説明

粘着剤層、その製造方法、粘着シート、クリーニングシート、クリーニング機能付き搬送部材およびクリーニング方法

【課題】基板処理装置内の搬送性および装置内に付着している異物の除去性の両者に優れている、クリーニングシートに好適な粘着剤層を提供すること。
【解決手段】アクリル系粘着剤を含有してなる平面状の表面を有する粘着剤層であって、前記アクリル系粘着剤が、アクリル系モノマー及び/又は前記アクリル系モノマーを重合してなるアクリル系ポリマーを含有し、前記粘着剤層の表面に不連続な凹部を有し、前記粘着剤層の引張り弾性率が10MPa未満であることを特徴とする粘着剤層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に不連続な凹部を有する粘着剤層およびその製造方法に関する。また、本発明は、前記粘着剤層を有する粘着シートに関する。また本発明は、前記粘着シートを用いたクリーニングシート、さらにはクリーニングシートを用いたクリーニング機能付き搬送部材、さらにはこれらを用いた基板処理装置のクリーニング方法に関する。
【0002】
本発明の粘着シートは、各種用途において使用できるが、前記の表面に凹部を有する粘着剤層は、その表面粘着性と異物捕集性を制御できることから、各種基板装置自体には付着しない、つまりは搬送トラブルを引き起こさず、かつ、異物捕集性を有するシート、具体的には各種の基板処理装置をクリーニングするシートとして有用である。例えば、本発明のクリーニングシートは、半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や検査装置などの、異物を嫌う基板処理装置のクリーニングシート等として有用である。
【背景技術】
【0003】
半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や、各種基板処理装置は、各搬送系と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、基板や搬送系に異物が付着していると、後続の基板を次々に汚染することになる。そのため定期的に装置を停止させ、異物除去のための洗浄処理をする必要があった。このため、稼働率低下や多大な労力が必要になるという問題があった。また洗浄時に人が介することで、ほかの部位への異物の付着の問題も生じることがあった。これらの問題を解決するため、粘着状物を固着した基板を搬送することにより基板処理装置内の付着した異物をクリーニング除去する方法(特許文献1)や、板状部材を搬送することにより基板裏面に付着する異物を除去する方法(特許文献2)が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の方法は、前述の課題を克服する有効な方法である。しかし、この方法では粘着性物質と装置接触部とが強く接着しすぎて剥れないおそれがあり、基板を確実に搬送できなかったり、搬送装置を破損させたりするおそれがあった。また基板搬送装置に付着した粘着性の物質が基板を汚染するおそれも生じる。
【0005】
また、特許文献2に記載の方法は、搬送は問題なくできるが、肝心の除塵性に劣るという問題がある。またこれら粘着性の物質を固着した基板は、使用までにその粘着性物質表面を、一般にシリコーンなどの離型剤を塗布した剥離フィルムで保護するのが一般的である。しかし、この方法では、離型剤成分がクリーニング層表面に転移し、さらに該転移離型剤成分が搬送装置の基板接触部を汚染させる問題がある。
【0006】
また、粘着剤層の表面に編み物等のポーラスクリーン層が設けられたクリーニングテープ(特許文献3)、多孔質の非粘着性の層をクリーニング層とするクリーニングシート(特許文献4,特許文献5)が提案されている。しかし、これらのクリーニングシートは、基板処理装置内での搬送性と、装置内に付着している異物の除去性をある程度は満足するものの、十分に満足しているとはいえない。
【特許文献1】特開平10−154686号公報
【特許文献2】特開平11−87458号公報
【特許文献3】特開平11−232621号公報
【特許文献4】特開2002−329699号公報
【特許文献5】特開2003−115521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に照らし、基板処理装置内の搬送性および装置内に付着している異物の除去性の両者に優れている、クリーニングシートに好適な粘着剤層およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、前記粘着剤層を有する粘着シートを提供すること、前記粘着シートを用いたクリーニングシートを提供すること、さらにはクリーニングシートを用いたクリーニング機能付き搬送部材を提供すること、さらにはこれらを用いた基板処理装置のクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討した結果、下記に示す粘着剤層を、基板処理装置内の付着した異物をクリーニング除去するにあたり、クリーニング層として使用することにより、前記搬送性の問題を生じることなく、さらに異物を簡便かつ確実に剥離除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有してなる平面状の表面を有する粘着剤層であって、前記アクリル系粘着剤が、アクリル系モノマー及び/又は前記アクリル系モノマーを重合してなるアクリル系ポリマーを含有し、前記粘着剤層の表面に不連続な凹部を有し、前記粘着剤層の引張り弾性率が10MPa未満であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記粘着剤層の製造方法であって、前記アクリル系粘着剤に、前記アクリル系ポリマーとは相溶化しない化合物を配合した粘着剤組成物を、前記アクリル系ポリマーを溶解する溶媒(A)および前記アクリル系ポリマーと前記不相溶化合物の双方を相溶する相溶化溶媒(B)を含有する混合溶媒に溶解した粘着剤組成物溶液を調製する工程(1)と、前記粘着剤溶液を基材上に塗布して、乾燥することにより、粘着剤組成物層を形成する工程(2)と、前記粘着剤組成物層から不相溶化合物を除去して粘着剤層を形成する工程(3)と、を有することを特徴とする粘着剤層の製造方法、に関する。
