説明

糖尿病を治療又は予防するためのジペプチジルペプチダーゼ阻害剤としてのフェニルアラニン誘導体

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DP−IV阻害剤」)であり、糖尿病、特に2型糖尿病などの、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する疾病の治療又は予防に有用であるフェニルアラニン誘導体に関する。本発明は、これらの化合物を含む薬学的組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾病の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
糖尿病とは、複数の原因因子に由来し、絶食状態又は経口グルコース負荷試験時のグルコースの投与後における血漿グルコースレベルの上昇、すなわち高血糖を特徴とする疾病過程を指す。持続的高血糖又は制御されない高血糖には、早期の罹病及び死亡並びに罹病率及び死亡率の増加が伴う。異常なグルコースホメオスタシスには、直接的及び間接的に、脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質の代謝の変化並びに他の代謝性及び血行性疾患を伴うことが多い。従って、2型糖尿病患者は、冠状動脈性心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害及び網膜症を含む、大血管及び微小血管の合併症を発症するリスクが極めて高くなる。従って、糖尿病の臨床管理及び治療では、グルコースホメオスタシス、脂質代謝及び高血圧を治療によって管理することが、非常に重要である。
【0002】
糖尿病には、一般に認知されている2つの形態が存在する。1型糖尿病又はインシュリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者は、グルコースの利用を制御するホルモンであるインシュリンをほとんど又は全く産生しない。2型糖尿病又は非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM)では、非糖尿病の個体に比べて、患者の血漿インシュリンレベルが同じであることが多く、上昇している場合さえある。しかし、これらの患者には、主要なインシュリン感受性組織である筋肉、肝臓及び脂肪組織中でのグルコース及び脂質代謝に対するインシュリンの刺激効果に対して耐性が生じており、血漿インシュリンレベルが上昇しているにもかかわらず、顕著なインシュリン抵抗性を乗り越えるには十分でない。
【0003】
インシュリン抵抗性は、インシュリン受容体数の減少が主たる原因ではなく、未だ理解されていないインシュリン受容体結合後の欠陥が原因である。インシュリン応答性に対するこのような抵抗性は、インシュリンによる筋肉中へのグルコースの取り込み、酸化及び保存の活性化を不十分なものとし、脂肪組織中での脂肪分解のインシュリンによる抑制及び肝臓中でのグルコース産生と分泌のインシュリンによる抑制を不十分なものとする。
【0004】
2型糖尿病に対して実施できる治療は、多年にわたって実質的に変化しておらず、限界が認められている。身体的な運動及び食事によるカロリー摂取の減少は、糖尿病の症状を劇的に改善するものと思われるが、デスクワーク中心のライフスタイルと過度の食物消費(特に、飽和した脂肪を大量に含有する食物の消費)が確立されているために、この治療はほとんど遵守されない。スルホニル尿素(例えば、トルブタミド及びグリピジド)若しくはメグリチニド(膵臓のβ細胞を刺激して、より多くのインシュリンをβ細胞に分泌させる。)を投与することによって、及び/又はスルホニル尿素若しくはメグリチニドが有効でなくなったときにはインシュリンを注射することによって、インシュリンの血漿レベルを増加させると、インシュリン抵抗性が極めて強い組織を刺激するのに十分な濃度までインシュリン濃度を高くすることができる。しかしながら、インシュリン又はインシュリン分泌促進物質(スルホニル尿素又はメグリチニド)の投与によって、血漿グルコースレベルは危険なまでに低下する場合があり、血漿インシュリンレベルがさらに高まるためにインシュリン抵抗性のレベルの増大が起こり得る。ビグアニドは、インシュリン感受性を増加させ、高血糖を幾分是正する。しかしながら、2つのビグアニド、フェンホルミン及びメトホルミンは、乳酸アシドーシス及び悪心/下痢を引き起こし得る。メトホルミンは、フェンホルミンに比べて副作用が少なく、しばしば、2型糖尿病の治療のために処方される。
【0005】
グリタゾン(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、さらに最近になって報告された化合物のクラスであり、2型糖尿病の数多くの症候を軽減する可能性を秘めている。これらの薬剤は、幾つかの2型糖尿病の動物モデルにおいて、筋肉、肝臓及び脂肪組織中のインシュリン感受性をかなり増加させ、低血糖を生じさせずに、血漿グルコースレベルの上昇を部分的に又は完全に是正する。現在市販されているグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、主にPPAR−γサブタイプのアゴニストである。グリタゾンを用いた場合に観察されるインシュリン感作の向上は、PPAR−γのアゴニズムが原因であると一般に考えられている。II型糖尿病の治療について試験されている、さらに新しいPPARアゴニストは、α、γ若しくはδサブタイプ又はこれらの組み合わせのアゴニストであり、多くの場合、グリタゾンとは化学的に異なっている(すなわち、それらは、チアゾリジンジオンではない。)。トログリタゾンなど、グリタゾンの一部には、深刻な副作用(例えば、肝臓毒性)が生じるものがある。
【0006】
本疾病を治療する別の方法が、なお調査中である。最近導入された、又は現在開発中である新しい生化学的アプローチには、α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)及びタンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤を用いた治療がある。
【0007】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV(「DP−IV」又は「DPP−IV」)酵素の阻害剤である化合物も、糖尿病、特に2型糖尿病の治療において有用であり得る薬物として調査中である。例えば、WO 97/40832号、WO 98/19998号、米国特許第5,939,560号、Bioorg. Med. Chem. Lett., 6:1163−1166(1996);Bioorg. Med. Chem. Lett., 6:2745−2748(1996)を参照されたい。2型糖尿病の治療におけるDP−IV阻害剤の有用性は、DP−IVがインビボで即座にグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1、glucagon like peptide−1)及び胃抑制ペプチド(GIP、gastric inhibitory peptide)を不活化するという事実に基づいている。GLP−1及びGIPはインクレチンであり、食物を消費するときに産生される。インクレチンは、インシュリンの産生を刺激する。DP−IVの阻害は、インクレチンの不活化を減少させ、次いで、この不活化の減少が、膵臓によるインシュリンの産生を刺激する上でのインクレチンの有効性の増大をもたらす。従って、DP−IVの阻害は、血清インシュリンのレベルを増加させる。インクレチンは、食物が消費されたときだけ身体によって産生されるので、有利には、DP−IVの阻害は、食間などの不適切な時間にインシュリンのレベルを増加させる(これは、極度に低い血糖(低血糖)をもたらし得る。)ことはないと予想される。従って、DP−IVの阻害は、インシュリン分泌促進物質の使用に伴う危険な副作用である低血糖のリスクを増加させずに、インシュリンを増加させるものと思われる。
【0008】
DP−IV阻害剤は、本明細書に論述されているように、他の治療用途も有している。DP−IV阻害剤は、現在まで、とりわけ糖尿病以外の用途については深く研究されていない。糖尿病の治療のために使用され、その他の疾病及び症状にも使用できる可能性がある改善されたDP−IV阻害剤を発見できるように、新しい化合物が必要とされている。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DP−IV阻害剤」)であり、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する、糖尿病、特に2型糖尿病などの疾病の治療又は予防に有用であるフェニルアラニン誘導体に関する。本発明は、これらの化合物を含む薬学的組成物並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾病の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤として有用なフェニルアラニン誘導体に関する。本発明の化合物は、
構造式
【0011】
【化13】

によって記述されるか又は薬学的に許容されるそれらの塩である。
【0012】
(式中、
各nは、独立に、0、1又は2であり;
m及びpは、独立に、0又は1であり;
qは、1又は2であり;
Xは、CH、S、CHF又はCFであり;
Arは、置換されていないフェニル又は1ないし5個のR置換基で置換されたフェニルであり;
は、水素又はシアノであり;
は、
1−10アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
2−10アルケニル(アルケニルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CHCOOH、
(CHCOOC1−6アルキル、
(CHCONR(式中、R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は、
及びRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
各Rは、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、シアノ、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR
(CH−NRCO
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されているか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択され、
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
は、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択され、R中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
各Rは、水素又はRである。)
本発明の化合物の一実施形態において、*の印が付された炭素原子は、式Ia
【0013】
【化14】

(式中、Ar、X、m、p、R及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示された立体化学配置を有する。
【0014】
本発明の化合物の本実施形態のクラスにおいて、*の印が付された炭素原子、Rに結合され且つ**の印が付された炭素原子は、式Ib
【0015】
【化15】

(式中、Ar、X、m、p、R及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示された立体化学配置を有する。
【0016】
本発明の化合物の第二の実施形態において、式Ic:
【0017】
【化16】

(式中、Ar、X、R及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示されているように、mは1であり、pは0である。
【0018】
本発明の化合物の本実施形態のクラスにおいて、*の印が付された炭素原子、Rに結合され且つ**の印が付された炭素原子は、式Id:
【0019】
【化17】

(式中、Ar、X、R及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示されている立体化学配置を有する。
【0020】
本発明の化合物の第三の実施形態において、
式Ie:
【0021】
【化18】

(式中、Ar及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示されているように、Rは水素であり、XはCHFであり、m及びpは0である。
【0022】
本発明の化合物の本実施形態のクラスにおいて、*の印が付された炭素原子は、式If:
【0023】
【化19】

(式中、Ar及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示されている立体化学配置を有する。
【0024】
本発明の化合物の第四の実施形態において、式Ig:
【0025】
【化20】

(式中、Ar及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)に図示されているように、Rは水素であり、XはCHFであり、m及びpは1である。
【0026】
本発明の化合物の本実施形態のクラスにおいて、*の印が付された炭素原子は、式Ih:
【0027】
【化21】

(式中、Ar及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示されている立体化学配置を有する。
【0028】
本発明の化合物の第五の実施形態において、Rは、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
2−6アルケニル(アルケニルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CHCOOH、
(CHCOOC1−6アルキル、及び
(CHCONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は
及びRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され、
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されている。
【0029】
本発明の化合物の本実施形態のクラスにおいて、Rは、
1−3アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、及び
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択される。
【0030】
このクラスのサブクラスにおいて、Rは、
メチル、
エチル、
CH−シクロプロピル、
COOH、
COOMe、
COOEt、
CONMe
CONH
CONHMe、
CONHEt、
ピロリジン−1−イルカルボニル、
アゼチジン−1−イルカルボニル、及び
[(テトラゾール−5−イル)アミノ]カルボニル
からなる群から選択される。
【0031】
本発明の化合物の第六の実施形態において、*の印が付された炭素原子、Rに結合され且つ**の印が付された炭素原子、Rに結合され且つ***の印が付された炭素原子は、式Ii:
【0032】
【化22】

(式中、Ar、X、m、p及びRは、本明細書に定義されているとおりである。)
に図示された立体化学配置を有し;
は、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、及び
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は
及びRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
各R
ハロゲン、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択される。
【0033】
本実施形態のクラスにおいて、Rは、
メチル、
エチル、
CH−シクロプロピル、
COOH、
COOMe、
COOEt、
CONMe
CONH
CONHMe、
CONHEt、
ピロリジン−1−イルカルボニル、
アゼチジン−1−イルカルボニル、及び
[(テトラゾール−5−イル)アミノ]カルボニル、
からなる群から選択される。
【0034】
このクラスのサブクラスにおいて、Rは、
フルオロ、
クロロ、
ブロモ、
トリフルオロメチル、
トリフルオロメトキシ、及び
メトキシ、
からなる群から選択される。
【0035】
本発明の化合物の第七の実施形態は、式Ij:
【0036】
【化23】

(式中、
Xは、CH、S、CHF又はCFであり;
Arは、置換されていないフェニル又は1ないし5個のR置換基で置換されたフェニルであり;
は、水素又はシアノであり;
は、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、及び
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
各Rは、
ハロゲン、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン及びシアノから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、及び
フェニル(CHCON(Me)−(フェニルは、置換されていないか、又はハロゲン、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択される。)
の化合物を包含する。
【0037】
ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤として有用である本発明の化合物の一例(但し、非限定的な例である。)は、以下のとおり、
【0038】
【化24】



