説明

経路算出装置、経路算出システム、および経路算出方法

【課題】経路算出時の計算量を抑制しながら、ユーザにとって利便性の高い経路情報を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態の経路算出装置1000は、地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部50と、異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部1060と、地図情報記憶部50を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定部70と、第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、エリア間経路記憶部1060より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出部1080とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路を算出する技術に関し、特に、地図情報をもとに経路を算出する経路算出装置、経路算出システム、および経路算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経路算出装置においては、例えばダイクストラ法を用いて経路計算を行う手法が知られているが、経路計算の対象となる領域が広い場合には、経路計算に長い時間がかかるという課題がある。この課題を解決するために、本出願人は以下で示す特許文献に係る経路算出装置を開示している。
【0003】
この経路算出装置では、地図を所定のメッシュに分割し、主要幹線道路がそのメッシュに出入りする箇所を境界ノードとする。そして、その境界ノード間の移動コストを、メッシュに対応付けて、あらかじめ記憶しておく。一方で、メッシュ内部をさらに細メッシュに分割し、メッシュ内部のノード間の移動コストを、細メッシュに対応付けて、あらかじめ記憶しておく。始点と終点が指定されると、始点が存在するメッシュと終点が存在するメッシュとの間の移動コストは、これらの間に存在するメッシュ(以下、「中間メッシュ」と呼ぶ。)の境界ノード間の移動コストを和算して算出される。また、始点とそのメッシュの境界ノード間、終点とそのメッシュの境界ノード間の移動コストは、細メッシュに含まれるノード間の移動コストをもとに、ダイクストラ法を用いて算出される。そして、これらの移動コストを和算して、始点から終点までの最終的な移動コストが算出される。
【特許文献1】特開2005−228011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経路算出装置においては、経路算出に要する時間は短いことが望ましく、そのためには、経路算出時の計算量は抑制されることが望ましい。
【0005】
本発明はこうした状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、経路算出時の計算量を抑制しながら、ユーザにとって利便性の高い経路情報を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、経路算出装置に関する。この経路算出装置は、地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部と、異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部と、地図情報記憶部を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定部と、第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、エリア間経路記憶部より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出部と、を備える。
【0007】
本明細書の「ノード」とは、地図のデータ内で決定された特定の地点であり、例えば、道路の交差点、道路のエリアへの出入り口、道路の行き止まり、主要な建造物の前等である。また、「リンク」とは、ノード間を結ぶ経路であり、物理的な道路そのものであってもよいが、物理的な道路の形状とは異なり、論理的にノード間の結びつきを示すものであってもよい。
【0008】
本発明の別の態様は、経路算出システムに関する。この経路算出システムは、経路算出サーバと、経路表示端末と、を備える。この経路算出サーバは、地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部と、異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部と、経路を算出する始点および終点を指定する経路算出要求情報をもとに、地図情報記憶部を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定部と、第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、エリア間経路記憶部より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出部と、経路表示端末から前記経路算出要求情報を受け付け、また、前記経路表示端末に導出した経路を出力する通信部と、を有する。また、経路表示端末は、ユーザから、経路算出要求情報の指定入力を検出する受付部と、経路算出要求情報を経路算出サーバに出力し、また、経路算出サーバにより導出された経路を取得する通信部と、取得した経路を画面表示させる表示部と、を有する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、経路算出方法に関する。この経路算出方法は、地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定ステップと、第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出ステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記憶媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、経路算出時の計算量を抑制しながら、ユーザにとって利便性の高い経路情報を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従来、最短経路を求める方法として、例えばダイクストラ法を用いて経路計算を行う手法が知られている。ダイクストラ法とは、ある領域が与えられているときに、領域中の任意のノードから他の全てのノードまでの最短経路を決定する計算方法である。計算の初期状態では始点ノードの最短路のみが確定している状態から始まり、最短路が確定したノードを順次最短経路木、つまり、あるノードから他のノードへの最短路で使われているノード・リンクからなる木構造のデータに加えていく。これにより、最終的に、始点ノードから他の全てのノードに対する最短路が決定する。ダイクストラ法を用いた場合の計算量は、O記法で示すと、一般にO(n^2)となる。ここで、nは領域内の全ノード数、^はベキ乗を表す。
