説明

膜形成用組成物、絶縁膜、およびその製造方法

【課題】低誘電率で均一な塗膜性に優れる絶縁膜を形成可能な組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物と有機溶剤を含む膜形成用組成物であって、該化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物が粒径2nmから15nmの粒子状物である。


(R1、R2、R3、R4は水素原子または任意の置換基を表す。X1は炭素原子またはケイ素原子を表す。L1は2価の連結基を表す。R1、R2のうち少なくとも1つは加水分解性基を表す。mは0または1を表し、mが0の場合nは3〜5の整数を表し、mが1の場合nは2〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材料の形成に有用な組成物、さらに詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として、適当な均一な厚さを有する塗膜が形成可能な組成物で、誘電率特性などに優れた膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法および絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
【0003】
かかる状況下、エタノール中、環状カルボシランから得られるポリオルガノシロキサンにアンモニウム塩である界面活性剤を添加して塗布焼成して、界面活性剤の熱分解により空孔を形成し、より誘電率を下げる方法が知られている。(文献参照1)しかしながら、均一な塗膜の形成が難しく安定に膜を作製できないという問題点があった。
【0004】
【非特許文献1】SCIENCE,302巻,266頁(2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、均一に塗膜形成可能な組成物および低い誘電率を有する絶縁膜およびこの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段より達成されることが見出された。
<1>
一般式(1)で表される化合物、その加水分解物、それらの縮合物の少なくとも一つ、および、有機溶剤を含む組成物であって、該化合物、その加水分解物、それらの縮合物が粒径2nmから15nmの粒子状物であることを特徴とする膜形成用組成物。
【化1】

式(1)中、
1〜R4は各々独立して水素原子または置換基である。R1とR2のうち少なくとも1つは加水分解性基を表す。
1は炭素原子またはケイ素原子を表す。
1は2価の連結基を表す。
mは各々独立して0または1を表し、mが0の場合nは3〜5の整数を表し、mが1の場合nは2または3を表す。
複数のR1〜R4、X1、L1は、各々互いに同一でも異なっていてもよい。
<2> X1が炭素原子、L1がアルキレン基であることを特徴とする上記<1>に記載の絶縁膜形成用組成物。
<3>
mが0であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の絶縁膜形成用組成物。 <4>
有機溶剤がエーテル基、エステル基、カルボニル基を有することを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の絶縁膜形成用組成物。
<5>
無機プロトン酸、または有機プロトン酸を含むことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の絶縁膜形成用組成物。
<6>
さらに水を含むことを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれかに記載の絶縁膜形成用組成物。
<7>
さらに界面活性剤を含むことを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれかに記載の絶縁膜形成用組成物。
<8>
上記<1>〜<7>のいずれかに記載の絶縁膜形成用組成物から形成された絶縁膜。
<9>
上記<1>〜<7>のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、焼成することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体素子などにおける層間絶縁膜として使用するのに適した、低比誘電率を有する絶縁膜を安定に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の膜形成用組成物は、一般式(1)で表される化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物と有機溶剤を含む組成物であって、該化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物が粒径2nmから15nmの粒子状物であることを特徴とする。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(1)において、
1は炭素原子またはケイ素原子を表し、炭素原子が好ましい。
1は2価の連結基を表す。連結基の例としては、炭素数1〜10の炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−SiRR’−(R,R’は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基を表わす)又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基等が挙げられる。上記連結基のうち、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基であり、特に好ましくはメチレン、エチレン基、ビニレン基である。
1及びR2のうち少なくとも1つは加水分解性基を表す。
mは各々独立して0または1を表し、好ましくは0である。
mが0の場合nは3〜5の整数を表し、mが1の場合nは2〜3の整数を表す。