【0039】
又は薬学的に許容されるそれらの塩である。
【0040】
本明細書では、以下の定義が使用される。
【0041】
「アルキル」、並びにアルコキシ及びアルカノイルなどの接頭語「アルク(alk)」を有する他の基は、炭素鎖に別段の定義が与えられていなければ、線状又は分枝及びそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどである。炭素原子の指定された数が、例えば、C3−10を許容する場合、アルキルという用語には、シクロアルキル基及びシクロアルキル構造と組み合わされた線状又は分枝アルキル鎖の組み合わせも含まれる。炭素原子の数が指定されていない場合には、C1−6を意味するものとする。
【0042】
「シクロアルキル」は、アルキルのサブセットであり、炭素原子の指定された数の飽和炭素環式環を意味する。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。特段の記載がなければ、シクロアルキル基は、一般的には、単環式である。特段の記載がなければ、シクロアルキル基は飽和している。
【0043】
「アルコキシ」という用語は、指定された炭素原子の数の直鎖若しくは分枝鎖アルコキシド(例えば、C1−6アルコキシ)又はこの範囲に属する任意の数の直鎖若しくは分枝鎖アルコキシド(すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど)を表す。
「アルキルチオ」という用語は、指定された炭素原子の数の直鎖若しくは分枝鎖アルキルスルフィド(例えば、C1−6アルキルチオ)、又はこの範囲に属する任意の数の直鎖若しくは分枝鎖アルキルスルフィド(すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど)を表す。
【0044】
「アルキルアミノ」という用語は、指定された炭素原子の数の直鎖若しくは分枝鎖アルキルアミン(例えば、C1−6アルキルアミノ)又はこの範囲に属する任意の数の直鎖若しくは分枝鎖アルキルアミン(すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど)を表す。
【0045】
「アルキルスルホニル」という用語は、指定された炭素原子の数の直鎖若しくは分枝鎖アルキルスルホン(例えば、C1−6アルキルスルホニル)又はこの範囲に属する任意の数の直鎖又は分枝鎖アルキルスルホン(すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど)を表す。
【0046】
「アルキルオキシカルボニル」という用語は、指定された炭素原子の数を有する本発明のカルボン酸誘導体の直鎖若しくは分枝鎖エステル(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)又はこの範囲に属する任意の数を有する本発明のカルボン酸誘導体の直鎖若しくは分枝鎖エステル(すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル又はブチルオキシカルボニルなど)を表す。
【0047】
「アリール」は、炭素環原子を含有する単環又は多環式芳香族環系を意味する。好ましいアリールは、単環又は二環式の6ないし10員環芳香族環系である。フェニル及びナフチルは、好ましいアリールである。最も好ましいアリールは、フェニルである。
【0048】
「複素環」及び「ヘテロシクリル」は、O、S及びNから選択される少なくとも1つの複素原子を含有し、さらに硫黄の酸化型(すなわち、SO及びSO)を含む、飽和又は不飽和非芳香族環又は環系を意味する。複素環の例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリンなどが含まれる。
【0049】
「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個の複素原子を含有する芳香族又は部分的芳香族複素環を意味する。ヘテロアリールには、アリール、シクロアルキル及び芳香族でない複素環などの他の種類の環に縮合したヘテロアリールも含まれる。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、2−オキソ−(1H)−ピリジニル(2−ヒドロキシ−ピリジニル)、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][4,3−a]ピリジニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][1,5−a]ピリジニル、2−オキソ−1,3−ベンゾオキサゾリル、4−オキソ−3H−キナゾリニル、3−オキソ−[1,2,4]−トリアゾロ[4,3−a]−2H−ピリジニル、5−オキソ−[1,2,4]−4H−オキサジアゾリル、2−オキソ−[1,3,4]−3H−オキサジアゾリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾリル、3−オキソ−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾリルなどがある。ヘテロシクリル基及びヘテロアリール基の場合、3ないし15個の原子を含有する環及び環系が含まれ、1ないし3個の環を形成する。
【0050】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。塩素及びフッ素が、一般に好ましい。アルキルまたはアルコキシ基に対してハロゲンが置換される場合には、フッ素が最も好ましい(例えば、CFO及びCFCHO)。
【0051】
本発明の化合物は、1又は複数の不斉中心を含有することができ、このため、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物並びに個別のジアステレオマーとして存在することができる。本発明の化合物は、式Ia中の*印が付された炭素原子に1つの不斉中心を有する。分子上に存在する様々な置換基の性質に応じて、不斉中心がさらに存在することがあり得る。このような不斉中心のそれぞれが、独立に、2つの光学異性体を与え、混合物として及び純粋な又は部分的に精製された化合物として、想定し得る全ての光学異性体及びジアステレオマーが本発明の範囲に含まれるものとする。本発明は、これらの化合物のかかる異性体形態を全て包含するものとする。
【0052】
本明細書に記載されている化合物の中には、オレフィン二重結合を含有するものがあり、別段の記載がなければ、E及びZ幾何異性体の両方を含むものとする。
【0053】
本明細書に記載されている化合物の中には、互変異性体として存在し得るものがあり、1又は複数の二重結合の移動に付随して水素の結合点に変化が生じる。例えば、ケトンとそのエノール型は、ケト−エノール互変異性体である。各互変異性体及びそれらの混合物が、本発明の化合物とともに包含される。
【0054】
式Iには、好ましい立体化学を表さずに、化合物のクラスの構造が示されている。式Iaは、これらの化合物の調製源であるαアミノ酸のアミノ基が結合された炭素原子における好ましい立体化学を示している。
【0055】
これらのジアステレオマーの独立した合成又はクロマトグラフィーによるこれらのジアステレオマーの分離は、本明細書に開示されている方法を適切に改変することによって、本分野で知られているとおりに行うことができる。それらの絶対的な立体化学は、必要であれば、絶対配置が知られた不斉中心を含有する試薬で誘導体化された結晶産物又は結晶中間体のX線結晶構造解析によって決定し得る。
【0056】
所望であれば、各鏡像異性体が単離されるように、前記化合物のラセミ混合物は分離することができる。分離は、鏡像異性体として純粋な化合物に化合物のラセミ混合物を結合させてジアステレオマー混合物を形成させた後に、分別再結晶又はクロマトグラフィーなどの標準的な方法によって各ジアステレオマーを分離するような、本分野で周知の方法によって実施することができる。結合反応は、多くの場合、鏡像異性体として純粋な酸又は塩基を用いた塩の形成である。次いで、付加されたキラル残基を切断することによって、ジアステレオマー誘導体を純粋な鏡像異性体に変換させることができる。前記化合物のラセミ混合物は、本分野で周知の方法であるキラル固定相を用いたクロマトグラフィー法によって、直接分離することも可能である。
【0057】
あるいは、化合物の任意の鏡像異性体は、立体配置が知られた光学的に純粋な出発物質又は試薬を用いた立体選択的な合成により、本分野で周知の方法によって取得することもできる。
【0058】
本明細書において、構造式Iの化合物と表記した場合には、薬学的に許容される塩も含まれること、遊離の化合物若しくは薬学的に許容されるそれらの塩への前駆体として使用した場合又はその他の合成操作において使用した場合には、薬学的に許容されない塩も含まれることが理解できるであろう。
【0059】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む薬学的に許容される非毒性塩基又は酸から調製された塩を表す。「薬学的に許容される塩」という用語に包含される塩基性化合物の塩は、一般に、遊離塩基を適切な有機酸又は無機酸と反応させることによって調製される本発明の化合物の非毒性塩を表す。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩(acetate)、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate)、安息香酸塩(benzoate)、重炭酸塩(bicarbonate)、重硫酸塩(bisulfate)、重酒石酸塩(bitartrate)、ホウ酸塩(borate)、臭化物(bromide)、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩(carbonate)、塩化物(chloride)、クラブラン酸塩( clavulanate)、クエン酸塩(citrate)、二塩酸塩(dihydrochloride)、エデト酸塩(edetate)、エジシル酸塩(edisylate)、エストラート(estolate)、エシル酸塩(esylate)、フマル酸塩(fumarate)、グルセプトン酸塩(gluceptate)、グルコン酸塩(gluconate)、グルタミン酸塩(glutamate)、グリコリルアルサニル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩(hydrobromide)、塩化水素酸塩(hydrochloride)、ヒドロキシナフトエ酸塩(hydroxynaphthoate)、ヨウ化物(iodide)、イソチオン酸塩(isothionate)、乳酸塩(lactate)、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、ラウリン酸(laurate)、リンゴ酸塩(malate)、マレイン酸塩(maleate)、マンデル酸塩(mandelate)、メシル酸塩(mesylate)、臭化メチル(methylbromide)、硝酸メチル塩(methylnitrate)、硫酸メチル塩(methylsulfate)、粘液酸塩(mucate)、ナプシル酸塩(napsylate)、硝酸塩(nitrate)、N−メチルグルカミンアンモニウム塩(N−methylglucamine ammonium salt)、オレイン酸塩(oleate)、シュウ酸塩(oxalate)、パモン酸塩(pamoate)(エンボナート)、パルミチン酸塩(palmitate)、パントテン酸塩(pantothenate)、リン酸塩/二リン酸塩(phosphate/diphosphate)、ポリガラクツロン酸塩(polygalacturonate)、サリチル酸塩(salicylate,)、ステアリン酸塩(stearate,)、硫酸塩(sulfate)、塩基性酢酸塩(subacetate)、コハク酸塩(succinate)、タンニン酸塩(tannate)、 酒石酸塩(tartrate)、テオクル酸塩(teoclate)、トシル酸塩(tosylate)、トリエチオダイド(triethiodide)及び吉草酸塩(valerate)が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有している場合には、薬学的に許容される適切なそれらの塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic)、亜マンガン(mangamous)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの無機塩基から得られる塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される非毒性有機塩基から得られる塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの、一級、二級及び三級アミン、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。
【0060】
さらに、本発明の化合物中に存在するカルボン酸(−COOH)又はアルコール基の場合には、メチル、エチル又はピバロイルオキシメチルなどのカルボン酸誘導体又はアルコールのアシル誘導体(酢酸又はマレイン酸など)のような、薬学的に許容されるエステルも使用することができる。これらには徐放又はプロドラッグ製剤として使用するために溶解度又は加水分解特性を改変するための、本分野において公知のエステル及びアシル基が含まれる。
【0061】
溶媒和物、特に、構造式Iの化合物の水和物も、本発明に含まれる。
【0062】
本発明の例は、実施例及び本明細書に開示されている化合物の使用である。
【0063】
本発明の化合物は、該化合物の有効量を投与することを含む、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害を必要とする哺乳動物などの患者中のジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素を阻害する方法において有用である。本発明は、本明細書に開示されている化合物の、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤としての使用に関する。
【0064】
ヒトなどの霊長類に加えて、本発明の方法に従って、他の様々な哺乳動物を治療することができる。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット又は他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類若しくはマウスの種を含む哺乳動物を治療することができるが、これらに限定されない。しかしながら、前記方法は、鳥類種(例えば、ニワトリ)などの他の種に対して実施することもできる。
【0065】
本発明は、さらに、本発明の化合物を薬学的に許容される担体又は希釈剤と混合することを含む、ヒト及び動物中のジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性を阻害するための医薬を製造する方法に関する。
【0066】
本方法で治療される患者は、一般的には、ジペプチジルペプチドーIV酵素活性の阻害が所望される雄又は雌の哺乳動物であり、好ましくはヒトの男性又は女性である。「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって調べられている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的反応を惹起させると予想される化合物の量を意味する。
【0067】
本明細書において使用される「組成物」という用語は、一定の成分を一定の量で含む生成物の他、一定の成分を一定の量で組み合わせることによって、直接又は間接に得られる任意の生成物を包含するものとする。薬学的組成物に関連したこのような用語には、活性成分及び担体を構成する不活性成分、並びに、任意の成分の2以上の化合、錯化若しくは凝集から又は1若しくは複数の成分の解離から又は1若しくは複数の成分の他の種類の反応又は相互作用から直接又は間接に得られる任意の生成物を含む生成物が包含されるものとする。従って、本発明の薬学的組成物には、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することによって作製される任意の組成物が包含される。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分に対して適合的であり且つそれらの受容者に対して有害でないことを意味する。
【0068】
化合物「の投与」及び/又は「を投与する」という用語は、治療を必要としている個体に、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを与えることを意味するものと理解しなければならない。
【0069】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤としての本発明に係る化合物の有用性は、本分野において公知の方法によって実証し得る。阻害定数は、以下のように決定される。DP−IVによって切断されて蛍光性のAMC脱離基を放出する基質Gly−Pro−AMCを用いた連続的蛍光アッセイを利用する。この反応を記述する速度論パラメータは、以下のとおり:K=50μM;kcat=75s−1;kcat/K=1.5x10−l−lである。典型的な反応は、100μLの総反応容量中に、約50pMの酵素、50μMのGly−Pro−AMC及び緩衝液(100mM HEPES、pH7.5、0.1mg/mL BSA)を含有する。360nmの励起波長と460nmの発光波長を使用し、96ウェルのプレート蛍光光度計中で、AMCの遊離を連続的にモニターする。これらの条件下では、約0.8μMのAMCが、30分の間に25℃で生成される。これらの研究に使用される酵素は、バキュロウイルス発現系(Bac−To−Bac、Gibco BRL)中で産生された可溶性の(膜貫通ドメインと細胞質伸長除く)ヒトタンパク質であった。Gly−Pro−AMC及びGLP−1の加水分解に対する速度定数は、ネイティブ酵素についての文献値と一致することが明らかとなった。化合物の解離定数を測定するために、酵素と基質を含有する反応液(最終DMSO濃度は1%である。)にDMSO中の阻害剤の溶液を添加した。全ての実験は、上記の標準的な反応条件を用いて、室温で行った。解離定数(Ki)を求めるために、非線形回帰により、拮抗阻害に関するミカエリス−メンテンの式に対して反応速度のフィッティングを行った。解離定数を再現する際の誤差は、典型的には、2倍未満である。
【0070】
特に、以下の実施例の化合物は、先述したアッセイにおいて、一般的には、約1μM未満のIC50で、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素を阻害する活性を有していた。このような結果は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤として使用される活性が前記化合物に内在していることを示唆するものである。
【0071】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素(DP−IV)は、多岐にわたる生物機能への関与が推定されている細胞表面タンパク質である。本酵素は、幅広い組織に分布しており(腸、腎臓、肝臓、膵臓、胎盤、胸腺、脾臓、上皮細胞、血管内皮、リンパ球及び骨髄球、血清)、組織及び細胞の種類に応じて発現レベルが異なる。DP−IVは、T細胞活性化マーカーCD26と同一であり、インビトロにおいて、多数の免疫制御、内分泌及び神経学的ペプチドを切断することができる。このことは、ヒト又はその他の種において、該ペプチダーゼが様々な疾病過程で役割を果たしている可能性があることを示唆する。
【0072】
従って、本化合物は、以下の疾病、疾患及び症状を予防又は治療する方法において有用である。
【0073】
II型糖尿病及び関連疾患:インクレチンであるGLP−1及びGIPがインビボでDP−IVによって急速に不活化されることは、十分に確定されている。DP−IVを阻害するとGLP−1及びGIPの定常状態濃度が増加し、グルコース耐性が改善されることが、DP−IV(−/−)欠損マウスを用いた研究及び予備的な臨床試験によって示されている。GLP−1及びGIPへの類似により、グルコース制御に関わる他のグルカゴンファミリーペプチドもDP−IVによって不活化されるものと思われる(例えば、PACAP、グルカゴン)。DP−IVによるこれらのペプチドの不活化は、グルコースのホメオスタシスにおいても役割を果たしている可能性がある。従って、本発明のDP−IV阻害剤は、II型糖尿病の治療並びに代謝性シンドロームX、反応性低血糖及び糖尿病性異脂肪血症などのII型糖尿病を伴うことが多い多数の症状の治療及び予防に使用される。以下で考察されている肥満は、II型糖尿病とともに観察されることが多く、本発明の化合物による治療に反応し得る別の症状である。
【0074】
以下の疾病、疾患及び症状は、2型糖尿病に関連しており、従って、本発明の化合物を用いた治療によって治療し、抑制し、又は、幾つかの事例では、予防することができる。(1)高血糖、(2)低グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)その他の炎症性症状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)シンドロームX、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、並びにインシュリン抵抗性を要素とする他の疾患。
【0075】
肥満:DP−IV阻害剤は、肥満の治療にも有用であり得る。これは、GLP−1及びGLP−2の食物摂取及び胃内容排出に対して阻害的効果を示すことが観察されたことに基づく。GLP−1をヒトに外来投与すると、食物摂取が著しく減少し、胃内容排出が著しく遅くなる(Am. J. Physiol., 277: R910−R916(1999))。GLP−1のラット及びマウスへのICV投与によっても、食物摂取に対して著しい効果が得られる(Nature Medicine, 2:1254−1258(1996))。かかる摂食の阻害は、GLP−1R(−/−)マウスでは観察されないので、これらの効果は脳のGLP−1受容体を通じて媒介されることが示唆される。GLP−1への類似により、GLP−2もDP−IVによって調節されるものと思われる。GLP−2のICV投与も、GLP−1について観察された効果と同様に、食物摂取を阻害する(Nature Medicine,6:802−807(2000))。
【0076】
成長ホルモン欠乏症:下垂体前葉からの成長ホルモンの放出を刺激するペプチドである成長ホルモン放出因子(GRF)が、DP−IV酵素によってインビボで切断されるという仮説に基づけば、DP−IV阻害は成長ホルモン欠乏症の治療に使用できる可能性がある(WO 00/56297号)。以下のデータは、GRFが内因性基質であるという証拠を提供する。(1)GRFは、インビトロで効率的に切断されて、不活性産物GRF[3−44]を生成する(BBA 1122:147−153(1992))。(2)GRFは、血漿中で素早く分解されてGRF[3−44]になり、これは、DP−IV阻害剤であるジプロチンAによって抑えられる。(3)GRF[3−44]は、ヒトGRFトランスジェニックブタの血漿中に見出される(J. Clin. Invest., 83:1533−1540(1989))。このため、DP−IV阻害剤は、成長ホルモン分泌促進物質について考えられる適応症と同一の領域に対して有用であり得る。
【0077】
腸の損傷:DP−IVに対する同種の内因性基質であるグルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)が、腸上皮に対して栄養性効果を示し得ることを示唆する研究結果によって、腸の損傷の治療にDP−IV阻害剤を使用できる可能性があることが示唆されている(Regulatory Peptides, 90:27−32(2000))。GLP−2の投与は、げっ歯類において小腸重量を増加させ、大腸炎及び腸炎のげっ歯類モデルにおいて腸の損傷を和らげる。
【0078】
免疫抑制:T細胞の活性化及びケモカインのプロセッシングにDP−IV酵素が関与していること、及び疾病のインビボモデルにおいてDP−IV阻害剤が有効であることを示唆する研究に基づくと、DP−IVの阻害は、免疫反応の調節に有用であり得る。DP−IVは、活性化された免疫細胞の細胞表面マーカーであるCD26と同一であることが示されている。CD26の発現は、免疫細胞の分化及び活性化状態によって制御される。CD26はT細胞活性化のインビトロモデルにおいて同時刺激分子として機能することが、一般に認められている。多数のケモカインは、おそらくは非特異的アミノペプチダーゼによる分解から保護するために、最後から2番目の位置にプロリンを含有している。これらの多くは、DP−IVによってインビトロでプロセッシングを受けることが示されている。複数の事例で(RANTES、LD78−β、MDC、エオタキシン、SDF−1α)、切断が化学走性及びシグナル伝達アッセイにおける活性を変化させる。幾つかの事例では(RANTES)、受容体の選択性も修正されるようである。DP−IV加水分解の予想産物を含む数多くのケモカインのN末端切断型が、インビトロ細胞培養系中に複数同定されている。
【0079】
