内に経皮的に注射する。
【0015】
塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給すると、塞栓物質は、血管内グラフトの外面、および動脈壁の障害が発生した部分の内面に接触する。塞栓物質は放射線不透過性であるため、放射線不透過性塞栓物質は、放射線不透過性塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給する時に、X線透視監視することができる。塞栓物質は、一般に、グラフト周囲空間内に供給する時の第1粘度、および物質が硬化を開始する時の徐々に高くなる粘度を有する。塞栓物質は、実質的に硬化した後、一般的に凝固する。塞栓物質は、たとえば、約1分〜約10分の硬化時間を示す。
【0016】
様々な化学的性質、硬化時間、粘度および放射線不透過性は、手順を容易にして最適な漏れ封止を可能にし、大動脈の閉塞時間を短くするために、塞栓物質に使用される。塞栓物質の硬化時間は、塞栓物質の滞留時間量と同様に、塞栓物質をグラフト周囲空間内に注射する前に、所望の作業時間を達成し、大動脈の閉塞時間を短くするように変更する。
【0017】
必要な場合、塞栓流体のエンドリークおよび/または流動パターンは、先ず、塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給する前に識別される。一般に、大動脈流は、閉塞部材によって閉塞されるが、造影流体がグラフト周囲空間(例えば動脈瘤嚢)内に注射され、X線透視法または類似の技術を使用して、エンドリークの位置および/またはグラフト周囲空間内の造影流体物質の分配経路が確認される。
【0018】
方法によっては、血管内グラフトは、塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給する直前に、動脈内に展開される。血管内グラフトの少なくとも一部分は、膨張物質を使って膨張させる。膨張物質は、膨張可能カフおよび膨張可能チャネルの少なくとも一方を膨張させるために、血管内グラフト上に使用する。膨張可能カフは、近位および遠位のカフを備える。膨張物質は、塞栓物質と同じ構成であるか、または塞栓物質とは異なる構成で良い。このような方法では、血管内グラフト周囲に塞栓物質を供給すると、エンドリークの形成を防止し、塞栓物質を供給するために、別個の外科手順を不要と思われる。
【0019】
もう1つの態様では、本発明の実施態様は、塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給するためのシステムを提供する。このシステムは、グラフト周囲空間に接近するように構成されると共に、塞栓物質をグラフト周囲空間に供給するように構成された供給デバイスを備える。閉塞組立体は、塞栓物質の供給時に、血管内グラフトを通る血流を実質的に減少させるように構成される。塞栓物質は、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤を含む。
【0020】
供給デバイスは、多様な形態を取ることができる。たとえば、供給デバイスは、シリンジまたはカテーテルを含むことができる。閉塞組立体は、ガイドワイヤの遠位端に隣接して配置される閉塞部材を備える。閉塞部材は、膨張可能なバルーンで良い。
【0021】
塞栓物質は、放射線不透過性で良い。緩衝剤は、HEPESまたはグリシルグリシンで良い。グリシルグリシンは、約5〜約40重量%の範囲の割合で提供される。ポリエチレングリコールジアクリレートは、700〜800の分子量を有し、約50〜約55重量%の範囲の割合で提供される。ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)は、存在するポリエチレングリコールジアクリレートの重量%の約0.31〜約0.53倍の範囲の割合で良い。
【0022】
塞栓物質は、生理食塩水または不活性生体適合性物質をさらに含む。生理食塩水は、体積において約20〜約50%の範囲の割合で良い。
【0023】
本発明は、さらに他の態様では、グラフト周囲空間の血管内グラフトと動脈壁との間に塞栓物質を付着させるためのキットを提供する。このキットは、グラフト周囲空間に接近するように構成された供給デバイスと、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤を含む塞栓物質とを含む。
【0024】
供給デバイスは、グラフト周囲空間に血管内で接近するように構成されたカテーテル、またはグラフト周囲空間、またはグラフト周囲空間に経皮的に接近するように構成されたシリンジで良い。
【0025】
緩衝剤は、グリシルグリシン緩衝剤を含み、約5〜約40重量%の範囲割合で存在する。ポリエチレングリコールジアクリレートは、一般に700〜800の分子量を有し、約50〜約55重量%の範囲の割合で存在する。ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)は、存在するポリエチレングリコールジアクリレートの重量%の約0.31〜約0.53倍の範囲の割合で存在して良い。
【0026】
このキットは、本明細書に記載する何れかの方法の説明に使用される説明書をさらに含む。このキットは、任意に、動脈塞栓手順時に、展開された血管内グラフトを通る血流を減少させるための閉塞組立体を含む。閉塞組立体は、膨張可能なバルーンの形態の閉塞部材を含む。
【0027】
このキットは、供給デバイス、塞栓物質および使用説明書を含むのに適しているパッケージも含む。例示的な容器は、パウチ、トレー、箱、管などを含む。使用説明書は、紙またはその他の媒体の別個のシートで提供される。任意に、説明書は、パッケージ上に全体に、または部分的に印刷して良い。通常、少なくとも供給デバイスおよび閉塞組立体は、殺菌状態で提供される。ガイドワイヤまたは血管内グラフトなどのその他の構成要素を含むこともできる。
【0028】
本発明の上記およびその他の態様は、付随する例示的な図面に関連して、本発明の以下の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、グラフト周囲空間内の血管内デバイスと、動脈などの体内腔の壁部との間のエンドリークを封止するための方法および構成を提供する。説明を容易にするために、以下の説明は、体内腔が動脈、つまり大動脈である腹部大動脈瘤(AAA)の血管内治療に関連するエンドリークの管理に焦点を合わせる。しかし、本発明の実施態様は、その他の動脈、および体内のその他の流動管または内腔の完全性を犠牲にする可能性がある疾病または傷害の治療にも使用することができる。たとえば、本発明の実施態様は、消化および生殖系の適応症、並びに胸部大動脈瘤、動脈解離(たとえば、外傷によるもの)などを含む心臓血管系のその他の適応症の治療に有用である。
【0030】
図1は、疾患のある大動脈内に展開する分岐血管内グラフト10を概略的に示す。特記しない限り、「グラフト」または「血管内グラフト」という用語は、本明細書では、疾患のある血管またはその一部を修復および/または交換することが可能な補綴を広く意味し、ほぼ環状および分岐デバイス、並びにこれらに取り付けられるか、または一体の何らかの構成要素を含む。
【0031】
本出願の目的上、血管内グラフトデバイスに関連して、「近位」という用語は、デバイスが体内の通路内で展開した時に、体液、一般に血液の接近流方向に方向付けられるグラフトの端部または部分を表す。したがって、「遠位」という用語は、近位端に対向する端部または部分を表す。
