説明

経路検索システム

【課題】できるだけ不審者を回避しながら目的地にたどりけるようにして、異常事態に出会うことを事前に抑制すること。
【解決手段】管理サーバ31は、登録IDコードを取得したか否かによって地域に存在する人が登録者か否かを判定する。非登録者である場合には、その者が所定条件を満たすと不審者と判定する。そして、当該不審者に関する情報を監視カメラ42等の検知機器類44から取得して管理する。ホームサーバ51は地図情報をもとに、設定された出発地から目的地に至るルートを抽出し、その中から前記不審者の情報に基づいて不審者を回避するルートを検索する。そして、その検索によって選定したルートを、推奨ルートとして宅内モニタ55に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定地域内に存在する出発地から同じく前記特定地域内に存在する目的地に至る経路を検索する経路検索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、不審者に対する防犯対策として、個別の住宅単位で不審者の警戒を行う警備システムが一般的に知られている。例えば、住宅や敷地等に不審者が侵入するといった異常事態が生じた場合には、その不審者に警告等を発して威嚇したり、住人や警備会社等に通報したりするようになっている。
【0003】
しかしながら、このような個々の住宅単位で設置される警備システムには、設置費用や維持費用の負担が大きいとか、不審者が侵入した場合でもその情報を近隣で共有できないといった不都合があった。
【0004】
そこで、住宅単位ではなく地域ぐるみで不審者に対する警戒を行う防犯システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。その防犯システムでは、特定地域に侵入する不審車両を監視し、その不審車両の侵入を特定地域の住人に通報するようになっている。これにより、設置費用や維持費用の負担が分散されて個々の負担が小さくなるし、地域住人が不審車両情報を共有してそれに対する注意を払うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−165616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、上記従来技術によれば、特定地域に存在する住宅やその住宅内に存在する地域住人との関係では、情報を得た住人が、自身で又は自動で玄関ドアや窓装置を施錠したり、シャッタ装置の閉状態としたりすることにより、不審者に対する防犯効果を高め、異常事態を事前に回避することが可能となる。
【0007】
ところが、不審車両が特定地域内のどこに存在しているかという点までは把握できないため、地域住人が外出しようとする場合にはその途中で不審車両に出会う可能性が高まり、ひったくりや連れ去り等の異常事態に出会うことを事前に回避できない。このため、外出しようとする地域住人との関係では、上記従来技術であっても十分な防犯対策が施されているとはいえないという問題がある。
【0008】
このような問題は、特定地域に居住する住人だけでなく、その特定地域に存在する学校、商店、会社等の関係者であっても同様にあてはまる。
【0009】
そこで、本発明は、できるだけ不審者を回避しながら目的地にたどりけるようにして、異常事態に出会うことを事前に抑制できる経路検索システムの提供を主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0011】
すなわち、第1の発明では、特定地域内に存在する出発地から同じく前記特定地域内に存在する目的地に至る経路を検索する経路検索システムであって、予め登録されたID情報の取得結果に基づいて、前記特定地域での不審者の存在状況を把握する不審者把握手段と、前記特定地域の地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、前記特定地域内に存在する出発地及び目的地を設定する設定手段と、前記設定された出発地から目的地までの経路として、前記地図情報と前記不審者の存在状況とに基づいてその不審者を回避する経路を検索する経路検索手段と、を備えている。
【0012】
この第1の発明によれば、経路検索手段により検索された経路を推奨経路としてユーザ(例えば、特定地域の住人等)に提示すれば、ユーザは不審者を回避しながら目的地にたどり着くことができる。これにより、異常事態に出会うことを事前に抑制できる。
【0013】
第2の発明では、前記不審者把握手段は、前記特定地域に存在する不審者の少なくとも存在位置及び行動態様を前記不審者の存在状況として把握するものであり、前記経路検索手段は、目的地までの複数の経路を抽出するとともに、それら抽出経路上での前記不審者の存否に基づいて前記経路を検索し、全ての抽出経路上に不審者が存在する場合には各不審者の行動態様に基づいて前記経路を検索するようにした。
【0014】
この第2の発明によれば、抽出した複数の経路の中から、抽出経路上での不審者の存否や、抽出経路上に存在する不審者の行動態様に基づいて、不審者を回避する経路を検索するため、不審者を回避する上で最適な経路を検索することができる。また、このように検索時の考慮要素に段階を付け、不審者が存在しない点で不審者を確実に回避できる経路を優先的に検索することで、異常事態の事前抑制効果を高めることができる。なお、不審者の行動態様だけでなく、存在する不審者の人数も考慮して検索してもよい。
【0015】
第3の発明では、前記経路検索手段は、前記設定された出発地から目的地までの距離が制限範囲内となる経路を抽出し、前記不審者の存在状況としての不審者存否に基づいて前記経路を検索するようにした。
【0016】
不審者の存在状況としての不審者存否に基づいて経路を検索する場合、特定地域における不審者の状況次第では、検索結果として選定した経路の距離が最短経路に比べて異常に長くなりすぎることもあり得る。そこで、この第3の発明によれば、目的地までの距離が制限範囲内となる経路の中で不審者の存否に基づいて不審者を回避する経路が検索されるため、現実的でない距離の経路が選定されることを防止できる。
【0017】
第4の発明では、前記経路検索手段は経路検索を要求する者の属性を把握し、その属性が特定の属性有する場合には、前記不審者の存否に基づいてのみ前記経路を検索するようにした。
【0018】
この第4の発明によれば、特定の属性(一般的みた場合の弱者であり、例えば女性や小学生以下の子供等)を有する者が経路検索を要求した場合、不審者の存在しない経路だけが検索されることになり、弱者に対する異常事態の事前抑制効果を高めることができる。この場合、前述したように抽出ルートに制限を設けると、不審者の存在状況次第では、ルートの検索結果が得られなくなるおそれもあるため、前記制限範囲を拡大することが好ましい。
【0019】
第5の発明では、前記特定地域内に存在する建物に設置され、前記特定地域の地図情報を表示画面に表示する表示手段と、前記検索により選定した経路を推奨経路として前記地図情報上に表示するように前記表示手段を制御する表示制御手段と、を備え、前記設定手段により、前記表示手段が設置された建物が出発地として設定されているとした。
【0020】
この第5の発明によれば、出発地として設定されている建物に設置の表示手段に、選定した経路が推奨経路として地図情報上に表示されるため、建物に存在して目的地への経路検索を要求したユーザは、表示手段の画面を見ることで推奨経路を一目で把握できる。これにより、利便性を高めることができる。
