説明

経路探索装置

【課題】被害の大きな交通事故が発生しにくい経路を探索する経路探索装置を提供すること。
【解決手段】過去に起こった交通事故の位置情報と、その交通事故の被害の大きさを示す交通事故被害値を交通量で割った値である交通事故コストとを記憶装置に記憶しておく。そして、交通事故コストの総和が小さくなる経路を探索する(S3、S7、S10)。交通事故の被害が大きい場合には交通事故被害値が大きいので、被害の大きい事故が過去に起こった場合には事故の数が少なくても経路の交通事故コストの総和は大きくなる。そのため、過去に被害の大きい交通事故が起こったことがある経路は探索されにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データを用いて目的地に至る経路を探索する経路探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナビゲーション装置では、ユーザーによって目的地が設定されると、目的地までの距離が短い経路、最も早く目的地に到着できる経路、一般道路を優先した経路など所定の条件に基づいた最適経路を探索する。また、特許文献1のナビゲーション装置では、過去に起こった交通事故を考慮して、交通事故の発生頻度が少ない経路を探索する。
【特許文献1】特開2002−156239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のナビゲーション装置では、交通事故の被害の大きさまでは考慮してない。したがって、探索した経路は交通事故の発生頻度は少ないが、それらが被害の大きな交通事故である場合もある。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被害の大きな交通事故が発生しにくい経路を探索する経路探索装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の経路探索装置は、目的地を設定する設定手段と、過去に起こった交通事故について、その交通事故の位置情報及び被害の大きさを示す交通事故被害値を記憶した記憶装置と、前記設定手段が設定した目的地に至る経路における前記交通事故被害値の総和を前記記憶装置の記載内容に基づいて算出しつつ、その総和が小さくなる経路を探索する経路探索手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
これによれば、交通事故の被害が大きい場合には交通事故被害値が大きいので、被害の大きい事故が過去に起こった場合には事故の数が少なくても経路の交通事故被害値の総和は大きくなる。そのため、過去に被害の大きい交通事故が起こったことがある経路が経路探索手段によって探索されてしまうことが抑制される。
【0007】
経路探索手段は、交通事故被害値の総和が小さくなる経路として、たとえば、請求項2のような交通事故被害値の総和が最小の経路、または、請求項3のような交通事故被害値の総和が所定値以下の経路を探索することができる。
【0008】
また、交通事故被害値の総和が小さくなる経路を複数探索してもよい。その場合には、請求項4のように、交通事故被害値の総和が小さいほうから所定個数の経路を仮案内経路として探索し、当該仮案内経路の中から一つを案内経路として決定することもできる。
【0009】
請求項5の経路探索装置は、前記記憶装置には、道路の所定区間ごとに所定の基準で定められる走行しにくさを示す走行コストも記憶されており、前記経路探索手段は、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コストの総和を算出して、前記仮案内経路の中での前記走行コストの総和の大きさの順位を示す走行コスト順位と前記交通事故被害値の総和の大きさの順位を示す交通事故被害値順位を決定し、その後、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コスト順位と前記交通事故被害値順位の悪いほうの順位を選択し、前記仮案内経路のうち、前記選択した順位が最も良い経路を案内経路として決定することを特徴とする。
【0010】
これによれば、経路探索手段は仮案内経路それぞれに対して走行コストの総和を算出して、仮案内経路の中での走行コストの総和の大きさの順位を示す走行コスト順位と交通事故被害値の総和の大きさの順位を示す交通事故被害値順位を決定する。その後、仮案内経路それぞれに対して、各仮案内経路における走行コスト順位と交通事故被害値順位の悪いほうの順位を選択し、その選択した順位の中で最も良い順位の経路を案内経路として決定する。これにより、本請求項の経路探索装置は、被害の大きな交通事故が起こりにくく、目的地までの距離が短いなど走行しやすさもある程度確保した案内経路を探索することができる。
【0011】