【0012】
本発明の粘着剤層の製造方法は、前記アクリル系ポリマーと前記不相溶化合物の双方を相溶する相溶化溶媒(B)は、相溶性のパラメータであるχパラメータが、アクリル系ポリマー及び不相溶化合物に対して3以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の粘着剤層の製造方法は、前記不相溶化合物は、アクリル系ポリマーに対するχパラメータが7以上であり、かつ沸点が200℃以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の粘着剤層の製造方法は、前記粘着剤組成物溶液は、均一状態であるが、相溶化溶媒(B)が不存在の状態では相分離が生じるように、溶媒(A)および相溶化溶媒(B)が選択されていることが好ましい。
【0015】
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層が、その不連続な凹部が表面になるように、支持体の少なくとも片面に設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明のクリーニングシートは、前記粘着剤層が、その不連続な凹部が表面になるように、支持体の少なくとも片面にクリーニング層として設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明のクリーニングシートは、前記粘着剤層が、その不連続な凹部が表面になるように、支持体の片面にクリーニング層として設けられており、他の片面には、固定用の粘着剤層を有することが好ましい。
【0018】
本発明は、前記クリーニングシートが、固定用の粘着剤層を介して搬送部材に設けられていることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材、に関する。
【0019】
また、本発明は、前記クリーニングシートまたは前記クリーニング機能付き搬送部材を、基板処理装置内に搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法、に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粘着剤層は、表面に不連続な凹部を有することから、その接着力は、表面に凹部を有しない平滑構造の粘着剤層に比べて低いが、粘着剤層表面は微細な凹部を有し、また実質的に表面は平坦であるため、異物と極めて密に接触し、また異物全部あるいはその一部が凹部に入り込むことで、確実に異物を捕集できるという効果が期待できる。また、前記粘着剤層をクリーニングシート等に用いた場合であっても、異物捕集性を保持しつつ、実質的に搬送性が得られ、更に基板搬送装置内に付着するトラブルの発生を防止することができ、有効である。なお、粘着剤層表面が不連続な凹部でなく、突起状(凸部)となっている場合には、接着面積の大幅な低下により所望の異物捕集性が得られ難い。
【0021】
また、本発明の粘着剤層は、引張り弾性率が10MPa未満であることから、粘着剤層自体が柔らかく設計されているため、各種サイズの異物を捕集することができ、異物を落下させることなく確実に除去することができる。また、引張り弾性率が10MPa未満と低い値であるにも拘らず、前記粘着剤層表面に凹部を有するため、異物捕集性を凹部を有しない場合に比べて、より確保することができる。
【0022】
かかる粘着剤層は、アクリル系粘着剤により形成することができ、その製法としては、例えば、前記工程(1)〜(3)を施すことにより行うことができる。なお、粘着剤層表面に凹凸構造を形成する方法としては、転写法、相分離現象の利用、インクジェット技術、レーザー加工などがあげられる。例えば、相分離現象を用いて凹凸構造を形成する方法としては、特開2003−277534号公報に位置修正テープ用として、混合溶媒を蒸発させて、粘着剤の貧溶媒と粘着剤との間の相分離および剥離現象を利用し、基材上に、粘着剤の点状物を形成する記載がある。また、特開2004−151642号公報には透明基材上に、インクジェット方式により微細な凹凸構造を形成する防眩性付与組成物を含有するインク液滴を出射して、該基材表面に微細凹凸構造を有する防眩層を形成することを特徴とする防眩層の形成方法について記載がある。しかしながら、これらの方法により得られる構造は、いずれも突起状であり、凹構造を形成しているものではない。またこれらはいずれも突起状構造を形成しているため、接着力が大幅に低くなり、異物捕集性を確保できない。またいずれも大面積で実施するのは難しい。また、点状部分の粘着剤が基材より脱落して、基板搬送装置に付着してしまう可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の粘着剤層を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の粘着剤層を概念的に示す斜視図であり、図2は断面図である。図1、図2に示すように、本発明の粘着剤層1は、その表面Sが平面状であり、当該表面Sに不連続な凹部aを有する。表面Sが平面状とは、粘着剤層1の厚さ(H)が略等しいこと(最大厚さと最小厚さの差が±10%程度)を示す。
【0024】
前記粘着剤層は、その引張り弾性率が10MPa未満である。粘着剤層の引っ張り弾性率が10MPaとすることで、被クリーニング面上の異物への追従性が大幅に向上させることができ、異物捕集力を増加させることができる。また、粘着剤層の引張り弾性率はより好ましくは、2MPa以下であり、更に好ましくは、0.1〜1.5MPaである。
【0025】
また、本発明の粘着剤層を、クリーニングシートのクリーニング層として用いる場合には、クリーニング層に直径50mmの金属片を2kgの加重で3分間密着させ、室温23℃にて引っ張り速度100mm/分で金属片を垂直に持ち上げた時にかかる力(垂直剥離力)が、5N以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3Nである。この範囲であれば本発明において異物捕集性を保持しつつ、実質的に搬送性が得られるといえ、更に基板搬送装置内に付着するトラブルの発生を防止することができ、有効である。