DP−IV阻害剤は、移植及び関節炎の動物モデルにおいて、効果的な免疫抑制物質であることが示されている。DP−IVの不可逆的阻害剤であるプロジピン(Pro−Pro−ジフェニル−ホスホネート)は、ラットにおける心臓同種移植の生存日数を7日から14日まで倍増させることが示された(Transplantation,63:1495−1500(1997))。コラーゲン及びアルキルジアミンでラットに誘発された関節炎においてDP−IV阻害剤が試験され、このモデルでは、後肢の腫脹が統計的に有意に減弱されることが示された[Int. J. Immunopharmacology, 19:]15−24(1997) and Immunopharmacology, 40:21−26(1998)]。DP−IVは、関節リウマチ、多発性硬化症、バセドウ病及び橋本甲状腺炎(Immunology Today, 20:367−375 (1999))を含む、数多くの自己免疫疾患において上方制御される。
【0080】
HIV感染:HIV細胞の侵入を阻害する数多くのケモカインはDP−IVの基質となり得る可能性があるので、DP−IV阻害は、HIV感染又はAIDSの治療又は予防に有用であり得る(Immunology Today 20:367−375(1999))。SDF−1αの場合には、切断は抗ウイルス活性を減少させる(PNAS,95:6331−6(1998))。このため、DP−IVの阻害を通じてSDF−1αを安定化させると、HIV感染性が減少すると予想される。
【0081】
造血:DP−IVは造血に関与している可能性があるので、DP−IVの阻害は、造血の治療又は予防に有用であり得る。DP−IV阻害剤であるVal−Boro−Proは、シクロホスファミドで誘導された好中球減少症のマウスモデルにおいて造血を刺激した(WO 99/56753号)。
【0082】
神経細胞疾患:神経細胞の様々な過程に関与していることが示唆される多くのペプチドがDP−IVによってインビトロで切断されるので、DP−IV阻害は、様々な神経細胞疾患又は精神疾患の治療又は予防に有用であり得る。このため、DP−IV阻害剤は、神経細胞疾患の治療において、治療上の利点を有し得る。エンドモルフィン−2、β−カソモルフィン及びサブスタンスPは全て、DP−IVに対するインビトロ基質であることが示されている。何れの場合にも、インビトロ切断は極めて効率的であり、kcat/Kは約10−1−1以上である。ラットにおける無痛覚症の電気ショックジャンプ試験モデルでは、DP−IV阻害剤は、外来性エンドモルフィン−2の存在とは無関係に顕著な効果を示した(Brain Research,815:278−286(1999))。DP−IV阻害剤が、運動ニューロンを興奮毒性による細胞死から保護できること、MPTPと同時に投与したときにドーパミン作動性神経細胞の線条体への神経支配を保護できること、MPTP処置後に治療的な様式で与えたときに線条体の神経支配密度の回復を促進できることによっても、DP−IV阻害剤の神経保護効果及び神経再生効果が裏付けられた[Yong−Q. Wu, et al.,], “Neuroprotective Effects of Inhibitors of Dipeptidyl Peptidase−IV In Vitro and In Vivo,” Int. Conf. On Dipeptidyl Aminopeptidases: Basic Science and Clinical Applications, September 26−29,2002(Berlin, Germany)を参照。]。
【0083】
腫瘍の侵襲及び転移:正常な細胞が悪性表現型へと変換する間に、DP−IVを含む複数のエクトペプチダーゼの発現が増加又は減少することが観察されているので、DP−IV阻害は、腫瘍の侵襲及び転移の治療又は予防に有用であり得る(J. Exp. Med., 190:301−305(1999))。これらのタンパク質の上方制御又は下方制御は、組織及び細胞の種類に特異的であるものと思われる。例えば、T細胞リンパ腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病、細胞由来甲状腺癌、基底細胞癌、及び乳癌に対して、CD26/DP−IV発現の増加が観察されている。このため、DP−IV阻害剤は、このような癌の治療に利用し得る。
【0084】
良性前立腺肥大症:BPH患者から得た前立腺組織中でDP−IV活性の増加が認められたので、DP−IV阻害は、良性前立腺肥大症の治療に対して有用であり得る(Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem., 30:333−338(1992))。
【0085】
精子の運動性/男性避妊:精液中では、プロステートソーム(精子の運動性にとって重要な前立腺由来の細胞小器官)が極めて高レベルのDP−IV活性を有しているので、DP−IV阻害は、精子の運動性の変更及び男性避妊に有用であり得る(Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem., 30:333−338(1992))。
【0086】
歯肉炎:歯肉溝液中にDP−IV活性が見出され、幾つかの研究では、歯周病の重篤度に相関していたので、DV−IV阻害は、歯肉炎の治療に有用であり得る(Arhc. Oral Biol., 37: 167−173(1992))。
【0087】
骨粗鬆症:GIP受容体が骨芽細胞中に存在するので、DP−IV阻害は、骨粗鬆症の治療又は予防に有用であり得る。
【0088】
本発明の化合物は、以下の症状又は疾病の1以上を治療又は抑制する上で利用できる。(1)高血糖、(2)低グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)その他の炎症性症状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)シンドロームX、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、(25)II型糖尿病、(26)成長ホルモン欠乏症、(27)好中球減少症、(28)神経細胞障害、(29)腫瘍の転移、(30)良性前立腺肥大、(32)歯肉炎、(33)高血圧、(34)骨粗鬆症並びにDP−IVの阻害によって治療又は予防し得る他の症状。
【0089】
本化合物は、さらに、他の薬剤と組み合わせて、先述した疾病、障害及び症状を予防又は治療する方法においても有用である。
【0090】
本発明の化合物は、式Iの化合物又はその他の薬物を使用し得る疾病又は症状の治療、予防、抑制又は軽減において、1又は複数の他の薬物と組み合わせ使用することができ、この場合、薬物を組み合わせると、それぞれの薬物単独に比べて安全性又は有効性がさらに高くなる。このような他の薬物は、かかる薬物に対して一般的に用いられている経路及び量で、化合物Iの化合物と同時に又は順次に投与することができる。式Iの化合物が、1又は複数の他の薬物と同時に使用される場合、このような他の薬物と式Iの化合物とを含有する単位剤形の薬学的組成物が好ましい。しかしながら、式Iの化合物と1又は複数の他の薬物とが重複する様々なスケジュールで投与される療法も、併用療法に含まれ得る。1又は複数の他の活性成分とともに使用される場合、本発明の化合物と他の活性成分は、それぞれが単独で使用される場合に比べて少ない用量で使用し得ることも想定される。従って、本発明の薬学的組成物には、式Iの化合物に加えて、1又は複数の他の活性成分を含有する薬学的組成物が含まれる。
【0091】
式Iの化合物と組み合わせて投与することができ、個別に又は同一の薬学的組成物中に投与し得る他の活性成分の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
(a)他のジペプチリルペプチダーゼIV(DP−TV)阻害剤;
(b)(i)グリタゾン(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾンなど)などのPPARγアゴニスト及びKRP−297などのPPARα/γデュアルアゴニストなどの他のPPARリガンド及びフェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブレート)などのPPARαアゴニスト、(ii)メトホルミン及びフェンホルミンなどのビグアニド、並びに(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP−1B)阻害剤などのインシュリン増感剤;
(c)インシュリン又はインシュリン模倣物;
(d)スルホニル尿素、並びにトルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリド及びメグリチニド(レパグリニドなど)などの他のインシュリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース及びミグリトールなど);
(f)WO 98/04528号、WO 99/01423号、WO 00/39088号、及びWO 00/69810号に開示されているものなどのグルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)WO 00/42026号及びWO 00/59887号に開示されているものなどのGLP−1、GLP−1模倣物及びGLP−1受容体アゴニスト;
(h)GIP及びWO 00/58360号に開示されているものなどのGLP模倣物、並びにGIP受容体アゴニスト:
(i)PACAP、PACAP模倣物及びWO 01/23420号に開示されているものなどのPACAP受容体アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチン、並びに他のスタチン)、(ii)金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋されたデキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はそれらの塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベザフィブレレート)などのPPARαアゴニスト、(v)KRP−297などのPPARα/γデュアルアゴニスト、(vi)β−シトステロール及びエゼチミブなどのコレステロール吸収の阻害剤、(vii)アバシミブ(avasimibe)などのアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、並びに(viii)プロブコールなどの抗酸化剤などの、コレステロール降下剤;
(k)WO 97/28149号に開示されているものなどの、PPARδアゴニスト;
(l)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オーリスタット、ニューロペプチドY5阻害剤、CB−1アンタゴニスト、MC−4Rアゴニスト、β3アドレナリン作動性受容体アゴニストなどの肥満抑制化合物;
(m)回腸の胆汁酸輸送体阻害剤;
(n)アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤、グルココルチコイド、アザルフィジン、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤などの炎症症状に使用するための薬剤;
(o)ACE阻害剤(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル(tandolapril))、A−II受容体遮断薬(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン)、β遮断薬及びカルシウムチャンネル遮断薬などの降圧剤。
【0093】
上記組み合わせには、本発明の化合物を1つの他の活性化合物と組み合わせることのみならず、2以上の他の活性化合物と組み合わせることも含まれる。非限定的な例には、式Iを有する化合物を、ビグアニド、スルホニル尿素、HMG−CoA還元酵素阻害剤、PPARアゴニスト、PTP−1B阻害剤、他のDP−IV阻害剤及び肥満抑制化合物から選択される2以上の活性化合物と組み合わせることが含まれる。
【0094】
同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾病又は症状の治療/予防/抑制又は改善において使用される他の薬物と組み合わせて使用し得る。このような他の薬物は、かかる薬物に対して一般的に用いられている経路及び量で、本発明の化合物と同時に又は順次に投与することができる。本発明の化合物を1又は複数の他の薬物と同時に使用する場合、本発明の化合物に加えて、このような他の薬物を含有する薬学的組成物が好ましい。従って、本発明の薬学的組成物には、本発明の化合物に加えて、1又は複数の他の活性成分も含有する薬学的組成物が含まれる。
【0095】
第二の活性成分に対する本発明の化合物の重量比は変動させることができ、各成分の有効用量に依存するであろう。一般に、それぞれの有効用量が使用されるであろう。このように、例えば、本発明の化合物を別の薬剤と組み合わせる場合には、他の薬剤に対する本発明の化合物の重量比は、一般に、約1000:1ないし約1:1000、好ましくは約200:1ないし約1:200の範囲にわたるであろう。本発明の化合物と他の活性成分の組み合わせは、一般に、先述した範囲内に存在するであろうが、各事例において、各活性成分の有効量を使用すべきである。
【0096】
このような組み合わせでは、本発明の化合物と他の活性な薬剤は、別個に又は同時に投与することができる。さらに、1つの要素の投与は、他の薬剤の投与の前、同時又は後に行うことができる。
【0097】
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射若しくは注入、皮下注射、又はインプラント)、吸入噴霧、経鼻、膣、直腸、舌下、又は局所投与経路によって投与することができ、投与の各経路に適切な非毒性の薬学的に許容される慣用担体、佐剤及びビヒクルを含有する適切な投薬単位製剤中に、単独で又は一緒に調合することができる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどの温血動物の治療に加えて、本発明の化合物は、ヒトへの使用についても有効である。
【0098】
本発明の化合物を投与するための薬学的組成物は、投薬単位形態で便利に与えることができ、薬学の分野において周知の任意の方法によって調製することができる。全ての方法には、前記活性成分を、1又は複数の補助成分を成す担体と混合する工程が含まれる。一般に、前記薬学的組成物は、液体担体若しくは細かく分割された固体担体又は両担体に、前記活性成分を均一かつ緊密に混合させ、必要であればその後、所望の製剤になるように生成物を成形することによって調製される。前記薬学的組成物において、活性な対象化合物は、疾病の経過又は症状に対して所望の効果をもたらすのに十分な量で含められる。本明細書において使用される「組成物」という用語は、一定の成分を一定の量で含む生成物の他、一定の成分を一定の量で組み合わせることによって、直接又は間接に得られる任意の生成物を包含するものとする。
【0099】
前記活性成分を含有する薬学的組成物は、経口での使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、トローチ剤、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、エマルジョン、硬カプセル若しくは軟カプセル又はシロップ若しくはエリキシル剤とすることができる。経口で使用するための組成物は、薬学的組成物の製造の分野において公知である任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は、薬学的に上品かつ口当たりがよい調製物を与えるために、甘味料、香味料、着色料及び防腐剤からなる群から選択される1又は複数の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適した薬学的に許容される非毒性の賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性な希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、コーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン又はアラビアゴム;並びに潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。前記錠剤は素錠とすることができ、又は公知の技術によってコーティングを施して、胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させることにより、長期にわたって持続的な作用を与えることができる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用してもよい。それらは、制御放出のための浸透圧性治療用錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号;第4,166,452号;第4,265,874号に記載されている技術によってコーティングを施すこともできる。
【0100】
経口用の製剤は、活性成分が不活性な固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合された硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水若しくは油媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン又はオリーブ油)と混合された軟ゼラチンカプセルとして与えることもできる。
【0101】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性物質を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムであり、分散剤又は湿潤剤は、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなど)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)であり得る。水性懸濁液は、1又は複数の防腐剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピル、1又は複数の着色料、1又は複数の香味料、及び1又は複数の甘味料(スクロース又はサッカリンなど)も含有し得る。
【0102】
油性懸濁液は、活性成分を植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはココナッツ油、又は流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁させることによって調合することができる。油性懸濁液は、濃縮剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有し得る。口当たりがよい経口調製物を与えるために、上記したものなどの甘味料、及び香味料を加えることもできる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存し得る。
【0103】
水を加えることによって水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1又は複数の防腐剤と混合された活性成分を与える。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤の例は、既に上述したものである。さらなる賦形剤、例えば、甘味料、香味料及び着色料が存在してもよい。
【0104】
本発明の薬学的組成物は、水中油エマルジョンの形態とすることもできる。油相は、植物油(例えば、オリーブ油若しくはラッカセイ油)若しくは鉱油(例えば流動パラフィン)又はこれらの混合物とすることができる。適切な乳化剤は、天然に存在するゴム(例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、大豆、レシチン)、並びに脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)、並びに前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)であり得る。エマルジョンは、甘味料及び香味料も含有することができる。
【0105】
シロップ及びエリキシル剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロースなどの甘味料とともに調合することができる。このような製剤は、粘滑剤、防腐剤及び香味料及び着色料も含有することができる。
【0106】
前記薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性又は油脂性懸濁液の形態とすることができる。該懸濁液は、上述されている適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、本分野で公知の方法で調合することができる。無菌の注射可能な調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の注射可能な無菌溶液又は懸濁液とすることもできる。利用し得る許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル容液及び等張の塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、一般的に無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製に使用できる。
【0107】
本発明の化合物は、薬物を直腸投与するための座薬の形態で投与することもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが、直腸温では液体となり、従って、直腸内で溶けて薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とともに薬物を混合することによって調製することができる。このような材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールである。
【0108】
局所に使用する場合には、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液などが用いられる。(本願においては、局所投与には、洗口剤及びうがい薬が含まれるものとする。)
本発明の薬学的組成物及び方法は、上記の病態の治療に一般的に使用される、本明細書に記載されている治療的に活性な他の化合物をさらに含むことができる。
【0109】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害を必要とする症状の治療又は予防においては、適切な投薬レベルは、一般に約0.01ないし500mg/kg患者体重/日であり、これは単回又は複数回の投薬で与えることができる。好ましくは、前記投薬レベルは、約0.1ないし約250mg/kg/日、より好ましくは、約0.5ないし約100mg/kg/日であろう。適切な投薬レベルは、約0.01ないし250mg/kg/日、約0.05ないし100mg/kg/日、又は約0.1ないし50mg/kg/日とすることができる。この範囲内で、前記投薬量は、0.05ないし0.5、0.5ないし5又は5ないし50mg/kg/日とすることができる。経口投与の場合、治療すべき患者への投薬量を症状に応じて調節するために、前記組成物は、活性成分を1.0ないし1000mg、特に活性成分を1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0mg含有する錠剤の形態で与えることが好ましい。前記化合物は、1ないし4回/日、好ましくは1又は2回/日の投薬計画で投与することができる。
【0110】
糖尿病及び/又は高血糖若しくは高トリグリセリド血症、又は本発明の化合物が適応症となる他の疾病を治療又は予防する場合、約0.1mgないし約100mg/kg動物体重の一日投薬量で、好ましくは一日一回の投薬若しくは一日に2ないし6回に分割した投薬又は徐放形態で本発明の化合物を投与すると、一般に満足な結果が得られる。殆どの大きな哺乳動物では、総一日投薬量は、約1.0mgないし約1000mg、好ましくは約1mgないし約50mgである。70kgの成人の場合には、総一日投薬量は、一般に、約7mgないし約350mgであろう。この投薬計画は、最適な治療応答を与えるように調節することができる。
【0111】
しかしながら、個々の患者に対する具体的な投薬レベルと投薬の頻度には変更を加えることができ、使用する具体的な化合物の活性、当該化合物の代謝的安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、症状の重篤度、並びに治療を受けている宿主など様々な要因に依存し得ることが理解されるであろう。
【0112】
本発明の化合物を調製する幾つかの方法が、以下のスキーム及び実施例に例示されている。出発物質は、本分野において公知の手法又は本明細書に記されている手法に従って作製される。
【0113】
本発明の化合物は、標準的なペプチドカップリング条件を使用した後に脱保護を行うことによって、式IIのようなαアミノ酸中間体及び式IIIのような置換された複素環中間体から調製することができる。これらの中間体の調製は、以下のスキームに記載されており、
【0114】
【化25】

