説明

自動二輪車のブレーキ圧力調節の為の方法とブレーキシステム

アンチロック機能およびインテグラル制動機能を備えた自動二輪車のブレーキシステムにおいてブレーキ圧力を調節するための方法およびブレーキシステムであって、ブレーキスリップ制御用として前輪のブレーキ回路(1)および後輪のブレーキ回路(2)のそれぞれにインレットバルブおよびアウトレットバルブ(9、10)が設けられ、この場合、ポンプ(15)と、少なくとも1つのブレーキ回路(1、2)におけるそれぞれ少なくとも1つの分離バルブおよび切換バルブ(11、18)とを用いるインテグラル制動機能によって、自動二輪車乗員が操作するブレーキ回路以外のブレーキ回路において能動的な圧力形成が行われ、かつ、この場合、インテグラル制動機能によって始動されるブレーキ回路(1、2)において、ブレーキスリップ制御の間、ブレーキ圧力調節が切換バルブ(18)および/または分離バルブ(11)によって制御または調整される、方法およびブレーキシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分による方法と、請求項8の前段部分による自動二輪車のブレーキシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間に、自動二輪車は低コストの移動手段からレクリエーション車両へと発展したが、これによって、運転者の安全と快適さとがますます関心の中心を占めるようになっている。
【0003】
数年前の自動車と同様に、自動二輪車にもアンチロックシステム(ABS)が装備される比率が高くなっている。例えば、欧州特許第0 548 985 B1号明細書は自動二輪車用のアンチロック装置を開示しており、さらに、独国特許出願公開第40 00 212 A1号明細書は、ホイールロックを防ぐことによって自動二輪車を制動する方法と、摩擦係数を定める方法とを開示している。
【0004】
自動二輪車は、従来より、2つのブレーキ回路のそれぞれに対して1つの操作要素を有する。ほとんどの場合、前輪ブレーキは「ハンドブレーキレバー」によって操作され、一方、後輪ブレーキは「フットブレーキレバー」によって操作される。
【0005】
自動二輪車に関しては、「インテグラルブレーキシステム」は、ハンドブレーキレバーまたはフットブレーキレバーが操作された場合に、第2ブレーキ回路のブレーキが制動介入するために付加的に始動されるブレーキシステムであると理解される。従って、単一の操作要素の操作によって両方のブレーキを作動させることが可能になる。ハンドブレーキレバーおよびフットブレーキレバーの操作により両方のブレーキが作動する場合、これは完全インテグラルブレーキと呼称される。しかし、1つのブレーキレバーは1つの車輪に作用し、もう一方のブレーキレバーは両方の車輪に作用するという組合せ(部分インテグラルブレーキ)も可能である。自動二輪車用のインテグラルブレーキシステムは、例えば独国特許出願公開第38 03 563 A1号明細書および独国特許出願公開第103 16 351 A1号明細書に開示されている。
【0006】
インテグラル機能を備えた自動二輪車においては、単一の操作要素(例えばハンドブレーキレバーおよび/またはフットブレーキレバー)を操作することによって、前輪と後輪との間における制動力配分またはブレーキ圧力配分が自動的に実行される。これは、制動力配分が規定された比に一定に定められる固定的な油圧回路構成によって、あるいは、所定の制動力配分の制御に用いられる電子装置によって行われる。
【0007】
特許文献特開2000−71963号公報は、ABSおよびインテグラルブレーキの機能性を確保する自動二輪車用のブレーキシステムを開示している。このブレーキシステムは、油圧操作可能な前輪および後輪のブレーキ回路を含んでおり、このブレーキ回路において互いに連動してあるいは互いに独立にも、フット操作およびハンド操作のマスタブレーキシリンダを用いて、ブレーキ圧力をホイールブレーキ内に形成することができる。ブレーキスリップ制御(例えばアンチロック機能または電子制御制動力配分)用として、電磁操作可能なインレットバルブおよびアウトレットバルブと電気モータ駆動される2系統ポンプとが、前輪および後輪のブレーキ回路に挿入される。さらに、2つのマスタブレーキシリンダの1つを手動操作した場合に手動操作されないブレーキ回路にブレーキ圧力を電気油圧的に形成する(インテグラル機能)ために、インレットバルブおよびアウトレットバルブとポンプとに加えて、電気操作可能な分離バルブおよび切換バルブが両方のブレーキ回路に追加して設けられる。このため、ポンプと分離バルブおよび切換バルブとは、手動操作されないブレーキ回路において電気的に操作される。