【0021】
第6の発明では、前記表示制御手段は、前記表示画面に表示された地図情報上での、前記不審者の存在位置に該当する箇所に、当該不審者の存在状況に応じた表示形式で不審者情報を表示するように、前記表示手段を制御するものとした。
【0022】
この第6の発明によれば、推奨経路が表示されるだけでなく、特定地域に存在する不審者の存在位置に該当する箇所に不審者情報(例えば、不審者図柄)も併せて表示されるため、不審者の存在やその存在位置を予め確認した上で外出することができる。これにより、外出時の注意喚起を行える。
【0023】
この場合、前記表示制御手段は、目的地に至る最短経路も前記推奨経路と併せて表示するように、前記表示手段を制御してもよい。これにより、経路検索を要求した者に、推奨経路と最短経路とのいずれを選択するかという選択権を与えることができる。第6の発明のように、不審者情報が表示画面に表示されていれば、この選択を行う際の重要な判断情報を与えることができる。
【0024】
第7の発明では、予め登録されたID情報の取得結果に基づいて、前記特定地域でのID登録者の存在位置を把握する登録者把握手段を備え、前記不審者把握手段は変化する前記不審者の存在状況を随時把握するとともに、前記検索により選定した経路上での前記不審者の存在状況が変った場合、前記設定手段は前記ID登録者の存在位置を出発地として設定し直し、前記経路検索手段はその設定された出発地をもとに、改めて前記不審者を回避する経路を検索するようにした。
【0025】
この第7の発明により、不審者の存在状況は随時更新され、それに基づいて不審者を回避する経路が検索されるため、その検索により選定された経路の信頼性を高めることができる。また、いったん経路を選定した後でも、不審者の状況に変動があれば、ユーザであるID登録者の現在の存在位置を出発地として改めて経路検索が行われる。その新たな経路情報をID登録者が所持する携帯電話機等の携帯機に送信すれば、携帯機の表示モニタに最新の経路を表示させることが可能となる。これにより、不審者の存在状況の変化にも対処することができ、この点でも異常事態に出会うことの事前回避への信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】特定地域のモデルであるX地域について、その全体の概略図。
【図2】経路検索システムの電気的構成を示すブロック図。
【図3】X地域の地図情報が表示された宅内モニタの表示画面を示す図。
【図4】ルート検索表示処理の全体像を示すフローチャート。
【図5】特定検索処理を示すフローチャート。
【図6】第1ルート選定表示処理を示すフローチャート。
【図7】第1ルート選定表示処理でのルート抽出を概念的に示す図。
【図8】第2ルート選定表示処理を示すフローチャート。
【図9】第2ルート選定表示処理によって選定したルートの表示例を示す図。
【図10】種類検索処理を示すフローチャート。
【図11】種類検索処理によって選定したルートの表示例を示す図。
【図12】送信後処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、経路検索システムの一実施の形態について図面を参照しながら説明する。この経路検索システムは、目的地に至る複数の経路(ルート)の中から、不審者をできるだけ回避できるルートを検索し、それをルート検索要求者に告知するシステムである。
【0028】
はじめに、この経路検索システムは、検索するルートの出発地と目的地とがいずれも特定地域内に存在することを想定している。この特定地域とは、大きくは小学校の通学区域(学区)程度、小さくは複数の町字名にまたがる程度の広さを有する地域であり、多数の住宅の他、鉄道駅、商店街、学校(小中高等学校、大学)、通学路、公園、役所、郵便局、病院、スーパー等の公共又は民間の各種施設が複数存在している。なお、前記住宅の存在態様としては、戸別住宅の他、その戸別住宅が複数(例えば、数戸〜100戸程度)まとまって建てられている住宅分譲地、団地やマンション等の集合住宅が含まれていてもよい。
【0029】
図1は、このような特定地域の一つのモデルであるX地域について、その全体の概略を示す図である。図示のように、X地域は鉄道駅前に広がる地域であり、道路(公道)11が設けられている。そして、鉄道駅21、住宅分譲地22、マンション23、商店街24、小学校25、銀行26、コンビニエンスストア27,28、駐車場29等の各種施設が存在している。住宅分譲地22としては、多数(例えば、80戸〜100戸程度)の戸別住宅が建てられた比較的規模の大きな分譲地を想定しており、この住宅分譲地22内には私道12(図では点線で図示)が設けられている。その他、図示は省略されているが、住宅分譲地外にも戸別住宅が存在し、また、賃貸ビル等も存在している。
【0030】
次に、このX地域を対象とする経路検索システムの構成について説明する。図2はそのシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【0031】
経路検索システムにおいては、X地域に居住する地域住人の他、X地域に関わりのある者によってID端末T1〜Tnがそれぞれ所持されるようになっている。X地域との関わりとは、例えば、X地域に存在する会社、事業所、商店、小学校25等に勤務すること、新聞、郵便、宅配便等の配達に際してX地域を担当すること等が考えられる。このような関わりを有する者は、日常的に必要があってX地域に立ち入る者であり、X地域での滞在が予め許容される。
【0032】
ID端末Tは常時携帯することが可能な小型機器であり、例えば、玄関ドアの開閉に使用される電子キーや、携帯電話機、通信機能を有するICカード等がID端末Tとして用いられる。この場合、各人ごとに形式・形態の異なるID端末Tを使用してもよい。なお、携帯電話機はID端末Tとして利用できるが、地域住人や地域に関わりのある者の全てが携帯電話機を所有しているわけではないので、図2ではID端末Tと携帯電話機56とが一応区別して記載されている。携帯電話機56を所持する者については、それをID端末Tとしてもよい。
【0033】
各ID端末T1〜TnにはメモリM1〜Mnが設けられており、各メモリM1〜Mnにはそれぞれの所有者ごとに異なる固有のIDコードが予め記憶されている。IDコードは、少なくとも本システムにおいて、コード付与されたその人、個人を識別することが可能な情報となっている。そして、ID端末Tは無線通信機能を有しており、外部との間でIDコードの無線通信が行われる。
【0034】
次に、経路検索システムは、管理サーバ31を備えている。管理サーバ31はCPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを有しており、公民館(集会所)等のX地域における適宜の場所や、警備会社等の外部機関に設置されている。この管理サーバ31は、X地域に存在する人の各種情報を人感センサ41や監視カメラ42等の検知機器類44−1〜44−nを通じて取得し、それら各種情報を集中的に管理する。
【0035】
