説明

膜厚ムラ検出方法および検出装置

【課題】青色光に感受性を有する透明被膜の膜厚ムラを、自動的に、かつ、精度良く検出する方法とその方法に適用する装置とを提供すること。
【解決手段】波長500〜570nmの緑色光と波長580〜630nmの赤色光を含む光を照射し、これら光の反射光強度を、波長ごとに、かつ、照射範囲を多数の小領域に分割してその小領域ごとに測定し、小領域ごとに、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度の差を算出し、多数の前記小領域の間で前記強度差同士を比較し、周囲の小領域に比べて前記強度差が大きいまたは小さい小領域を膜厚ムラのある領域として抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に設けられた透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する方法と装置に関する。更に詳しくは、液晶ディスプレイの製造に用いられるフォトスぺーサー用の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出するのに好適な検出方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、それぞれ電極を形成した2枚の電極板を、その間に間隙を設けて張合わせ、その間隙に液晶を封入して構成されている。そして、両電極板の間に、画素ごとに電圧を印加して液晶を駆動させ、液晶を透過する光の偏光面を制御することにより偏光膜の透過・不透過を制御して画面表示するものである。
【0003】
前記間隙は、従来、一方の電極板に散布された球状ビーズの径によって保つのが通常であった。しかしながら、球状ビーズはその散布位置を制御することができず、このため、散布位置によっては表示ムラを引き起こすことがあった。
【0004】
これを解決するため、近年、多数のフォトスペーサーによる前記間隙の制御が行われている。フォトスペーサーは、前記電極板のいずれか一方に設けられた柱状のスペーサーであって、一般に、その電極板に塗布された透明感光性樹脂を露光・現像して設けられている。フォトスペーサーの位置は露光マスクによって特定できるので、従来球状ビーズによって引き起こされていた表示ムラのおそれはない。
【0005】
しかしながら、これら柱状フォトスペーサーの高さは塗布された感光性樹脂被膜の膜厚で決定されることから、この感光性樹脂被膜に膜厚ムラがあると、これらフォトスペーサーの高さも不揃いとなって電極間距離が不安定となり、また液晶層の厚みが不安定となって、その表示品質に影響する。このため、感光性樹脂被膜は均一な膜厚に塗布される必要があり、他方、膜厚ムラのある感光性樹脂被膜は露光・現像前に検出し、この被膜を剥離除去する必要がある。仮に膜厚ムラのある感光性樹脂被膜を露光・現像してフォトスペーサーを形成したとすると、そのフォトスペーサーの高さのムラを検出することは困難であり、また、電極板から剥離除去することも困難だからである。
【0006】
一般に、膜厚ムラがある部位(ムラ部)では、その周囲(正常部)と異なる強度の反射光が観察されることになる。この反射光は肉眼で観察することができ、こうして観察した被膜に明暗のムラがある場合には、膜厚ムラがあることが分かる。
【0007】
前記反射光の強度をカメラなどで測定することで膜厚ムラを検出することも可能である。しかしながら、カメラなどの感度は肉眼に比較して低く、正常部とムラ部の区別が困難である。
【0008】
これを改善して、正常部とムラ部との間のSN比を高め、膜厚ムラを精度良く検出する試みも行われている。例えば、可視領域の短波長側の青色光と長波長側の赤色光の2種類の照射光を使用し、波長ごとに反射光強度を測定すると共に、その反射光強度の差から膜厚ムラを検出する方法である(特許文献1参照)。前述のように、反射光強度は入射光の波長に依存しているから、青色光の反射光強度と赤色光の反射光強度の差は、正常部では一定値に近く、ムラ部ではピーク状に異常値を示す。この異常値を示す部位をムラ部として検出することが可能となる。
【特許文献1】特開2003−166941号公報。
【0009】
しかしながら、前述のフォトスペーサー用透明被膜は感光性樹脂から構成されており、感光性樹脂は一般に短波長側の青色光に感受性を有するため、この青色光を使用してその膜厚ムラを検出することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情の下でなされたもので、青色光に感受性を有する透明被膜の膜厚ムラを、自動的に、かつ、精度良く検出する方法とその方法に適用する装置とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1に係る発明は、基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する方法であって、