【0013】
前述の計算量から明らかなように、ダイクストラ法を用いて経路計算を行うとき、経路計算の対象となる領域が広い、つまり多数のノードが含まれる場合には、経路計算に長い時間がかかるという課題がある。したがって、例えば、ユーザがカーナビゲーション装置に対して、現在位置から離れた目標地点までの経路設定を要求した場合に、長時間の待ち時間が発生する可能性がある。
【0014】
本発明者は、事前にノード間の最短経路(以下、「ノード間経路」と呼ぶ。)を計算しておき、カーナビゲーション装置のような経路算出装置に、このノード間経路を記憶させておくことで、経路計算の時間を短縮できると考えた。経路算出装置に記憶されたノード間経路のことを、以下、「学習経路」と呼ぶことにする。全てのノードについて、学習経路を作成できれば、学習経路を用いる場合の計算量はO(1)であるため、大幅な計算量の削減となり、その結果、ユーザの要求に対するレスポンスタイムの向上も実現できる。
【0015】
本発明者は、全ノードの学習経路の作成にあたり、以下の3つの課題の存在を知見した。
(1)膨大な記憶容量の必要性
領域内のノード数をnとすると、単純に全てのノード間経路を算出した場合、ノード間経路数は(n^2)本存在する。例えば、日本全国の地図の場合、ノード数(n)は、約800万個存在するため、膨大な数のノード間経路が存在し、現実的な記憶容量を遙かに上回ってしまう。
(2)膨大な事前計算量の必要性
ダイクストラ法で計算した場合、あるノードから他の全てのノードまでの最短経路が1回の計算で求まり、この所要時間は5〜6分である。前述のように、日本全国の地図の場合、ノード数は約800万個存在するため、単純にノード数を積算すると、事前計算に要する時間は非常に長期間となり、現実的に可能な事前計算量を遙かに上回ってしまう。
(3)事前に固定的な学習経路を持つことによる弊害
実際の交通状況には、事故渋滞や工事による通行止めの発生など、事前に算出した学習経路をそのまま適用することが妥当でない場合がある。
以下、本発明の実施形態として、これらの課題を解決する経路算出装置、および経路算出システムを説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る経路算出装置10の構成例を示す機能ブロック図である。経路算出装置10は、ユーザインタフェイス部20と、受信部30と、現在位置導出部40と、地図情報記憶部50と、エリア間経路記憶部60と、エリア特定部70と、経路導出部80と、移動コスト調整部90とを備える。これらの構成は、ハードウェアコンポーネントでいえば、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。図11および図20の機能ブロック図においても同様である。
【0017】
ユーザインタフェイス部20は、ユーザからの、経路を算出する終点の指定情報を含む経路算出要求情報の入力を受け付ける。経路算出要求情報には、経路を算出する始点の指定情報は必須ではない。始点がユーザにより明示的に指定された場合には、経路算出装置10は、ユーザの現在位置にかかわらず、指定された始点から終点までの経路を算出する。始点が明示的に指定されない場合には、経路算出装置10は、ユーザの現在位置を始点として指定された終点までの経路を算出する。
【0018】
受信部30は、GPS(Global Positioning System)や、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)といった交通情報提供システムからの情報を受け付ける。例えば、複数のGPS衛星から時刻情報を含む電波信号を受け付ける。また、交通情報提供システムからは、渋滞、所要時間、事故・故障車・工事、速度規制・車線規制等の交通情報を受け付ける。
現在位置導出部40は、複数のGPS衛星からの電波信号をもとに、現在位置を導出する。現在位置を導出する方法は、既知の測位方法を用いてよい。また現在位置導出部40が導出した現在位置を、経路を算出する始点としてもよい。
移動コスト調整部90については、後述する。
【0019】
地図情報記憶部50は、地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報(以下、「リンク情報」と呼ぶ。)とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する。なお、リンク情報には少なくともノード間の距離が含まれることとする。図2は、地図のイメージ図である。同図では、地図の全体領域202の中に、ノード204と、ノード間の経路であるリンク206が存在することを示している。地図情報記憶部50は、全体領域202を分割したエリアを特定する座標情報、例えば経度情報や緯度情報を保持する。
【0020】
図3は、地図情報記憶部50が格納する複数のエリアに分割された地図情報のイメージ図である。同図では、地図の全体領域が複数のエリア、例えばエリア302、エリア304等に分割された状態を示している。各エリアのノードには、地図全体における一意の識別番号が振られており、さらに、エリアの境界に位置する境界ノード、例えば境界ノード306が決められている。なお、図3は、理解の便宜のためのイメージであり、地図情報記憶部50は、実際には、テーブル等でこれらのエリア情報・ノード情報・境界ノード情報を管理してもよい。
【0021】
図4は、地図情報記憶部50が格納するリンク情報のデータ構造を示す。図3のエリア302については、そのエリアにおいてリンクで接続されたノードの組み合わせ数分のレコードが存在する。移動コストは、ノード間の単なる距離でもよいが、ノード間の移動時間、通行のための費用等、またはそれらの組み合わせに基づいて重み付けされたものであってもよい。さらに、車幅や車線数、信号の数、天候など通行のしやすさに応じて調整されてもよい。本明細書の以下においても同様である。