nで示される繰り返し単位のなかで、複数のR1〜R4、X1およびL1は、互いに同じ基であってもよいし、異なっていてもよい。
1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子または任意の置換基を表す。
1〜R4が任意の置換基を表すときの置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシ等)、炭素数3〜10のシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数2〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、水酸基等が好ましい。
さらに好ましい置換基は塩素原子、炭素数1〜5の直鎖、分岐、環状のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基である。これらの置換基はさらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0011】
1およびR2のうち少なくとも1つは、加水分解性基である。加水分解性基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、炭素数1〜10のシリルオキシ基などが挙げられる。
加水分解性基として好ましいのは、置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)であり、最も好ましいのは、炭素数1〜5の無置換のアルコキシ基である。
【0012】
1〜R4で表される置換基は、同じあるいは異なる置換基同士それぞれが連結して多量体あるいは環を形成してもよい。形成される環は、5〜8員環が好ましく、5〜6員環がより好ましい。
【0013】
以下に一般式(1)で表される化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、一般的には200〜1000、好ましくは250〜900である。
【0017】
一般式(1)で表される化合物は、シリコンの化学において広く知られた技法を使用して容易に調製することができ、例えば、Tetrahedron Letters、34巻、13号、2111頁(1993年)等に記載されている方法により合成できる。
【0018】
本発明の膜形成用組成物は、これらの一般式(1)で表される化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物を単独で使用しても、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
また、一般式(1)で表される化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物とともに、膜形成用組成物に添加される、公知なシラン化合物(例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなど)を併用してもよい。
【0020】
材料の膜特性を向上させるため、必要に応じて、添加してもよい他のシラン化合物の例として、下記一般式(A)で表される有機ケイ素化合物又はそれらをモノマーとするポリマーが挙げられる。
【0021】
【化5】



【0022】
一般式(A)中、
aはアルキル基(好ましくは炭素数1から8)、アリール基(好ましくは炭素数6から10)又はヘテロ環基(好ましくは炭素数1から8)を表し、Rbは、水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表す。これらの基は更に置換基を有していてもよい。これらの基が有する置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数2〜10のアシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、ヒドロキシル基、炭素数10以下のアミノ基(アミノ、N−メチルアミノ等)等が挙げられる。
qは0〜4の整数を表し、q又は4−qが2以上のとき、Ra又はRbはそれぞれ同一でも異なってもよい。
また、該化合物同士は、Ra又はRbの置換基により互いに連結し、多量体を形成してもよい。
【0023】
qは0〜2が好ましく、Rbはアルキル基が好ましい。さらにqが0のときの好ましい化合物の例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等が挙げられ、qが1又は2のときの好ましい化合物の例としては以下の化合物が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
一般式(A)で表される化合物など他のシラン化合物を併用する場合、一般式(1)で表される化合物に対して、1〜200モル%の範囲で用いるのが好ましく、10〜100モル%の範囲で用いるのがより好ましい。
【0026】
本発明の膜形成用組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物及び/またはその加水分解物及び/またはそれらの縮合物は、球状でもよく多面体でもよい粒子形状であり、粒径2nm〜15nmの粒子状物である。好ましくは粒径3nm〜10nmの粒子状物であり、さらに好ましくは粒径3nm〜8nmの粒子状物である。
【0027】
このような範囲の平均粒径の粒子であれば、均一な粒径のものでも粒径の異なる粒子の2種類以上の混合物でもよく、すなわち粒度分布がシャープなものであっても、ブロードなものであっても、バイモダル(二頻度分布を有する)なものであってもよい。好ましくは粒度分布がシャープなものがよい。粒径の変動係数15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0028】