管理サーバ31はメモリとして、IDコード記憶部32、ID非登録者情報記憶部33、不審者情報記憶部34を有している。そのうち、IDコード記憶部32には、前記ID端末T1〜TnのIDコードが認証IDコードとして予め記憶されている。この認証IDコードを用いて、管理サーバ31は受信したIDコードの認証を行う。ID非登録者情報記憶部33には、IDコードの認証がNGとされたID非登録者の関係情報が記憶されている。その関係情報とは、ID非登録者の識別やその存在位置、行動態様に関する情報である。そのうちの識別情報としては、監視カメラ42によって撮影されたID非登録者の画像を解析して得られる人物情報(例えば、顔情報、体格情報等)、ID非登録者が所持する携帯電話等から得られたIDコード等がある。不審者情報記憶部34には、前記ID非登録者のうちで所定条件(例えば、所定時間滞在など)を満たした者が不審者として認定された場合に、その不審者の関係情報が記憶されている。その関係情報とは、不審者と認定されたID非登録者の前記関係情報を不審者関係情報として書き替えたものである。なお、ID非登録者を不審者と認定する所定条件は、管理サーバ31に接続された操作部35を用いて適宜設定される。
【0036】
この管理サーバ31には、人感センサ41、監視カメラ42及びID通信装置43がそれぞれ接続されている。人感センサ41はその検知範囲で人を検知した場合に、人検知信号を管理サーバ31に対して出力する。この人検知信号を取得することにより、管理サーバ31はセンサ設置場所における人の存否を把握する。監視カメラ42はカメラ周辺を常時撮影し、その撮影画像情報を解析することで画像情報に含まれる人物情報を取得する。そして、この取得した人物情報を管理サーバ31に対して逐次出力する。ID通信装置43はその設置箇所周辺を通信範囲としてID端末(非住人所持のものを含む)との間で無線通信が可能であり、リクエスト信号を送信して応答したID端末からIDコードを取得する。このIDコード取得により、管理サーバ31はID認証を実施したり、ID端末T1〜Tnを所持するID登録者の存在を把握したりする。
【0037】
なお、監視カメラ42は管理サーバ31に画像情報を逐次出力するものとし、管理サーバ31がその画像情報から人物情報を取得するようにしてもよい。
【0038】
これら人感センサ41、監視カメラ42及びID通信装置43は、X地域の道路11,12全域が検知範囲、画像取得範囲及びID通信範囲としてカバーされるように、そのX地域の道路11,12に多数設置されている。このため、図1に図示した道路11,12以外の省略された道路にも設置されている。その設置態様としては、例えば、人感センサ41、監視カメラ42及びID通信装置43を一組の検知機器類44とし、それが道路11,12に沿って数〜10m程度の間隔で、電柱や新設の設置ポール等を利用して設置されている。各人感センサ41、各監視カメラ42及び各ID通信装置43にはそれぞれ機器アドレスが付与され、その個々の機器アドレスはX地域の地図情報上で当該検知機器類44の設置箇所に該当する位置と対応付けられている。このため、検知機器類44から人検知信号、人物情報及びIDコードを取得すると、管理サーバ31はその機器アドレスによってその出力先がX地域のどの場所にあたるのかを把握できる。つまり、管理サーバ31は人の移動によって随時入力される人検知信号、人物情報及びIDコードの出力先に基づいて、ID登録者、ID非登録者、不審者と認定されたID非登録者それぞれのX地域における存在位置を随時把握する。このため、管理サーバ31は不審者把握手段、及び登録者把握手段に相当する。
【0039】
このように、ID非登録者の存在位置を随時把握することで、管理サーバ31はX地域内でのID非登録者の行動態様(例えば、滞在時間、行動範囲、移動速度等)も随時把握できる。そして、これら存在位置や行動態様の情報がID非登録者の関係情報として、前記ID非登録者情報記憶部33に記憶される。なお、ID非登録者の移動速度は、その者が原付自転車や自動二輪車に乗車しているか否かの判断等に利用できる。
【0040】
また、これら存在位置や行動態様といった関係情報を利用することで、管理サーバ31は、所定範囲内に存在するID非登録者の人数等、X地域のおけるID非登録者の滞在状況についても把握できる。さらに、その把握した滞在状況、前記存在位置や行動態様の情報が不審者の存在状況に関する情報となる。この存在状況に関する情報を利用することで、管理サーバ31は不審者と認定された個々のID非登録者についての警戒レベルを判断できる。例えば、滞在時間が長い(例えば、2時間以上)とか、原付自転車や自動二輪車に乗車している場合、複数の不審者がまとまって存在する場合には、警戒レベルを高くすることが考えられる。そのレベル分けの段階は操作部35を用いて任意に設定することが可能である。
【0041】
次に、管理サーバ31には、X地域に存在する各住宅に対応したホームサーバ51−1〜51−nが接続されており、管理サーバ31は自らが管理する情報を各ホームサーバ51−1〜51−nに対して個別に出力する。各ホームサーバ51−1〜51−nはCPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを備えており、X地域でこの経路検索システムへの参加を登録した住宅に設置されている。各ホームサーバ51−1〜51−nのメモリ52には、X地域の地図情報が記憶されている。このメモリ52が地図情報記憶手段に相当する。
【0042】
各ホームサーバ51−1〜51−nには、操作装置53、通信装置54及び宅内モニタ55がそれぞれ接続されており、ホームサーバ51は通信装置54及び宅内モニタ55の動作制御を行う。また、住人の要求を受け、管理サーバ31から受信した不審者関係情報に基づいて目的地に至るルートの中から不審者をできるだけ回避するルートを検索し、選定したルートを宅内モニタ55に表示させる。このため、ホームサーバ51が経路検索手段、及び表示制御手段に相当する。
【0043】
操作装置53は、ホームサーバ51が設置された住宅の住人により操作されるボタン等を有しており、ホームサーバ51がルート検索表示処理を行う上で必要な入力操作が行われる。その必要な入力操作としては、少なくとも、ルート検索の実行を開始する操作、目的地を入力する操作、ルート検索を要求する住人の属性を入力する操作等がある。なお、この実施形態では、予め出発地として自宅が設定されているため、その出発地の入力操作は不要となっている。
【0044】
操作装置53を用いた目的地の入力操作について、もう少し詳しく説明する。この入力操作には2つの手法が用意され、それぞれに対応する操作ボタン等が設けられている。第1は、特定の目的地をピンポイントで入力する手法である。この場合、住所、電話番号、過去に目的地設定した履歴等から特定の目的地を入力する。後述するように、宅内モニタ55にはその表示画面55aに地図情報が表示されるため、その地図情報を利用しながら入力するようにしてもよい。また、第2は、施設の種類・カテゴリ(例えば、銀行、コンビニエンスストア、スーパー等)から目的地を入力する手法である。この場合、宅内モニタ55の表示画面55aに列挙された目的地の種類の中から特定種類の目的地を選択するようになっている。このようにして入力された場所を目的地として設定する。このため、ホームサーバ51は設定手段にも相当する。
【0045】
通信装置54は、個々の住宅の住人が所持する携帯電話機56との間で無線通信を行うことが可能となっており、ホームサーバ51はこの通信装置54を用いて携帯電話機56にルート検索によって選定したルートの情報を出力する。携帯電話機56は、そのルート情報に基づいて、当該選定されたルートをX地域の地図情報と併せて表示モニタ56aに表示する。
【0046】