【0032】
「グラフト周囲空間」という用語は、本明細書では、血管内グラフトの外面と、体内腔の内面(たとえば、大動脈などの動脈)との間の空間を画定するために使用され、一般に、グラフトの近位端からグラフトの1つまたは複数の遠位端までの動脈瘤嚢を含む。
【0033】
最後に、様々な図の図面は、本発明の様々な実施態様を正確に表現しているが、その様々な構成要素の特性は、必ずしも、特定の図面内、3つ以上の図面間、または2つの図面間で正確な縮尺で示されていない。
【0034】
図1に示すように、血管内グラフト10は、動脈瘤嚢AS、さもなければ大動脈の疾患部分を血流から排除するように配置される。図示のとおり、動脈瘤嚢ASは、一般に、腸骨動脈IAの近位および腎動脈RAの遠位である。図示の実施態様では、血管内グラフト10は腎臓下構成で配置され、血管内グラフトは、腎動脈RAの下または遠位に展開される。しかし、その他の実施態様では、血管内グラフト10は、腎臓上構成で配置され、血管内グラフトは、腎動脈(図示しない)の近位の大動脈に固定される。これは、たとえば、グラフト本体内に孔または穿孔を形成し、腎動脈RAの潅流を可能にする有窓グラフトの場合に適用される。
【0035】
血管内グラフト10は、その中心内腔を通る血流の方向を変えることにより、血圧による動脈瘤嚢ASを排除するように設計される。場合によっては、デバイスの移動、または動脈瘤の形態の変化によって、血液Bは、近位端または遠位端における不完全な封止(つまり、タイプIエンドリーク)、または分岐血管BV、たとえば内部腸間膜動脈(IMA)、腰動脈など(つまり、タイプIIエンドリーク)を介して、なお動脈瘤嚢AS内に流れる。
【0036】
図2〜4は、本発明に含まれる一実施態様によるグラフト周囲空間内のエンドリークを管理する方法を示す。閉塞部材12は、圧迫構成(図示しない)の血管系を通って、血管内グラフト10の近位の位置まで前進する。血管系への接近は、大腿動脈を介して行われ、血管系を通る閉塞部材12の前進は、従来のカテーテルまたはガイドワイヤを利用する供給方法を用いて実施される。閉塞部材12の位置は、閉塞部材が所望の位置に前進する時に、X線透視法により追跡される。たとえば、閉塞部材および/またはガイドワイヤの全部または一部分は、放射線不透過性で良い。閉塞部材12が所望の位置まで前進すると、閉塞部材が作動して、大動脈から血管内グラフト10および動脈瘤嚢ASに至る血流を一時的に減少させ、一般には実質的に停止する。
【0037】
図2に示すように、閉塞部材12は、主分岐血管(たとえば、腎動脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈(SMA)などで、全体として図2にRAとして記載)の近位に位置し、大動脈Aを介した動脈瘤嚢ASおよび血管内グラフト10内への血流を一時的に減少させるか、または好ましくは停止する。閉塞部材12が、上腸間膜動脈SMA(図示しない)の近位に位置し、下腸間膜動脈IMA(図示しない)を介した動脈瘤嚢ASの潅流を防止することが、一般的に望ましい。しかし、理解されると思うが、閉塞部材12は、必要に応じて、1つまたは複数の主分岐血管の遠位に配置して良い。こうした遠位の位置は、たとえば、下腸間膜動脈IMAが血栓症を生じ、エンドリークがどこかで発生する場合に望ましい。
【0038】
閉塞部材12は、ガイドワイヤ14の遠位端またはその付近に配置された膨張可能大動脈バルーンの形態で良い。大動脈閉塞バルーンは、圧迫構成(図示しない)のガイドワイヤ14上の動脈を通って供給される。バルーン12は、大動脈内の所望の位置に配置された後、膨張内腔(図示しない)を通して任意に放射線不透過性の膨張流体を供給することにより、膨張構成まで拡張される。バルーン12の収縮は、膨張物質をバルーンから除去することにより行われる。膨張内腔はガイドワイヤ14に結合するか、または中空カテーテルの内腔で良い。
【0039】
図3に示すように、閉塞部材12が大動脈内に配置され、一時的に静止血液が形成された後、「先駆」造影流体15は、任意に、1つまたは複数の供給デバイス18、18’を介してグラフト周囲空間内に注射されるため、医師は、血管内グラフト10を通る血流が停止している間に、グラフト周囲空間内に導入される塞栓流体の経路および分布パターンを容易に観察および確認することができる。任意に、供給デバイス18、18’またはその他の吸引デバイス(図示しない)を使用して、造影流体を供給する前に動脈瘤嚢ASを吸引する。しかし、理解されると思うが、このような吸引は、エンドリークが非常に小さくない限りは不要である場合が多く、つまり、塞栓物質の導入は、動脈瘤嚢内に存在する流体を置き換えるからである。
【0040】
大動脈閉塞バルーン12の収縮により、造影流体は、ある期間にグラフト周囲空間を通る血流が再開することによって、動脈瘤嚢から消散させることができる。造影流体15の消散によって、使用者は、塞栓物質が動脈瘤嚢AS内で適切に分配されたことを後に確認することができる。
【0041】
造影流体がグラフト周囲空間から実質的に消散すると、大動脈閉塞バルーン12は、再度膨張して、血管内グラフト内(および、おそらくグラフト周囲空間)の血流を減少させ、一般に実質的に停止する。血管内グラフト内および/またはグラフト周囲空間において中断したか、さもなければ減少した流れは、塞栓物質の過度な遠位の流れの問題を伴わずに、グラフト周囲空間内の塞栓物質の注射および硬化を可能にする。
【0042】
グラフト周囲空間には多様な供給デバイスを使用して接近し、造影流体を動脈瘤嚢内に付着させることができる。たとえば、図3に示すように、グラフト周囲空間への接近は、単一内腔または多内腔カテーテル18を使って管腔内的に行われる。カテーテル18の遠位端20は、血管内グラフトの展開時または展開後に、血管内グラフト10と動脈壁との間の空間内に案内される。カテーテル18は、腸骨動脈と、グラフトの同側脚部17もしくはグラフトの対側脚部19との間、またはこれらの両方に方向付けられる。図示しないが、グラフト周囲空間には、必要に応じて、大動脈を通るか、または分岐血管BVを通って近位に接近することができる。分岐血管BVを介してグラフト周囲空間が開存している場合、グラフト周囲空間に接近することは全体として望ましく、つまり、こうした接近は、グラフト10と動脈壁との間のカテーテル18の通路によって、血管内グラフト10の封止が破壊する可能性があるからである。
【0043】
代わりに、またはさらに、動脈瘤嚢には、シリンジおよび適切なニードルなど、1つまたは複数の供給デバイス18’を使って経腰的に直接接近し、造影流体を直接グラフト周囲空間内に経皮的に供給することができる。理解されると思うが、シリンジ18’またはその他のシリンジ(図示しない)を使用して、血液またはその他の物質をグラフト周囲空間から吸引しても良い。
【0044】
図4に示すように、単一内腔または多内腔カテーテル18および/またはシリンジ18’を使用して、本発明の多成分塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給すると、塞栓物質は、血管内グラフト10の外面および大動脈壁(たとえば、動脈瘤嚢壁)の障害が発生した部分の表面に接触して、エンドリークを治療することができる。塞栓物質が実質的に硬化した後、以下のとおり、閉塞部材12が収縮して、血管内グラフトを通る血流が回復する。