請求項6の経路探索装置は、請求項5では交通事故被害値の総和に基づいて仮案内経路を決定していたのに対して、走行コストに基づいて仮案内経路を決定する点において相違するが、仮案内経路を探索した後の処理は請求項5と同一である。
【0012】
その請求項6の経路探索装置は、前記記憶装置には、道路の所定区間ごとに所定の基準で定められる走行しにくさを示す走行コストも記憶されており、前記経路探索手段は、前記設定手段が設定した目的地に至る経路全体の前記走行コストの総和を前記記憶装置の記載内容に基づいて算出しつつ、その総和が小さいほうから所定個数の経路を仮案内経路として探索し、当該仮案内経路それぞれに対して、前記交通事故被害値の総和を算出して、前記仮案内経路の中での前記走行コストの総和の大きさの順位を示す走行コスト順位と前記交通事故被害値の総和の大きさの順位を示す交通事故被害値順位を決定し、その後、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コスト順位と前記交通事故被害値順位の悪いほうの順位を選択し、前記仮案内経路のうち、前記選択した順位が最も良い経路を案内経路として決定することを特徴とする。
【0013】
この請求項6の経路探索装置によれば、目的地までの距離が短いなど走行しやすく、かつ、被害の大きな交通事故の起こりにくさもある程度確保した案内経路を探索することができる。
【0014】
請求項7の経路探索装置は、前記経路探索手段は、前記選択した順位が最も良い経路が複数ある場合には、その複数の経路のうち前記交通事故被害値順位が最も高い経路を案内経路として決定することを特徴とする。このように、選択した順位が最も良い複数の経路のなかで交通事故被害値順位が最も高い経路を案内経路に決定するようにすれば、安全性を重視した経路を案内経路として決定することができる。
【0015】
請求項8の経路探索装置は、前記経路探索手段は、前記選択した順位が最も良い経路が複数ある場合には、その複数の経路のうち前記走行コスト順位が最も高い経路を案内経路として決定することを特徴とする。このように、選択した順位が最も良い複数の経路のなかで走行コスト順位が最も高い経路を案内経路に決定するようにすれば、走行しやすさを重視した経路を案内経路として決定することができる。
【0016】
請求項9の経路探索装置は、目的地を設定する設定手段と、過去に起こった交通事故について、その交通事故の位置情報、その交通事故が起こった位置における所定期間あたりの交通量及び被害の大きさを示す交通事故被害値を記憶した記憶装置と、前記交通事故被害値を各交通事故被害値に対応する前記交通量で除算した交通事故コストについて、前記設定手段が設定した目的地に至る複数の経路の総和を前記記憶装置の記載内容に基づいて算出しつつ、その総和が小さくなる経路を探索する経路探索手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
交通事故コストは交通事故被害値を所定期間あたりの交通量で除算したものであるので、交通量が多くなるほど交通事故コストは小さくなる。また、交通事故被害値が小さくなるほど、交通事故コストは小さくなる。そして、経路探索手段は、設定手段が設定した目的地に至る経路全体の交通事故コストの総和を算出しつつ、その総和が小さくなる経路を探索する。したがって、被害の大きな交通事故が起こりにくい経路が探索されやすく、かつ道幅が狭いために走行しにくい道路など交通量が少ない道路を含む経路は探索されにくくなる。
【0018】
経路探索手段は、交通事故コストの総和が小さくなる経路として、たとえば、請求項10のような交通事故コストの総和が最小の経路、または、請求項11のような交通事故コストの総和が所定値以下の経路を探索することができる。
【0019】
また、交通事故コストの総和が小さくなる経路を複数探索してもよい。その場合には、請求項12のように、交通事故コストの総和が小さいほうから所定個数の経路を仮案内経路として探索し、当該仮案内経路の中から一つを案内経路として決定することもできる。
【0020】
請求項13乃至請求項16は、交通事故被害値に代えて交通事故コストを用いている点が請求項5乃至8と異なるのみである。従って、請求項13乃至請求項16は請求項5乃至請求項8と同様の効果が得られる。
【0021】
請求項17の経路探索装置は、前記交通事故被害値は、交通事故の加害者の免許から減点された点数に基づいて定められることを特徴とする。これにより、客観的に交通事故被害値を定めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る経路探索装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように車載ナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、音声出力装置9、外部メモリ10、表示装置11、リモコンセンサ12、リモートコントロール端末(以下リモコンと称する)13、及びこれらと接続された制御装置8を備えている。
