説明

自動車のフードシール構造

【課題】フードの前端部とその前端部に対応する車体側部材との間で車両前後方向に開口する隙間の対向する面間距離が車両左右方向に変化する場合において、長手方向に一定の断面形状をなすフードシールのラップ量を長手方向に一定化する。
【解決手段】自動車のフード18の前端部とその前端部に対応するグリル16との間で車両前後方向に開口する隙間34をシールする自動車のフードシール構造において、フード18に、隙間34の対向する面間距離を車両左右方向に一定となるように調整する台座部材38が設けられる。台座部材38に、グリル16の上壁部17の上面17aに弾性的に接触するリップ部42を有しかつ長手方向に一定の断面形状をなすフードシール36が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内への走行風の吹き抜け及び塵埃の侵入、エンジンルーム内から車両前方への熱気の吹き返し等を防止する自動車のフードシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフードシール構造の従来例については説明する。なお、図6はフードシール構造を示す断面図である。
自動車の車体(図示省略)には、図6に示すように、エンジンルームを覆うフード118が開閉可能に設けられている。フード118は、前開き式のフードで、後端部(図6において右端部)が車体にヒンジ機構を介して回動可能に設けられている。また、フード118の閉止状態において、フード118の前端部と、その前端部に対応するグリル116との対向面間には、車両前後方向(図6において左右方向)に開口する隙間(「見切り隙間」という。)が形成されている。見切り隙間134には、押出成形品からなる長尺状のフードシール136が設けられている。フードシール136は、ゴム状弾性材により形成されており、前記グリル116の上面に取付けられた取付板部140と、その取付板部140の前端部から後上方へ突出されたリップ部142とを有している。また、フードシール136は、押出成形品であるため、長手方向すなわち車両左右方向(図6において紙面表裏方向)に一定の断面形状をなしている。なお、このようなフードシール構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−186908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記フード118において、フードシール136のリップ部142に対応する板状部127が車両左右方向(図6において紙面表裏方向)に高低差のある波形状に形成される場合がある。なお、図6において、高部側の板状部127に符号(1)が付されており、低部側の板状部127に符号(2)が付されている。この場合、シール部分における見切り隙間134の対向する面間距離(グリル116と板状部127との間隔)が車両左右方向に変化(増減)する。このような場合、従来例の押出成形品からなるフードシール136によると、板状部127に対するフードシール136(詳しくはリップ部142)のラップ量が長手方向(図6において紙面表裏方向)に一定にならないという問題があった。したがって、例えば、面間距離が大きいところでは、高部側の板状部127(1)にフードシール136のリップ部142が接触できないため、板状部127(1)とリップ部142との隙間から走行風がエンジンルームへ吹き抜けるという不具合が生じる。また、面間距離が小さいところでは、低部側の板状部127(2)によってフードシール136のリップ部142が押し潰されるため、フードシール136の耐久性が損なわれるという不具合が生じる。
【0005】
また、特許文献1のフードシールでは、長尺平板形状の硬質樹脂製ベース部と、該ベース部の短手方向の一端より鉛直方向に延設された弾性樹脂製リップ片とからなり、一次成形品としたベース部に前記リップ片が一体成形いわゆる2色成形されている。しかしながら、このフードシールでは、ベース部及びリップ片が長手方向に一定の断面形状をなしているため、前記問題を解決することができない。また、特許文献1の実施例3(図6参照)には、フードシールのベース部に蛇腹構造を設けることにより、波形状(波形状)の取付面にベース部を追従させて取付ける構成が記載されているが、依然として、フードのインナパネルに対するフードシール(詳しくはリップ片)のラップ量が長手方向(車両左右方向)に変化することに変わりがなく、前記問題を解決することができない。また、特許文献1では、ベース部にクリップを一体成形しているが、見切り隙間の対向する面間距離が車両左右方向に変化する場合におけるフードシールのラップ量を長手方向に一定化する構成となっていない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、フードの前端部とその前端部に対応する車体側部材との間で車両前後方向に開口する隙間の対向する面間距離が車両左右方向に変化する場合において、長手方向に一定の断面形状をなすフードシールのラップ量を長手方向に一定化することのできる自動車のフードシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、特許請求の範囲の各請求項に記載された構成を要旨とする自動車のフードシール構造により解決することができる。