【0026】
本発明の粘着剤層は、前記凹部の形成により接着力を低下できること、特に前記範囲の接着力に制御しやすいことから、熱硬化性または放射線(紫外線、電子線等)硬化性のアクリル系粘着剤を含有することが好ましい。なお、通常、アクリル系粘着剤を使用する場合、放射線(紫外線、電子線等)硬化性モノマーを主として使用するが、放射線硬化モノマーは使用しないもしくは使用量を少なく設定すると、粘着剤層の引張り弾性率を低下させることができる。
【0027】
また、放射線硬化性のモノマーを使用しない、または使用量を減らすと、粘着剤層表面に凹部を形成しにくくなる。その理由としては、通常、放射線硬化性モノマーはアクリル系ポリマーに対して、分子量が小さいため、相溶性を示しやすく、相分離状態を形成しにくいが、一方、放射線硬化性モノマーを使用しないまたは使用量を減らすことにより、完全または完全に近い形で相分離するため、所望の相分離状態を得ることができない傾向にある。従って、溶媒(A)と溶媒(B)を規定し、さらには不相溶化合物のχパラメータを規定することにより、所望の相分離状態を形成している。
【0028】
以下、熱硬化性または放射線硬化性のアクリル系粘着剤について説明する。熱硬化性または放射線硬化性のアクリル系粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の熱硬化性または放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。かかる官能基としては、(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。以下、(メタ)は同様の意味である。
【0029】
熱硬化性または放射線硬化性のアクリル系粘着剤としては、たとえば、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする感圧性のアクリル系粘着剤に、重合性不飽和化合物として、熱硬化性または放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の硬化性粘着剤を例示できる。
【0030】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜12、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどがあげられる。
【0031】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)などがあげられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の10重量%以下、さらには5重量%以下が好ましい。
【0032】
さらに、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマーなども、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の10重量%以下、さらには5重量%以下が好ましい。
【0033】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50万〜150万、さらに好ましくは80万〜120万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の分散度(Mw/Mn)は、6〜10であるのが好ましい。
【0034】
重量平均分子量は、GPC法で標準ポリスチレンにより換算した値である。GPC本体として、東ソー社製のHLC−8120GPCを使用し、カラム温度40℃、ポンプ流量0.5ml/min、検出器RIを用いたデータ処理は、予め分子量が既知の標準ポリスチレンの検量線(分子量500〜2060万での検量)を用い、換算分子量より分子量を求めた。
使用カラム:TSKgel GMH−H(S)×2本(東ソー社製)
移動相:テトラヒドロフラン
注入量:100μl
サンプル濃度:1.0g/l(テトラヒドロフラン溶液)
分散度は、重量平均分子量と数平均分子量の比として算出した。数平均分子量の測定は、重量平均分子量の測定と同一方法にて実施した。
【0035】
また重合性不飽和化合物は、熱硬化性または放射線硬化性のモノマー成分、オリゴマー成分であり、熱や放射線などの活性エネルギー源により硬化させることのできる、分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物である。好ましくは、不飽和二重結合を2個以上有する化合物である。かかる硬化成分は、搬送時にクリーニング層が被クリーニング部位と強く接着しないようにするための接着力制御をするのに好適であり、またこれらモノマー成分、オリゴマー成分を添加することで系の粘度を低下させることができるために、相分離時に凹構造がより均一に形成されるようになる効果も期待できる。
【0036】
前記重合性不飽和化合物としては、不揮発性でかつ重量平均分子量が10000以下の低分子量体であるのがよく、特に硬化時のクリーニング層の三次元網状化が効率よくなされるように、5000以下の分子量を有しているのが好ましい。このような重合性不飽和化合物の具体例としては、例えば、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中から、1種または2種以上が用いられる。
【0037】
前記重合性不飽和化合物(モノマー成分、オリゴマー成分)の配合量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、3〜100重量部が好ましく、さらには5〜80重量部が好ましく、さらには10〜70重量部が好ましく、さらには10〜60重量部が好ましい。
【0038】
また、熱硬化性又は放射線硬化性のアクリル系粘着剤としては、上記説明した添加型のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型のものもあげられる。内在型の硬化性粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる。