【0023】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2〜5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお精度によっては上述した内の一部で構成してもよく、更にステアリングの回転センサを用いてもよい。
【0024】
地図データ入力器6は、記憶媒体(不図示)が装着され、該記憶媒体に格納されている地図データ及び目印データを含む各種データを入力するための装置である。地図データには、道路を示すリンクデータとノードデータから構成される道路データが含まれる。このリンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードにて分割したときのノード間を結ぶものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び制限速度等の各データから構成される。
【0025】
さらに、各リンクには、過去に発生した交通事故の件数と各交通事故の被害の大きさを示す交通事故被害値とから定められる交通事故被害値の平均値(以下、単に交通事故被害値という)及び所定期間中の交通量が付されている。つまり、過去に起こった交通事故の位置情報は、リンクを単位として記憶されている。なお、この交通事故被害値は、交通事故の加害者の免許から減点された点数に基づいて定められる。また、各リンクには、上記交通事故被害値を所定期間中の交通量で除算することにより決定できる交通事故コストも付与されている。
【0026】
一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類等の各データから構成される。
【0027】
また、上記記憶媒体には、各種施設の種類、名称、住所のデータなども記憶されており、それらのデータは経路探索の際の目的地設定などに用いられる。なお、上記記憶媒体は、記憶装置に相当し、CD−ROMまたはDVD−ROM、メモリカード、HDD等が用いられる。
【0028】
操作スイッチ群7は、例えば表示装置11と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、スイッチ操作により制御装置8へ各種機能(例えば、地図縮尺変更、メニュー表示選択、目的地設定、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、表示画面変更、音量調整等)の操作指示を行う。
【0029】
また、操作スイッチ群7は、出発地および目的地を設定するためのスイッチを含んでいる。そのスイッチを操作することによって、ユーザーは、予め登録しておいた地点や、施設名、電話番号、住所などから、出発地および目的地を設定することができる。この操作スイッチ群7が設定手段に相当する。
【0030】
リモコン13には複数の操作スイッチ(不図示)が設けられ、スイッチ操作によりリモコンセンサ12を介して各種指令信号を制御装置8に入力することにより、操作スイッチ群7と同じ機能を制御装置8に対して実行させることが可能である。従って、リモコン13も設定手段として機能する。
【0031】
音声出力装置9は、スピーカ等から構成され、制御装置8の指示に基づいて、経路案内時の案内音声などを出力する。
【0032】
外部メモリ10は、HDD等の書き込み可能な大容量記憶装置である。外部メモリ10には大量のデータや電源をOFFしても消去してはいけないデータを記憶したり、頻繁に使用するデータを地図データ入力器6からコピーして利用する等の用途がある。なお、外部メモリ10は、比較的記憶容量の小さいリムーバブルなメモリであってもよい。
【0033】
表示装置11は、車両の走行を案内するための地図や目的地選択画面等を表示するものであって、フルカラー表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて構成することができる。
【0034】
制御装置8は通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも不図示)が備えられている。制御装置8は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ10、リモコンセンサ12から入力された各種情報に基づき、ナビゲーション機能としての処理(例えば、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内開始処理、現在位置修正処理、表示画面変更処理、音量調整処理等)を実行する。
【0035】