式中、m、p、Ar、X、R及びRは、上記定義のとおりであり、Pは、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などの適切な窒素保護基である。
【0115】
【化26】

式IIの化合物は、市販されており、文献に記載されており、又は当業者に周知の様々な方法によって便利に調製することができる。文献(X. Qian et al., Tetrahedron, 51: 1033−1054(1995)に記載されている1つの便利な経路が、スキーム1に記載されている。酸塩化物1(市販のものを入手するか、又は、例えば塩化チオニル若しくは塩化オキサリルを用いた処理により対応する酸から容易に調製することができる)などの活性化された酸誘導体をフェニルオキサゾリジノン2のリチウム陰イオンで処理すると、アシルオキサゾリジノン3が得られる。適切なアリールグリニャール試薬4をオキサゾリジノン3に共役付加すると、中間体5が得られる。α−アジド部分は、2つの適宜の方法のうち1つの方法で導入することができる。第一に、ホウ素トリフラート及びトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなどの塩基での処理によってアシルオキサゾリジノン5から生成されたホウ素エノラートを、N−ブロモスクシンイミドによる反応によって臭素化する。例えばテトラメチルグアニジニウムアジドでの処理によって、得られた臭化物をアジドで置換し、アジド6を得る。あるいは、例えばヘキサメチルジシラジドカリウムを用いて生成されたアシルオキサゾリジノン5のカリウムエノラートを2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルアジド(トリシルアジド)と反応させて、アジド6を直接得ることもできる。接触水素化又はトリフェニルホスフィンを用いた処理によって、このアジドを還元し、例えば、ジ−tert−ブチルジカルボネートでの処理によって、そのN−tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)誘導体として、得られたアミンを適切な基で保護する。リチウムヒドロペルオキシドで適宜に処理することにより、前記オキサゾリジノンを加水分解して、所望の酸中間体IIを得る。当業者であれば自明であろうが、酸IIの4つのジアステレオマーは全て、オキサゾリジノン2の(R)又は(S)鏡像異性体の何れかを適切に選択し、アシルオキサゾリジノン5をアジド6に変換するための適切な方法を利用することにより、この経路を介して鏡像異性体として純粋な形態で取得することができる。
【0116】
【化27】

中間体5のアリールとR置換基は、スキーム2に記されている順序とは逆の順序で導入することもできる。酸8は、市販のものを入手できるか、又は当業者に公知の様々な方法によって容易に調製される。このような方法の1つでは、アクリル酸メチル(7)をStilleカップリング条件下においてヨウ化アリールで処理し、エステルの加水分解後に酸8を得る。例えば、塩化オキサリルでの処理によって酸塩化物として又は塩化ピバロイルとの反応によって混合無水物として、酸を活性化した後、リチウムオキサゾリジノン2で処理し、アシルオキサゾリジノン9を得る。銅触媒で適切なグリニャール試薬10を添加すると、所望の中間体5が得られる。中間体IIへの変換は、スキーム1に記載されているように実施することができる。
【0117】
【化28】

が必要に応じて置換されたビニル基を含有し、R及び保護されたアミンが互いにアンチである中間体IIを調製する別の方法が、スキーム3に示されている。EDCを介したN,O−ジメチルヒドロキシルアミンに酸8をカップリングさせた後、適切なグリニャール11で処理すると、ケトン12を得ることができる。例えば、CBS触媒の(R)異性体の存在下においてカテコールボランで処理することにより、非対称な様式で、アルコール13へと還元することができる。このアルコールをN−Bocグリシンに結合させて、エステル14を得る。エステル14のエノラートの[3,3]−シグマトロピー転移は、U. Kazmaier in Angew. Chem. Int. Ed. Eng. 33: 998−999(1994)の記載に従って行うことができ、中間体IIaが得られる。
【0118】
【化29】

式IIIの化合物は、市販されており、文献に記載されており、又は当業者に周知の様々な方法によって適宜に調製することができる。XがCHFである中間体IIIを調製するための便利な方法が、スキーム4に記載されている。適切に保護されたアルコール16(それ自体、文献で知られているか、又は当業者に周知の様々な方法によって適宜に調製し得る。)を、(ジエチルアミノ)三フッ化硫黄(DAST)又は[ビス(2−メトキシエチル)アミノ]三フッ化硫黄などのフッ素化試薬で処理し、脱保護を行うと、フルオロ中間体IIIaが得られる。
【0119】
【化30】

XがCFである中間体IIIを調製する方法が、スキーム5に示されている。当業者に公知の様々な方法によって適切に保護されたアルコール16を対応するケトン17に酸化する。DASTなどのフッ素化試薬でケトン17を処理して、脱保護の後に、ジフルオロ中間体IIIbを得る。
【0120】
【化31】

例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジクロロメタンなどの溶媒中の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(EDC/HOBT)又はO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸及び1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HATU/HOAT)を用いて、室温で3ないし48時間、標準的なペプチドカップリング条件下で中間体II及びIIIをカップリングさせると、スキーム6に示されているように中間体18が得られる。幾つかのケースでは、中間体IIIは、塩化水素塩又はトリフルオロ酢酸塩などの塩とすることができ、これらのケースでは、カップリング反応に塩基(一般には、ジイソプロピルエチルアミン)を添加するのが便利である。次いで、例えば、Bocの場合には、トリフルオロ酢酸又はメタノール性塩化水素を用いて、保護基を除去すると、所望のアミンIが得られる。必要であれば、再結晶、練和、調製用薄層クロマトグラフィー、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(Biotage(R)装置を用いたものなど)又はHPLCによって、この生成物を不要な副産物から精製する。HPLCによって精製された化合物は、対応する塩として単離することができる。中間体の精製は、同様に行われる。
【0121】
幾つかの事例では、スキーム6に記載されているように調製された生成物Iは、例えば、Ar又はR上の置換基を操作することによって、さらに修飾することができる。これらの操作には、当業者に周知である還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0122】
【化32】