この被膜に、波長500〜570nmの緑色光または波長580〜630nmの赤色光を照射し、その反射光強度を、照射範囲を多数の小領域に分割して、その小領域ごとに測定して検査対象データとする検査対象データ取得工程と、
多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較し、周囲の小領域に比べて前記検査対象データが大きいまたは小さい小領域を膜厚ムラのある領域として抽出するムラ領域抽出工程と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出方法である。
【0012】
請求項1に記載の発明においては、照射光として、感光性樹脂の感受性のない緑色光または赤色光を利用するため、感光性樹脂被膜を劣化させることなく、その膜厚ムラを自動的に検出できる。
【0013】
なお、かかる緑色光による検出や赤色光による検出では、そのムラ部と正常部との間で十分な差異が見られない場合がある。
【0014】
請求項2に係る発明は、これを改善するため、検査対象データとして緑色光の反射光強度を赤色光の反射光強度の差を用いたもので、すなわち、請求項2に係る発明は、基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する方法であって、
この被膜に、波長500〜570nmの緑色光と波長580〜630nmの赤色光を照射し、これら緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度とを、波長ごとに、かつ、照射範囲を多数の小領域に分割してその小領域ごとに測定する反射光強度測定工程と、
前記小領域ごとに、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度の差を算出して検査対象データとする検査対象データ取得工程と、
多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較し、周囲の小領域に比べて前記検査対象データが大きいまたは小さい小領域を膜厚ムラのある領域として抽出するムラ領域抽出工程と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出方法である。
【0015】
一般に、膜厚の変化に対し、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度は相反する性質を有しており、緑色光の反射光強度Gが増大する部位では赤色光の反射光強度Rが低下する。また、逆に、緑色光の反射光強度Gが低下する部位では赤色光の反射光強度Rが増大する。請求項2に係る発明においては、小領域ごとに緑色光の反射光強度Gと赤色光の反射光強度Rの差G−Rを算出して検査対象データとしているため、正常部ではこの検査対象データG−Rが一定値に近づくが、ムラ部ではGの増大分とRの低下分が加算されるため、正常部とムラ部との間でS/N比が増大され、あるいは、逆に、ムラ部でGの低下分とRの増大分が加算されてS/Nが増大する。そして、本発明では、この小領域の差G−Rを検査対象データとして、その周囲の小領域の検査対象データG−Rと比較するため、
ムラ部の検査対象データG−Rがピーク状に強調されて観察できる。そして、照射光は、感光性樹脂の感受性のない緑色光と赤色光であるため、感光性樹脂被膜の膜厚ムラを精度良く、自動的に検出できるのである。
【0016】
次に、請求項3に係る発明は、照射光が拡散光であることを特徴とする請求項1または2に記載の膜厚ムラ検出方法である。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、ムラ部を機械的に検出・出力する方法に関するものである。すなわち、請求項4に係る発明は、予め前記検査対象データに閾値を設け、この閾値より大きいまたは小さい検査対象データを示す小領域を膜厚ムラのある領域として抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜厚ムラ検出方法である。
【0018】
他方、請求項5に係る発明は、肉眼観察によってムラ部を検出する方法に関するものである。すなわち、請求項5に係る発明は、多数の前記小領域に順序を付与し、この順序を変数、前記検査対象データを関数として、これら変数と関数とを直交座標上に表示して、目視により膜厚ムラのある領域を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜厚ムラ検出方法である。
【0019】
次に、請求項6および7に係る発明は、それぞれ、請求項1および2に係る発明に使用される装置に関するものである。
【0020】
すなわち、請求項6に係る発明は、基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する装置であって、
