説明

耐熱性吸音断熱材

【課題】 自動車マフラー等のように温度が400〜450℃になる場所に設置された際でも、繊維の脱落や熱分解のおそれがなく、かつ、吸音性と断熱性に優れる耐熱性吸音断熱材を提供すること。
【解決手段】 高純度シリカアルミナ系セラミック繊維と無機粒子とを含むシート状の耐熱部材に、アラミド繊維或いはPBO繊維等の耐熱性有機繊維の短繊維をニードルパンチングして得られたニードルパンチ不織布が積層されてなることを特徴とする耐熱性吸音断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性吸音断熱材に関し、特に、4輪または2輪の自動車マフラーの消音に好適なシート状の耐熱性吸音断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に4輪車や2輪車では、内燃機関から発生する音を消音するための吸音・遮音材が使用されている。排気マフラの近傍は、登坂走行時の高負荷や高速走行時の高回転数の条件下では、かなりの高温になる場合がある。従来より、グラスウールやステンレスウール等を吸音材として使用する提案がなされているが、グラスウールは大気中に飛散して大気汚染に繋がるおそれがあり、一方、ステンレスウールはニードリングした時の形状保持性に劣る。
【0003】
そのため、ロックウール等の無機繊維をフェノール樹脂で固めたものを吸音体とし、高温接触面側を有孔金属板で被覆した耐熱吸音材が提案されている(特許文献1等)。しかしながら、フェノール樹脂の耐熱性が劣るために経時で無機繊維が徐々に分離し、吸音性能が低下するという問題がある。
【0004】
また、4輪車や2輪車において排気温度800℃前後となる部位にも適用できる吸音材として、ステンレス鋼繊維をニードルパンチしたシートを、自動車マフラを構成する多孔パイプに外装することが提案されている(特許文献2)。しかしながら、ステンレス鋼繊維は上記したように、ニードリングした時の形状保持性が悪く、経時で繊維の絡み合いがほぐれ、繊維が脱落するという問題がある。
【特許文献1】特開平1−211608号公報
【特許文献2】特開平8−100627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、自動車マフラー等のように温度が400〜450℃になる場所に設置された際でも、繊維の脱落や熱分解のおそれがなく、かつ、吸音性と断熱性に優れる耐熱性吸音断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、セラミック繊維と無機粒子とを含む低通気度のシート状不織布に、1種又は2種以上の耐熱性有機繊維の短繊維から構成された高通気度のニードルパンチ不織布を積層することによって、熱放流が促進されて断熱性が向上すると共に、不織布を夫々単独で使用したときよりも吸音性(特に低周波領域における吸音性)が飛躍的に向上し、しかも、吸音断熱材を軽量化できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1)セラミック短繊維と無機粒子とを含むシート状の耐熱部材に、1種又は2種以上の耐熱性有機繊維の短繊維をニードルパンチングして得られたニードルパンチ不織布が積層されてなることを特徴とする耐熱性吸音断熱材、
2)耐熱性吸音断熱材におけるニードルパンチ不織布の通気度が耐熱部材の通気度よりも大きいことを特徴とする前記1)に記載の耐熱性吸音断熱材、
3)前記耐熱部材は、厚さが50mm以下、かつ、密度が0.05〜0.5g/cmの範囲であることを特徴とする前記1)又は2)に記載の耐熱性吸音断熱材、
4)前記ニードルパンチ不織布は、厚さが3〜50mm、かつ、密度が0.01〜0.1g/cmの範囲であることを特徴とする前記1)〜3)のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材、
5)前記耐熱性有機繊維が、アラミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維及びポリイミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維であることを特徴とする前記1)〜4)のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材、
