説明

自動原稿送り装置

【課題】 ADFジャム時の操作性を改善することのできる自動原稿送り装置を提供する。
【解決手段】 ジャム処理のためADFカバーを開けたとき、自動的に操作部ディスプレイにジャム処理に特化した情報を表示する。ADF内部に設けられた各センサのセンス状態によって駆動系の駆動方法を自動的に変更し、最適なジャム処理を行う。駆動系の駆動開始及び停止はユーザが任意に設定でき、再ジャムの可能性を低減させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像読取装置、特に複数枚数の原稿を自動的に順次読み取る自動原稿送り装置(オートドキュメントフィーダで、以降ADFと略す)を装備した画像読み取り装置、特にADFに原稿を挟み込むニップ機構を解除する構成を省略したADFに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の原稿を連続的に読み取る際には、画像読み取り装置にオートドキュメントフィーダ(ADF)を搭載して、原稿を1枚ずつ画像読み取り装置に給紙し、複数枚の原稿を読み取る。
【0003】
以下ADFを搭載した画像読み取り装置の読み取り動作について説明する。
【0004】
図2はADFを搭載した画像読み取り装置の概略構成図を示す図である。
【0005】
ADF70の原稿載置台71に載置された複数枚数の原稿は1枚ずつ搬送される。複数枚の原稿は分離ローラ72及び73によって原稿が1枚ずつ分離搬送され、搬送ローラ75の矢印方向の回動に従って搬送ガイド74及び77に沿って原稿が搬送される。
【0006】
原稿が読み取り位置に搬送されるまでに、読み取り部200はシェーディング補正板211の直下に移動し、シェーディング補正を実施する。シェーディング補正が終了すると、読み取り部200は、流し読みウインドウ212の直下に移動し、原稿が搬送されてくるまで読み取り待機状態となる。
【0007】
原稿が搬送されると、原稿の表面画像は搬送ローラ75の直下で読み取りが行われる。即ち、画像読み取り装置200内のランプ201で照明された原稿画像のラインイメージは、第1ミラー205、第2ミラー206、第3ミラー207、レンズ208を介してCCD209に結像し、ラインイメージの読み取りが行われる。搬送ローラ75は所定の速度で原稿を搬送し、原稿を副走査方向の読み取りが順次行われ、原稿画像の読み取りが行われる。
【0008】
搬送ローラ75は所定の速度で原稿を搬送しているので、原稿の副走査方向の読み取りが順次行われ、原稿一面分の読み取りが行われる。読み取りが終了した原稿はガイド76に沿って排紙トレイ部78に順次排紙される。
【0009】
このようにして読み取られた原稿画像データは不図示の画像処理回路に送られ、画像読み取り装置に接続されたホストコンピュータやプリンタなどによって画像が再生され、ディスプレイやプリント用紙上に画像を形成されるように画像形成処理される。
【0010】
このように、画像読み取り部を固定し、ADFが原稿を搬送させながら原稿画像を読み取る手法を一般的に流し読みと呼んでいる。
【0011】
流し読みは、ADF側の構成を簡潔にできるため、製品コストを低く抑えることができ、近年のADF構造の主流になりつつある。
【0012】
コストを追求すると従来のADFに当たり前に構成された部材の取捨の見直しがなされ、必須の構成部材以外は省略されるケースもある。
【0013】
例えば、原稿搬送中に原稿搬送不良のためジャムが発生してしまった場合、ジャムが発生した原稿を取り除くためには、特許文献2等で提案されているように図2中の分離ローラ72と分離ローラ73に挟まれた原稿をリリースするために、分離ローラ72と分離ローラ73の圧(ニップ)を解除してジャム処理する手法が一般的であったが、圧解除のメカ構成を省略した製品も市場にあらわれている。
【0014】
従って、原稿の紙づまり(ジャム)時には、ユーザが自力で慎重に原稿を引っ張り出すか、搬送ローラ75の駆動軸に併設されたギア等をユーザが手駆動して原稿を徐々に排出せざるを得ず、処理が簡単にすまなくなるという問題があった。
【0015】
この問題に対応するために特許文献3や特許文献4では装置に設けられているスイッチを兼用し、ジャム処理の際には兼用スイッチを用いて、原稿搬送系を正方向または逆方向に回転させて紙詰まりした原稿を排出する構成が提案されている。