例えば、制御装置8は、リモコン13を介してリモコンセンサ12から、あるいは操作スイッチ群7により、出発地および目的地が設定されると、その出発地から目的地までの経路を地図データに含まれている道路データを用いて自動的に探索して案内経路を設定し表示する。このような自動的に経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。この際、制御装置8は、出発地から目的地までの経路として、(1)安全性を重視しつつ案内経路としての最適性を考慮した経路(2)安全性を重視した経路(3)案内経路としての最適性を重視しつつ安全性を考慮した経路(4)案内経路としての最適性を重視した経路、のいずれか一つを探索する。なお、本明細書でいう案内経路としての最適性とは、案内経路の安全性以外の最適性(例えば、距離優先、有料道路優先、時間優先など)を意味する。図2はこのときの制御装置8が行う処理を示したフローチャートである。なお、このフローチャートは、リモコン13を介してリモコンセンサ12から、あるいは操作スイッチ群7により、出発地および目的地が設定されたときに実行される。また、制御装置8は経路探索手段としての機能を有する。
【0036】
先ずステップS1では、経路の安全性と案内経路としての最適性のどちらを重視するかを判定する。これは、経路の安全性を重視するか案内経路としての最適性を重視するかをユーザーに選択させるスイッチを設け、そのスイッチからの信号に基づいて判定する。経路の安全性を重視すると判定した場合は処理をステップS2に進め、案内経路としての最適性を重視すると判定した場合は処理をステップS8に進める。
【0037】
ステップS2では、案内経路としての最適性を考慮するか否かを判定する。これは、案内経路としての最適性を考慮するか否かをユーザーに選択させるスイッチを設け、そのスイッチからの信号に基づいて判定する。案内経路としての最適性を考慮すると判定した場合は肯定判定して処理をステップS3に進め、考慮しないと判定した場合は否定判定して処理をステップS7に進める。
【0038】
なお、ステップS3以降の処理は上記(1)安全性を重視しつつ案内経路としての最適性を考慮した経路を探索する処理で、ステップS7の処理は上記(2)安全性を重視した経路を探索する処理である。
【0039】
ステップS3では、目的地に至る経路のうち、交通事故コストの総和が小さいベスト5の経路をダイクストラ法などの経路探索手法を用いて探索し、探索した経路を仮案内経路とする。なお、前述のように、交通事故コストは、各リンクに付されている交通事故被害値を所定期間中の交通量で除算した値であるので、交通事故被害値が小さければ交通事故コストも小さくなり、また交通量が多ければ交通事故コストは小さくなる。
【0040】
続くステップS4では、ステップS3にて探索した5つの仮案内経路に対して、それぞれ、走行コストの総和を算出する。ここで、走行コストは所定の条件によって定められる走行しやすさを示す指標であり、走行しやすい道路であるほど走行コストが小さい。この所定の条件には、「距離が短い経路を探索する」「短時間で目的地まで到達できる経路を探索する」「一般道路を優先した経路を探索する」などがあり、どの条件で探索するのかは予めユーザーによって定められる。そして、この所定の条件に従って各リンク及びノードに付されている道路種、道路幅、車線数、信号機の有無などによって走行コストが定められる。
【0041】
続くステップS5では、走行コストの総和が小さい経路ほど順位が良くなるように、5つの仮案内経路の走行コストの総和に対して順位付けを行って、走行コスト順位を決定する。
【0042】
続くステップS6では、先ず、交通事故コストの総和の大きさに基づいて、5つの仮案内経路それぞれに対して、交通事故コストの総和が小さいほど上位となるように交通事故コスト順位を決定する。そして、各仮案内経路に対して、その交通事故コスト順位とステップS5で決定した走行コスト順位のうちで悪い側の順位を選択する。それから、5つの仮案内経路のうちで、選択した順位が最も良い順位の経路を案内経路として決定する。
【0043】
図3は、本ステップS6の処理を説明するための図である。同図に示すように、交通事故コストの小さいベスト5の経路A〜経路Eそれぞれに対して、走行コスト順位が決定されている。また、各経路に対して、交通事故コスト順位と走行コスト順位の悪いほうの順位(最悪値)も示してある。例えば、経路Cについては、交通事故コスト順位は3位で、走行コスト順位は5位なので、最悪値として5位が示されている。最悪値が最も良い経路を案内経路として決定するので、同図でいうと経路Bを案内経路として決定することになる。
【0044】
なお、図4に示す経路Bと経路Cのように最悪値が最も良い経路が複数ある場合がある。この場合は、ユーザーが経路の安全性と最適性のどちらを重視しているかに基づいて最終的な案内経路を決定する。ステップS6を実行するのは、ステップS1においてユーザーが経路の安全性を重視すると判断した場合である。従って、ステップS6においては、最悪値が最も良い経路が複数ある場合には、交通事故コスト順位が良い経路を案内経路として選択する。したがって、経路Bが案内経路として選択されることになる。
【0045】
