説明

自動変速機の駐車制御装置および方法

【課題】車両のスライディングによって発生する駆動軸のエネルギー蓄積を最小にする自動変速機の駐車制御装置および方法を提供する。
【解決手段】本発明は、車両の車速情報を制御部に提供する車速検出部、シフトレバーの位置情報を制御部に提供するシフトレバー検出部、車速とシフトレバーの位置を分析し、駐車モードへの転換であれば、ブレーキ要素およびクラッチ要素に一定量の油圧を供給して駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させる制御部、前記制御部の制御によってクラッチ要素およびブレーキ要素に油圧を供給したり排出させるアクチュエータ、運行道路の傾度情報を制御部に提供する傾度検出部を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動変速機の駐車制御装置および方法に係り、より詳しくは、傾斜路での駐車時に車両のスライディングによって発生する駆動軸のねじれを最小にする自動変速機の駐車制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機が適用されている車両を駐車するときは、シフトレバー(Shift Lever)を駐車モード(Pレンジ)に位置させる。
図5は、一般的に自動変速機に適用される駐車装置の一側断面図である。
図5に示す通り、自動変速機の駐車装置は、シフトレバー102の駐車モード選択によって回転運動するディテントレバー104と、ディテントレバー104の一側に連結され、ディテントレバー104の回転運動によって直線運動する駐車ロッド106と、支持ブラケット108に回転可能に装着され、駐車ロッド106が直線移動すれば回転運動するパーキングポールレバー110と、自動変速機の遊星ギヤセットに設置され、外側周囲面に係止溝114が一定の間隔で形成され、パーキングポールレバー110が係止溝114に結合する駐車ギヤ112とから構成される。
【0003】
ディテントレバー104の一側には、ディテントレバー104が回転運動するときに係止感を発生させるディテントスプリング116が設置され、駐車ロッド106には、復原力を提供するロッドスプリング118が装着され、駐車ロッド106の終端部には、駐車ロッド106が直線運動するときにパーキングポールレバー110を押し上げるローラ120が装着される。
パーキングポールレバー110は、その中間部に変速機内部に回転可能に支持されるヒンジ連結部130が形成され、ヒンジ連結部130には、駐車スプラグを元の状態に復帰させるリターンスプリング132が設置される。
また、パーキングポールレバー110の一端には、ローラ120と接触する一定の傾斜面で形成され、他端には駐車ギヤ112の係止溝114に結合される噛合突起122が形成される。
【0004】
このように構成される自動変速機の駐車装置は、運転者がシフトレバー102を駐車モードに位置させればディテントレバー104が回転運動し、これによってディテントレバー104に連結した駐車ロッド106が直線移動し、駐車ロッド106の終端部に装着されたローラ120がパーキングポールレバー110の傾斜面に入りながら、パーキングポールレバー110の一側終端部を持ち上げる。
このとき、パーキングポールレバー110の他側に形成された噛合突起122が下降しながら駐車ギヤ112の係止溝114に結合し、駐車ギヤ112を固定させることによって駐車状態を維持する。
【0005】
また、シフトレバー102が駐車位置から変速位置に移動すれば、駐車ロッド106はロッドスプリング118によって元の状態に復帰し、パーキングポールレバー110はリターンスプリング132の弾性力によって元の状態に復帰し、噛合突起122が係止溝114から外れて駐車状態を解除する。
自動変速機車両を運行する過程において、傾斜路に駐車する状況が頻繁に発生するが、傾斜路に駐車した後にシフトレバーを駐車モード(Pレンジ)に位置すれば、車両の荷重によって前方あるいは後方に押し出される。
【0006】
例えば、傾斜路に駐車した後輪車両が荷重によって後方に押し出されるようになれば、車両の荷重によってホイールにトルクが加わり、駐車ギヤ、プロペラシャフト、ドライブシャフト、ホイール駆動軸に順にねじれが発生し、エネルギーが蓄積される。
したがって、上述したようなそれぞれの要素は、蓄積されるエネルギーによって応力が分散して変形が発生し、耐久性を悪化させるという問題を発生させる。
また、上述したような順にねじれが発生してエネルギーが蓄積された状態で走行のためにシフトレバーを駐車モード(Pレンジ)から解除する場合、蓄積されたエネルギーが緩みながら駆動系統のねじれ振動を加振させ、これによってトルクリアディファレンシャル(Rear Differential)において深刻な衝撃および振動が発生し、車体を通じて室内に強力な騒音として流入し、商品価値を落とすという問題を発生させる。
【0007】
実験によって測定した結果、平地駐車状態で駐車モードを解除する場合、
図6に示すように、特別な衝撃や振動および騒音は発生しないが、傾斜路で駐車を解除するとき、図7に示すように、解除時点でリアディファレンシャルのねじれ動きと駆動系統トルク振動、および室内騒音を深刻に誘発させるものが検出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−018284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、傾斜路でシフトレバーの位置が駐車モードとして検出されれば、クラッチ要素およびブレーキ要素に一定量の油圧を供給して駐車ギヤ軸にドラッグ(Drag)が誘発されるようにすることにより、車両のスライディングによって発生する駆動軸のエネルギー蓄積を最小にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、車両の車速情報を制御部に提供する車速検出部、シフトレバーの位置情報を制御部に提供するシフトレバー検出部、車速とシフトレバーの位置を分析し、駐車モードへの転換であれば、ブレーキ要素およびクラッチ要素に一定量の油圧を供給して駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させる制御部、前記制御部の制御によってクラッチ要素およびブレーキ要素に油圧を供給したり排出させるアクチュエータ、を含むことを特徴とする。
