説明

肝細胞癌の診断および治療のための方法および作用物質

本発明は、対象における肝細胞癌を診断する方法、および対象における肝細胞癌を治療する方法に関する。本発明はまた、PLVAPタンパク質のアンタゴニスト、例えばPLVAPタンパク質と特異的に結合する抗体にも関するのみならず、PLVAPタンパク質のアンタゴニストを含む組成物およびキットにも関する。本発明はさらに、PLVAPタンパク質と特異的に結合するヒト化抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年3月19日に提出された米国特許仮出願第61/069,910号の恩典を主張する。上記の出願のすべての教示内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肝細胞癌(HCC)は、肝臓で最も多くみられる原発性悪性腫瘍であり、全世界の人々において5番目に頻度の高い癌である。HCCはまた、癌関連死の4番目に多い原因でもある(Parkin DM, Bray F, Ferlay J, Pisani P. Estimating the world cancer burden: Globocan 2000. Int J Cancer 2001;94:153-156(非特許文献1))。世界保健機構(World Health Organization)は1990年に、肝臓癌の新たな症例が全世界で約430,000例であり、同程度の数の患者がこの疾患の結果としてこの年に死亡したと推定している。
【0003】
HCCの発生病理は、慢性B型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)感染症、さらには肝臓の硬変誘発性病態と関連づけられている(Bruix J, et al. J Hepatol 35:421-430, 2001(非特許文献2);Bruix J, et al. Cancer Cell 5:215-219, 2004(非特許文献3))。このため、HCCの発生率は、HBVおよびHCV感染症の有病率が非常に高い、中国、香港、台湾および日本などの東アジア諸国において最も高い(Bruix J, et al. Cancer Cell 5:215-219, 2004(非特許文献3);Haskell CM. Chapter 46 Liver: Natural History, Diagnosis and Staging in "Cancer Treatment" 5th edition, W. B, Saunders Company, Philadelphia, editors:Haskell CM & Berek JS(非特許文献4))。しかし、HCCの発生率は西洋諸国でも着々と増加している(Parkin DM, et al. Int J Cancer 94;153-156, 2001(非特許文献1))。米国ではこの10年で、HCCが癌全体の中で発生率の2番目に高い伸び、および死亡率の最大の増加を示している(Ann Int Med 139:817-823, 2003(非特許文献5))。このように、米国および世界中で、HCCは死亡および病的状態の主因となっており、HCCの人々による病院医療費および失業のために大きな財政的負担でもある。
【0004】
HCCを首尾良くコントロールするためには、疾患進行の早期ステージでの疾患の正しい診断が必要である。しかし、画像検査、針コア生検および/または細針吸引などの現行の手法を用いて、小さなHCC腫瘍を、転移性腫瘍、胆管癌、限局性結節性過形成、異形成性および再生性の肝結節を含む他の悪性または非悪性の肝疾患と区別することは難題である(Ferrell LD, et al. Am J Surg Pathol 17:1113-1123, 1993(非特許文献6);Horigome H, et al. Hepato-Gatroenterology 47:1659-1662, 2000(非特許文献7);Kalar S, et al. Arch Pathol Lab Med 131:1648-1654, 2007(非特許文献8);Seki S, et al. Clin Cancer Res 6:3460-3473, 2000(非特許文献9))。その上、HCCを治療的に治そうとする取り組みの大部分は失敗している(Bruix J, et al. J Hepatol 35:421-430, 2001(非特許文献2);Bruix J, et al. Cancer Cell 5:215-219, 2004(非特許文献3);Haskell CM. Chapter 46 Liver: Natural History, Diagnosis and Staging in "Cancer Treatment" 5th edition, W. B, Saunders Company, Philadelphia, editors:Haskell CM & Berek JS(非特許文献4);Szklaruk J, et al. AJR 180:441-453, 2003(非特許文献10))。その結果、積極的な療法にもかかわらず、米国におけるHCCの患者の5年生存率は10.5%に過ぎず、これは膵癌に次いで2番目の低さである(ACS Cancer Facts & Figures (2007)(非特許文献11))。このため、HCCを他の肝臓病態と識別し、かつこの疾患の早期検出を容易にするためのより信頼性の高いマーカーを同定することが緊急に必要とされている。加えて、HCCの治療のための新規かつより有効な治療剤を開発することも緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Parkin DM, Bray F, Ferlay J, Pisani P. Estimating the world cancer burden: Globocan 2000. Int J Cancer 2001;94:153-156
【非特許文献2】Bruix J, et al. J Hepatol 35:421-430, 2001
【非特許文献3】Bruix J, et al. Cancer Cell 5:215-219, 2004
【非特許文献4】Haskell CM. Chapter 46 Liver: Natural History, Diagnosis and Staging in "Cancer Treatment" 5th edition, W. B, Saunders Company, Philadelphia, editors:Haskell CM & Berek JS
【非特許文献5】Ann Int Med 139:817-823, 2003
【非特許文献6】Ferrell LD, et al. Am J Surg Pathol 17:1113-1123, 1993
【非特許文献7】Horigome H, et al. Hepato-Gatroenterology 47:1659-1662, 2000
【非特許文献8】Kalar S, et al. Arch Pathol Lab Med 131:1648-1654, 2007
【非特許文献9】Seki S, et al. Clin Cancer Res 6:3460-3473, 2000
【非特許文献10】Szklaruk J, et al. AJR 180:441-453, 2003
【非特許文献11】ACS Cancer Facts & Figures (2007)
【発明の概要】
【0006】
本発明は、1つの態様において、対象の肝臓における1つまたは複数のHCC腫瘍の形成、成長および/または進行を阻害する少なくとも1つの原形質膜小胞関連タンパク質(Plasmalemma Vesicle-Associated Protein)(PLVAP)アンタゴニストの治療的有効量を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象(例えば、ヒト)における肝細胞癌(HCC)を治療する方法を範囲に含む。1つの態様において、PLVAPアンタゴニストは、PLVAPタンパク質(例えば、ヒトPLVAPタンパク質)と特異的に結合する抗体である。特定の態様において、PLVAPアンタゴニストは、化学療法剤などの第2の治療剤と組み合わせて投与される。
【0007】
別の態様において、本発明は、PLVAPタンパク質と特異的に結合する抗体の治療的有効量と、少なくとも1つの化学療法剤とを対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を治療する方法に関する。PLVAPタンパク質と特異的に結合する抗体は、動脈内注入(例えば、肝動脈内注入、経動脈化学塞栓術(transarterial chemoembolization))によって対象に投与され、対象の肝臓における腫瘍形成、腫瘍成長、腫瘍血管新生または腫瘍進行を阻害することができる。特定の態様において、抗体は、対象の肝臓内のHCC腫瘍の内部または周囲の血管の内皮細胞に対して送達される。
【0008】
別の態様において、本発明は、対象からの試料中のPLVAP遺伝子産物(例えば、PLVAP RNA、PLVAPタンパク質)のレベルを検出する段階、および試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルが対照と比べて上昇していることを決定する段階を含む、対象(例えば、ヒト)における肝細胞癌(HCC)を診断する方法に関する。本発明によれば、試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルが対照と比べて上昇していることによって、対象におけるHCCの存在が示される。特定の態様において、PLVAPと特異的に結合する抗体は、対象からの試料中のPLVAPタンパク質のレベルを検出するために用いられる。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、対象からの肝組織試料におけるPLVAP遺伝子産物の発現を検出する段階を含む、対象における肝細胞癌(HCC)を診断する方法を提供する。本発明によれば、肝組織試料におけるPLVAP遺伝子産物の発現によって、HCCが示される。特定の態様において、PLVAP遺伝子産物の発現は、肝組織試料中の血管内皮細胞において検出される。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、PLVAPと特異的に結合する、放射性同位元素で標識された抗体を、動脈内注射または静脈内注射によって投与する段階、対象の肝臓の画像を得る段階、および対象の肝臓における抗体の蓄積を検出する段階を含む、対象(例えば、ヒト)におけるHCCを検出するインビボでの方法に関する。本発明によれば、肝臓における抗体の蓄積の検出によって、対象におけるHCCが示される。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)PLVAPタンパク質と特異的に結合する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の態様において、本ポリペプチドは抗体である。さらなる態様において、抗体は、ヒトPLVAPタンパク質との結合において、モノクローナル抗体KFCC-GY4またはKFCC-GY5と競合する抗体である。
【0012】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つのPLVAPアンタゴニストと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を範囲に含む。1つの態様において、PLVAPアンタゴニストは、PLVAPタンパク質(例えば、ヒトPLVAPタンパク質)と特異的に結合する抗体である。別の態様において、薬学的組成物は、化学療法剤などの第2の治療剤をさらに含む。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、対象におけるHCCを診断するためのキットに関する。1つの態様において、本キットは、PLVAP RNA転写物と(例えば、高ストリンジェンシー条件下で)特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの核酸プローブを含む。別の態様において、本キットは、PLVAPタンパク質(例えば、ヒトPLVAPタンパク質)と特異的に結合するポリペプチド(例えば、抗体)を含む。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、PLVAPと特異的に結合するヒト化抗体の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を治療する方法に関する。特定の態様において、抗体は、動脈内注入(例えば、肝動脈内注入、経動脈化学塞栓術)によって対象に投与され、対象の肝臓における腫瘍形成、腫瘍成長、腫瘍血管新生または腫瘍進行を阻害することができる。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、SEQ ID NO:23との結合において、モノクローナル抗体KFCC-GY4またはモノクローナル抗体KFCC-GY5と特異的に競合するヒト化抗体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】腫瘍組織と隣接非腫瘍性組織との間で高度の差異を伴う発現を示す遺伝子の同定のためのアルゴリズムを示しているフローチャート図である。
【図2】Affymetrix遺伝子チップを用いたmRNA転写物プロファイリングによって決定された、対になったHCC(PHCC)試料および隣接する非腫瘍性肝組織(PN)試料(n=18)ならびに対になっていないHCC試料(n=82)におけるPLVAP遺伝子の発現強度を示しているグラフである。
【図3A】Taqman定量的RT-PCRによって決定された、対になったHCC(PHCC)および隣接する非腫瘍性肝組織(PN)試料における相対的PLVAP発現量を示しているグラフである。PLVAP mRNAレベルは非腫瘍性肝組織と比べてHCCにおける方が有意に高い。
【図3B】マイクロアレイ分析によって決定された、18対のHCC(PHCC)および隣接する非腫瘍性肝組織(PN)試料におけるPLVAP遺伝子の発現強度を示しているグラフである。PLVAP転写物レベルは、1例を除き、試験したすべての個体で、各個体からの隣接する非腫瘍性肝組織におけるよりもHCCにおける方が高かった。
【図4A】マウス抗PLVAPポリクローナル抗血清を作製するために用いたHisタグ付加ヒトPLVAP51-442タンパク質組換え融合タンパク質のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)および推定されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示している。
【図4B】マウス抗PLVAPポリクローナル抗血清を作製するために用いたHisタグ付加ヒトPLVAP51-442タンパク質組換え融合タンパク質のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)および推定されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)の続きを示している。
【図5】Hisタグを除去するためのトロンビン消化の前および後の組換えPLVAPタンパク質の検出を示しているウエスタンブロットの画像である。ブロットの左側の矢印はブロット上のHis-PLVAPおよびPLVAPの位置を示している。ブロットの左側の数字は分子量標準物質の位置を示している。
【図6】図6Aは、2つのHCC組織試料(試料A(黒色)および試料B(灰色))からレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法によって得たHCC内皮細胞における、二段階リアルタイム定量的RT-PCRによって決定された、有意な相対量のPLVAP mRNAの存在を示しているグラフである。破線は、PLVAP mRNAの定量的RT-PCRのために用いた同じ試料におけるβ-アクチンmRNAからのTaqman定量的RT-PCRシグナルを表している。これらの結果は、切り出し採取した(dissected)内皮細胞における容易に測定可能なPLVAP mRNAの存在を示している(実線)。図6Bは、2つのHCC試料(試料A(黒色)および試料B(灰色))における、HCC組織に隣接する非腫瘍性肝組織からレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法によって得た細胞における、二段階Taqmanリアルタイム定量的RT-PCRによって決定された、有意な相対量のPLVAP mRNAの欠如を示しているグラフである。これらの結果は、切り出し採取した細胞において、PLVAP mRNAが検出不能なこと(黒色の実線)およびほとんど検出不能なこと(灰色の実線)を示している。図6Cは、2つのHCC組織試料(試料A(黒色)および試料B(灰色))からレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法によって得たHCC腫瘍細胞における、二段階Taqmanリアルタイム定量的RT-PCRによって決定された、PLVAP mRNAの相対量を示しているグラフである。これらの結果は、切り出し採取したHCC細胞に付着した血管内皮細胞の部分からの避けがたい微量の混入に起因する、切り出し採取したHCC細胞における極めて少量のPLVAP mRNA(実線)の存在を示している。
【図7】ELISAによって決定された、組換えPLVAP51-442タンパク質に対して産生させたマウス抗血清における抗PLVAP抗体価を示しているグラフである。
【図8】図8A〜8Fは、PLVAPタンパク質の所在を検出するために抗PLVAPポリクローナル抗血清を用いて免疫組織化学的に検出した、3例の肝細胞癌の患者からの、ホルマリン固定した、対になったHCC組織(図8A、8C、8E)および隣接する非腫瘍性肝組織(図8B、8D、8F)の切片を示している画像である。対になった組織は、図8A、8B;図8C、8D;および図8E、8Fに示されている。HCC画像中で褐色の染色(矢印)として認められるPLVAPタンパク質は、肝細胞癌の毛細血管内皮細胞のみで検出された(図8A、8C、8E)。非腫瘍性肝組織には検出可能なHCCは存在しなかった(図8B、8D、8F)。
【図9】図9A〜9Fは、PLVAPタンパク質の所在を検出するために抗PLVAPポリクローナル抗血清を用いて免疫組織化学的に検出した、さらに3例の肝細胞癌の患者からの、ホルマリン固定したHCC組織(図9A、9C、9E、9F)および非腫瘍性肝組織(図9B、9D)の切片を示している画像である。図9A、9Bおよび図9C、9Dは、対になったHCCおよび隣接する非腫瘍性肝組織の組織試料を示している。HCC画像中で褐色の染色(矢印)として認められるPLVAPタンパク質は、肝細胞癌の毛細血管内皮細胞のみで検出された(図9A、9C、9E、9F)。非腫瘍性肝組織には検出可能なHCCは存在しなかった(図9B、9D)。
【図10】図10A〜10Fは、PLVAPタンパク質の所在を検出するために抗PLVAPポリクローナル抗血清を用いて免疫組織化学的に検出した、6例の異なる患者からのホルマリン固定した限局性結節性過形成組織の切片を示している画像である。PLVAPタンパク質は、限局性結節性過形成の非腫瘍性肝組織の血管類洞/毛細血管の内壁をなす内皮細胞では検出されなかった。ある程度の陽性染色(褐色)が、胆管の上皮細胞(図10A、10Dおよび10F)および門脈域の血管(図10Dおよび10F)には認められたが、肝実質の内皮細胞には認められなかった。胆管上皮細胞の陽性染色は、PLVAP抗血清中の非特異的抗体の結合に起因するものであった。
【図11】図11Aおよび11Bは、抗PLVAPポリクローナル抗血清によって免疫組織化学的に検出した、2例の肝血管腫の患者からのホルマリン固定組織の切片を示している画像である。肝血管腫の内皮管壁細胞は、PLVAPタンパク質の有意な発現を示さなかった。
【図12】図12Aおよび12Bは、抗PLVAPポリクローナル抗血清によって免疫組織化学的に検出した、2例の慢性活動性B型肝炎の患者からのホルマリン固定組織の切片を示している画像である。PLVAPタンパク質は、慢性B型肝炎患者からの非腫瘍性肝組織の血管類洞/毛細血管の内壁をなす内皮細胞では検出されなかった。
【図13】図13A〜13Dは、抗PLVAPポリクローナル抗血清によって免疫組織化学的に検出した、3例の異なる慢性活動性C型肝炎の患者からのホルマリン固定組織の切片を示している画像である。図13Bおよび13Dに示されている組織切片は、同じ患者からのものである。PLVAPタンパク質は、慢性C型肝炎患者からの非腫瘍性肝組織の血管類洞/毛細血管の内壁をなす内皮細胞では検出されなかった。
【図14】図14A〜14Dは、抗PLVAPポリクローナル抗血清によって免疫組織化学的に検出した、3例の異なる転移性肝癌の患者からのホルマリン固定組織の切片を示している画像である。組織切片は、転移性結腸直腸腺癌(図14A)、肝内胆管癌(図l4Bおよび14C)または転移性卵巣癌(図14D)の患者からのものである。図14Bおよび14Cに示されている組織切片は、同じ患者からのものである。PLVAPタンパク質は、転移性癌組織の血管類洞/毛細血管の内壁をなす内皮細胞では検出されなかった。
【図15A】モノクローナル抗体KFCC-GY4のVHドメインのヌクレオチド遺伝子(上)(SEQ ID NO:3)および推定されるアミノ酸(中)(SEQ ID NO:4)の配列を示している。CDR1(SEQ ID NO:5)、CDR2(SEQ ID NO:6)およびCDR3(SEQ ID NO:7)におけるアミノ酸残基の配列も示されている(下)。
【図15B】モノクローナル抗体KFCC-GY4のVLドメインのヌクレオチド遺伝子(上)(SEQ ID NO:8)および推定されるアミノ酸(中)(SEQ ID NO:9)の配列を示している。CDR1(SEQ ID NO:10)、CDR2(SEQ ID NO:11)およびCDR3(SEQ ID NO:12)におけるアミノ酸残基の配列も示されている(下)。
【図16A】モノクローナル抗体KFCC-GY5のVHドメインのヌクレオチド遺伝子(上)(SEQ ID NO:13)および推定されるアミノ酸(中)(SEQ ID NO:14)の配列を示している。CDR1(SEQ ID NO:15)、CDR2(SEQ ID NO:16)およびCDR3(SEQ ID NO:17)におけるアミノ酸残基の配列も示されている(下)。
【図16B】モノクローナル抗体KFCC-GY5のVLドメインのヌクレオチド遺伝子(上)(SEQ ID NO:18)および推定されるアミノ酸(中)(SEQ ID NO:19)の配列を示している。CDR1(SEQ ID NO:20)、CDR2(SEQ ID NO:21)およびCDR3(SEQ ID NO:22)におけるアミノ酸残基の配列も示されている(下)。
【図17】ELISAによって決定された、KFCC-GY4(○)およびKFCC-GY5(●)モノクローナル抗体の、組換えPLVAPタンパク質とのさまざまな抗体濃度での結合を示しているグラフである。
【図18】KFCC-GY4およびKFCC-GY5モノクローナル抗体が5ngの組換えPLVAPタンパク質を検出しうることを示しているイムノブロットである。レーン1:分子量標準物質;レーン2:KFCC-GY4モノクローナル抗体によるイムノブロット;レーン3:KFCC-GY5モノクローナル抗体によるイムノブロット。組換えPLVAPタンパク質の分子量は45kDである。
