説明

膜成長装置および太陽電池の製造装置

【課題】ロールから引き出す連続した基板に半導体の結晶膜を成長させるには、高気密の大気遮断機構が必要である。結晶を成長させるために、それを700℃以上の高温で可能にさせる第1の課題がある。また半導体pn接合を切断すると切断面にそれが現れてリークパスとなる。切断してもpn接合端面が切断面に現れない製造方法が第2の課題である。第1、第2の課題を同時に解決する必要がある
【解決手段】シリコン基板を使わないで金属基板の上に半導体膜を積層して、安価で堅牢な太陽電池を製作する。そのために、鉄板をリング状の突起で押さえて機密なCVD反応室を作り半導体シリコン膜を成長させる第1の発明をした。鉄板を切断するとき接合の端が外部に露出しないように接合を絶縁膜で分離して膜を積層する第2の発明をした。高温で塗布材料を印刷する本発明によれば、鉄板の上の結晶半導体の太陽電池の連続製造が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に薄膜を成長させる装置および当該装置により太陽電池を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アモルファスシリコンを用いる薄膜太陽電池の発電効率は10%以下に制限される。またそれは経年劣化する。アモルファス薄膜半導体は水素を含有しており、光が当たるとその結合が切断されるからである。切断された結合は太陽光で発生させた電子と正孔の再結合中心として作用する。再結合中心の増殖は発電効率の劣化として現れるので、これは光劣化と呼ばれている。
【0003】
薄膜太陽電池は光劣化のために耐用年数に限度があった。
【0004】
一方において、結晶シリコン太陽電池があり、上で述べた光劣化に相当する劣化がない。これは安定であり発電効率も20%を上回るものがある。
【0005】
結晶シリコン太陽電池の仲間として、ポリシリコン太陽電池がある。これは製造が容易な多結晶のシリコンを使う。発電効率は14〜17%のものが現在得られている。
【0006】
結晶シリコン基板も多結晶シリコン基板も約15.6cm四角で300円程度で購入可能である。セル価格に差があるが、600円前後で取り引きされている。
【0007】
従ってセルの価格のおおよそ半分がシリコン基板の値段である。基板を安価な材料で置き換えることが出来れば、当該セルの価格を下げられる。
【0008】
以上の太陽電池を安価に作製する方法として金属板にシリコン太陽電池を作製する発明が開示されている(特許文献1参照)。これは、金属板表面にシリコン薄膜とHSGというシリコン表面が鏡面でない膜を付ける発明である。
【0009】
一方、凹凸をつけた金属基板の上にポリシリコンをCVDで成長させる発明がある(特許文献2参照)。
【0010】
この発明は凹凸をつけた金属基板の上に加熱したシランガスを吹き付けてシリコンの結晶を成長させる発明である。凹凸は金属基板を屈曲させて、表面に錐構造を作製している。この錐構造は光の反射率を低め、進入した光の光路長を長くして、光の実質的吸収量を増やす。
【0011】
金属板の上にシリコンを安価に成長させる装置の発明がある。大気雰囲気から基板を挿入し再び大気雰囲気に当該板を抜き出す装置構造の発明である(特許文献3参照)。
【0012】
この発明はCVD(化学気相成長)ガスを加熱して基板表面に吹き付けることにより、CVDガスを熱分解して膜を成長させる。反応室(CVD反応室)を囲むガスの吹きつけ機構が大気の進入を遮断する機密構造の発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−117783号公報
【特許文献2】特開2010−192479号公報
【特許文献3】特願2010−274665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
金属板を基板とし結晶成長に必要な通常の高い温度に加熱してシランガスを分解させて結晶成長が可能である。しかし、膜厚と基板の大きさによって鉄板の熱収縮が大きいためにシリコン膜が剥がれる。
【0015】