図2の説明に戻って、ステップS2において案内経路としての最適性を考慮しない場合は、ステップS7において、目的地に至る経路のうち交通事故コストの総和が最小の経路を探索する。
【0046】
ステップS8では、案内経路の安全性を考慮するか否かを判定する。これは、経路の安全性を考慮するか否かをユーザーに選択させるスイッチを設け、そのスイッチからの信号に基づいて判定する。案内経路として経路の安全性を考慮すると判定した場合は肯定判定し、処理をステップS9に進める。これに対し、案内経路として経路の安全性を考慮しないと判定した場合は否定判定し、処理をステップS13に進める。
【0047】
なお、ステップS9以降の処理は上記(3)案内経路としての最適性を重視しつつ安全性を考慮した経路を探索する処理で、ステップS13の処理は上記(4)案内経路としての最適性を重視した経路を探索する処理である。
【0048】
ステップS9では、目的地に至る経路のうち、走行コストの総和が小さいベスト5の経路をダイクストラ法などの経路探索手法を用いて探索し、探索した経路を仮案内経路とする。なお、制御装置8は、所定の条件に基づいて各リンク及びノードの走行コストを算出する。例えば、所定の条件が「一般道路を優先した経路を探索する」である場合、有料道路に相当するリンク及びノードの走行コストを大きくする。
【0049】
続くステップS10では、ステップS9にて探索した5つの仮案内経路に対して、それぞれ、交通事故コストの総和を算出する。続くステップS11では、交通事故コストの総和が小さい経路ほど順位が良くなるように、5つの仮案内経路の交通事故コストの総和に対して順位付けを行って、交通事故コスト順を決定する。
【0050】
続くステップS12では、先ず、走行コストの総和に大きさに基づいて、5つの仮案内経路それぞれに対して、走行コストの総和が小さいほど上位となるように走行コスト順位を決定する。そして、各仮案内経路に対して、その走行コスト順位とをステップS11で決定した交通事故コスト順位のうち悪い側の順位を選択する。それから、5つの仮案内経路のうちで、選択した順位が最も良い順位の経路を案内経路として決定する。なお、最悪値が最も良い経路が複数ある場合、ステップS1においてユーザーが経路の最適性を重視したいことが判断できるので、走行コストの総和の順位が良い経路を案内経路として決定する。
【0051】
ステップS8において案内経路の安全性を考慮しないと判定した場合は、ステップS13において、目的地に至る経路のうち走行コストの総和が最小の経路を探索する。
【0052】
以上、本実施形態の車載ナビゲーション装置100は、(1)安全性を重視しつつ案内経路としての最適性を考慮した経路を探索することができる。安全性を重視するために、過去に起こった交通事故の被害の大きさを数値にした交通事故被害値からその交通事故が起こった位置の交通量を除算した交通事故コストを導入している。このような経路を探索するときには、目的地に至る経路のうち、交通事故コストが小さいベスト5の仮案内経路を探索する。そして、その5つの仮案内経路それぞれに対して走行コストの総和を算出し、各仮案内経路に対して走行コスト順位と交通事故コスト順位を決定する。それから、各案内経路に対して、走行コスト順位と交通事故コスト順位のうちの悪いほうの順位を選択し、各選択した順位の中で最も順位の良い経路を案内経路に決定する。したがって、被害の大きな交通事故が起こりにくく、かつ、「短時間で目的地まで行くことができる」「最短距離で目的地まで行くことができる」など案内経路としての最適性もある程度具備した案内経路を探索することができる。
【0053】
また、車載ナビゲーション装置100は、(2)安全性の観点のみから経路を探索することもできる。
【0054】
さらに、車載ナビゲーション装置100は、(3)案内経路としての最適性を重視しつつ安全性を考慮した経路も探索することができる。すなわち、案内経路として最適なベスト5の経路のいずれかの経路であって、被害の大きな交通事故が起こりにくく、かつ主要道路など交通量が多い経路を探索することができる。
【0055】
また、車載ナビゲーション装置100は、(4)案内経路としての最適性の観点のみから経路を探索することもできる。
【0056】
さらに、探索する経路を上記(1)〜(4)のいずれとするかをユーザーに選択させることができる。したがって、探索した経路はユーザーの嗜好に合った経路といえる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0058】