すなわち、請求項1に記載された自動車のフードシール構造によると、フードの前端部とその前端部に対応する車体側部材との間で車両前後方向に開口する隙間に隙間調整部材を設けることによって、隙間の対向する面間距離を車両左右方向に一定となるように調整することができる。そして、調整された隙間の対向する一方の面を有する部材に、他方の面に弾性的に接触するシール部を有しかつ長手方向に一定の断面形状をなすフードシールを設けたものである。したがって、フードの前端部とその前端部に対応する車体側部材との間で車両前後方向に開口する隙間の対向する面間距離が車両左右方向に変化する場合において、長手方向に一定の断面形状をなすフードシールのラップ量を長手方向に一定化することができる。ひいては、フードシールの長手方向に亘って走行風の吹き抜けを防止するとともにフードシールの耐久性を向上することができる。
【0008】
ここで、隙間調整部材は、フードと車体側部材との少なくとも一方の部材に設けることができる。また、フードと車体側部材との少なくとも一方の部材に対する隙間調整部材の取付手段は、クリップが望ましいが、例えば両面テープ、接着剤、ねじ止め等を用いることもできる。また、調整された隙間の対向する一方の面を有する部材としては、隙間調整部材、フード、車体側部材のいずれかの部材が相当する。また、フードシールのシール部としては、リップ状、中空管状等の任意の形状を選択することができる。また、調整された隙間の対向する一方の面を有する部材に対するフードシールの取付部としては、その面に面接触状態で取付けられる帯板状の取付板部が望ましいが、その形状及び取付形態は限定されるものではない。また、調整された隙間の対向する一方の面を有する部材に対するフードシールの取付手段は、クリップが望ましいが、例えば両面テープ、接着剤、ねじ止め等を用いることもできる。
【0009】
また、請求項2に記載された自動車のフードシール構造によると、フードシールのシール部であるリップ部が、車両走行時に隙間に吹き込む走行風の風圧を受けて他方の面に押付力を付与することができる。これによって、フードシールの長手方向に亘って車両走行時のフードの振動を抑制することができる。
【0010】
また、請求項3に記載された自動車のフードシール構造によると、フードに設けた隙間調整部材に、フードの前端内側を覆うカバー部が設けられている。したがって、開放時のフードの見栄えを向上することができる。
【0011】
また、請求項4に記載された自動車のフードシール構造によると、フードに設けた隙間調整部材に、フードのパネルエッジを覆う保護部が設けられている。このため、フードの開閉に係る作業者の手指をパネルエッジから保護することができる。
【0012】
また、請求項5に記載された自動車のフードシール構造によると、調整された隙間の対向する一方の面を有する隙間調整部材にフードシールが設けられる。フードシールが有する取付板部は、隙間調整部材に対してシール取付面に面接触した状態で所定の間隔毎にクリップにより取付けられる。そして、隙間調整部材に設けた係合部にフードシールの取付板部を係合することによって、取付板部の浮き上がりを防止することができる。なお、隙間調整部材の係合部は、長手方向に連続的又は断続的に設けることができる。また、隙間調整部材の係合部は、フードシールの取付板部における浮き上がりを生じる部分(クリップの相互間の中間部分、取付板部の自由端部等)の浮き上がりを防止するものであればよく、望ましくはフードシールの取付板部におけるクリップの相互間の中間部分の浮き上がりを防止するものがよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施例に係る自動車の前部を示す斜視図である。
【図2】フードシール構造を示す側断面図である。
【図3】フードシールの取付板部の位置ずれ防止構造を示す正断面図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図3のV−V線矢視断面図である。
【図6】従来例に係るフードシール構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。フードシール構造の説明に先立って、自動車の前部の概略構成を説明する。なお、図1は自動車の前部を示す斜視図である。図1において、矢印FRは車両前方を示し、矢印RHは車両右方を示し、矢印UPRは車両上方を示している。