この被膜上に、波長500〜570nmの緑色光または波長580〜630nmの赤色光を含む光を照射する光照射手段と、
その反射光強度を照射範囲を多数の小領域に分割してその小領域ごとに測定するカメラと、
前記反射光強度を検査対象データとして、多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較するムラ領域抽出手段と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出装置である。
【0021】
他方、請求項7に係る発明は、基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する装置であって、
この被膜上に、波長500〜570nmの緑色光と波長580〜630nmの赤色光を含む光を照射する光照射手段と、
前記緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度とを、波長ごとに、かつ、照射範囲を多数の小領域に分割してその小領域ごとに測定するカメラと、
前記小領域ごとに、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度の差を算出して検査対象データとする検査対象データ取得手段と、
多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較するムラ領域抽出手段と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出装置である。
【0022】
なお、反射光強度測定用カメラの光軸が、基材表面の法線に対し、40〜60度をなすように設けられている場合、その反射光強度の測定感度が高く、このため、精度良く反射光強度を測定することができる。請求項8に係る発明は、このような事情に基づいてなされたもので、すなわち、請求項8に記載の発明は、反射光強度測定用カメラの光軸が、基材表面の法線に対し、40〜60度をなすように設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の膜厚ムラ検出装置である。
【0023】
また、請求項9に記載の発明は、光照射手段が、拡散板を介して透明感光性樹脂被膜に
照射光を照射する手段から成り、
この拡散板の法線が、透明感光性樹脂被膜の法線と40〜60度をなすように配置されていることを特徴とする請求項8記載の膜厚ムラ検出装置である。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、照射光は拡散板によって散乱され、この散乱光が透明感光性樹脂被膜に入射するが、拡散板を透過する光は、その散乱効果にも拘わらず、入射方向と同一方向に出射光線の強度が大きい。そして、請求項9に記載の発明においては、強度の大きい出射散乱光を被膜に照射し、その反射光を反射光強度測定用カメラに入射させて測定するため、その測定精度が向上するのである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1及び6に記載の発明によれば、感光性樹脂被膜を劣化させることなく、その膜厚ムラを自動的に検出できるという効果を奏する。
【0026】
また、請求項2及び7に記載の発明によれば、小領域ごとに緑色光の反射光強度Gと赤色光の反射光強度Rの差G−Rを算出して検査対象データとしているため、正常部とムラ部との間でS/N比が増大され、しかも、照射光が感光性樹脂の感受性のない緑色光と赤色光であるため、感光性樹脂被膜の膜厚ムラを精度良く、自動的に検出できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明において膜厚ムラの検出に使用する光は、500〜570nmの波長域に属する緑色光と、580〜630nmの波長域に属する赤色光である。これら緑色光と赤色光とは、いずれも、狭帯域の光線であることが望ましい。好ましくは、半値幅20nm以下の単色光である。
【0028】
緑色の単色光は、例えば、光源としてハロゲンランプや高圧水銀ランプを使用し、その光をバンドパスフィルタを透過させることで得ることができる。また、赤色の単色光は、ハロゲンランプや低圧ナトリウムランプを光源とし、その光をバンドパスフィルタを透過させることによって得ることができる。
【0029】
なお、感光性樹脂被膜に照射する照射光は、前述の緑色光と赤色光の他、別の波長域に属する光を含むものであっても良い。この場合には、反射光をバンドパスフィルタを透過させることによって、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度を測定することができる。また、カラーカメラで色光ごとに反射光強度を測定した後、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度を、データ上で抽出しても良い。なお、照射光は、波長450nm以下の青色光を含んでいてはならない。感光性樹脂被膜は、一般に、この青色光に感受性を有するからである。