幾つかの事例では、上記スキームに記載されている中間体は、この一連の反応が終了する前に、例えば、Ar又はR上の置換基を操作することによって、さらに修飾を施すことができる。これらの操作には、当業者に周知である還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。このような例の1つが、スキーム7に記されている。Rが必要に応じて置換されたビニル基である中間体18aのオゾン分解後に酸化を行うと、酸18bが得られる。この酸をアミドとカップリングすると、アミド18cを得ることができる。18b及び18cは何れも、スキーム6に記されているように式Iの化合物に変換することができる。
【0123】
幾つかの事例では、反応を促進させるために又は不要な反応生成物を回避するために、先述した反応スキームを実施する順序を変更することができる。以下の実施例は、本発明をさらに完全に理解できるように与えられている。これらの実施例は例示にすぎず、いかなる意味においても、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0124】
中間体1
【0125】
【化33】

(3S)−3−フルオロピロリジン塩酸塩
ステップA:(3R)−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
機械的攪拌器、熱電対、添加漏斗(addition funnel)及び窒素気泡器を備えた22Lの三つ口丸底フラスコに、(3R)−3−ヒドロキシピロリジン425g(4.88mol)、ジクロロメタン8L、トリエチルアミン1L(7.17mol)を加えた。この溶液を氷浴で5ないし10℃まで冷やした後、反応温度を20℃未満に保ちながら、約1.5時間にわたって、クロロギ酸ベンジル1000g(5.86mol)を滴下して添加した。この反応混合物を氷浴中でさらに1時間攪拌した後、氷浴を取り除き、反応混合物を室温まで一晩暖めた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液約15Lを含有する巨大な抽出機の中にこの混合物を注いだ。2つに分けた2Lのジクロロメタンを用いて、水相を逆抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濃縮し、オレンジ色の油を得た。この粗精製物をジクロロメタン中に取り込み、50%酢酸エチル/ヘキサン中の予め充填されたシリカゲルの5kgカラムに適用し、8Lの50%酢酸エチル/ヘキサン、16Lの75%酢酸エチル/ヘキサン、次いで100%酢酸エチル/ヘキサンで順次溶出し、静置したときに結晶化する黄色の油として表題化合物を得た。
【0126】
ステップB:(3S)−3−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
機械的攪拌器、熱電対、添加漏斗及び窒素気泡器を備えた5Lの三つ口丸底フラスコに、(ジエチルアミノ)三フッ化硫黄375mL(2.84mol)及びジクロロメタン400mLを加えた。この溶液を−78℃まで冷却した。反応温度を−70℃未満に保ちながら、ジクロロメタン400mL中の(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル304g(1.37mol)の溶液を、2時間にわたり、添加漏斗を介して、この溶液に添加した。この反応混合物を攪拌し、室温まで一晩ゆっくりと暖めた。氷、水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を含有する巨大な抽出機に、少しずつ、注意しながらこの混合物を加えた。この混合物を酢酸エチル8Lで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濃縮し、茶色の油を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、10%から30%への酢酸エチル/ヘキサンのグラジエントで溶出)による精製によって、表題化合物が茶色の油として得られた。
【0127】
ステップC:(3S)−3−フルオロピロリジン塩酸塩
(3S)−3−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル(249g、1.11mmol)をエタノール2.3L中に溶かし、次いで、水115mLを加えた後、10%の炭素担持パラジウム30gを加えた。この混合物を、40psiの水素下で、約24時間揺動させた。さらに10g、次いで5gの触媒を加えた。40psiの水素下で、この混合物を反応が完結するまで攪拌した。この混合物をろ過し、ろ塊をエタノールで洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせたものを、濃塩酸185mLで処理し、濃縮して無色の油を得た。残留物にトルエンを加えて共沸混合物とした後、ジエチルエーテル2Lを加えた。この油が結晶化するまで、イソプロピルアルコールを加えた。この混合物を、週末まで、室温で寝かした。結晶を集めて、ジエチルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させて、表題化合物を得た。母液と洗浄液を合わせて、濃縮し、トルエンを加えて共沸混合物とし、ジエチルエーテル/イソプロピルアルコールで練和した。この第二集団を集めて、真空中で乾燥させて、さらなる表題化合物を得た。[α]=+8.64°(c=4、メタノール)。
【0128】
中間体2
【0129】
【化34】

(3R)−3−フルオロピロリジン塩酸塩
ステップA:(3S)−3−アセトキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
機械的攪拌器、熱電対、添加漏斗及び窒素気泡器を備えた22Lの三つ口丸底フラスコに、(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル(中間体1、ステップA)422g(1.91mol)、トルエン12L、トリフェニルホスフィン751g(2.86mol)、氷酢酸164mL(2.86mol)を加えた。得られた混合物を室温で攪拌した後、冷たい水浴で内部温度を28℃未満に保ちながら、約30分の期間にわたって、添加漏斗を介して、アゾジカルボン酸ジエチル500g(2.87mol)を添加した。この反応物を室温で一晩攪拌した。真空中で溶媒を除去し、ジエチルエーテル6Lを用いて残留物を練和した。固体をろ過して除去し、ジエチルエーテルでよく洗浄した。ろ液とエーテル洗浄液を合わせて、濃縮すると、濃黄色の油が固体とともに得られた。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、5%の酢酸エチル/ヘキサン及び10%から30%への酢酸エチル/ヘキサンのグラジエントで順次溶出)による精製によって、表題化合物を淡黄色の油として得た。
【0130】
ステップB:(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
(3S)−3−アセトキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル427g(1.62mol)を含有する20Lの三ツ口丸底フラスコに、無水エタノール4Lを加えた後、約400mLの水中の水酸化カリウム101g(1.57mol)を加えた。約15分後、この反応混合物を水8L中に注ぎ、酢酸エチル8Lで抽出した。次いで、さらに4Lの酢酸エチルで水層を抽出した。合わせた有機物を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濃縮し、濃い油及び固体を得た。
【0131】
ステップC:(3R)−3−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
中間体1、ステップBに概説した操作に実質的に従って、(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジルの366g(1.62mol)部を表題化合物に変換した。
【0132】
ステップD:(3R)−3−フルオロピロリジン塩酸塩
中間体1、ステップCに概説した操作に実質的に従って、(3R)−3−フルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルの222g(1.0mol)部を表題化合物に変換した。[α]=−8.61(c=4、メタノール)。
【0133】
中間体3
【0134】
【化35】

3,3−ジフルオロピロリジン塩酸塩
ステップA:3−オキソピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
機械的攪拌器、熱電対、コンデンサー及び窒素気泡器を備えた12Lの三つ口丸底フラスコに、(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボン酸ベンジル(中間体1、ステップA)351g(1.61mol)、ジクロロメタン6L、粉末化された分子篩500g及びN−メチルモルホリン−N−オキシド400g(3.41mol)を加えた。得られた懸濁液を室温で攪拌し、これに、テトラプロピルアンモニウム過ルテニウム酸塩12.9g(0.0367mol)を添加した。冷たい水浴を用いて、反応温度を30℃以下に保った。この混合物を室温で2時間攪拌した。この混合物を、5kgのシリカゲルのプラグ上に注いで、10%酢酸エチル/ジクロロメタンで溶出し、オレンジ色の油として表題化合物を得た。
【0135】
ステップB:3,3−ジフルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジル
機械的攪拌器、熱電対、添加漏斗及び窒素気泡器を備えた12Lの三つ口丸底フラスコに、3−オキソピロリジン−1−カルボン酸ベンジル292g(1.33mol)及びジクロロメタン3Lを加えた。室温で攪拌している前記溶液に、冷たい水浴を用いて内部温度を25℃未満に保ちながら、約3時間にわたって、(ジエチルアミノ)三フッ化硫黄530mL(4.0mol)を滴下しながら添加した。この混合物を室温で一晩攪拌した。氷及び固体炭酸水素ナトリウムを含有する巨大な抽出機の中にこの混合物を注いだ。次いで、酢酸エチル8Lを加え、炭酸水素ナトリウムを用いてこの混合物を塩基性にした。層を分離した。有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濃縮し、茶色の油309gを得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル10%から20%酢酸エチル/ヘキサンへのグラジエント)による精製によって、表題化合物を得た。
【0136】
ステップC:3,3−ジフルオロピロリジン塩酸塩
中間体1、ステップCに概説した操作に実質的に従って、3,3−ジフルオロピロリジン−1−カルボン酸ベンジルの242g(1.00mol)部を表題化合物に変換した。H NMR(500MHz、CDOD):δ3.7(t,2H)、3.6(t,2H)、2.55(m,2H)。
【0137】
中間体4
【0138】
【化36】

4−フルオロピペリジン塩酸塩
ステップA:4−フルオロ−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル
1Lの丸底フラスコに、4−オキソ−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル12.64g(51.4mmol)及びジクロロメタン300mLを加えた。−78℃で攪拌している前記溶液に、約1時間にわたり、添加漏斗を介して、[ビス(2−メトキシエチル)アミノ]三フッ化硫黄19mL(102.8mmol)を添加した。この反応混合物を、室温になるまで、ゆっくりと一晩暖めた。水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を含有する巨大な抽出機の中に、少しずつ、注意しながらこの混合物を注いだ。この混合物をジクロロメタン(3x300mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和炭酸ナトリウム水溶液で1度、10%塩酸水溶液及び塩水で2度洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。Biotage(R)システム上でのフラッシュクロマトグラフィー(グラジエント、ヘキサンから65%酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、所望の生成物を得た。LC/MS 242.1(M+1)。
【0139】
ステップB:4−フルオロピペリジン塩酸塩
エタノール80mL中に、4−フルオロ−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル(5.5g、23.2mmol)を溶かし、20%の炭素担持水酸化パラジウム(無水ベース)1.0gを前記混合物に添加した。40psiの水素下で約12時間、混合物を揺動させた後、セライトパッドを通してろ過し、メタノール100mLで洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせたものを、ジエチルエーテル中の1M塩酸60mLで処理し、濃縮して白色の蝋状固体を得た。この固体を真空中で乾燥させて、正体不明の微少な不純物とともに、表題化合物を固体として得た。さらなる精製を行わずに、この物質を用いた。H NMR(CDCl):δ4.95(d,J=47.4Hz,1H),3.70(br s,1H),3.34−3.27(m,4H),2.29(dt,J=37.1,12.3Hz,2H),2.16(br s,2H)。
【0140】
中間体5
【0141】
【化37】

3−フルオロアゼジチントリフルオロ酢酸塩
ステップA:1−ベンズヒドリル−3−フルオロアゼチジン
250mLの丸底フラスコに、1−ベンズヒドリル−3−ヒドロキシアゼチジン3.0g(12.5mmol)及びジクロロメタン80mLを加えた。−78℃で攪拌している前記溶液に、約3時間にわたり、添加漏斗を介して、[ビス(2−メトキシエチル)アミノ]三フッ化硫黄4.6mL(25mmol)を添加した。この反応混合物を、室温になるまで、ゆっくりと一晩暖めた。水及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を含有する巨大な抽出機の中に、少しずつ、(注意しながら)この反応混合物を添加した。この混合物をジクロロメタン80mLで3回抽出した。合わせた有機層を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水及び塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。Biotage(R)システムを用いたフラッシュクロマトグラフィー(グラジエント、ヘキサンから80%酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、所望の生成物を得た。LC/MS 242.1(M+1)。
【0142】
ステップB:3−フルオロアゼチジントリフルオロ酢酸塩
エタノール60mL及び20%の炭素担持水酸化パラジウム(無水ベース)500mg中に、1−ベンズヒドリル−3−フルオロアゼジチン(1.7g、7.04mmol)を溶かした。40psiの水素気体下で約12時間、混合物を揺動させた。セライトパッドを通してこの混合物をろ過し、メタノール100mLでろ塊を洗浄した。合わせた洗浄液をトリフルオロ酢酸10mLで処理し、濃縮して2つの油を得、このうち密度が高いものが所望のフルオロアゼチジン塩である。この混合物は、さらに精製しなかった。H NMR(CDCl) δ5.45−4.30(dm,J=56.7Hz,1H),4.46−4.38(m,2H),4.24−2.17(m,2H)。
【実施例1】
【0143】
【化38】