【特許文献1】特開平8−262815号公報
【特許文献2】特開平5−069990号公報
【特許文献3】特開平5−238597号公報
【特許文献4】特開平7−302435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記の従来技術では、原稿搬送系の駆動を開始するスイッチは本体スイッチと兼用しているので部材のコストアップなしに半自動的にジャム処理できて、本体スイッチと兼用しており、操作マニュアルを熟読していないユーザにおいても操作方法がわかりやすいものが望まれていた。
【0017】
また、一定時間の駆動であるため、原稿排出時に再ジャムが発生した場合緊急停止する手段がなく、さらに原稿が傷んでしまう可能性もあった。
【0018】
また、ユーザには正方向または逆方向いずれの方向に原稿搬送系を駆動すれば良いのか判断しづらく、駆動方向を間違えるとより複雑なジャムを併発する可能性もあった。
【0019】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであって、ADFジャム時の操作性を改善することのできる自動原稿送り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記問題点に鑑み、本発明は、複数原稿を載置し、自動的に原稿を1枚ずつ給紙し、所定の読み取り位置に順次原稿を搬送する自動原稿送り装置のうち、
原稿搬送中に原稿の搬送不良によるジャムが発生した場合、ユーザによって自動原稿送り装置のカバーが開けられたことを検知することによって、自動原稿送り装置が搭載されているプリンタ装置などの表示部が通常表示からジャム処理情報表示に自動的に切り替わり、なおかつ操作部上に存在する既存のスイッチをジャム処理用のスイッチに自動的に切り替えることを特徴とする自動原稿送り装置である。
【発明の効果】
【0021】
ADFを搭載した画像読み取り装置において原稿搬送中に原稿の搬送不良によるジャムが発生した場合、ユーザによってADFのカバーが開けられたことを検知することによって、画像読み取り装置に接続されているプリンタ装置などの表示部が通常表示からジャム処理情報表示に自動的に切り替わり、なおかつ操作部上に存在する既存のスイッチをジャム処理用のスイッチに自動的に切り替えるようにしたので、目視的にもジャム処理の手順が理解しやすくなる。
【0022】
また、第1の所定スイッチを押すことにより、ADFの原稿搬送系を駆動し、ジャムを発生した原稿を排出するとともに、第2の所定スイッチを押すことによりADFの原稿搬送系の駆動を中止するようにしたので、原稿排出中に再度ジャムが発生して原稿をさらに傷める可能性を低くした。
【0023】
さらには、ADF内部の原稿搬送経路に設けられた単数または複数の原稿有無を検知する検知センサのセンス状態に応じて自動的に原稿搬送系の駆動方向を決定するようにしたので、ユーザによって間違った駆動方向を選択されることなく、確実なジャム処理が行われる。
【0024】
この際、第3の所定スイッチを押すことにより、あらかじめ決められた原稿搬送系の駆動方向を逆方向に駆動するようにしたので、検知センサにセンスされないために発生する可能性がある再ジャムの頻度をユーザ操作によって低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施例を図に従って説明する。
【実施例】
【0026】
図3は、本発明を実施したADFの簡単な構成図である。
【0027】
図2と同じ部材には同一部番を付している。図3中、31はカバーセンサであり、通常はカバー30が閉じられていることを検知し、ジャム処理の際にはカバー30を開くのでカバー30の開状態を検知する。32は分離センサであり、原稿載置台71に載置された複数枚の原稿を分離ローラ72及び73によって分離給紙される原稿が所定位置に存在するかどうかを検知する。33はリードセンサであり、ADF読み取り動作中の原稿の有無を検知する。34は排紙センサであり、搬送ローラ75を所定量回転させて排紙されるべき原稿が排紙位置に到達していることを検知するとともに、搬送ローラ75を所定量搬送させて排紙されるべき原稿が完全排紙されて排紙位置に存在していないことを検知する。
【0028】