【図19】図19Aおよび19Cは、クーマシーブルーで染色したSDSアクリルアミドゲルである。レーン1:分子量標準物質;レーン2:抽出の72時間前にVEGF(40ng/ml)で刺激したヒト臍帯血管内皮細胞からTX-114によって抽出した疎水性膜タンパク質。図19Bは、図19Aのレーン2に示されている抽出物をKFCC-GY4モノクローナル抗体によってプロービングしたイムノブロットである。レーン1:分子量標準物質;レーン2:抽出の72時間前にVEGF(40ng/ml)で刺激したヒト臍帯血管内皮細胞からTX-114によって抽出した疎水性膜タンパク質。図19Dは、図19Cのレーン2に示されている抽出物をKFCC-GY-5モノクローナル抗体によってプロービングしたイムノブロットである。レーン1:分子量標準物質;レーン2:抽出の72時間前にVEGF(40ng/ml)で刺激したヒト臍帯血管内皮細胞からTX-114によって抽出した疎水性膜タンパク質。
【図20】図20Aは、対照正常マウスIgGによるヒト血管内皮細胞(HUVEC)の免疫蛍光染色を示している蛍光顕微鏡写真である。核は、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。倍率=600倍。図20Bは、フォンウィルブランド因子(VWF)に対するモノクローナル抗体によるヒト血管内皮細胞(HUVEC)の免疫蛍光染色を示している蛍光顕微鏡写真である。VWFはヒト血管内皮細胞に関する陽性マーカーである。核は、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。倍率=600倍。図20Cは、PLVAPに対するKFCC-GY4モノクローナル抗体によるヒト血管内皮細胞(HUVEC)の免疫蛍光染色を示している蛍光顕微鏡写真である。KFCC-GY4モノクローナル抗PLVAP抗体はヒト血管内皮細胞と陽性反応した。核は、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。倍率=600倍。図20Dは、PLVAPに対するKFCC-GY5モノクローナル抗体によるヒト血管内皮細胞(HUVEC)の免疫蛍光染色を示している蛍光顕微鏡写真である。KFCC-GY5モノクローナル抗PLVAP抗体はヒト血管内皮細胞と陽性反応した。核は、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。倍率=600倍。
【図21】図21Aは、パラフィンブロック中に包埋し、KFCC-GY5モノクローナル抗PLVAP抗体によって染色したホルマリン固定ヘパトーマ組織の切片の光学顕微鏡写真である。強いPLVAPシグナル(濃い灰色の染色)がヘパトーマの血管内皮細胞で検出された。倍率は100倍である。図21Bは、KFCC-GY4モノクローナル抗PLVAP抗体によって染色した、図21Aに示された試料と同じ患者からのホルマリン固定ヘパトーマ組織の切片の光学顕微鏡写真である。中程度のPLVAPシグナル(薄い灰色の染色)がヘパトーマの血管内皮細胞で検出された。倍率は100倍である。図21Cは、KFCC-GY5モノクローナル抗PLVAP抗体によって染色した、図21Aおよび21Bに示された試料とは異なる患者からのホルマリン固定ヘパトーマ組織の切片の光学顕微鏡写真である。強いPLVAPシグナル(濃い灰色の染色)が血管内皮細胞で検出された。倍率は100倍である。図21Dは、パラフィンブロック中に包埋し、KFCC-GY4モノクローナル抗PLVAP抗体によって染色した、図21Cに示された試料と同じ患者からのホルマリン固定ヘパトーマ組織の切片の光学顕微鏡写真である。中程度のPLVAPシグナル(薄い灰色の染色)が血管内皮細胞で検出され、このことはKFCC-GY4モノクローナル抗体がKFCC-GY5抗体ほど十分にはPLVAP抗原と結合しないことを示す。倍率は100倍である。
【図22】図22A〜22Hは、4例の異なる無作為に選択したヘパトーマ患者からのヘパトーマ組織(図22A、22C、22Eおよび22G)および隣接する非腫瘍性肝組織(図22B、22D、22Fおよび22H)の切片の光学顕微鏡写真である。切片は、KFCC-GY5モノクローナル抗PLVAP抗体によって染色した。PLVAPシグナル(灰色の染色)はヘパトーマの血管内皮細胞組織では検出されたが、非腫瘍性肝組織の血管内皮細胞では検出されなかった。倍率は100倍である。図22Aおよび22B、図22Cおよび22D、図22Eおよび22F、ならびに図22Gおよび22Hは、対になった4セットのヘパトーマ組織および非腫瘍性肝組織を表している。
【図23】図23Aは、対照マウスIgGによって染色したヒト血管内皮細胞(HUVEC)の蛍光顕微鏡写真を示している。核は、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。図23Bは、PLVAPに対するKFCC-GY4モノクローナル抗体によって染色したヒト血管内皮細胞(HUVEC)の蛍光顕微鏡写真を示している。KFCC-GY4モノクローナル抗PLVAP抗体は、ヒト血管内皮細胞の表面と陽性反応した。核は、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。図23Cは、PLVAPに対するKFCC-GY5モノクローナル抗体によって染色したヒト血管内皮細胞(HUVEC)の蛍光顕微鏡写真を示している。KFCC-GY5モノクローナル抗PLVAP抗体は、ヒト血管内皮細胞の表面と陽性反応した。核は、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)によって染色した。
【図24】ヒトPLVAPタンパク質のアミノ酸配列(Genbankアクセッション番号NP_112600;SEQ ID NO:23)を示している。
【図25A】完全長ヒトPLVAP cDNAのヌクレオチド配列(Genbankアクセッション番号NM_031310;SEQ ID NO:24)を示している。
【図25B】完全長ヒトPLVAP cDNAのヌクレオチド配列(Genbankアクセッション番号NM_031310;SEQ ID NO:24)の続きを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で用いる場合、「原形質膜小胞関連タンパク質」、「PLVAP」および「PV-1」という用語は、天然に存在するかまたは内因性のPLVAP(例えば、哺乳動物、ヒト)タンパク質、および、天然に存在するかまたは内因性のPLVAPタンパク質と同じまたは実質的に同じアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば、組換えタンパク質、合成タンパク質)のことを指す。したがって、本明細書において互換的に用いられる「原形質膜小胞関連タンパク質」、「PLVAP」および「PV-1」という用語には、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)において天然に存在する選択的スプライシングまたは他の細胞プロセスによって生成される、PLVAPタンパク質の多型またはアレル変異体、および他のアイソフォームが含まれる。好ましくは、PLVAPタンパク質は、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列(Genbankアクセッション番号NP_112600および図24を参照)を有するヒトタンパク質である。
【0018】
本明細書で定義する場合、「PLVAPアンタゴニスト」とは、1つの態様においては、PLVAPタンパク質の活性を阻害する(例えば、低下させる、阻止する);または、別の態様においては、PLVAP遺伝子および/もしくは遺伝子産物の発現を阻害する(例えば、低下させる、阻止する)、作用物質(例えば、抗体、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸)である。本発明のアンタゴニストによって阻害されうるPLVAPタンパク質の活性には、肝細胞癌腫瘍の形成、成長、血管新生、および/または進行が含まれるがこれらに限定されない。特定の態様において、PLVAPアンタゴニストは、哺乳動物(例えば、ヒト)PLVAPタンパク質と特異的に結合して、PLVAPタンパク質の活性を阻害する。
【0019】
本明細書で用いる場合、「特異的に結合する」とは、作用物質(例えば、抗体)が、PLVAP遺伝子産物(例えば、RNA、タンパク質)に対して、PLVAPアンタゴニストが非PLVAPタンパク質と結合する親和性(例えば、結合親和性)よりも少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍大きい親和性で結合することを指す。
【0020】
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド」という用語はアミノ酸のポリマーのことを指し、特定の長さのことを指すものではない。したがって、「ポリペプチド」は、タンパク質、ペプチドおよびオリゴペプチドを範囲に含む。
【0021】
本明細書で用いる場合、「抗体」という用語は、標的、抗原またはエピトープに対する親和性を有するポリペプチドのことを指し、これには天然の抗体および人為的に操作された(engineered)抗体の両方が含まれる。「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体(primatized)、張り合わせ(veneered)抗体および単鎖抗体のほか、抗体の断片(例えば、Fv、Fc、Fd、Fab、Fab'、F(ab')、scFv、scFab、dAb)を範囲に含む(例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照)。
【0022】
「抗体可変領域」という用語は、単独で、または他の抗体可変領域と組み合わされた時に(例えば、VH/VL対)、エピトープと特異的に結合する、抗体の領域(例えば、VH、VHH、VL)のことを指す。
【0023】
「エピトープ」という用語は、抗体のVH/VL対が型通りに結合する構造単位のことを指す。エピトープは抗体に対する最小結合部位を規定し、それ故に抗体の特異性の標的に相当する。
【0024】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、抗原性標的(例えば、エピトープ)と特異的に結合しうるアミノ酸配列を含む、重鎖または軽鎖由来の抗体可変領域の超可変領域のことを指す。典型的な重鎖または軽鎖は、特定のエピトープに対する抗体の特異性の原因となる3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)を有する。
【0025】
本明細書で定義する場合、「抗原結合性断片」という用語は、1つまたは複数のCDRを含み、それ自体で抗原決定基に対する親和性を有する抗体の一部分のことを指す。非限定的な例には、Fab断片、F(ab)'2断片、重鎖-軽鎖ダイマー、および単鎖構造、例えば完全軽鎖または完全重鎖などが含まれる。
【0026】
本明細書で用いる場合、「特異性」という用語は、抗体がエピトープと優先的に結合する能力のことを指すが、これは必ずしも高い親和性を意味しない。
【0027】
「親和性」という用語は、抗体と抗原決定基との間の結合の強さの尺度のことを指す。親和性は、抗体と抗原決定基との立体化学的嵌合の接近性、それらの間の接触面積の大きさ、ならびに荷電基および疎水性基の分布を含む、さまざまな要因に依存する。
【0028】
本明細書で用いる場合、「親和定数」または「Kd」という用語は、抗原に対する抗体の親和性を計測するために用いられる解離定数のことを指す。親和定数が小さいほど、抗原または抗原決定基に対する免疫グロブリンの親和性は高く、その逆も然りである。そのような定数は、抗体反応に関する標準的な速度論的方法によって計測される、会合-解離反応に関する速度定数から容易に算出される。
【0029】
本明細書で言及する場合、「競合する」という用語は、標的抗原との第1のポリペプチド(例えば、抗体)の結合が、第2のポリペプチド(例えば、抗体)の結合によって阻害されることを意味する。結合は、例えば、結合ドメインを物理的に遮断することによって、または、標的に対するその親和性または結合活性(avidity)が低下するように結合ドメインの構造もしくは環境を変更することによって、立体的に阻害されうる。
【0030】
本明細書で用いる場合、「ペプチド」という用語は、1つのアミノ酸のアミノ基がペプチド結合によって別のアミノ酸のカルボキシル基と連結している、約2〜約100個のアミノ酸残基からなる化合物のことを指す。そのようなペプチドは、典型的には長さが約100アミノ酸残基未満であり、好ましくは約10、約20、約30、約40または約50残基である。
【0031】
本明細書で用いる場合、「ペプチド模倣物」という用語は、ペプチドでもタンパク質でもないが、それらの構造の諸局面を模している分子のことを指す。ペプチド模倣性アンタゴニストは、従来の化学的方法によって調製することができる(例えば、Damewood J.R. "Peptide Mimetic Design with the Aid of Computational Chemistry" in Reviews in Computational Biology, 2007, Vol. 9, pp. 1-80, John Wiley and Sons, Inc., New York, 1996;Kazmierski W.K., "Methods of Molecular Medicine: Peptidomimetic Protocols," Humana Press, New Jersey, 1999を参照)。
【0032】
「肝細胞癌」、「HCC」および「ヘパトーマ」という用語は、肝臓の主要細胞種である肝細胞から生じた癌を指すために、本明細書において互換的に用いられる。
【0033】
本明細書で定義する場合、「療法」とは、所望の治療的または予防的な利益を対象(例えば、哺乳動物、ヒト)にもたらす、対象に対する特定の治療的または予防的な作用物質の投与のことである。
【0034】
本明細書で定義する場合、「治療的有効量」とは、投与の条件下で所望の治療的または予防的な効果を達成するために十分な量のことである。例えば、HCCの患者の肝臓における腫瘍形成、腫瘍成長(増殖、サイズ)、腫瘍血管新生、および/または腫瘍進行(侵襲、転移)を阻害する(すなわち、低下させる、阻止する)ために十分な量などのことである。療法の有効性(例えば、腫瘍の縮小/消失、および/または腫瘍成長の阻止)は、任意の適した方法(例えば、インサイチュー免疫組織化学、画像化(超音波、CTスキャン、MRI、NMR)、3H-チミジン取り込み)によって決定することができる。
【0035】
本明細書で定義する場合、「治療レジメン」とは、1つまたは複数の治療的または予防的な作用物質が、哺乳動物対象に対して、特定の用量(例えば、レベル、量、数量)で、かつ特定のスケジュールまたは特定の間隔(例えば、分、日、週、月)で投与される、レジメンのことである。
【0036】
本明細書で用いる場合、「対象」とは哺乳動物対象のことを指す。「哺乳動物対象」という用語は、本明細書において、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、または他のウシ科動物、ヒツジの類(ovine)、ウマ科動物、イヌ科動物、ネコ科動物、齧歯類もしくはネズミ科動物の種などの哺乳動物を含むものと定義される。適した対象の例には、以下に限定されないが、HCCを有する、またはそれを発症するリスクがあるヒト患者が含まれる。HCCの発症に関する高リスク群の例には、慢性肝炎感染(B型肝炎、C型肝炎)のある個体、および肝臓の硬変または関連した肝臓の病状を有する個体が含まれる。
【0037】
本明細書で用いる場合、「予防する」、「予防すること」または「予防」という用語は、対象によるHCC腫瘍の形成もしくは進行の確率/尤度もしくはリスクを低下させること、対象におけるHCCに関連した病状の発病を遅らせること、対象におけるHCCに関連した病状の1つもしくは複数の症状の重症度を軽減すること、またはそれらの任意の組み合わせを意味する。一般に、予防的レジメンの対象は、「リスクがある」と分類される可能性が非常に高いと考えられ、例えば、対象がHCCを発症するリスクは、該当するベースライン集団によって表される個体におけるリスクよりも高い。
【0038】
本明細書で用いる場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、病的状態(例えば、HCCに関連した病状)を、その病的状態が臨床的に許容される基準に従って改善される(例えば、対象の肝臓においてHCC腫瘍の数および/またはサイズが減少する)程度まで、打ち消すことを意味する。
【0039】
本明細書で用いる場合、「低ストリンジェンシー」、「中ストリンジェンシー」、「高ストリンジェンシー」または「超高ストリンジェンシー条件」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する条件を述べている。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見いだすことができ、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。その文献には水性および非水性の方法が記載されており、いずれを用いてもよい。具体的なハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである:(1)少なくとも50℃の0.2×SSC、0.1% SDS中で2回の洗浄を後に行う、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中での低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件(低ストリンジェンシー条件については洗浄の温度を55℃に高めることができる);(2)60℃の0.2×SSC、0.1% SDS中で1回または複数回の洗浄を後に行う、約45℃の6×SSC中での中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;(3)65℃の0.2×SSC、0.1% SDS中で1回または複数回の洗浄を後に行う、約45℃の6×SSC中での高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;および、好ましくは(4)65℃の0.2×SSC、1% SDS中で1回または複数回の洗浄を後に行う、65℃の0.5Mリン酸ナトリウム、7% SDS中での超高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件である。超高ストリンジェンシー条件(4)が好ましい条件であり、別に指定されない限り用いられるべきものである。
【0040】
別に定義する場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション手法および生化学の)によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。分子的、遺伝学的および生化学的な方法(概論については、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.およびAusubel et al., Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed, John Wiley & Sons, Inc.を参照のこと)ならびに化学的な方法のためには標準的な手法が用いられる。
【0041】
PLVAP
原形質膜小胞関連タンパク質(PLVAP)は、PV1としても知られており、その発現が特定の血管内皮細胞に限局しているII型膜内在性糖タンパク質である(Mol Biol Cell 15:3615-3630 (2004))。PLVAPは、有窓内皮の有窓膈膜および小孔膈膜(fenestral and stomatal diaphragm)の鍵となる構造要素であることが示されている、同上。加えて、PLVAPの発現は、内皮有窓膈膜の形成のためにも必要であり、内皮の透過性および輸送をモジュレートすることに関与している可能性もある(Am J Physiol Heart Circ Physiol 286:H1347-1353, 2004)。ヒトPLVAP遺伝子のゲノム上の構成は報告されている(Stan RV, Arden KC, Palade GE. cDNA and protein sequence, genomic organization, and analysis of cis regulatory elements of mouse and human PLVAP genes. Genomics 72;304-313, 2001)。
【0042】
本明細書に記載するように、本発明者らは、ヒトHCC患者の肝臓におけるPLVAP遺伝子の発現が、隣接する非腫瘍性組織と比べて有意に上昇していることを実証した。加えて、本発明者らは、PLVAPタンパク質が、HCC腫瘍の周囲または内部の血管内皮細胞において主として発現されて局在するが、他の肝臓病態に関連した細胞においては発現もされず局在もしないことも明らかにした。したがって、PLVAPはHCCの診断および治療のための新規標的である。
【0043】
治療方法
1つの局面において、本発明は、少なくとも1つのPLVAPアンタゴニストの治療的有効量を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を治療する方法であって、PLVAPアンタゴニストが、対象の肝臓における1つまたは複数のHCC腫瘍の形成、成長、血管新生、および/または進行からなる群より選択される活性を阻害する方法に関する。特定の局面において、本発明のPLVAPアンタゴニストは、HCC患者の肝臓内の肝細胞の周囲にある血管内皮細胞におけるPLVAPタンパク質の発現または活性を阻害する。
【0044】
1つの局面において、PLVAPアンタゴニストの治療的有効量は、それを必要とする対象に対して、腫瘍成長を阻害するため、または腫瘍細胞を死滅させるために投与される。例えば、腫瘍成長を直接阻害する作用物質(例えば、化学療法剤)は、最も有効な療法(例えば、腫瘍細胞を最も死滅させるのに)を達成するための特定の投薬スケジュールおよびレベルで従来通りに投与される。一般に、ほぼ最大耐容量が比較的短い治療期間(例えば、1日〜数日)中に投与され、その後に療法を行わない期間を置く。特定の例では、化学療法薬シクロホスファミドを150mg/kgの最大耐容量で隔日に3回の用量投与し、第2のサイクルは第1のサイクルから21日後に投与する(Browder et al. Can Res 60:1878-1886, 2000)。
【0045】