3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]チアゾリジン、トリフルオロ酢酸塩
ステップA:(4S)−3−[(2E)−ブタ−2−エノイル]−4−フェニル−1,3−オキサゾリジン−2−オン
テトラヒドロフラン(THF、100mL)中の攪拌された4(S)−4−フェニル−2−オキサゾリジノン(97.0g、43.0mmol)の溶液に、−78℃でn−ブチルリチウム(30.0mL、1.6M ヘキサン中、48.0mmol)を添加した。この混合物を20分間攪拌した後、塩化クロトニル(5.0g、43.0mmol)を加えた。得られた溶液を−78℃で30分間、室温で1.5時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を添加することによって、反応を停止させた。得られた水性スラリーを水で希釈し、3部の酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、83:17のヘキサン/酢酸エチル)による精製によって、所望の生成物を得た。
【0144】
ステップB:(4S)−3−[(3R)−3−(4−フルオロフェニル)ブタノイル−4−フェニル−1,3−オキサゾリジン−2−オン
無水THF(60mL)及びジメチルスルフィド(30mL)中の攪拌された臭化銅(II)ジメチルスルフィド錯体(6.85g、33.3mmol)の溶液に、−40℃で4−フルオロフェニル臭化マグネシウム(30.0mL、1.0M THF中、30.0mmol)を添加した。得られた混合物を−40℃で30分間攪拌した後、−10℃まで加温した。 THF(30mL)中のステップAから得られた生成物(1.18g、5.10mmol)を、1時間にわたって、−10℃で、上記反応混合物に添加した。得られた混合物を−10℃で2時間攪拌した後、室温までゆっくり加温し、室温で12時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液をゆっくり添加することによって、反応を停止させた。有機相を分離させ、2部の酢酸エチルを用いて水相を抽出した。合わせた有機相を塩水で洗浄し、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、80:20のヘキサン/酢酸エチル)による精製によって、所望の生成物を得た。
【0145】
ステップC:(4S)−3−[(2S,3S)−2−アジド−3−(4−フルオロフェニル)ブタノイル]−4−フェニル−1,3−オキサゾリジン−2−オン
無水THF(40mL)中のステップBで得た生成物(1.18g、3.61mmol)の攪拌された溶液に、−78℃でヘキサメチルジシラジドカリウム(8.7mL、0.5M トルエン中、4.35mmol)を添加した。この反応混合物を−78℃で30分間攪拌した。予め冷却したTHF(30mL)中のトリシルアジド(1.56g、5.04mmol)の溶液を、カニューラを通じて加えた。1.5分後に、氷酢酸(0.95mL、16.6mmol)及び酢酸カリウム(1.77g、18.1mmol)で反応を停止させた。冷却槽を取り除き、この反応物を室温で12時間攪拌した。この溶液を、酢酸エチル及び塩水間に分配した。水相を3部の酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、80:20のヘキサン/酢酸エチル)による精製によって、所望の生成物を得た。
【0146】
ステップD:(2S,3S)−2−アジド−3−(4−フルオロフェニル)ブタン酸
THF(30mL)中のステップCで得た生成物(0.88g、2.39mmol)の攪拌された溶液に、水(10mL)を加えた。0℃で15分間、この溶液を攪拌し、次いで30%の過酸化水素(1.60mL、14.3mmol)を添加した後、水酸化リチウム(0.17g、7.23mmol)をゆっくりと添加した。得られた混合物を0℃で4時間攪拌した。飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を添加して、反応を停止させ、30分間室温で攪拌した。水相を分離し、3部のジクロロメタンで抽出した。次いで、3Nの塩酸で水相をpH1の酸性にし、3部の酢酸エチルで抽出した。この酢酸エチル抽出物を合わせて、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させて生成物を得、これを次のステップで直接使用した。LC/MS 224.1(M+1)。
【0147】
ステップE:(βS)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−フルオロ−β−メチル−L−フェニルアラニン
10:8:1のメタノール/テトラヒドロフラン/トリフルオロ酢酸15mL中に溶かしたステップDで得たアジド500mg(2.24mmol)に、10%の炭素担持パラジウム50mgを添加した。反応フラスコに窒素を流した後、水素雰囲気下(1atm)で12時間攪拌した。この反応物をセライトのパッドに通した。次いで、メタノールでろ塊を洗浄し、真空中で溶媒を除去して、黄色の泡状物質を得た。この泡状物質に、ジオキサン5mLと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5mLを添加した後、ジ−tert−ブチルジカルボネート1.47g(6.70mmol)を添加した。この反応液を室温で12時間攪拌した。酢酸エチルで反応混合物を希釈し、1Nの塩酸水溶液を用いてpH1の酸性にした。相を分離させ、2部の酢酸エチルで水層を抽出した。有機抽出液を合わせて、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、95:5のジクロロメタン/メタノール)によって、残留物を精製し、所望の生成物を得た。LC/MS 298.0(M+1)。
【0148】
ステップF:3−[(2S,3S)−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]チアゾリジン
無水ジメチルホルムアミド(DMF、2mL)中のステップDで得られた生成物(0.19g、0.65mmol)の攪拌された溶液に、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、0.19g、0.99mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、0.13g、0.96mmol)、チアゾリジン(0.26mL、3.3mmol)及びN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(0.33mL、1.9mmol)を加えた。室温で12時間攪拌した後に、この反応液を酢酸エチルで希釈した。塩水、1N塩酸及び1N水酸化ナトリウム水溶液で、有機相を順次洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させて、未精製の結合された生成物を得、次のステップで直接使用した。
【0149】
ステップG:3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]チアゾリジン、トリフルオロ酢酸塩
ジクロロメタン(5mL)中のステップE由来の生成物の撹拌溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を室温で添加した。室温で1時間撹拌した後、真空中で溶媒を除去し、残留物をHPLC(YMC Pro−C18カラム、グラジエント溶出、10−90% アセトニトリル/0.1%TFAを含有する水)で精製し、表題化合物を得た。LC/MS 269.1(M+1)。
【実施例2】
【0150】
【化39】

(2S)−1−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]−2−シアノピロリジン、トリフルオロ酢酸塩
ステップA:(βS)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−フルオロ−β−メチル−L−フェニルアラニル−L−プロリンアミド
無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、1.5mL)中の(2S,3S)−2−アジド−3−(4−フルオロフェニル)ブタン酸(実施例1、ステップD、91.8mg、0.309mmol)の撹拌溶液に、[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート](HATU、141mg、0.371mmol)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAT、50.5mg、0.371mmol)、L−プロリンアミド(38.8mg、0.340mmol)及びN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(0.135mL、0.773mmol)を添加した。室温にて16時間撹拌した後、反応物を酢酸エチルで希釈した。水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩水で有機相を順次洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、減圧下で濃縮した。分取用薄層クロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル溶出液)で残留物を精製し、表題化合物を得た。
【0151】
ステップB:1−[(βS)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−フルオロ−β−メチル−L−フェニルアラニル]−2−シアノピロリジン
無水DMF(1mL)中のステップA由来の生成物(91.7mg、0.233mmol)の撹拌溶液に、塩化シアヌル(86mg、0.466mmol)を添加した。室温にて16時間撹拌した後、反応物を酢酸エチルで希釈した。水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩水で有機相を順次洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、減圧下で濃縮した。分取用薄層クロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル溶出液)で精製し、表題化合物を得た。
【0152】
ステップC:(2S)−1−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]−2−シアノピロリジン、トリフルオロ酢酸塩
ジクロロメタン(1mL)中のステップB由来の生成物75.0mgの撹拌溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を室温で添加した。1時間撹拌した後、真空中で溶媒を除去し、表題化合物を得た。LC/MS 275.1(M+1)。
【実施例3】
【0153】
【化40】

(3S)−1−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]−3−フルオロピロリジン、トリフルオロ酢酸塩
ステップA:(3S)−1−[(2S,3S)−2−[(tert−ブトキシルカルボニル)アミノ]3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]−3−フルオロピロリジン
無水DMF(2mL)中の(βS)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−4−フルオロ−β−メチル−L−フェニルアラニン(実施例1、ステップE、0.15g、0.51mmol)の撹拌溶液に、EDC(0.25g、1.33mmol)、HOBT(0.18g、1.33mmol)、(3S)−3−フルオロピロリジン塩酸塩(0.18g、1.45mmol)及びN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(0.23mL、1.31mmol)を添加した。室温にて12時間撹拌した後、反応物を酢酸エチルで希釈した。塩水、1N 塩酸及び1N 水酸化ナトリウム水溶液で有機相を順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で蒸発させて、未精製のカップリング生成物を得て、次のステップで直接用いた。
【0154】
ステップB:(3S)−1−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−フルオロフェニル)−1−オキソブタニル]−3−フルオロピロリジン、トリフルオロ酢酸塩
ジクロロメタン(5mL)中のステップA由来の生成物の撹拌溶液に、室温でトリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。室温で1時間撹拌した後、真空中で溶媒を除去し、残留物をHPLC(YMC Pro−C18カラム、グラジエント溶出、10−90% アセトニトリル/0.1%TFAを含有する水)で精製し、表題化合物を得た。LC/MS 269.0(M+1)。
【実施例4】
【0155】
【化41】

(3S)−1−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−ブロモフェニル)−1−オキソブタニル]−3−フルオロピロリジン、トリフルオロ酢酸塩
ステップA:(4R)−3−[(2E)−3−(4−ブロモフェニル)プロパ−2−エノイル]−4−フェニル−1,3−オキサゾリジン−2−オン
−78℃にて、無水THF(250mL)中の4−ブロモケイ皮酸(5.79g、22.5mmol)の撹拌溶液に、トリエチルアミン(4.60mL、34.6mmol)を添加し、続いて塩化トリメチルアセチル(3.54mL、24.7mmol)を添加した。得られた懸濁液を−78℃にて15分間、0℃にて1時間、続いて−78℃にて15分間撹拌し、その後、0℃にて、4(R)−4−フェニル−2−オキサゾリジノンリチウムのスラリー(−78℃で無水THF(150mL)中の4(R)−4−フェニル−2−オキサゾリジノン(5.0g、30.6mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(19.1mL、30.5mmol)を添加することにより、−78℃にて15分前に調製した。)の中に、カニューレを用いて移した。得られたスラリーを−78℃で1時間、室温にて12時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を用いて反応を停止させた。有機相を分離し、真空中で濃縮し、次のステップでこの未精製生成物を直接用いた。LC/MS 372.0(M+1)。
【0156】
ステップB:(4R)−3−[(3R)−3−(4−ブロモフェニル)ブタノイル]−4−フェニル−1,3−オキサゾリジン−2−オン
THF(60mL)及びジメチルスルフィド(30mL)中の臭化銅(II)ジメチルスルフィド錯体(8.78g、42.7mmol)の撹拌溶液に、−40℃で臭化メチルマグネシウム(12.7mL、ジエチルエーテル中3.0M、38.1mmol)を添加した。得られた混合物を−40℃で30分間撹拌し、その後、−20℃まで温めた。THF(30mL)中のステップA由来の生成物(3.53g、9.48mmol)を、上記反応混合物に対して、−20℃で1時間にわたり添加した。得られた混合物を−20℃で2時間撹拌し、次に、室温までゆっくりと温め、室温で12時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液をゆっくりと添加してその反応を停止させた。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで2回に分けて抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製を行い(シリカゲル、83:17 ヘキサン/酢酸エチル)、所望の生成物を得た。
【0157】
ステップC:(4R)−3−[(2R,3S)−2−ブロモ−3−(4−ブロモフェニル)ブタノイル]−4−フェニル−1,3−オキサゾリジン−2−オン
ジクロロメタン(40mL)中のステップB由来の生成物(2.87g、7.39mmol)の撹拌溶液に、−78℃にて、ジイソプロピルエチルアミン(1.93mL、11.1mmol)及びジブチルボロントリフレート(9.6mL、ジクロロメタン中1M溶液、9.60mmol)を添加した。その淡黄色の溶液を−78℃で15分間、0℃で1時間撹拌し、15分間、−78℃に再冷却した。予め冷却しておいたジクロロメタン(40mL)中のN−ブロモスクシンイミド(3.93g、22.2mmol)の懸濁液へ、上記溶液を、カニューレを用いて移した。得られた混合物を−78℃で1時間、0℃で3時間撹拌した。0.5N 亜硫酸水素ナトリウム水溶液によりその反応を停止させた。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで2回に分けて抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製を行い(シリカゲル、83:17 ヘキサン/酢酸エチル)、所望の生成物を得た。
【0158】
ステップD:(4R)−3−[(2S,3S)−2−アジド−3−(4−ブロモフェニル)ブタノイル]−4−フェニル−1,3−オキサゾリジン−2−オン
アセトニトリル(40mL)中のステップC由来の生成物(2.71g、6.39mmol)の撹拌溶液に、テトラメチルグアニジニウムアジド(3.51g、22.2mmol)を添加した。反応物を室温で12時間撹拌した。固形物を濾取し、ろ液を蒸発させた。未精製生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(83:17 ヘキサン/酢酸エチル)、所望の生成物を得た。
【0159】
ステップE:(2S,3S)−2−アジド−3−(4−ブロモフェニル)ブタン酸
THF(60mL)中のステップD由来の生成物(2.77g、6.23mmol)の撹拌溶液に、水(20mL)を添加した。この溶液を0℃で15分間撹拌し、次に30%過酸化水素(6.0mL、52.9mmol)を添加し、続いて水酸化リチウム(0.50g、21.2mmol)をゆっくりと添加した。得られた混合物を0℃で4時間撹拌した。亜硫酸ナトリウム飽和水溶液を添加して反応を停止させ、室温で30分間撹拌した。水相を分離し、ジクロロメタンで3回洗浄した。次に、水相を3N 塩酸でpH1まで酸性化して、酢酸エチルで3回に分けて抽出した。酢酸エチル抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で蒸発させ、生成物を得て、次のステップで直接用いた。
【0160】
ステップF:(3S)−1−[(2S,3S)−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−(4−ブロモフェニル)−1−オキソブタニル]−3−フルオロピロリジン
無水DMF(10mL)に溶解させた酸1.20g(4.22mmol)に、EDC(2.29g、11.9mmol)、HOBT(1.62g、11.9mmol)、(3S)−3−フルオロピロリジン塩酸塩(1.50g、11.9mmol)及びN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(4.2mL、23.6mmol)を添加した。室温にて12時間撹拌した後、反応物を酢酸エチルで希釈した。塩水、1N 塩酸及び1N 水酸化ナトリウム水溶液で有機相を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で蒸発させて、黄色の泡状物質を回収した。この泡状物質に、ジオキサン40mL、水4mL及びトリフェニルホスフィン(4.70g、17.9mmol)を添加した。反応物を90℃で12時間加熱し、その後、室温まで冷却した。真空中で溶媒を除去し、ジオキサン20mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mL中に残留物を溶解した。得られた混合物に、ジ−tert−ブチルジカルボネート7.8g(35.8mmol)を添加した。反応物を室温で12時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1N 塩酸でpH1に酸性化した。層を分離し、水層を酢酸エチルで2回に分けて抽出した。有機抽出物を合わせ、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製を行い(シリカゲル、66:34 ヘキサン/酢酸エチル)、所望の生成物を得た。LC/MS 429.1(M+1)。
【0161】
ステップG:(3S)−1−[(2S,3S)−2−アミノ−3−(4−ブロモフェニル)−1−オキソブタニル]−3−フルオロピロリジン、トリフルオロ酢酸塩
室温にて、ジクロロメタン(5mL)中のステップF由来の生成物(100mg、0.23mmol)の撹拌溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。室温で1時間撹拌した後、真空中で溶媒を除去し、残留物をHPLC(YMC Pro−C18カラム、グラジエント溶出、10−90% アセトニトリル/0.1%TFAを含有する水)で精製し、表題化合物を得た。LC/MS 329.0(M+1)。
【実施例5】
【0162】
【化42】