【0030】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0031】
図1は、本発明に係る検出装置の説明用斜視図で、図中1は透明感光性被膜を備える基材、2は光源である。
【0032】
まず、光源2からの光を、図示しないバンドパスフィルタを透過して、拡散板3に入射させる。拡散板3は、例えば、透明樹脂中に、この透明樹脂と異なる屈折率を有する微粒子を分散させたものが使用でき、前記光源光を散乱させるものである。後述するカメラ4の光軸が感光性樹脂被膜の法線と40〜60度をなすように配置されることから、拡散板3も、その法線が、感光性樹脂被膜の法線と40〜60度をなすように、かつ、感光性樹脂被膜の法線に対してカメラ4と反対側に配置されることが望ましい。好適には50度で
ある。
【0033】
次に、拡散板3によって散乱した拡散光を照射光として、基材上の透明感光性樹脂被膜に入射させる。基材としては任意のもので使用できるが、例えば、ガラス基板が使用できる。感光性樹脂被膜がカラー液晶ディスプレイのフォトスペーサー形成用の被膜である場合には、ガラス基板上に、黒色の遮光膜(ブラックマトリクスまたはブラックストライプ)と、表示光を着色する着色膜とを備えることが多い。このような遮光膜や着色膜を備えるガラス基板を基材として利用することも可能である。
【0034】
次に、感光性樹脂被膜によって反射された反射光の強度を、波長ごとに、カメラ4で測定する。なお、感光性樹脂被膜の表面を小領域に分割し、この小領域ごとに前記反射光強度を測定するが、この小領域は、カメラ4の各画素に対応する領域であって良い。また、カメラ4の画素の複数個をまとめて小領域に対応させることも可能である。このため、カメラ4の分解能が高いほど、感光性樹脂被膜の表面は細かい小領域に分割され、精度良く測定することが可能となる。
【0035】
カメラ4は、その測定精度の点から、その光軸が、感光性樹脂被膜表面の法線と40〜60度をなすように配置することが望ましい。好適には50度である。
【0036】
カメラ4としては、カラーカメラが好ましく利用できるが、白黒のカメラであっても良い。白黒のカメラを使用する場合には、まず緑色光を感光性樹脂被膜に照射してその反射光強度を測定し、次に、赤色光を照射して反射光強度を測定すれば良い。もちろん、測定の順序を逆にすることも可能である。また、カメラ4は、エリアカメラとラインカメラのいずれであっても良い。
【0037】
こうして測定された緑色光の反射光強度または赤色光の反射光強度をそのまま検査対象データとすることもできるが、正常部とムラ部とのS/N比を高めて測定精度を向上させるため、両反射光強度の差を算出して検査対象データとすることが望ましい。すなわち、カメラ4で測定された緑色光の反射光強度Gと、赤色光の反射光強度Rの差G−Rを算出して検査対象データとする。検査対象データG−Rは、小領域ごと、すなわち、カメラ4の画素ごとに、または複数個の画素をまとめて、そのまとめられた単位ごとに、算出する必要がある。検査対象データG−Rがマイナスの値を示す場合には、これに一定値を加算して、プラスの値にしても構わない。算出はコンピュータによって即時に可能である。
【0038】
次に、カメラ4のスキャン方向に沿って、画素、すなわち、前記小領域に順序を付与してこの順序を変数、検査対象データG−Rを関数として、直交座標上に表示する。表示は、ディスプレイの画面上であっても良く、紙にプリントアウトして表示しても構わない。
【0039】
一般に、膜厚の変化に対し、緑色光の反射光強度Gと赤色光の反射光強度Rは相反する性質を有しており、Gが増大する部位ではRが低下する。また、逆に、Gが低下する部位ではRが増大する。小領域ごとにG−Rを算出しているため、正常部ではこの検査対象データG−Rが一定値に近づくが、ムラ部ではGの増大分とRの低下分が加算されるため、正常部とムラ部との間でS/N比が増大され、あるいは、逆に、ムラ部でGの低下分とRの増大分が加算されてS/Nが増大する。直交座標上に、小領域(変数)を横軸、検査対象データG−Rを縦軸として表示すると、目視で、小領域の検査対象データG−Rを、その周囲の小領域の検査対象データG−Rと比較することができる。そして、一定値を示す正常部に対し、ムラ部の検査対象データG−Rがピーク状に強調されて観察できる。なお、差G−Rを検査対象データとすることにより、照明光の波長に依存しないノイズ、例えば基材に含まれる異物によるノイズを除去することが可能である。
【0040】
また、検査対象データに予め閾値を設けておき、この閾値と実測された検査対象データとを比較してムラ部を検出することもできる。この場合には、実測された検査対象データから閾値を引き、ムラ部と認定された小領域を抽出すれば良い。