PLVAPアンタゴニスト(例えば、阻害性小分子、中和抗体、阻害性核酸(例えば、siRNA、アンチセンスヌクレオチド))の治療的有効量は、例えば、アンタゴニストのほぼ最大耐容量を1つの間隔/用量で投与する第1のサイクルで、または、療法を行わない適切な期間(例えば、1週間または複数週間)の後に別の/第2のサイクルを用いて隔たりの短い複数の間隔(分、時間、日)で、投与することができる。PLVAPアンタゴニストの適した投薬スケジュールおよび量は、通常の技能を持つ臨床医によって容易に決定可能である。化学療法剤と比較して特定のPLVAPアンタゴニストの毒性が低いことにより、投与サイクルの間の時間をより短くすることが可能になる。アジュバント療法(例えば、手術、放射線療法、他の一次療法に対する)として用いる場合には、PLVAPアンタゴニストの治療的有効量は、好ましくは、他の癌療法(例えば、化学療法薬)のものに類似した投薬スケジュールで、または、技能を持つ臨床医によって、腫瘍成長を阻害する(低下させる、阻止する)点でより/最も有効であると判断された投薬スケジュールによって投与される。抗体であるPLVAPアンタゴニストの治療的有効量に関する治療レジメンは、例えば、約4〜約6カ月の期間にわたって毎日〜7日毎に、1回の処置当たり約0.01mg/kg〜約300mg/kg体重、好ましくは約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kgであってよい。小分子PLVAPアンタゴニストの抗腫瘍有効量に関する治療レジメンは、例えば、約4〜約6カ月の期間にわたって毎日〜7日毎に、約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約1mg/kgであってよい。
【0046】
別の局面において、PLVAPアンタゴニストは、より低用量を、最大耐容量での投薬と比べてより高い頻度で投与する、メトロノーム(metronomic)投薬レジメンで投与することができる。数多くの前臨床試験により、メトロノームレジメンが、最大耐容量(MTD)の相当物と比較して、抗腫瘍効力、強力な抗血管新生効果の点で優れ、かつ毒性および副作用(例えば、骨髄抑制)は低いことが実証されている(Bocci, et al., Cancer Res, 62:6938-6943, (2002);Bocci, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 100(22):12917-12922, (2003);およびBertolini, et al., Cancer Res, 63(15):4342-4346, (2003))。メトロノーム化学療法は、化学療法に伴う欠点のいくつかを克服するために有効であるようにみえる。
【0047】
PLVAPアンタゴニストは、それを必要とする患者における血管新生を阻害する(低下させる、阻止する)ために、抗血管新生療法の一部として、メトロノーム投薬レジメンで投与することができる。そのような抗血管新生療法は、腫瘍成長を維持するために必要な栄養分を腫瘍に供給して腫瘍が転移するのを可能にする新たな血管の形成を遮断することによって、腫瘍成長に間接的に影響を及ぼす(阻害する、低下させる)ことができる。このようにして腫瘍から栄養分および血液供給を欠乏させることは、最終的には、壊死および/またはアポトーシスによって腫瘍の細胞の死滅を引き起こすことができる。以前の研究により、血管新生因子(例えば、VEGF、bFGF、TGF-α、IL-8、PDGF)またはそれらのシグナル伝達の遮断を伴う癌療法の臨床的アウトカム(内皮細胞を介した腫瘍血管新生および腫瘍成長の阻害)は、より低い投薬レベルをより頻回に投与した場合の方がより有効であり、抗血管新生薬の持続的な血中レベルをもたらすことが示されている(Browder et al. Can. Res. 60:1878-1886, 2000;Folkman J., Sem. Can. Biol. 13:159-167, 2003を参照)。抗血管新生治療レジメンは、血管新生の標的指向性阻害因子(トロンボスポンジン1および血小板増殖因子-4(TNP-470))および化学療法剤シクロホスファミドとともに用いられている。6日毎に、TNP-470が最大耐容量よりも低い用量で投与され、シクロホスファミドが170mg/kgの用量で投与された。同上。この治療レジメンは、腫瘍の完全縮退をもたらした。同上。実際に、抗血管新生治療は、他の抗癌治療剤、例えば、腫瘍成長を直接阻害するような作用物質(例えば、化学療法剤)と合わせて投与された場合に最も有効である。同上。
【0048】
本明細書に記載された治療方法は、PLVAPアンタゴニストを対象に投与する段階を含む。PLVAPアンタゴニストは、それを必要とする個体に対して、一次療法として(例えば、療法または治療レジメンにおける主たる治療剤として);補助(adjunct)療法として(例えば、治療剤の組み合わせによって所望の治療がもたらされる療法または治療レジメンにおいて、別の治療剤とともに用いられる治療剤として(「補助療法」は「補助的(adjunctive)療法」とも称される);補助療法と組み合わせて;アジュバント療法として(例えば、それを必要とする対象に対して、療法または治療レジメンにおける主たる治療剤が与えられた後に与えられる治療剤として);またはアジュバント療法(例えば、化学療法(例えば、タモキシフェン、シスプラチン、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ソラフェニブ、オクトレオチド(octreotide)、ダカルバジン(DTIC)、シスプラチン(Cis-platinum)、シメチジン、シクロホスファミド)、放射線療法(例えば、陽子線療法)、ホルモン療法(例えば、抗エストロゲン療法、アンドロゲン除去療法(ADT)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)アゴニスト、アロマターゼ阻害薬(AI、例えばアナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)、エストロゲン受容体調節薬(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン))または生物療法)と組み合わせて、投与することができる。そのすべてが当業者によって容易に認識される、疼痛(麻酔剤、鍼治療)、胃の不快感(制酸薬)、めまい(抗めまい薬)、悪心(抗悪心薬)、感染(例えば、赤血球数/白血球数を増加させるための医用薬剤)などを管理するための療法を含む、さまざまな他の療法を、癌治療レジメンの期間中に、疾患の影響および/または癌治療の副作用を和らげるために投与することもできる。
【0049】
したがって、PLVAPアンタゴニストは、アジュバント療法として(例えば、別の一次癌療法または治療とともに)投与することができる。アジュバント療法としては、PLVAPアンタゴニストを、腫瘍の放射線的および/または外科的除去のような一次療法の前に、後に、または同時に投与することができる。いくつかの態様において、本方法は、PLVAPアンタゴニストの治療的有効量、および1つまたは複数の他の療法(例えば、アジュバント療法、他の標的指向性療法)を投与する段階を含む。アジュバント療法(例えば、化学療法剤)および/または1つもしくは複数の他の標的指向性HCC療法、ならびにPLVAPアンタゴニストは、別個の製剤として、または共同の製剤として、同時並行的に(例えば、同時に)共投与することができる。または、療法を、別個の組成物として、技能を持つ臨床医によって判断されるような適切な時間枠(例えば、1.5〜5時間などの癌治療セッション/間隔)(例えば、療法の薬学的効果の重複を可能にするのに十分な時間)の中で、逐次的に投与することもできる。アジュバント療法および/または1つもしくは複数の他の標的指向性HCC療法、ならびにPLVAPアンタゴニストは、所望の治療効果(例えば、腫瘍成長の阻害、血管新生の阻害、および/または癌転移の阻害)を達成するために適した順序およびスケジュールにて、単回用量または多回用量で投与することができる。
【0050】
PLVAPアンタゴニストである1つまたは複数の作用物質を、単回用量または多回用量として投与することができる。適した投与の投与量およびレジメンは臨床医によって決定可能であり、これは選択される作用物質、医薬製剤および投与経路、さまざまな患者要因ならびに他の検討事項に依存する。1つまたは複数の他の療法または治療(アジュバント療法または治療、標的指向性療法または治療、癌治療関連療法または治療など)を伴うPLVAPアンタゴニストの投与に関して、PLVAPアンタゴニストは典型的には単回用量(例えば、注射、注入、経口により)として投与され、その後に所望または指定されるならば、特定の間隔(例えば、1時間または数時間)で反復投与が行われる。
【0051】
投与しようとするPLVAPアンタゴニストの量(例えば、治療的有効量)は、本明細書に提示された手引き、または当技術分野において公知である他の方法を用いて、臨床医によって決定可能であり、これは例えば、選択される具体的な作用物質、対象の年齢、感受性、薬剤に対する耐容性、および全体的な健康状態を含む、いくつかの要因に依存する。例えば、小分子に関する適した投与量は、1回の処置当たり約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約1mg/kg体重であってよい。抗体に関する適した投与量は、1回の処置当たり約0.01mg/kg〜約300mg/kg体重であってよく、好ましくは1回の処置当たり約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg体重であってよい。PLVAPアンタゴニストがポリペプチド(線状、環状、模倣性)である場合、好ましい投与量は、約0.1μg/mLから約200μg/mLまでのペプチドの血漿中濃度をもたらすと考えられる。特定の作用物質、患者および癌に関して投与量を決定することは、当業者の能力の範囲に十分にある。好ましくは、その投与量はわずかな有害な副作用(例えば、免疫原性応答、悪心、めまい、急性胃蠕動異常亢進(gastric upset)、過粘稠度症候群、うっ血性心不全、卒中、肺浮腫)を引き起こすことも生じさせることもない。
【0052】
投与のための方法
本発明の方法によれば、PLVAPアンタゴニスト(例えば、放射性同位体で標識した抗体などの、抗体)の治療的有効量を、HCCを治療するために哺乳動物対象に投与する。
【0053】
作用物質および治療しようとする特定の癌に応じて、例えば、経口、食事性、局部、経皮的、直腸、非経口(例えば、動脈内、静脈内、筋肉内、皮下注射、皮内注射)、静脈内注入および吸入(例えば、気管支内、鼻腔内または経口的吸入、点鼻)投与経路を含む、種々の投与経路を用いることができる。投与は適応があれば局所性であっても全身性であってもよい。好ましい投与様式は、選択される特定の作用物質に応じて異なる;しかし、肝細胞癌を治療するために本発明の治療剤(例えば、放射性同位体で標識した抗体などの、抗体)を投与するには、動脈内投与(例えば、肝動脈内注入、経動脈化学塞栓術(TACE))が一般に好ましい。
【0054】
例えば、例えば、HCCの慣行的なTACE治療時に、肝動脈内注入を用いて、化学療法剤(例えば、放射性同位体で標識したPLVAP抗体などの、PLVAP抗体)を、肝動脈を経由してHCC腫瘍に直接送達することができる(Camma, et al. Radiology 224:47-54, 2002;Befeler, et al. Clinics in Liver Disease 9:287-300, 2005;Abou-Alfa JAMA 299:1716-1718, 2008)。この手順は、蛍光透視(X線タイプ)画像化の助けを借りて行われる。手短に述べると、鼠径部の大腿動脈内にカテーテルを挿入し、大動脈内へと進める。大動脈から、カテーテルを肝動脈内またはその分枝内に進入させる。肝癌に栄養を供給する肝動脈がひとたび同定されれば、化学療法の注入を行う。この手順を通常行うインターベンショナル-ラジオロジストは、患者が各セッションで受ける化学療法の量を決定することができる。患者の中には、6〜12週間隔でセッションを繰り返す者もいる。肝臓の画像検査は、治療に反応した腫瘍サイズを評価するために6〜12週間で繰り返す。
【0055】
または、PLVAPアンタゴニスト(例えば抗体)を、それを必要とする対象に投与するために、動脈内注入に類似した手順である経動脈化学塞栓術(TACE)を用いることもできる。TACEでは、治療剤の動脈内注入を、ゲルフォーム、油乳剤などの特定の遮断用化合物、またはさらに小径の金属コイルによって遮断する(すなわち、塞栓する)別の段階と組み合わせる。このため、TACEには、腫瘍を高濃度の化学療法に曝露させて、作用物質が血流に沿って流れ去ることを阻止または低下させるためにそれらを局所に限局させるという潜在的な利点がある。同時に、TACEは腫瘍からそれが必要とする血液供給を奪い、そのことは腫瘍細胞の損傷または死滅をもたらすことができる。
【0056】
PLVAP抗体の動脈内投与のためには、注入された抗体がHCCの血管内で濃縮されるように、PLVAPに対して高い親和性(例えば、Kdが10-7M未満)を有する抗体を用いることが好ましい。キメラ抗体およびヒト化抗体は、循環血中の半減期がそれぞれ最長で4日および最長で14〜21日であると予想される。特定の態様においては、循環血中の半減期の短い(例えば、約1日〜約5日、例えば、約1、2、3、4または5日)高親和性PLVAP抗体(例えば、抗原結合性断片、単鎖抗体)が、それらの投与に起因する毒性および他の有害な副作用を軽減する目的で患者に投与される。別の態様においては、循環血中の半減期の長い(例えば、約5日〜約24日)高親和性PLVAP抗体が、HCCを治療するために患者に投与される。
【0057】
多くの場合には、高めの負荷用量を投与し、その後に定期的(例えば、毎週の)維持用量を治療期間にわたって投与することが好ましいと考えられる。また、HCC中への持続注入のための徐放性送達システム、ポンプおよび他の公知の送達システムによって抗体を送達することもできる。投薬レジメンは、特定の抗体の所望の循環血中レベルがその薬物動態に基づいて得られるように変更することができる。すなわち、用量は、所望の治療的レベルが維持されるように算出される。
【0058】
実際の用量および治療レジメンは、癌の性質(原発性または転移性)、腫瘍の数およびサイズ、他の療法および患者特性を考慮に入れて、医師により決定されると考えられる。肝細胞癌が命にかかわる性質であることに鑑みれば、明らかな副作用を伴う高用量を用いることもありうる。
【0059】
核酸ベースのPLVAPアンタゴニスト(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、天然核酸または合成核酸、核酸類似体)は、関心対象の哺乳動物対象にさまざまなやり方で導入することができる。例えば、核酸を、宿主細胞内で発現ベクターもしくはPCR産物から内因性に発現させること、または合成組成物もしくは人為的に操作された組成物(例えば、リポソーム、ポリマー、ナノ粒子)中にパッケージングして、それを続いて哺乳動物対象の血流中に直接導入することができる(例えば、注射、注入により)。抗PLVAP核酸または核酸発現ベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクター、人為的に操作されたベクター、非ウイルス媒介ベクター)を、確立された遺伝子治療の戦略およびプロトコールを用いて、哺乳動物対象に直接導入することもできる(例えば、Tochilin V.P. Annu Rev Biomed Eng 8:343-375, 2006;Recombinant DNA and Gene Transfer, Office of Biotechnology Activities, National Institutes of Health Guidelinesを参照)。
【0060】
同様に、作用物質がタンパク質またはポリペプチドである場合には、作用物質を、組換えタンパク質のインビボ発現を介して投与することもできる。インビボ発現は、適した方法による体細胞発現によって実現することができる(例えば、米国特許第5,399,346号)。さらに、ポリペプチドをコードする核酸を、送達用のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターもしくは他の適したベクター(好ましくは、複製能の欠損した感染性ベクター)中に組み入れることもでき、またはポリペプチドを発現することのできるトランスフェクトされたもしくは形質転換された送達用の宿主細胞中に導入することもできる。後者の態様においては、ポリペプチドを治療的有効量で発現させるために有効な量で、細胞を、植え込むこと(単独で、または隔壁用具(barrier device)内にある状態で)、注射すること、または他の様式で導入することが可能である。
【0061】
診断および予後判定の方法
本発明は、哺乳動物対象(例えば、肝臓腫瘍を有する哺乳動物対象)からの試料(例えば、肝生検試料、細針吸引試料)中のPLVAPの発現を評価する段階を含む、診断および予後判定の方法を範囲に含む。本発明の診断方法に関しては、試料中のPLVAPの発現、または適した対照と比べた試料中のPLVAPの発現の増大は、対象がHCCを有すること、および/または対象がPLVAPアンタゴニストを用いた抗癌療法の候補であることを示す。
【0062】
本発明の予後判定の方法に関しては、対象からの試料中のPLVAPの発現、または適した対照と比べた試料中のPLVAPの発現の増大は、予後不良であることを示す。予後は、患者の生存に関する予後、転移のリスクに関する予後、および/または再発のリスクに関する予後であってよい。
【0063】
これらの方法のための適した試料には、組織試料、生体液試料、細胞(例えば、腫瘍細胞)試料などが含まれる。例えば、採血、脊椎穿刺、組織の塗沫もしくは掻き取り、または組織生検による対象からの試料採取の任意の手段を、試料を得るために用いることができる。すなわち、試料は、生検標本(例えば、腫瘍、ポリープ、腫瘤(固形、細胞))、吸引物、塗沫または血液試料であってよい。試料は、腫瘍(例えば、癌性増殖物)および/もしくは腫瘍細胞を有するか、または腫瘍および/もしくは腫瘍細胞を有する疑いのある、肝臓由来の組織であってよい。例えば、腫瘍生検試料を、腫瘤の全体(摘出生検)または部分(切開生検)を標的区域から取り出す手順である直視下生検で得ることができる。または、腫瘍試料を、個々の細胞もしくは細胞のクラスター(例えば、細針吸引(FNA))または組織のコアもしくは断片(コア生検)を得るために、小切開または刺し穴を通る針のような装置を用いて(画像化機器の助けを借りて、または借りずに)行われる手順である、経皮的生検によって得ることもできる。生検試料は、細胞学的に(例えば、塗沫)、組織学的に(例えば、凍結もしくはパラフィン切片)、または他の任意の適した方法を用いて(例えば、分子診断法)、調べることができる。また、腫瘍試料を、個体の組織に由来する培養ヒト細胞のインビトロ採取によって得ることもできる。腫瘍試料は、必要に応じて、分析の前に、急速凍結または制御凍結レジメンなどの、試料のタンパク質および/または核酸を分析可能な状態に保つ適切な貯蔵手段によって貯蔵することができる。必要に応じて、凍結は、凍結保護剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロールまたはプロパンジオール-スクロースなどの存在下で行うことができる。腫瘍試料は適宜、貯蔵の前または後に、分析のためにプールすることができる。腫瘍試料は、肝癌、例えば肝細胞癌を有する患者からのものであってよい。
【0064】
試料(例えば、生物試料)中のPLVAPの存在または量を評価するために用いうる適切なアッセイは、当業者に周知である。PLVAPタンパク質またはペプチドを検出するための方法には、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)、化学発光アッセイを含む酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、イムノブロット(例えば、ウエスタンブロット)、免疫組織化学(IHC)、および他の抗体ベースの定量的方法(例えば、Luminex(登録商標)ビーズに基づくアッセイ)を含む、免疫学的および免疫化学的な方法が含まれる。他の適した方法には、例えば、質量分析が含まれる。例えば、PLVAPに対する抗体を用いることで、試料中のPLVAPの存在および/または発現レベルを、例えば免疫組織化学(IHC)を用いて直接的または間接的に決定することができる。例えば、適した方法によって、パラフィン切片を生検試料から採取し、スライドに固定して、1つまたは複数の抗体と合わせることができる。特定の態様において、試料中の肝細胞の周囲にある血管内皮細胞内でのPLVAPタンパク質の検出は、HCCを示す。
【0065】
PLVAP遺伝子の発現を検出するための方法には、PLVAP核酸の増幅および/または可視化が含まれる。PLVAP遺伝子の発現を検出するために、当技術分野において慣行的である適した方法を用いて、核酸を個体から単離することができる(例えば、Sambrook et al., 1989を参照)。続いて、単離された核酸を増幅して(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、直接PCR、定量的リアルタイムPCR、逆転写酵素PCR)、リガーゼ連鎖反応、自律的配列複製、転写増幅システム、Q-βレプリカーゼなどにより)、可視化することができる(例えば、増幅時での核酸の標識化、挿入性の化合物/色素に対する曝露、プローブにより)。また、PLVAP RNA(例えば、mRNA)またはその発現を、核酸プローブ、例えば標識された核酸プローブ(例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH))を、例えば腫瘍生検試料から採取した組織試料のパラフィン切片中において直接に用いて、または他の適した方法を用いて検出することもできる。そのPLVAP遺伝子の発現を、サザンブロットによって、または溶液中で評価することもできる(例えば、色素、プローブ)。さらに、遺伝子チップ、マイクロアレイ、プローブ(例えば、量子ドット)または他のそのような機器(例えば、センサー、ナノセンサー/検出器)を、PLVAP遺伝子の発現および/または発現の差異を検出するために用いることもできる。
【0066】
1つの態様において、肝細胞癌は、患者からの試料中のPLVAP遺伝子産物(例えば、PLVAP mRNA、PLVAPタンパク質)の発現を検出することによって診断することができる。したがって、本方法は、患者からの試料中のPLVAP発現を、対照におけるPLVAPの発現と比較することを必要としない。PLVAPの存在または非存在は、本明細書に記載された方法、または他の適切なアッセイによって確かめることができる。別の態様において、PLVAPの発現の増大は、試料中のPLVAP発現と、適した対照におけるそれとの比較によって決定することができる。適した対照には、例えば、その個体からの非腫瘍性組織試料、非癌性細胞、非転移性癌細胞、非悪性(良性)細胞など、または適した公知もしくは確定済みの参照標準が含まれる。参照標準は、PLVAPタンパク質またはRNAの発現の、典型的な、正常なもしくは標準化された範囲、またはレベルであってよい(例えば、発現標準)。したがって、本方法は、適した対照における、評価される遺伝子/タンパク質の発現を必要としない。
【0067】
別の態様において、肝細胞癌は、患者からの試料中のPLVAP遺伝子のコピー数を検出することによって診断することができる。例えば、いくつかの態様において、2を上回るPLVAP遺伝子のコピー数(例えば、遺伝子コピー数が3または4)は、HCCの診断となりうる。典型的には、正常ヒト細胞では、PLVAP遺伝子のコピー数は2であると考えられる。このため、PLVAP遺伝子のコピー数に基づく診断方法は、患者からの対照試料中のPLVAP遺伝子のコピー数を検出することを必要としないものの、対照を用いてもよい。適した対照には、例えば、その個体からの非腫瘍性組織試料、非癌性細胞、非転移性癌細胞、非悪性(良性)細胞など、または適した公知もしくは確定済みの参照標準(例えば、PLVAP遺伝子のコピー数が2)が含まれる。患者からの試料中のPLVAP遺伝子のコピー数は、適した方法、例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)などによって確かめることができる。