粒子の形成方法としては、公知の方法が適用でき、Stober法などの塩基触媒によるアルコキシシランの加水分解、縮合による方法(J.Colloid Interface Sci.,26, 62(1968), J.Colloid Interface Sci.,128, 121(1989)) やアルコキシシランのマイクロエマルジョン重合(Adv. Mater., 12, 955 (1997))などの方法があげられる。その他、いったん形成したバルク焼成体を粉砕して取り出し分級してもよい。分級としては、たとえば遠心分離法、溶解度分別法、物理ふるい法などが挙げられるが、これらの中で、操作の簡便性、粒子の収率を考慮すると遠心分離法がもっとも好ましい。遠心分離の操作はたとえばKUBOTA社製、KUBOTA 7930を用いて行なうことができる。分離に使用するローターの温度は通常0℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃で、ローター回転数は1000〜30000rpm、分離時間は5分から24時間が好ましい。24時間以上回転させても、粒子の収率はほとんど向上しない。得られた粒子は通常、水または有機溶媒に再分散された後使用される。他にもメカノケミカル法、メカニカルアロイング法、気相法、その他超音波化学、超臨界流体利用による粒子生成方法などいずれの方法も適用できる。
【0029】
本発明において加水分解、縮合による粒子形成方法としては、一般式(1)で表される化合物を水の存在下、適当な有機溶媒中で触媒を用いた加水分解、縮合があげられる。
【0030】
粒子を構成する一般式(1)で表される化合物は、一般式(A)で表される化合物などその他のシラン化合物、触媒、水及び/又は有機溶媒とからなる混合物に反応前に全量添加して良いし、一部ずつ段階的に添加してもよい。
【0031】
一般式(1)で表される化合物を加水分解、縮合させる際に、一般式(1)で表される化合物、必要により他のシラン化合物を含むシラン化合物の総量1モル当たり0.5〜100モルの水を用いることが好ましく、0.5〜50モルの水を加えることがさら好ましく、1〜20モルの水を加えることが特に好ましい。添加する水の量は、面状の点から0.5モル以上が好ましく、加水分解および縮合反応中のポリマーの析出やゲル化防止の点から100モル以下が好ましい。該化合物の加水分解に必要な水は液体のまま、あるいはアルコール等の水溶液として加えるのが一般的であるが、水蒸気の形で加えてもかまわない。水の添加を急激に行うと、一般式(1)で表される化合物の種類によっては加水分解と縮合が速すぎて沈殿を生じる場合があるため、水の添加に充分な時間をかけることが好ましい。具体的には、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上かけるて添加する。従って液体で添加する場合、一般式(1)で表される化合物が均一に水と接するようにアルコールなどの溶媒を共存させたり、低温で添加するなどの手法を単独または組み合わせて用いることが好ましい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物を加水分解、縮合させる際には、塩基触媒、酸触媒、または金属キレート化合物を使用することができるが、塩基性化合物触媒を使用することが好ましい。
【0033】
塩基性化合物触媒としては、無機あるいは有機の塩基が好ましい。ここで、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウムなどを挙げることができる。
また、有機塩基としては、例えば、アンモニア、アカノールアミン類(メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミン)、アルコキシアルキルアミン類(メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミン)、アルキルアミン類(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド)、ポリアミン類(テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミン、メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミン)、塩基性ヘテロ環化合物(ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン)などを挙げることができる。これらの中で、アルキルアミン類およびテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類が好ましい。
これらの塩基性化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0034】
上記触媒の使用量は、総量として、一般式(1)で表される化合物の1モルに対して、通常0.00001〜10モル、好ましくは0.00005〜5モルである。触媒の使用量が上記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の恐れが少ない。
【0035】
一般式(1)で表される化合物を加水分解及び縮合する温度は通常0〜100℃、好ましくは10〜90℃である。時間は通常5分〜200時間、好ましくは10分〜40時間である。
【0036】
また低温で初期の反応を進行させておいて、後期に高温で熟成することもできる。熟成温度は、40℃以上であることが好ましい。熟成時に用いる溶媒は、加水分解、縮合時に用いる溶媒と同じ溶媒を好ましく用いることができる。
【0037】
また、熟成には粒子成長のための界面活性剤、すなわち表面配位子を用いることもできる。表面配位子には、線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含む有機部分である長鎖アルキルアミン;4から18個の炭素原子(線状、分岐状、環式または芳香族)を含む有機部分である長鎖アルコール;線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含み、さらに環式構造または芳香族環を含んでいてもよい有機部分である長鎖ホスホン酸;および、線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含み、さらに環式構造または芳香族環を含んでいてもよい有機部分である長鎖スルホン酸;線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含む有機部分である長鎖カルボン酸、が含まれる。なかでも長鎖カルボン酸は好ましい。また、長鎖アルキル基とポリエチレンオキシド基を併せ持ついタイプの非イオン性界面活性剤も好ましく用いられる。