【0039】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。このようなベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては前記例示したアクリル系ポリマーがあげられる。
【0040】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず。様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま、縮合または付加する方法があげられる。
【0041】
これら官能基の組み合わせの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などがあげられる。これら官能基の組み合わせの中でも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、上記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組み合わせであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を融資、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルのエーテル化合物などを共重合したものが用いられる。
【0042】
前記内在型の硬化性粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(アクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。
【0043】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーの架橋を促進するために、必要に応じて外部架橋剤を適宜に添加することもできる。架橋剤の種類としては、例えばカルボキシル基や水酸基を有するアクリル系ポリマーに対し、この官能基と反応しうる多官能性化合物が好ましい。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー、各種金属塩、キレート化合物などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法があげられる。これら架橋剤(多官能性化合物)の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、20重量部以下の範囲内、さらには0.01〜20重量部、0.01〜10重量部で配合するのが好ましい。これら架橋剤は1種類あるいは2種類以上を同時に使用しても何ら問題はない。
【0044】
前記硬化性のアクリル系粘着剤には、硬化方式に応じて、開始剤を含有させることができる。前記硬化性粘着剤を、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.1〜10重量部程度、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0045】
前記粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、連鎖移動剤、可塑剤等の添加剤を用いてもよい。
【0046】
本発明の粘着剤層の形成方法は、前記のように、表面に不連続な凹部を有する粘着剤層を形成できる方法であれば特に制限はないが、前記アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤に、前記工程(1)〜(3)を施すことにより行うことができる。
【0047】
工程(1)では、アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤に、さらに前記アクリル系ポリマーとは相溶化しない化合物を配合した粘着剤組成物を、前記アクリル系ポリマーを溶解する溶媒(A)および前記アクリル系ポリマーと前記不相溶化合物の双方を相溶する相溶化溶媒(B)を含有する混合溶媒に溶解した粘着剤組成物溶液する。
【0048】
更に、工程(2)では、前記粘着剤溶液を、基材上に塗布して、乾燥することにより、粘着剤組成物層を形成する。
【0049】
前記不相溶化合物は、粘着剤層の表面に凹部を形成させるための、アクリル系粘着剤に対して相溶性の低い添加剤である。前記不相溶化合物は、前記アクリル系粘着剤と混合でき、粘着剤組成物層を形成した際に、相分離できるものであれば特に制限はされない。前記粘着剤組成物は、溶液として用いられるため、粘着剤組成物を基材に塗布後、溶媒除去過程において相分離するものが好ましい。前記不相溶化合物の相分離の程度としては、アクリル系粘着剤(溶液)と液体状態において液相分離状態を形成するものが好適である。
【0050】
また、前記不相溶化合物としては、溶媒乾燥時に揮発しない程度の沸点を持つ化合物が用いられる。例えば相溶性に関しては、アクリル系ポリマーに対するχパラメータが7以上であると、アクリル系粘着剤と相分離しやすいため、相分離構造を形成しやすく、更に凹部以外の面積が広くなるため、形成した凹部が変形し難くなり、凹部の消失が防止できる。また、前記χパラメータは、7.5以上、さらには8以上であるものが好ましい。一方、χパラメータが7未満であると相分離が起こりにくくなり、組成のわずかな変化が相分離に影響するため、溶媒乾燥条件の影響を受けやすく安定して構造を形成しにくくなる。相分離の程度としては、前記ポリマーと液体状態で、相分離する液相分離状態を形成する不相溶化合物を用いることが好適である。
【0051】
χパラメータは、Flory‐Huggins理論に基づく相互作用定数で、χパラメータ=(V1/RT)×(δ1−δ2)2、で定義される。
1:モル容積、R:気体定数、T:絶対温度、δ:溶解度パラメータ。
【0052】
また、50〜60℃付近で前記混合溶媒を乾燥させる場合には、前記不相溶化合物としては、沸点が200℃以上のものを用いれば、溶媒乾燥時に揮発することなく、相分離構造を形成することができる。前記不相溶化合物の沸点は、より好ましくは220〜300℃である。
【0053】