図1に示すように、自動車10の車体12に形成されたエンジンルーム(図示省略)の前側部には、フロントバンパー14、左右のヘッドランプ15、ラジエータグリル(以下「グリル」と略称する)16等が設けられている。また、車体12には、エンジンルームの上面開口を覆うフード18が開閉可能に設けられている。フード18は、前開き式のフードで、後端部が車体12側にヒンジ機構(図示省略)を介して回動可能に設けられている。なお、図示しないが、車体12側に設けられるフードロック装置は、フード18に設けられたフードロックストライカを拘束することによりフード18を閉止状態にロックする。また、フードロック装置によるフードロックストライカの拘束を解放すなわちアンロックすることにより、フード18を解放することができる。なお、図2はフードシール構造を示す側断面図である。
【0016】
図2に示すように、前記グリル16は、その上端部に上壁部17を有している。上壁部17は、車両左右方向(図2において紙面表裏方向)に延びる帯板状に形成されている。また、上壁部17の上面17aは、前端(図2において左端)を低くしかつ後端(図2において右端)を高くする前下がりの傾斜面であって、車両左右方向にほぼ一定の高さで形成されている。なお、グリル16は本明細書でいう「車体側部材」に相当する。
【0017】
前記フード18は、意匠面を構成する板金製のアウタパネル20と、そのアウタパネル20の裏面側(図2において下側)に設けられた板金製のインナパネル22とを備えている。アウタパネル20の前部には、前下がり状の傾斜部24、及び、その傾斜部24の前端から下方へ垂下状に延びる垂下部25が形成されている。また、インナパネル22の前部には、水平状の板状部27、及び、板状部27の前端から下方へ垂下状に延びる垂下部29が形成されている。垂下部29は、アウタパネル20の垂下部25の後側(図2において右側)に重合されている。両垂下部25,29の下端縁がフード18の前端のパネルエッジ30となっている。また、板状部27は、車両左右方向(図2において紙面表裏方向)に高低差のある波形状に形成されている。また、板状部27は、車両前後方向(図2において左右方向)に関しても高低差のある波形状に形成されている。なお、図2において、高部側の板状部27に符号(1)が付されており、低部側の板状部27に符号(2)が付されている。また、両垂下部25,29の前側には、フードモール31が適数個(図2では1個を示す)のボルト・ナット32により取付けられている。
【0018】
前記フード18は、閉止状態において、前記グリル16に対して車両前後方向(図2において左方)に開口する隙間(「見切り隙間」という)34を隔てた状態で対向される。そして、前に述べたようにインナパネル22の板状部27が車両左右方向に高低差のある波形状に形成されているため、相互に対向するグリル16の上壁部17の上面17aとインナパネル22の板状部27の下面28との間の面間距離は、車両左右方向に変化(増減)している。すなわち、グリル16の上壁部17と高部側の板状部27(1)との間では広い面間距離となり、また、グリル16の上壁部17と低部側の板状部27(2)との間では狭い面間距離となる。
【0019】
次に、前記グリル16と前記フード18との間の見切り隙間34をシールするフードシール構造について説明する。なお、見切り隙間34において、グリル16の上壁部17とインナパネル22の板状部27との間が本明細書でいう「シール部分」に相当する。
図2に示すように、フードシール構造は、その主体をなすフードシール36、及び、そのフードシール36とフード18との間に介装される台座部材38を備えている。フードシール36は、ゴム状弾性材(例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)製ソリッドゴム等の弾性樹脂材)を押出成形することにより長尺状に形成されている。なお、フードシール36は、フード18側に長手方向を車両左右方向に延びるように配置される(図1参照)。
【0020】
図2に示すように、前記フードシール36は、帯板状の取付板部40と、その取付板部40の後端部(図2において右端部)から前下方に向けて傾斜状に延出された帯板状のリップ部42とを有している。リップ部42は、リップ部42と取付板部40との間の接続部分に設けられた半円筒状の弾性変形部43を介して、取付板部40側(上側)へ弾性変形いわゆる撓み変形可能となっている。なお、図2にリップ部42の自由状態が二点鎖線42で示されている。また、リップ部42の肉厚は、基端側から先端側に向かって次第に薄くなる先細り状に形成されている。これにより、リップ部42の先端部が弾性変形いわゆる撓み変形可能になっている。
【0021】