ポリシリコン成長に必要なモノシランガスの熱分解温度は通常620℃である。鉄の熱膨張係数は膨張係数が12x10−6/℃、室温付近のシリコンのそれは2.4×10−6/℃である。膨張係数の非線形は無視してこの値を用いて単純な計算をすると600℃の温度差で100cmの鉄は7.2mm伸縮し、シリコン膜は1.4mm伸縮する。
【0016】
これは鉄板を変形させ、歪(ストレス)を鉄板の端に集める結果、膜が剥がれる。この課題を解決するには鉄板とシリコンの膜ストレスを端に蓄積させないようにする。ストレスを蓄積させない方法として、基板を屈曲させる考えがある。
【0017】
ストレスとは別の理由のテクスチャリング(凹凸処理)加工のために鉄板を曲げる考えもある(特許文献2参照)。鉄板を曲げて、端を沢山作ると膜ストレスの分散になる。しかし鉄板が一定以上厚いと、鉄板を曲げるのは容易でない。
【0018】
金属板にガスの分解温度より低温に維持したままでシリコン結晶膜を成長する考えもあるが、結晶の品質に課題がある。鉄などの金属板の耐熱性を利用して、700℃を越える高い温度で膜成長させると結晶品質は当然改善する。以上は膜剥がれの課題と結晶品質向上のための高温成長が両立しないという第1の課題である。
【0019】
シリコン結晶を成長させるとき、温度のほかに不純物酸素の課題がある。大気を遮断する機密機構が特許文献3にある。高温のガスを基板に吹き付けるこの機密機構は連続した金属板を大気から遮断するのに有効である。しかし、酸素濃度を1ppm以下で制御することが必要な結晶のとき、連続した金属板を完全に大気から遮断することが困難である。これが、第2の課題である。
【0020】
連続した金属板または大型ガラス基板の上に太陽電池を製造するとき、セル毎に当該金属板を分離したい。金属板なら切断することになる。分離のために切断するとき、セル自身を切断できない。
【0021】
セルを切断分離すると切断面にpn半導体接合の端面が露出して、電流のリークパスを形成するからである。基板を分離しても、pn半導体接合は切断されず分離されて配置されなくてはならない。または接合端面が露出しない構造でなくてはならない。電極材料や透明導電膜も切断面から分離されて配置されることが電流リークを回避するために望ましい。
【0022】
絶縁物であるガラス基板の上に太陽電池セルを作るとき、同じように表面に接合端面を露出させることができない。分離してセルを作るときも、接合の端面を絶縁膜で覆う必要がある。
【0023】
以上の対策のためには連続した基板の上に孤立して多層成膜する技術が必要であるが、半導体工程で使うリソグラフィーは高価なので利用できない。これが第3の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、請求項1に記載のように、基板の表面と裏面に当該基板を挟む2つの加熱したフランジがあり、当該フランジにループ状の突起が備えてあり、当該突起が当該基板を押し付けることで突起の外と機密遮断された突起内の当該基板に膜を成長させる製造装置である。
【0025】
請求項2に係る発明は前記基板が金属基板であることを特徴とする請求項1記載の製造装置である。
【0026】
請求項3に係る発明は、機密遮断された前記基板にガスまたは液体または液体のミストまたは液体の蒸気を吹き付けて膜を成長させることを特徴とする請求項1、2記載の製造装置である。1
【0027】
請求項4に係る発明は前記膜がシリコン、ゲルマニュームを含む半導体膜とカーボン、ガリューム、カドミューム、亜鉛、銅、インジューム、チタン、イオウ、セレンいずれか、または複数を含む化合物半導体膜、またはそれらの積層膜であることを特徴とする請求項1〜3記載の製造装置である。
【0028】
請求項5に係る発明は表面にパタンを有するスタンプと金属板またはガラス板を接触させ、前記パタン表面に付着させた塗布材料を転写して塗布膜の転写パタン膜を形成し、当該転写パタン膜を焼成する機構を備えた製造装置である。
【0029】
請求項6に係る発明は前記パタンがリング状または島状または線状であることを特徴とする請求項5記載の製造装置である。
【0030】
請求項7に係る発明は前記パタンに重なる形状のパタンで加熱する加熱機構を備えたことを特徴とする請求項5、6記載の製造装置である。
【0031】