【0045】
適切なカテーテル18の一例は、放射線不透過性先端を有する血管造影カテーテルである。このようなカテーテルは、内腔の流れを適切にし(シリンジを使って塞栓物質を手動で注射することを可能にする)、動脈瘤内の適切な部位にカテーテル端部を位置決めすることを容易にする。こうしたカテーテルは、約0.035”または約0.038”以下の外径を有し、ガイドワイヤと互換性があり、操作室、カテーテル製造会社、または血管内介入が日常的に行われる放射線室で容易に入手可能である。しかしながら、本発明は血管造影カテーテルに限られず、その他の従来のカテーテル及び独自に開発されたカテーテルを、塞栓物質の供給に使用することができることが理解されるであろう。
【0046】
理解されると思うが、実施態様によっては、別個のカテーテルまたはシリンジ(図示しない)を使用して、造影流体および塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給することが望ましい。別法によると、ヘパラン化生理食塩水の噴流を使用して、カテーテル18を通して組成物を導入する前に、単一内腔カテーテル18からの造影流体を清掃する。
【0047】
硬化時間が比較的長い塞栓物質の場合、塞栓物質は、グラフト周囲空間内のそれほど正確ではないか、または具体的ではない位置に注射され、血管内グラフトの近位端または遠位端のタイプIエンドリークに流れるか、および/または分岐血管内に浸透し(たとえば、タイプIIのエンドリークを封止するため)、漏れ通路に塞栓を発生させて閉鎖する。塞栓物質の特性に応じて、グラフト周囲空間および血管内グラフトを通る血流が停止するか、または実質的に減少しない場合、塞栓物質は、エンドリークの硬化および封止前にグラフト周囲空間から潅流し、腸管または抹消循環に潜在的な塞栓合併症を形成する場合がある。
【0048】
理解されると思うが、本発明の実施態様によっては、血管内グラフトおよび/または動脈瘤嚢を通る血流を減少、および一般に実質的に停止させてからエンドリークを封止させるが、塞栓物質の粘度および硬化時間は、手順時に閉塞部材12が不要であるように選択される。
【0049】
有用な塞栓物質としては、多成分を混合することにより形成され、数分から10分未満、好ましくは約1分から約10分の範囲の硬化時間を有し、塞栓物質が目標分岐血管中に浸透するか、および/またはエンドリーク内に浸透するが、エンドリークを越えない塞栓物質が挙げられる。塞栓物質は、組成に応じて、生体内または生体外で混合される。このような物質は生体適合性があり、長期間の安定性を示し(好ましくは、生体内で少なくとも10年間程度だが、必須ではない)、本発明の動脈瘤嚢に生体内で使用するのに適する、硬化前および硬化後の適切な機械的特性を呈する。たとえば、こうした物質は、凝固または硬化前に比較的低粘度を有し、所望量の充填過程を促進するべきである。塞栓物質は、急激および長期にわたって放射線不透過性で良いが、これは必須ではない。
【0050】
動脈塞栓に適する物質の1つのクラスは、アクリレートモノマーおよびマルチチオールの反応によって形成されるマイケル付加型ポリマーの族である。これらの物質は、液体または半液体形態で供給され、その後、インサイツで架橋されて、固体ポリマーゲルを形成する。塞栓物質として使用するのに適するマイケル付加型ポリマークラスの組成物の詳細は、2000年2月1日に出願され、Hubbell等に付与された米国特許出願第09/496,231号「共役不飽和基に対する求核付加反応によって形成される生体適合物質(Biomaterials Formed by Nucleophilic Addition Reaction to Conjugated Unsaturated Groups)」、および2000年6月2日に出願され、Hubbell等に付与された米国特許出願第09/586,937号「薬学的に活性の化合物の制御された供給に関する共役付加反応(Conjugate Addition Reactions for the Controlled Delivery of Pharmaceutically Active Compounds)」に記載されている。これらの特許出願の各々は、全体を引用することにより、本明細書に援用する。
【0051】
エンドリーク管理用に適する1つのマイケル付加型物質は、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)とペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオン酸)(QT)とを混合して形成されたポリマーである。グリシルグリシンなどの緩衝剤、又はその他の適切な化合物は、以下に詳細に説明するように、硬化前に液体成分の凝固時間および/または粘度を調節するために添加される。
【0052】
X線透視法、および/またはコンピュータ断層撮影法(CT)などの追跡画像形成手順における動脈塞栓物質の視覚化を促進するために、放射線不透過性薬剤も添加される。適切な放射線不透過性薬剤としては、硫酸バリウムおよびタンタルなどの比較的不溶性の物質、並びにヨウ素化対称薬剤などの可溶性物質が挙げられる。タンタルは、この点で特に有用であり、硫酸バリウムと比べて可溶性が低いために放射線不透過性の散逸が遅延する可能性、および血栓症を促進する可能性を減少させる。
【0053】
一般に、本願の出願人は、PEGDA/QT比は特定のPEGDA分子量に関して異なる場合があるが、この比率は画定した範囲内で変化することが好ましいことを発見した。たとえば、742のPEGDA分子量の場合、本願の出願人は、PEGDAが、重量で、存在するQTの量の約1.9〜3.2倍の範囲の割合で存在すると有利であることを発見した。このPEGDA/QT/緩衝剤のもう1つの有用な処方は、以下を含む。
(1)約700〜800、好ましくは約740〜760、より好ましくは約750の分子量を有するPEGDAが、約50〜約55重量%の範囲の割合で、特に全体に約53重量%の割合で存在する。
(2)PEGDAの重量%の約0.31〜約.53の倍の範囲で存在するQTが、全体に約22重量%の割合で存在する。
(3)約100ミリモル〜約500ミリモル、好ましくは約400ミリモルの濃度を有するグリシルグリシン緩衝剤が、約5〜約40重量%の範囲割合で、特に全体に約25重量%の割合で存在する。
【0054】
これらの成分の変形およびその他の処方は、係属のHubbell等による米国特許出願第09/496,231号および第09/586,937号に記載されており、これらの特許出願は必要に応じて使用する。これらの各々の特許出願の全体は、引用することにより本明細書に援用する。さらに、約350〜約850の範囲の分子量を有するPEGDAは有用であり、約440〜約750の範囲の分子量を有するPEGDAも、特に有用である。
【0055】
その他の生物学的緩衝剤、たとえばN−[2−ヒドロキシエチル]ピパラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)は、グリシルグリシンの代わりに使用できる。
【0056】