表示手段としての宅内モニタ55は、各住宅のリビング壁面等に設置されており、各種画像表示用の表示画面55a、及び報知音や音声を出力可能なスピーカ等を有している。表示画面55aに表示される画像には、少なくとも、経路検索を行なう上で必要な操作(例えば、目的地入力等)を住人に対して要求する画像や、X地域の地図情報等が含まれている。図3には、X地域の地図情報が表示された表示画面55aが示されている。この地図情報は前記操作装置53を用いて任意に拡大又は縮小することができるようになっている。そして、X地域に不審者が存在する場合には、その地図情報上で不審者の存在位置に該当する箇所に不審者マーク(不審者図柄)61(図では61a,61b)が表示される。これにより、宅内モニタ55を見た住人は、X地域における不審者の存在位置を一目で把握できる。
【0047】
また、不審者マーク61の表示形式は、管理サーバ31が存在状況に関する情報を利用して判別した不審者の警戒レベルに応じて、表示形式が異なったものとなっている。表示形式を異ならせる態様としては、表示色、形状、大きさ、動き等を異ならせている。このうち、動きの相違については、点灯方式の相違(点灯、点滅、点滅サイクル等の相違)や、不審者マーク61を振動させるといったことを内容とする。これにより、不審者マーク61で表示された不審者について、その注意度に違いがあることの意味を持たせている。例えば、通常の警戒レベルであれば不審者マーク61aを黄色で点灯表示し、高い警戒レベルであれば注意度を高めて赤色で一回り大きい不審者マーク61bを表示するといった表示形式が考えられる。
【0048】
次に、この経路検索システムにおいて、管理サーバ31及びホームサーバ51がそれぞれ実行する各種の制御処理を説明する。このシステムでは、X地域に存在する不審者の関係情報を管理サーバ31が把握し、その不審者関係情報に基づいてホームサーバ51がルート検索と表示処理を実行する。そこで、まずは前提として、管理サーバ31が実行する不審者判定処理について説明する。
【0049】
特定地域であるX地域において、人感センサ41によって人が検知されると、その人に対してID認証を行う。この認証処理では、ID通信装置43よりリクエスト信号を送信し、その応答としてID登録者のID端末TからIDコードを受信したか否かを判別する。その受信があれば、そのIDコードはIDコード記憶部32に記憶された認証IDコードと一致するため、その人はID登録者であると判断する。
【0050】
これに対し、認証IDコードを受信しない場合は認証NGとし、その人はID非登録者であると判断する。そして、当該ID非登録者の識別情報、存在位置情報、行動態様情報を、ID非登録者関係情報としてID非登録者情報記憶部33に記憶する。そのID非登録者関係情報に基づいて、ID非登録者がX地域に所定時間(例えば、数10分〜1時間程度)滞在しているかを判別し、所定時間滞在している場合にそのID非登録者を不審者であると認定する。このように所定時間滞在を不審者認定の条件としたのは、ID非登録者といっても単なる通行人等も含まれ、その全部を不審者と判定するのは現実的ではないからである。その後、不審者と認定したID非登録者の関係情報を、不審者関係情報として不審者情報記憶部34に書き替える。なお、X地域での滞在時間については、その後もカウントを継続する。
【0051】
ちなみに、管理サーバ31は、不審者情報記憶部34に記憶されている不審者関係情報を定期的に更新する処理を行う。この処理は、検知機器類44から随時得られる情報に基づいて行う。特に、不審者関係情報のうち、存在位置情報については不審者の移動によって変わり、それによって存在状況に関する情報が変わってくる。これらが既存の情報と異なる情報となっていれば更新する。これにより、不審者関係情報は最新の状態となり、その最新の情報をホームサーバ51に随時出力する。
【0052】
このように管理サーバ31から出力された不審者関係情報に基づいて、ホームサーバ51は、宅内モニタ55の表示画面55aにX地域の地図情報を表示するとともに、その地図情報上で不審者の存在位置に該当する箇所に不審者マーク61を表示する。その表示形式は不審者の存在状況に応じて、表示色、形状、大きさ、動きが異なったものとなっている。これにより、住人はX地域における不審者の状況を認識できる。
【0053】
また、同じく不審者関係情報に基づいて、ホームサーバ51は不審者をできるだけ回避できるルートの検索を実行し、その検索結果として選定したルートを推奨ルートとして表示画面55aの地図情報上に表示する。このルート検索表示処理では、出発地としては自宅が予め設定されている。ここでは、ルート検索表示処理の全体像を図4のフローチャートを用いながら概観した後、個別の制御処理について説明する。
【0054】
図4において、(a)には住人の入力操作を示し、(b)にはホームサーバ51の処理を示している。住人が操作装置53を操作し、ホームサーバ51に対するルート検索要求の入力を行うと、ホームサーバ51はこの要求を受けてステップS11にて目的地の設定、及び検索要求する住人の属性を設定するように住人に対して要求する。この場合、宅内モニタ55を用いてその要求を住人に示す。なお、住人の属性とは、性別(男性又は女性)、小学生以下の子供かどうか等といった人の属性を意味する。この設定要求を受け、住人は操作装置53や宅内モニタ55の表示画像を利用しながら、目的地及び属性を入力する。
【0055】
目的地入力に関しては、特定の目的地をピンポイントで入力する第1の入力手法と、施設の種類・カテゴリから目的地を設定する第2の入力手法とがあり、それぞれ実行する制御処理が異なる。このため、ホームサーバ51は住人による目的地入力を受け、ステップS12にてその入力手法を判別する。そして、第1の入力手法で入力された場合にはステップS13に進んで特定検索処理を実行し、不審者を回避するルートの検索及び選定したルートの宅内モニタ55での表示を行う。一方、第2の入力手法で入力された場合にはステップS14に進んで種類検索処理を実行し、同じく不審者を回避するルートの検索及び選定したルートの宅内モニタ55での表示を行う。
【0056】
その後、住人が自己の所持する携帯電話機56に、選定したルート情報の送信要求を入力すると、ステップS15にてホームサーバ51は通信装置54を用いて選定したルート情報を携帯電話機56に送信する。携帯電話機56では、この情報に基づいてその表示モニタ56aにルートを表示する。
【0057】
携帯電話機56に表示されたルートにしたがって住人が目的地に向かっている途中、不審者が移動するなどの状況変化により、不審者関係情報がルート検索時と異なってくる場合がある。この場合、不審者を回避するルートとして、当初のルートとは別のルートが適合する場合も生じる。そこで、ホームサーバ51ではいったん選定したルートを携帯電話機56に送信した後、ステップS16に進んで送信後処理を実行する。この送信後処理では、ルートの再検索を行ない、別ルートが選定された場合には当該別ルートを選定し直してその情報を改めて携帯電話機56に送信する。これにより、目的地に向かっている途中の住人は、不審者を回避する新たなルートをたどることができる。
【0058】
次に、個別の制御処理としてまず前記ステップS13における特定検索処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0059】
