説明

繊維強化樹脂製歯車

【課題】切削加工によって歯部を形成した場合であっても、強度的に有利な歯部を有する繊維強化樹脂製歯車を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂製歯車11は、外周部に歯部14が形成された繊維強化樹脂部13を備えている。そして、繊維強化樹脂部13は、4軸三次元組み紐組織である帯状のブレーディング繊維構造体が螺旋状に巻かれて積層されることでなる環状の三次元ブレーディング繊維構造体を強化材として使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化樹脂製歯車は、噛み合い音が低く、軽量で回転慣性力が小さい等の利点を持つため、種々の分野で使用されている。そして、このような繊維強化樹脂製歯車の一例としては繊維強化樹脂製のリング状素材の外周部を歯切り加工した場合に、噛み合い面にプリプレグを構成する基材の補強繊維が渦巻き状に配向されている繊維強化樹脂歯車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された繊維強化樹脂歯車では、90°/0°配向の補強繊維を含む第1プリプレグと、±45°配向の補強繊維を含む第2プリプレグとが用いられ、歯部において最も大きな応力が生じる歯元部には90°/0°配向の補強繊維と±45°配向の補強繊維とで強化された複合強化部が形成されている。
【0004】
また、その他の繊維強化樹脂歯車としては、軟質繊維及び硬質繊維からなる2種類のプリプレグが用いられ、最外周部には加工性の良い軟質繊維が硬質繊維より相対的に多く配設されるとともに、歯元付近には硬質繊維が軟質繊維より相対的に多く配設されて構成されたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−240324号公報
【特許文献2】特開平6−91770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された繊維強化樹脂歯車を模式的に示すと、図5に示すように、歯車30の中心と直交する断面において、歯部31を構成する連続繊維からなる複数の繊維層32が互いに平行な状態でマトリクス樹脂中に配置されている。そして、切削加工で歯部を形成した際に連続する繊維が切断された状態となるとともに、各繊維層32は二次元状に結合する繊維だけで構成されており各繊維層32では繊維層の厚さ方向にのびる繊維が存在しないため、剪断方向に対する強度が弱いという問題がある。また、同様に、特許文献2の歯車においても、連続する繊維が切断された状態となるとともに、繊維層は二次元状に結合する繊維だけで構成されており各繊維層では繊維層の厚さ方向にのびる繊維が存在しないため、剪断方向に対する強度が弱いという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、切削加工によって歯部を形成した場合であっても、強度的に有利な歯部を有する繊維強化樹脂製歯車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも歯部が、繊維強化樹脂で形成された繊維強化樹脂製歯車において、前記繊維強化樹脂の強化材は、三次元ブレーディング繊維構造体であることを要旨とする。
【0008】
この発明では、三次元ブレーディング繊維構造体は異なる4方向以上の複数方向に配列された連続繊維から構成されるため、切削されても三次元ブレーディング繊維構造体には連続性が保たれる繊維が複数存在する。したがって、切削加工して歯部を形成した場合であっても、三次元ブレーディング繊維構造体において連続性が保たれている複数の繊維同士は互いに絡み合った状態のままであり、歯部における各繊維同士の三次元状の結合は保たれる。したがって、歯部において三次元ブレーディング繊維構造体を構成する各繊維がバラバラになることは抑制されるため、二次元状に結合する繊維だけで構成された繊維組織を強化材として用いた場合よりも歯部の強度が低下することを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記三次元ブレーディング繊維構造体は帯状に形成され、
前記三次元ブレーディング繊維構造体は螺旋状に巻かれて積層されて環状に形成された状態で前記繊維強化樹脂の強化材として使用されており、前記三次元ブレーディング繊維構造体の幅は、前記歯部の歯丈より大きいことを要旨とする。
【0010】