請求項8に係る発明は前記加熱機構が加熱パタンの加熱スタンプと前記金属板の接触であることを特徴とする請求項5〜7記載の製造装置である。
【0032】
請求項9に係る発明は前記スタンプが前記パタンを表面に備えた回転する円筒または円柱であることを特徴とする請求項1〜8記載の製造装置である。
【0033】
請求項10に係る発明は前記基板が金属板であり、それが巻きつけられたロールから供給する機構を備えたことを特徴とする請求項1〜9記載の製造装置である。
【0034】
請求項11に係る発明は前記基板が金属板であり、当該金属板に突起を形成するプレス機構を備えたことを特徴とする請求項1〜10記載の製造装置である。
【0035】
請求項12に係る発明は前記基板が金属板であり、シャー切断またはレーザーを用いる切断機構を備えたことを特徴とする請求項1〜11記載の製造装置である。
【0036】
請求項13に係る発明は前記基板の表面に、低くとも200℃以上のスチームを吹き付ける機構を備えたことを特徴とする請求項1〜12記載の製造装置である。
【0037】
請求項14に係る発明は太陽電池を製造することを特徴とする請求項1〜13記載の製造装置である。
【発明の効果】
【0038】
請求項1から4に係る発明によれば、金属板を外部大気から機密遮断して高純度の材料膜を形成することが可能となる。特に当該材料膜が大気からの酸素不純物を嫌う半導体膜であり、半導体膜の積層膜で
【0039】
あるときは、高い機密度を必要とするので本発明は有効である。
【0040】
請求項5から9に係る発明によれば、半導体の接合をリング状の絶縁膜で分離した構造作製を可能にする。また、この発明によれば、その上に形成する透明導電膜と反射防止膜、電極膜をも独立分離して形成することが可能である。
【0041】
シリコン膜、絶縁膜、導電膜を、それぞれの位置合わせをして積層膜に仕上げることを可能にする本発明は、太陽電池や表示デバイスを連続して形成することを可能にする。
【0042】
特に鉄板などの薄い金属板の上に太陽電池を製造したとき、その金属板を切断してセル分離が可能となり安く、堅牢な軽い、長持ちの薄膜結晶太陽電池製造が可能となる。
【0043】
大型のガラス基板の上に塗布材料を塗布して太陽電池の構造を作ることが可能になる。大きなビルの窓ガラスの上に太陽電池が作られることになる。
【0044】
請求項10から14に係る発明によれば、例えば薄板の鉄板ロールから薄い鉄板を引き出し、その上に連続して太陽電池製造が可能である。太陽電池を安く作ることが可能なので、自然エネルギーの利用が進む。また、製造方法が確立したあとは、薄膜材料を改良することで、変換効率の改良が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、特開2009-117783の太陽電池の構造図。
【図2】図2は、金属板と膜を成長させるCVD装置の構造の模式図
【図3】図3は、材料を付着させた限定領域を加熱する例の模式図
【図4】図4は、塗布材料スタンプの模式図
【図5】図5は、回転スタンプの形の例の模式図
【図6】図6は、高温加熱スタンプの例の模式図
【図7】図7は、回転加熱スタンプの例の模式図
【図8】図8は、パタンの模式図
【図9】図9は、高気密CVD装置断面模式図
【図10】図10は、塗布材料のパタン膜を付ける装置の断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0046】
図2は突起を配置した基板とその上に膜を成長させるCVD装置の構造の模式図である。この場合基板は金属板である。金属板200には突起領域201と突起領域内部の平坦領域203と突起領域周辺の平坦領域202がある。突起は板の屈曲で形成できる。
【0047】
現在、鉄板やアルミニュームの缶に用いる薄板の商業的厚さとしてよく用いられて安価に入手できる厚さは0.2mm以下である。最も標準的には0.1mmである。金属板200としてはこのような薄板が好適である。
【0048】
この厚みの金属板はロールから供給される。またプレスで屈曲させて任意の設計の突起を形成できる。
錆びや汚れを取るために200℃以上、好ましくは300℃以上の高温のスチームで基板表面を洗浄すると、薬品を使用せずに清浄表面の連続した金属板を用意できる。