6)前記セラミック繊維がシリカアルミナ系繊維、アルミナ繊維又はムライト繊維であることを特徴とする前記1)〜5)のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材、
7)前記無機粒子がアルミナ粒子であることを特徴とする前記1)〜6)のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材、
8)前記耐熱部材が、セラミック短繊維が有機又は無機バインダーで結合された構造を有することを特徴とする前記1)〜7)のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材、及び、
9)前記耐熱部材が音源側に配されてなることを特徴とする前記1)〜8)のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セラミック短繊維と無機粒子とを含む耐熱部材に、耐熱性有機繊維からなり耐熱性及び通気性に優れかつ軽量なニードルパンチ不織布を積層しているため、軽量、かつ、断熱性と吸音性に優れた耐熱性吸音断熱材を提供することができる。また、ニードルパンチ不織布を積層しているため、耐熱部材からのセラミック繊維等の脱落が生じることなく取扱性に優れている。本発明の耐熱性吸音断熱材は、400〜450℃の高温条件下でも熱劣化が無く安定した吸音性能を発揮するので、4輪車や2輪車の排気マフラー等の吸音材として用いることにより、車外騒音を大幅に低減することができる。
【0009】
また、本発明の耐熱性吸音断熱材は、上記効果に加えて、遮音性、難燃性、機械的強度にも優れているので、耐熱クッション材、耐熱シール材、耐熱搬送用ベルト等として、照明装置、壁材、各種配管周りの断熱・吸音用途に用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の耐熱性吸音断熱材で用いる耐熱部材は、セラミック短繊維と無機粒子とを必須成分として含む。更に、石綿、ガラス繊維、シリカ繊維等の無機繊維や、炭素繊維、金属繊維等の短繊維を含んでいてもよいが、石綿、ガラス繊維などは燃焼時の有害ガス発生のおそれがなく、断熱性及び吸音性の点でも有利である。該耐熱部材は、セラミック短繊維と無機粒子とが無機バインダーで結合された構造を有しているもの、或いは、セラミック繊維と無機粒子が有機バインダーで結合された成形体を乾燥、焼成したものなどが例示される。これらの耐熱部材は、特開2002−284567号公報段落[0033]〜[0046]等に記載の方法により得られる
【0011】
セラミック繊維は、従来公知の各種セラミック繊維を用いることができ、例えば、精製されたアルミナ・シリカ系の鉱物を主原料として繊維化したものを短繊維状に切断したチョップドストランドや、ウイスカー等が挙げられる。チョップドストランドとしては、シリカアルミナ系繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維等が挙げられる。また、ウイスカーとしては、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、炭化珪素ウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、アルミナウイスカー等が挙げられる。
【0012】
なかでも、アルミナ質の含有量が70質量%以上の高アルミナ質のシリカアルミナ系繊維、アルミナ繊維及びムライト繊維は、耐熱性が良好であり、好ましい。
【0013】
また、無機粒子としては、アルミナ粒子が好ましい。なかでも、アルミナ質の含有量が70質量%を超える高アルミナ質粒子が好ましい。
【0014】
また、上記の無機バインダーとしては、コロイダルシリカ、アルミナゾルが好ましい。
【0015】
耐熱部材を製造するには、先ず、上記原料に水と有機バインダー(例えば澱粉)を加えて混合して得たスラリーを、吸引脱水成形法により成形し、板状の成形体を得る。この成形体を乾燥させることにより耐熱部材が得られる。この状態では、有機バインダーとコロイダルシリカの分子間力によってセラミック繊維と無機粒子とが相互に結合され、成形体となっている。この状態でも耐熱部材として用いることができるが、更に焼成し、焼成品としてもよい。焼成は800〜1500℃の温度で1時間〜5時間の条件で行えばよい。焼成品は、コロイダルシリカとアルミナ成分とが反応してムライト化し、ムライト質によって結合された状態となっている。使用時に加熱されて有機バインダーの揮発が問題となる場合には、予め焼成し、有機バインダーを除去したものが好適である。