なお、同図では、出発ノードと目標ノードが入れ替わっただけの組、例えば、出発ノード番号X0101・目標ノード番号X0103と、出発ノード番号X0103・目標ノード番号X0101とは別のものとして移動コストを格納している。これらのノードの組について別のものとして取り扱うことで、車線数の違いや、方向による混雑の違いなど、より現実の交通事情に即した移動コストの設定が可能になる。変形例として、出発ノードと目標ノードが入れ替わっただけの、これらのノードの組については、同一のものと取り扱ってもよい。この場合、地図情報記憶部50が格納するデータ量が削減されるという効果がある。
【0022】
エリア間経路記憶部60は、異なるエリアの境界ノード間の経路(以下、「エリア間経路情報」と呼ぶ。)をリンクの組み合わせとして格納する。このエリア間経路は、あるエリアの1つの境界ノードと他のエリアの1つの境界ノードとの間の経路を特定するものであってもよい。さらに、あるエリアの1つの境界ノードと他のエリアとの組み合わせ毎に、所定の条件に基づいて1つの経路が決定されてもよい。ここで、所定の条件は、距離・移動時間・通行のための費用等、つまり移動コストに基づく条件であってもよい。具体的には、移動コストが、特定のエリアの1つの境界ノードと他のエリアとの組み合わせにおいて、最も小さいという条件であってもよく、また所定の閾値よりも小さいという条件であってもよい。以下では、例示として、移動コストが最も小さいエリア間経路が選定されるものとする。
【0023】
図5は、エリア間経路のイメージ図である。エリア302からエリア304へのエリア間経路はエリア302の境界ノード数分、つまり3本、存在する。同図において、境界ノードY011とエリア304については、エリア間経路502で示している。同様に、境界ノードY102とエリア304については、エリア間経路504で、境界ノードY101とエリア304については、エリア間経路506で示している。
【0024】
図6は、エリア間経路記憶部60が格納するエリア間経路のデータ構造を例示する。同図は、例えば図5のエリア間経路502の場合、境界ノード番号がY011のレコードで示されるエリア間経路として保持されることを示している。なお、エリア間経路は、リンクの組み合わせとして格納されている。つまり、図5のエリア間経路502の場合、境界ノードY011とノードX0201のリンク、ノードX0201とノードX0202のリンク・・・、という具合に個々のリンクの組み合わせとなっている。これによる効果は後述する。
【0025】
エリア間経路は、学習経路として事前に算出して、エリア間経路記憶部60が記憶しておく。エリア間経路の算出例を以下示す。まず、特定のエリアAの1つの境界ノードaから、他のエリアBの全境界ノードまでの移動コストを、ダイクストラ法を用いて算出する。そして、最も移動コストが小さくなるエリアBの境界ノードまでのリンクの組み合わせを、境界ノードaからエリアBまでのエリア間経路として決定することにより算出できる。
【0026】
具体例を図5で示す。エリア302の境界ノードY011からエリア304までのエリア間経路を求めるとする。この場合、境界ノードY011からエリア304の全境界ノード、つまり境界ノードY207・Y208・Y035・Y036への移動コストを、ダイクストラ法を用いて算出する。この例ではエリア304の境界ノードY208への移動コストが最も小さくなるため、境界ノードY011から境界ノードY208までのリンクの組み合わせであるエリア間経路502が選択された。なお、前述したように、このエリア間経路502は、学習経路としてエリア間経路記憶部60に、図6の境界ノード番号がY011のレコードとして格納される。エリア間経路504、エリア間経路506についても同様である。
【0027】
エリア特定部70は、地図情報記憶部50を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定する。図7は、始点702と終点704とが、地図上に指定された状態を表す図である。このとき、エリア特定部70は、始点702を含む第1エリアとしてエリア302を、終点704を含む第2エリアとしてエリア304を特定する。具体的には、エリアの範囲は経度および緯度の座標情報で特定できるため、始点・終点の経度および緯度等の座標情報をもとに、エリア特定部70は、始点または終点を含むエリアを特定することができる。
【0028】
経路導出部80は、第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、エリア間経路記憶部60より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する。本実施の形態に係る経路算出装置10では、経路導出部80は、始点702から第1エリアの各境界ノードまでの移動コストと、第1エリアと第2エリア間の移動コストと、第2エリア内の各境界ノードから終点704までの移動コストとを考慮して、ダイクストラ法を用いて始点と終点との経路を導出する。
【0029】
図8は、経路導出部80が経路を導出するときの考え方を示す。同図では、図7の始点702と終点704間に存在するリンクを示している。本実施の形態において、それぞれのエリア間経路は事前に算出されているため、同図では、エリア間経路は一つのリンクとして考えればよいことを示している。この例のエリア間経路は、図6で示したように3つに限定され、エリア間経路記憶部60に格納されている。エリア間経路は、リンクの組み合わせとして格納されているため、経路導出部80は、それぞれのリンクの移動コストを地図情報記憶部50より取得して和算することで、エリア間経路全体の移動コストを算出できる。また、第1エリア内および第2エリア内の各リンクの移動コストは図4で示したように地図情報記憶部50に格納されているため、経路導出部80はそれぞれのリンクの移動コストを取得できる。始点から第1エリア内の近くのノード(以下、「近傍ノード」と呼ぶ。)への移動コストは、始点(現在位置)から第1エリア内のノードへの距離等に基づき算出できる。終点から第2エリア内の近傍ノードへの移動コストを算出する場合も同様である。
【0030】