図5において、ステップS131では、住人によりピンポイントで入力された目的地の情報を読み込み、その場所を目的地として設定する。続くステップS132では、第1ルート選定表示処理を実行する。この第1ルート選定表示処理は不審者が存在しないルートを選定し、その選定されたルートを宅内モニタ55に表示するための処理である。その後のステップS133では、第1ルート選定表示処理にてルートが選定されたか否かを判別する。ルートが選定された場合、つまり出発地である自宅から目的地までのルートの中に不審者が存在しないルートが存在する場合、そのステップS133の判定を肯定してこの処理を終了する。一方、ルートが選定されなかった場合、つまり目的地に至るすべてのルートに不審者が存在する場合には、その判定を否定してステップS134に進む。このステップS134では、すべてのルートに不審者が存在することを前提として、その中から所定条件(できるだけ不審者を回避するための条件)が満たされるルートを選定し、かつその選定ルートを表示する第2ルート選定表示処理を実行する。その後、本制御処理を終了する。
【0060】
前述した第1ルート選定表示処理(図5のステップS132)を、図6のフローチャートを用いてより詳しく説明する。
【0061】
図6において、ステップS201では、X地域の地図情報に基づき、自宅から設定目的地までのルートの中から、複数(例えば、3つ)のルートを抽出する。この場合、距離が短いルートから順に抽出する。続くステップS202では、抽出した各ルートについて管理サーバ31より取得した不審者関係情報に基づき不審者が存在しないルートがあるか否かを判定する。
【0062】
図7はルート抽出を概念的に示しているが、図7(a)に示されているように、抽出されたルート(図示ではルートA〜Cの3つ)のすべてに不審者(図では符号61)が存在する場合、判定を否定してステップS203に進む。このステップS203において各ルートでの不審者存在情報(例えば、不審者の数、各不審者に対する警戒レベルの程度等)を記録した後、ステップS204に進み、所定距離(例えば、最短ルートの2倍程度)内で別ルートが存在するか否かを判定する。その別ルートが存在する場合には判定を肯定し、再び先のステップS201に進みルートの再抽出を行う。このため、ルートの抽出、抽出ルートでの不審者の存否判断、不審者が存在するルートでの存在情報の記録が、所定距離内のルートが存在する限りで繰り返されることになる。そして、所定距離内での別ルートが存在しなくなれば、つまり、所定距離内のルートのすべてに不審者が存在する場合には、ステップS204の判定を否定して本処理を終了する。
【0063】
一方、図7(b)に示されているように、抽出したルートD〜Fの中に不審者が存在しないルートFが存在する場合には、ステップS202での判定を肯定してステップS205に進み、当該ルートFを選定する。この場合、ステップS201にて複数抽出したルートの中に、不審者が存在しないルートが複数存在する場合には、そのうち最短ルートを選定する。
【0064】
そして、続くステップS206にて、当該選定したルートを推奨ルートとして宅内モニタ55の表示画面55aに表示する。この表示は、X地域の地図情報上で選定したルートに所定の色をつけ、他の道路11,12の表示と区別できるように表示する。その後、本処理を終了する。
【0065】
図3には、この第1ルート選定表示処理によって選定したルートを表示画面55aに表示した表示例が示されている。ここでは、住宅分譲地22に存在する住宅の住人が、鉄道駅21を目的地として入力してルート検索を要求した場合を想定している。図示のように、出発地である自宅22aから鉄道駅21に向かうルートのうち、不審者が存在しないルートαが選定されて推奨ルートとして表示されている。
【0066】
続いて、前述した第2ルート選定表示処理(図5のステップS134)を、図8のフローチャートを用いてより詳しく説明する。すでに述べたように、この処理は目的地までの距離が所定範囲内となっているルートのすべてに不審者が存在するため、前記第1ルート選定表示処理ではルート選定できなかったことが前提となっている。
【0067】
図8において、ステップS301では、目的地とともに入力された属性情報に基づいて、ルート検索を要求した住人の属性が女性又は小学生以下か否かを判定する。そして、そのいずれでもない場合には、判定を否定してステップS302に進み、第1ルート選定表示処理にて抽出済みの全ルートの中で、所定条件を満たすルートを選定する。ここでの所定条件とは、不審者の行動態様に基づいて、ルート上に存在する不審者の警戒度ができるだけ低くなるように設定される条件である。例えば、不審者の人数が所定数(例えば、2人以下)で、かつ高い警戒レベルの不審者が存在しないことを条件とすることが考えられる。そして、前記第1ルート選定表示処理で記録された不審者存在情報(図6のステップS203参照)に基づいて、かかる条件を満たすルートを選定する。この場合、複数のルートがその条件を満たす場合には、そのうちの最短ルートを選定する。
【0068】
そして、続くステップS303にて、当該選定したルートを推奨ルートとして宅内モニタ55の表示画面55aに表示する。この表示は、第1ルート選定表示処理における前述したルート表示(図6のステップS206)と同様である。これに加え、当該選定ルートをたどって目的地に向かう住人にとっては、ルート上で不審者に出会うことが予定される以上、その不審者の詳しい情報を予め把握できる方が予測可能性を確保できる点で好ましい。そこで、不審者マーク61だけでなく、滞在時間等の詳細な情報も合わせて表示する。その後、本処理を終了する。
【0069】
図9には、この第2ルート選定表示処理によって選定したルートを表示画面55aに表示した表示例が示されている。ここでも、図3の表示例と同様、住宅分譲地22に存在する住宅の住人が、鉄道駅21を目的地として入力してルート検索を要求した場合が想定されている。図示のように、自宅22aから鉄道駅21に向かう複数ルート(例として、ルートβ1〜β4)の全てに不審者が存在するが、その中で通常警戒レベルの不審者数が1人である点で条件を満たし、かつ最短ルートのルートβ1が選定されて表示されている。そして、ルートβ1に存在する不審者についての情報が、不審者マーク61近傍の枠62内に表示されている。なお、点線矢印で図示した各ルートβ2〜β4は実際上の表示画面55aには表示されない。
【0070】
図8のフローチャートに戻り、ステップS301にて、住人の属性が女性又は小学生以下の子供であれば、判定を肯定してステップS304に進む。そして、このステップS304では、宅内モニタ55の表示画面55aに外出を控えるよう告知する画像を表示する。目的地に至るすべてのルートに不審者が存在する以上、女性や小学生以下の子供にとっては外出を控えることが推奨されるからである。その後、本処理を終了する。なお、外出を控えることができない場合もあり得るため、女性や小学生以下という住人属性を有する場合には、図6に示した前記第1ルート選定表示処理にて、ルート抽出の範囲を拡大すべく、所定距離(ステップS204参照)を成人男性等の場合より拡大してもよい。
【0071】
次に、前記図4におけるステップS14の種類検索処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