【0008】
このブレーキシステムにおいては、ブレーキスリップ制御運転(例えば、アンチロック機能(ABS)または電子制御制動力配分(EBD))の場合に、運転者が、インテグラル機能によって先行して始動されているブレーキ回路に対応するハンドまたはフットブレーキレバーを操作すると、そのブレーキレバーを「硬い」と感じることが欠点である。この状況が生じる理由は、ブレーキスリップ制御において、圧力調節がホイールバルブ(インレットバルブおよびアウトレットバルブ)によって行われること、および、制御中ほとんどの間インレットバルブは閉じているので、運転者がブレーキレバーを操作する際に抵抗を感じることにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に鑑みて、本発明の目的は、アンチロック機能およびインテグラル制動機能を備えた自動二輪車のブレーキシステムにおけるブレーキ圧力調節方法であって、上記の欠点を克服し得る別の方式の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この目的を、請求項1に記載の方法によって実現する。
【0011】
本発明の根底にある考え方は、ブレーキスリップ制御の場合に、インテグラル機能によってブレーキ圧力が能動的に加えられるブレーキ回路におけるブレーキ圧力調節を制御または調整するために、インレットバルブおよびアウトレットバルブの代わりに切換バルブおよび分離バルブを用いることを目指している。
【0012】
一般化として、「手動」操作という用語は、本発明の場合、手による操作だけでなく、足による操作をも意味するものとする。
【0013】
本発明によれば、危急な制動という用語を、安全な制動および/または最適な停止距離を確保するために急速なブレーキ圧力制御が要求されるブレーキ操作として理解するべきである。これは、例えば、大きい制動(危険制動)の場合あるいは道路の摩擦係数が突然変化する場合に起こり得る。
【0014】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態においては、ブレーキスリップ制御の場合に、インテグラル機能によって始動されるブレーキ回路のブレーキ圧力を、切換バルブを閉じることによって保持することが可能になる。
【0015】
インテグラル機能によって始動されるブレーキ回路におけるブレーキスリップ制御の間には、ブレーキ圧力の低下を、分離バルブを開くこと、特に好ましくは分離バルブを完全に開くことによって実現することが望ましい。アナログバルブの場合には、分離バルブを部分的にだけ開くことも特に好ましい。
【0016】
ブレーキ圧力が保持されるかあるいは低減された後に実行されるべきブレーキ圧力の形成は、分離バルブを閉じ、かつ切換バルブを開くことによって実現することが望ましい。
【0017】
制動が危急である場合は、切換バルブおよび/または分離バルブによるブレーキスリップ制御が中断され、「通常の」ブレーキスリップ制御運転、特に好ましくはABSブレーキ運転をインレットバルブおよびアウトレットバルブによって実施することが好ましい。
【0018】
別の好ましい実施形態においては、危急な制動を、自動二輪車乗員の挙動、あるいは車両の運転パラメータに従って検知する。この場合、車輪のスリップを考慮することが特に好ましく、インテグラルに制動された車輪のスリップを考慮することがさらに特に好ましい。また、運転者が、先にインテグラルに制動された車輪に手動介入する時、あるいは、特に好ましいが、強く制動するために手動介入するので車輪がABS制御に移行する時にも、切換バルブおよび/または分離バルブによるブレーキスリップ制御を中断することが特に望ましい。
【0019】
さらに、ブレーキ圧力調節の制御または調整に切換バルブおよび/または分離バルブを用いるブレーキスリップ制御は、電子制御制動力配分のための制御であることが望ましい。