図9は、経路導出部80が経路を導出する手順の一例を示すフローチャートである。経路導出部80は、まず、始点から第1エリアの近傍ノードまでの移動コストを算出する(S2)。次に、終点から第2エリアの近傍ノードまでの移動コストを算出する(S4)。そして、第1エリア内の各リンクの移動コストを、地図情報記憶部50から取得する(S6)。ここで、エリア特定部70の出力結果に基づき、第1エリアと第2エリアは同一か、つまり始点と終点が同一のエリアに存在するかを判定する(S8)。同一の場合(S8のY)、エリア内のリンクと各リンクの移動コストは既に取得済みであるため、ダイクストラ法を用いて、始点から終点までの最小の移動コストとなる経路を算出する(S16)。第1エリアと第2エリアとが異なる場合(S8のN)、第2エリア内の各リンクの移動コストを、地図情報記憶部50から取得する(S10)。次に、第1エリアと第2エリアのエリア間経路を、エリア間経路記憶部60から取得する(S12)。そして、エリア間経路に含まれるそれぞれのリンクの移動コストを、地図情報記憶部50から取得し、移動コストを和算して、エリア間経路全体の移動コストを算出する(S14)。これで、始点から終点までに存在するリンクと各リンクの移動コストが求まったため、最後に、ダイクストラ法を用いて、始点から終点までの最小の移動コストとなる経路を算出する(S16)。
【0031】
一般にダイクストラ法を用いた場合、その計算量はノード数をnとするとO(n^2)であることが知られている。本実施の形態に係る経路算出装置10では、エリア間経路を事前に学習経路として記憶しておくことで、図8で示すように実質的にノード数が大幅に削減され、ダイクストラ法を用いた経路計算の時間が大幅に短縮される。その結果、例えばユーザからの経路算出要求に対して、迅速なレスポンスが可能となる。
ここでさらに、前述した学習経路を作成する上での課題(1)および(2)の解決について考察する。
【0032】
(1)膨大な記憶容量の必要性
ノード間経路は全てのノード間について持つわけではなく境界ノード間のみ、しかも特定のエリアの1つの境界ノードと他のエリアの全境界ノードのうち最小の移動コストとなる組み合わせのみエリア間経路として保持するため、必要な記憶容量は大幅に削減される。
(2)膨大な事前計算量の必要性
エリア間経路の計算は全てのノード間について行うわけではなく、特定のエリアの境界ノード毎に、他の特定のエリアの境界ノードについて、1度ダイクストラ法での経路計算を行い、それを他のエリアとの組み合わせ数分繰り返すに過ぎない。したがって、全ノード間の経路を計算するのと比較して、必要な事前計算量も大幅に削減される。
このように、本実施の形態に係る経路算出装置10では、学習経路の事前計算により、経路の算出時間を大幅に短縮するとともに、学習経路を作成する上での課題を解決している。なお、課題(3)の解決については後述する。
【0033】
本実施の形態にかかる経路算出装置10は、さらに、移動コスト調整部90を備えてもよい。前述した受信部30が交通情報提供システムから交通情報を受け付けると、移動コスト調整部90は、地図情報記憶部50が格納するリンクのうち、その交通情報の影響を受けるリンクの移動コストを変更する。例えば、渋滞が発生した場合には、その渋滞により影響を受けるリンクの移動コストを大きくし、渋滞が解消した場合には逆に、移動コストを小さくする。次回経路算出を行うときには、最新の交通情報が移動コストとして反映されているため、最新の交通事情を加味した上で、最小の移動コストとなる経路の算出ができ、ユーザの利便性の向上を実現する。
【0034】
経路算出装置10は、さらに、移動コスト調整部90が、交通情報に基づき各リンクの移動コストを変更した後で、ユーザの現在位置から終点までの経路を再度算出してもよい。経路の再算出は、ユーザからの明示的な指示を受けて行ってもよいし、経路算出装置10が自律的に行ってもよい。経路算出装置10が自律的に経路を再算出する例として、経路算出装置10は、経路の再算出の要否を判定するための閾値を予め用意し、移動コスト調整部90により調整された移動コストの変動の幅がこの閾値を上回る場合に、経路を再算出してもよい。これにより、最新の交通情報を加味した上で、最小の移動コストとなる経路をユーザに対し提示することができる。
【0035】
図10は、交通情報に基づく経路の変更例を示す。例えば、ユーザがエリア間経路502にしたがって境界ノードY106・ノードX0703間を移動中に、将来通行予定の境界ノードY033・ノードX0803間に渋滞が発生したとする。このとき、その渋滞情報を受信部30が受け付け、移動コスト調整部90は、境界ノードY033・ノードX0803間のリンクの移動コストを大きくする。
【0036】
次に、エリア特定部70は、現在位置を含む第1エリア、つまり図10のエリア308と、終点を含む第2エリア、つまりエリア304を、特定する。そして、経路導出部80は、前述したように、エリア間経路記憶部60からエリア308とエリア304間のエリア間経路を取得する。ここで、エリア間経路の一つが境界ノードY033・ノードX0803・ノードX0806・境界ノードY208だったとする。この場合、このエリア間経路は一部のリンクの移動コストが大きくなっているため、経路導出部80は、ダイクストラ法を用い、代替の経路を算出してもよい。例えば、経路導出部80は、移動コストが調整されたリンクを含むエリアでは、エリア間経路記憶部60から取得したエリア間経路を使わずに、そのエリアに含まれる全リンクの移動コストを考慮して、ダイクストラ法により経路を導出してもよい。図10では、代替の経路として、境界ノードY033・ノードX0801・ノードX0804・境界ノードY208が選択されたイメージを示している。
【0037】
この例で示したように、代替の経路を算出可能であるのは、エリア間経路記憶部60が、エリア間経路をリンクの組み合わせとして記憶しているからである。前述したように、移動コスト調整部90は、交通情報に基づき影響を受ける個々のリンクの移動コストを変更し、経路導出部80はダイクストラ法を用いて最小の移動コストとなる経路をユーザに再度提示することができる。これに対して、エリア間経路情報を、境界ノードから境界ノードまで固定的に保持していた場合には、ここで示したような最新の交通情報の反映は困難であるし、代替経路の算出も困難である。本実施の形態にかかる経路算出装置10は、エリア間経路情報をリンクの組み合わせとして持つことで、前述した課題(3)、つまり事前に固定的な学習経路を持つことによる弊害を解決している。
【0038】
なお、経路算出装置10が、移動コスト調整部90を備えない場合にも、エリア間経路記憶部60が、エリア間経路をリンクの組み合わせとして保持することによって、より柔軟な経路算出を実現し、ユーザの利便性を高めるという効果がある。例えば、ユーザが学習経路の一部を何らかの事情により通行したくない、もしくは通行できない、迂回したい場合や、通行止め等の交通事情により迂回せざるを得ない場合を考える。このとき、経路導出部80は、特定のリンクが無いものとして、その他のノード間のリンクの移動コストをもとに、ダイクストラ法を用いて次善の経路をユーザに提示することができる。または、経路算出装置10が提示した経路をユーザがはずれてしまった場合に、ユーザの現在位置から終点までの経路を再度算出して提示することもできる。