例えば、上記実施形態では、安全な経路を探索する際に、交通事故被害値から所定期間中の交通量を除算した交通事故コストを用いていた。しかし、交通事故被害値をそのまま用いて経路を探索してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、過去に起こった交通事故の位置情報をリンク単位で記憶していたが、交通事故が起こった地点(座標)を位置情報として記憶してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、過去に起こった交通事故の位置情報、交通事故被害値、交通量、交通事故コストを予め車載ナビゲーション装置100に記憶していた。しかし、それらの情報を車両外部の所定の施設に設置されたサーバ(記憶装置)に記憶しておき、そのサーバから無線通信によりそれらの情報を逐次取得してよい。そうすれば、日常的に起こっている交通事故についての位置情報、交通事故被害値を記憶装置の記憶内容に容易に反映させることができ、また、交通量が変化してもその変化に対応して記憶内容を更新することが容易となる。その結果、被害の大きい交通事故が発生しにくい経路をより適切に探索することができる。
【0061】
また上記実施形態では、ステップS7において、交通事故コストの総和が最小の経路を探索していたが、交通事故コストの総和が所定値以下の経路を探索するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の車載ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御装置8が経路探索を行うときの処理を示したフローチャートである。
【図3】安全性を重視しつつ案内経路としての最適性を考慮した経路を探索する方法を説明するための図である。
【図4】最悪値が最も良い経路が複数ある場合における案内経路の選択方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・位置検出器、6・・・地図データ入力器、7・・・操作スイッチ群(設定手段)、8・・・制御装置(経路探索手段)、9・・・音声出力装置、10・・・外部メモリ、11・・・表示装置、12・・・リモコンセンサ、13・・・リモコン、100・・・車載ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地を設定する設定手段と、
過去に起こった交通事故について、その交通事故の位置情報及び被害の大きさを示す交通事故被害値を記憶した記憶装置と、
前記設定手段が設定した目的地に至る経路における前記交通事故被害値の総和を前記記憶装置の記載内容に基づいて算出しつつ、その総和が小さくなる経路を探索する経路探索手段とを備えることを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
前記経路探索手段は、前記交通事故被害値の総和が最小の経路を探索することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記経路探索手段は、前記交通事故被害値の総和が所定値以下の経路を探索することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記経路探索手段は、前記交通事故被害値の総和が小さいほうから所定個数の経路を仮案内経路として探索し、当該仮案内経路の中から一つを案内経路として決定することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項5】
前記記憶装置には、道路の所定区間ごとに所定の基準で定められる走行しにくさを示す走行コストも記憶されており、
前記経路探索手段は、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コストの総和を算出して、前記仮案内経路の中での前記走行コストの総和の大きさの順位を示す走行コスト順位と前記交通事故被害値の総和の大きさの順位を示す交通事故被害値順位を決定し、その後、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コスト順位と前記交通事故被害値順位の悪いほうの順位を選択し、前記仮案内経路のうち、前記選択した順位が最も良い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項4に記載の経路探索装置。
【請求項6】
前記記憶装置には、道路の所定区間ごとに所定の基準で定められる走行しにくさを示す走行コストも記憶されており、
前記経路探索手段は、前記設定手段が設定した目的地に至る経路全体の前記走行コストの総和を前記記憶装置の記載内容に基づいて算出しつつ、その総和が小さいほうから所定個数の経路を仮案内経路として探索し、当該仮案内経路それぞれに対して、前記交通事故被害値の総和を算出して、前記仮案内経路の中での前記走行コストの総和の大きさの順位を示す走行コスト順位と前記交通事故被害値の総和の大きさの順位を示す交通事故被害値順位を決定し、その後、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コスト順位と前記交通事故被害値順位の悪いほうの順位を選択し、前記仮案内経路のうち、前記選択した順位が最も良い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項7】