緩衝剤の強度(そのモル濃度で測定して)は、この塞栓物質のpHを調節し、その結果、物質の硬化時間を単独で支配する。さらに、緩衝剤は、一般に上記の3つの成分の中で最低粘性を呈し、存在する緩衝剤の量は、硬化前の物質の粘度に最も硬化的に影響する。したがって、塞栓物質の粘度および硬化時間に対する緩衝剤の影響は、緩衝剤の量および強度の調節に影響する。本願の出願人は、上記のとおり約5〜約40重量%、好ましくは約25重量%の範囲の量のグリシルグリシンを使用すると、約400ミリモルの濃度は、所望の硬化時間と予備硬化粘度との間の有用な平衡状態を達成することを発見した。
【0057】
この3成分物質の緩衝剤の強度および量を調節して、特定の指示および供給システムに関する所望の特性の組合せ(粘度と硬化時間など)を達成することは、本発明の範囲内である。たとえば、本明細書に記載するとおり、一般に、エンドリークを測定する場合、未硬化物質の粘度を増加し、それにより、周囲または二次血管床の意図しない潅流が生じないように、生体内における物質の配置を促進することが望ましい。本明細書に記載する上記およびその他の塞栓物質に関して、緩衝剤の量を減少させ、緩衝剤のモル濃度を増加させることによって、粘度を増加させることができる。バルキング、またはシリカゲルなどのチキソトロピック薬剤も、何らかの組合せで付加的に、または代わりに使用することができる。
【0058】
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETMPTA)とQTとを混合して形成されるポリマーも、効果的な塞栓物質として使用する。緩衝剤および/または放射線不透過性薬剤は、このシステムに使用される。本発明に使用されるもう1つの特定の物質の例は、ポリプロピレンオキシドジアクリレート(PPODA)とQTとを混合して形成されるポリマーである。緩衝剤および/または放射線不透過性薬剤も、このシステムに使用する。
【0059】
これらの3成分システムの代案は、生体適合性溶剤からポリマー沈殿を介して製造されるゲルである。このような適切なポリマーの例としては、エチレンビニルアルコールおよびセルロースアセテートが挙げられる。このような適切な生体適合性溶剤の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリドン(NMP)などが挙げられる。こうしたポリマーおよび溶剤は、適切な様々な組合せで使用される。シアノアクリレートなどのその他の物質(フロリダ州、Cordis Corporation,Miami Lakesが市販するTRUFILLなど)も使用できる。
【0060】
別法によると、様々なシロキサンが塞栓物質として使用される。例としては親水性シロキサンおよびポリビニルシロキサンが挙げられる(たとえば、カリフォルニア州、サンラモンのDanville Materialsが市販するSTAR−VPS、およびカリフォルニア州、サンタバーバラのNuSil,Inc.が製造しているような様々なシリコーン製品)。
【0061】
本発明の実施態様に関する塞栓物質として有用なその他のゲル系は、初期の液体またはチキソトロピック状態から加熱または冷却した後にゲル化する位相変化系を含む。たとえば、n−イソプロピル−ポリアクリルイミド(NIPAM)などの物質が適している。
【0062】
効果的なゲルは、十分なずり流動化を生じるチキソトロピック性物質も含み、その結果、供給カテーテルまたはシリンジなどの管を通して容易に注射されるが、それでもなお、ゼロまたは低ずり速度において実質的にゲル状になることが可能である。
【0063】
硬化時間は、臨床環境の要件に応じて、処方、混合手順およびその他の変数を調節することにより適応させることができる。
【0064】
本発明の様々な実施態様では、塞栓物質は、グラフト周囲空間が塞栓物質で充填される供給時に、X線透視法などの技術を用いて視覚化することが望ましい。こうした視認性によって、医師は、動脈瘤嚢、エンドリークおよび/または分岐血管が正確に充填されることを監視および立証し、充填されない場合、供給手順を調節することができる。また、こうした視認性は、グラフト周囲空間からの塞栓物質の漏れ、さもなければ望ましくない流れを検出して、注射を停止し、塞栓物質の遠位の潅流を最小化する機会を提供する。
【0065】
また、コンピュータ断層撮影法(CT)などの追跡画像形成技術を使用して、硬化塞栓物質を視覚化することも望ましい。
【0066】
上記の塞栓物質は、本発明の方法に使用するのに好ましい物質の一例であるが、その他の従来の塞栓物質および独自に開発された塞栓物質は、エンドリークを封止するための本発明の方法に使用することができることが分かるであろう。
【0067】
図5は、本発明の一実施態様によりエンドリークを管理するシステム30を示す。システム30は、グラフト周囲空間に接近するための供給デバイス32を備える。供給デバイス32は、1つまたは複数のカテーテル18、シリンジおよびニードル18’、または、グラフト周囲空間に接近するために使用されるその他の従来のデバイスを備える。システム30は、供給デバイス18をグラフト周囲空間内に供給することが可能な塞栓物質34も含む。塞栓物質は、3成分混合物、たとえばポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤の混合物で良い。図示の実施態様では、塞栓物質の個々の成分の各々は、別個の容器35、37、39に保存され、供給の直前に混合される。理解されると思うが、塞栓物質34は、本明細書に記載するその他の物質から構成することができる。
【0068】
システム30は、展開した血管内グラフトおよび/またはグラフト周囲空間を通る血流を実質的に減少させるように構成された閉塞組立体36を任意に含む。図2〜4に関連して上記で述べたとおり、閉塞組立体36の一実施態様は、カテーテル14の遠位端に結合される膨張可能な閉塞部材12である。
【0069】
図6は、本発明の一実施態様による1つのキット40を示す。キット40は、システム30、使用説明書42および1つまたは複数のパッケージ44の組合せを含む。供給デバイス32はほぼ上記のとおりであり、使用説明書(IFU)42は上記の方法の何れかを説明する。パッケージ44は、パウチ、トレー、箱、管などを含む何れかの従来の医療デバイスパッケージで良い。使用説明書42は、通常は別個の用紙に印刷されるが、全体または一部をパッケージ44の一部分に印刷しても良い。任意に、キット40は、カテーテル18、血管内グラフト10、および/または血管内グラフト(図示しない)を供給するための供給システムの位置決めを支援するためのガイドワイヤ(図示しない)を含む。
【0070】
図7〜9は、本発明の方法およびシステムに使用して、大動脈などの体内腔の疾患部分(たとえば、動脈瘤)を血流から隔離するための血管内グラフト10のいくつかの例を示す。図7および図8の実施態様は環状、図9の実施態様は分岐状である。
【0071】
図7および図8に示すように、グラフト10は、近位端54および遠位端52を有し、膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの可溶性物質の1つまたは複数の層から構成されたほぼ環状構造またはグラフト本体部分53を備える。近位の膨張可能カフ56は、グラフト本体部分53の近位端54またはその付近に配置され、任意の遠位端膨張可能カフ57はグラフト本体部分の遠位端55またはその付近に配置される。グラフト本体部分53は、内部を貫流する流体の流れを限定するように構成された長手方向内腔62を形成し、その長さは、約5cm〜約30cm、特に約10cm〜約20cmである。
【0072】