このように、エリア間経路記憶部60が、エリア間経路をリンクの組み合わせとして保持することによって、経路算出時の計算量を減らして迅速に経路算出を行うことと、柔軟な経路算出を実現することとを両立して、ユーザの利便性を高める。さらに、移動コスト調整部90を備えることで、最新の交通情報を経路の導出に反映できるため、ユーザに対しより適切な経路の提示を可能とし、ユーザの利便性のさらなる向上を実現する。
【0039】
また、本実施形態の説明において、学習経路として事前に算出されるエリア間経路は、あるエリアAの1つの境界ノードaから、他のエリアBの全境界ノードまでの移動コストを、ダイクストラ法を用いて算出して、最も移動コストが小さくなるエリアBの境界ノードまでのリンクの組み合わせを、境界ノードaからエリアBまでのエリア間経路とした。変形例として、ダイクストラ法を用いて算出した、エリアAの1つの境界ノードaから、他のエリアBの全境界ノードまでの移動コストの、全てのリンクの組み合わせを、学習経路として保持してもよい。こうすることにより、エリアAの始点または終点と、エリアBの始点または終点の位置に応じて、より移動コストの小さなエリア間経路を選択しやすくなる。例えば、図5において、エリア302のノードX0102から、エリア304のX1201までの経路を算出する場合を考える。このとき、エリア304内部での移動コストを考慮すると、Y011からY208のエリア間経路を使うよりも、Y011からY207のエリア間経路を使った方が、全体としての移動コストは小さくなる可能性がある。本変形例によれば、境界ノードの組み合わせ毎に、エリア間経路を保持するため、より移動コストの小さな経路を導出しやすくなる。
【0040】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態にかかる経路算出装置は、前述の第1の実施形態にかかる経路算出装置と、記憶されるエリア間経路のデータ構造の点、および、経路導出の点において異なる。本実施形態の説明において、第1の実施形態と同じものには、第1の実施形態の説明において付与した符号と同じ符号を付与している。また、同一の符号が付与されたものに関する詳細な説明は省略する。
【0041】
図11は、本発明の第2の実施形態にかかる経路算出装置の構成例を示す機能ブロック図である。経路算出装置1000は、ユーザインタフェイス部20と、受信部30と、現在位置導出部40と、地図情報記憶部50と、エリア特定部70と、移動コスト調整部90と、エリア間経路記憶部1060と、経路導出部1080とを備える。以下、エリア間経路記憶部1060と、経路導出部1080とについて説明する。
【0042】
エリア間経路記憶部1060は、エリア間経路記憶部60と同様に、エリア間経路をリンクの組み合わせとして格納する。エリア間経路記憶部1060は、特定のエリアの1つの境界ノードと他のエリアの全ての境界ノードとの組み合わせ毎に、所定の条件に基づいて1つの経路が決定されてもよい。ここで、所定の条件は、距離・移動時間・通行のための費用等、つまり移動コストに基づく条件であってもよい。以下では、例示として、移動コストが最も小さいエリア間経路が選定されるものとする。
【0043】
図12は、エリア間経路のイメージ図である。同図において、エリア302の境界ノードY011から、エリア304の各境界ノードへのエリア間経路は、Y011からY207まで、Y011からY208まで、Y011からY035まで、Y011からY036までの、4本が導出されている。これらのエリア間経路は、境界ノードY011から、境界ノードY207・Y208・Y035・Y036までの、リンクの組み合わせに対してダイクストラ法を用いることで、移動コストの合計が相対的に小さくなるリンクの組み合わせとして導出されたものである。
【0044】
同様に、図13も、エリア間経路のイメージ図である。同図において、エリア302の境界ノードY102から、エリア304の各境界ノードへのエリア間経路は、前述の方法により算出され、Y102からY207まで、Y102からY208まで、Y102からY035まで、Y102からY036までの、4本が導出されている。さらに、図14も、エリア間経路のイメージ図である。同図において、エリア302の境界ノードY101から、エリア304の各境界ノードへのエリア間経路は、前述の方法により算出され、Y101からY207まで、Y101からY208まで、Y101からY035まで、Y101からY036までの、4本が導出されている。
【0045】
図15も、エリア間経路のイメージ図である。同図では、図12から図14まで説明した、エリア302からエリア304までの、エリア間経路が組み合わされた状態を示している。エリア間経路記憶部1060は、各エリアの組み合わせ毎に、図15で例示したリンクの組み合わせを、ネットワーク型データモデルとして記憶する。
【0046】
図16は、エリア間経路記憶部1060が格納するエリア間経路のデータ構造を例示する。同図では、図15で示したエリア間経路が、出発エリア番号が302で、目標エリア番号が304の組み合わせで特定されるレコードとして保持されることを示している。エリア間経路、つまりリンクの組み合わせは、ネットワーク型データモデルとして保持される。図16はデータ構造を模式的に示したものであり、実際には、個々のノードをレコードとし、そのノードと接続されるノードのポインタを、レコードに埋め込むことで実現されてもよい。また、DBMS(database management system)に保持させることで実現されてもよく、その他の公知の技術により実現されてもよい。なお、エリア間経路記憶部1060は、出発エリアと目標エリアとの組み合わせ毎に、図16で示したようなエリア間経路を保持する。図11に戻る。
【0047】
経路導出部1080は、経路導出部80と同様に、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを結ぶ経路情報を、エリア間経路記憶部1060より取得して、始点と終点とを結ぶ経路を導出する。図17は、始点702と終点704とが、地図上に指定された状態を表す。経路導出部1080は、始点702から第1エリアの各境界ノードまでの移動コストと、第1エリアと第2エリア間の移動コストと、第2エリア内の各境界ノードから終点704までの移動コストとを考慮して、ダイクストラ法を用いて始点と終点との経路を導出する。
【0048】