【0016】
このようにして得られた耐熱部材は、厚さが50mm以下であることがが好ましく、より好ましくは1〜40mm、さらに好ましくは1〜30mmである。耐熱部材の密度は、0.05〜0.5g/cmの範囲である。耐熱部材が厚くなるほど吸音性や断熱性は良好になるが、軽量化に反し、マフラー等に巻回する際の取扱性が悪化する。一方、耐熱部材が薄すぎる場合は低周波領域における吸音性が低下する。
【0017】
本発明の耐熱性吸音断熱材で用いる耐熱性有機繊維は、溶融温度または熱分解温度が370℃以上の繊維が好ましく用いられる。該耐熱性有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズチアゾール繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルケトン繊維、ポリエーテルケトンケトン繊維、ポリアミドイミド繊維及び耐炎化繊維から選ばれた1種または2種以上の繊維が挙げられる。これらの耐熱性有機繊維は、従来公知のものや、公知の方法またはそれに準ずる方法に従って製造したものを全て使用することができる。
【0018】
耐熱性有機繊維の断面形状は、特に限定されず、真円断面状であってもよいし、異形断面状であってもよい。例えば楕円状、中空状、X断面状、Y断面状、T断面状、L断面状、星型断面状、葉形断面状(例えば三つ葉形状、四葉形状、五葉形状等)、その他の多角断面状(例えば三角状、四角状、五角状、六角状等)などの異形断面状であってもよい。
【0019】
上記の耐熱性有機繊維の中でも、低収縮性で加工性が良く、しかも高温で溶融しない、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維及びポリイミド繊維が好ましく、さらに好ましいのはアラミド繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維である。
【0020】
アラミド繊維には、パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維とがあり、パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン株式会社、東レ・デュポン株式会社製、商品名「KEVLAR」(登録商標))、コポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名「テクノーラ」(登録商標))などがあり、メタ系アラミド繊維としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(米国デュポン社製商品名「NOMEX(登録商標)」、帝人株式会社製商品名「コーネックス(登録商標)」)などがある。これらのアラミド繊維の中でも、耐熱性に優れる点よりパラ系アラミド繊維が好ましい。
【0021】
上記のアラミド繊維は、必要に応じて、その繊維表面および繊維内部にフィルムフォーマ、シランカップリング剤および界面活性剤が付与されていてもよい。これらの表面処理剤のアラミド繊維に対する固形分付着量は、0.01〜20質量%の範囲であることが望ましい。
【0022】
1種又は2種以上の耐熱性有機繊維から構成される不織布は、耐熱性有機繊維の短繊維を従来公知の方法によりニードルパンチングして得られるニードルパンチ不織布が用いられる。ニードルパンチ不織布は、通気度が高いため断熱性が良好で、吸音性も優れ、低密度であるため吸音性能を損なうことなく吸音断熱材の軽量化を達成できる。該ニードルパンチ不織布は少なくとも1層用いればよく、これを積層したものを使用することもできる。
【0023】
短繊維の繊維長および繊度は特に限定されず、加工性や吸音特性等により適宜決定することができる。短繊維の繊度は、通常0.5〜30dtex、好ましくは1.0〜20dtex、より好ましくは1.0〜10dtexである。短繊維の繊維長は10〜100mm、特に好ましくは20〜80mmである。前記耐熱性有機繊維は、同種又は異種の繊維で、繊度や繊維長の異なる繊維を混合して用いることもできる。この場合、繊維の混合比は任意であり、用途や目的に合せて適宜決定することができる。
【0024】