この図10において、ステップS141では、住人により施設の種類で入力された目的地の情報を読み込む。続くステップS142では、X地域に存在する当該設定された種類の施設を把握し、その一つを目的地として選定する。この場合、把握した施設が複数存在する場合には、そのうち出発地である自宅から近い位置に存在する施設を目的地として選定する。例えば、コンビニエンスストアという種類にて目的地が入力された場合には、図1に示されているように、X地域にはAコンビニエンスストア27とBコンビニエンスストア28の2つが存在するため、その両者を目的地として把握する。そして、自宅22aからはAコンビニエンスストア27がBコンビニエンスストアよりも近い位置にあるため、前者を目的地として設定する。
【0073】
続くステップS143では、設定目的地について、図6に示した前記第1ルート選定表示処理を実行する。その結果、自宅から当該目的地までのルートの中に不審者が存在しないルートが存在すれば、そのルートを宅内モニタ55に表示する。その後のステップS144では、この第1ルート選定表示処理にてルートが選定されたか否かを判別する。ルートが選定された場合であれば、その判定を肯定してこの処理を終了する。一方、ルートが選定されなかった場合、つまり、目的地に至るすべてのルートに不審者が存在する場合には、その判定を否定してステップS145に進む。このステップS145では、当初に把握した目的地の中に別の目的地が存在するか否かを判定する。コンビニエンスストアの例であればBコンビニエンスストア28が存在するように、別の目的地が存在する場合には判定を肯定し、再び前記ステップS143に戻る。そして、当該別の目的地について、第1ルート選定表示処理を実行する。このため、近い位置にある目的地から順に、不審者が存在しないルートが存在するまで第1ルート選定表示処理を行い、その処理で不審者が存在しないルートが存在すれば、そのルートを推奨ルートとして宅内モニタ55に表示し、本処理を終了する。
【0074】
これに対し、把握した目的地のすべてについて第1ルート選定表示処理を実行し、そのいずれでもルート上に不審者が存在するため、別目的地が存在しなくなった場合には、前記ステップS145での判定を否定してステップS146に進む。このステップS146では、前記図8に示した第2ルート選定表示処理を実行する。これにより、抽出された全ルートの中から、所定条件を満たすルートを選定し、そのルートを推奨ルートとして宅内モニタ55に表示する。その後、本処理を終了する。
【0075】
図11には、この種類検索処理によって選定したルートを表示画面55aに表示した表示例が示されている。ここでは住宅分譲地22に存在する住宅の住人が、コンビニエンスストアという種類で目的地入力してルート検索をした場合を想定している。図示のように、X地域には2つのコンビニエンスストア27,28が存在する。自宅22aからBコンビニエンスストア28に向かうルートγ1はAコンビニエンスストア27に向かうルートγ2よりも距離が長いが、不審者が存在しないためにそのルートγ1が選定されて表示されている。なお、ここでも点線矢印で図示したルートγ2は実際上の表示画面55aには表示されない。
【0076】
次に、前記図4におけるステップS16の送信後処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。なお、この送信後処理は、住人が目的地に到着するまで周期的に実行する。目的地到着の判断は、X地域内の目的地周辺に設置された検知機器類44(詳しくは、ID通信装置43)で、住人が所持するID端末TからIDコードを受信したか否かにより行う。その情報は管理サーバ31で把握されるため、ホームサーバ51はその情報を管理サーバ31から取得する。
【0077】
図12において、ステップS161では、図6に示す第1ルート選定表示処理又は図8に示す第2ルート選定表示処理にて選定したルートにおいて、不審者の状況に変動があったか否かを判定する。例えば、不審者が存在していなかったのに不審者が存在する状況となった場合、存在する不審者の人数が変わった場合、存在する不審者の警戒レベルが高くなった場合には変動があったと判断する。このような変動がなければ判定を否定してこの処理を終了する一方、変動があれば判定を肯定して次のステップS162に進む。
【0078】
このステップS162では、住人が存在する現在地を把握する。その把握は、X地域内の検知機器類44(詳しくは、ID通信装置43)による住人のIDコード受信結果に基づいて行う。この受信結果に関する情報は、管理サーバ31より取得する。続くステップS163では、外出中の住人が所持する携帯電話機56に指令信号を送信し、ルート再検索を行なう旨を告知する。この告知の態様としては、表示モニタ56aに告知画像を表示させたり、音や振動を発生させたりすることが考えられる。
【0079】
これに続き、ステップS164では、目的地の設定はそのまま維持しながら、把握した住人の現在地を出発地として図5に示した前記特定検索処理を実行する。この特定検索処理では、前述したように、図6に示す第1ルート選定表示処理及び図8に示す第2ルート選定表示処理により、不審者をできるだけ回避するルートを選定する。この場合、住人はすでに外出しているため、宅内モニタ55に選定したルートを表示しても当該住人にそれを認識させる意味はなくなるが、他の同居家族(外出中の住人が子供であれば、その親など)に改めて知らせるという点では意味を有する。ただ、この送信後処理においては、ルート表示の実行を省略してもよい。
【0080】
その後、ステップS165にて、この特定検索処理の実行により当初のルートとは別のルートを選定したか否かを判定する。改めて選定したルートが当初に選定したルートと同じルートであれば、判定を否定してそのまま本処理を終了する。一方、当初に選定したルートとは別のルートを選定した場合には、判定を肯定して次のステップS166に進み、そこで新ルートの情報を外出中の住人が所持する携帯電話機56に送信する。携帯電話機56では、この情報に基づいてその表示モニタ56aに改めて選定された新ルートを表示する。この場合も、表示モニタ56aに告知画像を表示させたり、音や振動を発生させたりして住人に新ルート設定を告知することが考えられる。
【0081】
以上の構成により、本実施の形態の経路検索システムによれば、以下に示す有利な効果が得られる。
【0082】
(1)ホームサーバ51は、ルート検索を行なう上で、自宅22aから設定した目的地までのルートを複数抽出している。そして、その抽出した各ルートの中から、不審者関係情報に基づいて不審者を回避するルートを検索し、一つのルートを選定する。さらに、宅内モニタ55の表示画面55aに表示したX地域の地図情報上において、この選定したルートを推奨ルートとして表示する。これにより、住人は推奨ルートを一目で把握することができるし、そのルートをたどれば不審者を回避しながら目的地にたどり着くことができ、異常事態に出会うことの事前抑制が可能となる。
【0083】
(2)ルート検索においては、まず抽出した経路上で不審者が存在しないルートを検索し、抽出した全てのルート上に不審者が存在する場合には所定条件を満たしたルートを検索する。そして、後者の場合でもその所定条件は不審者の警戒度ができるだけ低くなるように条件を設定している。このため、不審者を回避する上で最適なルートを検索することができる。また、不審者が存在しないルートを優先的に検索するため、異常事態の事前抑制効果を高めることができる。
【0084】
(3)不審者が存在しないルートを検索する場合には、目的地までの距離が所定距離を範囲内とする複数のルートを抽出し、その中から検索するようにしている。不審者が存在しないルートにこだわると、不審者の状況次第では、選定した経路の距離が最短ルートに比べて異常に長くなりすぎることもあり得る。そこで、このように距離制限を設けることで、現実的でない距離のルートが選定されることを防止できる。