【0038】
以上の製造条件では、通常目的とする粒子以外に微粒子状にまで成長しないシロキサン化合物をはじめ、未反応の一般式(1)で表される化合物を含むその部分加水分解物や部分縮合物などが含まれる場合があるので、この場合はこれらの混合物から目的とする粒子を分離する必要がある。これは、先にのべた粉砕品の分級と同じ手法を用いて達成できる。
【0039】
また、その他の粒子形成方法として(a)マイクロエマルジョン重合による方法、(b)有機分散溶媒添加マイクロエマルジョン重合が挙げられる。
【0040】
まず、(a)マイクロエマルジョン重合について説明する。マイクロエマルジョン重合においては、水中で有機基含有アルコキシシランの数nm〜数十nm程度の透明な液体をマイクロエマルジョン微小な乳化物を作成し、ここで加水分解、縮合を行なうことができる。Dioctyl sulfosuccinate sodium saltなどの陰イオン性界面活性剤を水及び油と混合した系は、典型的なマイクロエマルジョン系として知られ良く研究されている。Dioctyl sulfosuccinate sodium saltは水和により親水基から陽イオンを解離する。その為、温度上昇によって親水基間の静電反発力が大きくなり、界面活性剤膜の自発曲率が変化し、様々な構造間の相転移が観測されることが知られている。このため温度等の反応条件を適切に設定することが好ましい。
【0041】
また、(b)有機分散溶剤添加マイクロエマルジョン重合においては、有機溶媒は水の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。さらに好ましくは1質量%以下である。
【0042】
添加する有機溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールなど)、アルカン(ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンおよびドデカンならびに石油エーテルもしくはケロシンのような粗留分など)、ケトン(アセトン、およびメチルエチルケトンを含むが、これらに限定されない)、エーテル(エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、ペンチルエーテル、ヘキシルエーテル、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、フェニルエーテル、およびメチルフェニルエーテル(アニソール)など)、芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、キシレン、およびメシチレンなど)、およびカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)が含まれる。これらの溶媒の中で、ヘキサン、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、オクチルエーテル、フェニルエーテルが、それらの有効性とコストの組合せにより通常用いられ、ヘキサン、アセトン、エタノールが、それらの沸点が低いために最も好ましい。
【0043】
また、この場合は、粒子成長のための界面活性剤、すなわち表面配位子を用いることもできる。表面配位子には、線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含む有機部分である長鎖アルキルアミン;4から18個の炭素原子(線状、分岐状、環式または芳香族)を含む有機部分である長鎖アルコール;線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含み、さらに環式構造または芳香族環を含んでいてもよい有機部分である長鎖ホスホン酸;および、線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含み、さらに環式構造または芳香族環を含んでいてもよい有機部分である長鎖スルホン酸;線状または分岐状で4から18個の炭素原子を含む有機部分である長鎖カルボン酸、が含まれる。なかでも長鎖カルボン酸は好ましい。また、長鎖アルキル基とポリエチレンオキシド基を併せ持つタイプの非イオン性界面活性剤も好ましく用いられる
【0044】
さらに添加する有機溶媒と界面活性剤の好ましい組み合わせとしては、アルキルあるいはアリールエーテルと長鎖アルキルカルボン酸の組み合わせが好ましく、例えば、オクチルエーテルまたはフェニルエーテルとオレイン酸が上げられる。あるいはアルコールとポリエチレンオキシド基を有する非イオン界面活性剤の組み合わせも好ましく、例えば、アルコールとノニルフェノールのポリエチレンオキシド付加物があげられる。
【0045】
このようにして得られた粒子は、分散媒を水に置換して、イオン交換樹脂で脱イオン処理を行ってもよい。処理により、形成した絶縁膜の耐熱性が良好となる場合がある。
【0046】
さらに、一般式(1)で表される化合物の加水分解物、縮合物は、塩基性化合物の存在下に加水分解・縮合して、加水分解物、縮合物とし、その後、組成物のpHを7以下に調整することが好ましい。
pHを調整する方法としては、
(イ)pH調整剤を添加する方法、
(ロ)常圧または減圧下で、組成物中より塩基性化合物を留去する方法、
(ハ)窒素、アルゴンなどのガスをバブリングすることにより、組成物中から塩基性化合物を除去する方法、
(ニ)イオン交換樹脂により、組成物中から塩基性化合物を除く方法、
(ホ)抽出や洗浄によって塩基性化合物を系外に除去する方法、