【0049】
金属板としては鉄のほか需要によってはタングステン、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、チタンの元素を含む金属板やこれらのめっきや張り合わせ板が使用可能である。
【0050】
1番目、2番目のセル204、205の上に膜をCVDで成長させるとき、形成した突起が大気の流入通路となり、特許文献3に示された高温ガスの吹き付けで大気を遮断するのが不完全になる課題があった。また、金属板が反るので、ガイドに当たり傷が付く。
【0051】
この課題の対策は反りに影響を受けない高温に耐える大気遮断の機構で解決する。その機構が基板上の機密線206,207の上で強く機密押し歯突起208と受け面209が押し合う機構である。力が集中するように当該突起はナイフエッジのごとくしても良い。
【0052】
機密押し歯突起208と受け面209はそれぞれCVDフランジ210とヒーターフランジ213についている。CVDフランジ210にはCVDプレート211とCVD排気214が備えられ、ヒーターフランジ213にはヒーター212が備えられている。それぞれ、のフランジは加熱されている。フランジは金属であるが、グラファイトやセラミクスであっても良い。
【0053】
機密線206,207の上で金属板はリング状の機密押し歯突起208と受け面209で機密に大気遮断されるので、CVDプレートからのシランガスの分解は大気の混合が無く純度の高いシリコン結晶を成長させることが可能である。
【0054】
結晶成長のためにヒーターの温度は100〜800℃で調整できる。ガスを吹き付ける方法のほかに、液体の蒸気やミストを吹き付けても機密空間で結晶膜を成長させることが可能である。また加熱温度の調整と不純物を混合することで非結晶質の膜を成長させることも可能である。
【0055】
ここでは、加熱により変形または膨張する金属薄板を基板とする例を述べた。基板が無アルカリガラス板の場合700℃まで変形しない。一般のソーダーガラスなら350℃まで変形しない。このようなガラス基板を用いて、その上に遮蔽空間をつくるためには金属で押し付けることはできない。
【0056】
そのとき当該突起208はOリングのような弾力材になる。またその耐熱性から使用できる温度は耐熱限界までとなる。Oリングの場合、250℃まで使用か可能な航空機用のものがあるので、その耐熱性温度で焼成可能な材料膜をガラス基板の上にも機密空間で成膜可能である。
【0057】
結晶の半導体膜は大気を遮断した空間で成長できるので、シリコンだけでなくゲルマニューム半導体膜であっても成長可能である。またカーボン、ガリューム、カドミューム、亜鉛、銅、インジューム、チタン、イオウ、セレンいずれかを含む化合物半導体膜であってもよい。以上の構造により第1、第2の課題は解決される。
【0058】
以上の機密機構で金属板に大気を遮断して大気の酸素を混入させない半導体膜を成長できる。また半導体膜成長に用いるCVDガスを外に漏らさない。この方法で半導体膜を成長させ半導体のpn接合を作り太陽電池を作る。
【0059】
半導体として現在シリコンが一般的であり、温度調整や不純物調整によりアモルファスと結晶を積層させることも可能である。高気密であるので、減圧にして一般的なプラズマCVDで膜成長させることも可能である。
【0060】
シリコンと水素の化合した液体材料を吹き付け、またはミスト化して吹き付けて、それを焼成してシリコン結晶のpn接合をつくることも可能である。
【0061】
第3の課題はそれを切断してセルを分離して作るとき、連続した接合で切断すると、接合面の端面が露出することであった。それを防ぐ方法の一つは接合を絶縁膜で分離して、その絶縁膜の上で切断することである。セルの端面の全てが絶縁膜の上に現れるためには、その絶縁膜は孤立したリング状でなくてはならない。
【0062】
孤立したリング状の絶縁膜領域を連続した金属板の上に形成した例を図3に模式的示す。連続基板300の上に孤立したリング状の絶縁膜領域301がある。絶縁膜が塗布膜であるとき、これを加熱する必要がある。当該のリング状の絶縁膜領域301と重なるようにリング状に加熱する機構が必要である。