【0085】
(4)検索要求した住人の属性が女性や小学生以下の子供である場合、不審者の存在しないルートだけを検索するようにしている。このように弱者に該当する特定の属性を住人が有する場合には、不審者がルート上に存在することを前提としたルート検索を行なわないようにして、異常事態の事前抑制効果を高めている。
【0086】
(5)宅内モニタ55の表示画面55aでは推奨ルートだけでなく不審者マーク61も併せて表示し、X地域における不審者の存在状況も同時に把握できるようになっている。これにより、住人は不審者の存在やその存在位置を予め確認した上で外出することができ、外出時の注意を喚起できる。
【0087】
(6)不審者関係情報は随時更新されるため、選定された経路の信頼性を高めることができる。また、いったん経路を選定した後でも、不審者の状況に変動があれば、住人の現在の存在位置を出発地として改めてルート検索が行われ、その情報が携帯電話機56に送信される。このため、不審者の存在状況の変化にも対処することができる。
【0088】
なお、以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。
【0089】
(a)上記実施の形態は経路検索システムに関するものであるが、地域住人だけでなくX地域という特定地域との関わりのある者もID登録されているため、次のような異常検知システムを構成することもできる。
【0090】
この異常検知システムでは、ID端末Tとして携帯電話機56を用いる。そして、各ホームサーバ51−1〜51−nにはそれぞれ侵入検知センサが接続されている。この侵入検知センサは個々の住宅への不審者の侵入を検知するセンサであり、敷地の境界や住居の窓装置等に設置されている。そして、侵入検知センサにより不審者の侵入が検知されると、ホームサーバ51は住人が所持する携帯電話機56に指令信号を出力し、住人に異常状態の発生を報知する。これにより、住人は住宅の異常状態を把握して、対処が可能となる。もっとも、住人が外出中である場合には異常状態への対処にも限界がある。そこで、この住人の携帯電話機56への報知と併せて、ホームサーバ51は当該住宅の周辺(任意に設定可能で、例えば異常発生住宅を中心とした半径100メートル程度の範囲)に存在するID登録者の携帯電話機56にも指令信号を出力し、異常状態を報知する。これにより、地域住人だけでなくID登録者によっても異常事態に対処することが可能となるため、地域での防犯性を向上させることができる。その他、警備会社等の外部機関に通報し、そこからさらにX地域の商店街24、小学校25、銀行26及びコンビニエンスストア27,28等の各種施設に通報することで、それら施設でも異常状態を把握して、それに対処することが可能となる。
【0091】
(b)上記実施の形態では、X地域に存在する人についてその人が不審か否かを判定しているが、人だけでなく車両についても不審か否かを把握して、その情報もルート検索に利用するようにしてもよい。つまり、不審者だけでなく、不審車両もできるだけ回避するルートを検索すれば、異常事態に出会うことを事前に抑制するという効果をより確実なものとすることができる。この場合、車両が不審か否かの判定は、監視カメラ42でナンバープレートを撮影して車両登録番号を把握したり、ID通信装置43で車両IDコードを取得したりして、それと登録情報と照合することが考えられる。
【0092】
(c)上記実施の形態では、ホームサーバ51が選定したルートを宅内モニタ55の表示画面55aに表示させているが、それとともに又はこれに代えて、住人が所有する車両に設けられた車載モニタに表示させるようにしてもよい。また、住人は徒歩ではなく車両に乗車して外出する場合もあるから、住人の要求があれば携帯電話機56ではなく車両側に選定したルート情報を送信し、車載モニタにルート表示させるようにしもよい。このように車載モニタにルート情報を送信した場合にも、携帯電話機56に送信した場合と同様に、車両が目的地に到着するまで送信後処理を周期的に実行する。このため、前述したように、不審者や不審車両の状況が変わればルートを再検索し、新ルートを選定した場合にはその新ルートを車載モニタに再度送信することになる。
【0093】
(d)上記実施の形態において、宅内モニタ55の表示画面55aを縦横の区画線によってマトリックス状(格子状)に区画し、そこにX地域の地図情報を表示するようにしてもよい。これにより、表示画面55aに不審者マーク61で表示される不審者の存在位置を把握しやすくなる。このマトリックス状の画面区画は、携帯電話機56の表示モニタ56aや車載モニタで実施してもよい。
【0094】
ここで、このように画面を区画した場合、一つ一つの画面ブロックを基準として住居や住人所有車両の存在位置、不審者や不審車両の存在位置等を把握して、その情報に基づいて防犯対策を実行することもできる。そのような防犯対策の例示を以下に列挙する。
【0095】
・住人が車両に乗車して外出しようとする時点で、住宅が所属する画面ブロックと同一又はその周辺の画面ブロックに不審者や不審車両が存在する場合には、住人にその旨を報知する。その報知は、ホームサーバ51により、車庫の照明を点滅させたり、車両のヘッドライトを点滅させたりするといった動作制御を行うことが考えられる。また、同じくホームサーバ51により、住人が車両に乗車して車両ドアを閉じると即座に自動で施錠する等の動作制御を行ってもよい。
【0096】
・住人が車両に乗車して帰宅した時点で、住宅が所属する画面ブロックと同一又はその周辺の画面ブロックに不審者や不審車両が存在する場合にも、住人にその旨を報知する。その報知は、前述したのと同様に車庫の照明を点滅させたり、また、車載モニタに不審者が近くに存在する旨の情報を表示したりして行うことが考えられる。車両の入庫を検知した場合には、車庫のシャッタ装置を自動で閉動作させる等の動作制御を行ってもよい。
【0097】
・X地域内を車両で走行中であれば、車両の存在する画面ブロックと同一又はその周辺の画面ブロックに不審者や不審車両が存在する場合、ホームサーバ51は車載モニタを利用してその旨を報知する。この場合、車載スピーカにより音声で報知してもよいし、車両ドアが未施錠であれば自動で施錠するようにしてもよい。
【0098】
・住人が徒歩や自転車で外出中であれば、その住人が存在する画面ブロックと同一又はその周辺の画面ブロックに不審者や不審車両が存在する場合、住人が存在する画面ブロックに所属する住宅に駐車された車両のヘッドライトを点灯させることで、当該外出中の住人に注意喚起してもよい。
【0099】
(e)上記実施の形態では、不審者に対する威嚇について言及していないが、X地域の各所に多数設置された街灯や警報装置を管理サーバ31が動作制御することにより、不審者を威嚇するようにしてもよい。また、不審者が運転する車両や不審車両の車載モニタに対して信号を出力し、「あなたは登録されていない運転者です」等と表示させて、運転者を威嚇するようにしてもよい。
【0100】
(f)上記実施の形態では、宅内モニタ55の表示画面55aに不審者マーク61を表示しているが、その表示は必須ではなく、表示させないようにしてもよい。不審者を回避するルートとして選定したルートが最低限表示されていれば足りるからである。もっとも、ルート上に不審者が存在する場合もあり得る以上、予測可能性を確保する上では、不審者マーク61も併せて表示することが好ましい。