図18は、経路導出部1080が経路を導出するときの考え方を示す。同図では、図17の始点702と終点704間に存在するリンクを示している。同図において、エリア間のノードは模式的に示しているが、実際には、経路導出部1080は、エリア間経路記憶部1060から、出発エリア番号と目標エリア番号をキーにして、エリア間経路であるリンクの組み合わせを取得する。この例では、出発エリアはエリア302であり、目標エリアはエリア304であるため、図16で示したエリア間経路を取得する。エリア間経路は、リンクの組み合わせとして格納されているため、経路導出部1080は、それぞれのリンクの移動コストを地図情報記憶部50より取得して、各リンクに設定する。また、第1エリア内、第2エリア内の各リンクの移動コスト、および、始点または終点から近傍ノードへの移動コストについては、第1の実施形態と同様である。
【0049】
図19は、経路導出部1080が経路を導出する手順の一例を示すフローチャートである。なお、同図において、S22からS30までは、図9で説明したS2からS10までと、それぞれ同様であるため、同図のS32以降について説明する。経路導出部1080は、第1エリアと第2エリアのエリア間経路を、エリア間経路記憶部1060から取得する(S32)。次に、エリア間経路のそれぞれリンクの移動コストを、地図情報記憶部50から取得する(S34)。これで、始点から終点までに存在するリンクと各リンクの移動コストが求まったため、最後に、ダイクストラ法を用いて、始点から終点までの最小の移動コストとなる経路を算出する(S36)。
【0050】
本実施の形態に係る経路算出装置1000でも、第1の実施形態と同様に、エリア間経路を事前に学習経路として記憶しておくことで、図16および図18で示すように実質的にノード数が大幅に削減され、ダイクストラ法を用いた経路計算の時間が大幅に短縮される。その結果、例えばユーザからの経路算出要求に対して、迅速なレスポンスが可能となる。また、本実施形態では、特定のエリアAの1つの境界ノードから、他のエリアBの全境界ノードまでの移動コストを、ダイクストラ法を用いて算出して、その全てのリンクの組み合わせを学習経路として保持する。したがって、第1の実施形態の変形例において説明したように、エリアAの始点または終点と、エリアBの始点または終点の位置に応じて、より移動コストの小さなエリア間経路を選択しやすくなっている。
【0051】
ここでさらに、前述した学習経路を作成する上での課題(1)および(2)の解決について考察する。
(1)膨大な記憶容量の必要性
ノード間経路は全てのノード間について持つわけではなく、境界ノード間のみのリンクの組み合わせをエリア間経路として保持するため、必要な記憶容量は大幅に削減される。境界ノード間のみで、かつ、特定のエリアの1つの境界ノードと他のエリアの全境界ノードのうち最小の移動コストとなる組み合わせのみエリア間経路として保持する第1の実施形態と比べると必要な記憶容量は大きく増加するようにも思われる。図5において、エリア302からエリア304間のエリア間経路として、3本のエリア間経路を記憶していた第1の実施形態と比較すると、第2の実施形態は図15で示すように、境界ノード数分の組み合わせである12本分、つまり4倍のエリア間経路を記憶するようにも思われるからである。しかし、図5と図15を対比すれば明らかなように、記憶すべきリンクの組み合わせは、4倍にはならない。これは、移動コストが小さい経路、例えば移動時間が短い経路は、道幅の広い主要幹線道路等であるため、それぞれのエリア間経路におけるリンクの多くが共通するからである。そのため、将来的に境界ノードが増えた場合にも、追加して記憶すべきリンク数は最小限となる。したがって、本実施形態の経路算出装置は記憶容量の課題を解決している。
【0052】
(2)膨大な事前計算量の必要性
エリア間経路の計算は全てのノード間について行うわけではなく、特定のエリアの境界ノード毎に、他の特定のエリアの境界ノードについて、1度ダイクストラ法での経路計算を行い、それを他のエリアとの組み合わせ数分繰り返すに過ぎない。したがって、全ノード間の経路を計算するのと比較して、必要な事前計算量も大幅に削減される。なお、1度ダイクストラ法での経路計算を行えば、特定のエリアの特定の境界ノードから、他の特定のエリアの全ての境界ノードまでの経路が算出できるため、事前計算量については、第1の実施形態と本実施形態とは同じである。
このように、本実施の形態に係る経路算出装置1000でも、学習経路の事前計算により、経路の算出時間を大幅に短縮するとともに、学習経路を作成する上での課題を解決している。
【0053】
また、本実施の形態にかかる経路算出装置1000も、第1の実施形態と同様に、移動コスト調整部90を備えてもよい。移動コスト調整部90を備えることによる、構成、効果、および課題(3)の解決については、第1の実施形態と同様である。また、経路算出装置10が、移動コスト調整部90を備えない場合にも、エリア間経路記憶部60が、エリア間経路をリンクの組み合わせとして保持することによって、より柔軟な経路算出を実現し、ユーザの利便性を高めるという効果についても、第1の実施形態と同様である。特に、本実施形態の場合には、特定のエリアの境界ノードから他のエリアの全ての境界ノードまでのエリア間経路を、学習経路として事前に記憶している。これにより、学習経路の1つが、例えば通行止めにより通行できなくなった場合でも、他の学習経路を使うことで迂回路算出のためのノード数を低減でき、より迅速に迂回路を導出できる。
【0054】
(第3の実施形態)
これまでは、第1および第2の実施形態として、現在主流のカーナビゲーション装置のような、記憶部や経路導出部を含んだ経路算出装置について説明した。以下、本発明の第3の実施形態として、経路算出システムについて説明する。経路を一元的に算出するサーバが、ASP(Application Service Provider)として、ユーザに対し経路算出サービスを提供する形態である。
【0055】
図20は、本発明の第3の実施形態に係る経路算出システムの構成例を示す機能ブロック図である。経路算出システムは、経路算出サーバ100、および経路表示端末120、を備える。経路算出サーバ100と経路表示端末120は、インターネット・WAN・LAN・携帯電話ネットワーク等を含む通信ネットワーク190を介して接続される。なお、同図において、第1および第2の実施形態と同じ機能ブロックについては、同一の符号を使用している。以下、第1および第2の実施形態と同じ機能ブロックについての説明は省略し、第1および第2の実施形態との違いについて主に説明する。
【0056】