これらのセンサと搬送ローラ75を駆動する不図示の駆動モータの制御は全て不図示のCPUが一元管理している。
【0029】
即ち、原稿のサイズを検出した後、搬送ローラ75をどれだけ回動させればそれぞれのセンサのセンス状態がどうなっているかをCPUが管理しており、回動量とセンス状態が一致しなければジャムが発生していると判断することができる。
【0030】
例えば、図5のように矢印方向に搬送ローラ75を回動させて原稿を給紙させる際、原稿40がガイド74近傍でジャムになってしまったために、原稿40の先端がリードセンサ33にセンスされなかった場合、不図示のCPUは原稿にジャムが発生したものと判断し、原稿給送動作を中止する。
【0031】
同様に図6のように、両面原稿41の表面画像を読み取った後、裏面原稿を読み取るために搬送ローラ75を矢印の方向に回動させ、原稿のスイッチバックを行う際に原稿41が搬送ローラ75の直下でジャムになってしまったために、原稿41の先端がリードセンサ33にセンスされなかった場合も不図示のCPUは原稿にジャムが発生したものと判断し、原稿給送動作を中止する。
【0032】
以上、図4及び図5で説明したようなジャムが発生した場合は、図6のようにカバー30を矢印の方向に開いて、ジャム処理を行う。
【0033】
ジャム処理を行う際、カバー30を開くとカバーセンサ31のセンス状態が変化し(ここではデジタル値0が1に変化することにする)、不図示のCPUはカバーが開かれたことを検知する。
【0034】
このときCPUは、搬送ローラ75の駆動を中止し、接続されているプリンタ等にジャムが発生した旨を通知する。
【0035】
プリンタ等に設けられている操作部は、図7のような外観のものが一般的になってきた。
【0036】
図7中、操作部100は、液晶タッチパネル画面101とテンキー102、コピーボタン103、ストップボタン104から構成されている。
【0037】
液晶タッチパネル101には、コピー可能かどうかのメッセージ、複写倍率、複写濃度などのインフォメーションと、ユーザがカスタマイズできる編集ボタンが表示されている。編集ボタンはタッチパネルになっており、表示されている文字列を直接タッチすれば、操作部100はタッチ位置が要求する表示メニューを表示したり、あらかじめ決められた動作を開始したりする。
【0038】
ジャム処理の際、ADFのカバーが開かれた場合は、操作部100の液晶タッチパネル101は図1のように表示内容を変更する。
【0039】
液晶タッチパネル101は、図1に示すようにADFのジャム処理に関する情報や入力手段に特化した表示内容となっており、この画面が表示されている限り、原稿の読み取りはできなくなるようシステムが制御する。
【0040】
図1は図4のようなジャム状態になった場合に表示される内容である。
【0041】
即ち、原稿40がジャムになったために、本来原稿40の先端がリードセンサ33に到達しているはずなのに到達していない状態である。
【0042】
この場合は、搬送ローラを図4の矢印と逆方向に回動させるほうがジャム処理として適切である。
【0043】
よって、図1のようにインフォメーションメッセージ111は「逆転」を表示し、インフォメーションメッセージ110は矢印112を表示して、原稿の排出方向を指し示す。この後ユーザはタッチパネルとなっているスタートボタン113を押すことにより、不図示CPUは搬送ローラ75を矢印112の方向に回動させ、ジャムを発生した原稿40を給紙方向に排出する。
【0044】
このとき、必要に応じてストップボタン114を押すことによって搬送ローラ75の回動を中止し、またボタン115を押すことによって正転方向に搬送ローラ75の回動方向を切り替える。このときボタン115は「正転」を表示している。
【0045】
一方、図5のようなジャム状態になった場合には液晶タッチパネル101は図8のように内容を表示する。
【0046】
即ち、図5のように原稿41がジャムになったために、本来原稿41の先端がリードセンサ33に到達しているはずなのに到達していない状態である。
【0047】
この場合は、搬送ローラを図5の矢印と逆方向に回動させるほうがジャム処理として適切である。
【0048】