N−(4−{(1S,2S)−2−アミノ−1−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−3−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−3−オキソプロピル}フェニル)−N−メチル−4−メトキシベンゾアミド、トリフルオロ酢酸塩
ステップA:トランス−4−(4−ブロモフェニル)−3−ブテン−2−オン
無水ジクロロメタン(500mL)中に溶解させた4−ブロモケイ皮酸25.0g(110mmol)に、EDC(28.8g、150mmol)、HOBT(20.3g、150mmol)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(14.6g、150mmol)及びN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(23mL、150mmol)を添加した。室温で24時間撹拌した後、反応物を濃縮し、次いで、10%塩酸水溶液400mLで希釈した。次に、得られた混合物を300mLのジエチルエーテルで3回抽出し、有機相を合わせ、10%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩水(各100mL)で順次洗浄した。次に、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で蒸発させて、粘性のある油状物質としてWeinrebアミドを得、さらに精製せずに使用した。この油状物質に対して、無水テトラヒドロフラン300mLを添加し、得られた溶液を−78℃に冷却した。この溶液に対して、臭化メチルマグネシウム60mL(180mmol、ジエチルエーテル中3N)を添加した。この撹拌混合物を1時間にわたり、ゆっくりと0℃まで温めた。次に、水及び5% 塩酸水溶液(各100mL)を用いて、慎重にこの混合物を停止させ、次に、濃縮してテトラヒドロフランを除去した。得られた混合物を、300mLのジエチルエーテルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、5%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩水(各100mL)で順次洗浄した。次に、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で蒸発させて、粘性のある油を得た。Biotage(R)システム(シリカゲル、0−15%酢酸エチル/ヘキサングラジエント)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってこの未精製物質を精製し、淡黄色の結晶性固体として表題化合物を得た。LC/MS 225.0(M+1),227.0(M+3)。
【0163】
ステップB:(2S,3E)−4−(4−ブロモフェニル)−3−ブテン−2−オール
トルエン100mLに溶解させたステップA由来のケトン、5.55g(24.7mmol)に、(R)−2−メチル−CBS−オキサザボロリジン触媒3.7mL(3.7mmol、トルエン中1M)を添加し、得られた混合物を室温で15分間撹拌した。この混合物を−78℃まで冷却し、トルエン30mL中のカテコールボラン4.0mL(37.1mmol)を、30分間にわたり滴下添加した。添加後、そのスラリーを−78℃で60分間撹拌し、ゆっくりと均一化した。次に、この溶液を−78℃でさらに4時間(反応時間は4ないし24時間と異なる。)、TLCで出発物質が完全に消失したことが分かるまで撹拌した。次に、反応混合物を水100mLで希釈し、各100mLのジエチルエーテルで3回に分けて、得られた混合物を抽出した。次に、有機相を合わせ、各100mLの1N NaOH水溶液で2回、各100mLの5%塩酸溶液で2回、飽和塩水100mLで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させ、未精製のろう状固体を得た。次に、Biotage(R)システム(シリカゲル、0−20% 酢酸エチル/ヘキサン勾配)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってこの未精製物質を精製して、無色の結晶性固体としてアルコールを得た。この化合物をヘキサン中で再結晶化させ、無色結晶としてアルコールを得た(Mosherのエステル分析により、96% ee)。LC/MS 209.0(M−HO+1),211.0(M−HO+3)。
【0164】
ステップC:(1S,2E)−3−(4−ブロモフェニル)−1−メチルプロパ−2−エニルN−(tert−ブトキシカルボニル)グリシナート
無水ジクロロメタン(300mL)中に溶解させたステップB由来のアルコール12.6g(55mmol)に、EDC(23g、120mmol)、HOBT(16g、120mmol)、N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシン(21g、120mmol)及びN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(19mL、120mmol)を添加した。5時間後、この混合物を濃縮し、10%塩酸水溶液200mLで希釈した。次に、得られた混合物を各300mLのジエチルエーテルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、5%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩水(各100mL)で順次洗浄した。次に、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で蒸発させて、粘性のある油状物質として未精製物質を回収した。Biotage(R)システム(シリカゲル、0−20% 酢酸エチル/ヘキサングラジエント)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってこの未精製物質を精製して、無色の結晶性固体として表題化合物を得た。LC/MS 328.1(M−tBu+1),330.1(M−tBu+3)。
【0165】
ステップD:メチル(βS)−4−ブロモ−N−(tert−ブトキシカルボニル)−β−[(1E)−プロパ−1−エニル]−L−フェニルアラニナート
無水テトラヒドロフラン(50mL)中のステップC由来のエステル(18.1g、47mmol)を、−78℃に予め冷却しておいたリチウムヘキサメチルジシラジド溶液105mL(105mmol、テトラヒドロフラン中1M)に、カニューレを用いて添加した。その温度で10分間撹拌した後、−78℃にて、塩化亜鉛溶液55mL(55mmol、ジエチルエーテル中1M)を添加した。得られた混合物を−78℃で5時間撹拌し、室温までゆっくりと3時間にわたり温めた。室温でさらに2時間撹拌した後、水及び5%塩酸(各100mL)でこの混合物の反応を停止させた。次に、得られた混合物を各300mLの酢酸エチルで3回に分けて抽出し、有機相を合わせ、5%塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩水(各200mL)で順次洗浄した。次に、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空中で蒸発させて、黄色の泡状物質として未精製物質を得た。LC/MS 384.1(M+1),386.1(M+3)。1:1 ジエチルエーテル/メタノール500mL中に、この未精製物質を溶解し、0℃に冷却した。黄色が持続するようになるまで、トリメチルシリルジアゾメタン溶液(75mL、150mmol、ヘキサン中2M)を分割して添加した。室温に温めた後、この溶液をさらに8時間撹拌し、次に真空中で濃縮した。Biotage(R)システム(シリカゲル、0−15% 酢酸エチル/ヘキサン勾配)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってこの未精製物質を精製して、無色の油として表題化合物を得た。LC/MS 298.0(M−Boc+1),300.0(M−Boc+3)。
【0166】
ステップE:(βS)−4−ブロモ−N−(tert−ブトキシカルボニル)−β−[(1E)−プロパ−1−エニル]−L−フェニルアラニン
テトラヒドロフラン(THF)600mL中のメチル(βS)−4−ブロモ−N−(tert−ブトキシカルボニル)−β−[(1E)−プロパ−1−エニル]−L−フェニルアラニナート(ステップD)25g(62.8mmol)の溶液に、メタノール200mL及び1N 水酸化ナトリウム水溶液200mL(200mmol)を連続して添加した。その反応混合物を室温で3時間撹拌し、次に、メタノール及びTHFを減圧下で除去した。その水性混合物に、1N 塩酸 250mLを添加し、この混合物を酢酸エチル(3x300mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を塩水(300mL)で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、カルボン酸を得て、さらに精製せずに用いた。
【0167】
ステップF:(3S)−1−[(2S,3S,4E)−3−(4−ブロモフェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサ−4−エノイル]−3−フルオロピロリジン
DMF50mL中の、ステップEで得た(βS)−4−ブロモ−N−(tert−ブトキシカルボニル)−β−[(1E)−プロパ−1−エニル]−L−フェニルアラニン2.00g(5.21mmol)及び(3S)−3−フルオロピロリジン塩酸塩(中間体1)0.781g(6.25mmol)の溶液に、N、N’−ジイソプロピルエチルアミン2.71mL(15.6mmol)、0.774g(5.73mmol)のHOBT及び1.10g(5.73mmol)のEDCを添加した。室温で16時間後に、0.5Mの炭酸水素ナトリウム水溶液200mLを添加して反応を停止させた。この混合物を各300mLの酢酸エチルで2回抽出した。各200mLの0.5M 炭酸水素ナトリウム水溶液、塩水で2回さらに有機層を洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、真空中で濃縮して、透明な油を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(20%から50%酢酸エチル/ヘキサンへのグラジエント)による精製によって、無色の油として表題化合物を得た。LC/MS 355.3(M+1)及び357.3(M+3)。
【0168】
ステップG:(3S)−l−[(2S,3S)−3−(4−ブロモフェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ジメチルアミノカルボニル)−1−オキソプロパニル]−3−ジフルオロピロリジン
水30mL中の、過ヨウ素酸ナトリウム2.37g(11.1mmol)、炭酸カリウム0.306g(2.21mmol)及び過マンガン酸カリウム0.087g(0.550mmol)の溶液に、室温で、tert−ブタノール70mLを添加した。tert−ブタノール20mL中の、ステップFで得た(3S)−1−[(2S,3S,4E)−3−(4−ブロモフェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサ−4−エノイル]−3−フルオロピロリジン2.21g(1.01mol)の溶液に、得られた懸濁液を添加した。次いで、得られた混合物を40℃まで9時間温めた。次いで、この混合物を室温まで冷却し、1Mの亜硫酸水素ナトリウム水溶液200mL上に注いだ。得られた混合物を各250mLの酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、真空中で濃縮し、黄色の固体を得た。この物質を26mLのDMF中に溶かした。この溶液に、THF中のジメチルアミンの2.0M溶液1.33mL(2.65mmol)を添加した後、N、N’−ジイソプロピルエチルアミン1.15mL(6.63mmol)、0.328g(2.43mmol)のHOBT及び0.466g(2.43mmol)のEDCを添加した。室温で16時間攪拌した後に、0.5Mの炭酸水素ナトリウム水溶液100mLでこの反応物を希釈した。この混合物を各250mLの酢酸エチルで2回抽出した。各100mLの0.5M 炭酸水素ナトリウム水溶液、塩水で有機層を2回さらに洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、真空中で濃縮して、黄色の油を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(0%から10%MeOH/酢酸エチルへのグラジエント)による精製によって、黄色の固体として表題化合物を得た。LC/MS 385.8(M+1)及び387.8(M+3)。
【0169】
ステップH:N−(4−{(1S,2S)−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−1−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−3−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−3−オキソプロピル}フェニル)−N−メチル−4−メトキシベンゾアミド
密封可能なチューブ中のトルエン1mL中の、ステップGで得た(3S)−1−[(2S,3S)−3−(4−ブロモフェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ジメチルアミノカルボニル)−1−オキソプロパニル]−3−ジフルオロピロリジン56.9mg(0.117mmol)の溶液に、N−メチル−4−メトキシベンゾアミド48.5mg(0.293mmol)、固体の炭酸カリウム48.5mg(0.351mmol)及び固体のヨウ化銅(I)22.3mg(0.117mmol)を添加した。この混合物に、トルエン1mL中のN,N’−ジメチルエチレンジアミン0.0378mLの溶液を添加した。10分間窒素を通気させて、この混合物を脱気した後、密封し、48時間110℃まで温めた。この混合物を室温まで冷却し、1:1:1の酢酸エチル/ジクロロメタン/メタノールの溶液で、この固体を練和し、ろ過した。この溶液を真空中で濃縮し、分取用薄層クロマトグラフィー(10%メタノール/酢酸エチル)によって、得られた残留物を精製して、白色の固体として表題化合物を得た。LC/MS 509.2(M+1)。
【0170】
ステップI:N−(4−{(1S,2S)−2−アミノ−1−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−3−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−3−オキソプロピル}フェニル)−N−メチル−4−メトキシベンゾアミド、トリフルオロ酢酸塩
ジクロロメタン1mL中の、ステップHで得たN−(4−{(1S,2S)−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−1−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−3−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−3−オキソプロピル}フェニル)−N−メチル−4−メトキシベンゾアミド17.6mg(0.0346mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸1mLを添加した。室温で1時間後に、この溶液を真空中で濃縮した。逆相分取用HPLC(10%から80%へのアセトニトリル水溶液)による精製によって、泡状の白色固体として表題化合物を得た。LC/MS 471.2(M+1)。
【実施例6】
【0171】
【化43】

(2S,3S)−3−アミノ−2−[4−(4−シアノフェノキシ)フェニル]−4−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−N,N−ジメチル−4−オキソブタンアミド、トリフルオロ酢酸塩
ステップA:(3S)−1−[(2S,3S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ジメチルアミノカルボニル)−1−オキソ−3−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]プロパニル]−3−フルオロピロリジン
実施例5のステップGで得られた化合物5.48g(11.27mmol)、ビス(ピナコラート)二ホウ素(5.72g、22.54mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(1.84g、2.25mmol)及び酢酸カリウム(3.32g、33.81mmol)の混合物に窒素を吹き込んだ。次いで、メチルスルホキシド(60mL)を添加し、この溶液を脱気し、窒素を再度充填した後、この反応混合物を90℃で一晩温めた。得られた黒色混合物を室温まで冷却し、セライトのパッドを通してろ過し、酢酸エチルでろ塊を洗浄した。合わせたろ液を、さらに酢酸エチル(500mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水及び飽和塩水で順次洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1メタノール/酢酸エチル溶出液)によって、粘性のある暗色の残留物を精製し、表題化合物を得た。LC−MS 534.3(M+1)。
【0172】
ステップB:(3S)−1−[(2S,3S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ジメチルアミノカルボニル)−1−オキソ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニル]−3−フルオロピロリジン
0℃のテトラヒドロフラン75mL中の、上記ステップAで得られた物質4.0g(7.50mmol)の溶液に、30%過酸化水素の水溶液1.25mLを添加した。1時間後に、この溶液を室温まで温め、攪拌を2時間継続した。この反応混合物を1Nの塩酸でpH4に酸性化した。さらに水を添加し、酢酸エチルで水層を抽出した(3回)。合わせた有機抽出物を、飽和塩水で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、メタノール/酢酸エチル)によって、得られた油を精製し、表題化合物を得た。LC−MS 424.2(M+1)。
【0173】
ステップC:(2S,3S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−[4−(4−シアノフェノキシ)フェニル]−4−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−N,N−ジメチル−4−オキソブタンアミド
8mLのジクロロメタン中の、ステップBで得られた化合物324mg(0.766mmol)の懸濁液に、4−シアノフェニルホウ酸(225mg、1.532mmol)、酢酸銅(139mg、0.766mmol)、ピリジン(0.31mL、3.830mmol)及び4Å分子篩を添加した。室温で、空気のバルーン下にて、この混合物を40時間攪拌した後、セライトのパッドを通して濾過した。減圧下でろ液を濃縮して油を得、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、メタノール/ジクロロメタン溶出液)によって精製し、表題化合物を得た。LC−MS 525.3(M+1)。
【0174】
ステップD.(2S,3S)−3−アミノ−2−[4−(4−シアノフェノキシ)フェニル]−4−[(3S)−3−フルオロピロリジン−1−イル]−N,N−ジメチル−4−オキソブタンアミド、トリフルオロ酢酸塩
ジクロロメタン(1mL)中の、上記ステップCで得られた化合物(4.0mg)の溶液を、トリフルオロ酢酸(1mL)で処理した。1時間後に、減圧下で溶液を濃縮し、表題化合物を得た。LC−MS 425.3(M+1)。
【0175】
実施例1−6で概説した操作に実質的に従って、表1に列記されている実施例7−26を調製した。
【0176】
【表1】


