説明

粒状物成形品

【課題】軽量高硬度でかつ吸音性能に優れ、車両用内装材として好適な粒状物成形品の提供を目的とする。
【解決手段】粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合することにより所要形状に賦形した粒状物成形品10において、前記粒状物を密度の異なる複数種類の粒状物で構成した。前記粒状物は粉砕物が好ましく、かつ、ポリウレタン発泡体の粉砕物からなる粒状物と発泡スチロールの粉砕物からなる粒状物とからなるのが好ましい。さらに、前記粒状物成形品は、フロアマット等の車両用内装材として用いられるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合した粒状物成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合した粒状物成形品は、種々の用途に用いられている。例えば、ベッドのスペーサ、家具やソファの芯材、建材等に用いられている。そして軽量高硬度の成形品が一般に好まれるが、特に車両用内装材に用いられるものは、燃費向上の点から、軽量高硬度のものがより好ましく、さらに車両用内装材の中でもフロアマットにおいては、軽量高硬度に加え、車両内外の振動、騒音を吸収緩和するために吸音性も求められる。
【0003】
従来、車両用内装材用の粒状物成形品には、粒状物としてポリウレタン発泡体の粒状物が用いられていた。また、軽量高硬度の要求に応えるため、バインダーを増量することが考えられる。しかし、バインダーを増量すると粒状物成形品の硬度が増すものの、増量したバインダーの硬化によって粒状物成形品の表面特性が損なわれ、吸音性に劣るようになる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−253034号公報
【特許文献2】特開2004−299208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、軽量高硬度でかつ吸音性能に優れた粒状物成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合してなる粒状物成形品において、前記粒状物が嵩密度の異なる複数種類の粒状物で構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記粒状物が粉砕物からなることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記粒状物がポリウレタン発泡体の粒状物と発泡スチロールの粒状物とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記粒状物成形品が車両用内装材として用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合してなる粒状物成形品において、前記粒状物が嵩密度の異なる複数種類の粒状物で構成されているため、嵩密度の異なる粒状物を組み合わせることにより、粒状物成形品を軽量高硬度にすることができる。しかも、硬度を高めるためにバインダーを増量した場合には、増量したバインダーの硬化によって粒状物成形品の表面特性が損なわれ、吸音性に劣るようになるが、請求項1の発明によれば、そのような不具合を生じるおそれがなく、粒状物成形品の吸音性を高めることができる。なお、本発明において、粒状物の嵩密度とは、容積既知の容器に粒状物を加圧することなく充填し、容器の容積で容器内の粒状物の重量を除した値を言う。
【0011】
請求項2の発明によれば、粒状物を粉砕物で構成したことから、粒状物の表面が粉砕による凹凸を備えたものとなり、表面の凹凸により粒状物がバインダーで確実に結合して分離のおそれのない粒状物成形品が得られる。また、粒状物が均一に分散され、重量分布のムラ等のない成形品が得られる。
【0012】
請求項3の発明によれば、粒状物をポリウレタン発泡体の粒状物と発泡スチロールの粒状物としたため、軽量高硬度でかつ吸音性能に優れた粒状物成形品が得られる。
【0013】
請求項4の発明によれば、車両用内装材として求められる軽量高硬度及び良好な吸音性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例にかかる粒状物成形品の斜視図である。図1に示す粒状物成形品10は、粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合したものであり、車両用内装材として用いられるものである。
【0015】
前記粒状物は、嵩密度の異なる複数種類の粒状物で構成される。前記粒状物の嵩密度は、前記粒状物成形品10の用途に応じて適宜決定される。前記粒状物成形品10が車両用内装材用の場合、嵩密度5〜10kg/mの粒状物と嵩密度10〜20kg/mの粒状物との少なくとも2種類の粒状物で構成するのが好ましい。また、前記粒状物は粉砕物で構成されるのが好ましい。前記粒状物を粉砕物で構成することにより、前記粒状物の表面が凹凸となり、バインダーによる粒状物同士の結合が強固となる。前記粒状物は、廃棄品を粉砕したもの、あるいは未使用製品を粉砕したものの何れでもよく、あるいは両者の混合であってもよい。なお、粉砕は公知の粉砕装置を用いて行うことができる。
【0016】