【0101】
(g)上記実施の形態では、登録者か非登録者かを判別するID情報として、ID端末T1〜Tnに付与された固有のIDコードを用いているが、監視カメラ42によって撮影された画像情報を基に得られた顔情報等の人物情報を住人判別用のID情報として利用してもよい。
【0102】
(h)上記実施の形態では、予め出発地として自宅が設定されているが、操作装置53を利用して住人がX地域内に存在する任意の箇所を出発地として入力操作し、その場所を出発地として設定するようにしてもよい。
【0103】
(i)上記実施の形態では、ルート検索を要求する住人の属性が操作装置53等を用いて入力されるようになっているが、住人が所持するID端末Tに属性コードを予め記憶させておき、ホームサーバ51に接続された通信装置54がその属性コードを読み取るようにしてもよい。これにより、住人による属性入力の操作が不要となるため、利便性が高まる。
【0104】
(j)上記実施の形態では、全ての抽出ルートに不審者が存在する場合、女性又は小学生以下の子供という属性を有する住人であればさらなるルート選定を行わないようにしているが、弱者に該当するならば他の属性でも同様の処理を行ってもよい。高齢者等がその属性例として考えられる。一方、そのような弱者にあたる属性であっても、不審者が存在する全ての抽出ルートの中から、所定条件を満たすルート選定(図8のステップS302)を行ってもよい。その所定条件は成人男性等のような属性と同じであってもよいし、異ならせてもよい。
【0105】
(k)上記実施の形態では、ルート検索によって選定したルートを推奨ルートとして表示するだけであるが、不審者の存在状況を考慮せず、路地等の狭い道を除く最短のルートを標準ルートとして併せて表示してもよい。宅内モニタ55の表示画面55aには不審者マーク61が表示されていて、X地域における不審者の存在状況を把握できるため、その情報をもとに、最短ルートと推奨ルートとのいずれかを選択する選択権を住人に与えることができる。
【0106】
(l)上記実施の形態では、X地域に居住する住人がルート検索を要求することを想定しているが、同じくX地域に存在する小学校25等の学校や、商店街24の商店、会社等の関係者がルート検索を行えるようにしてもよい。この場合、住宅に設置されたホームサーバ51等の装置に相当する装置が学校等に設置されることになる。
【0107】
(m)上記実施の形態では、第1ルート検索表示処理を行う上で、目的地に至るルートを一度に複数抽出しているが(図6のステップS201)、一つのルートを抽出してその一つのルートごと不審者が存在するか否かの判定を行うようにしてもよい。ただ、一度に複数抽出した方が、処理効率が高まる点で好ましい。
【0108】
(n)上記実施の形態では、ルート検索処理を全体として見て、目的地に至る複数のルートを抽出し、その抽出した各ルートの中から不審者回避ルートを検索しているが、その複数のルート抽出という処理を省略してもよい。この場合、例えば、目的地に至る複数のルートごとに不審者関係情報を組み合わせてデータベース化し、ホームサーバ51がその中から所定条件を満たすルートを一つ選定するという処理を行う。なお、ここでも選定の所定条件としては、不審者の不存在を優先し、その次に不審者の人数や警戒レベルを考慮することが好ましい。
【符号の説明】
【0109】
31…管理サーバ(不審者把握手段、登録者把握手段)、51…ホームサーバ(設定手段、経路検索手段、表示制御手段)、52…メモリ(地図情報記憶手段)、53…操作装置、55…宅内モニタ(表示手段)、55a…表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定地域内に存在する出発地から同じく前記特定地域内に存在する目的地に至る経路を検索する経路検索システムであって、
予め登録されたID情報の取得結果に基づいて、前記特定地域での不審者の存在状況を把握する不審者把握手段と、
前記特定地域の地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
前記特定地域内に存在する出発地及び目的地を設定する設定手段と、
前記設定された出発地から目的地までの経路として、前記地図情報と前記不審者の存在状況とに基づいてその不審者を回避する経路を検索する経路検索手段と、
を備えたことを特徴とする経路検索システム。
【請求項2】
前記不審者把握手段は、前記特定地域に存在する不審者の少なくとも存在位置及び行動態様を前記不審者の存在状況として把握するものであり、
前記経路検索手段は、目的地までの複数の経路を抽出するとともに、それら抽出経路上での前記不審者の存否に基づいて前記経路を検索し、全ての抽出経路上に不審者が存在する場合には各不審者の行動態様に基づいて前記経路を検索することを特徴とする請求項1に記載の経路検索システム。
【請求項3】
前記経路検索手段は、前記設定された出発地から目的地までの距離が制限範囲内となる経路を抽出し、前記不審者の存在状況としての不審者存否に基づいて前記経路を検索するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の経路検索システム。
【請求項4】
前記経路検索手段は経路検索を要求する者の属性を把握し、その属性が特定の属性有する場合には、前記不審者の存否に基づいてのみ前記経路を検索することを特徴とする請求項3に記載の経路検索システム。
【請求項5】
前記特定地域内に存在する建物に設置され、前記特定地域の地図情報を表示画面に表示する表示手段と、
前記検索により選定した経路を推奨経路として前記地図情報上に表示するように前記表示手段を制御する表示制御手段と、
を備え、
前記設定手段により、前記表示手段が設置された建物が出発地として設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の経路検索システム。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記表示画面に表示された地図情報上での、前記不審者の存在位置に該当する箇所に、当該不審者の存在状況に応じた表示形式で不審者情報を表示するように、前記表示手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の経路検索システム。
【請求項7】
予め登録されたID情報の取得結果に基づいて、前記特定地域でのID登録者の存在位置を把握する登録者把握手段を備え、
前記不審者把握手段は変化する前記不審者の存在状況を随時把握するとともに、
前記検索により選定した経路上での前記不審者の存在状況が変った場合、前記設定手段は前記ID登録者の存在位置を出発地として設定し直し、前記経路検索手段はその設定された出発地をもとに、改めて前記不審者を回避する経路を検索することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の経路検索システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−141254(P2011−141254A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3493(P2010−3493)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】