ニードルパンチ不織布は、密度が0.01〜0.1g/cmの範囲であることが、吸音性能及び断熱性の点より好ましい。密度が小さすぎると吸音性及び断熱性が低下し、大きすぎても耐摩耗性および加工性が低下する。より好ましくは0.02〜0.08g/cmの範囲である。このように、低通気度の耐熱部材に積層する不織布の密度を制御して高通気度にすることによって、熱源からの熱放流が促進され、その結果、吸音断熱材に優れた断熱性能を付与することができる。
【0025】
本発明において不織布の厚みは、厚いほど吸音性能が良くなるが、経済性、扱い易さ、吸音材としてのスペース確保等の点から3〜50mm程度が好ましく、さらに好ましくは5〜30mmである。
【0026】
本発明の耐熱性吸音断熱材において用いられる不織布は、耐熱性有機繊維の短繊維からなるウエブをニードルパンチ法によって交絡させ、一体化したものである。ニードルパンチング処理を施すことにより、ウエブの短繊維を交絡させることで該短繊維の脱落を防止することができ、また、適度な通気度を有するとともに、耐熱部材からのセラミック短繊維等の脱落を防止することが可能な不織布を容易に製造することができる。
【0027】
ニードルパンチング処理は、ウエブの片面又は両面のいずれに施してもよい。パンチング密度は、少なすぎると短繊維の交絡が不十分となり、多すぎると不織布の通気性が低下して断熱効果や吸音効果が損なわれてしまうため、50〜300回/cm程度が好ましく、より好ましくは50〜100回/cmである。
【0028】
本発明において、ニードルパンチング処理は、従来と同様のニードルパンチング装置を用いて、従来のニードルパンチング方法に従って行うことができる。
【0029】
耐熱部材と不織布の積層は、非接着状態でもよいが、吸音材の剥離による吸音性能の低下を防止するため、結合させて積層することが好ましい。耐熱部材と不織布の積層は接着剤を使用しない方法では縫合、ニードルパンチなどによる他、台付き金属製接合具を表皮材と複合繊維構造体を貫通させたあと、先端部に別の穴あき金属板を通し、台付き金属製接合部の先端を折り曲げて接合する方法も採用することができる。また、結束機具を用いて固定部材を取り付ける方法も採用することができ、例えばバノックピン(登録商標)(日本バノック社製)などを挙げることができる。
【0030】
本発明の耐熱性吸音断熱材において、耐熱部材は音源(マフラー等)側に配置されていることが、優れた吸音性と断熱性を発揮させることができる点より、好ましい。図1は、自動車マフラー2に耐熱性吸音断熱材1を巻回して使用したときの一実施形態を示す断面概略図(図1(a))と円内の部分拡大断面図(図1(b))である。図1中、11は耐熱部材、12は不織布である。耐熱性吸音断熱材は、耐熱部材11をマフラー側にして取付け、外側に不織布を配置することにより、耐熱部材を構成する短繊維や無機粒子の脱落を抑えることができる。また、耐熱部材と不織布との間に、上記の耐熱性有機繊維から形成されるペーパー類(アラミドペーパー等)を介在させてもよい。
【0031】
本発明の耐熱性吸音断熱材は、必要に応じて染料や顔料で着色されていてもよい。着色方法として、紡糸前に染料や顔料をポリマーと混合して紡糸した原着糸を使用してもよく、各種方法で着色した繊維を用いてもよい。耐熱性吸音断熱材を染料や顔料で着色してもよい。
【0032】
本発明の耐熱性吸音断熱材は、その目的や用途に合せて公知の方法等を適用して適宜な大きさ、形状等に加工することにより種々の用途に用いることができ、高度な耐熱性と吸音性と断熱性が求められる用途の全てに用いることができる。
【0033】
例えば、自動車、電車、貨車、船舶、航空機等の内燃機関の消音や遮音;電気掃除機、換気扇、電気洗濯機、電気冷蔵庫、冷凍庫、電気衣類乾燥機、電気ミキサー・ジューサー、エアコン(エアーコンディショナー)、ヘアードライヤー、電気かみそり、空気清浄器、電気除湿器、電気芝刈機等の電化製品の消音や遮音;照明装置の消音や遮音;建築用の壁材;各種配管廻り;ブレーカ(ケーシングの内張等)等の各種用途に用いることができる。特に高温での耐熱性と吸音性能が要求される2輪車や4輪車のエンジンルームや排気マフラーの吸音断熱材として使用することにより、騒音を大幅に低減させることができる。
【0034】
さらに、本発明の耐熱性吸音断熱材は、例えば非常に微細なサンプルなどを観察する触針型顕微鏡、電子顕微鏡等において測定室の空気振動などによりサンプル固定台、機器そのものの微少な揺れ等で観察、写真撮影が困難な場合にも、遮音・吸音性能が優れるため大きな効果を発揮することができる。
【0035】