近位の接続部材66は、グラフト本体部分53の複数の層内のグラフト本体分の近位部分54の付近に埋め込まれる。図7の実施態様では、接続部材は蛇行するリングである。接続部材66のその他の実施態様は、異なる構成を取る。図8に示すように、遠位の接続部材67も、グラフト本体部分53の複数の層内のグラフト本体部分の遠位部分55付近に埋め込まれる。
【0073】
1つまたは複数の膨張可能部材またはステント51、61は、1つまたは複数の接続部材の接続要素68を介して、近位の接続部材66および遠位の接続部材67の何れかまたは両方に結合または取り付けられる。こうした膨張可能部材またはステントは、血管内グラフト10を大動脈内に固定するのに役立ち、グラフト10を通る流体の圧力および流れによって血管内グラフト10に加わる長手方向または軸方向の力に耐える。この実施態様では、近位および遠位の接続部材66および67の接続要素68は、それぞれ血管内グラフト10の近位端52および遠位端54の長手方向外側に延在する。
【0074】
図9は、本発明の一実施態様による分岐グラフトを示す。血管内グラフト10などの分岐デバイスは、血管内の分岐部、または分岐部付近の疾患のある内腔を修復する時に使用され、たとえば、治療される動脈瘤が、解剖学的分岐部内、または分岐部の遠位にある一方または両方の腸骨動脈内にも延在する場合に使用される。以下の説明では、上記のグラフト実施態様の様々な特徴は、特記しない限り、必要に応じて分岐グラフト10に使用することができる。
【0075】
グラフト10は、第1分岐部分70、第2分岐部分72および主本体部分74を含む。分岐部分70および72のサイズおよび角度方向は、それぞれ、ちょうど部分70と72との間で、グラフト供給システムの要件および臨床上の様々な需要に適応するように変化させることができる。たとえば、各々の分岐部分または脚部は、異なる長さを有するように図9に示されているが、これは必須ではない。第1および第2分岐部分70および72は、一般に、患者の腸骨動脈の内径に適合する膨張外径を有するように構成される。また、第1および第2分岐部分70および72は、用途によっては、曲線状または曲がりくねった生体構造により良く適合するように曲線状に形成される。近位の膨張可能カフ56は、主本体部分74の近位端54またはその付近に配置され、任意の遠位の膨張可能カフ57は、第1分岐部分70および第2分岐部分72の一方または両方の遠位端またはその付近に配置される。
【0076】
図7および図8の実施態様と同様、近位の接続部材66は、主本体部分74の複数の層内に埋め込まれ、任意に、遠位の接続部材67は、分岐部分70、72の複数の層内に埋め込まれる。1つまたは複数の膨張可能部材またはステント51は、1つまたは複数の接続部材の接続要素68を介して、近位の接続部材66および/または遠位の接続部材67に結合されるか、または取り付けられる。
【0077】
図7〜図9に示すように、また、以下の詳細な説明に記載するように、自由空間におけるカフ56、57の膨張(つまり、グラフト10が血管内またはその他の体内腔内に配置されていない場合)によって、これらのカフは、多少円形の長手方向断面を有するほぼ環状またはトロイダル状の形状を取る(特に、グラフト本体が非拘束状態の場合)。しかし、膨張可能カフ56、57は、一般に、これらのカフが内部に展開される血管の形状に適応する。完全に膨張した場合、カフ56、57は、約10mm〜約45mmの範囲、特に約16mm〜約32mmの範囲の外径を有する。
【0078】
次に、図7を参照すると、少なくとも1つの膨張可能チャネル58は、近位の膨張可能カフ56と遠位の膨張可能カフ57との間に配置され、これらの膨張可能カフと連通する。膨張可能チャネル58(および膨張可能カフ56、57)は、本体部分53内に形成された継ぎ目によって、本体部分53内に一体成形される。膨張可能カフ56、57並びにチャネル58の網状組織は、カフ57および対応するカフ/チャネル網状組織と連通する注射ポート63から膨張物質または媒体を導入または注射することによって、最も実用的には生体内で膨張する。
【0079】
図8に示すように、実施態様によっては、膨張可能チャネル58および膨張可能カフ56、57と連通する長手方向膨張可能チャネル60を備える。膨張可能チャネル58は、膨張して膨張媒体を含む場合、グラフト本体部分53に構造上の支持を提供する。膨張可能チャネル58は、角があるかまたは曲がりくねった生体構造内で展開された場合、並びに、グラフト10が展開される身体通路(たとえば、大動脈および腸骨動脈)の改造時に、グラフト本体部分の環状構造のねじれおよびよじれをさらに防止する。チャネル58は、一般に平行、線形または螺旋状構成である。近位および遠位のカフ56および57と共に、膨張可能チャネル58は、互いに連通する膨張可能カフおよびチャネルの網状組織を形成する。
【0080】
再び図9を参照すると、第1および第2分岐部分70および72は、膨張可能チャネルを含む膨張可能カフおよびチャネルの網状組織も備える。チャネルは、1つまたは複数の任意の膨張可能な長手方向のチャネル60(たとえば、背骨)であって、1つまたは複数のほぼ平行な膨張可能な周方向チャネル58と連通するチャネルを含み、これらのチャネルはすべて、任意の遠位膨張可能カフ57と連通する。チャネル58は、多様な形態を取る場合があるが、一般には平行な線形構成である。チャネル58は、たとえば、平行な周方向チャネル58および長手方向チャネル60の機能を結合する螺旋状の形態を取る場合がある。
【0081】
図9の実施態様では、チャネル58は、第1分岐部分70から主本体部分74、第2分岐部分72に延在する連続的なカフおよびチャネルの網状組織を形成する。したがって、膨張可能チャネル58は、近位の膨張可能カフ56、任意の遠位膨張可能カフ57と共に網状組織内に連通する。背骨または長手方向チャネル60は、カフ56および57と連通する主本体部分74に沿って近位に延在する。
【0082】
膨張可能カフ56、57およびチャネル58の網状組織は、カフ57および対応するカフ/チャネル網状組織と連通する注射ポート63から膨張物質または媒体を導入または注射することによって、最も実用的には生体内で膨張する。膨張物質は、固体、流体(気体および/または液体)、ゲルあるいはその他の媒体の1つまたは複数を含む。膨張物質は、デバイスが患者の体内に展開される時に、デバイスの画像化を促進する対称媒体を含む。たとえば、ビスマス、バリウム、金、ヨウ素、白金、タンタルなどを含む放射線不透過性物質は、膨張媒体の一部として、粒子状、液体状、粉末状、または他の適切な形態で使用される。液体ヨウ素化対称薬剤は、こうした画像化を促進するのに特に適する。放射線不透過性のマーカーも、同じ目的でグラフト10の一部分の中もしくは上に配置されるかまたは一体成形され、生体適合性の放射線不透過性物質の何らかの組合せから製造される。
【0083】
一実施態様では、膨張物質は、本明細書に記載する塞栓物質として使用される物質と同じ物質である。他の実施態様では、膨張物質は、塞栓物質と異なる物質の場合がある。こうした実施態様の場合、膨張物質および塞栓物質は、特定の目的に望ましい機械的特性を提供するように構成される。たとえば、本発明の様々な実施態様の近位および遠位のカフ56、57の場合、膨張物質は、内腔の壁部を封止するのに適合する封止媒体として役立つ。したがって、近位および遠位のカフにおける膨張媒体に望ましい機械的特性としては、カフ56、57が、不規則な内腔(たとえば、石灰化した粗い血小板)の周囲で変形し、内腔の輪郭に適合するための低剪断強度、および内腔の遅い拡張に適応し、封止状態を維持するために必要な場合のように、塞栓物質がカフを拡張することを可能にするための高度の容積圧縮性が挙げられるであろう。