前記不相溶化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、およびポリプロピレングリコール、グリセリン、ブタントリオール及びそれらの片末端または両末端メチル封鎖物、片末端または両末端(メタ)アクリレート封鎖物などが例として挙げられ、その一種以上を選択して使用することができる。その中でも、沸点の高さや相分離させる容易さ、更にはハンドリングの観点から、グリセリン(沸点290℃)を用いることが好適な態様である。
【0054】
前記不相溶化合物の配合量は、通常、添加型の硬化性アクリル系粘着剤の場合には、アクリル系ポリマー100重量部に対して、形成される凹部のサイズを適正化するため、100重量部以下が好ましく、さらには50重量部以下が好ましい。一方、凹部を発現させるレベルの相分離を達成するためには、3重量部以上が好ましく、より好ましくは5重量部以上であり、更に好ましくは、8〜30重量部である。
【0055】
前記粘着剤組成物溶液の調製は、前記不相溶化合物を、上記アクリル系粘着剤と溶媒を介して混合することにより行うことができる。溶媒としては、前記アクリル系粘着剤に用いるアクリル系ポリマーを溶解する溶媒(A)および前記アクリル系ポリマーと前記不相溶化合物の双方を相溶する相溶化溶媒(B)を含有する混合溶媒が用いられることが好ましい。
【0056】
前記溶媒(A)は、アクリル系ポリマーを均一に溶解できるものを、アクリル系ポリマーの種類に応じて適宜に決定される。前記溶媒(A)を、溶解性の指標であるχパラメータで表すと、アクリル系ポリマーに対するχパラメータが1以下のものを用いるのが好ましく、より好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。χパラメータが1を超える場合には、アクリル系ポリマーを溶解させ難い場合がある。
【0057】
前記溶媒(A)としては、例えば、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、o‐キシレン、m‐キシレン、p‐キシレン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐ヘプタノン(メチルペンチルケトン)、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン(アノン)、メチルシクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、N‐メチルピロリドン等があげられる。特に溶媒(A)としては、酢酸エチル(アクリル系ポリマーに対するχパラメータ0.53、以下同様。)、トルエン(0.44)、キシレン(0.35)等が好ましい。
【0058】
一方、相溶化溶媒(B)は、前記アクリル系ポリマーと前記不相溶化合物の双方を相溶するものであり、かつ溶媒(A)と相溶するものが用いられる。相溶化溶媒(B)、溶解性の指標であるχパラメータで表すと、アクリル系ポリマーに対するχパラメータが3以下のものを用いるのが好ましく、より好ましくは2.5以下である。相溶化溶媒(B)の前記χパラメータが、前記範囲外になると、粘着剤組成物溶液として、アクリル系粘着剤と前記不相溶化合物とを溶液中で均一に分散できなくなる場合がある。
【0059】
前記相溶化溶媒(B)は、アクリル系ポリマー、不相溶化合物、溶媒(A)の種類に応じて適宜に選択される。前記相溶化溶媒(B)としては、例えば、アルコール系溶媒が好適である。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、1‐ペンタノール、シクロヘキサノール、2‐メチルシクロヘキサノール、2‐メトキシエタノール、2‐エトキシエタノール、2‐ブトキシエタノールなどがあげられる。これらのなかでも、メタノール、エタノール、ブタノール等が好適である。
【0060】
前記溶媒(A)と相溶化溶媒(B)の混合比は、アクリル系ポリマー、アクリル系モノマーおよび不相溶化合物を均一混合できれば特に限定されないが、通常、溶媒(A)/相溶化溶媒(B)=1/3〜6/1(重量比)が好ましい。溶媒(A)/相溶化溶媒(B)の値が、1/3未満または6/1を超えると均一混合ができなくなる場合があり、粘着剤層が、均一な凹部構造を形成できなくなってしまう場合がある。なお、前記混合溶媒により、粘着剤組成物は、通常、固形分濃度が、5〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%の溶液に調整される。
【0061】
前記粘着剤組成物溶液は、溶媒(A)および相溶化溶媒(B)の混合溶媒を用いることにより、均一状態になるが、相溶化溶媒(B)が不存在の状態では相分離が生じるようになるような溶媒(A)が好ましい。かかる溶剤(A)を用いると、工程(2)において、アクリル系粘着剤と不相溶化合物との相分離構造を形成するうえで好ましい。
【0062】
前記粘着剤組成物溶液を、支持体上に塗布して、前記溶媒を乾燥することにより、粘着剤組成物層を形成する。当該形成方法としては、各種方法を採用できる。例えば、粘着剤組成物層の形成に連続塗工装置を用いる場合は、例えば、粘着剤組成物溶液を連続的に供給して、装置先端に取り付けたダイスなどの吐出手段より連続的にシート基材上に薄層に押出してする方法が挙げられる。また粘着剤組成物層を形成する方法として、バッチ方式を採用する場合には、支持体上に粘着剤組成物溶液を基材上に流延して、アプリケーターや、マイヤーバー、ナイフコーターで成形する方法が挙げられる。このようにして、薄層化した粘着剤組成物を支持体上に積層した後、加熱して、溶媒を除去する。溶媒を乾燥することによって、前記不相溶化合物を、アクリル系粘着剤組成物中で不溶化させ相分離することで、非常に微細な凹構造を表面に形成させる。前記混合溶媒を乾燥温度は特に制限されないが、50〜60℃程度とするのが好ましい。
【0063】
前記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、通常、5〜100μm程度、さらには、10〜50μmであるのが好ましい。これより薄い場合、粘着剤層の形状追随性が低下し、異物捕集性が低下することがある。またこれ以上では基材が厚くなりすぎてハンドリングしにくい場合がある。
【0064】