よって、図8のようにインフォメーションメッセージ111は「正転」を表示し、インフォメーションメッセージ110は矢印112を表示して、原稿の排出方向を指し示す。この後ユーザはタッチパネルとなっているスタートボタン113を押すことにより、不図示CPUは搬送ローラ75を矢印112の方向に回動させ、ジャムを発生した原稿40を排紙方向に排出する
このとき、必要に応じてストップボタン114を押すことによって搬送ローラ75の回動を中止し、またボタン115を押すことによって逆転方向に搬送ローラ75の回動方向を切り替える。このときボタン115は「逆転」を表示している。
【0049】
以上の手順をもってジャム処理が終了すると、分離センサ32、リードセンサ33、排紙センサ34は全て原稿のセンスをしていない。
【0050】
不図示CPUはこれをもってジャム処理が終了したものとして、表示内容を図9のように変更する。即ち、インフォメーションメッセージ111は「カバーを閉じてください」を表示し、インフォメーションメッセージ110は矢印115を表示して、カバー30を閉じるよう促すとともに、スタートボタン113等の動作に関わるスイッチを表示しないよう制御する。
【0051】
ユーザが誤って、カバー30を開けてしまったときにも図9の表示内容になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】ADF読み取り時にジャム発生した場合のジャム処理手順の操作部表示例を示す図
【図2】ADFを搭載した画像読み取り装置の構成を表す図
【図3】ADFに設けられたセンサ類の配置を示す図
【図4】原稿のジャム状態を示す図
【図5】原稿のジャム状態を示す図
【図6】原稿のジャム処理のためにカバーを開けた状態を示す図
【図7】通常の操作部表示例を示す図
【図8】ADF読み取り時にジャム発生した場合のジャム処理手順の操作部表示例を示す図
【図9】ジャム処理終了時の操作部表示例を示す図
【符号の説明】
【0053】
100 操作部
101 液晶タッチパネル
102 テンキー
103 コピーボタン
104 ストップボタン
110、111 インフォメーション
113 スタートボタン
114 ストップボタン
200 読取り部
201 原稿照明ランプ
203 原稿ガラス台
205 第1ミラー
206 第2ミラー
207 第3ミラー
208 レンズ
209 CCD
211 シェーディング補正板
212 流し読みウインドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数原稿を載置し、自動的に原稿を1枚ずつ給紙し、所定の読み取り位置に順次原稿を搬送する自動原稿送り装置のうち、
原稿搬送中に原稿の搬送不良によるジャムが発生した場合、ユーザによって自動原稿送り装置のカバーが開けられたことを検知することによって、自動原稿送り装置が搭載されているプリンタ装置などの表示部が通常表示からジャム処理情報表示に自動的に切り替わり、なおかつ操作部上に存在する既存のスイッチをジャム処理用のスイッチに自動的に切り替えることを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載した自動原稿送り装置のうち、第1の所定スイッチを押すことにより、自動原稿送り装置の原稿搬送系を駆動し、ジャムを発生した原稿を排出するとともに、第2の所定スイッチを押すことにより自動原稿送り装置の原稿搬送系の駆動を中止することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項3】
請求項2に記載した自動原稿送り装置のうち、第3の所定スイッチを押すことにより、あらかじめ決められた原稿搬送系の駆動方向を逆方向に駆動することを特徴とする自動原稿送り装置。
【請求項4】
請求項1に記載した自動原稿送り装置のうち、自動原稿送り装置内部の原稿搬送経路に設けられた単数または複数の原稿有無を検知する検知センサのセンス状態に応じて自動的に原稿搬送系の駆動方向を決定することを特徴とする自動原稿送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−163289(P2006−163289A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358568(P2004−358568)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】