また、コンプレッサーやエァーポンプ音の遮音、吸音についても、ポンプにかぶせる金属製などのBOXと一緒に耐熱性吸音断熱材を併用することにより、大きな吸音効果が得られる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における各特性値の測定方法は次の通りである。
【0037】
[吸音性]
JIS A 1409 「残響室法吸音率の測定方法」に準じ、福井県工業技術センター設置の残響室法吸音率測定装置を用い、残響室容積38.9m、表面積68.3m、サンプルの面積5.0mで試験した。吸音性は500Hz時の吸音率で下記のように評価した。
◎:80%以上
○:50%以上
△:50%未満
【0038】
[断熱性]
作成した吸音断熱材を、温度が350〜450℃の熱版に断熱部材が熱版側になるように取付け、熱版からの距離とそのポイントの温度を測定することにより、断熱性を評価した。
【0039】
[遮音性]
JIS A 1416 「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に準じ福井県工業技術センター設置の透過損失測定装置を用い、音源側(残響室)実験室容積38.9m、表面積68.3m、無響室(受音室)側実験室容積159.0m、表面積177.0m、サンプルの面積0.8m×0.8m=0.64mで試験した。遮音性は5000Hz時の透過損失で下記のように評価した。
◎:50dB以上
○:25dB以上
△:25dB未満
【0040】
[取扱性]
吸音断熱材取扱い時におけるセラミック繊維の脱落の有無を評価し、脱落の無い場合を良好、有る場合を不良とした。
【0041】
[厚さ]
圧縮硬さ試験器(株式会社大栄科学精器製作所製)を用い、荷重が0.1g/cm時の厚さを測定した。
【0042】
[通気量]
JIS L−1096のフラジール法に基づいて測定した。
【0043】
(実施例1)
東レ・デュポン(株)製のKEVLAR(登録商標)ステープル(1.5dtex×51mm)を用い、通常のニードルパンチ方法により、厚さ11.5mm、目付510g/m、密度0.044g/cmのKEVLAR不織布を作成した。
この不織布に、厚さ12.5mm、目付1594g/m、密度0.123g/cmの高純度シリカアルミナ系断熱部材(ニチアス株式会社製「ファインフレックスブランケット」)を積層し、不織布と耐熱部材を金属ピンで結合することにより積層一体化して吸音断熱材を得た。
【0044】
(実施例2)
厚さ90μm、目付57g/m、通気量16cc/cm/secのKEVLAR(登録商標)100%ペーパーを、実施例1で用いた不織布と断熱部材の間に介在させ、これらを実施例1と同様の方法で積層一体化して吸音断熱材を得た。
【0045】
(実施例3)
実施例1で作成したKEVLAR不織布に、厚さ25mm、目付3322g/m、密度0.123g/cmの高純度シリカアルミナ系断熱部材(ニチアス株式会社製「ファインフレックスブランケット」)を積層し、不織布と耐熱部材を金属ピンで結合することにより積層一体化して吸音断熱材を得た。
【0046】
(実施例4)
実施例2で用いたものと同じKEVLAR(登録商標)100%ペーパーを、実施例3で用いた不織布と断熱部材の間に介在させ、これらを実施例3と同様の方法で積層一体化して吸音断熱材を得た。
【0047】
(比較例1)
実施例1で用いた東レ・デュポン(株)製のKEVLAR(登録商標)ステープル(1.5dtex、×51mm)を用い、実施例1と同様の条件にて通常のニードルパンチ方法で厚さ11.5mm、目付510g/m、密度0.044g/cmのKEVLER不織布を得た。この不織布に実施例2で用いたKEVLAR(登録商標)100%ペーパーを、実施例1と同様の方法で積層一体化して吸音断熱材を得た。
【0048】
(比較例2)
実施例1で用いた東レ・デュポン(株)製のKEVLAR(登録商標)ステープル(1.5dtex、×51mm)を用い、実施例1と同様の条件にて通常のニードルパンチ方法で作成した、厚さ11.5mm、目付510g/m、密度0.044g/cmのKEVLER不織布を用いた。
【0049】
(比較例3)
厚さ12.5mm、目付1594g/m、密度0.123g/cmの高純度シリカアルミナ系断熱部材(ニチアス株式会社製「ファインフレックスブランケット」)を用いた。
【0050】
(比較例4)
厚さ25mm、目付3322g/m、密度0.123g/cmの高純度シリカアルミナ系断熱部材(ニチアス株式会社製「ファインフレックスブランケット」)を用いた。