前記基材は、得られる粘着剤層を設けた粘着シートの支持体としても用いることができる。かかる支持体になりうる基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフイン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、アセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカルボジイミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂などのプラスチックシートなどが挙げられる。基材の厚みは、通常、10〜300μm程度が好ましい。さらには30〜200μm程度であるのが、ハンドリングの面で好ましい。なお、粘着剤層の形成に、放射線硬化性粘着剤を用いる場合には、紫外線などの光を透過するプラスチックシートが選択使用される。また基材としては、場合によっては金属箔を使用してもよい。これら基材はその表面に各種表面処理が施されていてもよい。
【0065】
次いで、工程(2)では、前記粘着剤溶液を基材上に塗布して、乾燥することにより、粘着剤組成物層を形成する。
【0066】
前記基材上に製膜した粘着剤組成物層への、加熱にあたり、アクリル系粘着剤の硬化、架橋の酸素阻害抑制、凹部が形成されている平坦面のより平滑化のために、粘着剤組成物層の表面は、カバーフィルムで覆った状態で硬化処理を施すことが好ましい。これにより、アクリル系粘着剤の硬化時の酸素阻害による硬化度、架橋度の低下を抑制でき、またカバーフィルムを用いることで相分離した表面に凸部が生じた場合、その部位を平坦化する効果がある。
【0067】
カバーフィルムとしては特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリカルボジイミドなどのプラスチックフィルムなどが挙げられる。その厚みは通常10〜100μm程度が好ましい。粘着剤層の形成に、放射線硬化性粘着剤を用いる場合には、紫外線などの光を透過する比較的透明性の高いプラスチックフィルムが選択使用される。カバーフィルムとしては、その粘着剤に面する表面に各種剥離処理が施されていてもよく、通常使用する剥離フィルムとしてそのまま使用することも可能である。
【0068】
前記アクリル系粘着剤は、その硬化性に応じて、加熱または放射線(紫外線、電子線等)照射することが好ましい。
【0069】
次いで、工程(3)では、得られた粘着剤組成物層から不相溶化合物を除去して粘着剤層を形成する。例えば、工程(3)としては、加熱により、粘着剤組成物層から不相溶化合物を除去することができる。また、溶媒抽出により、粘着剤組成物層から不相溶化合物を除去することができる。これにより、粘着剤層表面に凹部を形成することができる。
【0070】
不相溶化合物を加熱により除去する方法としては、一般的な加熱装置が適用できる。例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機、真空乾燥機、またはフローティング式オーブン、熱風循環式オーブン等があげられる。加熱温度としては不相溶化合物の沸点および飛散温度等を考慮し、基材または凹部した粘着剤層が熱により変形しなければ特に限定されないが、通常、50〜200℃程度、さらには100〜200℃程度の範囲が効率よく除去できる点で好ましい。
【0071】
また溶媒により、粘着剤組成物層から不相溶化合物を抽出除去する場合、不相溶化合物の抽出に用いる溶媒はマトリクスを形成するアクリル系粘着剤層、不相溶化合物の種類によって使い分けられ、不相溶化合物を前記粘着剤層から、抽出できる有機溶媒が一般に用いられる。かかる溶媒として、例えばトルエン、酢酸エチル等があげられる。
【0072】
また有機溶媒の代わりに無毒、非危険物である液化二酸化炭素または超臨界状態にある二酸化炭素を用いることができる。不相溶化合物を二酸化炭素により除去するための容器としては、加圧下で抽出除去可能な容器であれば特に限定されず、バッチ式の圧力容器、耐圧性を有するシート繰り出し、巻き取り装置等の何れであってもよい。不活性流体である前記二酸化炭素の供給手段は、ポンプ、配管、バルブなどで構成できる。
【0073】
上記のようにして得られた本発明の粘着剤層1は、図3に示すように、その不連続な凹部が表面になるように、支持体2の少なくとも片面に設けて粘着シートとすることができる。支持体2としては、前記製造方法における基材をそのまま用いることができる。
【0074】
前記粘着シートは、前記粘着剤層1を支持体2の少なくとも片面にクリーニング層として設けたクリーニングシートとして用いることができる。クリーニングシートは、ラベルシートとして用いることができる。前記粘着シートをクリーニングシートとして用いる場合には、図4に示すように、前記凹部を有する粘着剤層1が設けられた支持体2の他の片面には、固定用の粘着剤層3を設けることができる。
【0075】
固定用の粘着剤層3は、通常の粘着機能を満たす限りその材質などは特に限定されず、通常の粘着剤(例えばアクリル系、ゴム系など)を用いることができる。粘着剤層3は、両面テープを用いることも可能である。粘着剤層3は、クリーニングシートを、各種基板や他のテープ・シートなどの搬送部材に貼り付けて、クリーニング機能付き搬送部材として装置内に搬送して、被洗浄部位に接触させてクリーニングすることができる。
【0076】
クリーニングシートが貼り付けられる搬送部材としては特に限定されないが、例えば半導体ウエハ、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、その他コンパクトディスク、MRヘッドなどの基板などが挙げられる。
【0077】
クリーニング機能付き搬送部材は、上記クリーニングシートの形状が搬送部材の形状より小さく、かつ搬送部材端部よりはみ出さないようにすることが好ましい。クリーニングシートが搬送部材の形状より大きい場合には、搬送装置内部でシートが装置へ付着したり、搬送系に引っかかり、装置が正常に運転しない場合がある。
【0078】