前記フードシール36は、前に述べたように押出成形品であるため、長手方向(図2において紙面表裏方向)に一定の断面形状をなしている。また、フードシール36は、取付板部40とリップ部42とによる凹部が車両前方(図において左方)に向けられており、その凹部内に走行風の風圧を受けることによって、リップ部42が前記グリル16の上壁部17の上面17aに押付力を付与する形状に形成されている。なお、取付板部40は本明細書でいう「取付部」に相当する。また、リップ部42は本明細書でいう「シール部」に相当する。また、フードシール36は、弾性を有するシール部を有するものであればよく、押出成形以外の成形方法によって形成することもできる。また、フードシール36には、硬質樹脂製の取付部と弾性樹脂製のシール部とを有し、2色成形により形成されたフードシールを採用してもよい。
【0022】
前記台座部材38は、硬質樹脂材(例えばポリプロピレン樹脂材(PP樹脂材)を射出成形することにより、所定の剛性を有する長尺状に形成されている。台座部材38は、帯板状の基台部45、及び、基台部45の前後両端部から上方へ向けて次第に拡がるように突出された前後の両脚部47,48を備えている。基台部45は、前記フードシール36の長さとほぼ等しい長さに設定されている。また、両脚部47,48は、基台部45の長手方向に連続的又は断続的に形成されている。また、両脚部47,48の上端面は、前記インナパネル22の波形状をなす板状部27の下面28に当接可能に形成されている。両脚部47,48は、インナパネル22の板状部27の下面28に当接した状態で、前記グリル16の上壁部17の上面17aに対応する基台部45の下面45aがほぼ水平状をなすように形成されている。このため、基台部45の下面45aとグリル16の上壁部17の上面17aとの間の面間距離が、車両左右方向(図2において紙面表裏方向)に一定となるように調整されている。また、基台部45の下面45aとグリル16の上壁部17の上面17aとの間を、調整された隙間(「調整隙間」という)に相当する。これにともない、インナパネルの板状部27が車両前後方向に波形状をなしていても台座部材38の基台部45の下面45aがほぼ水平状に調整される。また、台座部材38の前端部には、下方へ突出する段付部50が形成されている。なお、台座部材38は本明細書でいう「隙間調整部材」に相当する。また、台座部材38は、所定の剛性を有するものであればよく、その材質、成形方法は限定されない。
【0023】
前記基台部45の下面45aには、前記フードシール36の取付板部40が面接触されている。このとき、取付板部40の前端面は、前記段付部50の後端面に当接又は近接される。また、取付板部40は、基台部45に対して複数個(図2では1個を示す)の第1のクリップ52により所定の間隔毎に取付けられている。第1のクリップ52は、周知のものであるからその詳しい説明を省略するが、樹脂製で頭部及び係止脚部を有している。係止脚部が、取付板部40に形成された取付孔(符号省略)を通して、台座部材38に形成された取付孔(符号省略)に対して弾性的に係合する。これによって、頭部が取付板部40を基台部45に抜け止め状態に押圧する。なお、第1のクリップ52は本明細書でいう「第1の取付手段」に相当する。また、台座部材38の基台部45の下面45aは、本明細書でいう「シール取付面」に相当する。
【0024】
前記台座部材38は、前記フードシール36が取付けられた状態で、前記フード18のインナパネル22の板状部27に対して複数個(図2では1個を示す)の第2のクリップ60により所定の間隔毎に取付けられている。第2のクリップ60は、周知のものであるからその詳しい説明を省略するが、樹脂製で頭部及び係止脚部を有している。樹脂製で頭部及び係止脚部を有している。頭部は、台座部材38の基台部45に形成されたクリップ係合部64に係合されている。また、係止脚部は、前記インナパネル22の板状部27に形成された取付孔66に対して弾性的に係合する。これによって、台座部材38がフード18のインナパネル22に取付けられている。なお、第2のクリップ60は本明細書でいう「第2の取付手段」に相当する。また、第1のクリップ52と第2のクリップ60は、相互に干渉しない位置関係をもって配置されている。また、インナパネル22に対する台座部材38の取り付けに際し、板状部27の下面28と両脚部47,48の上端面がゴム板状の異音防止プロテクタ68を介して取り付けられている。なお、異音防止プロテクタ68が設けられる位置には、異音防止プロテクタではなく、両面テープを介して貼着されていてもよい。
【0025】