【0063】
図4、5,6,7にその解決方法の模式図を示す。
【0064】
図4に塗布材料スタンプ400の模式図を示す。これは、塗布材料を連続基板表面1に付着させる構造を示す。塗布材料導入パイプ401より塗布材料が供給される。供給された塗布材料はスポンジ402に染み出す。染み出した塗布材料は連続基板表面1(403)に付着(転写)する。付着の再現性をよくするために、スポンジ402と同じパタンのスタンプ受け404にスポンジ402があたる。スポンジは塗布材料が染みるスポンジ状材料であれば、他の材料でも良い。
【0065】
塗布材料の付着は平坦なスタンプ400だけでなく、回転式のものも可能である。
【0066】
図5に回転スタンプの例の模式図を示す。回転スタンプ501はリング状に塗布膜を転写する。リング状スポンジ502に塗布材料を付着させ、これを連続基板表面1(403)に接触させながら回転させると、リング状スポンジ502に付着した塗布材料は連続基板表面1(403)に転写する。リング状でなく、島状に塗布膜を転写させることも可能である。
【0067】
回転スタンプ503は島状スポンンジ504を持つ。これに塗布材料を付着させ、これを連続基板表面1(403)に接触させながら回転させると、島状スポンジ504に付着した塗布材料は連続基板表面1(403)に転写する。
【0068】
転写させた塗布材料の溶剤を気化させて除き、緻密な安定な膜にするために加熱をこの領域だけ行う必要がる。そのために転写した塗布材料膜のパタンと重なる加熱パタンで加熱する必要がある。そのためには基板が金属板のときは割れないので接触して加熱パタンを転写する高温加熱スタンプが一つの方法である。基板がガラス板のとき、光パタンの投射やレーザースキャンも加熱方法としてはある。ここでは構造が簡単な接触熱転写の機構(高温化熱スタンプ)で金属板を加熱する。
【0069】
図6に高温加熱スタンプの例の模式図を示す。加熱すべきパタンの加熱スタンプパタン601は金属でできていて、ヒーター602で高温に加熱される。熱接触の再現性をよくするために加熱スタンプパタン601の先には溝602があり、これを吸引パイプ603から減圧にして連続基板表面2(604)吸い付ける。
【0070】
当該基板と加熱スタンプパタン601が接触することで、接触部分が加熱されて、塗布材料膜606と重なるパタン領域607が加熱される。
【0071】
望まない部分が加熱されるのを防止するために断熱材608が備えられている。加熱されると塗布材料膜606から余分なガスが放出されるので、この放出ガスをガスパイプ609から吹き付ける高温加熱ガスで吹き飛ばす。スタンプの内部に放出ガスが残るのを防ぐために、シャワープレート610から窒素ガスを吹き付ける。
【0072】
以上は平坦な表面をもつスタンプ式の高温加熱スタンプ600であった。塗布材料を回転スタンプ501、503で転写した例と同じく、回転スタンプのパタンと重なる高温加熱パタンをもつ回転スタンプで加熱しても良い。
【0073】
図7に回転加熱スタンプの例の模式図を示す。塗布材料膜606と重なるパタンを持つリング状加熱パタン701が回転加熱スタンプ700に備えられている。連続基板表面1(403)の上に転写された塗布材料膜606と重なるように、加熱パタンが連続基板表面2(604)に接触しながら回転すると、塗布材料膜606が加熱される。
【0074】
ここに示した加熱パタンは回転加熱スタンプ700に一つであるが、複数の違うパタンが複数個備えられていても良い。以上に述べた回転するスタンプ501、503、700は円筒であっても円柱であっても良い。回転する当該スタンプには転写する塗布材料、または加熱のための電力が供給される。
【0075】
以上の発明により、第3の課題であった「孤立したリング状に絶縁膜領域を連続した基板の上に形成すること」が解決した。
【0076】
リング状であるパタンで本発明を説明したが、島状のパタンであっても、魚の骨のようなパタンであっても本発明は適用できる。その例を図8に示した。
【0077】
本発明で転写した島状パタン801の外周804がリング状パタン802の内部で重なる大きさの関係がある。塗布材料としての透明導電膜や半導体膜が、当該の島パタン801に相当するときがある。この関係はセル同士をリング状の絶縁膜パタンの中心で分離するとき、切断線が透明導電膜を切断しない。