【0084】
対照的に、1つまたは複数のチャネル58、60の場合、膨張媒体は、主に、内部にグラフトが配置される内腔に構造上の支持を提供し、グラフトに耐ねじれ性を提供するのに役立つ。したがって、1つまたは複数のチャネル内における膨張媒体に望ましい機械的特性としては、血管または内腔からの外側圧縮力によるチャネルまたはチャネルの部分の非弾性変形を防止するための高度の剪断強度、および互いに圧縮接触して隣接するチャネルまたはチャネルの部分に安定した支持を提供し、その結果、グラフトに耐ねじれ性を提供するための低容積圧縮性が挙げられる。
【0085】
最後に、グラフト周囲空間では、塞栓物質の硬化時間は、一般に、塞栓物質が、グラフト周囲空間内に導入された後、比較的迅速に硬化し(約1分〜10分未満の範囲の時間から)、塞栓物質が血管系の望ましくない部分に移動する可能性を減少させるように調節することが望ましい。グラフト周囲空間内の塞栓物質に望ましい機械的特性としては、塞栓物質が、一般に組織および血液の何れかまたは両方に直接接触する場合、高度の容積および化学的安定性である。
【0086】
これらの対照要件を条件とすると、近位および遠位のカフ用の第1の膨張媒体、および1つまたは複数のチャネル内の第2の媒体、並びにエンドリークを管理するための異なる塞栓物質など、様々な膨張物質がグラフトの様々な部分を充填することが望ましい。
【0087】
本発明のいくつかの方法では、グラフト周囲空間は、エンドリークが完全に形成される前に充填することが望ましい。こうした実施態様では、塞栓物質は、血管内グラフト10が、大動脈のAAAまたはその他の疾患部分に展開された直後に、グラフト周囲空間内に供給される。こうした方法は、一般に、上記と類似する方法ステップに従う。
【0088】
本発明に適するグラフトの別法によるいくつかの構成は、図10〜図12に概略的に示されている。別法による構成は、図7〜図9に関連して本明細書で説明および言及するグラフトなど、膨張可能なグラフトを含む。図10〜図12の実施態様では、個々の内腔、チャネル、または内腔もしくはチャネル80の網状組織は、グラフト内に組み込まれ、塞栓物質をグラフト周囲空間内に供給する。
【0089】
塞栓物質は、多様な方法で塞栓物質供給チャネルまたは内腔を介して、グラフト周囲空間内に供給される。たとえば、塞栓物質は、注射ポート84(注射ポート63に類似するか(図11)、または同じ(図10)である)を介してチャネル80に供給される。塞栓物質は、チャネル80を通って移動し、チャネル80からチャネル内の1つまたは複数の内腔アパーチャまたは開口部82を通って、グラフト周囲空間内に出て行く。有用ないくつかのアパーチャ構成は、図10〜図12に示されている。これらの実施例は、1つまたは複数のアパーチャ82が、(1)グラフトの近位のカフ56付近、(2)中間グラフト領域(および、好ましくは、グラフト周囲空間の充填を促進するように展開された後、動脈瘤嚢AS方向に方向付けられるように構成される)、および/または(3)遠位のカフ57付近のグラフト領域に配置されていることを示す。
【0090】
必要に応じて、アパーチャ82は、グラフト周囲空間のすべての部分が実質的に等しい割合で充填されるように、グラフト上に長手方向対称に分散する。その他の構成では、アパーチャ82は、グラフト上に非対称に配置される。上記の代わりに、または付加的に、1つまたは複数の塞栓物質供給チャネルは、塞栓物質がグラフト周囲空間に入る開放遠位端または末端を有する。しかし、必要に応じて、様々な位置および構成に任意の数のアパーチャを使用することができ、本発明は、図10〜図12の図示の実施例に限定されない。
【0091】
チャネル80は、膨張可能な内腔チャネル58と同じであるか、大きいか、または小さいサイズで良い。チャネル80はグラフト本体上のどこに配置しても良いが、一般に、膨張可能な内腔チャネルに重畳させるか、および/または膨張可能な内腔チャネル58間に点在させる。アパーチャ82は、任意の形状およびサイズで良いが、一般に円形であり、約0.5mil〜約2.0milの直径を有する。
【0092】
本明細書に記載する様々な膨張可能なグラフトに関連する塞栓物質の供給は、グラフト内のカフおよびチャネルの網状組織の膨張前、膨張と同時、膨張後に行われる。望ましくは、塞栓物質は、遠位の潅流の制御を促進するように、グラフトが充填された後に供給される。
【0093】
グラフトおよびステント−グラフトの様々な実施態様、グラフトの製造方法、およびグラフトの供給方法は、本願と同一所有権者による同時係属米国特許出願第10/029,557号「血管内グラフト部分を製造するための方法および装置(Method and Apparatus for Manufacturing an Endovascular Graft Section)」、米国特許出願第10/029,570号「血管内グラフト材料を成形するための方法および装置(Method and Apparatus for Shape Forming Endovascular Graft Material)」、Chobotov等による米国特許出願第10/029,584号「血管内グラフトの接合、および製造方法(Endovascular Graft Joint and Method of Manufacture)」(これらはすべて、2001年12月20日に出願された)、2002年12月20日に出願されたChobotov等による米国特許出願第10/327,711号「高度な血管内グラフト(Advanced Endovascular Graft)」、2002年12月20日に出願されたChobotov等によるPCT出願US02/40997号「血管内グラフトを製造する方法および装置(Method and Apparatus for Manufacturing an Endovascular Graft)」、2002年1月31日に出願されたChobotov等による米国特許出願第09/774,733号「膨張可能な体腔内縫合デバイスのための供給システムおよび方法(Delivery System and Method for Expandable Intracorporeal Device)」、および2002年4月11日に出願されたChobotov等による「分岐血管内グラフト用の供給システムおよび方法(Delivery System and Method for Bifurcated Endovascular Graft)」に記載されており、これらの各々の全体は、引用することにより本明細書に援用する。本明細書に記載する特徴および方法を組み込むデバイスのその他の実施態様は、Chobotovに付与された米国特許第6,395,019号(2002年5月28日)に開示されており、この特許の全体は、引用することにより本明細書に援用する。
【0094】
理解されるように、本発明の方法および塞栓物質には、多様な血管内グラフトを使用することができ、本発明は、本明細書に記載する血管内ステント−グラフトに使用することに限定されない。たとえば、本発明の実施態様は、ステント、環状グラフト、分岐グラフト、表面加工ステント、被覆ステント、単一またはモジュール式ステント−グラフトのその他の構成など、たとえばMedtronic,Inc.(ミネソタ州、ミネアポリス)、W.L.Gore&Associates,Inc.(デラウェア州、ニューアーク)、Cook Group,Inc.(インディアナ州、ブルーミントン)などが販売するものに使用することができる。