この発明では、歯部の歯丈よりも幅が大きい三次元ブレーディング繊維構造体を製作すれば、三次元ブレーディング繊維構造体は歯部全体に亘って存在することになり、強化材としての三次元ブレーディング繊維構造体を歯部の歯元部にまで配置することができる。したがって、歯部において大きな応力が生じやすい歯元部の強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切削加工によって歯部を形成した場合であっても、強度的に有利な歯部を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を平歯車に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。図1に示すように、繊維強化樹脂製歯車11はその中心部に設けられた芯金12と、芯金12の外周を囲むようにして芯金12と一体的に設けられるとともに外周部に複数の歯部14が形成された繊維強化樹脂部13とから構成されている。
【0013】
繊維強化樹脂部13は、繊維組織が4軸三次元組み紐組織である三次元ブレーディング繊維構造体を強化材として使用している。なお、4軸三次元組み紐組織とは、異なる4方向に配列された各連続繊維が交差しつつ結合されてなる繊維組織のことを意味する。三次元ブレーディング繊維構造体は、繊維強化樹脂部13の強化材として使用されている状態では環状であるとともに、その外周部分が歯部14の歯先部15に対応している。図2に示すように、三次元ブレーディング繊維構造体を構成する一部の連続繊維16は、繊維強化樹脂製歯車11の中心軸Pを直交する平面に対して交差し、なおかつ歯部14の歯先部15から歯元部17を経由して繊維強化樹脂部13の内周側に向かって連続してのびている。なお、図2では、図面の都合上、三次元ブレーディング繊維構造体を構成する連続繊維のうち一本のみ代表して図示している。そして、強化材としての三次元ブレーディング繊維構造体は、帯状の三次元ブレーディング繊維構造体18(図3参照)が螺旋状に巻かれて積層されることで構成されている。なお、「螺旋状に巻かれて積層される」とは、帯状の三次元ブレーディング繊維構造体が同一平面で巻かれて積層方向が歯丈方向と平行になるものでなく、帯状の三次元ブレーディング繊維構造体が歯車の中心軸P方向に沿うように積層され、環状に形成された三次元ブレーディング繊維構造体の積層方向が歯部の歯丈方向と直交する方向になるものを意味する。
【0014】
図3に示すように、三次元ブレーディング繊維構造体18は、その長手方向に対して所定の配向角をなすように配列された多数の連続繊維16によって構成されている。具体的には、三次元ブレーディング繊維構造体18は、異なる4方向に配列された各連続繊維16が交差しつつ結合されることで構成されるとともに、厚さ方向に平行な平面及び幅方向に平行な平面で明確に分けられる層が存在しない構造となっている。また、三次元ブレーディング繊維構造体18は、その幅Tが歯部14の歯丈D(図2参照)よりも大きくなるように形成されている。三次元ブレーディング繊維構造体18は、例えば特開平2−259148号公報、特開平2−307949号公報に開示されている三次元ブレーダ(ロータ・キャリア方式三次元織物織機)により複数の連続繊維が編成されることで形成されている。なお、三次元ブレーダは、キャリア軌道面に沿って多数行、多数列に配列された図示しないキャリア駆動ユニットを備え、該駆動ユニットにより、ボビンを支承する図示しない糸状キャリアに所要の軌跡を走行するように運動を与え、それらのボビンから解除した繊維を編成するものである。
【0015】
ここで、三次元ブレーディング繊維構造体18を構成する連続繊維は、繊維強化樹脂製歯車11に要求される物性によって選択されるが、高強度が要求される場合は、例えば、アラミド繊維、炭素繊維等が使用される。繊維強化樹脂部13のマトリクス樹脂としてはモノマーキャストナイロン樹脂が使用されている。また、三次元ブレーディング繊維構造体18を構成する各連続繊維16の配向角は、繊維強化樹脂製歯車11に要求される物性によって選択される。
【0016】
次に繊維強化樹脂製歯車11の製造方法を説明する。
まず、例えば特開平2−259148号公報、特開平2−307949号公報に開示されている三次元ブレーダ(ロータ・キャリア方式三次元織物織機)により、連続繊維16を編成する工程を実施する。この工程では、三次元ブレーダによって複数の連続繊維16を編成することで、帯状で、なおかつ、長さ方向と直交する方向の断面が矩形状である三次元ブレーディング繊維構造体18を形成する。そして、三次元ブレーディング繊維構造体18が、目的とする長さにまでなると、連続繊維16の編成を終了し、その後、図示しない製紐部(キャリア)と三次元ブレーディング繊維構造体18の組み上げ点との間に存在する連続繊維16を図示しない切断装置によって切断する。すると、図3に示すように、長尺で帯状の三次元ブレーディング繊維構造体18を得る。なお、目的とする三次元ブレーディング繊維構造体18の長さとは、繊維強化樹脂製歯車11の外周より長く、なおかつ、三次元ブレーディング繊維構造体18を螺旋状に巻いて環状に構成した場合に、環状の三次元ブレーディング繊維構造体18の厚みが繊維強化樹脂製歯車11の厚みと同じになるような長さのことを意味する。また、帯状の三次元ブレーディング繊維構造体18はその幅Tが歯部14の歯丈D(図2参照)より大きくなるように形成されている。