経路算出サーバ100は、経路算出サービスを提供するサーバであり、受信部30、地図情報記憶部50、エリア間経路記憶部1060、エリア特定部70、経路導出部1080、移動コスト調整部90、通信部110を有する。通信部110は、通信ネットワーク190を介して経路表示端末120からの経路算出要求情報を受け付ける。経路算出サーバ100は、その要求に基づき経路を算出し、経路情報を経路表示端末120に出力する。他の機能ブロックについては、第1および第2の実施形態の経路算出装置と同様である。なお、エリア間経路記憶部1060は、第1の実施形態のエリア間経路記憶部60でもよく、経路導出部1080は、第1の実施形態の経路導出部80でもよい。
【0057】
経路表示端末120は、主にユーザインタフェイスを担当する端末であり、受信部30、現在位置導出部40、受付部130、表示部140、通信部150、を有する。受付部130は、ユーザからの経路を算出する始点・終点等の入力を受け付け、経路算出要求情報を作成する。始点については、第1および第2の実施形態と同様に、GPS衛星からの信号を受信部30が受け付け、現在位置導出部40が現在位置を導出して始点としてもよい。通信部150は、通信ネットワーク190を介して、経路算出要求情報を経路算出サーバ100に出力し、算出された経路情報を経路算出サーバ100から受け取る。表示部140は、経路情報を画面に表示させる。
【0058】
通信ネットワーク190のブロードバンド化が進む現在では、機器間の物理的な位置の影響をほとんど受けず、通信ネットワーク190を介して大量の情報を高速にやりとりできる。そのため、ユーザインタフェイスを担当する経路表示端末120と、経路算出を担当する経路算出サーバ100が離れた場所に存在しても、通信のための待ち時間の発生は少なく、ユーザの利便性を損なうことは少ない。経路表示端末120側では、地図情報記憶部50やエリア間経路記憶部60等を保持する必要が無く、自ら経路算出を行わないため、高性能のハードウェアを必要としない。一方で、一元的に経路算出を担当する経路算出サーバ100側では、経路表示端末120とは異なりハードウェアの物理的な制限を受けにくいため、経路算出の性能向上も図りやすい。このように、第3の実施形態においては、通信ネットワーク190を仲介として、経路表示端末120と経路算出サーバ100との最適な役割分担を実現する。
【0059】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
本発明の実施形態の説明においては、地図を分割するエリアの大きさは全て同じ長方形状であったが、変形例として、交通量がより大きい都市部におけるエリアの大きさは、他の地域におけるエリアの大きさより小さくてもよい。あるいは、道路の密度が高い都市部におけるエリアの大きさは、他の地域におけるエリアの大きさより小さくてもよい。
【0061】
エリアの大きさが一定である場合、交通量が多い都市部や道路密度が高い都市部におけるエリアの境界ノードの個数は、他の地域におけるエリアの境界ノードの個数よりも相対的に多くなる。しかし、始点から終点への経路を求める場合、境界ノードの個数は、すなわちエリア間経路の個数となるため、経路算出においては境界ノードの個数は少ない方が望ましい。したがって、都市部におけるエリアの大きさを、他の地域におけるエリアの大きさよりも小さくすることで、都市部におけるエリアの境界ノード数を減らすことができ、経路算出の時間を短縮することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る経路算出装置10、または経路算出装置1000では、ダイクストラ法を用いて、最小の移動コストとなる経路を算出しているが、これは例示であり、最短経路問題を解く他のアルゴリズム、例えばワーシャル−フロイド法等、を用いてもよい。この場合にも、前述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る経路算出装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】地図のイメージ図である。
【図3】複数のエリアに分割された地図情報のイメージ図である。
【図4】リンク情報のデータ構造を示す図である。
【図5】エリア間経路のイメージ図である。
【図6】エリア間経路のデータ構造を例示する図である。
【図7】始点と終点とが地図上に指定された状態を示す図である。
【図8】経路導出部が経路を導出するときの考え方を示す図である。
【図9】経路導出部が経路を導出する手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】交通情報に基づく経路の変更例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る経路算出装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図12】エリア間経路のイメージ図である。
【図13】エリア間経路のイメージ図である。
【図14】エリア間経路のイメージ図である。
【図15】エリア間経路のイメージ図である。
【図16】エリア間経路記憶部が格納するエリア間経路のデータ構造を例示する図である。
【図17】始点と終点とが地図上に指定された状態を示す図である。
【図18】経路導出部が経路を導出するときの考え方を示す図である。
【図19】経路導出部が経路を導出する手順の一例を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第3の実施形態に係る経路算出システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
10 経路算出装置、20 ユーザインタフェイス部、30 受信部、40 現在位置導出部、50 地図情報記憶部、60 エリア間経路記憶部、70 エリア特定部、80 経路導出部、90 移動コスト調整部、100 経路算出サーバ、110 通信部、120 経路表示端末、130 受付部、140 表示部、150 通信部、190 通信ネットワーク、202 地図の全体領域、204 ノード、206 リンク、302 エリア、304 エリア、306 境界ノード、308 エリア、502 エリア間経路、504 エリア間経路、506 エリア間経路、702 始点、704 終点、1000 経路算出装置、1060 エリア間経路記憶部、1080 経路導出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部と、
異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部と、