前記台座部材38の段付部50の前側には、前記フード18のパネルエッジ30に向けて前下がり状に延びる板状のカバー部70が形成されている。カバー部70は、車両左右方向(図2において紙面表裏方向)に延びており、フード18の前端内側すなわち前記インナパネル22の垂下部29の後側面に露出された前記ボルト・ナット32を覆っている。さらに、カバー部70の先端部には、断面逆L字状の保護部72が形成されている。保護部72は、車両左右方向に延びており、フード18のパネルエッジ30を覆っている。また、保護部72の先端部は、前記フードモール31の下端部31aに近接又は当接されている。このため、保護部72とフードモール31とにより、フード18のパネルエッジ30が全面的に覆われている。
【0026】
前記フードシール36は、前に述べたようにゴム状弾性材により形成されており、その取付板部40が前記台座部材38の基台部45の下面45aに面接触された状態で複数個の第1のクリップ52により所定の間隔毎に取付けられている。このため、取付板部40における第1のクリップ52の相互間(隣り合う両第1のクリップ52の間)の中間部分が、走行風の風圧によるリップ部42の弾性変形の影響を受けて、基台部45の下面45aから下方へ浮き上がったり(位置ずれしたり)、あるいは、後方へ位置ずれしたりする場合が予測される。このため、台座部材38には、フードシール36の取付板部40の位置ずれ防止構造が設けられている。なお、図3はフードシールの取付板部の位置ずれ防止構造を示す正断面図、図4は図3のIV−IV線矢視断面図、図5は図3のV−V線矢視断面図である。
【0027】
図4に示すように、前記台座部材38の段付部50の下端部には、後方(図4において右方)へ突出する平板状の係合片74が形成されている。係合片74は、基台部45に対して平行状をなしており、段付部50の長手方向(図3において左右方向)に所定の間隔毎に断続的に形成されている。また、係合片74は、第1のクリップ52の相互間において適数個(本実施例では2個)形成されている。各係合片74と基台部45との間に、取付板部40における第1のクリップ52の相互間の中間部分が差し込まれている(図3及び図4参照)。これにより、取付板部40の中間部分の下方への浮き上がり(位置ずれ)が防止される。なお、係合片74は本明細書でいう「係合部」に相当する。
【0028】
図3に示すように、前記台座部材38の基台部45の下面45aには、ずれ止め突起76が突出されている。ずれ止め突起76は、フードシール36の取付板部40の肉厚よりも低い高さの円柱状に形成されている。また、ずれ止め突起76は、係合片74の相互間(隣り合う両係合片74の間)に配置されている。また、ずれ止め突起76の先端面すなわち下端面は、前端部を高くしかつ後端部を基台部45の下面45aと同一面をなすように低くするガイド面77となっている。一方、フードシール36の取付板部40の中間部分には、ずれ止め突起76に対応するずれ止め孔78が形成されている(図3及び図5参照)。したがって、各係合片74と基台部45との間に取付板部40の中間部分を差し込むにともない、その中間部分の前端部がずれ止め突起76のガイド面77により弾性変形を利用して押し下げられつつ前方へ差し込まれていき、最終的に、ずれ止め突起76にずれ止め孔78が対応すると同時に弾性復元することによって、ずれ止め突起76にずれ止め孔78が係合する。これによって、取付板部40の中間部分の後方(図5において右方)への位置ずれが防止される。
【0029】
前記自動車10のフードシール構造において、図2に示すように、フード18の閉止状態での車両停止時(停車時)においては、台座部材38を備えたフードシール36によって、フード18の前端部とグリル16との間で車両前後方向に開口する見切り隙間34がシールされる。すなわち、グリル16の上壁部17の上面17aに対して、フードシール36のリップ部42の先端部がその自体の弾性反力及び弾性変形部43の弾性反力をもって弾性的に接触する。また、フード18を開いたときには、グリル16の上壁部17の上面17aからリップ部42から離れることにより、リップ部42の先端部及び弾性変形部43の弾性復元によりリップ部42が自由状態となる(図2中、二点鎖線42参照)。
【0030】
また、フード18の閉止状態での車両走行時においては、フードシール36のリップ部42が、見切り隙間34から吹き込む走行風(図2中、矢印Y参照)の風圧を受けることによりグリル16の上壁部17の上面17aに押付力を付与する。これにより、フードシール36の長手方向に亘って車両走行時のフード18の振動を抑制することができる。
【0031】
また、高速走行時において、フード18の前部(フードロック装置により拘束されているフードロックストライカより前側部分)が上方へ撓みを生じる場合には、見切り隙間34(詳しくは調整隙間)の面間距離が拡大することなる。しかし、フードシール36のリップ部42が、見切り隙間34から吹き込む走行風の風圧を利用して、調整隙間の変化(拡大)に追従して下方へ立ち上がることにより、グリル16の上壁部17の上面17aに押付力を付与する。このとき、グリル16の上壁部17の上面17aにフードシール36のリップ部42が常に接触した状態となるので、走行風がエンジンルームへ吹き抜けることがない。したがって、フードシール36のリップ部42が、車両走行時に生じる調整隙間の変化(増減)に追従してフード18に押付力を付与することができる。