【0020】
本発明は、また、以上に述べた方法が実施される自動二輪車のブレーキシステムにも関する。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態は、従属請求項と、図面に基づく以下の説明に見ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は自動二輪車用のインテグラルブレーキシステムの概略図である。このブレーキシステムは2つのブレーキ回路1、2を含んでおり、その1つは前輪FR用、もう1つは後輪RR用で、それぞれ1つのマスタブレーキシリンダ3、4を有する。運転者は、前輪ブレーキ6の直接操作用としてハンドブレーキレバー5を、後輪ブレーキ8の操作用としてフットペダル7を使用する。
【0023】
ブレーキスリップ制御用として、電磁操作可能なインレットバルブおよびアウトレットバルブ9、10が前輪および後輪のブレーキ回路1、2内に配置され、その基本位置が開であるインレットバルブ9は、それぞれ、前輪および後輪のブレーキ回路1、2のブレーキラインに挿入される。このブレーキラインは、それぞれの関連マスタブレーキシリンダ3、4を、前輪または後輪ブレーキ6、8に、基本位置が開である分離バルブ11を経由して接続する。その基本位置が閉であるアウトレットバルブ10は、それぞれ、各ブレーキ回路の戻りライン12に挿入される。この戻りライン12は、前輪または後輪ブレーキ6、8を、それぞれ1つの低圧アキュムレータ13と、2系統ポンプ15の吸い込み側導管14とに接続する。2系統ポンプ15はリターン型の原理に従って作動する。ポンプ15は、圧力側において両ブレーキ回路のブレーキライン16に接続されているので、ブレーキスリップ制御の局面において、前輪または後輪ブレーキ6、8からそれぞれ排出されるブレーキ液容積の両ブレーキ回路のブレーキライン16への戻りの送り出し量は、必要に即して確保される。2つのポンプ回路のポンプのピストンは、電気モータ17によって連結して駆動される。
【0024】
これらの回路に関係する設計をふまえて、両方のブレーキ回路1、2は、次のような特殊な状況を伴って連動してまた互いに独立にも作動させることができる。すなわち、例えば、前輪のブレーキ回路1に接続されるマスタブレーキシリンダ3を手動操作した場合、前輪ブレーキ6においてブレーキ圧力が形成されるだけでなく、電気モータ17がポンプ15を駆動開始するので、同時に後輪ブレーキ8においても電気油圧的にブレーキ圧力が形成されるということである。この後輪ブレーキ8のブレーキ圧力は、後輪のブレーキ回路2において切換バルブ18が電気的に始動されて開位置になっているために、ポンプ15がマスタブレーキシリンダ4から圧力流体を取り出してそれを後輪ブレーキ8に送り出すと直ちに形成される。その間、後輪のブレーキ回路2における分離バルブ11は、ポンプの圧力側をマスタブレーキシリンダ4から分離している。
【0025】
上記の作動例を逆にすることも当然可能である。この場合は、電気油圧的に始動される制動操作を、前輪ブレーキ6において、後輪ブレーキ2に接続されるマスタブレーキシリンダ4の手動操作に応じて同じパターンに従って起動させることになる。このことから、2つのマスタブレーキシリンダ3、4のいずれかを操作した場合、それぞれ運転者が操作しない方のブレーキ回路が、2系統ポンプ15によって電気油圧的に擬似的に独立の作動様式で加圧され、その結果、2つのマスタブレーキシリンダのいずれかを個別に操作した場合、両方のブレーキ回路が常に能動的に機能して減速制動する(完全インテグラルブレーキ)ことが明らかになる。
【0026】
マスタブレーキシリンダ3、4によってブレーキ回路1、2に導入される圧力を検出するため、通常、圧力センサ19が用いられる。2つのブレーキ回路1、2は、インレットバルブ9をアナログ制御するために、車輪のブレーキ圧力を検出する2つの圧力センサ19を付加的に備えている。圧力センサの信号を評価するため、電子制御ユニット20内に論理回路が設けられ、その電子制御ユニットにおいて、電気操作可能なポンプ15によって、圧力センサ信号の評価の結果に応じた油圧を発生させる。
【0027】
現行技術によれば、スリップ制御ブレーキ操作(ABS/EBD制御)に関連する範囲内での圧力調節には以下が当てはまる:
・ 前輪FRまたは後輪RRのロック状態が切迫している状況は、車速センサと制御ユニット20におけるその信号評価とによって確実に検知される。前輪または後輪ブレーキ6、8それぞれにおけるさらなる圧力形成を防止するために、前輪または後輪のブレーキ回路1、2に配置されるインレットバルブ9が制御ユニット20によって電磁的に閉じられる。
・ ロックの傾向を緩和するために、前輪または後輪のブレーキ回路1、2における圧力をさらに下げることが望ましい場合には、これを、それぞれ低圧アキュムレータ13に接続可能な通常閉のアウトレットバルブ10を開くことによって実現する。アウトレットバルブ10は、車輪のスリップが規定の程度を超えて再び上昇すると直ちに閉じられる。対応するインレットバルブ9はこの圧力低減局面においては閉じられたままであるので、前輪または後輪のブレーキ回路1、2内に生成されるマスタブレーキシリンダ圧力は前輪または後輪ブレーキ6、8には伝播し得ない。
・ 測定されたスリップ値が再度前輪または後輪ブレーキ6、8における圧力形成を許容すると、インレットバルブ9が、制御ユニット20内に組み込まれるスリップ制御器の要求に対応して、時間制限されて開かれる。圧力形成に必要な油圧容積はポンプ15が供給する。
【0028】
以下、本発明の方法の実施形態を、図1に示すインテグラルブレーキシステムに基づいて説明する。しかし、本発明の方法を、部分インテグラルブレーキシステムのような他の自動二輪車用ブレーキシステムにおいて実施することも可能である。さらに、以下においては、簡略化のために、運転者がハンドブレーキレバー5のみを操作するものと仮定するが、例示的な本方法は、フットブレーキレバー7が操作される場合あるいは両方のブレーキレバーが操作される場合にも、同様に実施することができる。
【0029】
上記の説明のとおり、インテグラル機能を備えた自動二輪車のブレーキシステムにおいては、運転者が手動制動しない車輪、例えば後輪RRのブレーキ圧力のレベルは、制動力配分(例えば電子制御ユニット20に保存される)を用いて決定され、それに相当するブレーキ圧力が後輪のブレーキ回路2に能動的に導入される。これを実現するため、ポンプ15によって、ブレーキ液がマスタシリンダ4から開状態の切換バルブおよびインレットバルブ18、9を経由して後輪ブレーキ8に送り込まれる。この場合、分離バルブおよびアウトレットバルブ11、10は閉じている。
【0030】
最適のブレーキ圧力配分(前輪のブレーキ圧力に比較した後輪のブレーキ圧力)は、車両の負荷状態に高度に依存している。負荷状態を正確に決定することはきわめて難しいので、インテグラル制動機能によって制御される能動的圧力形成が後輪RRの過剰制動を惹起するという状況が起こり得る。その結果、この車輪RRにブレーキスリップ制御(ABSおよび/またはEBD)が発動される。ABS/EBD制御の範囲内において現行技術に対応して遂行される圧力調節が、前述のように、ホイールバルブ(インレットバルブ9およびアウトレットバルブ10)を用いて行われる。
【0031】
運転者が、ABS/EBD制御の間に、インテグラル制動されている車輪RRに手動介入すると、ABS/EBD制御運転の間はインレットバルブ9がほとんど閉じているので、フットブレーキレバーが「硬く」なる結果がもたらされる。さらに、ABS制御の範囲内におけるポンプ15の作動(例えばポンプの回転速度)は低圧アキュムレータ13の充填レベルによって決定される。このため、圧力形成のための注入量をポンプ15によって正確に設定することがますます難しくなる。
【0032】
例示的方法(ABS/EBD特殊制御モード)によれば、上記の欠点を、インテグラル機能によって始動されるブレーキ回路2において、ブレーキスリップ制御(ABS/EBD制御)の間の圧力調節を切換バルブおよび分離バルブ18、19を調整することによってのみ実行するという点によって回避している。後輪のブレーキ回路におけるインレットバルブ9は、このEBD/ABS特殊制御モードにおいては常に開状態に保持される。アウトレットバルブ10は常に閉じられたままであるので、対応する低圧アキュムレータ13は充填されない。
【0033】