【0011】
運行道路の傾度情報を制御部に提供する傾度検出部をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
前記制御部は、傾度を分析し、傾斜路での駐車モード転換であれば、ブレーキ要素およびクラッチ要素に一定量の油圧を供給して駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させることを特徴とする。
【0013】
前記制御部は、傾度に応じて決定されるドラッグマップを適用し、駐車モード解除時に室内騒音を最小に化するクラッチ要素およびブレーキ要素の油圧量を決定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、車速とシフトレバーの位置を含む運転情報を検出する過程、前記運転情報が駐車モード転換であれば、駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させ、駆動軸のねじれが発生しないようにする過程、駐車モードが解除されれば、駐車ギヤ軸のドラッグ誘発を解除し、選択された変速段を結合する過程、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記運転情報に傾度情報をさらに含み、傾斜路での駐車モード転換であれば、駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させ、駆動軸のねじれが発生しないようにすることを特徴とする。
【0016】
前記駐車ギヤ軸のドラッグ誘発は、クラッチ要素およびブレーキ要素に傾度に応じて決定される一定量の油圧を供給して制御することを特徴とする。
【0017】
前記油圧量は、駐車解除時にトルクの大きさを最小にする値であって、変速機によってチューニングされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、傾斜路での駐車時に車両のスライディングによって発生する駆動軸のねじれを最小にさせ、動力伝達を提供する各要素の変形が発生しないようにすることにより、耐久性を向上させることができる
また、傾斜路駐車状態で駆動軸に蓄積されるエネルギーが最小になり、駐車解除時に振動および騒音が発生しないため、車両の商品価値を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の自動変速機の駐車制御装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明の自動変速機の駐車制御手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の自動変速機の駐車モード油圧制御を示す図である。
【図4】本発明の自動変速機車両において、駐車モード解除時の室内騒音測定結果を示す図である。
【図5】一般的に自動変速機に適用される駐車装置の一側断面図である。
【図6】従来の自動変速機車両の平地条件において、駐車モード解除時に発生する特性を測定した図である。
【図7】従来の自動変速機車両の傾斜路条件において、駐車モード解除時に発生する特性を測定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について、詳しく説明する。
図1は、本発明の自動変速機の駐車制御装置を概略的に示す図である。
図1に示す通り、本発明の実施形態は、車速検出部11、シフトレバー検出部12、傾度検出部13、制御部14、およびアクチュエータ15を含む。
車速検出部11は、変速機の出力軸回転数から車両の走行車速を検出し、これに対する情報を制御部14に提供する。
シフトレバー検出部12はインヒビタスイッチで構成され、運転手が選択するシフトレバーの位置を検出し、これに対する情報を制御部14に提供する。
傾度検出部13は、車両が運行される道路の傾度を検出し、これに対する情報を制御部14に提供する。
【0021】
制御部14は、車速とシフトレバーの位置および傾度を分析し、傾斜路での駐停車のためにシフトレバーの位置が駐車モードに転換されるかを判断し、シフトレバーが駐車モードに転換されれば、アクチュエータ15を通じてブレーキ要素およびクラッチ要素に一定量の油圧を供給し、駐車ギヤ軸にドラッグが誘発されるようにする。
したがって、車両のスライディングによって発生する駆動軸のねじれを最小にして、動力を伝達する各要素の変形が発生しないようにする。
また、傾斜路駐車状態で駆動軸に蓄積されるエネルギーを最小にして、駐車解除時に振動および騒音が発生しないようにする。
【0022】
制御部14は、傾度に応じて設定されるドラッグマップを適用して駐車モード解除時に室内騒音を最小にするクラッチ要素およびブレーキ要素の油圧量を決定する。
制御部14で設定されるドラッグマップは、例えば、下記の表1のように決定する。
【表1】

表1において、C1、C2はクラッチ要素であり、B1、B2はブレーキ要素である。
【0023】
また、制御部14は、シフトレバーの駐車モード解除が検出されれば、駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させているブレーキ要素およびクラッチ要素に供給されている油圧を解除し、正常な走行が安定的に維持されるようにする。
アクチュエータ15はソレノイドバルブであって、制御部14の制御によって作動し、クラッチ要素およびブレーキ要素に油圧を供給したり排出させる機能を行う。
【0024】
上記機能を含む本発明の実施形態に係る自動変速機の駐車制御動作は、次のように実行される。
本発明の自動変速機を装着した車両において、制御部14は、車速検出部11から提供される情報を検出し(S101)、車両の停止状態であるかを判断する(S102)。