【0068】
PLVAP抗体
本明細書で記載する場合、PLVAPと結合する抗体は、ヒト対象におけるHCCの診断および治療において有用性がある。例えば、PLVAPと特異的に結合する抗体を用いることで、肝臓コア生検または針吸引物の標本における肝細胞癌の毛細血管内皮細胞上のPLVAPの存在を、免疫組織化学染色(IHC)によって検出することができる。加えて、対象の肝臓内の空間を占める病変が肝細胞癌であるか否かを明らかにするために、PLVAPに対する抗体(例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体)を、イムノ-ポジトロン放出断層撮影法(イムノ-PET)用の適切なトレーサー(例えば、放射性同位元素)で標識することもできる(Clin Cancer Res 12:1958-1960, 2006;Clin Cancer Res 12:2133-2140, 2006)。また、抗PLVAP抗体(例えば、ヒト化抗体)を、治療目的で細胞傷害性物質(放射性または非放射性)によって標識することもできる(Weiner LM, Adams GP, Von Mehren M. Therapeutic monoclonal antibodies: General principles. In: Cancer: Principles & Practice of Oncology. 6th ed. DeVita VT, Hellman S, Rosenberg SA, eds. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins;2001:495-508.;Levinson W, Jawetz E. Medical Microbiology & Immunology. 4th ed. Stamford: Appleton & Lange;1996:307-47.;Scheinberg DA, Sgouros G, Junghans RP. Antibody-based immunotherapies for cancer. In: Cancer Chemotherapy & Biotherapy: Principles and Practice. 3rd ed. Chabner BA, Longo DL, eds. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins;2001:850-82)。
【0069】
したがって、1つの態様において、本発明は、PLVAPタンパク質(例えば、ヒトPLVAPタンパク質(SEQ ID NO:23))と結合する(例えば、特異的に結合する)抗体を提供する。PLVAPタンパク質と特異的に結合する抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、張り合わせ抗体および単鎖抗体のほか、抗体の断片(例えば、Fv、Fc、Fd、Fab、Fab'、F(ab')、scFv、scFab、dAb)などであってよい(例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照)。PLVAPタンパク質と特異的に結合する抗体は、従来の方法または他の適した手法によって産生させること、構築すること、人為的に操作すること、および/または単離することができる。例えば、PLVAPタンパク質に対して特異的な抗体を、組換え哺乳動物(例えば、ヒト)PLVAPタンパク質(例えば、SEQ ID NO:23)またはその一部分(例えば、SEQ ID NO:2)などの適切な免疫原(合成分子、例えば、合成ペプチドを含む)に対して産生させることができる。種々のそのような免疫化方法が記載されている(例えば、Kohler et al., Nature, 256: 495-497 (1975)およびEur. J. Immunol. 6: 511-519 (1976);Milstein et al., Nature 266: 550-552 (1977);Koprowski et al., 米国特許第4,172,124号;Harlow, E. and D. Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory: Cold Spring Harbor, NY);Current Protocols In Molecular Biology, Vol. 2 (Supplement 27, Summer '94), Ausubel, F.M. et al., Eds., (John Wiley & Sons: New York, NY), Chapter 11, (1991)を参照)。また、適した宿主(例えば、マウス)に、PLVAPを発現する細胞(例えば、癌細胞/細胞株)またはPLVAPを発現するように人為的に操作された細胞(例えば、トランスフェクト細胞)による免疫化を行うことによって、抗体を産生させることもできる(例えば、Chuntharapai et al., J. Immunol., 152:1783-1789 (1994);Chuntharapai et al. 米国特許第5,440,021号を参照)。
【0070】
免疫化後の適切な時点、例えば抗体価が最も高い時点で、免疫化動物から抗体産生細胞を得、それを、Kohler and Milstein(Nature 256:495-497, 1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al., Immunol. Today 4:72, 1983)、EBV-ハイブリドーマ法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96, 1985)またはトリオーマ法などの標準的な手法によってモノクローナル抗体を調製するために用いることができる。ハイブリドーマを作製するための技術は周知である(概論については、Current Protocols in Immunology, Coligan et al., (eds.) John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, 1994を参照)。手短に述べると、不死細胞株(典型的には骨髄腫)を、上記の免疫原によって免疫化した哺乳動物由来のリンパ球(典型的には脾細胞)と融合させて、その結果生じたハイブリドーマ細胞の培養上清を、本明細書に記載のポリペプチドと結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングする。
【0071】
リンパ球と不死化細胞株を融合させるために用いられる多くの周知のプロトコールの任意のものを、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を作製するために適用することができる(例えば、Current Protocols in Immunology, 前記;Galfre et al., Nature, 266:55052, 1977;R.H. Kenneth, in Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, New York, 1980;およびLemer, Yale J. Biol. Med. 54:387-402, 1981を参照)。さらに、当業者は、同じく有用であると考えられる、そのような方法の多くの変形物が存在することを理解している。
【0072】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための1つの代替法において、PLVAPタンパク質に対するモノクローナル抗体は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)を標的ポリペプチドによってスクリーニングし、それによってそのポリペプチドと結合するライブラリーのメンバーを単離することによって同定して単離することができる。ファージディスプレイライブラリーの作製およびスクリーニングのためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(商標) Phage Display Kit, カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーの作製およびスクリーニングに用いるのに特に適している方法および試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号;PCT特許出願公開番号WO 92/18619;PCT特許出願公開番号WO 91/17271;PCT特許出願公開番号WO 92/20791;PCT特許出願公開番号WO 92/15679;PCT特許出願公開番号WO 93/01288;PCT特許出願公開番号WO 92/01047;PCT特許出願公開番号WO 92/09690;PCT特許出願公開番号WO 90/02809;Fuchs et al., Bio/Technology 9:1370-1372, 1991;Hay et al., Hum. Antibodies Hybridomas 3:81-85, 1992;Huse et al., Science 246:1275-1281,1989;およびGriffiths et al., EMBO J. 12:725-734, 1993に見いだすことができる。
【0073】
抗体断片(例えば、抗原結合性断片)は、酵素的切断または組換え手法によって作製することができる。例えば、パパイン切断またはペプシン切断は、それぞれFab断片またはF(ab')2断片を生成することができる。不可欠な基質特異性を有する他のプロテアーゼを、Fab断片またはF(ab')2断片を生成させるために用いることもできる。
【0074】
また、抗体を、1つまたは複数の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入された抗体遺伝子を用いて、種々の切断型形態で産生させることもできる。例えば、F(ab')2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、重鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。
【0075】
複数の異なる種に由来する部分を含む、単鎖抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化(CDRグラフト)抗体または張り合わせ抗体も、本発明および「抗体」という用語の範囲に含まれる。これらの抗体のさまざまな部分を、従来の手法によって化学的に連結させること、または遺伝子工学の手法を用いて連続したタンパク質として調製することができる。例えば、キメラ鎖またはヒト化された鎖をコードする核酸を発現させて、連続したタンパク質を産生させることができる。例えば、Cabilly et al., 米国特許第4,816,567号;Cabilly et al., 欧州特許第0,125,023号B1;Boss et al., 米国特許第4,816,397号;Boss et al., 欧州特許第0,120,694号B1;Neuberger, M.S. et al., WO 86/01533;Neuberger, M.S. et al., 欧州特許第0,194,276号B1;Winter, 米国特許第5,225,539号;Winter, 欧州特許第0,239,400号B1;Queen et al., 欧州特許第0 451 216号B1;およびPadlan, E.A. et al., EP 0 519 596号A1を参照。また、霊長類化抗体に関するNewman, R. et al., BioTechnology, 10: 1455-1460 (1992)、ならびに単鎖抗体に関するLadner et al., 米国特許第4,946,778号およびBird, R.E. et al., Science, 242: 423-426 (1988))も参照のこと。
【0076】
特定の態様において、本発明は、PLVAP(例えば、SEQ ID NO:23を含むヒトPLVAPタンパク質)と特異的に結合するキメラ抗体に関する。1つの態様において、本発明のキメラ抗体は、ヒトIgG4の少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖(例えば、κ軽鎖)を含む。
【0077】
別の態様において、本発明は、PLVAP(例えば、SEQ ID NO:23を含むヒトPLVAPタンパク質)と特異的に結合するヒト化抗体に関する。ヒト化抗体は、標準的な方法または他の適した手法を用いる合成または組換えDNA技術を用いて作製することができる。また、ヒト化された可変領域をコードする核酸(例えば、cDNA)配列は、以前にヒト化された可変領域からのDNAテンプレートなどの、ヒト鎖またはヒト化された鎖をコードするDNA配列を変化させるように、PCR突然変異誘発法を用いて構築することもできる(例えば、Kamman, M., et al., Nucl. Acids Res., 17: 5404 (1989));Sato, K., et al., Cancer Research, 53: 851-856 (1993);Daugherty, B.L. et al., Nucleic Acids Res., 19(9): 2471-2476 (1991);およびLewis, A.P. and J.S. Crowe, Gene, 101: 297-302 (1991)を参照)。これらの方法または他の適した方法を用いて、変異体も容易に作製することができる。1つの態様においては、クローニングされた可変領域(例えば、dAb)を突然変異させて、所望の特異性を有する変異体をコードする配列を選択することができる(例えば、ファージライブラリーから;例えば、Krebber et al. 米国特許第5,514,548号;1993年4月1日公開のHoogenboom et al., WO 93/06213を参照)。また、ヒト化抗体を、例えばAntitope Limited(Cambridge, UK)を含む販売元に作製させること、および/またはそこから得ることもできる。
【0078】
例えば、組換え抗体もしくは抗体結合断片(例えば、dAb)をライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)から選択する方法、またはトランスジェニック動物(例えば、マウス)の免疫化に依拠する方法を含む、不可欠な特異性を持つ抗体を作製または単離する他の適した方法を用いることもできる。ヒト抗体レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物は当技術分野において周知であり(例えば、Xenomouse(登録商標)(Abgenix, Fremont, CA))、適した方法を用いて作製することができる(例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551-2555 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362: 255-258 (1993);Lonberg et al. 米国特許第5,545,806号;Surani et al., 米国特許第5,545,807号;Lonberg et al. WO 97/13852を参照)。
【0079】
ひとたび作製されれば、PLVAPに対して特異的な抗体を、当技術分野において周知である特異的抗体のスクリーニングおよび単離のための方法を用いて、容易に同定することができる。例えば、Paul (ed.), Fundamental Immunology, Raven Press, 1993;Getzoffet al., Adv. in Immunol. 43:1-98, 1988;Goding (ed.), Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press Ltd., 1996;Benjamin et al., Ann. Rev. Immunol. 2:67-101, 1984を参照。種々のアッセイを、PLVAPタンパク質と特異的に結合する抗体を検出するために利用することができる。例示的なアッセイは、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (Eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988に詳述されている。そのようなアッセイの代表的な例には、以下のものが含まれる:並行免疫電気泳動法(concurrent immunoelectrophoresis)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降法、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ドットブロットアッセイまたはウェスタンブロットアッセイ、阻害アッセイまたは競合アッセイ、およびサンドイッチアッセイ。
【0080】
ある態様において、本発明の抗体は、PLVAPに対して高い結合親和性を有する。そのような抗体は、好ましくは、少なくとも約10-7M(例えば、約0.4×10-7M、約0.6×10-7Mまたはそれ以上、例えば、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、または少なくとも約10-10Mである、Kdとして表現される、PLVAPに対する親和性(例えば、結合親和性)を有する。抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析により、当業者によって容易に決定可能である(Scatchard, G., Ann. NY Acad. Sci. 51: 660-672, 1949)。また、結合親和性を、タンパク質が受容体チップの表面に固定化されている市販のバイオセンサー装置(BIACORE, Pharmacia Biosensor, Piscataway, N.J.)を用いて決定することもできる。Karlsson, J. Immunol. Methods 145:229-240, 1991およびCunningham and Wells, J. Mol. Biol. 234:554-563, 1993を参照。このシステムは、結合親和性の算出を可能にするオン速度(on-rate)およびオフ速度(off-rate)の決定、ならびに結合の化学量論の評価を可能にする。
【0081】
本発明の抗体は、例えば、生物試料中の抗体および抗体と結合しているタンパク質(例えば、PLVAP)の検出を可能にする検出可能な標識などの、標識を含むことができる。検出可能な標識は、診断用途のために特に適している。例えば、PLVAP抗体を放射性同位体(放射性同位元素)で標識し、それを当業者はγカウンター、シンチレーションカウンターを用いて、またはオートラジオグラフィーもしくは他の適した手段によって検出することができる。本発明の目的において有用な同位体には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:3H、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、58Co、59Feおよび75Se。
【0082】
また、本発明の抗体を、蛍光性化合物(例えば、色素)によって標識することもできる。蛍光標識した抗体を適切な波長の光に曝露させると、その存在を化合物の蛍光によって検出することができる。最も一般的に用いられる蛍光性標識には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒドおよびフルオレサミンがある。152Euまたはランタン系列の他のものなどの蛍光放出性金属を用いて、本発明の抗体を標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザ-シクロドデカン四酢酸(DOTA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート基を用いて、抗体と結び付けることができる。
【0083】
また、本発明の抗体を、化学発光性化合物とカップリングさせることもできる。有用な化学発光性標識化合物の例には、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルがある。
【0084】
同様に、本発明の抗体を標識するために生物発光性化合物を用いてもよい。生物発光とは、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める、生体システムにおいて認められる化学蛍光の一種である。生物発光性タンパク質の存在は、蛍光の存在を検出することによって決定される。標識の目的に有用な生物発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0085】
標識された抗体の検出は、例えば、検出可能な標識が放射性γ放射体である場合にはシンチレーションカウンターによって、または例えば、標識が蛍光性材料である場合には蛍光光度計によって行うことができる。酵素性標識の場合、検出は、酵素に対する基質を用いる比色法によって行うことができる。また、検出を、基質の酵素反応の程度を同様に調製した標準物質と比較する視覚的比較によって行ってもよい。
【0086】
したがって、本発明の抗体を、組織切片の染色剤として用いることもできる。例えば、PLVAPと結合する標識抗体を、組織試料、例えば、患者からの肝組織生検試料または細針吸引物と接触させることができる。続いて、この切片を洗浄し、標識を適切な手段を用いて検出することができる。
【0087】
HCCを治療する目的の場合、本発明のPLVAP抗体は、PLVAPを発現する細胞(例えば、HCC細胞の周囲にある血管内皮細胞)の破壊を増強する、放射性標識または他の治療剤を含むことができる。HCC療法に用いるのに適した放射性同位元素標識の例には、125I、131I、90Y、67Cu、217Bi、211At、212Pb、47Sc、109Pd、111Inおよび118Reが含まれるがこれらに限定されない。任意で、中性子線照射によってα粒子およびβ粒子を放出する標識、例えばホウ素などを、治療用PLVAP抗体のための標識として用いることもできる。
【0088】
また、治療用抗体が、PLVAPを発現する細胞を選択的に死滅させることのできる細胞傷害性物質を含んでもよい。例えば、ジフテリア毒素またはリシンなどの細菌毒素を用いることができる。ジフテリア毒素のフラグメントAを含む抗体を作製するための方法は、米国特許第4,675,382号(1987)に教示されている。ジフテリア毒素は2つのポリペプチド鎖を含む。B鎖は毒素を細胞表面上の受容体と結合させる。A鎖は実際に細胞質中に入り、ETPの加水分解に伴ってリボソームをmRNAに沿って移動させる因子である伸長因子2を不活性化することによってタンパク質合成を阻害する。Darnell, J. et al., in Molecular Cell Biology, Scientific American Books, Inc., page 662 (1986)を参照。または、毒性レクチンの1つであるリシンを含む抗体を調製することもできる。他の適した細胞傷害性物質は当業者に公知である。