【0017】
次に、三次元ブレーディング繊維構造体18への樹脂の含浸作業を行う。樹脂の含浸には、例えば、レジントランスファーモールディング(RTM)法を採用する。RTM法では、図示しないキャビティに芯金12と同じ断面形状の位置決め突部が形成されている図示しない成形型を用いる。そして、キャビティ内において、図4(a)に示すように、帯状の三次元ブレーディング繊維構造体18を位置決め突部に対して螺旋状に巻くように変形させる。そして、螺旋状に巻いた三次元ブレーディング繊維構造体18を複数層に積層すると、図4(b)に示すように、三次元ブレーディング繊維構造体18は円環状の状態になる。ここで、繊維強化樹脂製歯車11のリング幅S(図1のみに図示)は、三次元ブレーディング繊維構造体18の幅Tに左右され、繊維強化樹脂製歯車11の厚さは長尺の三次元ブレーディング繊維構造体18を積層して環状に形成した後の三次元ブレーディング繊維構造体18の厚さHによって決まる。その後、上型を下降させてキャビティ内に配置された三次元ブレーディング繊維構造体18を押圧し圧縮した状態で、図示しない注入孔からキャビティ内へポリアミド(ナイロン)のモノマーを注入して三次元ブレーディング繊維構造体18に含浸させるとともに加熱して重合させた後、成形金型を冷却することにより円環状の繊維強化樹脂成形体を得る。なお、ポリアミドのモノマーとしては、例えば、ε−カプロラクタムが使用される。
【0018】
このようにして製作された繊維強化樹脂成形体は繊維強化樹脂製歯車11と同じ厚さを有し、この繊維強化樹脂成形体の中央部に芯金12を加熱圧入することで芯金12を中央部に有する歯車用成形体を形成する。そして、この歯車用成形体の外周部に切削加工で平歯車の歯部14を形成することにより繊維強化樹脂製歯車11が形成される。
【0019】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)繊維強化樹脂製歯車11は、外周部に歯部14が形成された繊維強化樹脂部13を備えている。そして、繊維強化樹脂部13は、環状の三次元ブレーディング繊維構造体18を強化材として使用している。そして、切削加工して歯部14を形成した場合であっても、三次元ブレーディング繊維構造体18には連続性が保たれる繊維16が複数存在し、連続性が保たれている複数の繊維16同士は互いに絡み合った状態のままであるため、歯部14における各繊維16同士の三次元状の結合は保たれる。したがって、歯部14において三次元ブレーディング繊維構造体18を構成する各連続繊維16がバラバラになることを抑制できるため歯部14の強度低下、とくに剪断力に対する強度低下を抑制することができる。
【0020】
(2)三次元ブレーディング繊維構造体18を構成する一部の連続繊維16は、歯部14の歯先部15から歯元部17を経由して繊維強化樹脂部13の内周側に向かってのびている。したがって、繊維強化樹脂部13を切削加工して歯部14を形成することで、繊維強化樹脂製歯車11の周方向に相当する角度に配列されている連続繊維16が切断されても、三次元ブレーディング繊維構造体18を構成する一部の連続繊維16は、連続した状態のままで残る。そのため、歯部14の強度が低下することを抑制できる。
【0021】
(3)帯状の三次元ブレーディング繊維構造体18は螺旋状に巻かれて積層されることで環状に形成され、その状態で繊維強化樹脂部13の強化材として使用されている。そして、三次元ブレーディング繊維構造体18の幅Tは歯部14の歯丈Dより大きいため、三次元ブレーディング繊維構造体18は歯部14全体に亘って存在することになり、強化材としての三次元ブレーディング繊維構造体18を歯部14の歯元部17にまで配置することができる。したがって、歯部14において大きな応力が生じやすい歯元部17の強度を向上させることができる。
【0022】
(4)繊維強化樹脂部13は螺旋状に巻かれて積層されることで環状に形成された三次元ブレーディング繊維構造体18を強化材として使用している。したがって、歯部14では、歯部14の歯丈方向における繊維層間の継ぎ目は存在しないため、歯部14の剪断力に対する強度を向上させることができる。