前記地図情報記憶部を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定部と、
第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、前記エリア間経路記憶部より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出部と、
を備えることを特徴とする経路算出装置。
【請求項2】
前記リンクの情報には、各リンクの移動コストが含まれることを特徴とする請求項1に記載の経路算出装置。
【請求項3】
前記エリア間経路記憶部が格納する境界ノード間の経路情報は、あるエリアの境界ノードと他のエリアの境界ノードとの間のリンクの組み合わせであって、各リンクの移動コストの合計が相対的に小さくなるものであることを特徴とする請求項2に記載の経路算出装置。
【請求項4】
前記経路導出部は、前記地図情報記憶部を参照して、始点と第1エリアの境界ノードとを結ぶリンクの組み合わせと、第2エリアの境界ノードと終点とを結ぶリンクの組み合わせとを取得し、前記エリア間経路記憶部を参照して、第1エリアの境界ノードと第2エリアの境界ノードとを結ぶリンクの組み合わせを取得することにより、始点と終点とを結ぶリンクの組み合わせを導出することを特徴とする請求項2または3に記載の経路算出装置。
【請求項5】
前記経路導出部は、前記地図情報記憶部を参照して、始点と第1エリアの境界ノードとを結ぶリンクの組み合わせと、第2エリアの境界ノードと終点とを結ぶリンクの組み合わせとを取得し、前記エリア間経路記憶部を参照して、第1エリアの境界ノードと第2エリアの境界ノードとを結ぶリンクの組み合わせを取得することにより、始点と終点とを結ぶリンクの組み合わせを作成し、前記地図情報記憶部により保持される各リンクの移動コストを参照して、ダイクストラ法を用いることにより、各リンクの移動コストの合計が相対的に小さくなるように、始点と終点とを結ぶリンクの組み合わせを導出することを特徴とする請求項4に記載の経路算出装置。
【請求項6】
交通情報の入力を受け付けたときに、前記地図情報記憶部が格納するリンクの移動コストを調整する移動コスト調整部を、さらに備えることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の経路算出装置。
【請求項7】
交通情報の入力を受け付けたときに、
前記移動コスト調整部は、前記地図情報記憶部が格納するリンクの移動コストを調整し、
前記エリア特定部は、前記地図情報記憶部を参照して、現在位置を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアとを特定し、
前記経路導出部は、前記地図情報記憶部を参照して、現在位置と第1エリアの境界ノードとを結ぶリンクの組み合わせと、第2エリアの境界ノードと終点とを結ぶリンクの組み合わせとを取得し、前記エリア間経路記憶部を参照して、第1エリアの境界ノードと第2エリアの境界ノードとを結ぶリンクの組み合わせを取得することにより、現在位置と終点とを結ぶリンクの組み合わせを作成し、前記移動コスト調整部により調整されたリンクの移動コストを参照して、ダイクストラ法を用いることにより、各リンクの移動コストの合計が相対的に小さくなるように、現在位置と終点とを結ぶリンクの組み合わせを導出することを特徴とする請求項6に記載の経路算出装置。
【請求項8】
前記エリア間経路記憶部が格納する境界ノード間の経路情報は、あるエリアの1つの境界ノードと他のエリアの1つの境界ノードとの間の経路を特定するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の経路算出装置。
【請求項9】
経路算出サーバと、経路表示端末と、を備える経路算出システムであって、
前記経路算出サーバは、
地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部と、
異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部と、
経路を算出する始点および終点を指定する経路算出要求情報をもとに、前記地図情報記憶部を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定部と、
第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、前記エリア間経路記憶部より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出部と、
前記経路表示端末から前記経路算出要求情報を受け付け、また、前記経路表示端末に導出した経路を出力する通信部と、
を有し、
前記経路表示端末は、
ユーザから、前記経路算出要求情報の指定入力を検出する受付部と、
前記経路算出要求情報を前記経路算出サーバに出力し、また、前記経路算出サーバにより導出された経路を取得する通信部と、
取得した経路を画面表示させる表示部と、
を有することを特徴とする経路算出システム。
【請求項10】
地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定ステップと、
第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出ステップと、
を備えることを特徴とする経路算出方法。
【請求項11】
地図を、それぞれが座標情報で特定される複数のエリアに分割し、前記複数のエリアのそれぞれに含まれるノードの座標情報と、ノード間を結ぶリンクの情報とを、それぞれのエリアに対応付けて格納する地図情報記憶部を参照して、始点を含む第1エリアと、終点を含む第2エリアを特定するエリア特定機能と、
第1エリアと第2エリアを結ぶ経路情報を、異なるエリアのそれぞれの境界に位置する境界ノード間の経路情報をリンクの組み合わせとして格納するエリア間経路記憶部より取得して、始点と終点を結ぶ経路を導出する経路導出機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−2896(P2009−2896A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166217(P2007−166217)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(302049334)ジクー・データシステムズ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】