前記粒状物の粒径は、2〜10mmが好ましい。前記粒状物の粒径が2mm未満になると、粒状物成形品における粒状物の影響が小さくなって粒状物成形品全体がバインダーの硬化物のようになり、良好な吸音性が得られなくなる。それに対して、前記粒状物の粒径が10mmより大になると、粒状物成形品10の使用中に粒状物間で破断し易くなる。
【0017】
前粒状物の材質は、弾性体が好ましく、例えば、ポリウレタン発泡体、フェノール発泡体、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等のポリオレフィン発泡体、ゴム等を挙げることができ、発泡体及び非発泡体の何れでもよい。特に、前記粒状物成形品10の軽量性を高めるには、前記粒状物の材質として発泡体が好ましい。なかでも、ポリウレタン発泡体の粉砕物からなる粒状物と発泡スチロールの粉砕物からなる粒状物の組み合わせは、前記粒状物成形品10を軽量高硬度及び良好な吸音性を有するものとするうえで好ましいものである。ポリウレタン発泡体の粉砕物からなる粒状物は嵩密度10〜20kg/m、発泡スチロールの粉砕物からなる粒状物は嵩密度5〜10kg/mのものが好ましい。また、前記ポリウレタン発泡体の粒状物と前記発泡スチロールの粒状物の混合比(重量比)は、ポリウレタン発泡体の粒状物:発泡スチロールの粒状物=8:2〜9:1が好ましい。前記発泡スチロールの粒状物が多すぎると粒状物成形品の引張り強度、伸び等の物理的強度が不足するようになる。一方、発泡スチロールの粒状物が少なすぎると粒状物成形品の硬度が低くなって、車両用内装材としての要求基準を満たさなくなくなる。
【0018】
前記バインダーは、前記粒状物を結合するためのものであり、従来、粒状物成形品の製造に用いられている公知のものを使用することができる。バインダーの例として、ウレタンプレポリマー、溶剤型ポリウレタン、二液無溶剤型ポリウレタン、水性エマルジョン等を挙げることができるが、それらの中でも、湿分で硬化するウレタンプレポリマータイプが作業性等の点から好適である。前記バインダーと粒状物の量は、バインダーと粒状物の合計重量を100とした場合に、バインダーの重量:粒状物の重量=20:80〜70:30が好ましい。バインダーの量が少ない場合、粒状物の結合不良となって、得られる粒状物成形品において粒状物が分離し易くなったり硬度が低くなったりする。それに対してバインダーの量が過剰になると、バインダーの硬化によって粒状物成形品の表面特性が損なわれ、吸音性に劣るようになる。
【0019】
前記粒状物成形品の製造は、混合及びバインダー付着工程と、加熱圧縮硬化工程と、脱型工程とにより行われる。
【0020】
混合及びバインダー付着工程では、密度の異なる複数種類の粒状物を混合すると共に前記粒状物にバインダーを付着させることが行われる。前記混合は、公知の混合攪拌装置を用いて行うことができる。また、前記粒状物に対するバインダーの付着は、公知の方法で行うことができる。例として、混合攪拌中の粒状物にバインダーをスプレー塗布する方法や、スプレー塗布後に混合攪拌装置(ブレンダー)で粒状物とバインダーを混合する方法、あるいは粒状物とバインダーを直接混合攪拌装置に投入して混合する方法などがある。
【0021】
加熱圧縮硬化工程では、前記混合及びバインダー付着工程で得られた混合物を成形型に充填し、バインダーの種類に応じて成形型を所要温度に加熱し、あるいは成形型内に蒸気を供給して前記混合物を加熱加圧することにより、前記バインダーを硬化させて前記粒状物を結合させることにより粒状物成形品にする。前記成形型は、粒状物成形品の製造に使用される公知のものを使用することができる。成形型の例として、製品形状からなる混合物収容凹部を内部に備える本体と、前記混合物収容凹部に蓋をする蓋体とよりなり、前記混合物収容凹部形状に粒状物成形品を賦形するものが挙げられる。なお、前記成形型の混合物収容凹部に蒸気を供給する場合には、成形型外の蒸気供給装置から混合物収容凹部に至る蒸気供給管を成形型に接続しておいてもよい。
【0022】
脱型工程では、前記成形型を開けて前記粒状物がバインダーで結合して賦形された粒状物成形品を取り出す。
【実施例】
【0023】
以下実施例について説明する。発泡スチロール製の箱を粉砕機に投入して得られた発泡スチロールの粉砕物を、直径6mmのメッシュでふるいにかけて直径6mmの発泡スチロール粒状物を得た。得られた発泡スチロール粒状物を2Lのビーカーに摺り切りとなるように充填してビーカー及び発泡スチロール粒状物の全体重量を測定し、その測定重量からビーカーのみの重量を差し引いて得られた発泡スチロール粒状物の重量14gを、ビーカーの容積で除して発泡スチロール粒状物の嵩密度を測定したところ7kg/mであった。
【0024】
また、密度の異なる二種類のポリウレタン発泡体をそれぞれ粉砕機に投入して得られたポリウレタン発泡体の粉砕物を、直径6mmのメッシュでふるいにかけて直径6mmの二種類のポリウレタン発泡体粒状物を得た。得られた二種類のポリウレタン発泡体粒状物を、それぞれ前記発泡スチロール粒状物の場合と同様にして2Lのビーカーに摺り切りとなるように投入し、ビーカー及びポリウレタン発泡体粒状物の全体重量を測定し、その測定重量からビーカーのみの重量を差し引いて得られたポリウレタン発泡体粒状物の重量20g、40gを、ビーカーの容積で除してポリウレタン発泡体粒状物の嵩密度を測定したところ、一方のポリウレタン発泡体粒状物の嵩密度は14kg/m、他方のポリウレタン発泡体粒状物の嵩密度は20kg/mであった。