【0089】
インビボ検出のためには、本発明のPLVAP抗体を放射性核種と直接的に、または介在官能基を用いることによってコンジュゲートさせることができる。金属陽イオンとして存在する放射性同位元素を抗体と結合させるためにしばしば用いられる介在基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはテトラアザ-シクロドデカン四酢酸(DOTA)である。このように結合する金属陽イオンの典型的な例には、99Tc、123I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Gaおよび68Gaがある。
【0090】
さらに、本発明の抗体に、常磁性原子を含むNMR造影剤をタグ付加することもできる。NMR造影剤の使用により、NMR法を用いた患者におけるHCCの存在および程度のインビボ診断が可能になる。これに関して特に有用な元素には、157Gd、55Mn、162Dy、52Crおよび16Feがある。
【0091】
1つの態様において、本発明は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC), P.O. Box 1549, Manassas, Virginia 20108, United States of Americaに____に寄託されたハイブリドーマである、ハイブリドーマKFCC-GY4(ATCCアクセッション番号____)によって産生されるPLVAP抗体に関する。別の態様において、本発明は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC), P.O. Box 1549, Manassas, Virginia 20108, United States of Americaに____に寄託されたハイブリドーマである、ハイブリドーマKFCC-GY5(ATCCアクセッション番号____)によって産生されるPLVAP抗体を提供する。
【0092】
別の態様において、本発明は、ハイブリドーマKFCC-GY4(ATCCアクセッション番号____)に関する。さらなる態様において、本発明は、ハイブリドーマKFCC-GY5(ATCCアクセッション番号____)を提供する。
【0093】
PLVAPアンタゴニスト
本発明のPLVAPアンタゴニストは、PLVAP遺伝子産物の活性を阻害する(例えば、低下させる、阻止する)任意の作用物質でありうる。PLVAP活性には、HCC腫瘍の形成、成長、血管新生または進行が含まれるがこれらに限定されない。特定の態様において、PLVAPアンタゴニストは、PLVAP遺伝子産物と特異的に結合することによって、PLVAP遺伝子産物(例えば、PLVAP RNA、PLVAPタンパク質)の活性を阻害する。PLVAPアンタゴニストはまた、PLVAP遺伝子または遺伝子産物(例えば、PLVAP RNA、PLVAPタンパク質)の発現(例えば、転写、mRNAプロセシング、翻訳)を阻害する(低下させる、減少させる、阻止する)作用物質も範囲に含む。PLVAPアンタゴニストは、例えば、抗体、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物または核酸であってよい。
【0094】
抗体アンタゴニスト
本発明のPLVAPアンタゴニストは、PLVAPタンパク質と特異的に結合する抗体でありうる。そのような抗体には、以下に限定されないが、本明細書に記載されたPLVAP特異的抗体が含まれる。
【0095】
小分子アンタゴニスト
PLVAPアンタゴニストが小分子であってもよい。小分子の例には、有機化合物、有機金属化合物、無機化合物、および有機化合物の塩、有機金属化合物の塩、または無機化合物の塩が含まれる。小分子中の原子は、典型的には、共有および/またはイオン結合を介して連結している。有機小分子中の原子の配置は、鎖(例えば、炭素-炭素鎖または炭素-ヘテロ原子鎖)であってもよく、または炭素原子を含む環、例えば、ベンゼン環系もしくは多環系(policyclic system)、または炭素原子とヘテロ原子の組み合わせ、すなわち、ピリミジンもしくはキナゾリンなどの複素環であってもよい。小分子は任意の分子量であってよいが、それらは一般に約5,000ダルトン未満の分子を含む。例えば、そのような小分子は約1000ダルトン未満であってよく、好ましくは、約750ダルトン未満、またはより好ましくは約500ダルトン未満である。小分子および他の非ペプチド性PLVAPアンタゴニストは、天然に見出されうる(例えば、同定され、単離され、精製された)ものでもよく、および/または合成的に生成されたものでもよい(例えば、伝統的な有機合成、生物媒介合成またはそれらの組み合わせによる)。例えば、Ganesan, Drug Discov. Today 7(1): 47-55 (January 2002);Lou, Drug Discov. Today, 6(24): 1288-1294 (December 2001)を参照。天然に存在する小分子の例には、ホルモン、神経伝達物質、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂質およびそれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0096】
ペプチドアンタゴニスト
本発明のPLVAPアンタゴニストは、PLVAPタンパク質と結合するペプチドであってもよい。本ペプチドは、任意の適したL-および/またはD-アミノ酸、例えば、一般的α-アミノ酸(例えば、アラニン、グリシン、バリン)、非α-アミノ酸(例えば、β-アラニン、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、サルコシン、スタチン(statine))および異常アミノ酸(例えば、シトルリン、ホモシトルリン、ホモセリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン)を含みうる。ペプチド上のアミノ基、カルボキシル基および/または他の官能基は、遊離型(例えば修飾されていない)であってもよく、または適した保護基で保護されていてもよい。アミノ基およびカルボキシル基に適した保護基、ならびに保護基を付加または除去するための方法は当技術分野において公知であり、例えば、Green and Wuts, "Protecting Groups in Organic Synthesis", John Wiley and Sons, 1991に開示されている。ペプチドの官能基を、当技術分野で公知の方法を用いて誘導体化(例えば、アルキル化)することもできる。
【0097】
ペプチドPLVAPアンタゴニストは、必要に応じて、1つまたは複数の修飾(例えば、アミノ酸リンカー、アシル化、アセチル化、アミド化、メチル化、末端修飾因子(例えば、環状化修飾))を含むことができる。また、ペプチドが化学修飾(例えば、N-メチル-α-アミノ基置換)を含むこともできる。加えて、ペプチドアンタゴニストは、公知および/または天然に存在するペプチドの類似体、例えば、保存的なアミノ酸残基置換を有するペプチド類似体であってもよい。これらの修飾は、そのPLVAPアンタゴニスト活性を含む、ペプチドのさまざまな特性(例えば、溶解性、結合)を改善することができる。
【0098】
ペプチドであるPLVAPアンタゴニストは、線状、分枝状または環状であってよく、例えば、いくつかのアミド結合を含むヘテロ原子環構造ペプチドであってよい。特定の態様において、ペプチドは環状ペプチドである。そのようなペプチドは、当業者により、標準的な手法を用いて作製可能である。例えば、ペプチドを、酵素的もしくは化学的な切断によって天然状態(native)のタンパク質から導き出すこともしくは取り出すこともでき、または、適した方法、例えば固相ペプチド合成(例えば、メリフィールド型合成)によって合成することもできる(例えば、Bodanszky et al. "Peptide Synthesis," John Wiley & Sons, Second Edition, 1976を参照)。また、PLVAPアンタゴニストであるペプチドを、例えば、組換えDNA法または他の適した方法を用いて作製することもできる(例えば、Sambrook J. and Russell D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2001を参照)。
【0099】
ペプチドを合成し、それらを集めて、少数ないし多数の別個の分子種を含むライブラリーにすることができる。そのようなライブラリーはコンビナトリアル化学の方法を用いて調製することができ、そのライブラリーが所望の生物活性を有するペプチドを含むか否かを判定するための任意の適した方法を用いてスクリーニングすることができる。続いて、そのようなペプチドアンタゴニストを、当業者に公知の適した方法を用いて単離することができる。
【0100】
ペプチド模倣性アンタゴニスト
また、PLVAPアンタゴニストがペプチド模倣物であってもよい。例えば、ペプチドと同じ官能基を有する多糖類を調製することができる。ペプチド模倣物は、例えば、標的分子と結合している、または結合すると考えられる環境内での、ペプチド作用物質の三次元構造を立証することにより、合成することができる。ペプチド模倣物は、1つまたは複数の結合部分、および骨格または支持構造という、少なくとも2つの構成要素を含む。
【0101】
結合部分は、標的分子、例えばヒトPLVAPと反応するかまたは複合体を形成する(例えば、疎水性またはイオン性相互作用を通じて)、化学原子または化学基である。例えば、ペプチド模倣物における結合部分は、ペプチドアンタゴニストまたはタンパク質アンタゴニストにおけるものと同じであってよい。結合部分は、ペプチドアンタゴニストにおける結合部分と同じまたは類似の様式で受容体と反応する原子または化学基であってよい。例えば、計算機化学(computational chemistry)を用いて、PLVAPタンパク質と結合するペプチドのペプチド模倣物を設計することができる。ペプチド中の塩基性アミノ酸に関するペプチド模倣物の設計に用いるのに適した結合部分の例には、窒素含有基、例えばアミン、アンモニウム、グアニジンおよびアミドまたはホスホニウムなどが含まれる。酸性アミノ酸に関するペプチド模倣物の設計に用いるのに適した結合部分の例には、例えば、カルボキシル、低級アルキルカルボン酸エステル、スルホン酸、低級アルキルスルホン酸エステル、または亜リン酸もしくはそのエステルが含まれる。
【0102】
支持構造は、1つまたは複数の結合部分と結合した場合に、ペプチド模倣物の三次元的立体配置をもたらす化学的実体である。支持構造は有機であっても無機であってもよい。有機支持構造の例には、多糖類、有機合成ポリマーのポリマーまたはオリゴマー(ポリビニルアルコールまたはポリラクチドなど)が含まれる。支持構造は、ペプチド骨格またはペプチド支持構造と実質的に同じサイズおよび寸法を有することが好ましい。これは、ペプチドおよびペプチド模倣物の原子および結合のサイズを計算または測定することによって決定することができる。1つの態様においては、ペプチド結合の窒素を酸素またはイオウで置換して、例えばポリエステル骨格を形成させることができる。別の態様においては、カルボニルをスルホニル基またはスルフィニル基で置換して、それによってポリアミド(例えば、ポリスルホンアミド)を形成させることができる。ペプチドの逆アミドを作ることができる(例えば、1つまたは複数の-CONH-基によって-NHCO-基を置換する)。さらに別の態様では、ペプチド骨格をポリシラン骨格で置換することができる。
【0103】
これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。例えば、ポリエステルペプチド模倣物は、ヒドロキシル基によって、対応するアミノ酸上のα-アミノ基を置換し、それによってヒドロキシ酸を調製し、任意で、副反応を最小限に抑えるために塩基性および酸性側鎖をブロックした上で、それらのヒドロキシ酸を逐次的にエステル化することによって調製することができる。適切な化学合成経路は、化学構造が決定されれば、一般に容易に同定することができる。
【0104】
ペプチド模倣物を合成し、それらを集めて、少数ないし多数の別個の分子種を含むライブラリーにすることができる。そのようなライブラリーは、コンビナトリアル化学の周知の方法を用いて調製することができ、そのライブラリーが所望の生物活性を有するペプチド模倣物を含むか否かを判定するための任意の適した方法を用いてスクリーニングすることができる。続いて、そのようなペプチド模倣性アンタゴニストを、当業者に公知の適した方法を用いて単離することができる。
【0105】
核酸アンタゴニスト
PLVAPアンタゴニストには、PLVAP遺伝子の発現を阻害する核酸分子を含むさまざまな核酸(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム)も含まれる。例えば、短鎖干渉性リボ核酸(siRNA)、および同様に、細胞内でプロセシングされて短いsiRNA様分子になる短鎖ヘアピンリボ核酸(shRNA)は、PLVAPタンパク質の発現(翻訳)を妨げることができる。siRNA分子は一般に約20〜約25ヌクレオチド長のポリヌクレオチドであり、特定のRNA配列(例えば、PLVAP mRNA配列)と結合するように設計される。siRNAは遺伝子発現を配列特異的な様式で停止させ、標的RNA(例えば、相補的配列を有するRNA)と結合して、RNAをエンドリボヌクレアーゼによって分解させる。PLVAP遺伝子産物の発現を阻害することのできるsiRNA分子は、適した方法によって作製することができる。関心対象の遺伝子の配列と結合するsiRNA分子を設計するために用いることのできる、いくつかのアルゴリズムがある(例えば、Mateeva O. et al. Nucleic Acids Res. 35(8):Epub, 2007;Huesken D. et al., Nat. Biotechnol. 23:995-1001;Jagla B. et al., RNA 11:864-872, 2005;Shabalinea S.A. BMC Bioinformatics 7:65, 2005;Vert J.P. et al. BMC Bioinformatics 7:520, 2006を参照)。siRNAまたはshRNAを安定的に発現しうる発現ベクターが入手可能である(例えば、Brummelkamp, T.R., Science 296: 550-553, 2002, Lee, NS, et al., Nature Biotechnol. 20:500-505, 2002;Miyagishi, M.,およびTaira, K. Nature Biotechnol. 20:497-500, 2002;Paddison, P.J., et al., Genes & Dcv. 16:948-958, 2002;Paul, C.P., et al., Nature Biotechnol. 20:505-508;2002;Sui, G., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(6):5515-5520, 2002;Yu, J-Y, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(9):6047-6052, 2002;Elbashir, SM, et al., Nature 411:494-498, 2001.を参照)。siRNA/shRNA分子の安定的な発現は、それがその分子の長期的発現を可能にし、そのために反復治療の必要性が軽減および/または解消される可能性があることから、癌の治療において有利である。
【0106】
また、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、リボプローブ)を、PLVAP発現を阻害するためのPLVAPアンタゴニストとして用いることもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に、標的核酸配列(例えば、mRNA)と特異的にハイブリダイズして、標的核酸の分解(例えば、RNアーゼH依存的な機序によるRNAの分解)を誘導する、またはスプライシングもしくは翻訳機構の進行を立体的に妨害する、短い(ほぼ13〜ほぼ25ヌクレオチドの)一本鎖核酸である(例えば、Dias N. and Stein C.A., Mol. Can. Ther. 1:347-355, 2002を参照)。PLVAPアンタゴニストとして用いうるアンチセンスオリゴヌクレオチドには多数のさまざまなタイプがあり、これにはメチルホスホネートオリゴヌクレオチド、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、リボースの2'位の水素がO-アルキル基(例えば、メチル)によって置き換えられたオリゴヌクレオチド、ポリアミド核酸(PNA)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(デオキシリボース部分がモルホリン環によって置き換えられている)、PN(リボースの3'位の酸素の、アミノ基によるN3'→P5'置き換え)およびキメラオリゴヌクレオチド(例えば、2'-O-メチル/ホスホロチオエート)が含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、予測アルゴリズムを用いて、あるタンパク質に対して特異的であるように設計することができる(例えば、Ding, Y., and Lawrence, C. E., Nucleic Acids Res., 29:1034-1046, 2001;Sczakiel, G., Front. Biosci., 5:D194-D201, 2000;Scherr, M., et al., Nucleic Acids Res., 28.2455-2461, 2000;Patzel, V., et al. Nucleic Acids Res., 27:4328-4334, 1999;Chiang, M.Y., et al. J. Biol. Chem., 266:18162-18171, 1991;Stull, R. A., et al., Nucleic Acids Res., 20:3501-3508, 1992;Ding, Y., and Lawrence, C. E., Comput. Chem., 23:387-400, 1999;Lloyd, B. H., et al., Nucleic Acids Res., 29:3664-3673, 2001;Mir, K. U., and Southern, E. M., Nat. Biotechnol., 17:788-792, 1999;Sohail, M., et al., Nucleic Acids Res., 29:2041-2051, 2001;Altman, R. K., et al., J. Comb. Chem., 1:493-508, 1999を参照)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、適した方法、例えば、自動核酸合成装置(例えば、Applied Biosystems製)を用いた核酸(例えば、DNA、RNA、PNA)合成によって作製することができる(Martin, P., Helv. Chim. Acta 78:486-504, 1995も参照のこと)。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、適切な発現ベクターを含む細胞内で安定的に発現させることもできる。
【0107】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、吸着性エンドサイトーシスのプロセスを介して、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)によって取り込まれる。このため、対象(例えば、哺乳動物)の治療において、アンチセンスPLVAPオリゴヌクレオチドを、例えば注射または注入によって、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に送達することができる。例えば、精製したオリゴヌクレオチドまたはsiRNA/shRNAを、単独で、または適した薬物送達媒体(例えば、リポソーム、陽イオン性ポリマー(例えば、ポリ-L-リジン、PAMAMデンドリマー、ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子およびポリエチレンイミン)を用いた製剤中にある状態で、または適した担体ペプチド(例えば、ホメオティック転写因子、アンテナペディア(Antennapedia)ペプチド、HIV-1のTatタンパク質、E5CAペプチド)とカップリングさせて投与することができる。
【0108】
また、リボザイムを、PLVAP発現を阻害するためのPLVAPアンタゴニストとして用いることもできる。リボザイムは、酵素活性を有するRNA分子である。リボザイムの1つのクラスは、他の別のRNA分子を、ヌクレオチド塩基配列に特異的な様式で、2つまたはそれ以上の小片へと繰り返し切断することができる。Kim et al., Proc Natl Acad Sci USA, 84:8788 (1987);Haseloff & Gerlach, Nature, 334:585 (1988);およびJefferies et al., Nucleic Acid Res, 17:1371 (1989)を参照。そのようなリボザイムは、典型的には、触媒ドメイン、および相補的塩基対合を通じてリボザイムの標的RNAとの結合を手引きする結合配列という、2つの機能ドメインを有する。特異的に設計されたリボザイムがひとたび標的mRNAと結合すると、それは標的mRNAを酵素的に切断し、典型的にはその安定性を低下させ、コードされるタンパク質を直接翻訳するその能力を破壊する。リボザイムがそのRNA標的を切断した後に、それは標的RNAから遊離し、その後に別の標的と結合してそれを切断することができる。つまり、単一のリボザイム分子が、新たな標的と繰り返し結合してそれを切断することができる。
【0109】
本発明によれば、リボザイムは、PLVAPをコードするmRNAの任意の部分を標的とすることができる。リボザイム標的配列を選択して、リボザイムを設計および作製するための方法は、当技術分野において一般に公知である。例えば、米国特許第4,987,071号;第5,496,698号;第5,525,468号;第5,631,359号;第5,646,020号;第5,672,511号;および第6,140,491号を参照されたく、それらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。例えば、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ型肝炎ウイルスモチーフ、I群イントロンモチーフ、またはRNアーゼP RNAモチーフなどのさまざまな立体配置において、適したリボザイムを設計することができる。例えば、米国特許第4,987,071号;第5,496,698号;第5,525,468号;第5,631,359号;第5,646,020号;第5,672,511号;および第6,140,491号;Rossi et al., AIDS Res Human Retroviruses 8:183 (1992);Hampel & Tritz, Biochemistry 28:4929 (1989);Hampel et al., Nucleic Acids Res, 18:299 (1990);Perrotta & Been, Biochemistry 31:16 (1992);およびGuerrier-Takada et al., Cell, 35:849 (1983)を参照。