上記のようなクリーニング機能付きの搬送部材の製造方法は、特に限定されず、例えば基板等の搬送部材にクリーニングシートを貼り合わせてクリーニング用搬送部材を製造することができる。この場合、搬送部材より大きなクリーニングシートを貼り付けた後、部材形状に沿ってクリーニングシートを切断する方式(以下、ダイレクトカット方式と称す)や、あらかじめ搬送部材形状に切断加工処理しておいたクリーニング用ラベルシートを搬送部材に貼り合わせてクリーニング用搬送部材を製造する方式(以下、プリカット方式と称す)が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、部とあるのは重量部を意味するものとする。Mwは重量平均分子量を、Mnは数平均分子量を、Mw/Mnはポリマーの分子量の分散度をそれぞれ意味するものとする。
【0080】
実施例1
(アクリル系粘着剤の調製)
アクリル酸ブチル70部、アクリル酸エチル30部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部からなるモノマー混合液から得たベースポリマーであるアクリル系ポリマー(Mw約85万、Mw/Mnが9)100部に対して、相分離のための不相溶化合物であるグリセリン(前記アクリル系ポリマーAに対するχパラメータ:10、沸点290℃)10部、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製:商品名:コロネートL)を2部、ポリエポキシ化合物(三菱瓦斯化学社製:商品名:テトラッドC)を1部、さらに、溶媒(A)である酢酸エチル(前記アクリル系ポリマーに対するχパラメータ:0.53、不相溶化合物に対するχパラメータ:8.7)、及び溶媒(B)であるメタノール(前記アクリル系ポリマーに対するχパラメータ:1.52、不相溶化合物に対するχパラメータ:2.7)を、溶媒(A):溶媒(B)=28:5の割合で配合して、均一に混合し、濃度が18重量%になるようにアクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0081】
(粘着シートの作製)
前記粘着剤組成物溶液を、幅200mm、厚み50μmの支持体用ポリエステル系フィルムの片面に、乾燥後の厚みが35μmになるように塗布して55℃で4分間にて乾燥を行い、粘着剤組成物層を形成した。次いで、150℃で10分間、加熱して凹部を形成するグリセリンを除去し、平面状の表面に凹部を有する粘着剤層(粘着シート)を得た。
【0082】
(クリーニングシート)
前記粘着シートをクリーニングシートとした。また、当該クリーニングシートの支持体フィルムの、前記粘着剤層(クリーニング層)の設けられていない側に、粘着剤溶液を乾燥後の厚みが20μmになるように塗布して、固定用の粘着剤層を設け、その表面にポリエステル系剥離フィルムを貼り合わせた、クリーニングシートを作製した。さらに、固定用の粘着剤層は、50℃で72時間加温して粘着剤層をエージングした。
【0083】
なお、前記固定用の粘着剤溶液としては、例えば、以下の方法により調製したものである。まず、温度計、撹拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた内容量が500mlの3つ口フラスコ型反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル73部、アクリル酸n−ブチル10部、N,N−ジメチルアクリルアミド15部およびアクリル酸5部、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.15部、酢酸エチル100部を、全体が200gになるように配合して投入し、窒素ガスを約1時間導入しながら撹拌した後、内部の空気を窒素で置換した。その後、内部の温度を58℃にし、この状態で約4時間保持して重合を行い、アクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー溶液100部に対し、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製:商品名:コロネートL)3部を均一に混合して、固定用の粘着剤溶液を得た。
【0084】
比較例1
(アクリル系粘着剤の調製)
アクリル酸ブチル70部、アクリル酸エチル30部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部からなるモノマー混合液から得たベースポリマーであるアクリル系ポリマー(Mw約85万、Mw/Mnが9)100部に対して、多官能ウレタンアクリレート(日本合成化学社製:商品名:UV1700B)を10部、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製:商品名:コロネートL)を2部およびポリエポキシ化合物(三菱瓦斯化学社製:商品名:テトラッドC)を2部、さらに、溶媒(A)である酢酸エチル(前記アクリル系ポリマーに対するχパラメータ:0.53、不相溶化合物に対するχパラメータ:8.7)で、均一に混合して濃度が18重量%に調整したアクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0085】
(粘着シートの作製)
前記粘着剤組成物溶液を、幅200mm、厚み50μmの支持体用ポリエステル系フィルムの片面に、乾燥後の厚みが35μmになるように塗布して55℃で4分間にて乾燥を行い、粘着剤組成物層を形成した。次いで、粘着剤層(粘着シート)を得た。
【0086】
(クリーニングシート)
クリーニングシートの作製方法は、実施例1と同様である。
【0087】
実施例および比較例で得られた粘着剤層、及びクリーニングシートについて下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(引張り弾性率<初期弾性率>)
粘着剤組成物を断面積0.75mm×長さ30mmの円柱状の粘着剤(試験片)を作成し、23℃×50%RH雰囲気下で、チャック間距離10mm、引張り速度50mm/minで引張り試験機(オリエンテック社製、RTC−1150A)により、測定時の応力から引張り弾性率(初期弾性率)を算出した。なお、初期弾性率は、伸び−応力曲線の初期接線を引き、その接線と試験片が100%(20mm)まで伸びた所の交点(伸び=20mmの直線との交点)の応力を求め、単位初期断面積当たりの応力値として、表される値を言う。