【0095】
本発明の特定の形態を図示して説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変形が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】腹部大動脈瘤内に配置された分岐血管内グラフトを概略的に示す。
【図2】図1の血管内グラフトを通る血流の一時的な減少を概略的に示す。
【図3】グラフト周囲空間内に至る造影流体または染料の供給を概略的に示す。
【図4】グラフト周囲空間内の硬化塞栓物質を示す。
【図5】本発明の一実施態様によるシステムを示す。
【図6】本発明の一実施態様によるキットを示す。
【図7】本発明の実施態様による様々な血管内グラフトを示す。
【図8】本発明の実施態様による様々な血管内グラフトを示す。
【図9】本発明の実施態様による様々な血管内グラフトを示す。
【図10】本発明の代案の実施態様による様々な血管内グラフトを示す。
【図11】本発明の代案の実施態様による様々な血管内グラフトを示す。
【図12】本発明の代案の実施態様による様々な血管内グラフトを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト周囲空間内の血管内グラフトと体内腔壁との間に入る血流を減少させる方法であって、
供給デバイスを使って前記グラフト周囲空間に接近するステップと、
前記供給デバイスを使って、塞栓物質を前記グラフト周囲空間内に供給するステップと、を含み、
前記塞栓物質が、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤を含む方法。
【請求項2】
前記塞栓物質を前記グラフト周囲空間内に供給する前に、前記グラフト周囲空間内の前記塞栓物質の流路を識別するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフト周囲空間内の前記塞栓物質の流路を識別するステップが、
造影流体を前記グラフト周囲空間内に導入するステップと、
前記造影流体の流動パターンを前記グラフト周囲空間内で監視するステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塞栓物質を前記グラフト周囲空間内に供給する前に、前記血管内グラフトを通る血流を減少させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
造影流体を前記グラフト周囲空間内に導入するステップと、
前記グラフト周囲空間内の前記造影流体の流動パターンを監視するステップと、
前記血管内グラフトを通る血流を一時的に回復することにより、前記血管内グラフトと体内腔との間の空間から、前記造影流体を実質的に消散させるステップと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
血流の減少が、前記血管内グラフトの上流に位置する閉塞部材を使って行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記閉塞部材が膨張可能なバルーンであり、
前記血管内グラフトを通る血流を減少させるステップが、前記体内腔内で膨張可能な前記バルーンを膨張させるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記塞栓物質が実質的に硬化した後、前記血管内グラフトを通る血流を回復させるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記塞栓物質が、前記グラフト周囲空間内に供給された後に第1粘度を有し、前記塞栓物質が実質的に硬化した後に凝固する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記血管内グラフトを通る血流が減少される間に、前記血管内グラフトを通る血流が、前記塞栓物質が前記グラフト周囲空間から遠位に潅流する量を減少させる、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
血流を減少させるステップが、前記血管内グラフトおよび前記グラフト周囲空間を通る血流を実質的に停止させるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記塞栓物質が放射線不透過性である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記グラフト周囲空間内への放射線不透過性塞栓物質の供給をX線透視監視するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塞栓物質がインサイツで硬化して、前記グラフト周囲空間に塞栓を生体内で生じさせ、前記塞栓物質が、前記血管内グラフトの外面、および前記体内腔壁の内面に接触して、前記グラフト周囲空間に入る血流を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記塞栓物質が、約1分間〜約10分間で硬化する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエチレングリコールジアクリレート、前記ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および前記緩衝剤の前記塞栓物質が生体外で混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記グラフト周囲空間に接近するステップが、前記供給デバイスを前記グラフト周囲空間内に経皮的に配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記塞栓物質を供給するステップが、前記塞栓物質を前記グラフト周囲空間内に経腰的に注射するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記供給デバイスは、遠位端を有するカテーテルを備え、前記グラフト周囲空間に接近するステップは、前記カテーテルの遠位端を前記血管内グラフトと前記体内腔壁との間に血管内で配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記緩衝剤がグリシルグリシンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
約5〜約40重量%の範囲の割合で前記グリシルグリシン緩衝剤を供給するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記緩衝剤がHEPESを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
約50〜約55重量%の範囲の割合で前記ポリエチレングリコールジアクリレートを供給するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリエチレングリコールジアクリレートが、約700〜約800の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