【0023】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 三次元ブレーディング繊維構造体の構造についてはとくに限定されない。例えば、三次元ブレーディング繊維構造体を構成する連続繊維が全て三次元ブレーディング繊維構造体の各表面で折り返す構造にしてもよいし、三次元ブレーディング繊維構造体の長さ方向に沿って配列された連続繊維を含む構造にしてもよい。
【0024】
○ 三次元ブレーダを用いて形成する帯状の三次元ブレーディング繊維構造体の長さについては、少なくとも一個分の繊維強化樹脂成形体を得ることができる長さであれば、とくに限定されない。例えば、環状に形成した状態における三次元ブレーディング繊維構造体の厚みが繊維強化樹脂製歯車11の厚みの複数倍となるような長さの三次元ブレーディング繊維構造体をまとめて形成する。そして、その三次元ブレーディング繊維構造体を、環状に形成した状態における厚みが繊維強化樹脂製歯車11の厚みと同じになる長さで切断して用いてもよい。この場合も、連続繊維が互いに絡み合う構造が保たれるため、切り出された歯車それぞれが同様の効果を有する。
【0025】
○ 環状に形成された三次元ブレーディング繊維構造体の積層方向は、歯部の歯丈方向に対して交差する方向であってもよい。この場合、環状に形成された三次元ブレーディング繊維構造体における層の幅の少なくとも歯丈方向成分が歯部の歯丈以上となるように予め見越して、帯状の三次元繊維構造体の幅を設定するとよい。ただし、三次元ブレーディング繊維構造体の積層方向を歯部の歯丈方向に対して交差する方向とする場合、歯部の歯丈方向に対する積層方向の交差角度は45度以上90度未満となるように設定する。
【0026】
○ 三次元ブレーディング繊維構造体を4軸三次元組み紐組織に構成する代わりに、例えば、5軸三次元組み紐組織となるように構成してもよいし、6軸以上の三次元組み紐組織に構成してもよい。
【0027】
○ 三次元ブレーディング繊維構造体を構成する連続繊維は、アラミド繊維や炭素繊維に限らず、要求物性によってはポリエステル繊維や無機繊維であるガラス繊維を使用してもよい。そして、連続繊維としてガラス繊維を使用した場合、アラミド繊維や炭素繊維に比べて太さが大きいため、同じ目の粗さで三次元組み紐として組織された場合に繊維同士の間に存在する隙間が大きくなる。したがって、ガラス繊維からなる三次元ブレーディング繊維構造体は、樹脂の含浸性が良好になる。また、三次元ブレーディング繊維構造体を構成する連続繊維としてガラス繊維を用いる場合には、樹脂を含浸させる前にシランカップリング剤を用いて前処理を行うとよい。また、連続繊維としてガラス繊維を用いれば、アラミド繊維や炭素繊維に比べて経済的に有利である。その他に、三次元ブレーディング繊維構造体を構成する連続繊維として、超高分子量ポリエチレン繊維やポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)等の高強度繊維を使用してもよい。
【0028】
○ 単一の材質の連続繊維のみで三次元ブレーディング繊維構造体を組織する代わりに、異種繊維からなる連続繊維を組み合わせて構成してもよい。例えば、ガラス繊維からなる連続繊維と有機繊維からなる連続繊維を組み合わせて構成してもよい。
【0029】
○ 太さが同じ連続繊維のみで三次元ブレーディング繊維構造体を構成する代わりに、太さの異なる連続繊維を組み合わせて三次元ブレーディング繊維構造体を構成してもよい。
【0030】
○ 帯状の三次元ブレーディング繊維構造体から環状の三次元ブレーディング繊維構造体を形成する作業と、三次元ブレーディング繊維構造体に樹脂を含浸させる作業との間に、環状の三次元ブレーディング繊維構造体を焼き固める作業を加えてもよい。この場合、例えば、成形型の外部で、帯状の三次元ブレーディング繊維構造体を螺旋状に巻いて変形させつつ積層状態にして環状の三次元ブレーディング繊維構造体とした後、三次元ブレーディング繊維構造体を炉の中に配置して焼き固め三次元ブレーディング繊維構造体の形状を環状に保持させたうえで、炉から取り出し成形型内に配置する。このように構成すれば、三次元ブレーディング繊維構造体の形状がくずれてしまうことを抑制できる。
【0031】