【0177】
薬学的製剤の例
経口用薬学的組成物の具体的な実施形態として、100mgの効力錠剤は、本発明の何れかの化合物100mg、微結晶性セルロース268mg、クロスカルメロースナトリウム20mg及びステアリン酸マグネシウム4mgから構成される。まず、活性な、微結晶性セルロースとクロスカルメロースを混合する。次いで、ステアリン酸マグネシウムによってこの混合物を潤滑化し、圧縮して錠剤にする。
【0178】
本発明の幾つかの実施形態を参照しながら、本発明を記載し、説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、操作及びプロトコールに対して様々な改変、変更、修飾、置換、削除又は付加を施し得ることが、当業者には自明であろう。例えば、上述されている本発明の化合物を用いて何らかの適応症の治療を受けている哺乳動物の反応性における変動の結果、本明細書に具体的に記載されている投薬量以外の有効投薬量を適用できる場合がある。観察される具体的な薬理学的応答は、選択した具体的な活性化合物又は薬学的担体の存否、並びに製剤の種類及び使用される投与の様式に従い、これらに依存して変動する場合があり、本発明の目的及び実施に応じて、結果にこのような予想される変動又は差異が生じることが想定される。従って、本発明は、特許請求の範囲によって定義されるものであり、かかる特許請求の範囲は、合理的な限度で最も広く解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iの化合物:
【化1】

又は薬学的に許容されるそれらの塩。
(式中、
各nは、独立に、0、1又は2であり;
m及びpは、独立に、0又は1であり;
qは、1又は2であり;
Xは、CH、S、CHF又はCFであり;
Arは、置換されていないフェニル又は1ないし5個のR置換基で置換されたフェニルであり;
は、水素又はシアノであり;
は、
1−10アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
2−10アルケニル(アルケニルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CHCOOH、
(CHCOOC1−6アルキル、
(CHCONR(式中、R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は、
及びRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
各Rは、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、シアノ、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR
(CH−NRCO
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されているか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択され、
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
は、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択され、R中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
各Rは、水素又はRである。)
【請求項2】
*の印が付された炭素原子が、式Ia:
【化2】

に図示された立体化学配置を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
に結合されている**の印が付された炭素原子が、式Ib:
【化3】

に図示された立体化学配置を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
構造式Ic:
【化4】

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
*の印が付された炭素原子及び**の印が付された炭素原子が、式Id:
【化5】

に図示された立体化学配置を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
構造式Ie
【化6】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
*の印が付された炭素原子が、式If:
【化7】

に図示された立体化学配置を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
構造式Ig
【化8】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
*の印が付された炭素原子が、式Ih:
【化9】

に図示された立体化学配置を有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
は、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
2−6アルケニル(アルケニルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CHCOOH、
(CHCOOC1−6アルキル、及び
(CHCONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は
及びRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され、
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が、
1−3アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(式中、アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか、又は
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル、及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、
メチル、
エチル、
CH−シクロプロピル、
COOH、
COOMe、
COOEt、
CONMe
CONH
CONHMe、
CONHEt、
ピロリジン−1−イルカルボニル、
アゼチジン−1−イルカルボニル、及び
[(テトラゾール−5−イル)アミノ]カルボニル
からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
*の印が付された炭素原子、Rに結合されている**の印が付された炭素原子、及びRに結合されている***の印が付された炭素原子が、式Ii:
【化10】

に図示されている立体化学配置を有し、
が、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、及び
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか、又は、
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、該複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
各Rが、
ハロゲン、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
が、
メチル、
エチル、
CH−シクロプロピル、
COOH、
COOMe、
COOEt、
CONMe
CONH
CONHMe、
CONHEt、
ピロリジン−1−イルカルボニル、
アゼチジン−1−イルカルボニル、及び
[(テトラゾール−5−イル)アミノ]カルボニル
からなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が、
フルオロ、
クロロ、
ブロモ、
トリフルオロメチル、
トリフルオロメトキシ、及び
メトキシ
からなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
構造式Ijを有する請求項1に記載の化合物。
【化11】

(式中、
Xは、CH、S、CHF、又はCFであり;
Arは、置換されていないフェニル又は1ないし5個のR置換基で置換されたフェニルであり;
は、水素又はシアノであり;
は、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、及び
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか、又は、
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
各Rは、
ハロゲン、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン及びシアノから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、及び
フェニル(CHCON(Me)−(フェニルは、置換されていないか、又はハロゲン、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択される。)
【請求項17】
【化12】



からなる群から選択される構造式を有する請求項16の化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物の有効量を哺乳動物に投与することを含む、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害を必要とする哺乳動物においてジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性を阻害する方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、糖尿病の治療を必要とする哺乳動物において糖尿病を治療する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、非インシュリン依存性(2型)糖尿病の治療を必要としている哺乳動物において非インシュリン依存性(2型)糖尿病を治療する方法。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、高血糖の治療を必要としている哺乳動物において高血糖を治療する方法。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、肥満の治療を必要としている哺乳動物において肥満を治療する方法。
【請求項24】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLの群から選択される一又は複数の脂質障害の治療を必要とする哺乳動物において前記脂質障害を治療する方法。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、(1)高血糖、(2)低グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質障害、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)その他の炎症性症状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)シンドロームX、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、並びにインシュリン抵抗性を要素とする他の疾患、からなる群から選択される一又は複数の症状の治療を必要としている哺乳動物を治療する方法。
【請求項26】
(a)第二のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤;
(b)PPARγアゴニスト、PPARα/γデュアルアゴニスト、PPARαアゴニスト、ビグアニド、及びタンパク質チロシンホスファターゼ−1B阻害剤からなる群から選択されるインシュリン増感剤;
(c)インシュリン又はインシュリン模倣物;
(d)スルホニル尿素又はその他のインシュリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤;
(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1模倣物又はGLP−1受容体アゴニスト;
(h)GIP、GIP模倣物又はGIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAP模倣物、又はPACAP受容体アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(ii)金属イオン封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)PPARαアゴニスト、(v)PPARα/γデュアルアゴニスト、(vi)コレステロール吸収阻害剤、(vii)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(viii)抗酸化剤などの、コレステロール降下剤;
(k)PPARδアゴニスト;
(1)肥満抑制化合物;
(m)回腸の胆汁酸輸送体阻害剤;
(n)抗炎症剤;並びに
(o)降圧剤、
からなる群から選択される一又は複数の活性成分がさらに追加された、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
PPARα/γデュアルアゴニストがKRP−297である、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
PPARα/γデュアルアゴニストKRP−297とともに、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、糖尿病の治療を必要としている哺乳動物において糖尿病を治療する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iの化合物:
【化1】

又は薬学的に許容されるそれらの塩。
(式中、
各nは、独立に、0、1又は2であり;
m及びpは、独立に、0又は1であり;
qは、1又は2であり;
Xは、CH、S、CHF又はCFであり;
Arは、置換されていないフェニル又は1ないし5個のR置換基で置換されたフェニルであり;
は、水素であり;
は、
1−10アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
2−10アルケニル(アルケニルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CHCOOH、
(CHCOOC1−6アルキル、
(CHCONR(式中、R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は、
及びRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
各Rは、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、シアノ、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−NR
(CH−CONR
(CH−OCONR
(CH−SONR
(CH−SO
(CH−NRSO
(CH−NRCONR
(CH−NRCOR
(CH−NRCO
(CH−COOH、
(CH−COOC1−6アルキル、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されているか、又はヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択され、
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
は、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択され、R中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されており;
各Rは、水素又はRである。)
【請求項2】
*の印が付された炭素原子が、式Ia:
【化2】

に図示された立体化学配置を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
に結合されている**の印が付された炭素原子が、式Ib:
【化3】

に図示された立体化学配置を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
構造式Ic:
【化4】

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
*の印が付された炭素原子及び**の印が付された炭素原子が、式Id:
【化5】

に図示された立体化学配置を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
構造式Ie
【化6】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
*の印が付された炭素原子が、式If:
【化7】

に図示された立体化学配置を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
構造式Ig
【化8】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
*の印が付された炭素原子が、式Ih:
【化9】

に図示された立体化学配置を有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
は、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
2−6アルケニル(アルケニルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、COH、C1−6アルキルオキシカルボニル、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CHCOOH、
(CHCOOC1−6アルキル、及び
(CHCONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、又は
及びRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され、
中の任意のメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし2個の基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が、
1−3アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(式中、アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか、又は
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル、及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、
メチル、
エチル、
CH−シクロプロピル、
COOH、
COOMe、
COOEt、
CONMe
CONH
CONHMe、
CONHEt、
ピロリジン−1−イルカルボニル、
アゼチジン−1−イルカルボニル、及び
[(テトラゾール−5−イル)アミノ]カルボニル
からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
*の印が付された炭素原子、Rに結合されている**の印が付された炭素原子、及びRに結合されている***の印が付された炭素原子が、式Ii:
【化10】

に図示されている立体化学配置を有し、
が、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、及び
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか、又は、
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、該複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
各Rが、
ハロゲン、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
が、
メチル、
エチル、
CH−シクロプロピル、
COOH、
COOMe、
COOEt、
CONMe
CONH
CONHMe、
CONHEt、
ピロリジン−1−イルカルボニル、
アゼチジン−1−イルカルボニル、及び
[(テトラゾール−5−イル)アミノ]カルボニル
からなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が、
フルオロ、
クロロ、
ブロモ、
トリフルオロメチル、
トリフルオロメトキシ、及び
メトキシ
からなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
構造式Ijを有する請求項1に記載の化合物。
【化11】

(式中、
Xは、CH、S、CHF、又はCFであり;
Arは、置換されていないフェニル又は1ないし5個のR置換基で置換されたフェニルであり;
は、水素であり;
は、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか又はハロゲン若しくはヒドロキシから独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている)、
(CH−C3−6シクロアルキル、
COOH、
COOC1−6アルキル、及び
CONR(R及びRは、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか、又は、
とRは、両者で、それらが結合している窒素原子とともに、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成しており、前記複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1ないし5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;
各Rは、
ハロゲン、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1ないし5個のハロゲンで置換されている。)、
フェニルオキシ(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びシアノから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、及び
フェニル(CHCON(Me)−(フェニルは、置換されていないか、又はハロゲン、トリフルオロメチル及びC1−4アルキルから独立に選択される1ないし3個の置換基で置換されている。)、
からなる群から独立に選択される。)
【請求項17】
【化12】



からなる群から選択される構造式を有する請求項16の化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物の有効量を哺乳動物に投与することを含む、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害を必要とする哺乳動物においてジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性を阻害する方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、糖尿病の治療を必要とする哺乳動物において糖尿病を治療する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、非インシュリン依存性(2型)糖尿病の治療を必要としている哺乳動物において非インシュリン依存性(2型)糖尿病を治療する方法。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、高血糖の治療を必要としている哺乳動物において高血糖を治療する方法。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、肥満の治療を必要としている哺乳動物において肥満を治療する方法。
【請求項24】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLの群から選択される一又は複数の脂質疾患の治療を必要とする哺乳動物において前記脂質疾患を治療する方法。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、(1)高血糖、(2)低グルコース耐性、(3)インシュリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)その他の炎症性症状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)シンドロームX、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、並びにインシュリン抵抗性を要素とする他の疾患、からなる群から選択される一又は複数の症状の治療を必要としている哺乳動物を治療する方法。
【請求項26】
(a)第二のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤;
(b)PPARγアゴニスト、PPARα/γデュアルアゴニスト、PPARαアゴニスト、ビグアニド、及びタンパク質チロシンホスファターゼ−1B阻害剤からなる群から選択されるインシュリン増感剤;
(c)インシュリン又はインシュリン模倣物;
(d)スルホニル尿素又はその他のインシュリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤;
(f)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)GLP−1、GLP−1模倣物又はGLP−1受容体アゴニスト;
(h)GIP、GIP模倣物又はGIP受容体アゴニスト;
(i)PACAP、PACAP模倣物、又はPACAP受容体アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤、(ii)金属イオン封鎖剤、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)PPARαアゴニスト、(v)PPARα/γデュアルアゴニスト、(vi)コレステロール吸収阻害剤、(vii)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び(viii)抗酸化剤などの、コレステロール降下剤;
(k)PPARδアゴニスト;
(1)肥満抑制化合物;
(m)回腸の胆汁酸輸送体阻害剤;
(n)抗炎症剤;並びに
(o)降圧剤、
からなる群から選択される一又は複数の活性成分がさらに追加された、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
PPARα/γデュアルアゴニストがKRP−297である、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
PPARα/γデュアルアゴニストKRP−297とともに、請求項1に記載の化合物の治療的有効量を哺乳動物に投与することを含む、糖尿病の治療を必要としている哺乳動物において糖尿病を治療する方法。

【公表番号】特表2006−510630(P2006−510630A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557341(P2004−557341)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/037825
【国際公開番号】WO2004/050022
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】