【0110】
リボザイムは、通常のRNAに用いられるのと同じ方法によって合成することができる。例えば、適した方法は、Usman et al., J Am Chem Soc, 109:7845-7854 (1987)およびScaringe et al., Nucleic Acids Res, 18:5433-5441 (1990)に開示されている。修飾リボザイムは、例えば、米国特許第5,652,094号;国際特許出願公開番号WO 91/03162;WO 92/07065およびWO 93/15187;欧州特許出願第92110298.4号;Perrault et al., Nature, 344:565 (1990);Pieken et al., Science, 253:314 (1991);ならびにUsman & Cedergren, Trends Biochem Sci, 17:334 (1992)に開示された方法によって合成することができる。
【0111】
また、本発明のPLVAPアンタゴニストは、PLVAPタンパク質と結合してその活性を阻害する核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)であってもよい。適した核酸PLVAPアンタゴニストには、関心対象の特定の分子(例えば、ヒトPLVAP)と、古典的なワトソン-クリック塩基対合以外の相互作用を通じて高い親和性および特異性で結合することのできる、アプタマーが含まれる(Tuerk and Gold, Science 249:505 (1990);Ellington and Szostak, Nature 346:818 (1990))。
【0112】
アプタマーは、ファージディスプレイによって作製されたペプチド、またはモノクローナル抗体(MAb)と同様に、選択された標的と特異的に結合し、結合を通じて、それらの標的が機能する能力を遮断することができる。アプタマーは、ランダムな配列のオリゴヌクレオチドのプールからインビトロ選択過程によって作り出され、増殖因子、転写因子、酵素、免疫グロブリンおよび受容体を含む100種を上回るタンパク質に関して作製されている。典型的なアプタマーは、サイズが10〜15kDa(30〜45ヌクレオチド)であり、その標的とナノモル未満の親和性で結合し、密接な関連のある標的同士を識別する(例えば、典型的には、同じ遺伝子ファミリー由来の他のタンパク質とは結合しないと考えられる)。一連の構造研究により、アプタマーは、抗体-抗原複合体における親和性および特異性の動因となるものと同じタイプの結合相互作用(水素結合、静電的相補性、疎水性接触、立体排除、その他)を用いうることが示されている。
【0113】
関心対象の標的(例えば、ヒトPLVAPタンパク質)と結合するアプタマーは、例えば、米国特許第5,475,096号および米国特許第5,270,163号に記載された、「指数的富化によるリガンドの系統的進化(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)」(SELEX)として知られる標準的な過程によって作製して同定することができる。
【0114】
PLVAPアンタゴニストの同定
PLVAP遺伝子産物に対する結合特異性を有する作用物質は、スクリーニングにおいて、例えば、化合物および/またはライブラリー(例えば、化合物、ペプチド、核酸のライブラリー)のハイスループットスクリーニングにおいて同定することができる。
【0115】
ヒトPLVAPと特異的に結合する抗体は、例えば、市販のコンビナトリアル抗体ライブラリー(Dyax Corp., MorphoSys AG)をスクリーニングすることによって同定することができる。適したコンビナトリアル抗体ライブラリー、およびこれらのライブラリーのスクリーニングの標準的な方法は、Hoet et al., Nature Biotechnology 23(3):344-348 (2005)およびRauchenberger et al., J. Biol. Chem. 278(40):38194-38205 (2003)に記載されており、それらの内容は参照により本明細書に組み入れられる。また、そのようなライブラリーまたは分子の収集物を、周知の化学的方法を用いて調製することもできる。
【0116】
または、ヒトPLVAPと特異的に結合するマウス抗体を、例えば、マウスに対して、抗原に対する寛容性を損なわせるためのアジュバントとともに、PLVAPタンパク質、タンパク質断片またはペプチドによる免疫化を行うことによって同定することもできる。これらの抗体を所望の特異性および活性に関してスクリーニングし、続いて、ヒト疾患の治療のための適した作用物質を作り出すための公知の手法を用いてヒト化することができる。
【0117】
化合物または小分子は、入手可能な数多くの化合物ライブラリー、例えば、Chemical Repository of the National Cancer InstituteおよびMolecular Libraries Small Molecules Repository(PubChem)、ならびにHarvard UniversityのInstitute of Chemistry and Cell Biologyのライブラリー、および販売元から入手可能な他のライブラリー(例えば、Chembridge、Peakdale、CEREP、MayBridge、Bionet)から同定することができる。また、そのようなライブラリーまたは分子の収集物を、周知の化学的方法、例えばコンビナトリアル化学の周知の方法などによって調製することもできる。PLVAPと結合してそれを阻害する化合物を同定するために、ライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0118】
同定された化合物は、医薬化学の周知の方法を用いたさらなる多様化のためのリード化合物として役立てることができる。例えば、リード体の構造変異体である化合物の収集物を調製して、PLVAP結合活性および/または阻害活性に関してスクリーニングすることができる。これは、化合物の構造と生物活性を関連づける構造活性関連の展開をもたらしうる。適した結合活性および阻害活性を有する化合物を、インビボ使用のためにさらに開発することができる。
【0119】
PLVAPと結合する作用物質を、PLVAPアンタゴニスト活性に関して評価することができる。例えば、PLVAPタンパク質を含む組成物は、PLVAPタンパク質と結合してそれに拮抗する作用物質を検出および/または同定するためのスクリーニングまたは結合アッセイに用いることができる。使用に適した組成物は、例えば、PLVAPタンパク質を天然に発現する細胞(例えば、肝臓血管内皮細胞)、そのような細胞の抽出物、および組換えPLVAPタンパク質を含む。
【0120】
PLVAPタンパク質と結合する作用物質は、例えば、参照作用物質とのPLVAPの結合を阻害する被験作用物質の能力を評価する、競合結合アッセイにおいて、同定することができる。参照作用物質は、完全長PLVAPタンパク質またはその一部分であってよい。参照作用物質を、適切な標識(例えば、放射性同位元素、エピトープ標識、親和性標識(例えば、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン)、スピン標識、酵素、蛍光基、化学発光基、色素、金属(例えば、金、銀)、磁気ビーズ)によって標識し、アッセイにおいてPLVAPタンパク質を飽和させるために必要な標識参照作用物質の量を決定することができる。PLVAPタンパク質と被験作用物質との複合体の形成の特異性は、適した対照(例えば、標識されていない作用物質、標識のみ)を用いて決定することができる。
【0121】
被験作用物質が参照作用物質とPLVAPタンパク質との複合体の形成を阻害する能力は、標識参照作用物質の特異的結合の50%阻害(IC50値)のために必要な被験作用物質の濃度として決定することができる。特異的結合は、好ましくは、全結合(例えば、複合体中の全標識)から非特異的結合を差し引いたものと定義される。非特異的結合は、好ましくは、標識されていない過剰な参照作用物質の存在下で形成された複合体中に依然として検出される標識の量と定義される。本方法に用いるのに適した参照作用物質には、PLVAPと特異的に結合する分子および化合物、例えば、PLVAPと結合する抗体が含まれる。
【0122】
PLVAPタンパク質に拮抗する作用物質は、PLVAPの1つまたは複数の活性、例えば腫瘍血管新生に拮抗する(低下させる、阻止する、阻害する)作用物質に関するスクリーニングによって同定することができる。そのような活性は、当業者により、任意の適切なインビトロまたはインビボアッセイを用いて評価可能である。
【0123】
薬学的組成物
本発明のPLVAPアンタゴニストは、哺乳動物対象に対して、薬学的または生理的組成物の一部として、例えば、PLVAPアンタゴニストと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物の一部として投与することができる。PLVAPアンタゴニスト(例えば、PLVAPと特異的に結合する抗体)を含む製剤もしくは組成物、またはPLVAPアンタゴニストおよび1つもしくは複数の他の治療剤(例えば、化学療法剤、例えば、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、オクトレオチド)を含む組成物は、選択される投与経路に従って異なると考えられる(例えば、溶液、乳濁液またはカプセル)。適した薬学的担体は、PLVAPアンタゴニストと相互作用しない不活性成分を含みうる。Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに記載されたもののような、標準的な医薬製剤化の手法を用いることができる。非経口投与のために適した薬学的担体には、例えば、滅菌水、生理的食塩水、静菌生理食塩水(約0.9% mg/mlのベンジルアルコールを含む生理食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、リンゲル乳酸などが含まれる。製剤はまた、有効成分の有効性を高める少量の物質も含みうる(例えば、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤、湿潤剤)。組成物のカプセル封入の方法(硬ゼラチンまたはシクロデキストランのコーティング中などに)は当技術分野において公知である。吸入のためには、作用物質を可溶化させて、投与のために適したディスペンサー(例えば、噴霧器またはネブライザーまたは加圧エアロゾルディスペンサー)内に装填することができる。
【0124】
診断キット
本発明はまた、対象における肝細胞癌の存在を検出するための診断キットも提供する。そのようなキットは、試料(例えば、哺乳動物対象からの生物試料)中のPLVAP遺伝子の発現を検出するための少なくとも1つの作用物質(例えば、核酸プローブ、抗体)を含む。PLVAP遺伝子の発現は、例えば、試料中のPLVAP遺伝子産物、例えばPLVAP mRNAまたはPLVAPタンパク質などを検出することによって検出することができる。
【0125】
したがって、1つの態様において、本キットは、PLVAP RNA(例えば、mRNA、hnRNA)転写物と特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの核酸プローブ(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)を含む。そのようなプローブは、PLVAP RNAと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができる。
【0126】
別の態様において、本キットは、試料中のPLVAP遺伝子産物(例えば、mRNA、cDNA)と特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプライマーの対を含む。そのようなプライマーは、試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルを決定するための、任意の標準的な核酸増幅手順(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば、RT-PCR、定量的リアルタイムPCR)に用いることができる。
【0127】
別の態様において、本発明の本発明は、PLVAPタンパク質(例えば、ヒトPLVAPタンパク質)と特異的に結合する抗体を含む。そのような抗体には、本明細書に記載された本発明のPLVAP抗体の任意のものが含まれる。1つの態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有するVHドメインおよびSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。別の態様において、抗体は、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有するVHドメインおよびSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。
【0128】
本発明のキット中の診断用作用物質は、1つまたは複数の標識(例えば、検出可能な標識)を含みうる。診断用作用物質に適した数多くの標識が当技術分野において公知であり、これには、以下に限定されないが、本明細書に記載された標識の任意のものが含まれる。特定の態様において、診断用作用物質(例えば、抗体)は、作用物質をイムノ-ポジトロン放出断層撮影法(イムノ-PET)用のために用いることができるように、放射性同位元素を含む。
【0129】
本発明をここで、以下の実施例によって例示するが、それらは決して限定的であると意図するものではない。
【実施例】
【0130】
実施例1:HCC肝組織では非HCC肝組織と比べてPLVAP発現が増大している
材料および方法
組織試料
HCCおよび隣接する非腫瘍性肝臓の組織を、治療目的でヒト患者から外科的に摘出した新鮮な標本から収集した。これらの標本は、担当病理医の直接的な監督下で収集した。収集した組織は直ちに、Koo Foundation Sun Yat-Sen Cancer Center(KF-SYSCC)の腫瘍バンク(Tumor Bank)で液体窒素中に貯蔵した。18例のHCC患者からの対になった組織試料を、本試験のために得ることができた。本試験は施設内審査委員会(Institutional Review Board)によって承認され、書面によるインフォームドコンセントをすべての患者から得た。本試験の18例のHCC患者の臨床的特徴を表1にまとめている。
【0131】
(表1)対になったHCC組織および隣接する非腫瘍性肝組織試料を得た18例のHCC患者に関する臨床データ

【0132】
mRNA転写物のプロファイリング
液体窒素中で凍結させた組織から、Trizol試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて全RNAを単離した。単離したRNAを、RNAEasy Mini kit(Qiagen, Valencia, CA)を用いてさらに精製し、その品質を、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)におけるRNA 6000 Nanoアッセイを用いて評価した。本試験に用いたすべてのRNA試料は、RNA Integrity Number(RIN)が5.7を上回った(8.2±1.0、平均±SD)。ハイブリダイゼーション標的をAffymetrixプロトコールに従って8μgの全RNAから調製し、およそ13,000種のヒト遺伝子に関する22,238種のプローブセットを含むAffymetrix U133A GeneChipとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションの直後に、ハイブリダイズさせたアレイを、Affymetrix GeneChip fluidics station 400およびEUkGE WS2v4プロトコールを用いる自動的な洗浄および染色に供した。その後に、U133A GenChipをAffymetrix GeneArray scanner 2500にてスキャンした。
【0133】
マイクロアレイデータの存在コール(present call)および非存在コール(absent call)の判定
Affymetrix Microarray Analysis Suite(MAS)5.0ソフトウエアを用いて、18対のHCCおよび隣接する非腫瘍性肝組織のすべてに関するマイクロアレイデータについて存在コールを生成させた。存在コールの判定に関するすべてのパラメーターは、デフォルト値とした。各プローブセットを、MAS 5.0によって「存在」「非存在」または「境界域」として判定した。同様に、同じマイクロアレイデータを、マイクロアレイ上の各プローブセットについて「存在」「非存在」または「境界域」状態を判定するために、dChipバージョン2004ソフトウエアを用いた処理にもかけた。
【0134】
発現に極めて差異のあるプローブセットの同定
HCCと隣接する非腫瘍性肝組織との間で発現に極めて差異のある遺伝子の同定のために、Practical Extraction and Report Language(PERL)を用いて書かれたソフトウエアを、以下の規則に従って用いた:「腫瘍特異的遺伝子」は、MAS 5.0およびdChipの両方により、HCCにおいて「存在」がコールされ、かつ隣接する非腫瘍性肝組織においては「非存在」または「境界域」がコールされたプローブセットと定義した。「非腫瘍性肝組織特異的遺伝子」は、MAS 5.0およびdChipの両方により、HCCにおいて「非存在」または「境界域」がコールされ、かつ対になった隣接する非腫瘍性肝組織において「存在」がコールされたプローブセットと定義した。同定アルゴリズムを示したフローチャート図が、図1に示されている。
【0135】
リアルタイム定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
mRNAの定量には、TaqMan(商標)リアルタイム定量的逆転写酵素-PCR(qRT-PCR)を用いた。各試料について、1500ngのオリゴ(dT)プライマーおよびInvitrogen(Carlsbad, CA)製の600単位のSuperScript(商標)II逆転写酵素を、製造元の指示に従って最終容量60μl中で用いて、8μgの全RNAからcDNAを合成した。各RT-PCR反応については、0.5μlのcDNAを、製造元の指示(ABIおよびRoche)に従って最終容量25μl中にてテンプレートとして用いた。PCR反応は、Applied Biosystems 7900HTリアルタイムPCRシステムを用いて行った。実験のために必要なプローブおよび試薬は、Applied Biosystems(ABI)(Foster City, CA)から得た。PLVAPのリアルタイム定量的RT-PCRのためのプライマーおよびプローブの配列は、

である。ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)ハウスキーピング遺伝子を、標準化のための内因性参照として用いた。すべての試料を、同じPCRプレート上で、同じ標的mRNAおよび内因性参照HPRT mRNAに対して2回ずつ調べた。標的mRNAの相対量は、製造元の指示に従って比較Ct法によって算出した(User Bulletin #2、ABI Prism 7700 Sequence Detection System)。非腫瘍性肝臓試料は算出の相対的較正物質として選択した。
【0136】
結果
18対のHCC組織および隣接する非腫瘍性肝組織におけるPLVAP遺伝子の発現強度を図2に示している。平均遺伝子発現強度は、対になったHCC組織および隣接する非腫瘍性肝組織においてそれぞれ759.8±436.5および170.6±53.4(平均±SD)であった。この2群間の対応t検定のp値は2.8×10-5であった。これらの結果は、PLVAPがHCCにおいて発現され、非腫瘍性肝組織では発現されないことを示している。HCCにおけるPLVAPの発現のこの増大は、対になっていない82件のHCC試料が810.4±482.0(平均±SD)という平均発現強度を示し、それが18対のHCC試料におけるものと本質的に同じ所見であることから、さらに確かめられた(t検定によるp=0.62)(図2)。
【0137】
PLVAPがHCC肝組織において有意に発現され、非腫瘍性肝組織ではそうでないことをさらに確かめるために、18対のHCC組織および隣接する非腫瘍性肝組織からのRNA試料に対してリアルタイム定量的RT-PCRを行った。PLVAP mRNAの数量は、HCCにおける方が非腫瘍性肝組織と比べて有意に多かった(図3Aおよび表2を参照)。これらの結果は2群間である程度の重複を示したものの、PLVAP転写物は、1例を除く試験したすべての個体で、同じ個体ではHCCにおける方が隣接する非腫瘍性肝組織におけるよりも多かった(図3B)。この例外は、組織の貯蔵期間中のRNA分解の度合いが一様でなかったことに伴う可能性が高い。
【0138】
(表2)18対のHCC組織および隣接する非腫瘍性肝組織に関するPLVAP遺伝子の発現強度

【0139】
実施例2:PLVAPはHCC血管内皮細胞によって特異的に発現される
材料および方法
ホルマリン固定したパラフィン包埋組織のレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)
パラフィンブロックからのホルマリン固定組織のLCMは、Arcturus Bioscience, Inc.(Mountain View, CA)製の、Arcturus PixCell(登録商標)IIeシステム、CapSure(商標) HS LCMキャップ、およびParadise(商標)試薬システムを用いて行った。製造元の指示に従って、LCMのために、7μm厚の組織切片を切り出して、脱パラフィン処理し、再水和させ、染色して、脱水した。7.5μmのレーザースポットサイズ、電力50mWおよび持続時間1.3msを用いて、標的細胞をCapSure(商標) HS LCMキャップ上に捕捉した。およそ5000〜6000個の細胞を各キャップ上に捕捉した。しかし、肝細胞癌血管内皮細胞については細胞の不足のために1000〜2000個のみを捕捉した。
【0140】
定量的RT-PCRのためのLCM組織切片からのRNA抽出
上記のようにCapSure(商標) HS LCMキャップ上に捕捉された細胞を、Paradise(商標)試薬システムを製造元の指示に従って用いて、RNA抽出、cDNA合成、インビトロ転写およびアンチセンスRNA増幅のために処理した。合成されたアンチセンスRNAを、続いて、LCMによって捕捉された細胞におけるPLVAPおよびβ-アクチンmRNAの定量のための2段階TaqManリアルタイム定量的RT-PCRのためのテンプレートとして用いた。第1の段階(すなわち、逆転写)は、製造元のプロトコールに従って、4.5μlのアンチセンスRNAおよびTaqMan逆転写試薬(ABI)を最終容量10μl中で用いて行った。第2の段階(すなわち、リアルタイムPCR)は、2.4μlのcDNAテンプレート、Applied Biosystems製のプライマー/プローブ混合物およびTaqMan汎用PCR Master Mixを最終容量25μlで用いて行った。リアルタイムPCRは、Smart Cycler II(Cephid, Inc., Sunnyvale, CA)において行った。反応物をまず50℃で2分間、続いて95℃で10分間インキュベートした。その後に、95℃ 15秒間の45サイクルの変性、および60℃ 40秒間のアニーリング/伸長を行わせた。プライマーおよびプローブの配列は表3に列記されている。