○ RTM法によって繊維強化樹脂成形体を成形する代わりに、遠心成形によって繊維強化樹脂成形体を成形してもよい。この場合、例えば、分割可能なマンドレルの外面に螺旋状に帯状の三次元ブレーディング繊維構造体を巻き付けて円筒状の三次元ブレーディング繊維構造体としたものを手で保持しつつ、蓋を開放した状態で成形型内に配置する。次に、マンドレルを分割して取り外し、その後、蓋を閉じて成形型を密閉状態とするとともに蓋で三次元ブレーディング繊維構造体を押圧して圧縮することで形状を保持する。そして、遠心成形法によって三次元ブレーディング繊維構造体に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂成形体を成形した後、成形型から取り出して、円筒状の繊維強化樹脂筒状体を繊維強化樹脂製歯車と同じ厚みに切断すれば、円環状の繊維強化樹脂成形体を得ることができる。
【0032】
○ 三次元ブレーディング繊維構造体を螺旋状に巻いて積層することで環状の三次元ブレーディング繊維構造体を構成する代わりに、三次元ブレーダによって平板状の三次元ブレーディング繊維構造体を形成し、平板状の三次元ブレーディング繊維構造体を変形させて環状の三次元ブレーディング繊維構造体を構成してもよい。この場合、例えば、一辺の長さが繊維強化樹脂製歯車の厚みと等しい平板状の三次元ブレーディング繊維構造体を形成し、この平板状のブレーディング繊維構造体を芯材に対して巻き付ける。そして、繊維強化樹脂製歯車のリング幅と同じリング幅を有する環状の三次元ブレーディング繊維構造体を構成して、繊維強化樹脂部の強化材として用いる。また、環状そのままの形をブレーディングすることで環状の三次元ブレーディング繊維構造体を形成し、そのまま、繊維強化樹脂部の強化材として用いてもよい。
【0033】
○ 繊維強化樹脂部に用いるマトリクス樹脂はモノマーキャストナイロン樹脂に限らず、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としてはポリアミド以外の他のエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネートやポブチレンテレフタレートやポリアセタール等を使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やビニールエステル系樹脂が使用される。ポリマー状態の熱可塑性樹脂を三次元ブレーディング繊維構造体に含浸させる場合は、成形体をマトリクス樹脂の溶融温度より高温に加熱した状態で溶融状態の熱可塑性樹脂を加圧状態で注入する。
【0034】
○ 繊維強化樹脂製歯車は芯金12と繊維強化樹脂部13との間に樹脂部を設けた構成にしてもよい。また、芯金12を設けずに、繊維強化樹脂製歯車全体を繊維強化樹脂のみで構成してもよい。
【0035】
○ 円環状の繊維強化樹脂成形体を切削加工して歯部を形成する代わりに、円環状の繊維強化樹脂成形体をプレス成形して歯部を形成してもよい。
○ 本発明の繊維強化樹脂製歯車を平歯車に適用する代わりに、例えば、遊星歯車、はすば歯車、ウォームホイールに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態における繊維強化樹脂製歯車の模式平面図。
【図2】本実施形態における繊維強化樹脂製歯車の部分模式斜視図。
【図3】三次元ブレーディング繊維構造体を示す部分模式斜視図。
【図4】(a)は三次元ブレーディング繊維構造体を螺旋状に変形させた状態を示す模式図、(b)は環状に形成された三次元ブレーディング繊維構造体を示す模式斜視図。
【図5】従来技術の繊維強化樹脂歯車の模式側面図。
【符号の説明】
【0037】
D…歯部の歯丈、T…三次元ブレーディング繊維構造体の幅、11…繊維強化樹脂製歯車、13…繊維強化樹脂部、14…歯部、18…三次元ブレーディング繊維構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも歯部が、繊維強化樹脂で形成された繊維強化樹脂製歯車において、
前記繊維強化樹脂の強化材は、三次元ブレーディング繊維構造体であることを特徴とする繊維強化樹脂製歯車。
【請求項2】
前記三次元ブレーディング繊維構造体は帯状に形成され、
前記三次元ブレーディング繊維構造体は螺旋状に巻かれて積層されて環状に形成された状態で前記繊維強化樹脂の強化材として使用されており、
前記三次元ブレーディング繊維構造体の幅は、前記歯部の歯丈より大きいことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂製歯車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−52613(P2009−52613A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218273(P2007−218273)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】