存在する前記ポリエチレングリコールジアクリレートの約0.31〜約0.53倍の重量%の割合で、前記ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)を、提供するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
生理食塩水またはその他の不活性生体適合性物質を前記塞栓物質に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記塞栓物質を供給する前に、前記血管内グラフトを前記体内腔内で膨張させるステップと、
前記血管内グラフトの少なくとも一部分を膨張物質で膨張させるステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記血管内グラフトの少なくとも一部分を前記膨張物質で膨張させるステップが、膨張可能カフおよび充填チャネルの少なくとも一方を前記膨張物質で充填させるステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記塞栓物質および前記膨張物質が同じ物質である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記塞栓物質および前記膨張物質が異なる物質である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
グラフト周囲空間内の血管内グラフトと体内腔壁との間に付着させるためのシステムであって、
前記グラフト周囲空間に接近するように構成された供給デバイスと、
前記血管内グラフトを通る血流を実質的に減少させるように構成された閉塞組立体と、
前記供給デバイスを使って前記グラフト周囲空間に供給される塞栓物質と、を含み、
前記塞栓物質が、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤を含むシステム。
【請求項32】
前記閉塞組立体が、ガイドワイヤの遠位端に隣接して配置される閉塞部材を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記閉塞部材が膨張可能なバルーンである、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記供給デバイスがシリンジを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項35】
前記供給デバイスがカテーテルを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記塞栓物質が放射線不透過性である、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
前記緩衝剤がグリシルグリシンを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項38】
前記グリシルグリシン緩衝剤が約5〜約40重量%の範囲の割合である、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記緩衝剤がHEPESを含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記ポリエチレングリコールジアクリレートが約50〜約55重量%の範囲の割合である、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記ポリエチレングリコールジアクリレートが、700〜800の分子量である、請求項37に記載のシステム。
【請求項42】
前記ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)が、存在する前記ポリエチレングリコールジアクリレートの重量%の約0.31〜約0.53倍の範囲の割合である、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記塞栓物質が、生理食塩水またはその他の不活性生体適合性物質をさらに含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項44】
前記塞栓物質は、前記グラフト周囲空間内に供給された後の第1粘度を有し、前記塞栓物質が実質的に硬化した後に凝固する、請求項31に記載のシステム。
【請求項45】
グラフト周囲空間の血管内グラフトと体内腔壁との間に塞栓物質を付着させるためのキットであって、
グラフト周囲空間に接近するように構成された供給デバイスと、
ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)、および緩衝剤を含む塞栓物質と、を含むキット。
【請求項46】
前記供給デバイスがカテーテルを含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
前記供給デバイスが、前記グラフト周囲空間に経皮的に接近するように構成されたシリンジおよびニードルを含む、請求項45に記載のキット。
【請求項48】
前記緩衝剤がグリシルグリシン緩衝剤を含む、請求項45に記載のキット。
【請求項49】
前記グリシルグリシン緩衝剤が、約5〜約40重量%の範囲の割合で存在する、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記ポリエチレングリコールジアクリレートが、約50〜約55重量%の範囲の割合で存在する、請求項45に記載のキット。
【請求項51】
前記ポリエチレングリコールジアクリレートが700〜800の分子量を有する、請求項45に記載のキット。
【請求項52】
前記ペンタエリトリトールテトラ3(メルカプトプロピオン酸)が、存在する前記ポリエチレングリコールジアクリレートの重量%の約0.31〜約0.53倍の範囲の割合で存在する、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
体内腔を一時的に閉塞させるように構成される閉塞部材をさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項54】
前記閉塞部材が膨張可能なバルーンである、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
前記緩衝剤がHEPESを含む、請求項45に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−509651(P2007−509651A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536856(P2006−536856)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/035179
【国際公開番号】WO2005/039442
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506135084)ボストン サイエンティフィック サンタ ローザ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】