【0141】
(表3)レーザーキャプチャーマイクロダイセクションによって調製した試料におけるPLVAPおよびβ-アクチンのレベルに関するリアルタイム定量的RT-PCRのためのプライマーおよびプローブの配列

【0142】
組換え融合PLVAP51-442タンパク質のための発現ベクターの調製
PLVAPのアミノ酸残基51〜442をコードするPCR断片を、pGEM(登録商標)-T Easyベクター(Promega, Inc., Madison, WI)中に挿入することにより、プラスミドpGEM(登録商標)-T Easy-PLVAP51-442を作製した。このPCR断片を、プライマーセット

を用いることにより、OriGene(Rockville, MD)製のPLVAPのcDNAクローンから増幅させた。プラスミドpET-15b-PLVAP51-442の構築のためには、NdeIおよびBamHI認識配列をそれぞれの末端に有するPLVAPのアミノ酸残基51〜442をコードするcDNA断片をpGEM(登録商標)-T Easy-PLVAP51-442から切り出して、pET-15b(Novagen, Inc., San Diego, CA)中に挿入した。上記の発現構築物は、DNAシークエンシングによって検証された。
【0143】
組換え融合PLVAP51-442タンパク質の発現および精製
組換えHisタグ付加PLVAP51-442タンパク質(SEQ ID NO:2)(図4)の作製のためには、コンピテント細胞をpET-15b-PLVAP51-442プラスミドDNAとともに氷上で5分間インキュベートし、その後に42℃水浴中で30秒間インキュベートし、続いて再び氷上で2分間インキュベートすることにより、大腸菌(Escherichia coli)(Rosetta-gami2(DE3)pLysS)(Novagen)を形質転換させた。選択培地上へのプレーティングの前に、形質転換体を、SOC培地(0.5%酵母抽出物;2%トリプトン;10mM NaCl;2.5mM KCl;10mM MgCl2;10mM MgSO4;20mM グルコース)中にて、250rpmで振盪しながら、37℃で60分間インキュベートした。Rosetta-gami2(DE3)pLysS大腸菌におけるHisタグ付加融合タンパク質の発現は、1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドにより、30℃で16時間にわたって誘導させた。誘導の後に、細菌細胞を、8M尿素を加えた平衡緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH 7)中での超音波処理による溶解に供し、5,600×gでの30分間の遠心処理によって可溶性画分および不溶性画分に分離させた。His-PLVAP51-442タンパク質のさらなる精製のためには、可溶性画分をTALON(登録商標) Metal Affinity Resin(Clontech, Inc., Palo Alto, CA)に添加し、平衡緩衝液で洗浄した上で、溶出緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH 7、250mMイミダゾール)によって溶出させた。精製された融合タンパク質のHisタグは、製造元の指示に従ってトロンビン切断(Novagen)によって除去した(図5参照)。その結果得られたPLVAP51-442タンパク質を、PBSに対する十分な透析によって回収した。組換えPLVAPタンパク質の実体を検証するために、GST-PLVAP331-430融合タンパク質に対する少量のマウス抗血清をBiodesign Insitute(Tempe, AZ)から購入した。Hisタグを伴わない組換えPLVAP51-442タンパク質は、この抗体を用いたウエスタンブロット分析によって検出されたが、Hisタグに対する抗体とは反応しなかった。これらの結果は、組換えPLVAPタンパク質の実体を裏づけるものである。
【0144】
マウス抗ヒトPLVAP血清の作製
PBS中にある精製PLVAP51-442組換えタンパク質を用いて、6週齢Balb/cByjマウスの免疫化を行った。各マウスにまず、完全フロイントアジュバント(Sigma, Inc., St Louis, MO)中にある合計14μgのPLVAP51-442タンパク質の複数の部位への皮下注射によって免疫化を行った。その後に、不完全フロイントアジュバント中にある7μgのPLVAP51-442組換えタンパク質による追加免疫化を2週間毎に3回行った。最後の追加免疫化の1週後に、抗血清の調製のためにマウスから採血した。
【0145】
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)
試薬および溶液
1.組換えPLVAPタンパク質
2.抗マウスIgG-アルカリホスファターゼ結合物(カタログ番号:AP124A、CHEMICON)
3.コーティング緩衝液(0.137M塩化ナトリウム、0.01Mリン酸水素二ナトリウム七水和物、2mMリン酸一カリウム、0.002%(0.3mM)アジ化ナトリウム、pH 7.2〜7.4)
4.洗浄緩衝液(0.137M塩化ナトリウム、0.01Mリン酸水素二ナトリウム七水和物、2mMリン酸一カリウム、0.2% Tween20(カタログ番号P1379、SIGMA、pH 7.2〜7.4)
5.ブロッキング緩衝液(0.137M塩化ナトリウム、0.01Mリン酸水素二ナトリウム七水和物、2mMリン酸一カリウム、2%ウシ血清アルブミン(カタログ番号82-045、PENTEX)、0.05% Tween20(カタログ番号P1379、SIGMA)、pH 7.2〜7.4)
6.炭酸緩衝液(0.016M炭酸水素ナトリウム、0.014M炭酸ナトリウム、2mM塩化マグネシウム、0.002%(0.3mM)アジ化ナトリウム、pH 9.6)
7.アルカリホスファターゼ基質:40mgホスファターゼ基質錠1錠(カタログ番号P5994、SIGMA)を40mlの炭酸緩衝液中に溶解した。
【0146】
手順
抗PLVAP血清中の抗体の力価を、ELISAを用いて決定した。まず、96ウェルELISAプレートは、0.002%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(すなわち、コーティング緩衝液)中に50μlのPLVAPタンパク質を溶解させたものにより、2.5μg/mlの範囲の濃度で4℃にて一晩かけてコーティングした。200μlの洗浄緩衝液(0.05% Tween-20を含むPBS)で3回の洗浄した後に、コーティングされたプレートの各ウェルを、150μlのブロッキング緩衝液(すなわち、2%ウシ血清アルブミンを含む洗浄緩衝液)により、室温で30分間かけてブロックした。さらに3回洗浄した後に、各ウェルを、希釈緩衝液中にて調製した50μlの希釈抗血清(1,000倍から128,000倍まで2倍段階希釈)とともに室温で45分間インキュベートした。その後に、各ウェルを、5,000倍希釈の抗マウスIgGアルカリホスファターゼ結合物(Chemico, Inc., Temecula, CA)とともに室温で30分間インキュベートした。3回洗浄した後に、結合した抗体を100μlのアルカリホスファターゼ基質(Sigma, Inc., St Louis, MO)を用いて定量し、25〜40分間のインキュベーション期間後に405nmでの吸光度の測定を、ELISAプレートリーダーを用いて行った。
【0147】
ホルマリン固定組織中のPLVAPの免疫組織化学(IHC)検出
6μmの切片を、ホルマリン固定組織のパラフィンブロックから切り出した。切片をSuperFrost plus付着性スライドガラス(Menzel Glaser GmbH, Braunschweig, Germany)上にマウントした。続いて切片を、Benchmark XT自動染色装置(Ventana Medical Systems, Inc., Tucson, AZ)において、30分間の穏和なCCIコンディショニングを伴うXT-iView-DAB-V.1プロトコールを用いて、PLVAPの免疫染色のために処理し、切片を400倍に希釈した抗ヒトPLVAP血清とともに37℃で36分間インキュベートした。第2の抗体、およびマウス抗ヒトPLVAP抗体の結合を検出するために用いた試薬は、Ventana Medical Systems, Inc.(Tucson, AZ)製のiView(商標)DAB検出キットからのものとした。試薬および緩衝液はすべて、Ventana Medical Systemsから購入した。
【0148】
結果
HCC試料におけるPLVAPの細胞性供給源を明らかにするために、HCC血管内皮細胞、肝細胞癌の腫瘍細胞、および内壁をなす類洞内皮細胞を含む非腫瘍性肝細胞を、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)を用いて試料から切り出し採取した。ヘパトーマ細胞および毛細血管の内壁をなす内皮細胞は近接して並んでいるため、切り出し採取時には、毛細血管の内壁をなす内皮細胞の混入を避けるように努力した。切り出し採取した細胞から抽出したRNAを、PLVAP mRNAの相対量を決定するための二段階リアルタイム定量的RT-PCRのために用いた。2例の異なる患者からの標本を検討した。表4および図6A〜Cに示された結果は、PLVAPはHCC血管内皮細胞によって発現されるが(図6A)、一方、隣接する非腫瘍性肝組織では検出可能なPLVAP転写物が検出されなかったことを示している(図6B)。
【0149】
(表4)レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法によって切り出し採取した細胞内での、Taqmanリアルタイム定量的RT-PCRによる、2つのHCC試料におけるPLVAP mRNAの相対量の決定

【0150】
PLVAP発現の組織特異性および疾患特異性についてさらに調べるために、免疫組織化学(IHC)試験に用いるためのポリクローナル抗体を、ヒトPLVAPの細胞外ドメイン(アミノ酸51〜442)に対して作製した。図7に示されているように、組換えPLVAP51-442タンパク質により免疫化したBalb/cマウスから得た抗血清は、高力価の抗PLVAP抗体を含んでいた。
【0151】
続いて、この抗PLVAP抗血清を用いて、肝細胞癌(n=7)(図8A〜Fおよび9A〜F)、限局性結節性過形成(n=4)(図10A〜F)、肝血管腫(n=2)(図11AおよびB)、慢性活動性B型肝炎(n=2)(図12AおよびB)またはC型肝炎(n=4)(図13A〜D)および転移性癌(n=4)(すなわち、肝内胆管癌、転移性結腸直腸腺癌または転移性卵巣癌)(図14A〜D)の患者からの組織切片におけるPLVAP発現の局在を明らかにした。その結果により、肝細胞癌の毛細血管内皮細胞のみがPLVAPタンパク質を発現したことが示された(図8A、C、Eおよび9A、C、E、F)。PLVAPタンパク質は、硬変性肝臓、限局性結節性過形成の肝臓(図10A〜F)および慢性肝炎の肝臓(図12AおよびB;図13A〜D)を含む、非腫瘍性肝組織の血管類洞/毛細血管の内壁をなす内皮細胞によって発現されることはなかった。肝血管腫の内皮管壁細胞はいずれも有意なPLVAP発現を示さなかった(図11AおよびB)。これらの結果は、PLVAPが肝細胞癌に対して特異的な血管内皮バイオマーカーであるが、肝臓の他の疾患に対してはそうでないことを実証している。したがって、PLVAPはHCCの診断マーカーおよび治療標的として用いることができる。
【0152】
実施例3:PLVAPと特異的に結合するマウスモノクローナル抗体の作製および特性決定
材料および方法
免疫化手順
6週齢の雌性Balb/cByJマウス5匹に対して、まず、0.125mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解させて、等容量の完全フロイントアジュバント中に乳濁させた20μgの精製組換えPLVAPタンパク質による免疫化を行った。PLVAP-アジュバント混合物の容量0.05mLずつを、マウスの腹側の腋窩リンパ節および鼠径リンパ節の付近の4つの別の皮下部位、ならびに肩甲骨の間に位置する第5の皮下部位に注射した。すべてのマウスに対して、20μgの組換えPLVAPタンパク質の追加免疫化を、2週間毎の3回の腹腔内注射によって行った。最後の追加免疫化から1週後に、マウスが十分に高力価の抗PLVAP抗体(>10,000倍)を産生しているか否かを評価するための試験用採血を行った。固相酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)をこの目的に用いた。最も高力価のPLVAP抗体を産生したマウスを、ハイブリドーマの作製のために選択した。
【0153】
マウスモノクローナル抗PLVAP抗体の開発
ハイブリドーマを作製するために計画した融合実験の3日前に、最も高力価のPLVAP抗体を産生したマウスに対して20μgの組換えPLVAPを静脈内注射した。PLVAPに対するモノクローナル抗体(MAb)を産生するハイブリドーマを、以前に記載されたプロトコール(Unit 2.5 Production of Monoclonal Antibodies, in Current Protocols in Immunology, editors: Coligan JE, Kruisbeek AM, Margulies DH, Shevach EM, and Strober W. Published by John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001を参照)に若干の変更を加えた上で作製した。具体的には、免疫化したマウスから採取した脾細胞を、50%ポリエチレングリコール1540を用いて、SP2/0骨髄腫細胞と7.5:1(脾細胞:骨髄腫細胞)の比で融合させた。融合産物を96ウェル平底組織培養プレートに播き、ヒポキサンチン-アミノプテリンチミジン(HAT)選択培地を翌日に添加した。7〜10日後に、増殖陽性ウェルの上清を、ELISAにより、抗PLVAP抗体の産生に関してスクリーニングした。最初に抗PLVAP MAbを産生していたハイブリドーマを増やして、再びスクリーニングを行った。抗体の継続的産生を示したハイブリドーマを限界希釈法によってクローニングした。MAbのアイソタイプをELISAによって決定した。モノクローナル抗体を腹水または培養液からプロテインGアフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製した(Unit 2.7 Purification and Fragmentation of Antibodies, in Current Protocols in Immunology, editors: Coligan JE, Kruisbeek AM, Margulies DH, Shevach EM, and Strober W. Published by John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001を参照)。
【0154】
ELISAアッセイ
Elisaアッセイは本明細書に記載した通りに行った(実施例2参照)。
【0155】
結合親和性の決定
KFCC-GY4およびKFCC-GY5抗PLVAPモノクローナル抗体の結合親和性は、ANT Technology Co., Ltd.(Taipei, Taiwan)で、ANTQ300水晶マイクロバランス技術(Lin S., et al. J Immunol Methods 239:121-124 (2000))を用いて測定された。
【0156】
ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)の単離および培養
HUVECの単離および培養は、Baudin B, Brunee A, Bosselut N and Vaubourdolle M. Nature Protocols 2:481-485 (2007)に記載された確立されたプロトコールを用いて行った。内皮細胞培養の維持期間中に、リン酸緩衝生理食塩水中に溶解させた1%ゼラチン(DIFCO, Corp.)を用いて、培養プレートまたはカバーガラスのコーティングのためのコラーゲン溶液を置き換えた。
【0157】
Triton X-114(TX-114)を含む緩衝液によるHUVECの疎水性膜タンパク質の抽出
50万個のHUVECを10cm培養皿に播いて24時間おいた。続いて細胞を40ng/mlのヒトVEGFによってさらに72時間刺激した。培養細胞を5mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。続いて、2mM EDTAを含む1ml PBSとのインキュベーションによって細胞を剥離させて取り上げ、遠心管に入れて、300×gでの5分間の遠心処理によって収集した。遠心処理によって生じたペレット中にはおよそ200万個の細胞が存在した。細胞ペレットを、5mM EDTAおよび0.5%(v/v)Triton X-114(TX-114)を含む200μlの氷冷0.05M Tris緩衝液、pH 7.4中に再懸濁させた。可溶化された細胞懸濁液を、氷上で時折穏やかにボルテックス処理しながらインキュベートした。その後に、不溶性細胞残渣を除去するために、細胞懸濁液を10,000×g、4℃で10分間遠心処理した。上清をきれいな遠心管に移して、37℃で5分間遠心処理した。インキュベーションの間にTX-114は水相から分離された。続いて、TX-114が管の底に遠沈されるように、遠心管を1000×g、室温で10分間遠心処理した。管の上方の水相を除去し、疎水性細胞タンパク質を含むTX-114ペレットを2×SDSアクリルアミドゲル試料緩衝液中に最終容量50μlとして溶解させた。15μlの試料を、SDSアクリルアミドゲル電気泳動のために用いた。
【0158】
SDSアクリルアミドゲル電気泳動、ウエスタンブロットの調製およびイムノブロット法
これらの手順は、わずかな変更を除き、Kao KJ, Scornik JC and McQueen CF. Human Immunol 27:285-297 (1990)によって以前に記載されたものと同じである。ウエスタンブロット上の抗体結合の検出は、アルカリホスファターゼ化学発光基質およびLAS-4000 Luminescent Image Analyzer(Fujifilm Corp.)を用いて行った。
【0159】
免疫蛍光顕微鏡検査
材料
1)一次抗体:
a)正常マウスIgG(Sigma Corp., カタログ番号:I-5381)、これはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に原液として1mg/mLに希釈し、使用前にPBS-0.5% BSAによって5μg/mL濃度に希釈した;
b)モノクローナルマウス抗ヒトフォンウィルブランド因子(vWF)(DakoCytomation Corp., カタログ番号:M0616)、これは使用前に0.5% BSAを含むPBSで50倍に希釈した;
c)精製したKFCC-GY4およびKFCC-GY5抗PLVAPモノクローナル抗体は、使用前に0.5% BSAを含むPBSで5μg/mlに希釈した。
2)二次抗体:FITC結合ヤギF(ab')2抗マウスIgG(H&L)(Serotec, Corp., カタログ番号:Star105F);
3)DAPIを伴うVectaShieldマウント媒質(Vector Labs, Corp., カタログ番号:H-1200);
4)100%メタノール(Merck corp. カタログ番号:1.06009);および
5)ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco, Corp., カタログ番号:12065-056)、使用前に1倍に希釈した。
【0160】
手順
免疫蛍光検査のためのヒト臍帯血管内皮細胞を調製するには、各ウェルの底に1.5cmの無菌円形カバーガラスを置いた24ウェル培養プレートの各ウェルに、5万個の細胞を入れた。各ウェルは、20%ウシ胎仔血清、1% L-グルタミン、1%抗生物質/抗真菌薬溶液、50μg/mlヘパリンおよび75g/mlの内皮細胞増殖用添加物(Sigma, Corp. E0760)を加えた0.5mlのM199培養液を含んだ。各カバーガラスは、0.04%酢酸(v/v)中にある0.4mg/mlの仔ウシ皮膚コラーゲン(Sigma Corp. C9791)200μlにより、一晩かけてあらかじめコーティングした。続いてカバーガラスを無菌1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、その後に使用のために風乾させた。細胞を一晩培養し、続いて40ng/mlの血管内皮増殖因子(VEGF)によってさらに72時間刺激した。カバーガラス上の細胞を免疫蛍光手順のために用いた。
【0161】
免疫蛍光顕微鏡検査のために細胞を染色するには、各ウェル内のカバーガラス上で増殖させた細胞を0.5mlの1×HBSSで洗浄した。続いて、0.5mlの氷冷メタノール中で5分間かけて細胞の固定および透過処理を行った。固定された細胞を、0.5mlの1×PBSにより、1回の洗浄当たり5分間ずつ3回洗浄した。続いて、固定された細胞を、0.5% BSAを含む0.5mlの1×PBSにより、室温で1時間かけてブロックした。固定された細胞を含むカバーガラスを取り出し、固定された細胞が下向きになって抗体溶液と接触するように、5μg/mlの正常IgG、KFCC-GY4もしくはKFCC-GY5抗PLVAPモノクローナル抗体、または50倍希釈の抗ヒトvWFモノクローナル抗体を含む0.2mlの希釈一次抗体溶液の上に載せた。抗体溶液を、小さな蓋付きプラスチック容器内のパラフィルムの小片の上に載せた。内部の湿度は、水で湿らせた濾紙の小片を入れることによって維持した。
【0162】
加湿容器内にて37℃で1時間インキュベートした後に、カバーガラスを取り出し、カバーガラス上の細胞を、0.5mlのPBSにより、5分間ずつ3回洗浄した。続いて、固定された細胞を、一次抗体溶液とのインキュベーションに関して記載したのと同じく、200倍に希釈した0.2mlのFITC結合ヤギF(ab')2抗マウスIgG二次抗体とともに37℃で50分間インキュベートした。その後に、細胞を上記の通りにPBSで3回洗浄した。染色された細胞を、VectaShieldアンチフェード(anti-fade)溶液を用いてスライドガラス上にマウントした。余分なマウント媒質をカバーガラスの縁から除去し、縁をマニキュア液で密封した。染色された細胞を、蛍光顕微鏡を用いて検査した。
【0163】
結果
組換えヒトPLVAPタンパク質によるBalb/cByJマウスの免疫化により、ヒトPLVAPタンパク質を認識するモノクローナル抗体(mAb)を産生するハイブリドーマの開発に至った。2つのハイブリドーマを、以後の検討のために選択した。これらのハイブリドーマによって産生された抗体はKFCC-GY4およびKFCC-GY5と命名された。モノクローナル抗体KFCC-GY4およびKFCC-GY5のVHドメインおよびVLドメイン、ならびにこれらのドメインのCDRの配列は、それぞれ図15AおよびBならびに図16AおよびBに示されている。