などが挙げられる。これらの方法は、それぞれ、組み合わせて用いてもよい。
【0047】
ここで、上記pH調整剤としては、無機プロトン酸や有機プロトン酸が挙げられる。
無機プロトン酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸などを挙げることができる。無機プロトン酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸が好ましく、塩酸、硝酸が特に好ましい。
また、有機プロトン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物などのカルボン酸類を挙げることができる。
また、リン酸メチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ドデシルエステル、リン酸フェニルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジドデシルエステル(などのリン酸エステル類が挙げられる。
また、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸ドデシルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジドデシルエステルなどの亜リン酸エステル類が挙げられる。なお、亜リン酸ジエステルについては、不純物としてフリーの水酸基を含む混合物である。
また、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ヘキサフルオロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸などのスルホン酸類が挙げられる。
また、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、1,5−ナフタレンビスホスホン酸などホスホン酸類が挙げられる。
有機プロトン酸としてはカルボン酸類が特に好ましい。
これら化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0048】
加水分解、縮合に用いる溶媒は、溶質である一般式(I)で表されるシラン化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、好ましくはケトン類(シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等)、カーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ-ブチロラクトン、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性溶媒(ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン、メシチレン等)、塩素系溶媒(メチレンジクロリド、エチレンジクロリド等)、ジイソプロピルベンゼン、水等を用いることができる。
【0049】
上記の中でも、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、エチレンカーボネートなどのカーボネート類、シクロヘキサノンなどのケトン類、非プロトン性極性溶媒、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、非極性溶媒、水が好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記の中でも、エーテル類、エステル類、カーボネート類、ケトン類、および非プロトン性極性溶媒が好ましく、特に好ましい溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、を挙げることができる。
【0051】
本発明に用いる一般式(1)により表される化合物の縮合物は高分子化合物(たとえばポリマー)である。この場合、その質量平均分子量は粒径の好ましい範囲を満たす条件であればどのような値でもかまわない。
【0052】
〔膜形成用組成物〕
本発明の膜形成用組成物は、通常、一般式(1)で表される化合物自体、上記で調製された一般式(1)で表される化合物の加水分解物及びそれらの縮合物の少なくともいずれかを有機溶剤に溶解して調製される。この組成物調製時の溶剤は、加水分解、縮合に用いる溶媒と同じでも異なっていてもよい。
【0053】
該有機溶剤は、均質な膜を得るために、沸点が85℃以上250℃以下であることが好ましい。また、低誘電率の観点から分子中にエーテル基、エステル基、またはカルボニル基を有する溶剤であることがさらに好ましい。
【0054】
これらの観点から、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0055】
これらの好ましい有機溶剤の使用量はそれ以外の有機溶剤を含む全溶剤量の25質量%以上が好ましく、30質量%がさらに好ましい。50質量%が特に好ましい。
【0056】
本発明の組成物の全固形分濃度は、好ましくは、2〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。組成物の全固形分濃度が2〜30質量%であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、また組成物の保存安定性もより優れるものである。
【0057】
本発明の膜形成用組成物を塗布、乾燥の後、好ましくは加熱することにより、良好な絶縁材料を形成することができる。特に、良好な絶縁膜を提供することができる。
【0058】
本発明の膜形成用組成物を、シリコンウエハ、SiO2 ウエハ、SiN、SiCNウエハなどの基材に塗布する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段が用いられる。
【0059】