この特殊制御モードにおいて、インテグラル機能によって能動的に始動される後輪のブレーキ回路2のブレーキ圧力を保持することが求められる場合は、例として、切換バルブ18が閉じられる。能動的な圧力形成は、車輪RRのスリップ挙動を観察することによって制限することができる。このスリップ監視動作は、乗用車から知られるEBD原理に従って実行される。すなわち、車輪のスリップが閾値と比較され、この閾値に達するとブレーキ圧力の形成が停止される(ブレーキ圧力は保持される)。
【0034】
引き続いて、EBDの圧力低減閾値に達して、すなわち、後輪RRにおける車輪のスリップがEBD制御法の範囲内で規定された閾値に達して、後輪のブレーキ回路2のブレーキ圧力の低下を始動することが求められる場合は、例として、分離バルブ11を完全にまたは部分的に開くことによって、分離バルブ11を用いてホイールブレーキ8の圧力を低下させる。この結果、ブレーキ液を、ホイールブレーキ8からインレットバルブおよび分離バルブ9、11を通ってマスタブレーキシリンダ4の中に移すことができる。この場合、分離バルブ11はデジタルバルブであってもよいし、あるいはアナログバルブでもよい。アナログモードにおける圧力低下は、正確な圧力調整および高い快適さという利点を提供する。
【0035】
ABS入力閾値が超過するに至るようなより高い車輪の動力を、分離バルブ11を用いた圧力低減によって制御することも可能である。分離バルブ11が閉じられ、切換バルブ18が開かれている間にポンプ15によって実行される引き続く圧力形成によって、ホイールバルブによるABS制御(「通常の」ABS)に比べて頻度が低いABS制御に導かれ、さらに別の圧力低減局面がEBD基準に従って始動される。その場合、圧力低減が分離バルブ11によって続行される。
【0036】
「通常の」ABS制御運転の起動は、運転者が、インテグラル機能によって能動的に始動される後輪のブレーキ回路2に(例えばタンデムマスタシリンダの圧力によって)手動介入することによって検知することができ、ABS制御運転の起動によって、対応車輪が危急のスリップ状況にある時には、EBD/ABS特殊制御モードが即座に遮断されるに至るであろう。
【0037】
EBD/ABS特殊制御モードは、特にコーナリング時の制動において車両に重要でない反作用効果(ホイールリフトモーメントによる振り子運動)しか及ぼさない低頻度制御という利点を提供する。さらに、運転者は、常に、対応するブレーキレバーを操作することによって、インテグラル制御される車輪に手動介入し得る状態にある。もう1つの利点は、低圧アキュムレータ13が充填されない点に見ることができる。この結果、低圧アキュムレータの全容積を、引き続くインレットバルブおよびアウトレットバルブによる「通常の」ABS制御に利用できる。
【0038】
EBD/ABS特殊制御モードは、後輪RRおよび前輪FR用の完全インテグラルシステムに、あるいはまた、ただ1つの車輪、例えば後輪RR用として用いられる。部分インテグラルシステムにおいては、EBD/ABS特殊制御モードは、インテグラル機能によって圧力が能動的に加えられる車輪、例えば後輪RR用として用いられる。
【0039】
好ましい実施形態においては、切換バルブおよび分離バルブによるブレーキ圧力調節を伴う特殊制御モードは、ABS閾値よりも低いEBD閾値に従う制御に対してのみ用いられる。従って、車輪はEBD制御に保持される。このため、運転者が快適に制動介入し得るようになる点が有利である。システムがすでにABS運転状態にあれば、これは危急な状況に至ることがあり得るので、分離バルブまたはその逆止バルブによるさらなる圧力形成を防止するべきである。従って、この場合は、インレットバルブを閉じる必要がある(ホイールバルブによる「通常の」ABS制御)。そのEBD閾値が「低い」EBD制御においてのみ特殊制御モードを用いることによって、十分な減速率が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による方法を実施するための自動二輪車のインテグラルブレーキシステムの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチロック機能およびインテグラル制動機能を備えた自動二輪車のブレーキシステムにおけるブレーキ圧力調節方法であって、ブレーキスリップ制御用として前輪のブレーキ回路(1)および後輪のブレーキ回路(2)のそれぞれにインレットバルブおよびアウトレットバルブ(9、10)が設けられ、この場合、ポンプ(15)と、少なくとも1つの前記ブレーキ回路(1、2)におけるそれぞれ少なくとも1つの分離バルブおよび切換バルブ(11、18)とを用いる前記インテグラル制動機能によって、自動二輪車乗員が操作するブレーキ回路以外のブレーキ回路において能動的な圧力形成が行われるブレーキ圧力調節方法において、