【0032】
前記自動車10のフードシール構造(図2参照)によると、フード18の前端部とその前端部に対応するグリル16との間で車両前後方向に開口する見切り隙間34に台座部材38を設けることによって、シール部分(グリル16の上壁部17の上面17aと台座部材38の基台部45の下面45aとの間)における見切り隙間34の対向する面間距離を車両左右方向に一定となるように調整することができる。そして、台座部材38に、グリル16の上壁部17の上面17aに弾性的に接触するリップ部42を有しかつ長手方向に一定の断面形状をなすフードシール36を設けたものである。したがって、フード18の前端部とその前端部に対応するグリル16との間で車両前後方向に開口する見切り隙間34の対向する面間距離(グリル16の上壁部17の上面17aとフード18のインナパネル22の板状部27の下面28との間の距離)が車両左右方向に変化する場合において、長手方向に一定の断面形状をなすフードシール36のラップ量を長手方向に一定化することができる。ひいては、フードシール36の長手方向に亘って走行風のエンジンルームへの吹き抜けを防止するとともにフードシール36の耐久性を向上することができる。
【0033】
また、押出成形により長手方向に一定の断面形状をなすフードシール36を容易に形成することができる。
また、射出成形により台座部材38を容易に形成することができる。
また、フードシール36を押出成形により形成しかつ台座部材38を射出成形により形成することにより、例えばフードシール36と台座部材38とを一体成形する場合に比べ、安価に製造することが可能である。
また、例えばフードシール36と台座部材38とを仕入先等で予めフードシールアッセンブリとして組付けた状態で、自動車の生産ラインに納入すれば、生産ラインでの部品点数及び組付工数の増加を回避することができる。
【0034】
また、フードシール36のリップ部42が、車両走行時に見切り隙間34に吹き込む走行風の風圧を受けてグリル16の上壁部17の上面17aに押付力を付与することができる。これによって、フードシール36の長手方向に亘って車両走行時のフード18の振動を抑制することができる。このことは、高速走行時のフード18の振動をフードシール36の長手方向に亘って抑制するうえで有効である。
【0035】
また、フード18に設けた台座部材38に、フード18の前端内側を覆うカバー部70が設けられている。したがって、開放時のフード18の見栄えを向上することができる。
また、フード18に設けた台座部材38に、フード18のパネルエッジ30を覆う保護部72が設けられている。このため、フード18の開閉に係る作業者の手指をパネルエッジ30から保護することができる。また、保護部72がカバー部70の先端部に形成されているので、保護部72に係る構成を簡素化することができる。
また、台座部材38が射出成形により形成されているため、成形の自由度が高く、カバー部70及び保護部72を容易に一体形成することができる。
なお、カバー部70と保護部72とをそれぞれ独立的に形成してもよい。また、台座部材38と別体で形成されたカバー部70及び/又は保護部72を台座部材38に取付ける構成としてもよい。
【0036】
また、フードシール36が有する取付板部40は、台座部材38に対して基台部45の下面(シール取付面)45aに面接触した状態で所定の間隔毎に第1のクリップ52により取付けられる。そして、台座部材38に設けた係合片74にフードシール36の取付板部40を係合することによって、取付板部40(詳しくは、取付板部40における第1のクリップ52の相互間の中間部分)の浮き上がりを防止することができる(図3及び図4参照)。なお、台座部材38の係合片74は、長手方向に連続的に設けてもよい。また、台座部材38と別体で形成された係合片74を台座部材38に取付ける構成としてもよい。
【0037】
また、台座部材38の基台部45に設けたずれ止め突起76にフードシール36の取付板部40のずれ止め孔78を係合することによって、その取付板部40(詳しくは、取付板部40における第1のクリップ52の相互間の中間部分)の後方(図5において右方)への位置ずれを防止することができる。また、フードシール36の取付板部40のずれ止め孔78を省略し、取付板部40に対してその弾性変形を利用して台座部材38のずれ止め突起76をくい込ませることによって、取付板部40の後方への位置ずれを防止するようにしてもよい。