S102の判断において、制御部14は、車両停止として判断されれば、シフトレバー検出部12から提供されるシフトレバーの位置を検出し(S103)、駐車モード(Pレンジ)の選択であるか判断する(S104)。
【0025】
S104の判断において、制御部14は、シフトレバーが駐車モードの選択と判断されれば、傾度検出部13から提供される傾度を検出し(S105)、設定された傾度、例えば、5%以上であるかを判断する(S106)。
S106の判断において、制御部14は、設定された傾度以上であると判断されれば、車両のスライディングによる駆動軸のねじれ発生が最小になるように、アクチュエータ15を通じて油圧を作動させ(S107)、クラッチ要素およびブレーキ要素に油圧を供給する(S108)。
【0026】
前記クラッチ要素およびブレーキ要素に供給される油圧は傾度の条件が適用されるが、例えば、表1によって決定されてもよい。
したがって、駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させて駆動軸のねじれ発生が抑制され、これによって蓄積されるエネルギーが最小になり、駐車モードの解除時に振動騒音が発生しなくなる(S109)。
制御部14は、駐車ギヤ軸に最も効果的なドラッグを与えるために、クラッチ要素およびブレーキ要素の多様な組み合わせを考慮し、表1に示すように、駐車モードの解除トルクが最大に減少するケースを探して実行する。
【0027】
一例として、駐車モードの選択であり、傾度が5%として認知されれば、クラッチ要素およびブレーキ要素に全体油圧の30%程度を印加してドラッグが発生するようにする。
前記傾度によるドラッグ発生油圧量は、適切なチューニングによって最適値で決定される。
以後、傾斜路でシフトレバーの位置が駐車状態から駐車モード解除状態に移動したかを判断する(S110)。
【0028】
S110の判断において、制御部14は、駐車モードの解除が検出されれば、アクチュエータ15を通じてクラッチ要素およびブレーキ要素に供給された油圧を排出させ(S111)、同時にシフトレバーによって選択された変速段を結合する油圧を作動させる(S112)。
上記の通り、自動変速機に傾斜路駐車に対して駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させる制御を適用した結果、図4に示すように、従来の車両では駐車モードを解除するときに「A」のような強力な室内騒音が計測されたが、本発明に係る自動変速機を適用した車両では、駐車モードを解除するときに「B」のような室内騒音が計測され、安定性および信頼性の向上したことが分かる。
【符号の説明】
【0029】
11:車速検出部
12:シフトレバー検出部
13:傾度検出部
14:制御部
15:アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速情報を制御部に提供する車速検出部、
シフトレバーの位置情報を制御部に提供するシフトレバー検出部、
車速とシフトレバーの位置を分析し、駐車モードへの転換であれば、ブレーキ要素およびクラッチ要素に一定量の油圧を供給して駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させる制御部、
前記制御部の制御によってクラッチ要素およびブレーキ要素に油圧を供給したり排出させるアクチュエータ、
を含むことを特徴とする自動変速機の駐車制御装置。
【請求項2】
運行道路の傾度情報を制御部に提供する傾度検出部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の駐車制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、傾度を分析し、傾斜路での駐車モード転換であれば、ブレーキ要素およびクラッチ要素に一定量の油圧を供給して駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させることを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の駐車制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、傾度に応じて決定されるドラッグマップを適用し、駐車モード解除時に室内騒音を最小に化するクラッチ要素およびブレーキ要素の油圧量を決定することを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の駐車制御装置。
【請求項5】
車速とシフトレバーの位置を含む運転情報を検出する過程、
前記運転情報が駐車モード転換であれば、駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させ、駆動軸のねじれが発生しないようにする過程、
駐車モードが解除されれば、駐車ギヤ軸のドラッグ誘発を解除し、選択された変速段を結合する過程、
を含むことを特徴とする自動変速機の駐車制御方法。
【請求項6】
前記運転情報に傾度情報をさらに含み、傾斜路での駐車モード転換であれば、駐車ギヤ軸にドラッグを誘発させ、駆動軸のねじれが発生しないようにすることを特徴とする請求項5に記載の自動変速機の駐車制御方法。
【請求項7】
前記駐車ギヤ軸のドラッグ誘発は、クラッチ要素およびブレーキ要素に傾度に応じて決定される一定量の油圧を供給して制御することを特徴とする請求項6に記載の自動変速機の駐車制御方法。
【請求項8】
前記油圧量は、駐車解除時にトルクの大きさを最小にする値であって、変速機によってチューニングされることを特徴とする請求項7に記載の自動変速機の駐車制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−117669(P2012−117669A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255263(P2011−255263)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】