【0041】
なお、ムラ部は、膜厚が設計値より大き過ぎる場合と小さ過ぎる場合とがあるから、これに対応して2種類の閾値を定め、大きい方の閾値より大きい小領域と小さい方の閾値より小さい小領域の双方をムラ部として抽出することが望ましい。
【0042】
また、閾値と比較してムラ部と認定された小領域だけでなく、その周囲の小領域を含めて、ムラの疑いのある部位として抽出することもできる。例えば、円形状または円環状にムラの疑いのある部位として抽出することが可能である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明を説明する。
【0044】
(実施例1)
本実施例で利用した装置の概要は、図1に示したとおりである。
【0045】
基材としては、カラー液晶ディスプレイの電極板の製造に使用するものを使用した。この基材は、ガラス基板上に、黒色の遮光枠と、この枠内の領域にマトリクス状に設けられた遮光膜(ブラックマトリクス)と、このブラックマトリクスに囲まれた部位のそれぞれに設けられ、透過光をそれぞれ赤色、緑色、青色に着色する着色膜を備えて構成されたもので、その表面に、ダイコータで均一に塗布された透明感光性樹脂被膜が設けられている。
【0046】
また、光源としてはハロゲンランプを使用した。そして、拡散板を、その表面の法線が基材表面の法線に対し50度になるように配置した。
【0047】
また、カメラとしては、カラーCCDエリアカメラを使用し、これを、その光軸が基材表面の法線に対し50度をなすように配置した。
【0048】
そして、まず、光源と拡散板の間に560nmバンドパスフィルタ(半値幅10nm)を挿入して、光源を発光させ、感光性樹脂被膜表面からの反射光強度Gを、前記カメラの画素ごとに測定した。この画素に順序をつけて変数とし、また前記反射光強度Gを関数として、直交座標上に表示した。この表示を図2に示す。なお、図2において、横軸は画素(変数)、縦軸は反射光強度Gを示す。この図2において、反射光強度Gの一部が周囲に比べて高く示されており、この部位に異常があることが分かる。
【0049】
次に、前記560nmバンドパスフィルタの代わりに590nmバンドパスフィルタ(半値幅10nm)を使用して、画素ごとに反射光強度Rを測定した。画素に順序をつけて変数とし、また前記反射光強度Rを関数として、直交座標上に表示した。この表示を図3に示す。なお、図3において、横軸は画素(変数)、縦軸は反射光強度Rを示す。この図3において、反射光強度Gの一部が周囲に比べて高く示されており、この部位に異常があることが分かる。
【0050】
次に、反射光強度の差G−Rを算出して検査対象データとし、この検査対象データG−Rを画素の関数として直交座標上に表示した。この表示を図4に示す。図4において、横軸は画素(変数)、縦軸は検査対象データG−R(関数)である。なお、検査対象データG−Rが負になる部位があるため、検査対象データG−Rに一定値を加算して、その値がすべて正になるよう調整した上、図4に示した。
【0051】
これら図2,3と図4とを比較して分かるように、図2及び図3では、その一部に異常な反射光強度を示す部位があるものの、S/N比が小さく、しかも、反射光強度G,Rが傾斜しており、このため、ムラ部の抽出が困難であるのに対し、図4では検査対象データG−Rが全体として一定値を示しており、この一定値を示す小領域が正常部であり、ムラ部はこれよりピーク状に突出している。このため、目視により、一目でムラ部を抽出することができた。
【0052】
次に、閾値を設定して画像処理し、ムラ部を中心として、円状にムラの疑いのある部位を抽出した。
【0053】
(実施例2)
カメラとして、白黒CCDエリアカメラを使用した他は、実施例1と同様の検出を行った。また、カメラとして白黒CCDラインカメラを使用して、検出を行った。いずれの場合も、実施例1と同様の結果を得た。
【0054】
(実施例3)
光源と拡散板の間に、波長560〜590nmの光を透過するバンドパスフィルタを挿入したこと、カラーCCDエリアカメラで測定した反射光強度のうち、緑色光の反射光強度Gと赤色光の反射光強度Rをデータとして使用した他は、実施例1と同様に検出を行った。差G−Rを算出することにより、ムラ部がピーク状に突出した部位として表示されたが、実施例1に比較して、その程度は低かった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る検出装置の説明用斜視図
【図2】波長560nmの緑色光による反射光強度Gを示すグラフ図
【図3】波長590nmの赤色光による反射光強度Rを示すグラフ図
【図4】差G−Rを示すグラフ図
【符号の説明】
【0056】
1…透明感光性被膜を備える基材
2…光源
3…拡散板
4…カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する方法であって、