【0038】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、前記実施例では、フード18に対応する車体側部材としては、グリル16に代えて、フロントバンパー14、ヘッドランプ15等を用いることができる。また、前記実施例では、フードシール36が取付けられた台座部材38をフード18に取付けたが、フード18に取付けられた台座部材38にフードシールを取付けるようにしてもよい。また、フード18に台座部材38及びフードシール36を同時に取付けてもよい。この場合、フード18に台座部材38及びフードシール36を共通のクリップで取付ける構成とすると、部品点数及び組付工数を削減し、コストを低減することができる。
【0039】
また、前記実施例では、グリル16の上壁部17の上面17aが車両左右方向にほぼ一定の高さをなすように形成されているが、高低差のある波形状に形成されていてもよい。この場合、車両左右方向にほぼ一定の高さをなす上面を有する隙間調整部材をグリル16の上壁部17上に設けるとよい。また、前記実施例では、フード18に設けた台座部材38にフードシール36を設けたが、グリル16にフードシール36を設けてリップ部42を台座部材38の基台部45の下面45aに弾性的に接触させることもできる。また、グリル16の上壁部17の上面17aは、車両左右方向にほぼ一定の高さであればよく、車両前後方向に関しては前下がりの傾斜面に限定されるものではなく、ほぼ水平面であってもよい。また、台座部材38の基台部45の下面45aは、車両左右方向にほぼ一定の高さであればよく、車両前後方向に関してはほぼ水平状に限定されるものではなく、前下がりあるいは後下がりの傾斜面であってもよい。また、前記実施例では、車両走行時に見切り隙間34から吹き込む走行風の風圧を受けてグリル16の上壁部17の上面17aに押付力を付与する形状のリップ部42を有するフードシール36を例示したが、そのような風圧による押圧力を付与しない形状のシール部(リップ部)を有するフードシール(例えば従来例(図6参照)のフードシールを採用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 自動車
16 グリル(車体側部材)
17 上壁部
17a 上面
18 フード
30 パネルエッジ
32 ボルト・ナット
34 見切り隙間
36 フードシール
38 台座部材(隙間調整部材)
40 取付板部(取付部)
42 リップ部(シール部)
45 基台部
45a 下面(シール取付面)
52 第1のクリップ
60 第2のクリップ
70 カバー部
72 保護部
74 係合片(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフードの前端部とその前端部に対応する車体側部材との間で車両前後方向に開口する隙間をシールする自動車のフードシール構造であって、
前記隙間に、該隙間の対向する面間距離を車両左右方向に一定となるように調整する隙間調整部材を設け、
前記調整された隙間の対向する一方の面を有する部材に、他方の面に弾性的に接触するシール部を有しかつ長手方向に一定の断面形状をなすフードシールを設けた
ことを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードシールのシール部が、車両走行時に前記隙間に吹き込む走行風の風圧を受けて他方の面に押付力を付与する形状のリップ部で形成されていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードに前記隙間調整部材が設けられ、前記隙間調整部材に前記フードの前端内側を覆うカバー部が設けられていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記フードに前記隙間調整部材が設けられ、前記隙間調整部材に前記フードのパネルエッジを覆う保護部が設けられていることを特徴とする自動車のフードシール構造。
【請求項5】
請求項2に記載の自動車のフードシール構造であって、
前記調整された隙間の対向する一方の面をシール取付面とする隙間調整部材に前記フードシールが設けられ、
前記フードシールは、前記隙間調整部材のシール取付面に面接触する取付板部を有し、
前記フードシールの取付板部は、前記隙間調整部材に所定の間隔毎にクリップにより取付けられ、
前記隙間調整部材には、前記フードシールの取付板部の浮き上がりを防止するように該取付板部に係合する係合部が設けられている
ことを特徴とする自動車のフードシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−25787(P2011−25787A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172131(P2009−172131)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】