【0078】
以上の本発明により孤立した絶縁膜をリング状に基板の上に形成できた。基板が金属板であるとき、この絶縁膜を半導体のpn接合の間に挟むように形成し、この場所で金属板を切断することが可能である。当該pn接合は外部に現れないので電流のリークパスを遮断できる。金属板の切断は機械的シャー切断(はさみによる切断)でもレーザー切断でも可能である。
【0079】
本発明により連続した基板の上に半導体のpn接合を形成すること、リング状に絶縁膜を孤立して形成させること、接合をリング状絶縁膜で分離させること、透明導電膜と反射防止膜、電極材料も任意の形と大きさ、位置で印刷するように転写付与することが可能となった。基板が金属板のとき、この構造を形成して、それを当該絶縁膜の上で分離切断することで切断面にpn接合が現れない太陽電池が製造できる。
【実施例1】
【0080】
実施例1はシリコン膜の成長である。図9はシリコン膜を成長させる装置の断面模式図である。
【0081】
図示しないロールから厚さ0.1mmの鉄板900が500℃のスチームで両面洗浄されて供給される。スチームの温度が200℃以上のとき、よく油汚れを除去する。500℃のときは鉄板表面をエッチングする効果が期待できるので、洗浄効果が大きい。
【0082】
位置決め孔905により正確に移動して止まる。止まると機密押し歯突起208と受け面209が鉄板900をリング状に挟む。
【0083】
水素で10%に希釈したモノシラン10SLMとドーパントガスをCVDガス供給管903より導入する。当該ドーパントガスは水素で1%に希釈したジボランB2H610SCCMの流量で合流させて導入した。
【0084】
シランとドーパントガスはCVDプレート211を通り、CVD反応室901に分散される。当該ガスは800℃に加熱された厚さ0.1mmの鉄板900に当たり表面にポリシリコンを成長させる。CVDフランジ210に備えたリング状排気902から当該CVDガスが排気される。
【0085】
機密線押し歯突起208とヒーターフランジ213の受け面209に鉄板はリング状に挟まれて、当該突起208の内側は大気から機密に遮断されるので大気からの酸素混入がない。基板が曲がらないように基板裏面室906とCVD反応室901は等圧に制御される。ヒーター212でヒーターフランジ213は加熱されて, 温度の制御が行われ、断熱材907で図示しない外部ケースと断熱されている。
【0086】
位置決め孔905により鉄板900の位置が認識されて、位置が制御される。機密線押し歯突起208で鉄板900は押し付けられで凹むので、傷が付く。次のシリコン膜成長のときに同じ場所を押し付けると傷のためにリークが生じ、機密遮断が不完全になる。
【0087】
そのために、次の膜成長のための機密遮断のとき、前の機密線押し歯突起208の傷と重ならない機密線押し歯突起を設計して選ぶ。
【0088】
用いるガスがモノシランSiH4であれば温度が600℃以上で、ジシランSi2H6であれば例えば570℃以上で、トリシランSi3H8であれば例えば500℃以上で、よくポリシリコンが成長する。また液体のシラン、例えばシクロペンタシランCPSを用いると、安全にガスを発生させて長時間の使用ができるので、連続製造に好適である。
【実施例2】
【0089】
実施例2を図10に示す。図10は塗布材料のパタン膜を屈曲可能な基板、ここでは当該鉄板の上に転写する装置の断面模式図である。既にp型半導体シリコン膜が成長してある厚み0.1mmの鉄板900が右から移動する。
【0090】
塗布材料1001がロールR1に接触し、ロールR1が回転する。この実施例では当該塗布材料はスピンオンガラス(SOG)である。ロールR1のスポンジ1002に付着したSOGは次の回転スタンプR2のリング状パタンのパタンスポンジ1003と接触して、SOGをパタンスポンジ1003に付着させる。
【0091】
リング状パタンのパタンスポンジ1003は回転スタンプR2においては2つある。パタンスポンジ1003は鉄板900と接触してSOGのパタンを鉄板900に転写する。転写が確実に起きるようにロールR3で抑える。