前記経路探索手段は、前記選択した順位が最も良い経路が複数ある場合には、その複数の経路のうち前記交通事故被害値順位が最も高い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項5に記載の経路探索装置。
【請求項8】
前記経路探索手段は、前記選択した順位が最も良い経路が複数ある場合には、その複数の経路のうち前記走行コスト順位が最も高い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項6に記載の経路探索装置。
【請求項9】
目的地を設定する設定手段と、
過去に起こった交通事故について、その交通事故の位置情報、その交通事故が起こった位置における所定期間あたりの交通量及び被害の大きさを示す交通事故被害値を記憶した記憶装置と、
前記交通事故被害値を各交通事故被害値に対応する前記交通量で除算した交通事故コストについて、前記設定手段が設定した目的地に至る複数の経路の総和を前記記憶装置の記載内容に基づいて算出しつつ、その総和が小さくなる経路を探索する経路探索手段とを備えることを特徴とする経路探索装置。
【請求項10】
前記経路探索手段は、前記交通事故コストの総和が最小の経路を探索することを特徴とする請求項9に記載の経路探索装置。
【請求項11】
前記経路探索手段は、前記交通事故コストの総和が所定値以下の経路を探索することを特徴とする請求項9に記載の経路探索装置。
【請求項12】
前記経路探索手段は、前記交通事故コストの総和が小さいほうから所定個数の経路を仮案内経路として探索し、当該仮案内経路の中から一つを案内経路として決定することを特徴とする請求項9に記載の経路探索装置。
【請求項13】
前記記憶装置には、道路の所定区間ごとに所定の基準で定められる走行しにくさを示す走行コストも記憶されており、
前記経路探索手段は、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コストの総和を算出して、前記仮案内経路の中での前記走行コストの総和の大きさの順位を示す走行コスト順位と前記交通事故コストの総和の大きさの順位を示す交通事故コスト順位を決定し、その後、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コスト順位と前記交通事故コスト順位の悪いほうの順位を選択し、前記仮案内経路のうち、前記選択した順位が最も良い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項12に記載の経路探索装置。
【請求項14】
前記記憶装置には、道路の所定区間ごとに所定の基準で定められる走行しにくさを示す走行コストも記憶されており、
前記経路探索手段は、前記設定手段が設定した目的地に至る経路全体の前記走行コストの総和を前記記憶装置の記載内容に基づいて算出しつつ、その総和が小さいほうから所定個数の経路を仮案内経路として探索し、当該仮案内経路それぞれに対して、前記交通事故コストの総和を算出して、前記仮案内経路の中での前記走行コストの総和の大きさの順位を示す走行コスト順位と前記交通事故コストの総和の大きさの順位を示す交通事故コスト順位を決定し、その後、前記仮案内経路それぞれに対して、前記走行コスト順位と前記交通事故コスト順位の悪いほうの順位を選択し、前記仮案内経路のうち、前記選択した順位が最も良い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項9に記載の経路探索装置。
【請求項15】
前記経路探索手段は、前記選択した順位が最も良い経路が複数ある場合には、その複数の経路のうち前記交通事故コスト順位が最も高い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項13に記載の経路探索装置
【請求項16】
前記経路探索手段は、前記選択した順位が最も良い経路が複数ある場合には、その複数の経路のうち前記走行コスト順位が最も高い経路を案内経路として決定することを特徴とする請求項14に記載の経路探索装置。
【請求項17】
前記交通事故被害値は、交通事故の加害者の免許から減点された点数に基づいて定められることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の経路探索装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−122153(P2008−122153A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304383(P2006−304383)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】