前記インテグラル機能によって始動される前記ブレーキ回路(1、2)において、ブレーキスリップ制御運転の場合、ブレーキ圧力調節が前記切換バルブ(18)および/または前記分離バルブ(11)によって制御または調整される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記インテグラル機能によって始動される前記ブレーキ回路(1、2)のブレーキ圧力が、車輪(FR、RR)のスリップ、特に前記インテグラル機能によって制動される前記車輪のスリップに依存する方式で調節される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブレーキスリップ制御の間、前記インテグラル機能によって始動される前記ブレーキ回路(1、2)のブレーキ圧力を保持するために前記切換バルブ(18)が閉じられる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ブレーキスリップ制御の間、前記インテグラル機能によって始動される前記ブレーキ回路(1、2)のブレーキ圧力を低下させるために、前記分離バルブ(11)が開かれる、特に部分的に開かれる、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキ圧力が保持された後または低減された後、ブレーキ圧力を形成するために、前記分離バルブ(11)が閉じられ、前記切換バルブ(18)が開かれる、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記インテグラル機能によって始動される前記ブレーキ回路(1、2)におけるブレーキスリップ制御の間、制動が危急になった場合は、前記切換バルブおよび/または前記分離バルブ(11、18)に基づくブレーキ圧力調節が中断され、前記インレットバルブおよび前記アウトレットバルブ(9、10)によるブレーキ圧力調節が実行される、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
危急な制動が、自動二輪車乗員の挙動に従って、あるいは車両の運転パラメータ、特に車輪(RR、FR)のスリップに従って検知される、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1つの車輪のスリップが前記アンチロック機能の制限の範囲内に予め定められる閾値を超えると、危急な制動が検知される、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記切換バルブ(18)および/または前記分離バルブ(11)を用いてブレーキ圧力調節が制御または調整されるブレーキスリップ制御が、電子制御制動力配分のための制御を指している、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法がシステムに実装されることを特徴とする、アンチロックシステムおよびインテグラル制動機能を含む自動二輪車のブレーキシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2009−505882(P2009−505882A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527425(P2008−527425)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064979
【国際公開番号】WO2007/023071
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(399023800)コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト (162)
【Fターム(参考)】