【0051】
実施例1〜4及び比較例1〜4の吸音断熱材について、上記の評価方法に従い性能評価を行った。その結果を吸音断熱材の特性値と併せて表1に示す。また、各吸音断熱材の吸音特性(残響室吸音率)を図2、遮音特性(透過損失)を図3に示す。
【0052】
表1及び図2の結果から、本発明の吸音断熱材はセラミック繊維の脱落がなく取扱性が良好で、軽量性、断熱性及び吸音性に優れ、特に低周波数領域における吸音性に優れていた。一方、比較例1〜2の吸音断熱材は、軽量で取扱性は良好であったが、吸音性及び断熱性が劣っていた。比較例3の吸音断熱材は吸音性が劣っており、厚みを増した比較例4の吸音断熱材は、吸音性及び断熱性は良好であったが、取扱性に欠けていた。
【0053】
図3の結果から、本発明の吸音断熱材は遮音性に優れているが、鉄板に貼り合わせることにより一層優れた透過損失が得られることが確認できた。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例3で作成した吸音断熱材を熱版に取付け、熱版からの距離とそのポイント温度を測定した結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2の結果から、本発明の吸音断熱材は熱版に取り付けた場合でも最外側となる不織布の表面温度が充分低下しており、断熱性に優れていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の耐熱性吸音断熱材のマフラーへの使用例を示す概略断面図である。
【図2】吸音特性(残響室吸音率)を示すグラフである。
【図3】遮音特性(透過損失)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック短繊維と無機粒子とを含むシート状の耐熱部材に、1種又は2種以上の耐熱性有機繊維の短繊維をニードルパンチングして得られたニードルパンチ不織布が積層されてなることを特徴とする耐熱性吸音断熱材。
【請求項2】
耐熱性吸音断熱材におけるニードルパンチ不織布の通気度が耐熱部材の通気度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の耐熱性吸音断熱材。
【請求項3】
前記耐熱部材は、厚さが50mm以下、かつ、密度が0.05〜0.5g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性吸音断熱材。
【請求項4】
前記ニードルパンチ不織布は、厚さが3〜50mm、かつ、密度が0.01〜0.1g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材。
【請求項5】
前記耐熱性有機繊維が、アラミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維及びポリイミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材。
【請求項6】
前記セラミック繊維がシリカアルミナ系繊維、アルミナ繊維又はムライト繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材。
【請求項7】
前記無機粒子がアルミナ粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材。
【請求項8】
前記耐熱部材が、セラミック短繊維が有機又は無機バインダーで結合された構造を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材。
【請求項9】
前記耐熱部材が音源側に配されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の耐熱性吸音断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−321053(P2006−321053A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143624(P2005−143624)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(593049431)高安株式会社 (15)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】