【0089】
(垂直剥離力)
クリーニング層に直径50mmの金属片を2kgの加重で3分間密着させ、室温23℃にて引っ張り速度100mm/分で金属片を垂直に持ち上げた時にかかる剥離力を測定した。
【0090】
(搬送性)
ウエハステージを持つ基板処理装置(装置名:GR−3000、日東精機社製)内に搬送し下記基準で評価した。
×:各部位、ステージへの付着がある場合、または搬送装置が停止した場合。
○:各部位、ステージへの付着がなく、搬送装置が停止しない場合。
【0091】
(異物捕集性)
クリーニングシートの固定用の粘着剤層側の剥離フィルムを剥がし、当該粘着剤層を、8インチのシリコンウエハの裏面(ミラー面)にハンドローラで貼り付け、クリーニング機能付き搬送用クリーニングウエハを作製した。次にウエハステージを持つ基板処理装置(装置名:GR−3000、日東精機社製)のステージ上にウエハを数回置き、模擬異物を付着させた。模擬異物は、ウエハの研磨屑であり、サイズ1.7μm以上(上限600μm)のものを、約1万〜2万個、ステージ上に付着させた。初期の汚染状態評価用に8インチシリコンウエハを基板処理装置にミラー面を下側に向けて搬送した後、レーザー式異物測定装置でミラー面を測定し、初期異物量を測定した(8インチウエハサイズのエリア内)。該クリーニング機能付き搬送用クリーニングウエハを、基板処理装置にクリーニング面を下側に向けて3回搬送を実施した。搬送後の異物数量をレーザー式異物測定装置(レーザー式パーティクルカウンター、TENCOR社製、SURFSCAN6200)でミラー面を測定し、(初期異物量−搬送後捕集異物量)/初期異物量を算出した。この比率が50%以上であれば「○」と判定した。50%未満の場合を「×」とした。
【0092】
(表面構造観察)
粘着剤表面の構造を、走査電子顕微鏡(LEXT OLS3000、OLYNPUS社製)にて観察し、断面プロファイルを求めた。
【0093】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の粘着剤層の斜視図の一例である。
【図2】本発明の粘着剤層の断面図の一例である。
【図3】本発明の粘着剤層の粘着シート(クリーニングシート)の断面図の一例である。
【図4】本発明の粘着剤層の粘着シート(クリーニングシート)の断面図の一例である。
【図5】実施例1で得られた粘着剤層の上面画像である。
【符号の説明】
【0095】
1 凹部を有する粘着剤層
2 支持体
3 固定用粘着剤層
a 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着剤を含有してなる平面状の表面を有する粘着剤層であって、
前記アクリル系粘着剤が、アクリル系モノマー及び/又は前記アクリル系モノマーを重合してなるアクリル系ポリマーを含有し、
前記粘着剤層の表面に不連続な凹部を有し、
前記粘着剤層の引張り弾性率が10MPa未満であることを特徴とする粘着剤層。
【請求項2】
請求項1記載の粘着剤層の製造方法であって、
前記アクリル系粘着剤に、前記アクリル系ポリマーとは相溶化しない化合物を配合した粘着剤組成物を、前記アクリル系ポリマーを溶解する溶媒(A)および前記アクリル系ポリマーと前記不相溶化合物の双方を相溶する相溶化溶媒(B)を含有する混合溶媒に溶解した粘着剤組成物溶液を調製する工程(1)と、
前記粘着剤溶液を基材上に塗布して、乾燥することにより、粘着剤組成物層を形成する工程(2)と、
前記粘着剤組成物層から不相溶化合物を除去して粘着剤層を形成する工程(3)と、を有することを特徴とする粘着剤層の製造方法。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーと前記不相溶化合物の双方を相溶する相溶化溶媒(B)は、相溶性のパラメータであるχパラメータが、アクリル系ポリマー及び不相溶化合物に対して3以下であることを特徴とする請求項2記載の粘着剤層の製造方法。
【請求項4】
前記不相溶化合物は、アクリル系ポリマーに対するχパラメータが7以上であり、かつ沸点が200℃以上であることを特徴とする請求項2又は3記載の粘着剤層の製造方法。
【請求項5】
前記粘着剤組成物溶液は、均一状態であるが、相溶化溶媒(B)が不存在の状態では相分離が生じるように、溶媒(A)および相溶化溶媒(B)が選択されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の粘着剤層の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の粘着剤層又は請求項2〜5いずれかに記載の粘着剤層の製造方法により得られる粘着剤層が、その不連続な凹部が表面になるように、支持体の少なくとも片面に設けられていることを特徴とする粘着シート。
【請求項7】
請求項1記載の粘着剤層又は請求項2〜5いずれかに記載の粘着剤層の製造方法により得られる粘着剤層が、その不連続な凹部が表面になるように、支持体の少なくとも片面にクリーニング層として設けられていることを特徴とするクリーニングシート。
【請求項8】
請求項1記載の粘着剤層又は請求項2〜5いずれかに記載の粘着剤層の製造方法により得られる粘着剤層が、その不連続な凹部が表面になるように、支持体の片面にクリーニング層として設けられており、他の片面には、固定用の粘着剤層を有することを特徴とするクリーニングシート。
【請求項9】
請求項7又は8記載のクリーニングシートが、固定用の粘着剤層を介して搬送部材に設けられていることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材。
【請求項10】
請求項7もしくは8記載のクリーニングシートまたは請求項9記載のクリーニング機能付き搬送部材を、基板処理装置内に搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−209330(P2009−209330A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56698(P2008−56698)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】