この際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは80〜600℃程度の温度で、通常、1〜240分程度加熱することにより、ガラス質または巨大高分子、またはその混合物の絶縁膜を形成することができる。この際の加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することが出来、加熱雰囲気としては、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行うことができる。
【0060】
より具体的には、本発明の組成物を、例えばスピンコート法により、基板(通常は金属配線を有する基板)上に塗布し、300℃以下の温度で第一の熱処理を行うことにより溶剤を乾燥させるとともに、組成物に含まれるシロキサンを架橋させ、次いで300℃より高く450℃以下の温度(好ましくは330〜400℃)で、一般的には1分〜4時間、第二の熱処理(アニール)を行うことにより低誘電率の絶縁膜を形成できる。
【0061】
本発明にいかなる界面活性剤を使用してもよいが、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する界面活性剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコン系界面活性剤が好ましい。
【0062】
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、膜形成塗布液の全量に対して0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0063】
本発明において、シリコン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、いかなるシリコン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記式(2)で表される構造を含むことが更に好ましい。
【0064】
【化7】

【0065】
一般式(2)中、
Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、
xは1〜20の整数であり、
m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。
複数のRは同じでも異なっていてもよい。
【0066】
本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0067】
本発明に使用するノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0068】
本発明に使用する含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0069】
本発明に使用するアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0070】
本発明の組成物により形成した絶縁膜の上には、シリコン酸化膜等の別の絶縁膜を、例えば気相成長法等により、形成してもよい。これは、本発明により形成した絶縁膜を外気と遮断し、膜中に残留している水素やフッ素の減少を抑制するのに効果があるからである。また、この別の絶縁膜は、その後の工程での処理(例えばCMPによる平坦化等の処理)で本発明による絶縁膜が損傷を被るのを防止するのにも有効である。
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があっても良く、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMPでの剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けても良い。
【0071】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0072】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMP(化学的機械的研磨)をすることができる。CMPスラリー(薬液)としては、市販のスラリー(例えば、フジミ製、ロデールニッタ製、日立化成製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製、荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0073】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
さらに、別の用途として本発明の膜に電子ドナーまたはアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することも出来る。
【実施例1】
【0074】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0075】
粒子の製造例
〔合成例1:本発明の膜形成用組成物E−1の作製〕
Tetrahedron Letters、34巻、13号、2111頁(1993年)に記載の方法を用いて化合物1−1を合成した。化合物(1−1)1.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル3.7gとエタノール1.23gに溶解させた溶液中に25%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を0.1mlを滴下した。滴下終了後室温で300分反応させ、10μlのBYK306(ビックケミー社製)を加えて、本発明の組成物E−1を作製した。本組成物の一部をエタノールにて100倍希釈した後、透過型電子顕微鏡(TEM)観察したところ、数平均粒径7nm(投影面の円換算直径の数平均)であった。
【0076】
以下、粒径は表1に記載する。
〔合成例2:本発明の膜形成用組成物E−2の作製〕
合成例1で、使用した溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル2.47gとエタノール2.47gに替えたほかは合成例1と同様にして本発明の組成物E−2を作製した。