この被膜に、波長500〜570nmの緑色光または波長580〜630nmの赤色光を照射し、その反射光強度を、照射範囲を多数の小領域に分割して、その小領域ごとに測定して検査対象データとする検査対象データ取得工程と、
多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較し、周囲の小領域に比べて前記検査対象データが大きいまたは小さい小領域を膜厚ムラのある領域として抽出するムラ領域抽出工程と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出方法。
【請求項2】
基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する方法であって、
この被膜に、波長500〜570nmの緑色光と波長580〜630nmの赤色光を照射し、これら緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度とを、波長ごとに、かつ、照射範囲を多数の小領域に分割してその小領域ごとに測定する反射光強度測定工程と、
前記小領域ごとに、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度の差を算出して検査対象データとする検査対象データ取得工程と、
多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較し、周囲の小領域に比べて前記検査対象データが大きいまたは小さい小領域を膜厚ムラのある領域として抽出するムラ領域抽出工程と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出方法。
【請求項3】
照射光が拡散光であることを特徴とする請求項1または2に記載の膜厚ムラ検出方法。
【請求項4】
予め前記検査対象データに閾値を設け、この閾値より大きいまたは小さい検査対象データを示す小領域を膜厚ムラのある領域として抽出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜厚ムラ検出方法。
【請求項5】
多数の前記小領域に順序を付与し、この順序を変数、前記検査対象データを関数として、これら変数と関数とを直交座標上に表示して、目視により膜厚ムラのある領域を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜厚ムラ検出方法。
【請求項6】
基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する装置であって、
この被膜上に、波長500〜570nmの緑色光または波長580〜630nmの赤色光を含む光を照射する光照射手段と、
その反射光強度を照射範囲を多数の小領域に分割してその小領域ごとに測定するカメラと、
前記反射光強度を検査対象データとして、多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較するムラ領域抽出手段と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出装置
【請求項7】
基材上の透明感光性樹脂被膜の膜厚ムラを検出する装置であって、
この被膜上に、波長500〜570nmの緑色光と波長580〜630nmの赤色光を含む光を照射する光照射手段と、
前記緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度とを、波長ごとに、かつ、照射範囲を多数の小領域に分割してその小領域ごとに測定するカメラと、
前記小領域ごとに、緑色光の反射光強度と赤色光の反射光強度の差を算出して検査対象データとする検査対象データ取得手段と、
多数の前記小領域の間で前記検査対象データ同士を比較するムラ領域抽出手段と、
を備えることを特徴とする膜厚ムラ検出装置。
【請求項8】
反射光強度測定用カメラの光軸が、基材表面の法線に対し、40〜60度をなすように設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の膜厚ムラ検出装置。
【請求項9】
光照射手段が、拡散板を介して透明感光性樹脂被膜に照射光を照射する手段から成り、
この拡散板の法線が、透明感光性樹脂被膜の法線と40〜60度をなすように配置され
ていることを特徴とする請求項8記載の膜厚ムラ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−250851(P2006−250851A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70573(P2005−70573)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】