【0164】
KFCC-GY4およびKFCC-GY5モノクローナル抗体はどちらも、ELISAアッセイ(図17)およびイムノブロットアッセイ(図18CおよびD)において組換えPLVAPタンパク質と結合した。
【0165】
これらの抗体はまた、イムノブロットアッセイ(図19Bおよび19D)において、ヒト臍帯血管内皮細胞からの抽出物中のPLVAPタンパク質とも特異的に反応した。加えて、免疫蛍光染色実験により、PLVAPに対するKFCC-GY4およびKFCC-GY5モノクローナル抗体を発現するヒト血管内皮細胞の結合も示された(図20CおよびD)。
【0166】
組換えPLVAPタンパク質に対するモノクローナル抗体の結合親和性(Kd)は、ANTQ300水晶マイクロバランス(Lin, et al. J. Immunol. Methods 239:121-124, 2000)を用いて、KFCC-GY5 mAbについては0.41×10-7Mであり、KFCC-GY4 mAbについては0.6×10-7Mであると決定された。
【0167】
2例の異なるヘパトーマ患者の肝臓由来のヘパトーマ切片に対して、KFCC-GY4またはKFCC-GY5モノクローナル抗PLVAP抗体を用いて行った免疫組織化学実験では、KFCC-GY5モノクローナル抗体の方がKFCC-GY4モノクローナル抗体(図21B、D)よりも、血管内皮細胞においてより強いシグナルを生じることが示された(図21A、C)。
【0168】
同じ患者の肝臓由来の隣接するヘパトーマ組織切片および非腫瘍性肝組織切片に対して行われた免疫組織化学実験を、無作為に選択した4例の異なるヘパトーマ患者からの試料に対して、KFCC-GY4モノクローナル抗PLVAP抗体を用いて行った。PLVAPの発現はヘパトーマ組織の血管内皮細胞(図22A、C、EおよびG)では検出されたが、隣接する非腫瘍性肝組織(図22B、D、FおよびH)では検出されなかった。
【0169】
実施例4:PLVAPタンパク質は血管内皮細胞の表面上で発現される
材料および方法
免疫蛍光顕微鏡検査
試薬
以下の手順のために用いた試薬は、以下の変更を除き、実施例3に記載されている:
・1×HBSS洗浄緩衝液は0.1%アジ化ナトリウムを含み、これは細胞表面に結合した抗体のエンドサイトーシスを阻止するために用いた。
・KFCC-GY4およびKFCC-GY5モノクローナル抗PLVAP抗体は、0.1%アジ化ナトリウムを有する1×HBSS洗浄緩衝液中に希釈した。
【0170】
手順
ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)の免疫蛍光染色は、メタノールによる細胞の固定および透過処理を行わなかった点を除き、実施例3に記載された通りに行った。その代わりに、抗PLVAPモノクローナル抗体とのインキュベーション後に、細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにより室温で10分間かけて固定した。このインキュベーションの後に、細胞を3回洗浄し、続いてFITC結合ヤギF(ab')2抗マウスIgGとともにインキュベートした。さらに3回洗浄した後に、細胞を、実施例3に記載された通りに免疫蛍光顕微鏡検査のために処理した。
【0171】
結果
上記のアプローチを用いたところ、検出することができたのは、細胞表面上に発現されたPLVAPタンパク質のみであった。これらの実験結果から、KFCC-GY4およびKFCC-GY5抗PLVAPモノクローナル抗体がどちらもHCC血管内皮細胞の表面と結合することが判明し(図23B、C)、このことはPLVAPタンパク質がこれらの細胞上に発現されることを示している。これらの知見は、PLVAPと高い親和性で特異的に結合する抗体が、肝細胞癌腫瘍の血管内への注射後にHCC血管内皮細胞の表面に結合しうると考えられることを示唆している。
【0172】

【0173】
寄託された微生物または他の生物材料に関する表示(追加文書)
C. その他の表示(続き)
本PCT出願における、およびオーストラリア特許に関する規則の規則3.25(3)における、オーストラリアの指定に関して、出願人はここに、アメリカンタイプカルチャーコレクションにアクセッション番号N/Aとして寄託された生物材料の試料の分譲は、本発明と利害関係のない熟練者であり、かつ試料の分譲請求のために指名された者に対して、特許の付与の前に遡ってのみ、または出願の失効、拒絶もしくは取り下げの前に遡ってのみ可能である旨を通知する。
【0174】
本PCT出願におけるカナダの指定に関して、出願人はここに国際事務局に対して、出願人は、当該出願を基礎としてカナダ特許が発行されたか、または当該出願が拒絶され、もしくは放棄されかつ回復の可能性がなくなり、もしくは取り下げられるまでは、特許庁長官が、アメリカンタイプカルチャーコレクションにアクセッション番号N/Aとして寄託され、当該出願において言及された生物材料の試料を、長官により指定された独立の専門家に分譲することのみを認めるよう希望する旨を通知する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのPLVAPアンタゴニストの治療的有効量を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を治療する方法であって、前記PLVAPアンタゴニストが、対象の肝臓における腫瘍形成、腫瘍成長、腫瘍血管新生、および腫瘍進行からなる群より選択される活性を阻害する、方法。
【請求項2】
PLVAPアンタゴニストが、PLVAPと特異的に結合する抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗原結合断片からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
抗体が放射性同位体または細胞傷害性物質とコンジュゲートしている、請求項2記載の方法。
【請求項5】
PLVAPアンタゴニストが動脈内投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
PLVAPアンタゴニストが、肝動脈内注入および経動脈化学塞栓術(transarterial chemoembolization)(TACE)からなる群より選択される手順によって対象に動脈内投与される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
PLVAPアンタゴニストが化学療法剤と組み合わせて投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
化学療法剤が、ドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、ソラフェニブ、およびオクトレオチド(octreotide)からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
対象がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
1)SEQ ID NO:23を含むPLVAPタンパク質と特異的に結合し、かつ対象の肝臓における腫瘍形成、腫瘍成長、腫瘍血管新生、および腫瘍進行からなる群より選択される活性を阻害する抗体の治療的有効量であって、該抗体が動脈内注入によって対象に投与される、抗体の治療的有効量;ならびに
2)少なくとも1つの化学療法剤
を対象に投与する段階を含み、それによって対象における肝細胞癌(HCC)を治療する、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を治療する方法。
【請求項11】
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗原結合断片からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗体が、放射性同位体、細胞傷害性物質、またはそれらの組み合わせとコンジュゲートしている、請求項10記載の方法。
【請求項13】
動脈内注入が、肝動脈内注入および経動脈化学塞栓術(TACE)からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
抗体が、対象の肝臓内のHCC腫瘍の内部または周囲の血管の内皮細胞に対して送達される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
化学療法剤が動脈内投与される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
化学療法剤が、ドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、ソラフェニブ、およびオクトレオチドからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
対象がヒトである、請求項10記載の方法。
【請求項18】
1)対象からの試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルを検出する段階;および
2)試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルが対照と比べて上昇していることを決定する段階であって、試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルが対照と比べて上昇していることによって、対象における肝細胞癌(HCC)が示される、段階
を含み、それによって対象におけるHCCを診断する、対象における肝細胞癌(HCC)を診断する方法。
【請求項19】
PLVAP遺伝子産物が、PLVAP RNAおよびPLVAPタンパク質からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、および免疫組織化学染色(IHC)からなる群より選択されるアッセイを用いて検出される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルが、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)または免疫組織化学染色(IHC)を用いて決定される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
ELISAまたはIHCが、PLVAPと特異的に結合する抗体を用いて行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
試料が肝組織試料である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
肝組織試料が、生検試料および細針吸引試料からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
対照が、参照標準、同じ対象からの正常肝臓試料中のPLVAP遺伝子産物のレベル、および別の対象からの正常肝臓試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項26】
対象がヒトである、請求項18記載の方法。
【請求項27】
対象からの肝組織試料におけるPLVAP遺伝子産物の発現を検出する段階を含み、それによって対象における肝細胞癌(HCC)を診断する、対象における肝細胞癌(HCC)を診断する方法。
【請求項28】
PLVAP遺伝子産物の発現が、肝組織試料中の血管内皮細胞において検出される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
血管内皮細胞が、肝組織試料中で肝細胞と隣接している、請求項28記載の方法。
【請求項30】
PLVAP遺伝子産物が、PLVAP mRNAおよびPLVAPタンパク質からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
試料中のPLVAP遺伝子産物のレベルが、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、および免疫組織化学染色(IHC)からなる群より選択されるアッセイを用いて検出される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
肝組織試料が、生検試料および細針吸引試料からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
対象がヒトである、請求項27記載の方法。
【請求項34】
1)PLVAPと特異的に結合する抗体を動脈内注射によって対象に投与する段階であって、該抗体が放射性同位元素を含む、段階;
2)対象の肝臓の画像を得る段階;および
3)対象の肝臓における抗体の蓄積を検出する段階
を含み、それによって対象における肝細胞癌(HCC)を検出する、対象における肝細胞癌(HCC)を検出するインビボでの方法。
【請求項35】
抗体が、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有するVHドメインおよびSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
抗体が、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有するVHドメインおよびSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
対象がヒトである、請求項34記載の方法。
【請求項38】
SEQ ID NO:23と特異的に結合する、単離されたポリペプチドであって、
1)a)SEQ ID NO:5からなるCDR1;
b)SEQ ID NO:6からなるCDR2;および
c)SEQ ID NO:7からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
2)d)SEQ ID NO:10からなるCDR1;
e)SEQ ID NO:11からなるCDR2;および
f)SEQ ID NO:12からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
3)それらの組み合わせと
からなる群より選択される抗体可変ドメインを含む、単離されたポリペプチド。
【請求項39】
抗体である、請求項38記載の単離されたポリペプチド。
【請求項40】
抗体がSEQ ID NO:23と約0.6×10-7Mの結合親和性で結合する、請求項39記載の単離されたポリペプチド。
【請求項41】
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗原結合断片からなる群より選択される、請求項39記載の単離されたポリペプチド。
【請求項42】
抗体が、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、請求項39記載の単離されたポリペプチド。
【請求項43】
抗体が、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、請求項39記載の単離されたポリペプチド。
【請求項44】
標識を含む、請求項38記載の単離されたポリペプチド。
【請求項45】
標識が、放射性同位体および細胞傷害性物質からなる群より選択される、請求項44記載の単離されたポリペプチド。
【請求項46】
SEQ ID NO:23と特異的に結合する、単離されたポリペプチドであって、
1)a)SEQ ID NO:15からなるCDR1;
b)SEQ ID NO:16からなるCDR2;および
c)SEQ ID NO:17からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
2)d)SEQ ID NO:20からなるCDR1;
e)SEQ ID NO:21からなるCDR2;および
f)SEQ ID NO:22からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
3)それらの組み合わせと
からなる群より選択される少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む、単離されたポリペプチド。
【請求項47】
抗体である、請求項46記載の単離されたポリペプチド。
【請求項48】
抗体がSEQ ID NO:23と約0.4×10-7Mの結合親和性で結合する、請求項47記載の単離されたポリペプチド。
【請求項49】
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗原結合断片からなる群より選択される、請求項47記載の単離されたポリペプチド。
【請求項50】
抗体が、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む、請求項47記載の単離されたポリペプチド。
【請求項51】
抗体が、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む、請求項47記載の単離されたポリペプチド。
【請求項52】
標識を含む、請求項46記載の単離されたポリペプチド。
【請求項53】
標識が、放射性同位体および細胞傷害性物質からなる群より選択される、請求項52記載の単離されたポリペプチド。
【請求項54】
少なくとも1つのPLVAPアンタゴニストと、薬学的に許容される担体とを含む、哺乳動物対象における肝細胞癌の治療のための薬学的組成物。
【請求項55】
PLVAPアンタゴニストが、PLVAPと特異的に結合する抗体である、請求項54記載の組成物。
【請求項56】
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および抗原結合断片からなる群より選択される、請求項55記載の組成物。
【請求項57】
抗体が、放射性同位体または細胞傷害性物質とコンジュゲートしている、請求項55記載の組成物。
【請求項58】
少なくとも1つの化学療法剤をさらに含む、請求項54記載の組成物。
【請求項59】
化学療法剤が、ドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、ソラフェニブ、およびオクトレオチドからなる群より選択される、請求項58記載の組成物。
【請求項60】
PLVAP RNA転写物と高ストリンジェンシー条件下で特異的にハイブリダイズする核酸プローブを含む、哺乳動物対象における肝細胞癌の検出のための診断キット。
【請求項61】
核酸プローブが標識を含む、請求項60記載のキット。
【請求項62】
SEQ ID NO:23と特異的に結合する抗体を含む、哺乳動物対象における肝細胞癌の検出のための診断キット。
【請求項63】
抗体が標識を含む、請求項62記載のキット。
【請求項64】
SEQ ID NO:23との結合において、モノクローナル抗体KFCC-GY4と特異的に競合する、単離された抗体。
【請求項65】
SEQ ID NO:23との結合において、モノクローナル抗体KFCC-GY5と特異的に競合する、単離された抗体。
【請求項66】
PLVAPと特異的に結合するヒト化抗体またはその断片の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を治療する方法であって、前記ヒト化抗体が対象に動脈内投与され、かつ前記ヒト化抗体が、対象の肝臓における腫瘍形成、腫瘍成長、腫瘍血管新生、および腫瘍進行からなる群より選択される活性を阻害する、方法。
【請求項67】
ヒト化抗体が放射性同位体または細胞傷害性物質とコンジュゲートしている、請求項66記載の方法。
【請求項68】
ヒト化抗体が、肝動脈内注入および経動脈化学塞栓術(TACE)からなる群より選択される手順によって対象に動脈内投与される、請求項66記載の方法。
【請求項69】
少なくとも1つの化学療法剤を投与する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項70】
化学療法剤が、ドキソルビシン、シスプラチン、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、ソラフェニブ、およびオクトレオチドからなる群より選択される、請求項69記載の方法。
【請求項71】
対象がヒトである、請求項66記載の方法。
【請求項72】
ヒト化抗体が、SEQ ID NO:23との結合において、モノクローナル抗体KFCC-GY4またはモノクローナル抗体KFCC-GY5と特異的に競合する、請求項66記載の方法。
【請求項73】
SEQ ID NO:23との結合において、モノクローナル抗体KFCC-GY4またはモノクローナル抗体KFCC-GY5と特異的に競合するヒト化抗体。
【請求項74】
放射性同位体または細胞傷害性物質とコンジュゲートしている、請求項73記載のヒト化抗体。
【請求項75】
SEQ ID NO:23と特異的に結合するヒト化抗体であって、
1)a)SEQ ID NO:5からなるCDR1;
b)SEQ ID NO:6からなるCDR2;および
c)SEQ ID NO:7からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
2)d)SEQ ID NO:10からなるCDR1;
e)SEQ ID NO:11からなるCDR2;および
f)SEQ ID NO:12からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
3)それらの組み合わせと
からなる群より選択される抗体可変ドメインを含むヒト化抗体。
【請求項76】
標識を含む、請求項75記載のヒト化抗体。
【請求項77】
標識が、放射性同位体および細胞傷害性物質からなる群より選択される、請求項76記載のヒト化抗体。
【請求項78】
SEQ ID NO:23と特異的に結合するヒト化抗体であって、
1)a)SEQ ID NO:15からなるCDR1;
b)SEQ ID NO:16からなるCDR2;および
c)SEQ ID NO:17からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
2)d)SEQ ID NO:20からなるCDR1;
e)SEQ ID NO:21からなるCDR2;および
f)SEQ ID NO:22からなるCDR3
を含む抗体可変ドメインと
3)それらの組み合わせと
からなる群より選択される少なくとも1つの抗体可変ドメインを含むヒト化抗体。
【請求項79】
標識を含む、請求項78記載のヒト化抗体。
【請求項80】
標識が、放射性同位体および細胞傷害性物質からなる群より選択される、請求項79記載のヒト化抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【公表番号】特表2011−518773(P2011−518773A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500800(P2011−500800)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/001689
【国際公開番号】WO2009/117096
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510250582)チャイナ シンセティック ラバー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】