【0077】
〔比較合成例1:比較用の膜形成用組成物C−1の作製〕
合成例1で、使用した溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル0.98gとエタノール3.94gに替えたほかは合成例2と同様にして比較用の組成物C−1を作製した。
【0078】
〔比較合成例2:比較用の膜形成用組成物C−2の作製〕
合成例1で、使用した溶媒をエタノール4.93gに替えたほかは合成例2と同様にして比較用の組成物C−2を作製した。
【0079】
〔合成例3:本発明の膜形成用組成物E−3の作製〕
合成例1で、使用したテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を25%メチルアミン水溶液に替えたほかは合成例2と同様にして本発明の組成物E−3を作製した。
【0080】
〔合成例4:本発明の膜形成用組成物E−4の作製〕
化合物(1−1)1gをプロピレングリコールモノメチルエーテル3.7gとエタノール1.23gに溶解させた溶液中に25%のテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液を0.1mlを滴下した。滴下終了後室温で300分反応させ、10μlのBYK306を加えて、本発明の組成物E−4を作製した。
【0081】
〔比較合成例3:比較用の膜形成用組成物C−3の作製〕
合成例4で、使用した溶媒をエタノール4.93gに替えたほかは合成例5と同様にして比較用の組成物C−3を作製した。
【0082】
〔比較合成例4:比較用の膜形成用組成物C−4の作製〕
化合物(1−1)0.5gとテトラエトキシシラン 1.01gをプロピレングリコールモノメチルエーテル3.7gとエタノール1.23gに溶解させた溶液中に0.1Mの硝酸水溶液0.5mlと水1mlの混合物を滴下した。滴下終了後室温で300分反応させ、10μlのBYK306を加えて、比較用の組成物C−4を作製した。
【0083】
〔実施例1: 絶縁膜の作製および面状の評価〕
上記のようにして調製した組成物をシリコン基板上に膜厚4000Aでスピンコートし、ホットプレート上で150℃1分間にわたって乾燥を行い、溶剤を除去した。次いで、乾燥後のシリコン基板をクリーンオーブンに移し、酸素濃度10ppm以下の窒素中で400℃30分間にわたって熱処理を行い、実施例1〜4および比較例1〜4の絶縁膜を得た。
該絶縁膜について光学顕微鏡を用いて50倍、1500倍の倍率で面状を評価し、各膜について、100μm×100μmの面内のムラおよびブツの数を数え、相対評価を行った。
【0084】
〔誘電率の測定〕
上記で得られた絶縁膜を温度24℃湿度50%の条件で24時間放置した後、フォーディメンジョンズ社製水銀プローブとヒューレットパッカード社製HP4285A LCRメーターを用い1MHzで比誘電率を測定した。
面状の評価結果および比誘電率の測定結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
○:ムラあるいはブツは認められず良好。
△:数点のムラあるいはブツが認められた。(10,000平方ミクロン内に1〜10点)
△〜×:数多いムラあるいはブツが認められた。(10,000平方ミクロン内に11〜100点)
×:膜全体にわたり非常に多数のムラあるいはブツが認められた。(10,000平方ミクロン内に101点以上)
【0087】
本発明に従った実施例の絶縁膜は、良好な面状であり、誘電率が小さいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物、その加水分解物、それらの縮合物の少なくとも一つ、および、有機溶剤を含む組成物であって、該化合物、その加水分解物、それらの縮合物が粒径2nmから15nmの粒子状物であることを特徴とする膜形成用組成物。
【化1】

一般式(1)において、
1〜R4はそれぞれ独立して水素原子または任意の置換基を表す。R1及びR2のうち少なくとも1つは加水分解性基を表す。
1は炭素原子またはケイ素原子を表す。
1は2価の連結基を表す。
mは各々独立して0または1を表し、mが0の場合nは3〜5の整数を表し、mが1の場合nは2〜3の整数を表す。
複数のR1〜R4、X1、L1は、各々互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
一般式(1)において、X1が炭素原子、L1がアルキレン基であることを特徴とする請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
一般式(1)において、mが0であることを特徴とする請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
有機溶剤がエーテル基、エステル基またはカルボニル基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
更に無機プロトン酸または有機プロトン酸を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
更に水を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
更に界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の膜形成用組成物から形成された絶縁膜。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を基板上に塗布した後、焼成することを特徴とする絶縁膜の製造方法。

【公開番号】特開2007−238761(P2007−238761A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62978(P2006−62978)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】