【0025】
混合攪拌装置に前記嵩密度14kg/mのポリウレタン発泡体粒状物を864g投入して混合攪拌し、混合攪拌中のポリウレタン発泡体粒状物に、バインダーとして湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)を120gスプレー塗布装置(明治電機製)により塗布し、その後混合攪拌装置に前記嵩密度7kg/mの発泡スチロール粒状物を216g投入して混合攪拌し、1200gの混合物を得た。得られた混合物の370gを、車両用フロアマットの成形型における混合物収容凹部(40×450×450mm)に投入し、混合物収容凹部に100℃の蒸気を供給して0.02MPaの圧力で1分間、混合物を加熱加圧し、前記バインダーを硬化させることにより粒状物成形品を形成し、その後成形型から粒状物成形品を取り出して第1実施例の粒状物成形品とした。第1実施例の粒状物成形品は、重量370g、密度45kg/mであった。密度は、JIS K 7222:1999に基づき測定した。
【0026】
また、前記嵩密度14kg/mのポリウレタン発泡体粒状物864gに代えて前記嵩密度20kg/mのポリウレタン発泡体粒状物972gを混合攪拌装置に投入し、また、前記混合攪拌装置に投入する嵩密度7kg/mの発泡スチロール粒状物の量を108gとし、バインダーとしての湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)を120gとし、その他を第1実施例と同様にして1200gの混合物を得た。さらに得られた混合物の370gを車両用フロアマットの成形型の混合物収容凹部(40×450×450mm)に投入し、第1実施例と同様にしてバインダーを硬化させて粒状物成形品を形成し、その後成形型から粒状物成形品を取り出して第2実施例の粒状物成形品とした。第2実施例の粒状物成形品は、重量370g、密度45kg/mであった。
【0027】
なお、比較のために、前記混合攪拌装置への嵩密度14kg/mのポリウレタン発泡体粒状物の投入量を720g、嵩密度7kg/mの発泡スチロール粒状物の投入量を0g、湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)のスプレー量を480gとし、混合物1200gを得た。この混合物の370gを車両用フロアマットの成形型の混合物収容凹部へ投入して、重量370g、密度45kg/mの粒状物成形品を、比較例1として製造した。また、混合攪拌装置への嵩密度20kg/mのポリウレタン発泡体粒状物の投入量を960g、嵩密度7kg/mの発泡スチロール粒状物の投入量を0g、湿分硬化型のウレタンプレポリマー(品名;M−12、イノアックコーポレーション社製)のスプレー量を240gとし、混合物1200gを得た。この混合物の370gを車両用フロアマットの成形型の混合物収容凹部へ投入して、重量370g、密度45kg/mの粒状物成形品を、比較例2として製造した。
【0028】
前記実施例1及び実施例2と前記比較例1及び比較例2に対し、硬度(N)、引張り強度(MPa)、伸び(%)、吸音性を測定した。硬度についてはJIS K 6400−2:2004に基づき、引張り強度及び伸びについてはJIS K 6400−5:2004に基づき、吸音性についてはJIS A 1405(ISO 10534−2)の垂直入射吸音率に基づきそれぞれ測定した。測定結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の測定結果から理解されるように、実施例1及び実施例2は比較例1及び比較例2よりも軽量高硬度であり、また吸音性に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例にかかる粒状物成形品の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10 粒状物成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物をバインダーと共に加熱加圧して前記バインダーで結合してなる粒状物成形品において、
前記粒状物が嵩密度の異なる複数種類の粒状物で構成されていることを特徴とする粒状物成形品。
【請求項2】
前記粒状物が粉砕物からなることを特徴とする請求項1に記載の粒状物成形品。
【請求項3】
前記粒状物がポリウレタン発泡体の粒状物と発泡スチロールの粒状物とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の粒状物成形品。
【請求項4】
前記粒状物成形品が車両用内装材として用いられることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の粒状物成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−1060(P2007−1060A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181449(P2005−181449)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】