高温加熱パタンを埋め込んだ回転加熱スタンプR4が鉄板900に接触しながら回転する。回転加熱スタンプR4のパタンと回転スタンプR2のパタンは重なるように設計した。SOGは回転加熱スタンプR4の高温加熱パタン1004で加熱されて焼成される。加熱温度は700℃である。
【0092】
回転スタンプR2は上下に移動して接触を止めることができる。また鉄板900が止まっていて、回転スタンプR2が左右に移動する制御も装置の構成設計により可能である。加熱スタンプR4は回転を止めて加熱することも、回転しながら加熱することも設計可能である。
【実施例3】
【0093】
実施例3はn型半導体シリコン膜の成長である。成長装置は図9に示したものと同じである。位置決め孔905により正確に移動して鉄板900が止まる。止まると上下からヒーターフランジ213の受け面209とCVDフランジ210の機密押し歯突起208とにリング状に挟まれる。大気圧で水素を10SLM流しながら800℃に加熱し,表面の酸化膜を除き清浄にする。
【0094】
水素で10%に希釈したモノシラン10SLMとドーパントガスをCVDガス供給管903より導入する。当該ドーパントガスは水素で0.01%に希釈したフォスフィンPH3を10SCCMの流量で合流させて導入した。
【0095】
シランとドーパントガスはCVDプレート211を通り、CVD反応室901に分散される。当該ガスは700℃に加熱された厚さ0.1mmの鉄板900に当たり表面にポリシリコンを成長させる。CVDフランジ210に備えたリング状排気902から当該CVDガスが排気される。
【0096】
機密線押し歯突起208とヒーターフランジ213の受け面209に鉄板はリング状に挟まれて、当該突起208の内側は大気から機密に遮断される。基板裏面室906とCVD反応室901は等圧に制御される。ヒーター212でヒーターフランジ213が加熱されて, 断熱材907で図示しない外部ケースから断熱されている。
【0097】
機密線押し歯突起208で鉄板900は押し付けられで凹むので、傷が付くので、機密な次の膜成長が必要なときは当該傷と重ならない機密線押し歯突起を設計して選ぶ。
【実施例4】
【0098】
実施例4は塗布材料1001が透明導電膜である。アルミニュームがドーピングされた塗布材料(ZnO:Al)は600℃で加熱されて透明導電膜になる。パタンスポンジのパタンは島状である。高温加熱パタンも当該パタンと重なる島状である。
【実施例5】
【0099】
実施例5は塗布材料1001が銀ペーストである。銀ペーストは300℃で加熱すると、溶剤が蒸発して低抵抗になるとともに、ZnO膜と電気接触する。パタンスポンジのパタンは魚の骨の島状である。高温加熱パタンも当該パタンと重なる島状パタンである。
【実施例6】
【0100】
実施例6は塗布材料1001が反射防止膜となる塗布式の有機SiON(韓国APM社ミラスピン)である。塗布材料SiONが350℃で加熱されて反射防止膜になる。パタンスポンジのパタンは島状である。高温加熱パタンも当該パタンと重なる島状である。ここで示した塗布材料と半導体材料は1例に過ぎない。半導体材料膜としてはシリコン、ゲルマニュームを含む半導体膜とカーボン、ガリューム、カドミューム、亜鉛、銅、インジューム、チタン、イオウ、セレンいずれか、または複数を含む化合物半導体膜、またはそれらの積層膜がある。塗布材料としてはシリコンや酸化物半導体、CIGSのような化合物半導体もある。これらの材料を目的に合わせて自由に設計して使用できる。
【0101】
以上の実施例で示した製造方法で鉄板上の太陽電池を作製した。リング状の絶縁膜の上で機械的切断機シャーで切断すると、切断面には接合面が現れない。切断はレーザーで行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、太陽電池を安価に製造する技術に好適である。
【符号の説明】
【0103】
8 n型HSGシリコン層
9 p型シリコン層
10 アルミ電極層
11 金属製基盤
200 連続金属板
201 突起領域
202 突起領域周辺の平坦領域
203 突起領域内部の平坦領域
204 1番目のセル
205 2番目のセル
206 機密線
207 機密線
208 機密線押し歯突起
209 受け面
210 CVDフランジ
211 CVDプレート
212 ヒーター
213 ヒーターフランジ
214 CVD排気
300 連続基板
301 リング状絶縁膜領域
302 リング状加熱領域
400 塗布材料スタンプ
401 塗布材料導入パイプ
402 スポンジ
403 連続基板表面1
404 スタンプ受け
501 回転スタンプ
502 リング状スポンジ
503 回転スタンプ
504 島状スポンジ
600 高温加熱スタンプ
601 加熱スタンプパタン
602 ヒーター
603 吸引パイプ
604 連続基板表面2
606 塗布材料膜
607 塗布材料膜と重なる加熱パタン領域
608 断熱材
609 ガスパイプ
610 シャワープレート
700 回転加熱スタンプ
701 リング状加熱パタン
801 島パターン
802 リングパタン
803 魚の骨島パタン
804 島パタンの外周
900 0.1mm厚の鉄板
901 CVD反応室
902 リング状排気
903 CVDガス供給管
905 位置決め孔
906 基板裏面室
907 断熱材
1001 塗布材料
1002 スポンジ
1003 パタンスポンジ
1004 高温加熱パタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面と裏面に当該基板を挟む2つの加熱したフランジがあり、当該フランジにループ状の突起が備えてあり、当該突起が当該基板を押し付けることで突起の外と機密遮断された突起内の当該基板に膜を成長させる装置。
【請求項2】
前記基板が金属基板であることを特徴とする請求項1記載の膜成長装置。
【請求項3】
機密遮断された前記基板にガスまたは液体または液体のミストまたは液体の蒸気を吹き付けて膜を成長させることを特徴とする請求項1、2記載の膜成長装置。
【請求項4】
前記膜がシリコン、ゲルマニュームを含む半導体膜とカーボン、ガリューム、カドミューム、亜鉛、銅、インジューム、チタン、イオウ、セレンいずれか、または複数を含む化合物半導体膜、またはそれらの積層膜であることを特徴とする請求項1〜3記載の膜成長装置。
【請求項5】
表面にパタンを有するスタンプと金属板またはガラス板を接触させ、前記パタン表面に付着させた塗布材料を転写して塗布膜の転写パタン膜を形成し、当該転写パタン膜を焼成する機構を備えた膜成長装置。
【請求項6】
前記スタンプのパタンがリング状または島状または線状であることを特徴とする請求項5記載の膜成長装置。
【請求項7】
前記パタンに重なる形状の加熱パタンで加熱する加熱機構を備えたことを特徴とする請求項5、6記載の膜成長装置。
【請求項8】
前記加熱機構が加熱パタンの加熱スタンプと前記金属板の接触であることを特徴とする請求項5〜7記載の膜成長装置。
【請求項9】
前記スタンプが前記パタンを表面に備えた回転する円筒または円柱であることを特徴とする請求項1〜8記載の膜成長装置。
【請求項10】
前記基板が金属板であり、それが巻きつけられたロールから供給する機構を備えたことを特徴とする請求項1〜9記載の膜成長装置。
【請求項11】
前記基板が金属板であり、当該金属板に突起を形成するプレス機構を備えたことを特徴とする請求項1〜10記載の膜成長装置
【請求項12】
前記基板が金属板であり、シャー切断またはレーザーを用いる切断機構を備えたことを特徴とする請求項1〜11記載の膜成長装置。
【請求項13】
前記基板の表面に、低くとも200℃以上のスチームを吹き付ける機構を備えたことを特徴とする請求項1〜12記載の膜成長装置。
【請求項14】
太陽電池を製造することを特徴とする請求項1〜13記載の膜成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−256637(P2012−256637A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127449(P2011−127449)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(305054854)株式会社フィルテック (45)
【Fターム(参考)】